特許第6427194号(P6427194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6427194光学的用途のための感圧接着テープの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427194
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】光学的用途のための感圧接着テープの使用
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20181112BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181112BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20181112BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20181112BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20181112BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J11/06
   C09J133/06
   C09J133/14
   B32B17/06
   B32B27/36 102
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-539466(P2016-539466)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2016-537479(P2016-537479A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2014067935
(87)【国際公開番号】WO2015032635
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年4月14日
(31)【優先権主張番号】102013217785.2
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】フーゼマン・マルク
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】コープ・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】リューブベルト・ニーコ
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−075978(JP,A)
【文献】 特開2013−155121(JP,A)
【文献】 特開2013−104028(JP,A)
【文献】 特開2012−041456(JP,A)
【文献】 特開2003−183612(JP,A)
【文献】 特表2007−514070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体成分及び少なくとも1種の添加剤を含む感圧アクリレート接着剤の少なくとも1つの層を有する接着テープであって、
該重合体成分が、それぞれ次の単量体に帰せられる1種以上の共重合体から形成され:
(a)共重合性二重結合を有する1種以上のヒドロキシル含有単量体5〜35質量%、
(b)それぞれ少なくとも1個のアミド基、ウレタン基、尿素基、カルボン酸無水物単位及び/又はエチレングリコール単位を有する1種以上のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体0〜50質量%、
(c)アルキル基が1〜14個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキル15〜95質量%、
該感圧アクリレート接着剤が添加剤として1種以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体と混合されており、かつ、
さらなる添加剤として1種以上の二芳香族官能化エタンジアミド誘導体が混合されていることを特徴とする、接着テープ。
【請求項2】
前記1種以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり75〜200gμmの範囲内にあるような量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の接着テープ。
【請求項3】
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール誘導体、及び/又は分岐及び直鎖C、C及びCアルコールと3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸とのエステル及び/又は2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール及び/又は3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオン酸オクチルを2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体として使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の接着テープ。
【請求項4】
さらなる添加剤として1種以上の[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体が混合された、請求項1〜3のいずれかに記載の接着テープ。
【請求項5】
前記[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体の1種以上は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり25〜200gμmの範囲にあるような量で存在することを特徴とする、請求項4に記載の接着テープ。
【請求項6】
[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体として使用することを特徴とする、請求項4又は5に記載の接着テープ。
【請求項7】
前記二芳香族官能化エタンジアミド誘導体の1種以上は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該二芳香族官能化エタンジアミド誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり25〜200gμmの範囲、内にあるような量で存在することを特徴とする、請求項1〜6に記載の接着テープ。
【請求項8】
N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)エタンジアミドを二芳香族官能化エタンジアミド誘導体として使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項9】
さらなる添加剤として1種以上のヒンダードピペリジン誘導体が混合されたことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の接着テープ。
【請求項10】
前記ヒンダードピペリジン誘導体の1種以上は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該二芳香族ピペリジン誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり25〜200gμmの範囲にあるような量で存在することを特徴とする、請求項に記載の接着テープ。
【請求項11】
ヒンダードピペリジン誘導体として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとジメチルブタンジオエートとの重合反応生成物を使用することを特徴とする、請求項9又は10に記載の接着テープ。
【請求項12】
前記重合体成分の共重合体の1種以上がそれぞれ200000g/mol〜3000000g/molの範囲の重量平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の接着テープ。
【請求項13】
前記感圧アクリレート接着剤が粘着付与樹脂を含まない形態であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の接着テープ。
【請求項14】
10〜500μmの範囲の前記感圧アクリレート接着剤の層の厚みを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の接着テープ。
【請求項15】
前記感圧アクリレート接着剤の層からなる単層両面接着テープの形態をとる、請求項1〜14のいずれかに記載の接着テープ。
【請求項16】
前記感圧アクリレート接着剤の層は、一時的なキャリア材料により片面又は両面がライニングされている、請求項15に記載の接着テープ。
【請求項17】
重合体成分及び少なくとも1種の添加剤を含む接着剤であって、
該重合体成分がそれぞれ次の単量体に帰せられる1種以上の共重合体から形成され:
(a)共重合性二重結合を有する1種以上のヒドロキシル含有単量体5〜35質量%、
(b)それぞれ少なくとも1個のアミド基、ウレタン基、尿素基、カルボン酸無水物単位及び/又はエチレングリコール単位を有する1種以上のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体0〜50質量%、
(c)アルキル基が1〜14個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキル15〜95質量%、
該感圧アクリレート接着剤が添加剤として1種以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体と混合されており、かつ、
さらなる添加剤として1種以上の二芳香族官能化エタンジアミド誘導体が混合されていることを特徴とする接着剤。
【請求項18】
請求項17に記載の接着剤又は請求項1〜16のいずれかに記載の接着テープの、基材を導電性フィルムに結合させるための使用。
【請求項19】
前記結合基材の一方が光学的に透明であることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記導電性フィルムが表面にナノスケールの銀線を有するか又はインジウムスズ酸化物(ITO)層を有するフィルムであることを特徴とする、請求項18又は19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
産業化時代における接着テープは、広範囲にわたる作業の補助物である。特にエレクトロニクス産業での使用について、このような接着テープは非常に頻繁に使用されている。これらの用途では、これらの接着テープが満たさなければならないかなり具体的な要件が常に存在する。特に、電子機器のディスプレイの分野では、接着に加えて、光管理に関連して多様な異なる要件が課されている。したがって、接着テープは、光反射性、光吸収性又は高度に透明であることが求められている。
【背景技術】
【0002】
使用の専門分野の一つは、接触画面(「タッチパネル」−以下、この用語を使用する)の結合における分野である。この種のパネルは、データ入力を容易にし、また電子機器を小型化することを可能にするためにますます使用されている。
【0003】
タッチパネルは、表示部に直接又は電子機器、特に携帯用電子機器のウィンドウに結合されている。したがって、ディスプレイによって生成された画像の光収量の減少がないような透明性及び清浄度に関連して非常に厳しい要件が課されている。また、静電容量式タッチパネルの使用も増えている。これらのパネルには、精度の点で利点があるからである。
【0004】
静電容量式タッチパネルに関連して、例えば、インジウムスズ酸化物膜(ITO膜)が使用されるが、これはタッチパネル機能のために電界を発生させる。このようなサブアセンブリの結合のために設けられる接着テープに課せられる要件は比較的高い。テープは極めて透明性が高くなければならない−そのため、OCAという名称でも知られている光学的に透明な接着剤が主に使用されている;このものはITO膜と相互作用してはならず、また電気伝導性に影響を与えてはならない。ITO膜が日光における紫外線に露出され、結果として損傷するという事実からさらなる問題が生じる;特に、紫外線は、ITO膜を変色させる場合がある。しかし、紫外線は、通常、光学的に透明な接着剤によってはほとんど又は全く吸収されない。したがって、望ましいのは、同時にUV−フィルタリング効果を有する接着剤である。
【0005】
UV吸収剤を有する光学的に透明な接着剤及びそれらから製造された製品は、既に知られている(米国特許出願公開第2013/0085215号)。それにもかかわらず、これらのものには、熱安定性の点で欠点がある。すなわち、これらの製品は熱負荷下で黄色である。これらの製品は、UV−Cスペクトルの光の吸収を考慮しておらず、またこれに起因する問題も認識されていない。しかしながら、この短波UV領域は、エネルギーが比較的高い。したがって、UV−C光は、比較的短時間で大きな損傷を与える可能性がある。したがって、UV−C波長領域の光を吸収することもできる種類の光学的に透明な接着剤を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0085215号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、UV吸収特性を有し、ITO膜の電気伝導性に影響を与えず、ITO膜の黄変を最小限に抑える光学用感圧接着テープを提供することが本発明の目的である。この種の接着テープは、有利には、70℃及び10%以下の相対湿度での1ヶ月間にわたる及び/又は85℃及び85%相対湿度で1000間にわたる高温保存時にLab色空間において1未満のb値を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、感圧アクリレート接着剤の少なくとも1つの層を有する感圧接着テープにより顕著に達成され、該接着剤の重合体成分は、それぞれ次の単量体に帰せられる1種以上の共重合体から形成される:
(a)共重合性二重結合を有する1種以上のヒドロキシル含有単量体5〜35質量%、
(b)それぞれ少なくとも1個のアミド基、ウレタン基、尿素基、カルボン酸無水物単位及び/又はエチレングリコール単位を有する1種以上のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体0〜50質量%、
(c)アルキル基が1〜14個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキル15〜95質量%、
該感圧アクリレート接着剤は、少なくとも1種の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体(以下、「添加剤1」という。)と、好ましくは、該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと重合体成分100g当たりの混合添加剤1の量との積が75〜200gμm(1gμm=10−9kgm)の範囲である量で混合されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の範囲内においてパラメーターを2つの限界値によって定義されている範囲内で特定する場合は、示される限界値は、そのパラメーター範囲に属するものみなされるが、ただし、逆のことを何も記載していない場合に限る。
【0010】
感圧接着剤(PSA)は、特に、おそらく例えば粘着付与樹脂などの他の成分の適切な添加の結果として、適用温度で(特に定義されない限り室温で)永久的に粘着性でかつ恒久的に接着性であり、しかも多数の表面への接触時に付着し、特に直ちに付着する(「タック」[粘着又は接触付着性]と呼ばれるものを示す)重合体組成物である。これらのものは、溶剤又は熱による活性化なしに適用温度であっても(ただし通常は多かれ少なかれ圧力の影響による)、密着に対する十分な相互作用が組成物と基材との間で生じることができるのに十分な程度にまで結合用基材を湿潤させることができる。このための影響を与える主なパラメーターとしては、圧力及び接触時間が挙げられる。PSAの特定の性質は、とりわけ、それらの粘弾性に特に由来する。
【0011】
PSAは、単独重合体及び/又は互いに重合できる様々な共単量体であることができる少なくとも1又は複数の重合体(本明細書の目的上、これらの重合体をまとめてPSAの「重合体成分」という。)を含む。この重合体成分は、本質的に既に感圧接着性を有することができ、又は例えば樹脂による適切な添加後のみにこのような特性を獲得することができる。
【0012】
重合体成分は、基本的に、様々な化学的性質の重合体に基づいて生成できる。感圧接着性は、PSAの親重合体の重合に使用される単量体の性質及び割合、それらの平均モル質量及びモル質量分布を含めた要因と、粘着付与樹脂、可塑剤などといった、PSAに対する補助剤の性質及び量とに影響を受ける場合がある。
【0013】
本明細書の意味において、樹脂とは、10,000g/mol以下の数平均分子量Mを有するオリゴマー及び重合体化合物であると考えられる;これらのものは、重合体成分とはみなされない。
【0014】
粘弾性を得る目的で、PSAの親重合体がベースとする単量体及び存在する場合にはPSAの追加成分は、PSAが適用温度よりも低い(言い換えれば、通常は室温未満)ガラス転移温度(DIN53765に従う)を有するように特に選択される。
【0015】
例えば架橋反応(高分子間での架橋形成結合の形成)などの好適な結合力増強手段により、重合体組成物が感圧性接着性を有する温度範囲を拡大させ及び/又はシフトさせることが可能である。したがって、PSAの適用範囲は、組成物の流動性と結合力との調整によって最適化できる。
【0016】
本発明の感圧接着テープは、片面接着剤型のものとすることができる;しかし、通常は、両面接着を備える接着テープである。この接着テープは、1以上のキャリア層を有することができ、接着剤の外側層(好ましくは、両面キャリア含有接着テープの場合には、接着剤の両方の外側層)の少なくとも一つは上記の重合体成分をベースとし、特に同一である。
【0017】
特に有利には、キャリアなし両面接着テープ、特に、本発明に従って記載されたアクリレートPSA層からもっぱら形成される接着テープである。
【0018】
有利には、重合体成分の重合体又は複数の重合体の重量平均分子量Mは、それぞれ200000≦Mw≦3000000g/molの範囲にある。重量平均分子量Mについてのデータは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による決定に基づくものである。使用した溶離液は、0.1体積%トリフルオロ酢酸と共にTHFであった。測定は25℃で行った。使用したプレカラムは、PSS−SDV、5μ、10Å、ID8.0mm×50mmであった。分離は、それぞれID8.0mm×300mmを有するカラムPSS−SDV、5μ、10並びに10及び10を使用して行った。サンプル濃度は4g/Lであり、流量は1分当たり1.0mlであった。測定はPMMA基準に対して行った(μ=μm;1Å=10−10m)。
【0019】
アクリレートPSA層の吸収挙動に必須なのは、この層の面積部分に実際に存在するUV吸収剤の量である。組成物の層が厚い場合には、接着剤中における吸収剤の濃度を低くすることができる。組成物の層が薄い場合には、対応する吸収効果を生じさせるために高濃度の吸収剤が必要となる。厚みと組成物の層の吸収効果が所望の方法で得られるような添加物の量との間には、実質的に非比例関係が生じる。
【0020】
したがって、接着テープの厚さと重合体成分の規定単位量(ここでは100質量部)当たりの吸収剤の量(質量部)との積は、組成物の対応する層の吸収効果の特徴であり、相互の厚み当たりの100質量部に標準化された添加剤の量(ここでは100g)に相当する。
【0021】
これは、アクリレートPSA層の100μmの厚みが、好ましくは重合体成分の100質量部に対して0.75〜2質量部の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体の量を有すると共に、アクリレートPSA層の50μmの厚みが、好ましくは重合体成分の100質量部に対して1.5〜4質量部の添加剤1の量を有するはずであることを意味する。したがって、アクリレートPSA層の200μmの厚さは、好ましくは重合体成分の100質量部に対して0.375〜1質量部の添加剤1の量を有する。
【0022】
接着テープは、好ましくは、10〜500μm、非常に好ましくは25μm〜250μmの厚みを有する。
【0023】
非常に好ましい手順では、PSA層のアクリレート接着剤と、さらに少なくとも1種の[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体(以下、「添加剤2」としても示す。)とを、それぞれアクリレートPSA層の厚さと重合体成分100gに基づく混合添加剤2の量との積が25〜200gμmの範囲となるような量で混合させている。したがって、アクリレートPSA層の100μmの厚みは、重合体成分100質量部に対して0.25〜2質量部の添加剤2の量、及び添加剤の好ましい量と他の接着テープの厚についての層厚との間の反比例関係に応じた相当量を含むであろう。
【0024】
好ましい手順では、添加剤1は、それぞれ重合体成分100gに基づいて、75〜175gμm、非常に好ましくは75〜150gμmで存在する。別の好ましい手順では、添加剤2は、重合体成分100gに基づいて40〜150gμmで存在する。
【0025】
特に有利には、添加剤1は、75〜175gμm、より有利には75〜150gμmで存在し、同時に、添加剤2は、それぞれ重合体成分100gに基づいて40〜150gμmで存在する。
【0026】
本発明の有利な一実施形態では、接着剤のみならず、添加剤1及び/又は好ましくは添加剤1及び2と、少なくとも1種の二芳香族官能化エタンジアミド誘導体(以下、「添加剤3」という。)とを、重合体成分100gに基づいて25〜200gμm、好ましくは40〜150gμmで混合させる。
【0027】
これに対応して、アクリレートPSA層の100μmの厚みは、重合体成分100質量部に対して0.25〜2質量部、好ましくは0.4〜1.5質量部の添加剤3の量、及び添加剤の好ましい量と他の接着テープの厚みについての層厚との間の反比例関係に応じた相当量を含むであろう。
【0028】
本発明のさらなる非常に有利な実施形態では、添加剤1又は好ましくは添加物1及び2、好ましくは添加剤1、2及び3を有するアクリレートPSA層は、少なくとも1種のヒンダードピペリジン誘導体(以下、「添加剤4」という)を、アクリレートPSA層の厚みと、それぞれ重合体成分100gに基づく混合添加剤2の量との積が25〜200gμm、好ましくは40〜150gμmの範囲となるような量で添加している。
【0029】
これに対応して、アクリレートPSA層100μmの厚みは、重合体成分100質量部に対して0.25〜2質量部、好ましくは0.4重量〜1.5質量部の添加剤4の量、及び添加剤の好ましい量と他の接着テープの厚みについての層厚との間の反比例関係に応じた相当量を含むであろう。
【0030】
本発明の接着剤は、優れたUV吸収特性を有し、また老化に対して非常に抵抗性である。本発明において、添加剤1は、主として良好なUV−A吸収をもたらすのに対し、添加物2及び3は、主としてUV−C吸収効果を奏することが分かった。添加剤4は、まず第一に光安定化効果を奏する。
【0031】
驚くべきことに、添加される添加剤は、添加された接着剤の技術的接着特性に実質的に有害な変化を生じさせず、接着剤がITO層と直接接触した状態にある場合でも当該層に及ぼすいかなる有害な影響も有しないことが明らかになった。本明細書で示されたよりも多い量を使用する場合には、老化条件下で接着剤の比較的深刻な黄変が存在することがある。より少ない量は、通常、360及び260nmの波長での低い透過率に関する要件をもはや満たさない。
【0032】
さらに本発明によって提供されるのは、上記のような感圧アクリレート接着剤の層を製造するための接着剤である。これらの接着剤は、感圧アクリレート接着剤であって、その重合体成分がそれぞれ次の単量体:
(a)共重合性二重結合を有する1種以上のヒドロキシル含有単量体5〜35質量%、
(b)任意に、それぞれ少なくとも1個のアミド基、ウレタン基、尿素基、カルボン酸無水物単位及び/又はエチレングリコール単位を有する1種以上のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体0〜50質量%、
(c)アルキル基が1〜14個の炭素原子を有するアクリル酸アルキル15〜95質量%
に帰せられる1種以上の共重合体から形成されるものであり、
ここで、該アクリレートPSAは少なくとも1種の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体(「添加剤1」)、非常に有利には、さらに少なくとも1種の[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体(「添加剤2」)と混合されている。有利には、アクリレートPSAは、少なくとも1種の二芳香族官能化エタンジアミド誘導体(「添加剤3」)及び/又は少なくとも1種のヒンダードピペリジン誘導体(「添加剤4」)とさらに混合されていてよい。本発明の接着テープの文脈において層状に成形された接着剤に関する実施形態の全てがそれに応じて参照されるため、接着剤自体について開示された通りに得ることができる。
【0033】
本明細書において本発明に従って説明されるPSAは、電子機器の表示部の領域における結合用の光学的に透明な接着剤として、特に接着テープにおける接着剤層として、とりわけ単層接着テープとして使用するために極めて好適である。
【0034】
550nmでの高い透過率がこの範囲内の光に必要な透過性を確保する。260nm及び360nmでの低い透過率は、有害なUV光のフィルタリング効果の証拠である。Lab色空間は、知覚可能な色の領域をカバーする色空間である(DIN EN ISO11664−4を参照)。特に、b値は、黄変の知覚度と相関することが分かった。1を超えるb値は、有意な黄色として知覚されるため、望ましくない。ASTM D1003−00によれば、用語「ヘイズ」は、特定の角度でより大きく偏向される光のパーセント割合として表される、主要部による光の散乱であると説明されている。
【0035】
本発明のPSAは、特に好ましくは、フィルムの100μmの厚さ(すなわち、単層接着テープ)の形態のときに、次の基準の少なくとも1つ又は好ましくは全てを満たすことが注目に値する:
・550nmの波長で少なくとも89%以上の透過率、
・360nmの波長で多くとも0.2%以下の透過率、
・260nmの波長で多くとも0.2%以下、好ましくは多くとも0.1以下の透過率、及び
・多くとも5%以下、好ましくは多くとも3%以下、非常に好ましくは多くとも1%以下のヘイズ(ASTM D1003−00;手順A)。
【0036】
ポリアクリレートは、特に、それ自体知られている重合方法に従って、使用される単量体のフリーラジカル重合によって重合される。
【0037】
共重合体のガラス転移温度を決定するために、フォックスの方程式を使用することが可能であり(T.G.Fox、Bull.Am.Phys.Soc.1(1956),p.123)、この文献には、共重合体の相互のガラス転移温度を、使用される単量体の質量分率と、共単量体の対応する単独重合体のガラス転移温度とによって計算することができることが記載されている:
【0038】
【数1】
【0039】
ここで、w及びwは、それぞれの単量体1又は2の質量分率を表し(質量%)、Tg,1及びTg,2は、Kで表す、それぞれの単量体1又は2の単独重合体のそれぞれのガラス転移温度を表す。
【0040】
2種を超える共単量体の場合には、上記方程式を次のものに一般化することができる:
【数2】
【0041】
上記一般式において、nは、使用される単量体の通し番号を表し、wは、それぞれの単量体nの質量分率を表し(質量%)、Tg,nは、Kで表す、それぞれの単量体nの単独重合体のそれぞれのガラス転移温度を表す。対応する単独重合体のガラス転移温度の値は、関連する参考文献から得ることもできる。
【0042】
PSAの重合体成分の重合体は、共重合性二重結合を有する1種以上のヒドロキシル含有単量体を5〜35質量%で含む。好適な単量体の例は、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミドである。アクリルアミド基を有するヒドロキシル単量体の他に、エチレングリコール単位を有するヒドロキシル単量体を使用することも可能である。この一例は、ヒドロキシ末端プロピレングリコールアクリレートである。
【0043】
重合体成分の重合体は、任意に、それぞれ少なくとも1個の極性プロトン性又は塩基性基を有する1種以上のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体の50質量%までが存在する。これらの基は、特に、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、アミド基、アミノ基、ウレタン基、又は尿素単位であることができる。これらの官能基の2個以上が存在する場合には、これらは同一であってよく、又は互いに独立して上記官能基から選択できる。本発明に従って非常に好適なこの例は、アクリル酸又はメタクリル酸、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミドなどのN−アルキルメタクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアクリルアミドなどのN−ジアルキルアクリルアミド、例えばジアセトンアクリルアミド、例えばN,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN、N−アルキルメタクリルアミドである。さらなる例は、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルホルムアミドである。また、単量体群(b)において非常に好適な単量体は、(ポリ)エチレングリコールセグメントを有する単量体であり、その場合には、少なくとも2個のエチレングリコール単位が該単量体中に存在する。対応する単量体は、特に、ヒドロキシ末端化及び/又はメトキシル化されていてよい。
【0044】
ベース単量体(特に単量体群(c)からの単量体)からの不純物のため、たとえ単量体群(b)の単量体なしですます意図自体があっても、組成物中にはアクリル酸の痕跡が存在する場合がある。
【0045】
さらに、重合体成分の重合体は、15〜95質量%の範囲にまで1種以上のアクリル酸アルキルに帰せられ、そのアルキル基は、特に1〜14個の炭素原子を有する。アクリル単量体の炭化水素基は、分岐又は非分岐又は環状、飽和又は不飽和、脂肪族又は芳香族、置換又は非置換であってよい。
【0046】
アクリル単量体の炭化水素基は、特に1〜14個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基とすることができ、特定の利点は、4〜10個の炭素原子を有する炭化水素基によって得られる。単量体(c)群において使用することができるアクリル単量体の有利な例は、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル及びそれらの分岐異性体、例えば、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチルである。
【0047】
単量体群(c)の有利な単量体として、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチルを使用することがさらに可能である。
【0048】
単量体群(c)のさらに有利な単量体は、少なくとも6個の炭素原子を有する架橋シクロアルキルアルコールの単官能性アクリレート及び/又はメタクリレートである。また、シクロアルキルアルコールは、例えばC1〜6アルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基によって置換されていてもよい。この種の単量体の好適な例は、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル及びアクリル酸3,5−ジメチルアダマンチルである。
【0049】
本発明のPSAの成分は、次の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体(添加剤1)である:
【化1】
ここで、R基は、それぞれ独立に、またR基は、それぞれ独立に及びR基とは独立に、それぞれ水素又は無機若しくは有機(脂肪族若しくは芳香族)基を表し、
好ましくは該R基がそれぞれ独立に、水素又は特に14個までの炭素原子を有する直鎖若しくは分岐状若しくは環状脂肪族若しくは芳香族炭化水素基である場合には、該炭化水素基は、例えば窒素及び/又は硫黄及び/又は酸素により1回以上ヘテロ置換していてもよく、また、R基は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化物置換基(特に有利にはCl)、又は1〜12個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖若しくは分岐若しくは環状炭化水素基を表す。
【0050】
この箇所又は本明細書内の他の箇所において環状炭化水素基に言及する場合には、特にいくつかの位置で(ただし芳香環には直接隣接していない)、環状単位を有する基に言及するものとし、これは、1個以上の炭素原子及び/又はヘテロ原子がこの環状単位と芳香族環との間に配置されていることを意味する。
【0051】
特に好ましくは、これらのUV吸収剤は、UV−A領域におけるUV吸収を支配する。深刻な黄変を引き起こすことなく光学用途に適した接着剤のために非常に高いUV−A吸収を達成するのには比較的少量であっても十分である。したがって、これらの化合物は、360nmで、例えば通常使用されるトリアジン化合物よりも高い吸収効率を有する。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態は、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール誘導体を使用する。
【0053】
使用するのに特にこのましく、かつ、単独で又は互いに組み合わせて使用できる添加剤1は、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノールであり、分岐及び直鎖C、C及びCアルコールと3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸とのエステルである:
【化2】
ここで、n=7、8又は9であり;上記エステルの混合物として一般的に使用され;また、5%の1−メトキシ−2−プロピルアセテート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオン酸オクチルの混合物で市販されている。
【0054】
本発明のPSAは、さらに好ましくは、[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]アルキルマロネート誘導体(添加剤2)を含む:
【化3】
ここで、R及びR’基は、他のR及びR’とは独立して、それぞれ水素又は無機若しくは有機(脂肪族若しくは芳香族)基を表し;特に水素又は14個までの炭素原子を有する直鎖若しくは分岐若しくは環状脂肪族若しくは芳香族炭化水素基を表し、また、該炭化水素基は、例えば窒素及び/又は硫黄及び/又は酸素によって1回以上ヘテロ置換されていてもよい。
【0055】
好ましく使用されるのは、[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(R’=C)である。非常に好ましい一実施形態では、ピペリジル置換3,5−ビス[1,1−ジメチルエチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ブチルマロネートが使用される。このものの非常に有利な一例は、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートである。
【0056】
好ましい一実施形態では、二芳香族官能化エタンジアミド誘導体(添加剤3)を添加することがさらに可能である:
【化4】
ここで、R、R’及びR”は、それぞれ他のR、R’及びR”とは独立に、水素又は特に14個までの炭素原子を有する直鎖若しくは分岐若しくは環状の脂肪族若しくは芳香族炭化水素基を表し、該炭化水素基は、例えば窒素及び/又は硫黄及び/又は酸素により1回以上ヘテロ置換されていてもよい。
【0057】
これらの誘導体は、主としてUV−C範囲内における吸収効果及び高い光安定性を有する。好ましい一形態では、使用される芳香族基はアルキル又はアルコキシ官能化芳香族化合物である。非常に好ましい一実施形態は、N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)エタンジアミド(上記式においてR=H、R’=C、R”=OC)を使用する。
【0058】
別の非常に好ましい実施形態では、ヒンダードピペリジン誘導体(添加4)、特に有利には次式の重合ピペリジン誘導体を添加することが可能である:
【化5】
式中、Rは、直鎖又は分岐炭化水素鎖を表し、これは、特に硫黄及び/又は酸素及び/又は窒素により1又は複数箇所でヘテロ置換されていてもよい。また、このような化合物は、例えば「HALS」としても知られている。上記式のように表されるピペリジン環の2,2,6,6−ジメチル置換は、例示的な有利な一実施形態である。
【0059】
本発明による使用に特に好適なのは、共単量体として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールを使用する共重合体である:
【化6】
例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとジメチルブタンジオエートとの重合反応生成物である(上記式においてR=C(O)CHCHC(O))。
【0060】
PSAの結合力が、例えば、打抜き性を確保し又は光学部品が垂直動作で滑り落ちるのを防ぐのには最初から十分に高くない場合には、PSAを本発明に従って架橋させる。通常はこれを行う。また、十分な結合力は、光学領域での完璧な結合のためにも重要である。
【0061】
PSAは粘弾性重合体系である。弾性の程度及び粘性成分、またこれらの成分同士の割合についてのより正確な説明及び定量のために、動的機械分析(DMA)により決定できる、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)の変数のみならず、損失係数tanδ(tanデルタ)と呼ばれる比G”/G’を使用するとすることが可能である。G’は物質の弾性成分の基準であり、G”は物質の粘性成分の基準である。両方の変数は、変形の頻度及び温度に依存する。
【0062】
損失係数tanδは、分析中の物質の弾性及び流動性の基準である。
【0063】
これらの変数は、レオメーターを使用して決定できる。この場合、例えば、調査中の材料をプレート/プレート構成で正弦振動性せん断応力にさらす。せん断応力によって制御される機器の場合には、変形を時間の関数として測定し、この変形γの時間オフセットをせん断応力τの導入に対して測定する。この時間オフセット(せん断応力ベクトルと変形ベクトルとの間の位相シフト)を位相角δという。
貯蔵弾性率G’ G’=τ/γ・cos(δ)
損失弾性率G” G”=τ/γ・sin(δ)
損失係数tanδ tanδ=G’/G”
【0064】
本明細書中において前述したパラメーターの数値は、8mmのサンプル直径及び1mmのサンプル厚さを有する円形サンプルに基づいて、プレートオンプレート構成のレオメーターによる測定に関する。測定条件:−30℃〜130℃までの温度掃引、tanδは、0.05〜1.0の間、好ましくは0.1〜0.5の間の範囲内に位置すべきであり、それぞれ130℃及び10rad/秒で決定される。
【0065】
ポリアクリレートの架橋は、好ましくは熱架橋及び/又は化学的架橋によって達成される。良好な加工性を達成するために、架橋は、0.1〜1.0の間の損失係数(tanδ)により特徴付けられる架橋度にまで実施されるべきである(レオロジー試験法)。
【0066】
架橋は、非常に好ましくは、多官能性架橋物質(以下、架橋剤という。)を使用して実施され、該架橋剤は、架橋前にPSAに混合される。この種の架橋剤は、特定の架橋条件下で高分子中における好適な反応中心と反応することができるため、該高分子間で架橋を形成し、それらの少なくとも2個の官能基によってネットワークに寄与することができる。
【0067】
特に好ましい一実施形態では、ポリアクリレートは熱により架橋される。所望の粘弾性範囲を達成するために、イソシアネート架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤又はシラン系架橋剤を使用することが可能である。異なる架橋剤の組み合わせも同様に可能である。
【0068】
二官能性架橋剤を使用する場合には、PSA中におけるそれらの割合は、重合体成分100質量部に対して0.3〜3質量部、より好ましくは0.5〜2質量部の架橋剤である。三官能性架橋剤を使用する場合には、それらの割合は、好ましくは重合体成分100質量部に対して0.02〜0.5質量部、より好ましくは0.05〜0.2質量部で添加する必要がある。しかしながら、それよりも官能価の高い架橋剤を使用することも可能である。さらに、官能価の点で同一でも異なっていてもよい複数の架橋剤を使用することもできる(例えば二官能性架橋剤と三官能性架橋剤との組み合わせ)。この場合には、使用量を有利に適合させる必要がある。
【0069】
追加成分及び/又は添加剤、特に重合体には取り込まれない及び/又は架橋反応に関与しない添加剤を、重合用の共単量体混合物、重合段階での重合体及び/又は完全に重合されたポリアクリレートに添加し、場合によっては、このような添加を有利には架橋反応前に実施し、また、このような添加の目的は、特に、所望の生成物特性を確立するのをサポートすることである。
【0070】
本発明の接着テープ又は本発明に従って使用される接着テープに使用されるPSA中には粘着付与樹脂及び可塑剤が存在する必要はなく、そのため、本発明の接着テープの顕著な変形例はPSA層を有し、特にいかなる樹脂及び/又は可塑剤もPSAに添加されておらず、特に有利には樹脂も可塑剤も添加されていないPSA層によって実現される(キャリアなし単層接着テープ)。このような添加は、光学的結合用途の状況において悪影響を及ぼす場合が多い。アクリレートPSA用の粘着付与樹脂として従来技術において使用される樹脂は、ポリアクリレートマトリックスとの相溶性を達成するために、通常は極性の性質のものである。これは、通常、長期の保存又は光への暴露時に黄変を受ける芳香族粘着付与樹脂を使用することにつながる。
【0071】
PSAの層の製造について、上記のように得ることができる任意に添加剤添加されたポリアクリレートをキャリアの片面又は両面に塗布し、その際に、その塗布中であっても接着テープ構造に保持される永続的なキャリアを使用することが可能である。しかし、特に有利には、キャリアなしの特に単層の接着テープが製造され、このものは、非常に顕著な一実施形態では、塗布中にPSA単独の層からなり(いわゆる接着剤転写テープ)、かつ、前処理、変換及び商用提供のために、片面又は両面に一時的なキャリアが設けられ、特にロール状に巻き取られる。
【0072】
この種の接着剤転写テープの製造について、上記のように得ることのできるポリアクリレートを、有利には一時的なキャリア(特に、接着防止剤及び/又は抗接着的取付材料(ライナー材料、剥離材料又は剥離ライナーという);例えば、シリコーン紙、フィルムなど)に所望の層厚で塗布する。ここで、原則として、ポリアクリレートPSAに好適な全ての剥離材料を使用することも可能である。PETキャリアコアを有する剥離ライナーを使用することが特に好ましい。
【0073】
また、製造に可能なものは、異なる種類の(感圧)接着の2つの層を有する接着テープであり、それらの層の少なくとも一方は、本明細書に記載された(本発明の)PSA層である。これらのPSA層は、互いに直接隣接していてよく(二層接着テープ)、また、任意に、例えば2つのPSA層間にキャリア層などの1以上の他の層が存在していてもよい(多層構造)。
【0074】
ポリアクリレートは、好ましくは、キャリア材料上の層で架橋される。PSAは、好ましくは、感圧接着特性がPSAを説明した用途のために使用するのに適するように配合される。本発明に従って有利には、これは、ポリアクリレートの好適な架橋度の選択により達成される。その際に、ポリアクリレートは、特定のパラメーターの実現を必要とする架橋度に架橋される。これにより、特に、PSAの結合力及び密着性のみならずその流動性を調節することが可能である。
【0075】
原則として、本発明の接着テープをUV照射による架橋によって得ることも可能であり、その際に、この架橋を他の架橋方法の代わりに又はそれに加えて実施することができる。しかし、この実施形態はここでは好ましくない。というのは、UV吸収剤は、UV架橋の架橋効率を有意に低下させるからである。
【0076】
非常に好ましい一手順では、ポリアクリレートの架橋を熱によって(すなわち熱エネルギーを供給することにより)もたらすことができる。
【0077】
熱架橋について、本発明の感圧接着テープを、好ましくは乾燥トンネルに通過させる。乾燥トンネルは2つの機能を果たす。まず、アクリレートPSAを溶液から塗布した場合には、溶媒を除去する。これは、一般に、気泡を乾燥させないように段階的な加熱により達成される。次に、ある程度の乾燥に到達したときに、熱架橋を開始するために熱を利用する。必要な熱入力は、架橋剤系に依存する。さらに、架橋系によっては、後架橋反応が生じる場合がある。これらは、例えば、イソシアネート系架橋に典型的なものである。
【0078】
特に光学用途について、ガラス間に50μmの層厚を有するPSAは、少なくとも95%(空気/接着剤及び接着剤/空気の界面遷移での反射から損失を減じた後)又は少なくとも89%(空気/接着剤及び接着剤/空気界面遷移で反射した成分を照射光強度から減じない場合の絶対照射光強度に対する入射光強度)の透過率(パーセントで表す、照射光強度に対する射出光強度)に相当する透明性を有する。さらに有利には、PSAは、多くとも5%、好ましくは3%未満、非常に好ましくは1%未満のヘイズを有する。
【0079】
さらに、本発明は、本発明の接着剤の使用に関し、また、本発明の接着テープの、導電性フィルム上に基材を接着させるための使用に関し、特に、このようなフィルムの、光学装置、電子装置又は光電子装置における使用、及び/又はこのようなフィルムの、接触画面を製造するための及び/又は電場を生成するための使用に関する。
【0080】
この目的のために、基材の少なくとも一方は光学的に透明であり、特にガラス又はポリカーボネートからなることが有利である。本発明の特に好ましい実施形態では、導電性フィルムは、表面にナノスケールの銀線を有する又はインジウムスズ酸化物(ITO)層を有するフィルムである。
【0081】
接着テープは、光学素子の一つ又は二つの面に直接積層できる。光学素子は、例えば、偏光フィルム又は輝度向上フィルム又は3Dフィルムとすることができる。さらに、光学的に透明な接着テープをディスプレイ部上に積層することもできる。この方法では、例えば、タッチパネル部をディスプレイと結合させることができ、或いは偏光フィルムをディスプレイと結合させることができる。また、接着テープは、非常に好ましくは、タッチパネル部を製造するために使用される。ここで、タッチパネルの種類に応じて異なる組み合わせも同様に存在する。したがって、感圧接着テープは、ガラス/ガラス結合又はガラス/フィルムタッチパネル或いはガラス/フィルム/フィルムタッチパネルに好適であり、該フィルムは、常に少なくとも1つのITO層のITO膜を表す。或いは、ITOをガラス上に直接コーティングすることができる。特に好ましくは、本発明の接着テープは、ITO表面への結合に好適である。
【0082】
本発明の接着テープは、永久的な結合のために特に好適であり、これらは、特に接着結合を永続的に保持すべき結合である。また、結合は、大きな表面積にわたって実施することができ、また高温にさらされることもできる。
【0083】
外部影響(日射)の結果として又は電子機器内で生じる熱の結果として比較的高い長期温度負荷が生じることがある。一般に、このような熱は上昇する。というのは、プロセッサのパワーは上昇し続けており、しかもよりスリムな設計の結果として部品のために利用可能なハウジング内のスペースが少なくなっているからである。本発明の接着テープは、70℃で1ヶ月又は85℃及び85%の相対湿度で1000時間といったタッチパネル産業に典型的な保存条件下で、1.5未満、非常に好ましくは1未満のbを示す。これよりも高いレベルは、通常、かなりの黄色として知覚されるため、光学用途には受け入れられないと考えられる。温度安定性のみならず、高温多湿条件下での安定性、結合のためのITO膜との相溶性も重要であり、また、本発明の接着テープがこのITO膜を保護することができることも重要である。例えば、UV光による促進老化試験(「QUV試験」と呼ばれる;試験方法Hを参照)の条件下といったUV光下での保存後に、ITO膜は、黄色の方に向かう顕著な傾向のみならず、電気抵抗性の増加に向かう顕著な傾向も示す。これらの変化は、ディスプレイの画像表示領域での結合用途で問題となる。したがって、黄色の曇りは望ましくない。さらに、ITO膜の電気抵抗の大きな変化も望ましくない。というのは、これは、長期間にわたってタッチパネルの感度を変化させるからである。本発明の例は、電気伝導度がUV光による促進老化試験(試験方法H)の条件下で500時間にわたる保存後に10%未満しか変化しないことを特徴とする。さらに、UV光による促進老化試験(試験方法H)の条件下で500時間にわる保存後に、ガラスと本発明の接着剤とITO膜との積層体について、bは100%未満、好ましくは50%未満しか上昇しない。また、本発明の接着剤は、他の全ての光学的結合のために使用できるが、ITO膜についてはそれほど有用ではない。例えば、導電性材料の別の形態も同様にますます使用されてきており、例えば、大型ディスプレイ、銅トラック又は直近技術、例えば導電性銀又は導電性重合体及び炭素のために使用されている。さらに、光学素子も同様に、本発明のPSAによって保護できる。一つの可能性は、例えば、同様に高いUV感度を有する場合があるOLED材料である。
【実施例】
【0084】
実験の部
使用した原料の特性:
Desmodur(登録商標)N75 脂肪族ポリイソシアネート(HDIビウレット)。酢酸ブチル中75%、バイエル社製
Tinuvin(登録商標)928 BASF社製のベンゾトリアゾール化合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール
Tinuvin(登録商標)328 BASF社製のベンゾトリアゾール化合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール
Tinuvin(登録商標)400 BASF社製ヒドロキシフェニル、2−[4−[2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル]オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン及び2−[4−[2−ヒドロキシ−3−ジデシルオキシオキシプロピル]オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン
Tinuvin(登録商標)384 BASF社製ベンゾトリアゾール、95%ベンゼンプロピオン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−、C7−9−分岐及び直鎖アルキルエステル5%1−メトキシ−2−プロピルアセテート
Tinuvin(登録商標)622 BASF製のブタン二酸ジメチルエステル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合体
Tinuvin(登録商標)312 BASF社製のN−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)エタンジアミド
Tinuvin(登録商標)144 BASF社製のビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート
【0085】
試験方法:
A.レオメーター測定
測定を、Rheometrics Dynamic Systems社製のRDA IIレオメーターをプレートオンプレート構成で使用して実施した。測定した物品は、8mmのサンプル直径及び1mmのサンプル厚さを有する円形サンプルであった。
【0086】
サンプルを、上記のように製造された接着シートの20層を互いに積層することにより得、これをこの目的でそれぞれのキャリア材料から分離して、厚さ1mmのキャリアなしの接着シートを得、それから円形サンプルをダイカットすることができた。
【0087】
測定条件:10rad/sで−30〜130℃の温度掃引。
【0088】
B.透過率
200nm〜800nmの間の範囲での透過率を、ASTM D1003に従って決定した。測定の対象は、光学的に透明なPSA及びガラス板から形成された組立体であった。UV吸収効率を評価するのに重要なのは、360nm、250〜360nmの間の範囲内、360nmでの吸収である。光学的に透明なPSAについては、400nm〜800nmの間の透明度が90%よりも大きいことが必要である。
【0089】
C.ヘイズ
ヘイズは、ASTM D1003手順Aに従って決定する。
【0090】
D.ITO電気伝導性のための試験
PSAを、日東電工社製ITO膜(Elecrysta(登録商標)V270L−TFMP)上に片面感圧接着テープとして結合させる。ITO膜の寸法は46mm×60mmである。さらに、導電性銀ペーストのための接着面積は8mm×2mmである。電気的測定を、Agilent U1252Aマルチメータを使用して実行する。測定を23℃及び50%相対湿度で実施する。測定されたパラメーターは、DIN53482に準拠する表面抵抗である。老化を老化試験方法Hと同様に実施する。
【0091】
測定結果をΩで表す表面抵抗Rとして保持する。パーセンテージの増加又は減少は、初期の数値を測定し、また保存後の測定値によって決定できる。
【0092】
E.分子量の決定
重量平均分子量Mを、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。使用した溶離液は、THFと0.1体積%のトリフルオロ酢酸とであった。測定は25℃で行った。使用したプレカラムは、PSS−SDV、5μ、10Å、ID8.0mm×50mmであった。分離はカラムPSS−SDV、5μ、10並びに10及び10を使用して行い、それぞれID8.0mm×300mmを有していた。サンプル濃度は、4g/lであり、流量は毎分1.0mlであった。測定はPMMA基準物に対して行った(μ=μm;1Å=10−10m)。
【0093】
F.LABの測定
LABの測定は、DIN5033−3に従って行った。
光源/標準光源:D65
観察角度:10°
透明試験片を白色基準タイルに対して測定した。測定データは、白色基準タイルに対してL値として相対的にプロットし、次のように算出する:a=aexp−aref及びb=bexp−bref及びL=(100×Lexp)/Lref。特に黄色bはこの用途に関連する。したがって、他の数値のプロットは行わない。
【0094】
G.老化
老化は、剥離ライナー上の独立フィルムで行った。試験片を乾燥キャビネット内で1ヶ月にわたり70℃で保存した。並行して、高温多湿キャビネット内において、これらの試験片を85℃及び85%相対湿度で1000時間にわたって剥離ライナー上の独立フィルムで保存した。その後、老化を方法Fに従ってLAB測定により一般的に行った。
【0095】
H.UV光による促進老化試験
ITO膜の老化を、DIN EN ISO4892−3に従ってUV光による促進老化試験によって実施した(いわゆる「QUV試験」)。340nmでのUVランプの照射は0.76W/mであった。上記DIN−EN−ISO規格と同様に、照射は8時間にわって60℃でのサイクルで、また4時間にわたって50℃での湿潤により行った。この試験を500時間にわたって実行した。純粋ITO膜(日東Elecrysta(登録商標)V270L−TFMP)のみならず、石英ガラス0.7mmと、UV吸収特性を有する本発明の単層接着テープ100μmと、日東Elecrystal(登録商標)V270L−TFMPとから形成された積層体についても評価を行った。評価について、LAB測定を試験方法F LABに従って実施し、そしてbについて決定を行った。
【0096】
ポリアクリレートの重合
ポリアクリレート
フリーラジカル重合に一般的な200L反応器に、10.5kgのアクリル酸2−ヒドロキシエチル、59.5kgのアクリル酸2−エチルヘキシル及び53.3kgの酢酸エチル/トルエン(42.6kg/10.7kg)を仕込んだ。窒素ガスを撹拌しながら45分間にわたって反応器に通した後に、反応器を70℃に加熱し、30gの2,2’−アゾイソブチロニトリル(AIBN)を添加した。その後、外部加熱浴を75℃に加熱し、そして反応をこの外部温度で絶えず実施した。1時間の反応時間後に、さらに30gのAIBNを添加した。5時間後及び10時間後に、毎回15kgの酢酸エチル/トルエン(90:10)で希釈を行った。6時間後及び8時間後に、それぞれ100gのジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート(Perkadox 16(登録商標)、Akzo Nobel社)を800gのアセトンに溶解してなる溶液の状態で添加した。24時間の反応時間後に、反応を停止し、生成物を室温に冷却した。GPC分析は、882000g/molのMを示した。
【0097】
架橋
その後、PSAをバイエルAG社製Desmodur N75の0.2質量分率にまでブレンドし、トルエンで希釈することによって28%の固形分に調節し、その後厚さ50μmのNippa PET剥離ライナー上に被覆した。その後、乾燥キャビネット内においてまず15分間にわたって室温で乾燥させ、その後15分間にわたって120℃で乾燥させる。被覆後の厚さは100μmであった。これらの試験片(さらなる測定及び評価を受ける前の)を7日間にわたって室温で保存した。架橋後のtanδは、10rad/秒及び130℃で測定して(試験法Aを参照)約0.2である。
【0098】
UV吸収剤の添加/例及び参考例の製造
「架橋」と同様の手順に従い、その際、架橋剤の量を一定に保持した。架橋剤のみならず、1種以上のUV添加剤を添加し、そして同様に撹拌しながら重合体に溶解させた。その後、「架橋」と同様に、28%固形分で被覆した。試験片の厚さ、乾燥及び保存を同一の条件下で行った。使用したUV吸収剤は、架橋度に実質的な影響を及ぼさなかった。試験片の全てについて、tanδは約0.2である;10rad/秒及び130℃で測定した(試験法Aを参照)。
【0099】
例の概要
以下の表は、本発明の例及びそれらの組成をまとめたものである:
【表1】
【0100】
第1の基準として、光学測定を実施した。測定を試験方法B及びCで実施した。測定したデータを以下の表にまとめる。
【0101】
【表2】
【0102】
測定結果から、参考例1は、可視領域内で高い透過率及び低いヘイズを有する(550nmで89%を超える高い透過率及び1%未満の低いヘイズが全てのサンプルについて測定された)が、260及び360nmでのUV領域でも非常に高い透過率を有していたことが分かる。したがって、この種の接着剤は、UV照射からの保護を与えない。参考例2は、少量のベンゾトリアゾール系化合物であっても、360nmの低い透過率(1%)を達成することが可能であるが、260nmでの透過率が33%で、依然として非常に高すぎることを示す。参考例3について、ベンゾトリアゾール含有量をさらに増加させた(1質量%まで)。これにより、360nmでのUV領域における透過率が1未満に低下する。しかしながら、260nmでの透過率は依然として20%であるため、非常に高すぎる。対照的に、ベンゾトリアゾール含有量を2質量%にまでさらに増加させた場合には、透過率はさらに低下する。その際、それに応じて360nmでの透過率は0.01%未満であり、260nmでは6.4%である。
【0103】
参考例5については、ベンゾトリアゾール誘導体を切り替えた。ここで添加されたのは、1%のTinuvin(登録商標)928である。その様相はTinuvin(登録商標)328に比較的類似する。ここで再び、低い透過率が260nmで測定され、27%の比較的高い透過率が360nmで測定される。
【0104】
参考例6の場合には、別のベンゾトリアゾール誘導体を使用した。ここで添加されたのは、1%のTinuvin(登録商標)384である。この様相はTinuvin(登録商標)328に比較的類似する。ここでは、同様に低い透過率360nmで測定されるのみならず、26%の比較的高い透過率が260nmで測定される。
【0105】
参考例7では、UV吸収剤の別の種類を試験した。この場合には、トリアジン化合物をUV吸収剤として使用する。同様にこれらの化合物では、360nmでのUV吸収は4.3%で比較的高い。しかし、260nmでの透過率は、ベンゾトリアゾール誘導体と比較して低い。したがって、260nmでは、0.49%の数値が測定される。それに伴い、参考例8では、Tinuvin(登録商標)400の割合を再び2%までさらに増加させた。この場合、360nmでの透過率は0.26%であり、依然として比較的高い。対照的に、260nmでは、0.01%未満が測定される。さらなる改善がTinuvin400含有量を再度3%にまで増加させることによって達成できる(参考例9を参照)。これらの量では、360nmで測定した透過率は0.03%であり、260nmで測定した透過率は<0.01%である。したがって、参考例のうち、参考例9は、UV吸収性の光学的に透明な接着剤に課せられる要件を満たす。
【0106】
本発明の例の全て(異なる添加剤、すなわち置換マロネート、置換エタンジアミド及び重合ピペリジンの組み合わせであっても)は、UV吸収性の光学的に透明な接着剤に課せられた要件を満たす。ここで、260nmでの透過率が0.1%を超えて上昇する場合があったとしても、所望ならば、置換エタンジアミド及び重合ピペリジンを添加せずに行うことが可能である(例2を参照)。しかし、0.12%では、絶対値は依然として非常に良好であり、0.2%未満である。
【0107】
透過率の測定のみならず、黄変の程度は、光学特性にとってさらに重要な要因である。特に360nmで低い透過率を有する接着剤は、一般には黄色に向かう傾向がある。したがって、全ての試験片の黄変を決定した。さらに、芳香族化合物は、高い温度及び湿度で保存された場合には同様に黄色に向かう傾向がある。したがって、試験方法Gに従って、老化を2つの異なる条件下で実施した。結果を以下の表に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
この表から、接着剤の新たな試験片の場合には、依然として黄変がないことが分かる。全てのb値が1未満である。さらに、参考例1は、芳香族添加なしでは、ポリアクリレート接着剤は黄色に向かう低い傾向しかないことを示す。参考例9の場合においてトリアジンの高添加により、老化後のb値が著しく上昇する。1ヶ月にわたって70℃で保存した後及び1000時間にわたって85℃/85%相対湿度で保存した後に、それらの値は1を超えて上昇した。実際に、85℃/85%相対湿度での保存試験では、1.5を超えるb値が参考例9について測定された。重合体中の低い割合の結果として、ベンゾトリアゾール誘導体(本発明の例1〜7)によって示される黄変が多少低い。2質量%までのベンゾトリアゾール誘導体については、b値は、全ての場合において1ヶ月にわたる70℃保存で1.0未満であり、85℃/85%相対湿度での保存について1.5未満である。その割合を1%にまで減少させることによって、85℃/85%相対湿度での保存について1.0未満にまでb値を低下させることも可能である。
【0110】
これらの実験は、少なくとも1種のベンゾトリアゾール誘導体とビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートとの組み合わせのみにより、一方では0.2%未満という260及び360nmでの低い透過率を達成し、次に老化後のb値が中程度にのみ上昇することが可能であり、これは、依然として有意な黄変が熱暴露時に達していないことを意味することを示す。
【0111】
本発明のUV吸収性の光学的に透明な接着剤の効率を評価するために、QUV老化試験を試験方法Hに従ってITO膜で実施した。老化のメカニズムは、熱保存、高温多湿条件下での保存の場合又はUV照射により相違する。したがって、これらの実験を、補足としてUV光で実施した。この目的のために例として使用したのは、本発明の例1、4及び6、また参考例1であった。結果を以下の表にまとめる。
【0112】
【表4】
【0113】
これらの結果は、本発明のUV吸収性の光学的に透明な接着剤の使用により、UV老化下で黄変の顕著な減少を達成することが可能であることを示す。したがって、実際に、参考例1に対して積層体のb値がわずかに増加する。しかし、老化後に、b値は、参考例のそれを十分に下回り、またUV老化後の純粋ITO膜のそれをも十分に下回る。したがって、例1は、39%の黄色値bの増加率を示し、例4は37%の増加率を示し、例6は28%の増加率を示し、参考例1は174%の増加率を示す。
【0114】
ここで、本発明のUV吸収性の光学的に透明な接着剤がITO膜及び導電層としてのその機能に及ぼす効果を調査するために、導電率もQUV保存試験後に同様に決定した。これらの結果を以下の表に示す(試験方法Dを参照)。
【0115】
【表5】
【0116】
ITO膜をそれぞれ30分間にわたって140℃で予め状態調整した。
【0117】
この表から、純粋なITO膜は、本発明の接着剤層の適用なしで比較的深刻な老化を受けることが推測できる。純粋な膜の抵抗は、748Ωから1820Ωまで上昇する。ガラスと本発明の接着剤層とITO膜との組立体の製造により、老化挙動が減少する。参考例1については、抵抗が著しく減少した。本発明の例1、4及び6については、電気伝導度はQUV保存後であっても比較的一定のままであり、元の数値の10%未満である。偏差は、例1について−3.6%であり、例4について−2.7%であり、例3について−5.0%である。これに対し、参考例1は、−13%の偏差を示す。したがって、本発明の例は、黄変に対して明確な効果を奏するのみならず、電気伝導度に関して大きな安定度を有する。
本発明の特徴は次のとおりである。
1. 重合体成分及び少なくとも1種の添加剤を含む感圧アクリレート接着剤の少なくとも1つの層を有する接着テープであって、
該重合体成分が、それぞれ次の単量体に帰せられる1種以上の共重合体から形成され:
(a)共重合性二重結合を有する1種以上のヒドロキシル含有単量体5〜35質量%、
(b)それぞれ少なくとも1個のアミド基、ウレタン基、尿素基、カルボン酸無水物単位及び/又はエチレングリコール単位を有する1種以上のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体0〜50質量%、
(c)アルキル基が1〜14個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキル15〜95質量%、
該感圧アクリレート接着剤が添加剤として1種以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体と混合されていることを特徴とする、接着テープ。
2. 前記1種以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり75〜200gμmの範囲、特に該重合体成分100g当たり75〜175gμmの範囲内にあるような量で存在することを特徴とする、上記の特徴1に記載の接着テープ。
3. 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール誘導体、特に2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノール及び/又は分岐及び直鎖C、C及びCアルコールと3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸とのエステル及び/又は2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール及び/又は3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオン酸オクチルを2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体として使用することを特徴とする、上記の特徴1又は2に記載の接着テープ。
4. さらなる添加剤として1種以上の[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体が混合された、上記の特徴1〜3のいずれかに記載の接着テープ。
5. 前記[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体の1種以上は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり25〜200gμmの範囲、特に該重合体成分100g当たり40〜150gμmの範囲内にあるような量で存在することを特徴とする、上記の特徴4に記載の接着テープ。
6. [[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、好ましくはピペリジル置換3,5−ビス[1,1−ジメチルエチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ブチルマロネート、非常に好ましくはビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートを[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体として使用することを特徴とする、上記の特徴4又は5に記載の接着テープ。
7. さらなる添加剤として1種以上の二芳香族官能化エタンジアミド誘導体が混合されたことを特徴とする、上記の特徴1〜6のいずれかに記載の接着テープ。
8. 前記二芳香族官能化エタンジアミド誘導体の1種以上は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該二芳香族官能化エタンジアミド誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり25〜200gμmの範囲、特に該重合体成分100g当たり40〜150gμmの範囲内にあるような量で存在することを特徴とする、上記の特徴7に記載の接着テープ。
9. N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)エタンジアミドを二芳香族官能化エタンジアミド誘導体として使用することを特徴とする、上記の特徴7又は8に記載の接着テープ。
10. さらなる添加剤として1種以上のヒンダードピペリジン誘導体が混合されたことを特徴とする、上記の特徴1〜9のいずれかに記載の接着テープ。
11. 前記ヒンダードピペリジン誘導体の1種以上は、前記感圧アクリレート接着剤中に該感圧アクリレート接着剤の層の厚さと該二芳香族ピペリジン誘導体の存在量との積が合計で前記重合体成分100g当たり25〜200gμmの範囲、特に該重合体成分100g当たり40〜150gμmの範囲内にあるような量で存在することを特徴とする、上記の特徴10に記載の接着テープ。
12. ヒンダードピペリジン誘導体として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとジメチルブタンジオエートとの重合反応生成物を使用することを特徴とする、上記の特徴10又は11に記載の接着テープ。
13. 前記重合体成分の共重合体の1種以上がそれぞれ200000g/mol〜3000000g/molの範囲の重量平均分子量Mを有することを特徴とする、上記の特徴1〜12のいずれかに記載の接着テープ。
14. 前記感圧アクリレート接着剤が粘着付与樹脂を含まない形態であることを特徴とする、上記の特徴1〜13のいずれかに記載の接着テープ。
15. 10〜500μmの範囲、好ましくは25〜250μmの範囲の前記感圧アクリレート接着剤の層の厚みを特徴とする、上記の特徴1〜14のいずれかに記載の接着テープ。
16. 前記感圧アクリレート接着剤の層からなる単層両面接着テープの形態をとる、上記の特徴1〜15のいずれかに記載の接着テープ。
17. 前記感圧アクリレート接着剤の層は、一時的なキャリア材料、特に剥離材料により片面又は両面がライニングされている、上記の特徴16に記載の接着テープ。
18. 重合体成分及び少なくとも1種の添加剤を含む接着剤、特に感圧接着剤であって、
該重合体成分がそれぞれ次の単量体に帰せられる1種以上の共重合体から形成され:
(a)共重合性二重結合を有する1種以上のヒドロキシル含有単量体5〜35質量%、
(b)それぞれ少なくとも1個のアミド基、ウレタン基、尿素基、カルボン酸無水物単位及び/又はエチレングリコール単位を有する1種以上のアクリレート及び/又はメタクリレート単量体0〜50質量%、
(c)アルキル基が1〜14個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキル15〜95質量%、
該感圧アクリレート接着剤が添加剤として1種以上の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)誘導体と混合されていることを特徴とする接着剤。
19. さらなる添加剤として1種以上の[3,5−ビス(1,1−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]アルキルマロネート誘導体及び/又は1種以上の二芳香族官能化エタンジアミド誘導体及び/又は1種以上のヒンダードピペリジン誘導体が混合されていることを特徴とする、上記の特徴18に記載の接着剤。
20. 上記の特徴18又は19に記載の接着剤又は上記の特徴1〜17のいずれかに記載の接着テープの、基材を導電性フィルムに結合させるための使用、特に光学装置、電子装置及び光電子装置における使用、及び/又は接触画面を製造するための及び/又は電場を生成させるための使用。
21. 前記結合基材の一方が光学的に透明であり、特にガラス又はポリカーボネートからなることを特徴とする、上記の特徴20に記載の使用。
22. 前記導電性フィルムが表面にナノスケールの銀線を有するか又はインジウムスズ酸化物(ITO)層を有するフィルムであることを特徴とする、上記の特徴20又は21に記載の使用。