(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
A.一実施形態
<A−1.構成>
[A−1−1.全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る走行制御装置としての走行電子制御装置38(以下「走行ECU38」又は「ECU38」という。)を含む車両10の構成を示すブロック図である。車両10(以下「自車10」ともいう。)は、走行ECU38に加え、ナビゲーション装置20と、車両周辺センサ群22と、車体挙動センサ群24と、運転操作センサ群26と、通信装置28と、ヒューマン・マシン・インタフェース30(以下「HMI30」という。)と、駆動力制御システム32と、制動力制御システム34と、電動パワーステアリングシステム36(以下「EPSシステム36」という。)とを有する。
【0027】
[A−1−2.ナビゲーション装置20]
ナビゲーション装置20は、手動運転又は自動運転のために目標地点Pgoalまでの自車10の予定経路Rvに沿った経路案内を行う。ナビゲーション装置20は、グローバル・ポジショニング・システム・センサ40(以下「GPSセンサ40」という。)と、地図データベース42(以下「地
図DB42」という。)とを有する。GPSセンサ40は、車両10の現在位置Pcurを検出する。地
図DB42には、道路地図の情報(地図情報Imap)が記憶される。
【0028】
[A−1−3.車両周辺センサ群22]
車両周辺センサ群22は、車両10の周辺に関する情報(以下「車両周辺情報Ic」ともいう。)を検出する。車両周辺センサ群22には、複数の車外カメラ50と、複数のレーダ52とが含まれる。
【0029】
複数の車外カメラ50は、車両10の周辺(前方、側方及び後方)を撮像した画像情報Iimageを出力する。複数のレーダ52は、車両10の周辺(前方、側方及び後方)に送信した電磁波に対する反射波を示すレーダ情報Iraderを出力する。車外カメラ50及びレーダ52は、車両周辺情報Icを認識する周辺認識装置である。
【0030】
[A−1−4.車体挙動センサ群24]
車体挙動センサ群24は、車両10(特に車体)の挙動に関する情報(以下「車体挙動情報Ib」ともいう。)を検出する。車体挙動センサ群24には、車速センサ60と、横加速度センサ62と、ヨーレートセンサ64とが含まれる。
【0031】
車速センサ60は、車両10の車速V[km/h]を検出する。横加速度センサ62は、車両10の横加速度Glat[m/s/s]を検出する。ヨーレートセンサ64は、車両10のヨーレートYr[rad/s]を検出する。
【0032】
[A−1−5.運転操作センサ群26]
運転操作センサ群26は、運転者による運転操作に関する情報(以下「運転操作情報Io」ともいう。)を検出する。運転操作センサ群26には、アクセルペダルセンサ80と、ブレーキペダルセンサ82と、舵角センサ84と、操舵トルクセンサ86とが含まれる。
【0033】
アクセルペダルセンサ80(以下「APセンサ80」ともいう。)は、アクセルペダル90の操作量θap(以下「AP操作量θap」ともいう。)[%]を検出する。ブレーキペダルセンサ82(以下「BPセンサ82」ともいう。)は、ブレーキペダル92の操作量θbp(以下「BP操作量θbp」ともいう。)[%]を検出する。舵角センサ84は、ステアリングハンドル94の舵角θst(以下「操作量θst」ともいう。)[deg]を検出する。操舵トルクセンサ86は、ステアリングハンドル94に加えられた操舵トルクTst[N・m]を検出する。
【0034】
[A−1−6.通信装置28]
通信装置28は、外部機器との無線通信を行う。ここでの外部機器には、例えば、図示しない外部サーバが含まれる。外部サーバには、ナビゲーション装置20の代わりに詳細な予定経路Rvを算出する経路案内サーバと、車両10に交通情報を提供する交通情報サーバを含むことができる。
【0035】
なお、本実施形態の通信装置28は、車両10に搭載(又は常時固定)されているものを想定しているが、例えば、携帯電話機又はスマートフォンのように車両10の外部へ持ち運び可能なものであってもよい。
【0036】
[A−1−7.HMI30]
HMI30は、乗員からの操作入力を受け付けると共に、乗員に対して各種情報の提示を、視覚的、聴覚的及び触覚的に行う。HMI30には、ACCスイッチ110(以下「ACC SW110」ともいう。)と、表示部112と、振動付与装置114とが含まれる。アクセルペダル90、ブレーキペダル92及びステアリングハンドル94をHMI30の一部と位置付けてもよい。
【0037】
ACC SW110は、乗員の操作によりオートクルーズ制御(ACC)の開始及び終了を指令すると共に、ACCにおける目標車速Vacctar(固定値)を設定するためのスイッチである。ACC SW110に加えて又はこれに代えて、その他の方法(図示しないマイクロホンを介しての音声入力等)によりACCの開始又は終了を指令することも可能である。表示部112は、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルを含む。表示部112は、タッチパネルとして構成されてもよい。振動付与装置114は、走行ECU38の指令に基づいてステアリングハンドル94に振動を付与する。
【0038】
[A−1−8.駆動力制御システム32]
駆動力制御システム32は、エンジン120(駆動源)及び駆動電子制御装置122(以下「駆動ECU122」という。)を有する。上述のAPセンサ80及びアクセルペダル90を駆動力制御システム32の一部として位置付けてもよい。駆動ECU122は、AP操作量θap等を用いて車両10の駆動力制御を実行する。駆動力制御に際し、駆動ECU122は、エンジン120の制御を介して車両10の走行駆動力Fdを制御する。
【0039】
[A−1−9.制動力制御システム34]
制動力制御システム34は、ブレーキ機構130及び制動電子制御装置132(以下「制動ECU132」という。)を有する。上述のBPセンサ82及びブレーキペダル92を制動力制御システム34の一部として位置付けてもよい。ブレーキ機構130は、ブレーキモータ(又は油圧機構)等によりブレーキ部材を作動させる。
【0040】
制動ECU132は、BP操作量θbp等を用いて車両10の制動力制御を実行する。制動力制御に際し、制動ECU132は、ブレーキ機構130等の制御を介して車両10の制動力Fbを制御する。
【0041】
[A−1−10.EPSシステム36]
EPSシステム36は、EPSモータ140と、EPS電子制御装置142(以下「EPS ECU142」又は「ECU142」という。)とを有する。上述の舵角センサ84、操舵トルクセンサ86、ステアリングハンドル94及び振動付与装置114をEPSシステム36の一部として位置付けてもよい。
【0042】
EPS ECU142は、走行ECU38からの指令に応じてEPSモータ140を制御して、車両10の旋回量Rを制御する。旋回量Rには、舵角θst、横加速度Glat及びヨーレートYrが含まれる。
【0043】
[A−1−11.走行ECU38]
(A−1−11−1.走行ECU38の概要)
走行ECU38は、車両10の走行に関する各種制御(走行制御)を実行するものであり、例えば、中央処理装置(CPU)を含む。走行制御には、オートクルーズ制御(ACC)と、路外逸脱抑制(RDM)制御(RDM:Road Departure Mitigation)が含まれる。ACC及びRDM制御の詳細については後述する。
【0044】
図1に示すように、ECU38は、入出力部150、演算部152及び記憶部154を有する。なお、走行ECU38の機能の一部を車両10の外部に存在する外部機器に担わせることも可能である。
【0045】
(A−1−11−2.入出力部150)
入出力部150は、ECU38以外の機器(ナビゲーション装置20、センサ群22、24、26、通信装置28等)との入出力を行う。入出力部150は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する図示しないA/D変換回路を備える。
【0046】
(A−1−11−3.演算部152)
演算部152は、ナビゲーション装置20、各センサ群22、24、26、通信装置28、HMI30及び各ECU122、132、142等からの信号に基づいて演算を行う。そして、演算部152は、演算結果に基づき、ナビゲーション装置20、通信装置28、駆動ECU122、制動ECU132及びEPS ECU142に対する信号を生成する。
【0047】
図1に示すように、走行ECU38の演算部152は、周辺認識部170と、加減速制御部172と、RDM制御部174と、回避制御部176と、調停部178とを有する。これらの各部は、記憶部154に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。前記プログラムは、通信装置28を介して外部機器から供給されてもよい。前記プログラムの一部をハードウェア(回路部品)で構成することもできる。RDM制御部174及び回避制御部176は、自車10の旋回を制御する旋回制御部180を構成する。
【0048】
周辺認識部170(走行レーン検出部)は、車両周辺センサ群22からの車両周辺情報Icに基づいてレーンマーク(
図6のレーンマーク302a、302b等)及び周辺障害物(先行車両等)を認識する。例えば、レーンマークは、画像情報Iimageに基づいて認識する。周辺認識部170は、認識したレーンマークに基づいて車両10の走行レーン(
図6の走行レーン300等)を認識する。
【0049】
また、周辺認識部170は、画像情報Iimage及びレーダ情報Iraderを用いて周辺障害物を認識する。周辺障害物には、他車等の移動物体と、建物、標識等の静止物体とが含まれる。
【0050】
加減速制御部172は、オートクルーズ制御(ACC)を実行する。ACCは、自動でクルーズ(定速走行)を行う制御である。具体的には、自車10の走行レーン300(
図6)に先行車両が存在しない場合、予め設定された目標車速Vacctar(固定値)で車両10を走行させる。また、自車10の走行レーン300に先行車両が存在する場合、先行車両との間隔を維持するように車両10を走行させる。ここでの間隔は、例えば、接触余裕時間(TTC:Time to collision)[sec]又は距離[m]とすることができる。ACCでは、先行車両のみならず、後続車両との間隔を調整するように車両10を走行させてもよい。
【0051】
RDM制御部174(逸脱抑制部)は、路外逸脱抑制(RDM)制御を実行する。RDM制御は、車両10が走行レーン300(
図6)から逸脱することを抑制する制御である。ここにいう逸脱は、実際に発生した逸脱のみならず、将来的な逸脱を含ませることができる。
【0052】
回避制御部176は、障害物回避制御を実行する。障害物回避制御は、自車10の進路上に存在する障害物を回避する回避処理を行う。ここにいう障害物は、走行中の周辺車両、歩行者等の移動物体と、ガードレール、駐車中の周辺車両等の静止物体の両方を含み得る。障害物の検出は、車外カメラ50及びレーダ52を用いて行う。回避制御部176は、例えば、障害物との接触余裕時間(TTC)が所定のTTC閾値以下となった場合、当該障害物を回避する回避処理を行う。
【0053】
回避処理では、例えば、HMI30を介しての乗員への報知、駆動力制御システム32及び/又は制動力制御システム34を介しての車両10の減速、EPSシステム36を介しての操舵アシストの少なくとも1つを行う。
【0054】
調停部178は、加減速制御部172によるACCと、RDM制御部174によるRDM制御を調停する。特に、RDM制御によるRDM処理を行っている場合と行っていない場合とで、ACCの内容を変更させる(詳細は、
図2及び
図3を参照して後述する。)。後述するように、調停部178は、加減速制御部172によるACCと、回避制御部176による障害物回避制御を調停してもよい。
【0055】
(A−1−11−4.記憶部154)
記憶部154は、演算部152が利用するプログラム及びデータを記憶する。記憶部154は、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(以下「RAM」という。)を備える。RAMとしては、レジスタ等の揮発性メモリと、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを用いることができる。また、記憶部154は、RAMに加え、リード・オンリー・メモリ(以下「ROM」という。)を有してもよい。
【0056】
<A−2.本実施形態の各種制御>
[A−2−1.各種制御の概要]
上記のように、本実施形態の走行ECU38は、ACCとRDM制御を実行する。その際、走行ECU38は、ACCとRDM制御とを調停する。
【0057】
[A−2−2.オートクルーズ制御(ACC)]
上記のように、ACCは、自動でクルーズ(定速走行)を行う制御である。具体的には、自車10の走行レーン300(
図6)に先行車両が存在しない場合、予め設定された目標車速Vacctar(固定値)で車両10を走行させる。また、自車10の走行レーン300に先行車両が存在する場合、先行車両との間隔を維持するように車両10を走行させる。ACCでは、先行車両のみならず、後続車両との間隔を調整するように車両10を走行させてもよい。
【0058】
[A−2−3.RDM制御]
上記のように、RDM制御は、車両10が走行レーン300(
図6)から逸脱することを抑制する制御である。ここにいう逸脱は、実際に発生した逸脱のみならず、将来的な逸脱を含ませることができる。本実施形態におけるRDM処理には、逸脱の可能性を通知する警報と、自動ブレーキとが含まれる。後述するように、RDM処理には、自動ステアリングを含めてもよい。
【0059】
[A−2−4.ACCとRDM制御の調停]
(A−2−4−1.調停の概要)
図2は、本実施形態におけるACCの内容をRDM制御との関係で示す状態遷移図である。
図3は、本実施形態におけるACCとRDM制御との調停を示すフローチャートである。
【0060】
図2に示すように、ACCの状態としては、大きく分けて、RDM処理を行っていない状態ST1(非RDM処理時の状態)と、RDM処理を行っている状態ST2(RDM処理時の状態)とがある。さらに、状態ST1には、通常のACCを行う状態ST11(通常ACCの状態)と、RDM処理に伴うブレーキ作動後の復帰処理を行う状態ST12(ブレーキ作動後復帰処理時の状態)とが含まれる。さらにまた、状態ST12には、復帰処理時の加速抑制(加速制限)を弱める状態ST111(制限:弱の状態)と、復帰処理時の加速抑制を強める状態ST112(制限:強の状態)とが含まれる。
【0061】
図3のステップS11において、走行ECU38は、ACCを実行中であるか否かを判定する。当該判定は、例えば、ACCスイッチ110がオンであるか否かにより行う。ACCを実行中である場合(S11:YES)、ステップS12に進む(
図2の状態ST1)。ACCを実行中でない場合(S11:NO)、ステップS11を繰り返す。
【0062】
ステップS12において、ECU38は、逸脱の可能性が第1段階に到達したか否かを判定する。ここでの第1段階は、逸脱の可能性があるため、警報を行う段階である。逸脱の可能性が第1段階に到達したか否かの判定は、例えば、車両10の基準位置Prefと最寄りのレーンマーク302aまでの距離D[m]が第1距離閾値THd1以下であるか否かを判定することにより行う。
【0063】
基準位置Prefは、最寄りのレーンマーク(
図6の例では、レーンマーク302a)に対しての距離Dを算出するための車両10の一部であり、例えば、左側のレーンマーク302aに対しては、車両10の左先端である。右側のレーンマーク302bに対しては、車両10の右先端である。
【0064】
第1距離閾値THd1(以下「閾値THd1」ともいう。)は、将来的な逸脱の可能性を判定する閾値である。車両10の基準位置Prefとレーンマーク302aとの相対的な位置関係が同じであっても、車両10がレーンマーク302aを逸脱するか否かは、その時点での車速V、車両10(又は車体)の向き、横加速度Glat、ヨーレートYr及び舵角θstによって変化する。このため、閾値THd1は、車速V、レーンマーク302aに対する車両10の角度A、横加速度Glat、ヨーレートYr及び舵角θstの少なくとも1つに応じて可変としてもよい。
【0065】
逸脱の可能性が第1段階に到達した場合(S12:YES)、ステップS13(
図2の状態ST2)に進む。逸脱の可能性が第1段階に到達していない場合(S12:NO)、ステップS11に戻る。
【0066】
ステップS13において、ECU38のRDM制御部174は、RDM処理(逸脱抑制処理)として警報を発する。ここでの警報として、ECU38は、表示部112に警報を表示させると共に、振動付与装置114に振動を生成させる。これに加えて又はこれに代えて、図示しないスピーカを介して警報音を出力してもよい。
【0067】
ステップS14において、ECU38の調停部178は、加減速制御部172に対してACCの制限を指令する(
図2の状態ST2)。これを受けた加減速制御部172は、走行駆動力Fdの生成を制限する。ここでの走行駆動力Fdの制限により、エンジンブレーキが作動する。従って、車速VがACCの目標車速Vacctarを下回っていても、ACCによる加速を行わない。なお、この時点において、ACCによる制動力Fbの生成は制限しない。但し、ステップS14の段階で、後述する自動ブレーキ(S16)を作動させてもよい。また、運転者がアクセルペダル90を踏み込んだ場合、車両10の加速は可能である(この場合、直ちに通常のACC(S25)に戻る。)。
【0068】
ステップS15において、ECU38は、逸脱の可能性が第2段階に到達したか否かを判定する。ここでの第2段階は、逸脱が発生したため又は逸脱が発生しそうであるため、自動ブレーキを作動させる段階である。逸脱の可能性が第2段階に到達したか否かの判定は、例えば、車両10の基準位置Prefと最寄りのレーンマークまでの距離Dが第2距離閾値THd2以下であるか否かを判定することにより行う。第2距離閾値THd2(以下「閾値THd2」ともいう。)は、逸脱が発生したこと又は逸脱が発生しそうであることを判定する閾値である。第1距離閾値THd1と同様、第2距離閾値THd2は、車速V、レーンマーク302aに対する車両10の角度A、横加速度Glat、ヨーレートYr及び舵角θstの少なくとも1つに応じて可変としてもよい。
【0069】
逸脱の可能性が第2段階に到達した場合(S15:YES)、ステップS16に進む。逸脱の可能性が第2段階に到達していない場合(S15:NO)、ステップS17に進む。
【0070】
ステップS16において、走行ECU38は、自動ブレーキを作動させる。具体的には、走行ECU38は、制動ECU132に対してブレーキ機構130による自動ブレーキの作動を指令する。当該指令を受けた制動ECU132は、ブレーキ機構130を作動させる。
【0071】
ステップS17において、ECU38は、運転者による運転操作の有無を監視する。ここにいう運転操作は、アクセルペダル90、ブレーキペダル92及びステアリングハンドル94の操作を指す。ECU38は、これらの操作を、APセンサ80、BPセンサ82、舵角センサ84及び操舵トルクセンサ86の出力に基づいて判定する。
【0072】
ステップS18において、ECU38は、車両10が走行レーン300に復帰したか(又は戻ったか)否かを判定する。走行レーン300に復帰した場合(S18:YES)、ステップS19に進む。走行レーン300に復帰していない場合(S18:NO)、ステップS15に戻る。
【0073】
ステップS19において、ECU38は、RDM処理(逸脱抑制処理)を終了する。例えば、ECU38は、自動ブレーキの作動(S16)を終了する。
【0074】
ステップS20において、ECU38は、RDM処理中にブレーキが作動したか否かを判定する。ここにいうブレーキは、ステップS16における自動ブレーキを指す。或いは、ECU38は、ステップS16における自動ブレーキの作動と、ステップS17で監視している運転者によるブレーキの両方を判定してもよい。RDM処理中にブレーキが作動しなかった場合(S20:NO)、ステップS25に進む(
図2のST2→ST11)。RDM処理中にブレーキが作動した場合(S20:YES)、ステップS21に進む。
【0075】
ステップS21において、ECU38は、RDM処理中に運転者の操作があったか否かを判定する。ここにいう運転者の操作は、アクセルペダル90、ブレーキペダル92及びステアリングハンドル94の操作(運転操作)を指す。RDM処理中に運転者の操作があった場合(S21:YES)、ステップS23に進む。RDM処理中に運転者操作がなかった場合(S21:NO)、ステップS22に進む。
【0076】
ステップS22において、ECU38は、RDM処理中のブレーキ作動時間Tbrk[sec]が長かったか否かを判定する。具体的には、ブレーキ作動時間Tbrkが、時間閾値THtbrk以上であるか否かを判定する。ブレーキ作動時間Tbrkは、ここにいうブレーキは、ステップS16における自動ブレーキを指す。或いは、ECU38は、ステップS16における自動ブレーキの非作動と、ステップS17で監視している運転者によるブレーキの両方を判定してもよい。
【0077】
ステップS21:YES又はステップS22:NOの場合、ステップS23において、ECU38は、車両10の加速に対して弱い制限を伴う復帰処理(第1復帰処理)を実行する(
図2のST2→ST111)。第1復帰処理については、
図4を参照して後述する。
【0078】
ステップS22:YESの場合、ステップS24において、ECU38は、車両10の加速に対して強い制限を伴う復帰処理(第2復帰処理)を実行する(
図2のST2→ST112)。第2復帰処理については、
図4を参照して後述する。なお、ステップS23又はS24において、運転者が加速操作(アクセルペダル90の踏込み)を行った場合、その時点で復帰処理が解除されて通常のACC(S25)に移行する(
図2のST12→ST11)。
【0079】
ステップS20:NOの場合又はステップS23若しくはS24の後、ステップS25において、ECU38は、通常のACCを実行する(
図2のST2→ST11、若しくはST2→ST111→ST11又はST2→ST112→ST11)。ここにいう「通常」とは、RDM処理の実行に伴うACCの制限(第1・第2復帰処理を含む。)を伴わないという意味である。
【0080】
(A−2−4−2.復帰処理)
上記のように、本実施形態では、RDM処理を終了(
図3のS19)した後、そのまま通常ACCに戻る場合(S20:NO→S25)と、第1復帰処理を行う場合(S20:YES→S21:YES又はS20:YES→S21:NO→S22:NO)と、第2復帰処理を行う場合(S20:YES→S21:NO→S22:YES)とがある。
【0081】
また、第1復帰処理(
図2の状態ST111)は、車両10の加速に対して弱い制限を伴って通常ACCに復帰する処理である。第2復帰処理(
図2の状態ST112)は、車両10の加速に対して強い制限を伴って通常ACCに復帰する処理である。
【0082】
図4は、本実施形態における第1・第2復帰処理を説明するための図である。
図4において、横軸は時間[sec]を示し、縦軸は、RDM処理の作動又は非作動と、要求駆動力Fdreqを示す。要求駆動力Fdreqは、ACCによる車両10の走行駆動力Fdの要求値である。ECU38は、要求駆動力Fdreqに基づいてエンジン120の出力を制御する。具体的には、走行ECU38は、要求駆動力Fdreqを駆動ECU122に指令し、駆動ECU122は、要求駆動力Fdreqに応じてエンジン120の出力を制御する。
図4中のFdacctarは、目標車速Vacctarに対応する要求駆動力Fdreqである。
【0083】
図4の破線が第1復帰処理の場合を示し、実線が第2復帰処理の場合を示す。第1復帰処理における要求駆動力Fdreqの時間微分値(
図4における傾き)は、第2復帰処理における要求駆動力Fdreqの時間微分値(
図4における傾き)よりも大きい。このことは、第1復帰処理では、車両10の加速の制限が相対的に弱く、第2復帰処理では、車両10の加速の制限が相対的に強いことを意味する。換言すると、第1復帰処理では、単位時間当たりの緩和量が相対的に大きく、第2復帰処理では、単位時間当たりの緩和量が相対的に小さい。
【0084】
なお、上記のように、RDM処理を終了(
図3のS19)した後、そのまま通常ACCに戻る場合(S20:NO→S25)は、ブレーキが作動していない場合である。このため、その場合、車速VはACCの目標車速Vacctarとほとんど乖離していない。従って、RDM処理を終了(
図3のS19)した後、そのまま通常ACCに戻る場合(S20:NO→S25)、車速Vが目標車速Vacctarに到達するまでの時間は比較的短い。
【0085】
これに対し、第1復帰処理及び第2復帰処理の場合、ブレーキが作動している(
図3のS20参照)。このため、その場合、車速VはACCの目標車速Vacctarと比較的乖離している。従って、RDM処理を終了(
図3のS19)した後、第1復帰処理又は第2復帰処理を得て通常ACCに戻る場合、車速Vが目標車速Vacctarに到達するまでの時間は比較的長い。
【0086】
この点を考慮して、第1復帰処理(弱い制限)の場合、そのまま通常ACCに戻る場合と比較して、要求駆動力Fdreqの時間微分値(
図4における傾き)を大きくする。或いは、第1復帰処理(弱い制限)の場合、そのまま通常ACCに戻る場合と比較して、要求駆動力Fdreqの時間微分値を同等又は小さくしてもよい。
【0087】
また、第2復帰処理(強い制限)の場合、そのまま通常ACCに戻る場合と比較して、要求駆動力Fdreqの時間微分値(
図4における傾き)を小さくする。或いは、第2復帰処理(弱い制限)の場合、第1復帰処理よりも制限が弱ければ、そのまま通常ACCに戻る場合と比較して、要求駆動力Fdreqの時間微分値を同等又は大きくしてもよい。
【0088】
(A−2−4−3.加速の制限を分ける理由)
次に、本実施形態において、車両10の加速に対する制限を弱くする場合(第1復帰処理)と強くする場合(第2復帰処理)に分ける理由(特に第2復帰処理を設ける理由)について説明する。第1復帰処理に加えて、第2復帰処理を設ける理由は、走行ECU38が、レーンマーク302aを誤検出する可能性を考慮したものである。
【0089】
すなわち、本実施形態では、車両10の操舵を運転者が行う。仮に、走行ECU38がレーンマーク(
図6のレーンマーク302a、302b等)を誤検出した場合、運転者は、正しい走行レーン(
図6の走行レーン300等)を走行するように操舵する。その場合、ECU38は、車両10がレーンマーク(誤検出したもの)を逸脱すると判定する。そして、ECU38は、RDMにより警報(
図3のS13)や自動ブレーキ(S16)の作動を行うこととなる。
【0090】
仮に、警報又は自動ブレーキの作動に伴ってACCをオフにし、ACCを再開するためには運転者の操作を要することとすると、上記のような誤検出が発生した場合に運転者の利便性を損なう可能性がある。
【0091】
そこで、本実施形態では、ブレーキ作動時間Tbrkが長い場合(
図3のS22:YES)、加速の制限を強めること(S24)で、安全性と運転者の利便性の両立を図っている。
【0092】
(A−2−4−4.本実施形態と比較例の比較)
次に、本実施形態を比較例と比較した場合について説明する。ここでの比較例では、RDM処理の作動中、ACCによる走行駆動力Fdの生成を制限し、RDM処理後は直ちに通常のACCに復帰する。
【0093】
図5は、車両10がカーブ路300を走行する際、比較例に係るACC及びRDM制御を用いた場合の車両10の動きを示す図である。
図5では、カーブ路300が車両10の走行レーンを形成する。このため、カーブ路300を走行レーン300ともいう。走行レーン300は、レーンマーク302a、302bにより特定される。
図6も同様である。
【0094】
なお、
図5では、単一の走行レーン300のみが示されている。カーブ路300が片側1車線の道路である場合(レーンが2本ある場合)、走行レーン300は、左端のレーンマークとセンターラインのレーンマークとで特定されることとなる。
図6も同様である。
【0095】
比較例では、車両10がカーブ路300の入り口付近の地点P11に至っても運転者が旋回操作を開始せず、地点P12に至る前に警報(
図2のS13)が発せられた後、自動ブレーキ(S16)が作動した。これに伴って、運転者が操舵したものの、車両10が走行レーン300から逸脱した。その後、車両10が走行レーン300に戻る途中の地点P13では、自動ブレーキが続いている。
【0096】
地点P14において、車両10が走行レーン300に戻ると、RDM処理が終了して通常のACCに戻る。これに伴い、車速Vを目標車速Vacctarに到達させるために、比較例に係る走行ECU38は、車両10を加速させる。本実施形態と異なり、ここでの加速には制限がない。その結果、車両10が加速し過ぎて、RDM処理(S13、S16)を実行したにもかかわらず走行レーン300を再度逸脱した(地点P15)。その後、車両10が走行レーン300に戻る途中の地点P16では、自動ブレーキが続いている。
【0097】
地点P17において、車両10が走行レーン300に戻ると共にカーブ路300を抜けると、RDM処理が終了して通常のACCに戻る。これに伴い、車速Vを目標車速Vacctarに到達させるため、比較例に係る走行ECU38は、車両10を加速させる。
【0098】
図6は、車両10がカーブ路300を走行する際、本実施形態に係るACC及びRDM制御を用いた場合の車両10の動きを示す図である。本実施形態では、車両10がカーブ路300の入り口付近の地点P21に至っても運転者が旋回操作を開始せず、地点P22に至る前に警報(
図2のS13)が発せられた後、自動ブレーキ(
図2のS16)が作動した。これに伴って、運転者が操舵したものの、車両10が走行レーン300から逸脱した。その後、車両10が走行レーン300に戻る途中の地点P23では、自動ブレーキが続いている。ここまでは、比較例と同じである。
【0099】
地点P24において、車両10が走行レーン300に戻ると、RDM処理が終了して復帰処理(ここでは第1復帰処理)を行う。第1復帰処理では、比較的弱い制限により車両10を加速させる(
図4)。その後の地点P25、P26、P27では、車両10が走行レーン300を逸脱することなく、カーブ路300を抜けて、通常のACCに戻る。
【0100】
従って、本実施形態では、比較例よりも円滑に車両10がカーブ路300を旋回することが可能となる。
【0101】
<A−3.本実施形態の効果>
以上のように、本実施形態によれば、RDM処理(逸脱抑制処理)が開始されると(
図2の状態ST1→ST2、
図3のS13)、自車10の加速を制限する(
図3のS14)ことで、自車10の加速よりもRDM処理を優先する。このため、RDM処理の間における自車10の安定性を向上すること、又はRDM処理の直後における新たなRDM処理の必要性を下げることが可能となる。
【0102】
本実施形態において、RDM処理(逸脱抑制処理)が終了又は中断されると(
図2のST2→ST1、
図3のS19)、ECU38の加減速制御部172は、加速の制限を緩和する(
図2のST12、
図3のS23、S24)。これにより、RDM処理の後は、通常のACC制御(加減速制御)を早期に再開することが可能となる。
【0103】
本実施形態において、加減速制御部172は、RDM制御(逸脱抑制処理)の内容に応じて、加速の制限の緩和方法を変更する(
図2のST2→ST11、ST111又はST112、
図3のS20〜S25)。これにより、RDM処理の内容に応じて、加速の制限を好適に緩和することが可能となる。
【0104】
本実施形態において、RDM処理(逸脱抑制処理)は、将来的な又は実際の逸脱を抑制するための自動ブレーキを含む(
図3のS16)。また、RDM処理の間に自動ブレーキが実行された場合、加減速制御部172は、自動ブレーキの作動履歴(作動の有無(
図3のS20)及び作動時間Tbrk(S22))に応じて、加速の制限の緩和方法を変更する(
図3のS20〜S24)。これにより、自動ブレーキの作動履歴に応じて、加速の制限を好適に緩和することが可能となる。
【0105】
本実施形態において、走行ECU38(走行制御装置)は、運転者による運転操作の有無を検出するAPセンサ80、BPセンサ82、舵角センサ84及び操舵トルクセンサ86(操作検出センサ)を備える(
図1)。また、加減速制御部172は、RDM処理(逸脱抑制処理)の間における運転操作の有無に応じて、加速の制限の緩和方法を変更する(
図3のS21、S23、S24)。RDM処理の間における運転操作の有無は、運転に対する運転者の集中度合いを示すと考えることができる。このため、運転者の集中度合いに応じて、加速の制限を好適に緩和することが可能となる。
【0106】
本実施形態において、RDM処理(逸脱抑制処理)の間に自動ブレーキが実行され(
図3のS20:YES)且つ運転操作が行われなかった場合(S21:NO)、加減速制御部172は、RDM処理における自動ブレーキの作動時間Tbrkに応じて、加速の制限の緩和方法を変更する(S22〜S24)。RDM処理における自動ブレーキの作動時間Tbrkは、将来的な又は実際の逸脱抑制の必要性の程度を示すと考えることができる。このため、将来的な又は実際の逸脱抑制の必要性の程度に応じて、加速の制限を好適に緩和することが可能となる。
【0107】
本実施形態において、加速の制限の緩和方法の変更は、単位時間当たりの緩和量の変更である(
図4)。これにより、通常のACC(加減速制御)への復帰時間を調整することで、加速の制限を好適に緩和することが可能となる。
【0108】
本実施形態において、RDM処理(逸脱抑制処理)の間に運転操作が行われなかった場合(
図3のS21:NO→S24)と比較して、RDM処理の間に自動ブレーキが実行され(S20:YES)且つ運転操作が行われた場合(S21:YES)には、加減速制御部172は、単位時間当たりの緩和量を増加させる(S23、
図4)。これにより、運転者の運転操作の有無と自動ブレーキの有無に対応させて、加速の制限を好適に緩和することが可能となる。
【0109】
本実施形態において、RDM処理(逸脱抑制処理)の間に自動ブレーキが実行された場合(
図3の20:YES)と比較して、RDM処理の間に自動ブレーキが実行されない場合(S20:NO)には、加減速制御部172は、単位時間当たりの緩和量を増加させてもよい。これにより、自動ブレーキが実行されない場合には、車速Vを目標速度Vacctarに速やかに到達させることが可能となる。
【0110】
本実施形態において、加減速制御部172は、自車10の加速を制限する際、エンジンブレーキを作動させる(
図3のS14)。換言すると、加減速制御部172は、自車10の加速を制限する際、自車10を減速させる減速制御を行う。これにより、加速の制限に際して、減速を行うことで、RDM処理(逸脱抑制処理)をより好適に実施することが可能となる。
【0111】
B.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0112】
<B−1.適用対象>
上記実施形態では、走行ECU38(走行制御装置)を自動車(car)としての車両10(vehicle)に用いることを想定していた(
図1)。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、車両10(又は乗り物)は、船舶、航空機等の移動物体であってもよい。或いは、車両10は、その他の装置(例えば、各種の製造装置、ロボット)に用いることもできる。
【0113】
<B−2.車両10の構成>
[B−2−1.ナビゲーション装置20]
上記実施形態では、車両10の現在位置PcurをGPSセンサ40により取得した(
図1)。しかしながら、例えば、車両10の現在位置Pcurを取得する観点からすれば、これに限らない。例えば、ナビゲーション装置20(又は車両10)は、自車10の周辺車両又は道路脇の固定機器(ビーコン等)から現在位置Pcurを取得してもよい。
【0114】
[B−2−2.センサ群22、24、26]
上記実施形態の車両周辺センサ群22には、複数の車外カメラ50と、複数のレーダ52とが含まれた(
図1)。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。
【0115】
例えば、複数の車外カメラ50に、車両10の前方を検出するステレオカメラが含まれる場合、レーダ52を省略することも可能である。或いは、車外カメラ50及びレーダ52に加え又はこれらに代えて、LIDAR(Light Detection And Ranging)を用いてもよい。LIDARは、車両10の全方位にレーザーを連続的に発射し、その反射波に基づいて反射点の三次元位置を測定して三次元情報Ilidarとして出力する。
【0116】
上記実施形態の車体挙動センサ群24には、車速センサ60、横加速度センサ62及びヨーレートセンサ64が含まれた(
図1)。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、横加速度センサ62及びヨーレートセンサ64のいずれか1つ又は複数を省略することも可能である。
【0117】
上記実施形態の運転操作センサ群26には、APセンサ80、BPセンサ82、舵角センサ84及び操舵トルクセンサ86が含まれた(
図1)。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、APセンサ80、BPセンサ82、舵角センサ84及び操舵トルクセンサ86のいずれか1つ又は複数を省略することも可能である。
【0118】
[B−2−3.アクチュエータ]
上記実施形態では、ACC及びRDM制御で対象となるアクチュエータとして、エンジン120及びブレーキ機構130を用いた(
図1)。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、エンジン120及びブレーキ機構130に加えてEPSモータ140を対象アクチュエータとしてもよい。
【0119】
ACCにおいてEPSモータ140を用いる場合としては、例えば、ACCにレーン維持アシスト制御(LKAS制御)を組み合わせる場合がある。また、RDM制御においてEPSモータ140を用いる場合としては、自動ブレーキ(
図3のS16)に加え、逸脱を抑制するための自動操舵(又は自動旋回)を行う場合がある。ここにいう自動操舵は、逸脱が発生した場合に走行レーン300に復帰するための操舵のみならず、逸脱が発生しないように行う操舵であってもよい。なお、車両10の操舵(又は旋回)は、EPSモータ140の代わりに、左右の車輪のトルク差(いわゆるトルクベクタリング)を用いることも可能である。
【0120】
<B−3.走行ECU38の制御>
上記実施形態では、自車10の走行レーン300に先行車両が存在する場合、自動的に間隔を調整するACCを用いた(
図2等)。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、先行車両との間隔については運転者が加減速操作を行うクルーズ制御(CC)にも本発明を適用可能である。
【0121】
上記実施形態では、車両10の加速及び減速については運転者の運転操作を要さず、車両10の旋回(又は操舵)については運転者の運転操作を要する自動運転としてのACCについて説明した(
図2)。換言すると、上記実施形態のACCは、運転者の運転操作を補助する自動運転であった。
【0122】
しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、車両10の加速、減速のみならず、車両10の旋回についても自動で行う自動運転に本発明を適用することも可能である。換言すると、運転者の運転操作を要さずに走行可能な自動運転に本発明を適用することが可能である。
【0123】
上記実施形態では、ACCの制限(
図3のS14)として、エンジンブレーキの作動を行った。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、
図3のステップS14の段階で、自動ブレーキを作動させてもよい。なお、車両10が走行モータを有する場合、走行モータの回生を行うことも可能である。或いは、ACCの制限として、それまでの目標車速Vacctarを減少させることも可能である。
【0124】
上記実施形態では、ACCスイッチ110を用いてACCの目標車速Vacctarを設定した。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、目標車速Vacctarは、現在位置Pcurに対応して地
図DB42から読み出した車速(法定制限速度等)とすることも可能である。或いは、ECU38は、先行車両と自車10との間隔に基づいて目標車速Vacctarを設定することも可能である。
【0125】
上記実施形態のRDM制御では、レーンマーク(
図6のレーンマーク302a、302b等)を基準として、走行レーン(
図6の走行レーン300等)の逸脱抑制を行った(
図3のS12、S15)。しかしながら、例えば、走行レーンに対する自車10の将来的な又は実際の逸脱を抑制する観点からすれば、これに限らない。例えば、レーンマークに加え又はこれに代えて、歩行者を基準として、走行レーンの逸脱抑制を行うことも可能である。例えば、歩行者がレーンマークを超えて車道側に入って来ている場合、歩行者を避けるように走行レーンを設定する。そして、この走行レーンからの逸脱を抑制するように制御することができる。
【0126】
上記実施形態では、第1復帰処理(
図3のS23)及び第2復帰処理(S24)を区別する条件として、RDM処理中のブレーキ作動時間Tbrkを用いた(S22)。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、ブレーキ作動時間Tbrkに加えて又はこれに代えて、自動ブレーキの作動回数により、第1復帰処理(
図3のS23)及び第2復帰処理(S24)を区別することも可能である。
【0127】
上記実施形態では、RDM処理の終了後に直接、通常ACCに戻る場合(
図3のS20:NO→S25)のみならず、第1復帰処理(S23)及び第2復帰処理(S24)を介して通常ACCに戻る場合について説明した。しかしながら、例えば、RDM処理(又は一時的な若しくは継続的な旋回制御)が開始されると、自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、第1復帰処理又は第2復帰処理の一方のみを用いることも可能である。また、その他の方法により通常ACCに復帰することも可能である。
【0128】
図7は、変形例におけるACCとRDM制御との調停を示すフローチャートである。
図7の例では、RDM処理の終了後に運転者の運転操作が行われるまで、加速の制限を継続する場合がある。
【0129】
図7のステップS31において、
図3のステップS11〜S18を実行する。換言すると、ステップS31に
図3のステップS11〜S18を当てはめる。ステップS32〜S35、S39、S40は、
図3のステップS19〜S22、S23、S25と同様である。
【0130】
図7のステップS35において、RDM処理中のブレーキ作動時間Tbrkが長かった場合(S35:YES)、ステップS36に進む。RDM処理中のブレーキ作動時間Tbrkが長くなかった場合(S35:NO)、ステップS39に進む。
【0131】
ステップS36において、ECU38は、HMI30を介して運転者に運転操作を要求する。ここでの運転操作としては、例えば、アクセルペダル90の踏込み及びステアリングハンドル94の操作の一方を含めることができる。
【0132】
ステップS37において、ECU38は、RDM処理後に(換言すると、ステップS36の要求に基づいて)運転者の運転操作があったか否かを判定する。ここでの運転操作は、運転者による加速操作又は加速意図を示す操作とすることができる。例えば、アクセルペダル90の踏込みを運転操作として用いることができる。或いは、ACCの目標車速Vacctarを増加させるACC SW110の操作をステップS37の運転操作としてもよい。RDM処理後に運転者の運転操作があった場合(S37:YES)、ステップS39に進む。RDM処理後に運転者の運転操作がなかった場合(S37:NO)、ステップS38に進む。
【0133】
ステップS38において、ECU38は、ACCの目標車速Vacctarよりも低い値に車速Vを制限する(車速Vが当該低い値に到達するまでは第2復帰処理を行う。)。ステップS38の後、ステップS36に戻る。
【0134】
ステップS34:YES、ステップS35:NO又はステップS37:YESの場合、ステップS39において、ECU38は、第1復帰処理を行う。
【0135】
図7の変形例によれば、ECU38(走行制御装置)は、運転者による運転操作の有無を検出するアクセルペダル90、舵角センサ84及び操舵トルクセンサ86(操作検出センサ)を備える(
図1)。また、加減速制御部172は、RDM処理(逸脱抑制処理)が終了又は中断された後(
図7のS32)、運転操作が検出されるまで(S37:YESとなるまで)、加速の制限を継続し(S38)、運転操作が検出されると(S37:YES)、加速の制限を緩和する(S39)。これにより、運転者が運転に集中するまでは、車両10の加速を制限し続けることで、運転者に対して注意喚起をすることが可能となる。
【0136】
図7の変形例によれば、ステップS37における運転操作は、運転者による加速操作又は加速意図を示す操作である。これにより、運転者の加速意思を確認した上で加速を行うことが可能となる。
【0137】
上記実施形態では、走行駆動力Fdの要求値としての要求駆動力Fdreqを用いて第1復帰処理及び第2復帰処理を行った(
図4)。しかしながら、例えば、車両10の加速の制限度合いを異ならせる観点からすれば、これに限らない。例えば、第1復帰処理及び第2復帰処理では、車両10の前後加速度[m/s/s]の制限を相違させることも可能である。
【0138】
上記実施形態では、加減速制御部172によるACCと、RDM制御部174によるRDM制御を調停した(
図2等)。しかしながら、例えば、自車10の旋回を一時的に又は継続的に自動で制御した際において自車10の加速を制限する観点からすれば、これに限らない。例えば、
図3と同様の制御で、加減速制御部172によるACCと、回避制御部176による回避制御を調停することも可能である。
【0139】
その場合、例えば、
図3のステップS12では、ECU38は、例えば接触可能性が第1可能性閾値以下であるか否か(例えばTTCが第1TTC閾値以下であるか否か)を判定する。接触可能性が第1可能性閾値以下である場合、ステップS13において、ECU38は、回避処理として警報を発する。続くステップS14において、ECU38は、ACCを制限する。ステップS15では、例えば接触可能性が第2可能性閾値以下であるか否か(例えばTTCが第2TTC閾値以下であるか否か)を判定する。接触可能性が第2可能性閾値以下である場合、ステップS16において、ECU38は、自動ブレーキを作動させる。ステップS17は、上記実施形態と同様である。
【0140】
ステップS18において、ECU38は、例えば接触可能性が第3可能性閾値以上であるか否か(例えばTTCが第3TTC閾値以上であるか否か)を判定する。
図3のステップS19〜S25は、RDM処理を回避処理に置き換える点を除き、上記実施形態と同様である。
【0141】
<B−4.その他>
上記実施形態では、数値の比較において等号を含む場合と含まない場合とが存在した(
図3のS22等)。しかしながら、例えば、等号を含む又は等号を外す特別な意味がなければ(換言すると、本発明の効果を得られる場合)、数値の比較において等号を含ませるか或いは含ませないかは任意に設定可能である。
【0142】
その意味において、例えば、
図3のステップS22におけるブレーキ作動時間Tbrkが時間閾値THtbrk以上であるか否かの判定(Tbrk≧THtbrk)を、ブレーキ作動時間Tbrkが時間閾値THtbrkより大きいか否かの判定(Tbrk>THtbrk)に置き換えることができる。