【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明により、請求項1の上位概念から出発して、請求項1の特徴部に記載された特徴によって解決される。
【0010】
本発明方法を用いて、>99%のエナンチオマー純度および70%のジアステレオマー純度を有するカチンを、97%までの有利な形態で製造することができる。これは90%の変換率を達成しうる。その際、市販で得られる原料を使用することができる。この方法は、数少ない後処理段階で済み、容易にスケールアップでき、かつワンポット反応として実施することができる。
【0011】
本発明の有利な更なる形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
次に、本発明を、その一般式で記載する。
【0013】
本発明の意味における(S)−選択的酵素とは、(S)−配置生成物をもたらす酵素である。
【0014】
第1の反応段階で、ベンズアルデヒドと、式(1)
【0015】
【化1】
のアセチル供与体とを、(S)−選択的リアーゼを用いて、in vitroで反応させて、式(2)および(3)
【0016】
【化2】
の化合物のエナンチオマー混合物にするが、式中、略語PACはフェニルアセチルカルビノールを表わす。
【0017】
ここで、式(1)のアセチル供与体として、R=Hであるアセトアルデヒド、またはR=COOHであるピルビン酸が挙げられる。
【0018】
この反応経路を、
図1に例示する。
【0019】
リアーゼとして、例えば、アセトバクター(Acetobacter)、特にアセトバクター・パストゥリアヌス(Acetobacter pasteurianus)からの(S)−選択的リアーゼ、特に変種ApPDC−E469Gが挙げられる。
【0020】
好ましくは、精製されかつ凍結乾燥された酵素を使用する。凍結乾燥は、酵素が安定であり、かつ高い酵素濃度を使用できるという利点があり、その上、精製酵素は、明らかにより高い光学純度、すなわち生成物のより高いエナンチオマーおよびジアステレオマー過剰率をもたらす。
【0021】
更に、変換率を上げる、(S)−選択的リアーゼのための補因子を使用することができる。
【0022】
例えば、補因子として、例えば硫酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムとしてのマグネシウムイオンを、チアミン二リン酸と共に使用することができる。
【0023】
補因子として硫酸マグネシウムおよびチアミン二リン酸を使用する場合に、硫酸マグネシウムに関しては1〜5mM、好ましくは2.5mM、およびチアミン二リン酸に関しては5〜300μM、好ましくは100μMの濃度範囲が有利である。
【0024】
反応は、5から8まで、好ましくは6から7.5までのpH値で実施することができる。
【0025】
このために、例えばリン酸カリウム−緩衝剤を使用することができる。しかしながら、HEPES、MOPS、TEAまたはTRIS−HClのような緩衝剤も考慮に値する。
【0026】
有利な温度範囲は室温であるが、反応を20℃から30℃の間、特に25℃で良好に実施することができる。
【0027】
反応を、好ましくは大気圧で実施する。
【0028】
代替的に、酵素反応をin vivoで行うことができる。触媒としての酵素を低コストに製造することができるという利点がある。
【0029】
このために、産生生物(Produktionsorganismen)としてE.coli細菌を使用することができる。
【0030】
その際に、第1の段階でリアーゼをコードする遺伝子を、ベクター中にライゲートする(ligiert)ことができる。
【0031】
好ましくは、E.coli株は、組換型であり、かつ(S)−選択的リアーゼのための遺伝子を保有するプラスミドを含有する。
【0032】
好ましくは、プラスミドは、上記リアーゼのための遺伝子を含んでいてよい。
【0033】
プラスミドとして、例えば、相応するリアーゼ遺伝子を含むpET22bまたはpKK233基準体(Grundkoerper)を使用することができる。
【0034】
産生生物は、式(2)および(3)の所望の生成物を、水溶液中へ分泌する。
【0035】
本発明方法の有利な実施形態において、式(2)
【0036】
【化3】
の不所望な化合物を、ベンズアルデヒドリアーゼを用いて反応させて、ベンズアルデヒドおよびアセトアルデヒドにする。
【0037】
この反応式を、
図2に示す。
【0038】
これには、式(2)の不所望な副生物を分解し、かつ生じるベンズアルデヒドおよびアセトアルデヒドを過程へと戻し、かつ式(3)の所望の生成物の収率を高めるという利点がある。式3の(S)−PACのエナンチオマー過剰率は、合計>97%まで上昇しうる。この段階での使用したPACの総量に対する収率は、95%である。
【0039】
式(2)の化合物の反応の際に、アセチル供与体を、反応過程で、過剰に添加することは有利であり、そうすると、式(3)の所望の中間化合物への更なる反応のために、十分なアセチル供与体を使用することができる。このことは、特に、例えばアセトアルデヒドのような揮発性のアセチル供与体の場合に有利である。例えば、ベンジルアルデヒドに対しては10倍過剰のアセチル供与体を使用することができる。
【0040】
中間体は、好ましくは分離される。このために、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーを、溶離液(Trennfluessigkeit)として石油エーテル:酢酸エチル(90:10)を適用して、使用することができる。
【0041】
第2の反応段階で、こうして得られた式(3)の化合物と、アミン供与体とを、(S)−選択的トランスアミナーゼを用いて反応させて、最終生成物カチン((1S,2S)−ノルプソイドエフェドリン)にする。この反応を
図3に図示する。
【0042】
化学的還元的アミノ化である第2の反応段階のために、基質を反応させかつ(S)−選択的である、トランスアミナーゼを使用することができる。トランスアミナーゼは、クロモバクテリウム(Chromobakterium)、例えばクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobakterium violacaeum)、好ましくはCV2025からのものであってよい。更に、アルカリゲンス・デニトリフィカンス(Alcaligens denitrificans)、アルスロバクター・シトレウス(Arthrobacter citreus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、 シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluoreszens)、ビブリオ・フルリアリス(Vibrio flurialis)またはカウロバクター・クレセントゥス(Caulobacter crescentus)からのトランスアミナーゼを使用することができる。
【0043】
好ましくは、精製されかつ凍結乾燥された酵素を使用する。凍結乾燥は、酵素が安定であり、かつ高い酵素濃度を使用できるという利点があり、その上、精製酵素は、明らかにより高い光学純度、すなわち生成物のより高いエナンチオマーおよびジアステレオマー過剰率をもたらす。
【0044】
アミン供与体として、例えば(S)−アルファ−メチルベンジルアミン、ベンジルアミン、イソプロピルアミン、L−アラニン、(±)−1−メチル−3−フェニルプロピルアミン、(±)−1−アミノインダンを使用することができる。
【0045】
補因子として、ピリドキサール−5’−リン酸を使用することができる。
【0046】
好ましくは、ピリドキサール−5’−リン酸の濃度は、100〜200μMの間である。
【0047】
反応を、水性媒体中で、6から11までのpH値、好ましくはpH7.5から8.5までのpH値で実施することができる。
【0048】
このために、HEPES、リン酸カリウム、MOPS、TEAまたはTRIS−HClのような適当な緩衝剤を使用することができる。
【0049】
有利な温度範囲は、25℃であるが、反応を20℃〜30℃の範囲で良好に実施することができる。
【0050】
好ましくは、反応を大気圧で実施する。
【0051】
代替的に、(S)−選択的トランスアミナーゼを用いる酵素反応をin vivoで行うことができる。
【0052】
このために、産生生物としてE.coli細菌を使用することができる。
【0053】
その際に、トランスアミナーゼをコードする遺伝子を、ベクター中にライゲートすることができる。
【0054】
好ましくは、E.coli株は、組換型であり、かつ(S)−選択的トランスアミナーゼのための遺伝子を保有するプラスミドを含有する。
【0055】
好ましくは、プラスミドは、上記トランスアミナーゼのための遺伝子を含んでいてよい。
【0056】
プラスミドとして、例えば、相応するトランスアミナーゼ遺伝子を含むpET29aまたはpKK233基準体を使用することができる。
【0057】
産生生物は、式(3)の所望の生成物を、水溶液中へ分泌する。
【0058】
本発明方法において、in vivoでの反応は、第1もしくは第2の反応段階のためだけ、または、反応段階1および2双方のためのどちらかに実施することができる。残りの条件は、それぞれの段階に関して、in vitroでの酵素反応と同様に選択することができる。