特許第6427144号(P6427144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427144
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20181112BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   B60R16/02 620S
   B60R16/02 650Y
   H01B7/00 301
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-128708(P2016-128708)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-1861(P2018-1861A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅寛
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−251755(JP,A)
【文献】 特開2016−107874(JP,A)
【文献】 特開2009−292190(JP,A)
【文献】 特開2001−245417(JP,A)
【文献】 特開2016−110811(JP,A)
【文献】 特開2012−174666(JP,A)
【文献】 特開2011−051506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0067077(US,A1)
【文献】 特開平09−254721(JP,A)
【文献】 特開2016−101046(JP,A)
【文献】 特開2014−090579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索される配索体である電源供給用の電力線からなる幹線部と、
前記幹線部に接続され、接続される機器に前記車両に搭載された電源からの電力を分配する分配部と、
前記幹線部とは別体で前記車両の樹脂製の床材に埋設された接地用のアース板と
前記幹線部とは別体で前記車両に配索される配索体である信号通信用の通信線とを備え
前記幹線部は、鉛直方向に対して前記アース板の一方側に配索され、
前記通信線は、鉛直方向に対して前記アース板の他方側に配索され、
前記アース板は、前記通信線における電磁ノイズの影響を低減する遮蔽板を構成することを特徴とする、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記幹線部は、前記電力線と共に束ねられて前記車両に配索される配索体である信号通信用の通信線を含む、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記分配部は、前記車両に締結されると共に前記アース板に接続される締結接地部を有する、
請求項1又は請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記分配部は、連結部を介して相互に連結可能であると共に当該連結部を介して分割可能である複数の分割体によって構成される、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記分配部は、前記幹線部の両端にそれぞれ接続される一対の幹線端部分配部、及び、前記一対の幹線端部分配部の間で前記幹線部に介在し前記車両に搭載され電力を蓄積する蓄電装置が接続される幹線中間分配部を含む、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に適用される従来のワイヤハーネスとして、例えば、特許文献1には、右ハンドル車と左ハンドル車及びセダン型車とバン型車の4種類の車種に共用する自動車用ワイヤハーネスが開示されている。この自動車用ワイヤハーネスは、フロアハーネスとリヤハーネスとの統合ハーネス及びフロントハーネスとを上記4車種共用ハーネスとして同一経路で配索する一方、カウルハーネスとインスツルメントハーネスとの統合ハーネスを右ハンドル車と左ハンドル車とで相違させると共に、左右いずれか一方の同一サイドに上記フロントハーネスと上記フロアハーネスとリヤハーネスとの統合ハーネスとの接続部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−254721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の自動車用ワイヤハーネスは、配索経路の簡素化の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、配索経路の簡素化を図ることができるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、車両に配索される配索体である電源供給用の電力線からなる幹線部と、前記幹線部に接続され、接続される機器に前記車両に搭載された電源からの電力を分配する分配部と、前記幹線部とは別体で前記車両の樹脂製の床材に埋設された接地用のアース板とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記ワイヤハーネスでは、前記幹線部は、前記電力線と共に束ねられて前記車両に配索される配索体である信号通信用の通信線を含むものとすることができる。
【0008】
また、上記ワイヤハーネスでは、前記幹線部とは別体で前記車両に配索される配索体である信号通信用の通信線を備え、前記幹線部は、鉛直方向に対して前記アース板の一方側に配索され、前記通信線は、鉛直方向に対して前記アース板の他方側に配索されるものとすることができる。
【0009】
また、上記ワイヤハーネスでは、前記分配部は、前記車両に締結されると共に前記アース板に接続される締結接地部を有するものとすることができる。
【0010】
また、上記ワイヤハーネスでは、前記分配部は、連結部を介して相互に連結可能であると共に当該連結部を介して分割可能である複数の分割体によって構成されるものとすることができる。
【0011】
また、上記ワイヤハーネスでは、前記分配部は、前記幹線部の両端にそれぞれ接続される一対の幹線端部分配部、及び、前記一対の幹線端部分配部の間で前記幹線部に介在し前記車両に搭載され電力を蓄積する蓄電装置が接続される幹線中間分配部を含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るワイヤハーネスは、電源供給用の電力線からなる幹線部と、幹線部に接続され、接続される機器に電源からの電力を分配する分配部と、車両の樹脂製の床材に埋設された接地用のアース板との組み合わせにより、配索経路の簡素化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係るワイヤハーネスが適用された車両の概略構成を表す模式的なブロック図である。
図2図2は、実施形態1に係るワイヤハーネスの概略構成を表す模式的なブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係るワイヤハーネスの線状幹線部の概略構成を表す模式的な断面図である。
図4図4は、実施形態1に係るワイヤハーネスの締結接地部の概略構成を表す模式的な断面図である。
図5図5は、実施形態2に係るワイヤハーネスの分配部の概略構成を表す模式的な分解斜視図である。
図6図6は、実施形態2に係るワイヤハーネスの分配部の複数の分割体の組み合わせを説明する模式的なブロック図である。
図7図7は、実施形態2に係るワイヤハーネス分配部の複数の分割体の組み合わせを説明する模式的なブロック図である。
図8図8は、実施形態3に係るワイヤハーネスの概略構成を表す模式的なブロック図である。
図9図9は、実施形態3に係るワイヤハーネスの線状幹線部の概略構成を表す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
[実施形態1]
図1図2図3に示す本実施形態のワイヤハーネス1は、車両Vに適用され、当該車両Vに搭載される各装置間を接続し電源供給や信号通信に用いられるワイヤハーネスモジュールである。ワイヤハーネス1は、幹線部としての線状幹線部2が上記車両Vの車両前後方向Xに沿って配索されると共に、線状幹線部2に接続された分配部3を介して、車両Vに搭載された種々の機器Dに電力を供給する構造的な電装モジュールである。本実施形態のワイヤハーネス1は、線状幹線部2と分配部3とが共通幹線10を構成すると共に、当該共通幹線10を構成する分配部3を中心として広がるように中間配索体5が配索され、分配部3と各機器Dとを接続することで、配索経路の簡素化を図ったものである。さらには、本実施形態のワイヤハーネス1は、典型的には、共通幹線10が、適用される車種、プラットフォーム、車両グレード等にかかわらず、可能な限り標準化、共用化される一方、分配部3と各機器Dとを接続する各中間配索体5等に、車種、プラットフォーム、車両グレード等に応じてバリエーションを持たせることで、上記のような配索経路の簡素化とあわせて、部材の標準化、共用化による汎用性の向上と、部材の選択多様性による最適化とをバランスよく両立することができるものである。以下、各図を参照してワイヤハーネス1の構成について詳細に説明する。
【0016】
なおここで、ワイヤハーネス1が適用される車両Vにおいて、「車両前後方向X」とは、典型的には、車両Vの全長方向に相当し、さらに言えば、車両Vの前後直進方向に沿った方向に相当する。「車両幅方向Y」とは、典型的には、車両Vの全幅方向に相当し、車両Vの車両左右方向に相当する。「車両高さ方向Z」とは、典型的には、車両Vの車高方向に相当する。第1方向である車両前後方向Xと第2方向である車両幅方向Yと第3方向である車両高さ方向Zとは、相互に直交し、車両Vが水平面に位置する状態で、車両前後方向X、車両幅方向Yが水平方向に沿い、車両高さ方向Zが鉛直方向に沿う。また、以下の説明では、車両前後方向Xにおいて、車両Vが前進する側を「前方」、車両Vが後進する側を「後方」という場合がある。車両幅方向Yにおいて、車両前後方向Xの前方に向かって左側を「左側」、車両前後方向Xの前方に向かって右側を「右側」という場合がある。車両高さ方向Zにおいて、鉛直方向上側を「上側」、鉛直方向下側を「下側」という場合がある。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0017】
具体的には、ワイヤハーネス1は、図1図2図3に示すように、線状幹線部2と、分配部3と、アース板4と、中間配索体5とを備える。
【0018】
線状幹線部2は、電源線21を含んで構成されるものである。さらに、本実施形態の線状幹線部2は、電源線21と共に束ねられる複数の信号通信用の通信線22を含んで構成される。電源線21、通信線22は、車両Vに配索される線状の配索体であり、ワイヤハーネス1における複数の回路の一部を構成する。線状幹線部2は、当該線状の配索体である電源線21、通信線22が複数束ねられることで構成される。ここで、線状の配索体とは、典型的には、端部が一対で構成される配索体であり、すなわち、線状に形成され一対の端部間で分岐を有さない配索体である。つまり、線状の配索体である電源線21、通信線22を束ねて構成された線状幹線部2は、線状に形成され一対の端部間で分岐を有さないものである。
【0019】
電源線21は、電源供給に用いられる線状導体であり、各機器Dを駆動するための電力を供給するためのものである。本実施形態の複数の電源線21は、1本の電源供給用の電力線21aを含んで構成されるものとして図示しているが、電源供給用の電力線が複数束ねられていてもよい。電力線21aは、例えば、所定の電圧(例えば、12Vや48V)の電力を供給する配索体である。電源線21(電力線21a)は、標準化、共用化で要求される仕様等に応じて直流用であってもよいし、交流用であってもよい。複数の通信線22は、信号通信に用いられる線状導体であり、各機器Dに各種信号を供給するためのものである。本実施形態の複数の通信線22は、合計2本の通信用の通信線22a、22bを含んで構成される。各通信線22a、22bは、例えば、種々の方式の通信を実現するための配索体(例えば、SIG+用やSIG−用)である。なお、以下の説明では、通信線22a、22bを特に区別して説明する必要がない場合には、単に通信線22という。
【0020】
電源線21(電力線21a)、及び、各通信線22は、例えば、複数の導電性の金属素線を束ねたり撚り合せたりして構成される芯線に絶縁被覆を施した電線、導電性の棒部材に絶縁被覆を施した金属棒、バスバ、平面回路体(例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)やFFC(Flexible Flat Cable)等)等によって構成される。また、各通信線22は、光通信用のケーブルを含んでいてもよい。電源線21、及び、複数の通信線22、すなわち、電力線21a、及び、通信線22a、22bは、例えば、共通の絶縁被覆23等を介して一纏めに束ねられて線状幹線部2を構成する。また、線状幹線部2は、個別に絶縁被覆が施された電力線21a、及び、通信線22a、22bが巻テープ、コルゲートチューブ、結束バンド等の外装品によって一纏めに束ねられて構成されてもよい。線状幹線部2は、さらにグロメット、プロテクタ、固定具等の外装品が組み付けられてもよい。線状幹線部2は、車両前後方向Xに沿って配索される。
【0021】
分配部3は、種々の電力を各機器Dに分配するものである。分配部3は、典型的には、中間配索体5を介して各機器Dの接続中心部位となりいわゆる各機器Dの接続ハブを構成する。本実施形態の分配部3は、線状幹線部2の両端にそれぞれ接続される一対の幹線端部分配部3F、3Rを含んで構成される。幹線端部分配部3Fは、線状幹線部2の車両前後方向Xの前方側の端部に接続される。幹線端部分配部3Rは、線状幹線部2の車両前後方向Xの後方側の端部に接続される。各幹線端部分配部3F、3Rは、それぞれ電源分配部31と、通信分配部32とを含んで構成される。なお、以下の説明では、幹線端部分配部3F、3Rを特に区別して説明する必要がない場合には、単に分配部3という。また、各分配部3は、図2の例では、電源分配部31と通信分配部32とが一体化されて1つのボックスユニットを構成するものとして図示しているがこれに限らず、別体に構成されたものが相互に接続されてもよい。
【0022】
各電源分配部31は、線状幹線部2のうち電源線21が接続されると共に中間配索体5を介して機器Dが接続される。各電源分配部31は、それぞれ接続される機器Dに電源6から各機器Dを駆動するための電力を分配し電源供給を行うものである。各電源分配部31は、少なくとも一方に中間配索体5等を介して車両Vに搭載された電源6が接続される。言い換えれば、線状幹線部2は、分配部3の電源分配部31を介して電源6に接続され、電源6から分配部3の電源分配部31を介して電力が供給される。ここで、車両Vに搭載される電源6は、例えば、オルタネータ等、電力を発生させる発電機やバッテリ、コンデンサ、キャパシタ、二次電池ユニット、薄型シート状電池等、電力を蓄積する蓄電装置等によって構成される。車両Vに搭載される電源6は、図1図2の例では、蓄電装置としてのバッテリ(BATT)61、及び、バッテリ(BATT)62の2つを図示している。バッテリ61は、中間配索体5等を介して幹線端部分配部3Fの電源分配部31に接続され、バッテリ62は、中間配索体5等を介して幹線端部分配部3Rの電源分配部31に接続される。例えば、バッテリ61は、当該車両Vにおけるメインの電源6を構成し、バッテリ62は、当該車両Vにおけるサブのバックアップ用の電源6を構成するものとして説明するがこれに限らない。また、電源6は、少なくとも1つが複数の電源分配部31のいずれかに接続されていればよい。各電源分配部31は、接続される各機器Dに対して電源6から供給された電力を分配するジャンクションブロック、ヒューズボックス、リレーボックスなどと呼ばれるいわゆる電気接続箱の機能を組み込んだものということもできる。各電源分配部31は、例えば、リレー、抵抗、トランジスタ、IPS(Intelligent Power Switch)、これらをユニット化した電源制御ボックス等、電源分配にかかわる種々の電源分配機能部品、及び、当該種々の電源分配機能部品を収容する筐体等を含んで構成される。また、各電源分配部31は、定格以上の大電流から各機器Dの電気回路を保護するヒューズ等の回路保護部を含んで構成されてもよい。また、各電源分配部31は、ECU(Electronic Control Unit)等の制御装置を有するものであってもよい。
【0023】
各通信分配部32は、線状幹線部2のうち通信線22が接続されると共に中間配索体5を介して機器Dが接続される。各通信分配部32は、それぞれ接続される機器Dに各種信号を分配し信号通信を行うものである。各通信分配部32は、例えば、各種送受信装置等、信号通信にかかわる種々の通信機能部品、及び、当該種々の通信機能部品を収容する筐体等を含んで構成される。各通信線22、及び、各通信分配部32による通信プロトコルとしては、例えば、CAN通信、CAN−FD、イーサネット(登録商標)、電力線通信(PLC:Power Line Communications)等が挙げられるがこれらに限定されない。また、各通信分配部32は、ECU等の制御装置を有するものであってもよい。さらに、各通信分配部32は、通信ゲートウェイの機能を有していてもよい。さらに、各通信分配部32は、必要に応じて光学通信にかかわる光学機能部品を含んで構成されてもよい。
【0024】
各電源分配部31、及び、各通信分配部32は、それぞれ線状幹線部2の電源線21、通信線22の各端部がコネクタ等の接続部を介して接続される。さらに言えば、幹線端部分配部3Fの電源分配部31、通信分配部32は、線状幹線部2の電源線21、通信線22の一方の端部(車両前後方向Xの前方側の端部)に設けられたコネクタ等の接続部が接続される。一方、幹線端部分配部3Rの電源分配部31、通信分配部32は、線状幹線部2の電源線21、通信線22の他方の端部(車両前後方向Xの後方側の端部)に設けられたコネクタ等の接続部が接続される。つまり、線状幹線部2は、コネクタ等の接続部を介して幹線端部分配部3F、幹線端部分配部3Rと接続され、当該幹線端部分配部3Fと当該幹線端部分配部3Rとの間に渡って延在し、当該一対の幹線端部分配部3F、幹線端部分配部3Rを相互に接続する。また、各電源分配部31、及び、各通信分配部32は、それぞれ中間配索体5の一方の端部がコネクタ等の接続部を介して接続される。各電源分配部31、各通信分配部32と線状幹線部2の電源線21、通信線22、中間配索体5とは、コネクタ等の接続部を介して電気的に、必要に応じて光学的にも接続される(以下、同様の記載の場合には同様に必要に応じて光学的にも接続されるものとする。)。
【0025】
線状幹線部2と分配部3とは、共通幹線10を構成する。共通幹線10は、典型的には、適用される車種、プラットフォーム、車両グレード等にかかわらず標準化、共用化することが好ましい。共通幹線10は、車両Vの電装モジュールにおける基幹の電源線ユニットを構成するものであり、例えば、バックボーンなどと呼ばれることもある。共通幹線10は、線状幹線部2が車両幅方向Yの略中央で車両前後方向Xに沿って配索され、車両前後方向Xの前方側の端部に幹線端部分配部3Fが位置し車両前後方向Xの後方側の端部に幹線端部分配部3Rが位置する位置関係で車両Vに設けられる。例えば、幹線端部分配部3Fは、車両Vにおける車両前後方向Xの前方側のダッシュボード下等に位置し、幹線端部分配部3Rは、車両Vにおける車両前後方向Xの後方側のリヤシート裏等に位置する。共通幹線10は、線状幹線部2、分配部3が車両高さ方向Z(鉛直方向)に対して車両Vの床材(フロアパネル)FLの一方側に当該床材FLに沿って設けられ、例えば、種々のクランプやクリップ等の固定具を介して当該床材FL等に固定される。当該床材FLは、サスペンションを介して車両Vの車輪によって支持される。本実施形態の床材FLは、樹脂材料によって面状に形成された樹脂パネルであり、例えば、比較的に剛性の高い樹脂材料によって形成される。すなわち、本実施形態のワイヤハーネス1は、外装の一部が樹脂製の床材FLによって構成された車両Vの当該床材FLに適用される電装モジュールである。図2の例では、線状幹線部2、分配部3は、床材FLの鉛直方向上側の車室内側に配置されるものとして図示しているがこれに限らず、両方が床材FLの鉛直方向下側の床下側(車室外側)に配置されてもよいし、一方が車室内側に配置され他方が床下側に配置されてもよい。
【0026】
アース板4は、アース(接地)をとるための接地用の金属板である。本実施形態のアース板4は、線状幹線部2とは別体で構成され、車両Vの樹脂製の床材FLに埋設される。アース板4は、例えば、導電性を有する金属材料(例えば、銅、アルミニウム、又は、鉄のいずれか1つを含む金属材料)によって面状に形成される。アース板4は、例えば、当該金属材料によって平板形状に形成されてもよいし、当該金属材料によって格子板形状に形成されてもよいし、当該金属材料によって構成される金属素線を網状に編み込んだ網板形状に形成されてもよい。アース板4は、例えば、インサート成形等によって樹脂製の床材FLの内部に当該床材FLと一体で形成されることで、当該樹脂製の床材FLの内部に埋設される。これにより、アース板4は、例えば、床材FLを含む車両ボディが金属材料ではなく樹脂材料によって構成される車両Vにおいて、接地用の金属板を構成する。アース板4は、少なくとも床材FLの一部に埋設されていればよいが、当該床材FLの半分以上の領域に埋設されていることが好ましく、さらに言えば、床材FLの略全面に埋設されていることがより好ましい。
【0027】
そして、本実施形態の各幹線端部分配部3F、3Rは、図4に示すように、車両Vに締結されると共にアース板4に接地される締結接地部33を有するように構成される。本実施形態の締結接地部33は、車両Vの樹脂製の床材FLに締結されると共に当該床材FLに埋設されたアース板4に電気的に接続される。締結接地部33は、例えば、幹線端部分配部3F、3Rの各電源分配部31の筐体から突出する導電性の金属製のブラケット33a、ブラケット33aを床材FLに締結固定すると共に当該床材FLに埋設されたアース板4と電気的に接続するボルト等の金属製の締結部材33bを含んで構成される。これにより、各幹線端部分配部3F、3Rは、締結接地部33にてアース板4に接地される。
【0028】
図1に戻って、中間配索体5は、各分配部3と機器D、各電源6との間に介在し、これら各分配部3と機器D、各電源6とを電気的に接続する配索体である。各中間配索体5は、機器Dの要求に応じて、電力線、アース線等の電源線、各種の通信線を含んで構成される。各中間配索体5は、線状幹線部2と同様に、例えば、複数の導電性の金属素線を束ねたり撚り合せたりして構成される芯線に絶縁被覆を施した電線、導電性の棒部材に絶縁被覆を施した金属棒、バスバ、平面回路体等によって構成される。また、各中間配索体5は、機器Dの要求に応じて、光通信用のケーブルを含んでいてもよい。各中間配索体5は、線状幹線部2と同様に共通の絶縁被覆等を介して一纏めに束ねられて構成されてもよいし、例えば、巻テープ、コルゲートチューブ、結束バンド等の外装品等を介して一纏めに束ねられて構成されてもよいし、さらにグロメット、プロテクタ、固定具等の外装品が組み付けられてもよい。各中間配索体5は、それぞれ、一方の端部がコネクタ等の接続部を介して幹線端部分配部3F、幹線端部分配部3R等と接続され、他方の端部がコネクタ等の接続部を介して機器D、電源6を構成するバッテリ61、62等と接続される。つまり、各中間配索体5は、それぞれ、コネクタ等の接続部を介して幹線端部分配部3F、幹線端部分配部3R、機器D、バッテリ61、62と接続され、幹線端部分配部3F、幹線端部分配部3R等と機器D、バッテリ61、62等との間に渡って延在し相互に電気的に接続する。当該中間配索体5を介して各分配部3と接続される機器Dとしては、図1の例では、幹線端部分配部3Fに接続されるランプD1、スイッチD2、ECUD3、アクチュエータD4、幹線端部分配部3Rに接続されるモータD5、ランプD6等を例示しているがこれに限らない。なお、機器Dに接続される各中間配索体5は、さらに分岐部が設けられ複数の機器Dが接続されると共に全体がモジュール化され、より高密度、高効率な回路となるようにサブモジュールを構成してもよい。また、各中間配索体5は、選択多様性を確保するため、例えば、適用される車種、プラットフォーム、車両グレード等に応じて、長さ、径、材質、形状、分岐数等にバリエーションを持たせて複数種類が用意され、その中から適宜選択され適用されてもよい。
【0029】
以上で説明したワイヤハーネス1によれば、車両Vに配索される配索体である電源供給用の電力線21aからなる線状幹線部2と、線状幹線部2に接続され、接続される機器Dに車両Vに搭載された電源6からの電力を分配する分配部3と、線状幹線部2とは別体で車両Vの樹脂製の床材FLに埋設された接地用のアース板4とを備える。
【0030】
したがって、ワイヤハーネス1は、電源供給用の電力線21aからなる線状幹線部2と、線状幹線部2に接続され、接続される機器Dに電源6からの電力を分配する分配部3と、車両Vの樹脂製の床材FLに埋設された接地用のアース板4との組み合わせにより、配索経路の簡素化を図ることができる。より詳細に言えば、ワイヤハーネス1は、分岐を有さない線状幹線部2によって相互に接続された幹線端部分配部3F、3Rを中心として広がるように枝分かれして中間配索体5が配索され、各幹線端部分配部3F、3Rと各機器Dとが接続されることで、当該ワイヤハーネス1の形体を簡略化しよりコンパクトで省スペースな構成とした上で、配索経路の簡素化を図ることができる。この場合、ワイヤハーネス1は、各部が車両Vの樹脂製の床材FLに埋設された接地用のアース板4に電気的に接続されることで、機器Dや分配部3等を所望の位置でアース板4に対してアース接続することができ、当該アース板4を介して電源6を構成するバッテリ61、62のマイナス側と接続することができる。これにより、ワイヤハーネス1は、組み立て時の作業性の向上や構成部品点数の抑制等を図ることができ、例えば、各種配索体の取り回しや取りまとめの作業を簡略化することができる。つまり、ワイヤハーネス1は、線状幹線部2、及び、幹線端部分配部3F、3R、すなわち、共通幹線10を車両Vへ組み付けると共に、各幹線端部分配部3F、3Rと各機器Dとを相互に接続することで当該ワイヤハーネス1を車両Vに組み付けることができるので、組み付け作業の効率化を図ることができ、車両Vへの組み付け性を向上することができ、製造効率を向上することができる。
【0031】
さらに、ワイヤハーネス1は、線状幹線部2と一対の幹線端部分配部3F、3Rとによって構成される共通幹線10が車種、プラットフォーム、車両グレード等にかかわらず可能な限り標準化、共用化されると共に、共通幹線10と各機器Dとを接続する各中間配索体5等に、車種、プラットフォーム、車両グレード等に応じてバリエーションを持たせ適宜選定して組み合わせて構成されることで、上記のような配索経路の簡素化とあわせて、部材の標準化、共用化による汎用性の向上と、部材の選択多様性による最適化とをバランスよく両立することができる。この結果、ワイヤハーネス1は、様々な車両Vに適用しやすい構成とすることができる。
【0032】
さらに、以上で説明したワイヤハーネス1によれば、線状幹線部2は、電力線21aと共に束ねられて車両Vに配索される線状の配索体である信号通信用の通信線22を含む。したがって、ワイヤハーネス1は、電力線21aに加えて通信線22も一纏めに束ねて幹線化し線状幹線部2を構成することができるので、配索経路の更なる簡素化を図ることができ、配索作業性をさらに向上することができる。
【0033】
さらに、以上で説明したワイヤハーネス1によれば、分配部3は、車両Vの床材FLに締結されると共にアース板4に接続される締結接地部33を有する。したがって、ワイヤハーネス1は、分配部3、ここでは、幹線端部分配部3F、3Rを車両Vに締結固定する締結接地部33を兼用して、当該幹線端部分配部3F、3R、及び、これに接続される線状幹線部2を車両Vの樹脂製のボディ(床材FL)に埋設されたアース板4に対してアース接続することができる。この結果、ワイヤハーネス1は、構成部品点数の抑制等を図ることができると共に、分配部3の締結固定とアース接続とを同時に行うことができ作業工数の抑制等を図ることができ、また、各種配索体の取り回しや取りまとめの作業を簡略化することができる。この結果、ワイヤハーネス1は、さらに車両Vへの組み付け性を向上することができ、製造効率を向上することができる。
【0034】
[実施形態2]
実施形態2に係るワイヤハーネスは、幹線端部分配部が複数の分割体によって構成される点で実施形態1とは異なる。以下では、上述した実施形態と同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下、同様。)。
【0035】
図5に示す本実施形態のワイヤハーネス201は、幹線端部分配部3F、3Rにかえて、幹線端部分配部203F、203Rを備える点で上述のワイヤハーネス1と異なり、その他の構成は、当該ワイヤハーネス1とほぼ同様の構成である。
【0036】
本実施形態の各幹線端部分配部203F、203Rは、それぞれ、連結部234を介して相互に連結可能であると共に当該連結部234を介して分割可能である複数の分割体235A、235Bによって構成される点で上述の幹線端部分配部3F、3Rと異なり、その他の構成は、当該幹線端部分配部3F、3Rとほぼ同様の構成である。なおここでは、幹線端部分配部203F、203Rは、双方が複数の分割体235A、235Bによって構成されるものとして説明するがいずれか一方でもよい。また、本実施形態の幹線端部分配部203F、203Rは、それぞれ、分割体235Aと分割体235Bとの合計2つによって構成されるものとして説明するがこれに限らず3つ以上の分割体によって構成されてもよい。
【0037】
分割体235A、235Bは、それぞれ、筐体236、接続用スロット237等を含んで構成される。筐体236は、種々の電源分配機能部品、種々の通信機能部品等の各種機能部品を収容するものである。接続用スロット237は、筐体236の外面に凹部状に複数設けられ、線状幹線部2を構成する電源線21、通信線22や中間配索体5の端部にそれぞれ設けられるコネクタ等の接続部が嵌合し、筐体236内の各種機能部品と電源線21、通信線22、中間配索体5とを電気的に接続する接続部位である。
【0038】
そして、分割体235Aは、筐体236、接続用スロット237に加えて、さらに、上述のブラケット33a、連結部234を構成する連結用スロット234a等を含んで構成される。連結用スロット234aは、筐体236の外面、典型的には、相対的に最も広い面に凹部状に設けられ、分割体235Aと分割体235Bとを相互に連結可能、かつ、分割体235Aと分割体235Bとを相互に分割可能とする連結部234を構成するものである。一方、分割体235Bは、筐体236、接続用スロット237に加えて、さらに、連結部234を構成する連結用差し込み部234b等を含んで構成される。連結用差し込み部234bは、筐体236の外面、典型的には、相対的に最も広い面に凸部状に設けられ、連結用スロット234aと共に連結部234を構成するものである。
【0039】
連結部234は、連結用差し込み部234bが連結用スロット234aに差し込まれ嵌合されることで、分割体235Aと分割体235Bとを相互に連結し一体化して幹線端部分配部203F、203Rを構成すると共に、分割体235Aと分割体235Bとの各種機能部品等を相互に電気的に接続する。連結部234は、連結用差し込み部234bが連結用スロット234aから抜き取られることで、分割体235Aと分割体235Bとを相互に分割し別体化すると共に、分割体235Aと分割体235Bとの各種機能部品等の電気的な接続を解除する。なおここでは、連結部234は、連結用スロット234aが分割体235Aに設けられ、連結用差し込み部234bが分割体235Bに設けられるものとして説明したがこれに限らず、連結用スロット234aが分割体235Bに設けられ、連結用差し込み部234bが分割体235Aに設けられてもよいし、そもそも他の形式の連結構造であってもよい。
【0040】
そして、各幹線端部分配部203F、203Rは、例えば、図6に例示するように、それぞれ、分割体235Aが電源分配部31を構成し、分割体235Bが通信分配部32を構成するようにしてもよい。つまり、各幹線端部分配部203F、203Rは、それぞれ、分割体235Aとして構成される電源分配部31と分割体235Bとして構成される通信分配部32とが連結部234を介して一体化され1つのボックスユニットを構成するようにしてもよい。そしてここでは、線状幹線部2は、一例として、電力線21aに加えさらに電力線21bを含んで構成される電源線21が分割体235Aとして構成される電源分配部31に接続され、通信線22a、22bからなる通信線22が分割体235Bとして構成される通信分配部32に接続される。
【0041】
また、各幹線端部分配部203F、203Rは、例えば、それぞれ分割体235Aが車種、プラットフォーム、車両グレード等にかかわらず標準化、共用化される基本ボックスを構成し、分割体235Bが車種、プラットフォーム、車両グレード等に応じて適宜選択されたり追加/拡張されたりする拡張ボックスを構成するようにしてもよい。また、各幹線端部分配部203F、203Rは、電源分配部31、又は、通信分配部32の一方、あるいは、両方がそれぞれ分割体235A、235Bによって分割可能に構成されてもよい。
【0042】
例えば、図7に例示するように、各幹線端部分配部203F、203Rは、それぞれ、電源分配部31が分割体235Aと分割体235Bによって分割可能に構成されてもよい。そして、分割体235Aは、各電源分配部31における基本ボックスを構成し、分割体235Bが各電源分配部31における拡張ボックスを構成する。各電源分配部31は、それぞれ、分割体235Aとして構成される基本ボックスと分割体235Bとして構成される拡張ボックスとが連結部234を介して一体化され1つのボックスユニットを構成するようにしてもよい。ここでは一例として、電源線21は、分割体235Aとして構成される基本ボックス同士を相互に接続する電力線21aと、分割体235Bとして構成される拡張ボックス同士を相互に接続する電力線21bとを含んで構成されるものとして図示している。
【0043】
なお、図6図7で示したように、電源線21が電力線21aと電力線21bとを含んで構成される場合、電力線21aによる電源系と、電力線21bによる電源系とをそれぞれ独立した電源系統としてもよい。そしてこの場合、各電源分配部31は、例えば、電力線21aによる電源系と電力線21bによる電源系とを同電圧で別系統とし、電力線21aによる電源系に接続され相対的に高い信頼性が求められる安全系等に関する機器Dと、電力線21bによる電源系に接続され安全系と比較すると相対的に低い信頼性でも許容されるマルチメディア系等に関する機器Dとをそれぞれ別系統の電源系統としてもよい。また、各電源分配部31は、例えば、電力線21aによって電圧が相対的に低い電圧(例えば、12V)に設定された低圧電源系を構成し、電力線21bによって電圧が相対的に高い電圧(例えば、48V)に設定された高圧電源系を構成してもよい。なお、ワイヤハーネス201は、例えば、図7のように電源線21を2系統設けるのではなく、電源線21を分割体235Aに接続される1系統とした上で分割体235Bを増設することで、系統を増やさずに連結用スロット234aを増やすこともできる。
【0044】
以上で説明したワイヤハーネス201は、電源供給用の電力線21a、21bからなる線状幹線部2と、線状幹線部2に接続され、接続される機器Dに電源6からの電力を分配する分配部3と、車両Vの樹脂製の床材FLに埋設された接地用のアース板4との組み合わせにより、配索経路の簡素化を図ることができる。
【0045】
さらに、以上で説明したワイヤハーネス201によれば、分配部3、ここでは、幹線端部分配部203F、203Rは、連結部234を介して相互に連結可能であると共に当該連結部234を介して分割可能である複数の分割体235A、235Bによって構成される。したがって、ワイヤハーネス201は、拡張性を向上することができ、さらに汎用性を向上することができる。
【0046】
[実施形態3]
実施形態3に係るワイヤハーネスは、線状幹線部、及び、分配部の構成が実施形態1とは異なる。
【0047】
図8図9に示す本実施形態のワイヤハーネス301は、線状幹線部2にかえて線状幹線部302を備える点、分配部3にかえて分配部303を備える点で上述のワイヤハーネス1と異なり、その他の構成は、当該ワイヤハーネス1とほぼ同様の構成である。
【0048】
本実施形態の線状幹線部302は、図8図9に例示するように、電力線21aを含んで構成され、上述した通信線22を含まない点で上述の線状幹線部2と異なり、その他の構成は、当該線状幹線部2とほぼ同様の構成である。つまり、本実施形態の線状幹線部302は、電力線21aからなる1本の電源線21と、絶縁被覆23とによって構成される。本実施形態の通信線22(通信線22a、22b)は、当該線状幹線部302とは別体で車両Vに配索される線状の配索体として構成される。つまり、本実施形態の線状幹線部302は、電力線21aからなる1本の電源線21と、絶縁被覆23とによって構成される。
【0049】
また、本実施形態の分配部303は、上述した一対の幹線端部分配部3F、3Rに加えて、さらに線状幹線部302の両端の間で線状幹線部302に介在する幹線中間分配部303Cを含んで構成される点で上述の分配部3と異なり、その他の構成は、当該分配部3とほぼ同様の構成である。幹線中間分配部303Cは、線状幹線部302の中間部位に組み込まれ、線状幹線部302に接続される。言い換えれば、幹線中間分配部303Cは、一対の幹線端部分配部3F、3Rの間で線状幹線部302に介在する。さらに言えば、本実施形態の線状幹線部302は、幹線中間分配部303Cを境界に分割された分割幹線部302Aと分割幹線部302Bとによって構成される。分割幹線部302Aと分割幹線部302Bとは、分割幹線部302Aが幹線端部分配部3Fと幹線中間分配部303Cとを接続し、分割幹線部302Bが幹線中間分配部303Cと幹線端部分配部3Rとを接続することによって線状幹線部302を構成する。幹線端部分配部3Fは、線状幹線部302の車両前後方向Xの前方側の端部、より詳細に言えば、分割幹線部302Aの車両前後方向Xの前方側の端部に接続される。幹線端部分配部3Rは、線状幹線部302の車両前後方向Xの後方側の端部、より詳細に言えば、分割幹線部302Bの車両前後方向Xの後方側の端部に接続される。そして、幹線中間分配部303Cは、分割幹線部302Aの車両前後方向Xの後方側の端部、及び、分割幹線部302Bの車両前後方向Xの前方側の端部に接続される。幹線端部分配部3Fの電源分配部31、通信分配部32は、線状幹線部302を構成する分割幹線部302Aの電源線21、通信線22の一方の端部(車両前後方向Xの前方側の端部)に設けられたコネクタ等の接続部が接続される。幹線中間分配部303Cの電源分配部31、通信分配部32は、線状幹線部302を構成する分割幹線部302Aの電源線21、通信線22の他方の端部(車両前後方向Xの後方側の端部)に設けられたコネクタ等の接続部、及び、線状幹線部302を構成する分割幹線部302Bの電源線21、通信線22の一方の端部(車両前後方向Xの前方側の端部)に設けられたコネクタ等の接続部が接続される。そして、幹線端部分配部3Rの電源分配部31、通信分配部32は、線状幹線部302を構成する分割幹線部302Bの電源線21、通信線22の他方の端部(車両前後方向Xの後方側の端部)に設けられたコネクタ等の接続部が接続される。つまり、線状幹線部302は、分割幹線部302Aがコネクタ等の接続部を介して幹線端部分配部3F、幹線中間分配部303Cと接続され当該幹線端部分配部3Fと当該幹線中間分配部303Cとの間に渡って延在し、分割幹線部302Bがコネクタ等の接続部を介して幹線中間分配部303C、幹線端部分配部3Rと接続され当該幹線中間分配部303Cと当該幹線端部分配部3Rとの間に渡って延在し、当該幹線中間分配部303C、及び、当該一対の幹線端部分配部3F、幹線端部分配部3Rを相互に接続する。
【0050】
そして、幹線中間分配部303C、及び、各幹線端部分配部3F、3Rは、それぞれ上述と同様の構成の電源分配部31と、通信分配部32とを含んで構成される。幹線中間分配部303Cは、上述した幹線端部分配部203F、203Rと同様に連結部234を介して相互に連結可能であると共に当該連結部234を介して分割可能である複数の分割体235A、235Bによって構成されてもよい。また、本実施形態のバッテリ62は、幹線中間分配部303Cの電源分配部31に電気的に接続されており、当該電源分配部31を介して線状幹線部302に電気的に接続される。バッテリ62は、幹線中間分配部303Cの電源分配部31に中間配索体5等を介して接続されてもよいし、当該電源分配部31に直接接続されてもよい。幹線中間分配部303C、又は、各幹線端部分配部3F、3R、ここでは両方は、上述と同様に締結接地部33を介してアース板4に接地される。なお、以下の説明では、幹線中間分配部303C、幹線端部分配部3F、3Rを特に区別して説明する必要がない場合には、単に分配部303という。また、図8においては、幹線中間分配部303Cに接続される機器Dについては図示を省略している。また、本実施形態の共通幹線10は、線状幹線部302と、分配部303(幹線中間分配部303C、及び、一対の幹線端部分配部3F、3R)と、バッテリ62とを含んで構成される。共通幹線10は、線状幹線部302が車両幅方向Yの略中央で車両前後方向Xに沿って配索され、車両前後方向Xの前方側の端部に幹線端部分配部3Fが位置し車両前後方向Xの後方側の端部に幹線端部分配部3Rが位置し幹線端部分配部3Fと幹線端部分配部3Rとの間に幹線中間分配部303Cが位置する位置関係で車両Vに設けられる。
【0051】
そして、本実施形態の線状幹線部302は、鉛直方向に対して車両Vの樹脂製の床材FL、及び、当該床材FLに埋設されたアース板4の一方側に配索され、通信線22は、鉛直方向に対して床材FL、アース板4の他方側に配索される。図8の例では、線状幹線部302は、床材FL、アース板4の鉛直方向下側の床下側に配索され、通信線22は、床材FL、アース板4の鉛直方向上側の車室内側に配索される。そして、幹線中間分配部303C、各幹線端部分配部3F、3R(分配部303)のうち各電源分配部31は、線状幹線部302と共に床材FL、アース板4の鉛直方向下側の床下側に配置され、各通信分配部32は、通信線22と共に床材FL、アース板4の鉛直方向上側の車室内側に配置される。そして、幹線中間分配部303C、各幹線端部分配部3F、3Rにおいて、各電源分配部31と各通信分配部32とは、例えば、中間配索体5と同様の構成であり、床材FLの鉛直方向上側の車室内側と鉛直方向下側の床下側とに跨って配索される連結配索体7によって相互に接続される。ここでは、バッテリ62も幹線中間分配部303Cの電源分配部31と共に床材FL、アース板4の鉛直方向下側の床下側に配置される。なお、共通幹線10は、幹線中間分配部303C、各幹線端部分配部3F、3Rのうち各電源分配部31が線状幹線部302と共に床材FLの鉛直方向下側の床下側に配置され、各通信分配部32が通信線22と共に床材FLの鉛直方向上側の車室内側に配置されるものとして説明したがこれに限らず、各電源分配部31と各通信分配部32との双方が床材FLの鉛直方向上側の車室内側に配置されてもよいし、双方が床材FLの鉛直方向下側の床下側に配置されてもよい。
【0052】
以上で説明したワイヤハーネス301は、電源供給用の電力線21aからなる線状幹線部302と、線状幹線部302に接続され、接続される機器Dに電源6からの電力を分配する分配部303と、車両Vの樹脂製の床材FLに埋設された接地用のアース板4との組み合わせにより、配索経路の簡素化を図ることができる。
【0053】
さらに、以上で説明したワイヤハーネス301によれば、分配部303は、線状幹線部302の両端にそれぞれ接続される一対の幹線端部分配部3F、3R、及び、一対の幹線端部分配部3F、3Rの間で線状幹線部302に介在し車両Vに搭載され電力を蓄積するバッテリ62が接続される幹線中間分配部303Cを含む。したがって、ワイヤハーネス301は、一対の幹線端部分配部3F、3Rに加えて、さらに線状幹線部302に組み込まれバッテリ62が接続される幹線中間分配部303Cも組み合わせて、より配索経路の簡素化を図ることができる。
【0054】
さらに、以上で説明したワイヤハーネス301によれば、線状幹線部302とは別体で車両Vに配索される線状の配索体である信号通信用の通信線22を備え、線状幹線部302は、鉛直方向に対してアース板4の一方側に配索され、通信線22は、鉛直方向に対してアース板4の他方側に配索される。したがって、ワイヤハーネス301は、金属製のアース板4を挟んで電源線21を含む線状幹線部302とは反対側に通信線22が配索されるので、当該アース板4を遮蔽板(シールド部材)として機能させることができ、通信線22における電磁ノイズの影響を低減することができる。
【0055】
なお、上述した本発明の実施形態に係るワイヤハーネスは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係るワイヤハーネスは、以上で説明した各実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0056】
以上の説明では、幹線端部分配部3F、3R、203F、203R、幹線中間分配部303Cは、上述した締結接地部33によらずに、当該幹線端部分配部3F、3R、203F、203R、幹線中間分配部303Cから延在するアース用電線等を介して、幹線端部分配部3F、3R、203F、203R、幹線中間分配部303C、及び、これに接続される線状幹線部2、302をアース板4に対してアース接続し、電源6を構成するバッテリ61、62のマイナス側と接続するようにしてもよい。
【0057】
以上の説明では、線状幹線部2は、複数の電源線21と共に束ねられる信号通信用の通信線22を含んで構成されるものとして説明したが図8図9で説明した線状幹線部302のように通信線22を含んでいなくてもよく、幹線端部分配部3F、3R、203F、203R、幹線中間分配部303Cも通信分配部32を含んでいなくてもよい。また、ワイヤハーネス1、201、301は、幹線端部分配部3F、203Fと幹線中間分配部303Cと幹線端部分配部3R、203Rとの間の通信を、通信線22を介した有線通信によらずに、例えば、W−LAN、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooh(登録商標)等の近距離無線通信(NFC)等、種々の方式の無線通信によって行ってもよい。この場合、各通信分配部32は、これら種々の方式の送受信ユニット、アンテナ等の無線通信機能部品を備えていてもよい。また、通信線は、電源線21によって兼用され上述した電力線通信(PLC)に用いられてもよい。
【0058】
以上の複数の電源線21は、電源供給に用いられる線状導体であり、1本の電源供給用の電力線21aを含んで構成されるものとして説明したがこれに限らず、例えば、アース線が線状幹線部2、302の電源線21とは別に設けられてもよいし、図6図7で説明したように、複数本の電力線21a、21bが設けられていてもよい。
【0059】
また、以上の説明では、電源線21、通信線22は、線状に形成され一対の端部間で分岐を有さない配索体であり、幹線部は、線状に形成され一対の端部間で分岐を有さない線状幹線部2、302であるものとして説明したがこれに限らず、電源線21、通信線22、幹線部自体が分岐を有していてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1、201、301 ワイヤハーネス
2、302 線状幹線部(幹線部)
3、303 分配部
3F、3R、203F、203R 幹線端部分配部
4 アース板
6 電源
21a、21b 電力線
22、22a、22b 通信線
33 締結接地部
61、62 バッテリ(蓄電装置)
234 連結部
235A、235B 分割体
303C 幹線中間分配部
D 機器
FL 床材
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9