特許第6427198号(P6427198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427198
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】細胞を含む液体媒体を処理するデバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20181112BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20181112BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20181112BHJP
   A61M 1/02 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   C12M1/34 A
   C12M1/00 A
   A61M1/36 181
   A61M1/02 125
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-546948(P2016-546948)
(86)(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公表番号】特表2017-508443(P2017-508443A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2014078121
(87)【国際公開番号】WO2015110229
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年12月14日
(31)【優先権主張番号】14152634.3
(32)【優先日】2014年1月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509063694
【氏名又は名称】フレゼニウス カービ ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マイスベルガー, アルトゥア
(72)【発明者】
【氏名】ファーレンドルフ, メラニー
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクマン, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ビエル, マルティン
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−217908(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1925327(EP,A1)
【文献】 特開平7−313587(JP,A)
【文献】 特開2005−103256(JP,A)
【文献】 特表2008−525107(JP,A)
【文献】 特開2008−194067(JP,A)
【文献】 特開平11−267195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
A61M 1/00−38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体(4’)が得られるように、初期濃度の細胞を含む初期液体媒体(4)を処理するデバイスであって、該デバイス(2)が、
前記初期液体媒体(4)を様々な成分へと分離するよう適合されたセパレータ(6)と、
前記初期液体媒体(4)を前記セパレータ(6)に供給する第1の供給システム(8)と、
前記セパレータ(6)から前記生成物液体媒体(4’)を抜き出す第1の排出システム(12)と、
前記初期液体媒体(4)又は前記生成物液体媒体(4’)における前記細胞の濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されたセンサ(22、22’)と、
前記センサ(22、22’)に接続し、該センサ(22、22’)により測定された前記物理パラメータに応じて前記デバイス(2)の少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう適合されたコントロールユニット(24)と、
を備え、
溶液(18)を前記セパレータ(6)へと所与の流量にて供給する第2の供給システム(10)であって、該セパレータ(6)への該溶液の供給中の該第2の供給システム(10)における該溶液(18)の流量を前記少なくとも1つのプロセスパラメータに基づき決定する、第2の供給システムを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記コントロールユニット(24)が、前記初期液体媒体(4)にて測定された前記細胞の濃度が増大すると、前記第2の供給システム(10)における前記溶液(18)の流量が低減するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセスパラメータによって、前記セパレータ(6)への初期液体媒体の供給中の前記第1の供給システム(8)における前記初期液体媒体(4)の流量、及び/又は前記セパレータ(6)からの前記生成物液体媒体の抜き出し中の前記第1の排出システム(12)における前記生成物液体媒体(4’)の流量を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントロールユニット(24)が、前記初期液体媒体(4)の流量が前記第1の供給システム(8)における該初期液体媒体(4)中の前記細胞の初期濃度と反比例するように該初期液体媒体の流量を、及び/又は前記生成物液体媒体(4’)の流量が前記第1の供給システム(8)における前記初期液体媒体(4)中の前記細胞の初期濃度と正比例するように該生成物液体媒体(4’)の流量を制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記セパレータ(6)が遠心分離器であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記コントロールユニット(24)が、前記遠心分離器の回転速度が前記第1の供給システム(8)における前記初期液体媒体(4)中の前記細胞の初期濃度と反比例するように、前記少なくとも1つのプロセスパラメータに基づき該回転速度を制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の供給システム(8)が供給ライン(8b)を備え、その中を通って前記初期液体媒体(4)が前記セパレータ(6)へと流れ、かつ前記センサ(22)が前記第1の供給システム(8)の該供給ライン(8b)に存在する前記初期液体媒体(4)中の前記細胞の初期濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の排出システム(12)が排出ライン(12b)を備え、その中を通って前記生成物液体媒体(4’)が前記セパレータ(6)から流れ出て、かつ前記センサ(22’)が前記第1の排出システム(12)の該排出ライン(12b)に存在する前記生成物液体媒体(4’)中の前記細胞の生成物濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記コントロールユニット(24)が、前記生成物液体媒体中の前記細胞の生成物濃度が既定の濃度範囲内となるように、前記デバイス(2)の少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記コントロールユニット(24)が、前記生成物液体媒体(4’)中の前記細胞の生成物濃度が最大となるように、前記デバイス(2)の少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイス(2)がin vitroにて稼働するよう構成されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記初期液体媒体(4)中の前記細胞の濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合された第1のセンサ(22)と、前記生成物液体媒体(4’)中の前記細胞の濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合された第2のセンサ(22’)とを備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体(4’)が得られるように、初期濃度の細胞を含む初期液体媒体(4)を処理する方法であって、該方法が、
前記初期液体媒体(4)をセパレータ(6)に第1の供給システム(8)を介して供給する工程と、
前記セパレータ(6)にて、前記生成物液体媒体(4’)が得られるように、前記初期液体媒体(4)を様々な成分へと分離する工程と、
前記セパレータ(6)から前記生成物液体媒体(4’)を第1の排出システム(12)を介して抜き出す工程と、
センサ(22、22’)を用いて、前記初期液体媒体(4)又は前記生成物液体媒体(4’)中の前記細胞の濃度に関連する物理パラメータを測定する工程と、
前記センサ(22、22’)により測定された前記物理パラメータに応じて少なくとも1つのプロセスパラメータを制御する工程と、
を含み、
前記初期液体媒体(4)を様々な成分へと分離する工程中に、溶液(18)を前記セパレータ(6)へと所与の流量にて第2の供給システム(10)を介して供給し、該溶液の該セパレータ(6)への供給中に該第2の供給システム(10)中の該溶液(18)の流量を前記少なくとも1つのプロセスパラメータに基づき決定することを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス(2)を用いて行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記液体媒体(4)が血球を含む血液であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は請求項13のプリアンブルにそれぞれ記載されている、生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体が得られるように初期濃度の細胞を含む初期液体媒体を処理するデバイス及び方法に関する。細胞は生きた細胞とすることができる。
【背景技術】
【0002】
このようなデバイス及び対応する方法は従来技術より知られている。このデバイスは通例、初期液体媒体を様々な成分へと分離するよう適合されたセパレータと、初期液体媒体をセパレータに供給する第1の供給システムと、セパレータから生成物液体媒体を抜き出す(extracting)第1の排出システムと、初期液体媒体又は生成物液体媒体における細胞の濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されたセンサと、センサに接続し、センサにより測定された物理パラメータに応じてデバイスの少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう適合されたコントロールユニットとを備える。
【0003】
このようなデバイスは通例、血液を様々な成分へと分離するのに、特に例えば特許文献1に記載されるように赤血球(エリスロサイト)を抜き出すのに用いられる。血液を様々な成分へと分離するのに知られるデバイスはin vivo処理に、特に手術中の血液処理に適しており、ポンプを備えた取込みラインとエリスロサイト画分のための吐出しラインとを有するセパレータを備えるものである。取込みラインのポンプを制御するために、ヘマトクリット値の連続測定用のセンサが取込みラインに設けられている。測定されたヘマトクリット値は調節手段のインプットとして働く。この調節手段のアウトプットを用いて、測定されたヘマトクリットシグナルに応じてポンプを介して血流量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0528238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このようなデバイスを、初期濃度の細胞を含む初期液体媒体のin vivo及びin vitro処理に使用することで、生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体を得ることができるよう改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1によれば、溶液を所与の流量にてセパレータに供給する第2の供給システムが設けられている。この溶液を、初期液体媒体を処理するのに使用し、洗い出すことで、生成物液体媒体が得られる。例えばこの溶液は、洗浄溶液、例えば生理食塩溶液、細胞培養培地、血漿、アルブミン等とすることができる。溶液のセパレータへの供給中の第2の供給システムにおける溶液の流量は、センサに接続したコントロールユニットにより制御されているデバイスの少なくとも1つのプロセスパラメータによって決定される。特に、コントロールユニットは、初期液体媒体にて測定された細胞の濃度が増大すると、第2の供給システムにおける溶液の流量が低減するよう構成することができる。in vivo処理には第2の供給システムにおける溶液の実質的に同じ流量が必要とされるが、in vitro処理についてのこの流量は所望の生成物液体媒体の処理速度又は品質に応じて異なり得る。特に第2の供給システムの流量を変えることが可能であることから、デバイスをin vitroにて稼働させることが可能となる。
【0007】
第2の供給システムにおける溶液の流量の他に、コントロールユニットにより制御されるプロセスパラメータから、溶液のセパレータへの供給中の第1の供給システムにおける初期液体媒体の流量及び/又はセパレータからの生成物液体媒体の抜き出し中の第1の排出システムにおける生成物液体媒体の流量も決定することができる。コントロールユニットは、第1の供給システムにおける初期液体媒体中の細胞の初期濃度と反比例するように、初期液体媒体の流量を制御するよう構成することができる。また生成物液体媒体の流量は、第1の供給システムにおける初期液体媒体中の細胞の初期濃度と正比例するように制御することもできる。
【0008】
本発明の一態様によれば、セパレータは初期液体媒体を様々な成分へと分離するよう適合された遠心分離器である。遠心分離器は平板らせんチャネルとして設計することができる。代替的に、遠心分離器は釣鐘状のボウルとすることができる。プロセスパラメータを、遠心分離器の回転速度を制御するのに用いることができる。コントロールユニットは、第1の供給システムにおける初期液体媒体中の細胞の初期濃度と反比例するように、回転速度を制御するよう構成されているのが好ましい。セパレータは連続して又は不連続に(バッチ式で)稼働することができる。
【0009】
代替的には、セパレータは膜、例えば紡糸膜、平板膜又は中空繊維膜とすることができる。
【0010】
第1の供給システムは供給ラインを備え、その中を通って初期液体媒体がセパレータへと流れる。対応して、第1の排出システムは排出ラインを備え、その中を通って生成物液体媒体がセパレータから流れ出る。センサによって初期液体媒体中の細胞の初期濃度に関連する物理パラメータが測定される場合、測定は第1の供給システムの供給ラインに存在する初期液体媒体について行うのが好ましい。センサによって生成物液体媒体中の細胞の生成物濃度に関連する物理パラメータが測定される場合、測定は第1の排出システムの排出ラインに存在する生成物液体媒体について行うのが好ましい。
【0011】
細胞の濃度に関する品質が本質的に一定の生成物液体媒体を得るために、コントロールユニットは、生成物液体媒体中の細胞の生成物濃度が既定の濃度範囲内となるように、デバイスの少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう構成することができる。代替的には、コントロールユニットは、生成物液体媒体中の細胞の生成物濃度が最大となるように、デバイスの少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう構成することができる。
【0012】
別の実施の形態によれば、上記デバイスは初期液体媒体中の細胞の濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合された第1のセンサ及び生成物液体媒体中の細胞の濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合された第2のセンサという2つのセンサを備える。
【0013】
請求項13及びその従属クレームは、生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体が得られるように、初期濃度の細胞を含む初期液体媒体を処理する方法を表している。
【0014】
これより本発明の基礎となる思想を、図面に示される実施形態を参照してより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態による細胞を含む液体媒体を処理するデバイスの概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態による細胞を含む液体媒体を処理するデバイスの概略図である。
図3】本発明の第3の実施形態による細胞を含む液体媒体を処理するデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体4’が得られるように初期濃度の細胞を含む初期液体媒体4を処理するデバイス2の第1の実施形態を示す。生成物濃度は初期濃度よりも高いことが意図される。例えば、上記初期液体媒体4は血球(主に赤血球であるが、白血球及び血小板も含む)と血漿とを含む血液とすることができる。本明細書では、対象となる細胞は赤血球であり、これはエリスロサイトとも称される。血中の赤血球の体積百分率はヘマトクリットと称される。生成物液体媒体4’は血液から分離されたエリスロサイト画分である。さらに、初期液体媒体4には、すすぎ溶液、脂肪、残屑及び/又は特定構成要素、例えば組織、小骨粒子等の大部分が含まれ得る。これらの更なる構成要素が流入血4のヘマトクリット値を大きく下げ得る。
【0017】
デバイス2は初期液体媒体4をin vivo、更には特にin vitroにて処理するよう適合されている。このデバイスは2つの供給システム8、10と2つの排出システム12、14とに接続されているセパレータ6を含む。
【0018】
図1に示される実施形態のセパレータ6は遠心分離器である。セパレータ6は回転軸Aの周りを回転することができる分離チャンバ16と駆動ユニット(図示せず)を含む。図1に示されるセパレータ6の好ましい回転方向は反時計回りであり、図1において矢印Rで示されている。しかしながら、回転方向は逆であってもよい。
【0019】
分離チャンバ16は(透明な)プラスチック材料製の使い捨て部品とすることができる。分離チャンバ16は、回転方向Rに沿ってチャネルと軸Aとの距離を広げながら、回転軸Aの周りに巻回する本質的に平板ならせんチャネルとして設計されている。セパレータ6は185mlの容量を含む。代替的には他の容量を用いてもよい。
【0020】
第1の供給システム8は処理対象の初期液体媒体4(血液)をセパレータ6に供給するよう適合されている。第1の供給システム8は、セパレータ6のらせんチャネルの最内端(軸Aに最も近い)に供給ライン8bを介して接続されているリザーバ8aを含む。供給ライン8bはリザーバ8aから供給ライン8bを通ってセパレータ6へと送られる初期液体媒体4の流量を調整するよう適合された調整ポンプ8cを含む。
【0021】
第1の排出システム12は、初期液体媒体4を処理した後、セパレータ6から生成物液体媒体4’(エリスロサイト画分)を抜き出すよう適合されている。第1の排出システム12は、セパレータ6のらせん型チャネルの最外端(軸Aから最も離れた)に排出ライン12bを介して接続されているリザーバ12aを含む。排出ライン12bはセパレータ6から排出ライン12bを通ってリザーバ12aへと送られる生成物液体媒体4’の流量を調整するよう適合された調整ポンプ12cを含む。
【0022】
第2の供給システム10は洗浄溶液18をセパレータ6へと供給するよう適合されている。洗浄溶液18は生理食塩溶液とすることができ、液体媒体4の処理中に細胞を再懸濁するためにセパレータ6に提供される。原則、洗浄溶液18は宿主細胞に適した任意の媒体とすることができる。例えば媒体は細胞培養培地、血漿、アルブミン等とすることができる。第2の供給システム10はセパレータ6に供給ライン10bを介して接続されているリザーバ10aを含む。供給ライン10bは好ましくはセパレータの最外端まで約90度〜180度のセパレータ6のらせんチャネルに到達する。概して、供給ライン10bがらせんチャネルに到達する位置は初期液体媒体4について十分な分離時間が確保されるように選ばれる。そのため、要求される品質の生成物液体媒体4’を得ることができるように、細胞を洗浄工程後に再び分離又は沈殿させるために、供給ライン10bは生成物液体媒体4’がセパレータ6から離れる排出ライン12bから少し離れたらせんチャネルに到達する。処理対象の初期液体媒体4の種類及び細胞の型に応じて、供給ライン10bがらせんチャネルに到達する位置を変えることができる。供給ライン10bはリザーバ10aから供給ライン10bを通ってセパレータ6へと送られる洗浄溶液18の流量を調整するよう適合された調整ポンプ10cを含む。
【0023】
調整ポンプ8c、10c及び12c、ひいては流入する初期液体媒体4、流入する洗浄溶液18及び抜き出される生成物液体媒体4’の流量を独立して、手動にて又は下記のコントロールユニット24を用いて制御することができる。
【0024】
第2の排出システム14は初期液体媒体4の処理中にセパレータ6から廃棄物20、例えば脂肪、残屑、抗凝固剤、損傷細胞、及び余分な洗浄溶液を抜き出すよう適合されている。第2の排出システム14は排出ライン14bを介してセパレータ6に接続されているリザーバ14aを含む。排出ライン14bはセパレータの最内端から好ましくは約270度のセパレータ6のらせんチャネルに到達する。概して、排出ライン14bは供給ライン10bがらせんチャネルに到達する位置と、らせんチャネルの最内端から360度との間のいずれの位置のらせんチャネルに到達してもよい。図1によれば、第2の排出システム14には調整ポンプは含まれない。しかしながら、セパレータから排出ライン14bを通ってリザーバ14aへと送られる廃棄物20の抜き出し率を調整するよう適合された調整ポンプを設けることができる。
【0025】
デバイス2は、第1の供給システム8における初期液体媒体4中の細胞の初期濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されたセンサ22(例えば超音波センサ又は光学センサ)を更に含む。初期液体媒体4が血液である場合、センサ22は血液のヘマトクリット値又はヘマトクリットを推定することができる任意の関連する物理パラメータ(例えば光透過性、粘度、密度)を測定するよう適合され得る。流入血のヘマトクリット値は、通例5%〜70%の間で大きく変動し得る。ヘマトクリット値は初期液体媒体4が第1の供給システム8のリザーバ8aに留まっている時間に応じて最大85%にまでなる場合がある。センサ22は第1の供給システム8のリザーバ8aとポンプ8cとの間(ポンプ8cの上流)の供給ライン8bにおける血液のヘマトクリット値を測定するために設けられているのが好ましい。測定は定期的に、例えば5秒〜10秒毎に行うが、定期性を調整することができる。
【0026】
代替的に、センサ22は第1の供給システム8のリザーバ8aにおける、又は、ポンプ8cとセパレータ6の入り口との間の供給ライン8bにおける血液のヘマトクリット値を測定するために設けることができる。
【0027】
コントロールユニット24は、生成物液体媒体4’中の細胞の生成物濃度が国内標準及び顧客の要求に依存し得る既定の濃度範囲内となるように、デバイス2の少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう設けられ、構成されている。エリスロサイト画分4’のヘマトクリットは好ましくは55%〜70%、より好ましくは60%〜65%である。
【0028】
このため、コントロールユニット24は、一方がセンサ22に接続され、もう一方がプロセスパラメータに関連するデバイスの各要素に接続されている(図1の破線に示されている)。図1の実施形態では、各要素は調整ポンプ10cである。センサ22により測定される細胞の濃度に関連する物理パラメータ(ヘマトクリット値)はコントロールユニット24への入力信号として用いられ、このコントロールユニットによって、センサ22により測定される物理パラメータに応じて出力信号が生成される。この出力信号を用いて、デバイスの各要素のプロセスパラメータを制御する。このようにしてコントロールユニット24は、センサ22により測定される物理パラメータに応じてデバイス2の少なくとも1つのプロセスパラメータを制御するよう適合されている。
【0029】
図1に示される実施形態によれば、プロセスパラメータから、洗浄溶液18のセパレータ6への流量が決定される。そのため、図1のコントロールユニット24は第2の供給システム10のポンプ10c及びセンサ22に接続されている。
【0030】
別の実施形態によれば(図示せず)、コントロールユニット24はデバイス2のいくつかのプロセスパラメータを同時に(又はセパレータ6への洗浄溶液18の流量以外のプロセスパラメータを)制御するために設けることができる。洗浄溶液18の流量に加えて(又はその代替として)、更なるプロセスパラメータから、初期液体媒体4の流量、生成物液体媒体4’の流量、及び/又はセパレータ6の回転速度を決定することができる。それに対応して、コントロールユニット24は、第1の供給システム8のポンプ8c、第1の排出システム12のポンプ12c、及び/又はセパレータ6の駆動ユニットに接続されていてもよい。
【0031】
特に、コントロールユニット24は、洗浄溶液18の流量、初期液体媒体4の流量、生成物液体媒体4’の流量、及びセパレータ6の回転速度を決定するいくつかのプロセスパラメータを同時に制御するために設けることができる。概して、コントロールユニット24は、ヘマトクリット値が増大するに従い、洗浄溶液18の流量、流入血の流量、及びセパレータ6の回転速度が低減し、またエリスロサイト画分の流量が増大するよう構成されている。表Iにおいて、例えばG. Shulman in The Journal Of Extra-Corporeal Technology, Vol. 32, Nr. 1, March 2000, p. 11-19に記載の連続自己血輸血システム(C.A.T.S.)についてのFresenius Kabiの自己血輸血セットATの回転式セパレータチャンバの形態のセパレータ6を備えるデバイスについてヘマトクリット値と種々のプロセスパラメータとの間の関係の例を示す。より具体的には、表IにFresenius Kabiのスパイラル式分離チャンバの通常稼働条件についての流量範囲及び値を示している。概して、これらの値は使用されるセパレータ6の特性に応じて異なる。
【0032】
【表1】
【0033】
代替的には、米国特許出願公開第2013/0310241号に記載の遠心分離チャンバ、米国特許第4943273号に記載の使い捨て遠心分離ボウル、欧州特許第0799645号に記載のレーサムボウル、T. Zeiler and V. Kretschmer in Infus. Ther. Transfus. Med., Vol 27, Nr. 3, 2000, p. 119-126、及びE. F. Strasser et al. in Transfusion, Vol. 46, January 2006, p. 66-73に記載のC4二段分離チャンバ、又は欧州特許第0527973号に記載の回転式膜分離デバイスをデバイス2に使用することができる。変動及びプロセスパラメータ相互作用の概念はこれらのタイプの分離チャンバ全てにおいて同様であるが、関連パラメータの絶対値は異なり得る。
【0034】
図2にセンサ22’の位置が本質的に第1の実施形態と異なる第2の実施形態を示す。第2の実施形態によれば、センサ22’は第1の排出システム12のポンプ12cとセパレータ6との間(ポンプ12cの上流)に設けられており、第1の排出システム12における生成物液体媒体4’中の細胞の生成物濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されている。代替的に、センサ22’は第1の排出システム12のリザーバ12a、又はポンプ12cとリザーバ12aとの間の排出ライン12bにおける生成物液体媒体中の細胞の生成物濃度に関連する物理パラメータを測定するために設けることができる。生成物液体媒体4’がセパレータ6に送られる血液のエリスロサイト画分により形成される場合、この時センサ22’(例えば超音波センサ又は光学センサ)はヘマトクリット値又はエリスロサイト画分のヘマトクリット値に関連する物理パラメータを測定するよう適合され得る。この場合、センサ22’はエリスロサイト画分のヘマトクリット値の上昇(50%〜90%)を測定するよう適合されていなければならない。測定は定期的に、例えば5秒〜10秒毎に行うが、定期性を調整することができる。
【0035】
さらに、エリスロサイト画分のヘマトクリット値を測定するセンサ22’は品質管理の役割を果たすことができる。このためヘマトクリット値を、血液プロセス処理全体を通じて測定することができる。次いで、経時的に(特に血液プロセス処理全体の時間間隔に亘る)ヘマトクリット値が積分されることにより、第1の排出システム12のリザーバ12aにおけるエリスロサイト画分全体の総赤血球含量が導かれる。総赤血球含量をポンプ12cにより測定された体積で除算することで、リザーバ12aにおけるエリスロサイト産物の平均総ヘマトクリットが得られる。
【0036】
また、処理対象の血液のヘマトクリット値を測定する第1の実施形態のセンサ22も、処理対象の血液の総赤血球含量を決定する役割を果たすことができる。
【0037】
細胞の初期濃度又は生成物濃度に関連する物理パラメータを、プロセス処理、初期液体媒体4の組成、及び生成物液体媒体4’の組成の分析を簡略化するために、時間に応じてグラフに示すことができる。
【0038】
図3に示される第3の実施形態によれば、デバイス2は2つのセンサ22、22’を備える。第1のセンサ22は第1の供給システム8における初期液体媒体4中の細胞の初期濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されている。第2のセンサ22’は第1の排出システム12における生成物液体媒体4’中の細胞の生成物濃度に関連する物理パラメータを測定するよう適合されている。センサ22、22’はそれぞれ、第1の供給システム8及び第1の排出システム12における対応するポンプ8c、12cの上流に設けられているのが好ましい。代替的に、センサ22、22’はそれぞれ、第1の供給システム8及び第1の排出システム12の他のいずれの位置にも設けることができる。
【0039】
センサ22、22’は両方とも図3において破線で示されるようにコントロールユニット24に接続されており、センサ22、22’により測定された物理パラメータはコントロールユニット24への入力信号として用いられ、このコントロールユニットによって、センサ22及び22’により測定された物理パラメータに応じて出力信号が生成される。第1のセンサ22は第1の実施形態(図1)におけるセンサ22と同様に初期液体媒体4のヘマトクリット値をモニタリングするものである。第2のセンサ22’は生成物液体媒体4’のヘマトクリット値、ひいては第1のセンサ22の測定結果に基づく制御の効果をモニタリングするものである。第2のセンサ22’は、必要に応じてデバイス2のプロセスパラメータを更に変更するために、コントロールユニット24に即時フィードバックを与えることができる。
【0040】
上記2つのセンサ22、22’を用いることで、既に第1の実施形態及び第2の実施形態において概説されているように、処理対象の血液の総赤血球含量、及び第1の排出システム12のリザーバ12aにおけるエリスロサイト画分全体の総赤血球含量を求めることが可能となる。上記2つのセンサ22、22’を用いることで更に、下記方程式に基づきデバイス2における初期液体媒体を処理した後の細胞の収量(効果、収率、収集率、回収、回収率又は有効性としても知られる)を算出することが可能となる:
収量[%]=V生成物液体媒体・生成物濃度・100/V初期液体媒体・初期濃度
【0041】
第3の実施形態のコントロールユニット24はセパレータ6への洗浄溶液18の流量を制御するよう構成されており、そのため図3に示されるように第2の供給システム10のポンプ10cに接続されている。
【0042】
図1及び図2に示される実施形態と同様に、コントロールユニット24はデバイス2のいくつかのプロセスパラメータを同時に(又はセパレータ6への洗浄溶液18の流量以外のプロセスパラメータを)制御するよう構成され得る。洗浄溶液18の流量に加えて(又はその代替として)、プロセスパラメータから、初期液体媒体4の流量、生成物液体媒体4’の流量、及び/又はセパレータ(遠心分離器)6の回転速度を決定することができる。それに対応して、コントロールユニット24は、第1の供給システム8のポンプ8c、第1の排出システム12のポンプ12c、及び/又はセパレータ6の駆動ユニットにも接続されることができる。
【0043】
特に、コントロールユニット24は、洗浄溶液18の流量、初期液体媒体4の流量、生成物液体媒体4’の流量、及びセパレータ6の回転速度を決定するいくつかのプロセスパラメータを同時に制御するために設けることができる。
【0044】
2つのセンサ22、22’の一方に不具合があった場合、残りのセンサを用いてデバイス2の稼働を継続することが可能である。
【0045】
生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体4’を得るための初期濃度の細胞を含む初期液体媒体4のin vitro処理に、デバイス2を用いて、既定の生成物濃度の細胞又は最大の生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体4’を得ることができる。下記に、生成物液体媒体4’として血液のエリスロサイト画分を得るのに処理される初期液体媒体4として血液を用いる方法を記載する。
【0046】
まず、第1の供給システムのリザーバ8aを、既定量の(例えば100mlを超える)血液で(一部)満たし、第2の供給システムのリザーバ10aを、処理中の洗浄のために洗浄溶液18、例えば生理食塩溶液、細胞培養培地、血漿、アルブミン等で満たす。第1の供給システム8のポンプ8cを介して血液を規定の流量にてリザーバ8aからセパレータ6へと移す。上記ポンプ8cを通る前、血液のヘマトクリット又はヘマトクリットの算出を可能にする、ヘマトクリットに関連する物理パラメータをセンサ22により測定する。センサ22により測定される値はコントロールユニット24へと送られ、表Iに示される関係性に従って測定値に応じて制御信号を決定するのに用いられる。制御信号は、洗浄溶液18の流量、初期液体媒体4の流量、生成物液体媒体4’の流量及び/又はセパレータ6の回転速度から選ばれ得る1つ又は複数のプロセスパラメータを制御するのに用いられる。特にヘマトクリット値が増大するに従い、コントロールユニット24によって、洗浄溶液18の流量、流入血の流量、及びセパレータ6の回転速度が低減し、かつエリスロサイト画分の流量が増大する。
【0047】
セパレータ6の分離チャンバ16において、血液に対して第1の分離段階を行う。セパレータ6の回転速度はセンサ22によって流入血について求められるヘマトクリットに応じて異なる。この段階では、血液はおよそ80%のヘマトクリットまで濃縮される。血漿、脂肪、残屑、抗凝固剤又は損傷細胞は第2の排出システム14を介して洗い出され、第2の排出システム14のリザーバ14aに収集される。
【0048】
続く洗浄段階では、濃縮血に存在するエリスロサイトを再懸濁するために、洗浄溶液18を分離チャンバ16に添加する。残存する血漿、脂肪、残屑、抗凝固剤又は損傷細胞は第2の排出システム14を介して洗い出される。
【0049】
洗浄段階の後、部分的に処理した血液に対して第2の分離段階を行い、その間に洗浄溶液18が遠心分離により洗い出される。エリスロサイトは60%〜65%のヘマトクリットとなり、エリスロサイト画分は第1の排出システム12を介して切り離され、第1の排出システム12のリザーバ12aに収集される。
【0050】
任意に、エリスロサイト画分のヘマトクリットはセパレータ6とリザーバ12aとの間に位置する第2のセンサ22’により求めることができる。エリスロサイト画分のヘマトクリット値は情報の役割を果たすことができる。加えて、エリスロサイト画分のヘマトクリット(又はヘマトクリットに関連する物理パラメータ)は、コントロールユニット24を用いてデバイスの1つ又は複数のプロセスパラメータを制御するのに用いることができる。
【0051】
生成物濃度の細胞を含む生成物液体媒体が得られるように初期濃度の細胞を含む初期液体媒体を処理するデバイス及び方法を例示的に、血液を初期液体媒体、及びそのエリスロサイト画分を生成物液体媒体として説明してきたが、上記のデバイス及び方法はこれらの物質に限定されない。それらのデバイス及び方法は、栄養液から幹細胞を分離するのに、又は血液からエリスロサイト以外の細胞血液成分を分離するのに、又は互いに異なる細胞型を分離するのにも利用することができる。
図1
図2
図3