特許第6427189号(P6427189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427189
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】有機過酸化物を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 407/00 20060101AFI20181112BHJP
   C07C 409/16 20060101ALI20181112BHJP
   C07C 409/18 20060101ALI20181112BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181112BHJP
【FI】
   C07C407/00
   C07C409/16
   C07C409/18
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-532715(P2016-532715)
(86)(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公表番号】特表2016-527299(P2016-527299A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】FR2014051764
(87)【国際公開番号】WO2015018996
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】1357893
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マジ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ユブ, セルジュ
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−023661(JP,A)
【文献】 特開昭53−111024(JP,A)
【文献】 特開昭56−152457(JP,A)
【文献】 特公昭51−018409(JP,B1)
【文献】 特開2001−316358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 407/00
C07C 409/16
C07C 409/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体中で、少なくとも1つの第三級アルコール基を含有する成分を、少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド官能基を含有する化合物と、触媒の存在下で接触させる工程を含む、過酸化物を調製するための方法において、触媒がスルホン酸及び酸を含み、スルホン酸と少なくとも1つの第三級アルコール基を含む前記成分との間のモル比が0.05〜0.8の間であり、酸と少なくとも1つの第三級アルコール基を含む前記成分との間のモル比が0.05〜0.8の間であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
スルホン酸と少なくとも1つの第三級アルコール基を含む前記成分との間のモル比が、0.1〜0.6の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸と少なくとも1つの第三級アルコール基を含む前記成分との間のモル比が、0.1〜0.6の間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
大気圧(±0.2bar)で行われることを特徴とする、請求項1、2及び3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
過酸化物が少なくとも1つの芳香族官能基を含むように、前記成分及び/又は前記化合物が一又は複数の芳香族官能基を含むことを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒドロペルオキシド基を含む前記化合物が、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、1−メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシド及び1−メチルシクロペンチルヒドロペルオキシドから選択されることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヒドロペルオキシド基を含む前記化合物が、2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロペルオキシ−3−ヘキシン及び2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロペルオキシヘキサンから選択されることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
アルコール基を含む前記成分が、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、クミルアルコール、1−メチルシクロヘキサノール及び1−メチルシクロペンタノールから選択されることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
アルコール基を含む前記成分が、α,α’−ジヒドロキシジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシ−3−ヘキシン及び2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシヘキサンから選択されることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
スルホン酸が、アルキル又はアリールスルホン酸、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
試薬間の化学量論過剰率、すなわち少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド基を含む前記化合物と、少なくとも1つの第三級アルコール官能基を含む前記成分との間の化学量論過剰率が、0.01〜1の間であることを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
接触させる工程が、10℃〜60℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
反応媒体中で接触させる前記工程の前に、前記反応媒体なしで、酸をスルホン酸と混合する工程からなる工程を含むことを特徴とする、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
触媒が、スルホン酸及び酸のみからなることを特徴とする、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14の何れか一項に記載の方法を含む有機過酸化物の製造方法であって、有機過酸化物が50ppm未満の含有量の酸を含む、方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの第三級アルコール基を含む化合物と、少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド官能基を含む化合物との間の触媒の存在下での縮合反応によって、第三級アルキル有機過酸化物(ペルオキシド)を調製/生産/製造するための方法に関する。
【0002】
過酸化物(ペルオキシド)の化学構造は、共有単結合によって一緒に結合した2つの酸素分子の存在により特徴付けられる。この構造は、本質的に不安定である。過酸化物は、極めて反応性のフリーラジカルに容易に分解する。
【0003】
有機過酸化物は、化学工業で非常に広く使用され、またプラスチック及びゴム部門でも非常に広く使用される。有機過酸化物は、開始剤として、熱可塑性ポリマーへのモノマーのラジカル重合に関与し、熱硬化性ポリエステル樹脂用硬化剤として、またエラストマー及びポリエチレン用架橋剤として関与する。有機過酸化物は、多くの有機合成において、フリーラジカル源として機能する。
【0004】
本発明の生産/製造方法は、次の一般式を有する有機過酸化物の合成に特に適用される。
式中、R及びRは、置換されていてもよいアルキル又はアリール基(アルキル、アルケニルなど)であり、R〜R10は1〜3個の炭素原子を含むアルキル基であり、これらは一緒に結合して環(シクロペンチル、シクロヘキシルなど)を形成してもよく、Rは置換若しくは無置換のアリール基であり、又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基であり、これは不飽和部(アルケニル又はアルキニル基)を含んでもよい。
【背景技術】
【0005】
酸触媒作用によってアルキル有機過酸化物を合成するために工業上使用される経路の1つは、硫酸のような大量の縮合剤(一又は複数)を必要とする。大量の硫酸の使用は、流出物中に生成される大量の硫酸塩のために、水性相の処理のための高いコストを伴う。
【0006】
この合成方法は、例えば、英国特許第1049989号に開示されている。62.5%硫酸水溶液が触媒として使用され、この硫酸水溶液は調合物の49重量%を占める。
【0007】
更に、高濃度の硫酸を必要とする合成方法は、深刻な工業上のリスクを呈する。酸の濃度が高いほど、温度を低温で厳密に維持しなければならない。反応を制御するために、この種類の方法は、一般に10℃未満の温度条件を必要とする。酸の濃度が高いほど、過酸化物合成は、反応媒体の低温を必要とし、典型的には、5℃以下の低温を必要とする。高収率を得るために、この合成経路は高濃度の酸を必要とするが、この時、必要な冷却に関連するコストは非常に高額となる。
【0008】
冷却に関連するコスト、比較的低い収率の欠点及び流出物中の大量の硫酸塩の製造に加えて、この方法はかなりの量のフェノール型副生成物を製造し、この副生成物は反応器を汚す。したがって、反応器は定期的な洗浄を必要とし、この洗浄は製造を遅らせ、大幅な追加コストを表す。
【0009】
大量の酸がこの合成経路で必要とされる理由は、特に、縮合反応中に形成される水によるものであり、これは、酸性縮合剤の触媒効果を非常に著しく薄める。
【0010】
高濃度の硫酸を含む方法に対する代替の方法は、有機溶媒の存在下で、減圧下の共沸蒸留により、形成される水を除去することにある。したがって、1%未満の量の酸性縮合剤が使用され得る。
【0011】
米国特許第3919326号は、1%未満のパラ−トルエンスルホン酸の存在下で、有機過酸化物を調製するための方法を開示する。縮合反応中に形成される水は、反応が進行するに従い、減圧下の共沸蒸留により、有機溶媒と共に徐々に除去される。
【0012】
この方法は、流出物中に生成される酸の塩の量を制限するが、形成された水を真空下で抜取るための特殊な設備の使用を必要とするので、その使用は制限される。
【0013】
大量の縮合剤を使用せず、又は真空での水の抜取り条件を必要としない方法が提案されており、例えば米国特許第2668180号及び仏国特許第2379518号に開示されている方法が提案されている。
【0014】
米国特許第2668180号は、大気圧において、高温(80−115℃)で、触媒としての比較的少量の酸性縮合剤の存在下で、有機過酸化物を製造するための方法を開示する。使用される酸性縮合剤は、パラ−トルエンスルホン酸、硫酸及び三フッ化ホウ素エーテラートである。得られる過酸化物の収率は不満足なものである。更に、使用される高温は、過酸化物の熱分解副反応を誘起し得る。
【0015】
仏国特許第2379518号は、塩酸及び硝酸などの鉱酸の水溶液の存在下で、有機過酸化物を得るための方法を開示する。このように製造された過酸化物は、反応媒体中で大量に沈殿し、濾過又はデカンテーションにより分離される。
【0016】
これらの方法は満足な収率を与えず、また、合成中における大量の沈殿物の製造は、生産方法を非常に複雑にし、このことは特に、大きな経済性の欠点を伴う。
【0017】
欧州特許第0967194号が更に知られており、これは、触媒としてのスルホン酸の存在下で、40℃より高い温度で、大気圧で過酸化物を得るための方法を開示する。触媒は、任意の発熱を制限するために、1時間にわたって徐々に添加される。2時間の反応後、70%〜80%の最低収率が得られる。
【0018】
前記方法では、使用される溶媒がクメンであり、アルカンでないことに注意すべきである。更に、前記方法は、鉱酸を添加することを想定しておらず、また、縮合反応は比較的遅い。最後に、副反応、例えばアルコールの脱水又はフェノールの形成が相当量発生する。
【0019】
1976年に公開された旧ソ連特許第504762号が知られており、これは、1,4−ビス−[2−(tert−ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼンを、tert−ブチルヒドロペルオキシド及び1,4−ビス−[2−ヒドロキシイソプロピル]ベンゼンの、硫酸及び無水酢酸の存在下での縮合反応によって調製するための方法を開示する。
【0020】
最後に、米国特許第3764628号が知られており、これはビス(アルキルペルオキシアルキル)ベンゼン誘導体を、触媒としての硫酸の存在下で、ビスヒドロキシアルキルベンゼン及び第三級ヒドロペルオキシドの反応により調製するための方法を開示する。
【0021】
したがって、先行技術の欠点を有しない、有機過酸化物を製造するための工業方法を得る大きなニーズがある。
【発明の概要】
【0022】
様々な実験及び操作の後、出願人は、驚くべきことに、当業者によく知られた教示に反して、ある量のスルホン酸及び鉱酸を与えられた割合で同時に使用することが、工業上容易に達成可能な条件下で、反応中終始形成される水を除去する必要なく、有機過酸化物を製造し、同時に高収率を得る反応を行うことを可能にすることを発見した。更に、本発明による方法は、副生成物を何も生成せず、又は無視できる量のみ生成し、特に、この副生成物は、試薬が芳香族の場合、フェノール型のものである(少なくともアルコール官能基を有する成分が芳香族官能基を含み、又はヒドロペルオキシド官能基を含む化合物も芳香族官能基を含む)。これらの副生成物は、所望の生成物の収率を減少させ、最終的な生成物の純度を減少させ、反応器の汚れの原因になり得る(フェノール性副生成物)。
【0023】
したがって、本発明は、反応媒体中で、少なくとも1つの第三級アルコール基を含む成分を、少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド官能基を含む化合物と、触媒の存在下で接触させる工程を含む、過酸化物を調製するための方法において、触媒がスルホン酸及び鉱酸を含み、スルホン酸と少なくとも1つの第三級アルコール基を含む前記成分との間のモル比が0.05〜0.8の間であり、鉱酸と少なくとも1つの第三級アルコール基を含む前記成分との間のモル比が0.05〜0.8の間であることを特徴とする、方法に関する。
【0024】
先行技術文献は、鉱酸及びスルホン酸の混合物を、大気圧で、過酸化物の調製/生産/製造のために使用することを開示していない。更に、一般知識から、安全上の理由のために、当業者は、比較的濃縮された鉱酸、例えば硫酸を含む、室温より高い温度での過酸化物製造方法の使用を考えるようには導かれない。鉱酸及びスルホン酸の混合物は、安全上のリスク(一又は複数)を生成することなく、室温より高い温度で働くことを可能にする。
【0025】
本発明は特に、下記の利点を有する。
標準的な工業条件(複雑で高価な設備の必要性がない)を使用し、大気圧及び室温よりわずかに高い温度を単に必要とする。
反応中終始形成される水の除去を必要としない。
鉱酸を単独で使用する場合よりも、少量の酸を使用するので、硫酸の場合には、流出物に排出される硫酸塩の量を制限することを可能にする。
別々に使用する酸での速度と比較して、特に速度の相乗効果により、高収率で有機過酸化物を得る。
大量の鉱酸を単独で使用する方法と比較して、触媒導入時間を減少する。
【0026】
本発明の他の有利な特徴は、以下に明示される。
【0027】
有利には、スルホン酸と少なくとも1つの第三級アルキル基を含む成分との間のモル比が、0.1〜0.6の間、好ましくは、0.1〜0.3の間である。
【0028】
有利には、鉱酸と少なくとも1つの第三級アルコール基を含む成分との間のモル比が、0.1〜0.6の間、好ましくは、0.1〜0.5の間である。
【0029】
本発明の特に有利な態様によると、本方法は大気圧(±0.2bar)で行われる。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によると、過酸化物が少なくとも1つの芳香族官能基を含むために、前記成分及び/又は前記化合物が一又は複数の芳香族官能基を含む。
【0031】
本発明により提供される可能性によると、ヒドロペルオキシド基を含む前記化合物が、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、1−メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシド及び1−メチルシクロペンチルヒドロペルオキシドから選択され、好ましくは、tert−ブチルヒドロペルオキシドから選択される。
【0032】
本発明により提供される別の可能性によると、ヒドロペルオキシド基を含む前記化合物が、2,5−ジメチル−2,5ジヒドロペルオキシ−3−ヘキシン及び2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロペルオキシヘキサンから選択される。
【0033】
本発明の1つの実施態様によると、アルコール基を含む前記成分が、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、クミルアルコール、1−メチルシクロヘキサノール及び1−メチルシクロペンタノールから選択され、好ましくは、クミルアルコールから選択される。
【0034】
本発明の別の実施態様によると、アルコール基を含む前記成分が、α,α’−ジヒドロキシジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシ−3−ヘキシン及び2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロキシヘキサンから選択され、より好ましくは、α,α’−ジヒドロキシジイソプロピルベンゼンから選択される。
【0035】
スルホン酸は、好ましくは、アルキル又はアリールスルホン酸から選択され、特に、例えば、ベンゼンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、及びこれらの混合物のようなアリールスルホン酸から選択され、好ましくはクメンスルホン酸及びパラ−トルエンスルホン酸から選択される。
【0036】
鉱酸に関しては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸及び過塩素酸、及びこれらの混合物から選択され、好ましくは、硫酸から選択されることが好ましい。
【0037】
好ましくは、試薬間の化学量論過剰率、すなわち少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド基を含む前記化合物と、少なくとも1つの第三級アルコール官能基を含む前記成分との間の化学量論過剰率は、0.01〜1の間、好ましくは、0.05〜0.5の間、より好ましくは、0.1〜0.3の間である。
【0038】
ヒドロペルオキシド対アルコールの比率は、それぞれ、一過酸化物では少なくとも1(mol)対1(mol)、及び二過酸化物では2(mol)対1(mol)でなければならないので、化学量論過剰率が本明細書で記載される。したがって、例えば、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンのメタ及びパラ異性体の混合物の調製の場合、方法は、ジオールに対して過剰のヒドロペルオキシドで行われるであろう。しかし、この化学量論過剰率は、ヒドロペルオキシドではなく、アルコールで優先されることもあり、例えば2,5−ビス(1−メチルシクロヘキシルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンの調製の場合がこれに該当する。
【0039】
有利には、接触させる工程が、10℃〜60℃の間、好ましくは、20℃〜50℃の間の温度で行われる。
【0040】
本発明の1つの態様によると、本方法は、反応媒体中で接触させる前記工程の前に、前記反応媒体なしで、鉱酸をスルホン酸と混合する工程からなる工程を含んでもよい。
【0041】
本発明の好ましい実施態様によると、触媒は、スルホン酸及び鉱酸のみからなる。
【0042】
本発明は、上記で規定した調製方法によって直接得られる過酸化物にも関する。このような過酸化物は、調製の終結時に事実上純粋であるため、不純物を除去することを意図した洗浄を全く必要としないという有利な特徴を有する。ある一定の場合、あるレベルの純度(微量の副生成物、特に酸が存在しないこと)が所望される際、それでもなお、1回又は2回の過酸化物の洗浄を行うことが望ましいことがある。したがって、本発明による方法によって得られる過酸化物は、先行技術の過酸化物と異なり、得られると、非常に少量の不純物、特に酸(過酸化物の将来の用途に対して有害である可能性が高い)のみを含み、これは典型的には50ppm(百万分率)未満、又は更に好ましくは、20ppm未満である。
【0043】
したがって、本発明による調製方法によって得られる過酸化物は、50ppm未満の酸、好ましくは、20ppm未満を含む。
【0044】
他の利点は、下記の説明を読む際に生じ得る。下記の説明は、単に非限定的な例示によって与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、少なくとも1つの第三級アルコール基を含む化合物を、少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド官能基を含む化合物と、触媒の存在下で接触させる工程を含む、過酸化物を製造するための方法に関する。少なくとも1つの第三級アルコール基を含む化合物は、縮合により、少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド官能基を含む化合物と、酸触媒作用によって反応する。
【0046】
本発明の方法により製造される過酸化物は、最大2つのO−O(酸素−酸素)過酸化物官能基を含み得るジアルキル過酸化物である。
【0047】
少なくとも1つの第三級アルコール基を含む化合物に関しては、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、クミルアルコール、1−メチルシクロヘキサノール、1−メチルシクロペンタノール、α,α’−ジヒドロキシジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5ジオール又は2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールであってもよい。
【0048】
少なくとも1つの第三級ヒドロペルオキシド官能基を含む化合物に関しては、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、1−メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシド、1−メチルシクロペンチルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5ジヒドロペルオキシ−3−ヘキシン又は2,5−ジメチル−2,5−ジヒドロペルオキシヘキサンであってもよい。
【0049】
本発明による有機ジアルキル過酸化物を製造するための方法は、触媒の存在下で、アルコールをヒドロペルオキシドと接触させることにより行われる。
【0050】
本発明による方法は、鉱酸及びスルホン酸の組み合わせを含む触媒の使用を含む。これらの2つの成分(鉱酸及びスルホン酸)のみが、本発明を行うために(技術的課題を解決するために)必要とされるが、触媒を構成するために他の成分を組み合わせることが、任意選択的に想定されてもよい。
【0051】
鉱酸に関しては、硫酸、塩酸、過塩素酸、硝酸又はリン酸、及びこれらの混合物であってもよい。
【0052】
スルホン酸に関しては、メタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のようなフルオロアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、パラ−フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、キシレンスルホン酸又はクメンスルホン酸のような芳香族スルホン酸、及びこれらの混合物であってもよい。
【0053】
本発明の方法による鉱酸及びスルホン酸は、別々に添加されてもよく、又は反応媒体への導入前に、予め混合されてもよい。
【0054】
本発明による方法は、好ましくは、有機溶媒の存在下で行われる。記述され得る溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン及び塩素化炭化水素が挙げられる。
【0055】
本発明による方法は、共沸又は他の手段による水の除去を必要とせず、この水は、過酸化物製造反応が進行する際に、縮合反応により徐々に形成されるものである。
【0056】
過酸化物が得られると、デカンテーション後に、少なくとも水性相の除去の最終工程が従来通り想定され、また、当業者によく知られた工程、例えば触媒の塩基性中和、水性洗浄、反応溶媒の除去及び精製の工程も想定される。
【0057】
本発明による調製方法の実施の例は、以下に提示される。これらの例は、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンのメタ及びパラ異性体の混合物の製造で示される。
【0058】
しかし、実験は、この表に列挙される全ての過酸化物で実施された。
【0059】
これは、少なくとも1つの芳香核を含む過酸化物の製造が、本発明による調製方法に特に適することを明らかにする(試薬のうちの少なくとも1つ、従来はアルコール官能基を有する成分が、芳香核を含む)。
【0060】
しかし、飽和環を含む過酸化物を含めた脂肪族過酸化物の製造も、本発明による調製方法によって有利に行われ、また、先行技術の調製方法で直面する技術的課題のほとんど全て又は全てを解決することを可能にする。
【実施例】
【0061】
実施例1(本発明による): 本発明による合成方法の実施
66.5グラム(g)のtert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)の40.5重量%のヘプタン溶液(用語「重量%」は「重量パーセント」を意味する)及び27.8gのα,α’−ジヒドロキシ−ジイソプロピルベンゼンの異性体(メタ/パラ)の混合物(93重量%(ジオール))を、ボトムバルブ、撹拌器、温度プローブ及び還流凝縮器を取り付けた250ミリリットル(ml)の反応器に入れる。混合物を、窒素中で撹拌しながら、30℃に加熱する。この温度で、8.6gのクミルスルホン酸溶液(65重量%)を、1回の注入で添加する。その後、8グラム(g)の硫酸溶液(70重量%)を、約2分間にわたって徐々に添加する。媒体の温度は37−40℃に上昇する。酸の添加が完了すると、媒体を撹拌しながら、温度を40℃で115分間維持する。
【0062】
この時間の後、反応器を40℃で維持しながら、撹拌を止める。静置すると、2つの相が分離する。下相(水相、25.6g)を、反応器からボトムバルブを通して除去する。
【0063】
撹拌を再開すると共に、上相(有機)を40℃で63.2gの水で洗浄する。5分間の洗浄の後、撹拌を止め、2つの相を分離させる。下相(水相、63.8g)を、ボトムバルブを通して除去する。
【0064】
撹拌を再開すると共に、上相(有機相)を40℃で62.4gの水酸化ナトリウム水溶液(15重量%)で洗浄する。5分間の洗浄の後、撹拌を止め、2つの相を分離させる。下相(水相、64.2g)を、ボトムバルブを通して除去する。
【0065】
方法は、40℃での上相(有機相)の60.7gの水での最終洗浄で完了する。5分間の洗浄の後、撹拌を止め、2つの相を分離させる。下相(水相、61.2g)及び上相(有機相、77.3g)を回収する。
【0066】
分析後、有機溶液は、41.2gのα,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(C2034)、0.35gのα−(tert−ブチルペルオキシ)−α’−ヒドロキシイソプロピルベンゼン(C1626)及び0.43gのα−(tert−ブチルペルオキシ)−α’−イソプロペニルベンゼン(C1624)を含有し、これらはそれぞれ、各化合物のメタ及びパラ異性体の合計に相当する。これは、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンの収率が、使用したジオールに対して92%であることを表す。これらの3つの芳香族生成物の物質収支は、使用したジオールに対して93%である。
【0067】
実施例1の2
方法は実施例1と同じ方法で行われるが、クミルアルコールを第三級アルコールとして使用し、以下の表に記載されている操作条件を使用する。
【0068】
実施例1の3
方法は実施例1と同じ方法で行われるが、クミルアルコールを第三級アルコールとして使用し、クミルヒドロペルオキシドを第三級ヒドロペルオキシドとして使用し、クメンを溶媒として使用し、以下の表に記載されている操作条件を使用する。
【0069】
実施例1の4
方法は実施例1と同じ方法で行われるが、tert−アミルアルコールを第三級アルコールとして使用し、tert−アミルヒドロペルオキシドを第三級ヒドロペルオキシドとして使用し、メタンスルホン酸(MSA)を使用し、以下の表に記載されている操作条件を使用する。
【0070】
ここで、この実施例1の4は、主請求項(請求項1)の規定に対応するが、従属項2及び3に対応しないことに注意する。
【0071】
比較例2及び3
方法は、実施例1と同じ方法で行われるが、2つの酸のそれぞれを別々に使用する。
【0072】
1つの酸のみを、実施例1に記載される割合で使用することは、スルホン酸であっても鉱酸であっても、所望の過酸化物の同じ収率を達成することを可能にせず、2つの酸を組み合わせることにより得られる収率よりも大幅に低い収率に留まることが見出される。
【0073】
また、2つの酸を組み合わせることは、それぞれの酸を孤立させて使用することにより得られる結果の合計よりも、(収率に関して)良好な結果につながり、これは2つの酸の相乗効果を反映する。
【0074】
芳香族種の物質収支は、記述された条件下で硫酸を単独で使用する際に低下することに注意してもよい。この現象は、スルホン酸を組み合わせる際には観察されず、このことも、本発明の利点の1つを構成する。
【0075】
比較例2の2及び3の2
方法は、実施例1の2と同じ方法で行われるが、2つの酸のそれぞれを別々に使用する。
【0076】
比較例2の3及び3の3
方法は、実施例1の3と同じ方法で行われるが、2つの酸のそれぞれを別々に使用する。
【0077】
比較例2の4及び3の4
方法は、実施例1の4と同じ方法で行われるが、2つの酸のそれぞれを別々に使用する。
【0078】
実施例4〜6(本発明による)
方法は、実施例1と同じ方法で行われるが、使用されるスルホン酸の種類を、パラ−トルエンスルホン酸(PTSA)、ベンゼンスルホン酸(BSA)、フェノールスルホン酸(PPSA)に変更する。
【0079】
本発明によるスルホン酸と硫酸との混合物の使用は、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンの収率75%以上を、2時間以内の反応で達成することを可能にする。
【0080】
比較例7
方法は、前述の実施例と同じ方法で行われるが、PTSAを単独で使用し、硫酸と組み合わせていない。
【0081】
スルホン酸を単独で、記載される割合で使用することは、満足な収率につながらない(<75%)ことが見出される。
【0082】
実施例8〜16(本発明による)
方法は、実施例1と同じ方法で行われるが、反応パラメータ(比率、濃度)を変更する。
【0083】
行われたテスト全てにおいて、所望の過酸化物の高い収率が見出される。
【0084】
得られた結果を、1つの酸のみで行われた比較例17〜19の結果と比較することにより、相乗効果が見出される。