(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜に設けられて前記固体高分子電解質膜から外側に突出するとともに環状に延在するフィルム状の成形品を成形する固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工方法であって、
フィルム材を第1型と押さえ部とで挟持する押さえ工程と、
前記第1型と前記押さえ部とで前記フィルム材を挟持した状態で第2型を前記第1型に近接させることによって前記第2型に設けられたトリム刃で前記フィルム材を切断するトリム加工工程と、を含み、
前記トリム刃は、前記トリム刃の移動方向と交差する方向に延在して先端に刃先が形成された刃部を有し、
前記刃先は、前記刃部の延在方向の中央部から前記刃部の両端に向かって前記刃部の基端側に傾斜した2つの傾斜刃先を有する、
ことを特徴とする固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工方法。
固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜に設けられて前記固体高分子電解質膜から外側に突出するとともに環状に延在するフィルム状の成形品を成形する固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工装置であって、
フィルム材が配置される第1型と、
前記第1型に対して近接離間する方向に移動可能な第2型と、
前記第1型との間で前記フィルム材を挟持する押さえ部と、
前記第2型に設けられて前記フィルム材を切断するトリム刃と、を備え、
前記トリム刃は、前記トリム刃の移動方向と交差する方向に延在して先端に刃先が形成された刃部を含み、
前記刃先は、前記刃部の延在方向の中央部から前記刃部の両端に向かって前記刃部の基端側に傾斜した2つの傾斜刃先を有する、
ことを特徴とする固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、フィルム材を切断するトリム刃の刃先は、上型の昇降方向と直交する方向(フィルム材の表面)に対して平行に延在している。そのため、トリム加工の際、トリム刃の刃先の全体がフィルム材に略同時に接触する。この場合、トリム加工に必要な荷重(プレス加工装置に対する負荷)が大きく、プレス加工装置の寿命が短くなりやすい。
【0005】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、トリム加工に必要なプレス荷重を低減することによりプレス加工装置の寿命の長期化を図ることができる固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工方法及びプレス加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工方法は、固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜に設けられて前記固体高分子電解質膜から外側に突出するとともに環状に延在するフィルム状の成形品を成形するプレス加工方法であって、フィルム材を第1型と押さえ部とで挟持する押さえ工程と、前記第1型と前記押さえ部とで前記フィルム材を挟持した状態で第2型を前記第1型に近接させることによって前記第2型に設けられたトリム刃で前記フィルム材を切断するトリム加工工程と、を含み、前記トリム刃は、前記トリム刃の移動方向と交差する方向に延在して先端に刃先が形成された刃部を有し、前記刃先は、前記刃部の延在方向の中央部から前記刃部の両端に向かって前記刃部の基端側に傾斜した2つの傾斜刃先を有することを特徴とする。
【0007】
上記のプレス加工方法において、前記成形品の外周は、矩形状に形成され、前記トリム刃は、互いに対向する2つの前記刃部を有し、前記トリム加工工程では、各前記刃部によって前記フィルム材を切断することにより、前記成形品の互いに対向する2辺を形成することが好ましい。
【0008】
上記のプレス加工方法において、前記第1型と前記押さえ部とで前記フィルム材を挟持した状態で前記第2型に設けられたパンチ部により前記フィルム材に貫通孔を形成するピアス加工工程を行い、前記トリム加工工程では、前記ピアス加工工程において前記フィルム材に前記貫通孔が形成された後で、前記トリム刃が前記フィルム材に接触することが好ましい。
【0009】
上記のプレス加工方法において、前記フィルム材に形成された第1位置決め孔に前記第1型の第1位置決めピンを挿入するとともに前記フィルム材に形成された第2位置決め孔に前記第1型の第2位置決めピンを挿入することにより、前記フィルム材を前記第1型に対して位置決めする位置決め工程を前記押さえ工程の前に行い、前記ピアス加工工程では、前記フィルム材のうち前記第1位置決め孔が位置する部位を切除し、前記トリム加工工程では、前記フィルム材のうち前記第2位置決め孔が位置する部位を切除することが好ましい。
【0010】
上記のプレス加工方法において、前記パンチ部は、前記第1位置決めピンが挿入される内孔を有しており、前記ピアス加工工程では、前記パンチ部の内孔に前記第1位置決めピンが位置するように前記フィルム材に前記貫通孔を形成することが好ましい。
【0011】
本発明の固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工装置は、固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜に設けられて前記固体高分子電解質膜から外側に突出するとともに環状に延在するフィルム状の成形品を成形するプレス加工装置であって、前記フィルム材が配置される第1型と、前記第1型に対して近接離間する方向に移動可能な第2型と、前記第1型との間で前記フィルム材を挟持する押さえ部と、前記第2型に設けられて前記フィルム材を切断するトリム刃と、を備え、前記トリム刃は、前記トリム刃の移動方向と交差する方向に延在して先端に刃先が形成された刃部を含み、前記刃先は、前記刃部の延在方向の中央部から前記刃部の両端に向かって前記刃部の基端側に傾斜した2つの傾斜刃先を有することを特徴とする。
【0012】
上記のプレス加工装置において、前記傾斜刃先の前記フィルム材の表面に対する傾斜角度は、2°以上4°以下であることが好ましい。
【0013】
上記のプレス加工装置において、前記刃先は、2つの傾斜刃先が連結した角である中央刃先を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、刃先が刃部の延在方向の中央部から両端に向かって基端側に傾斜した2つの傾斜刃先を含むため、傾斜刃先とフィルム材とが互いに傾斜した状態でトリム刃がフィルム材の厚さ方向に移動させることができる。そうすると、傾斜刃先とフィルム材との接触部位がフィルム材の厚さ方向と直交する方向(刃部の延在方向の両端側)に移動する。これにより、フィルム材に対して平行に延在する刃先を有するトリム刃によって刃先の全体をフィルム材に接触させながらフィルム材を切断する場合と比較して、フィルム材に対するトリム刃の接触面積を小さくすることができる。よって、トリム加工に必要なプレス荷重を低減することができ、プレス加工装置の寿命の長期化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工方法及びプレス加工装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態に係る固体高分子型燃料電池用フィルム成形品のプレス加工方法に用いられるプレス加工装置10は、フィルム材12をせん断加工して固体高分子型燃料電池(以下、燃料電池14という。)の補強フィルム16を成形するためのものである。
【0018】
まず、成形品である補強フィルム16について燃料電池14との関係で説明する。
図1及び
図2Aに示すように、燃料電池14は、矩形状に形成されており、固体高分子電解質膜18をアノード電極20及びカソード電極22で挟持した電解質膜・電極構造体(以下、「MEA24」という。)と、MEA24に設けられた四角形の枠形状の補強フィルム16と、MEA24を挟持する一対のセパレータ13、15とを備える。
【0019】
図1において、燃料電池14(補強フィルム16及び各セパレータ13、15)の長手方向の一端部には、MEA24と各セパレータ13、15の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガス供給連通孔17a、冷却媒体供給連通孔19a及び燃料ガス排出連通孔21bが設けられている。酸化剤ガス供給連通孔17aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する。冷却媒体供給連通孔19aは、冷却媒体を供給する。燃料ガス排出連通孔21bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス供給連通孔17a、冷却媒体供給連通孔19a及び燃料ガス排出連通孔21bは、燃料電池14の短手方向に配列して設けられている。
【0020】
燃料電池14(補強フィルム16及び各セパレータ13、15)の長手方向の他端部には、MEA24と各セパレータ13、15の積層方向に互いに連通して、燃料ガス供給連通孔21a、冷却媒体排出連通孔19b及び酸化剤ガス排出連通孔17bが設けられている。燃料ガス供給連通孔21aは、燃料ガスを供給し、冷却媒体排出連通孔19bは、冷却媒体を排出し、酸化剤ガス排出連通孔17bは、酸化剤ガスを排出する。燃料ガス供給連通孔21a、冷却媒体排出連通孔19b及び酸化剤ガス排出連通孔17bは、燃料電池14の短手方向に配列して設けられている。
【0021】
MEA24は、いわゆる段差MEAであって、アノード電極20が固体高分子電解質膜18と同一の平面寸法に形成されるとともにカソード電極22が固体高分子電解質膜18よりも一回り小さな平面寸法に形成されている。
【0022】
固体高分子電解質膜18は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された陽イオン交換膜である。ただし、固体高分子電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質膜を使用してもよい。
【0023】
図2Aにおいて、アノード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに接合される電極触媒層23aと、電極触媒層23aに積層されるガス拡散層25aとを有する。アノード電極20は、固体高分子電解質膜18の外形寸法と同一の外径寸法を有するが、固体高分子電解質膜18の外形寸法よりも小さな外形寸法を有してもよい。
【0024】
カソード電極22は、固体高分子電解質膜18の他方の面18bに接合される電極触媒層23bと、電極触媒層23bに積層されるガス拡散層25bとを有する。カソード電極22は、固体高分子電解質膜18の外径寸法よりも小さな外形寸法を有する。ただし、カソード電極22は、アノード電極20が固体高分子電解質膜18の外形寸法よりも小さな外形寸法を有する場合、固体高分子電解質膜18の外形寸法と同一の外形寸法を有していてもよい。
【0025】
電極触媒層23a、23bは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子がガス拡散層25a、25bの表面に一様に塗布されて形成される。ガス拡散層25a、25bは、カーボンペーパ、カーボンクロス等からなる。
【0026】
セパレータ13、15は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、チタン鋼板あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板の断面を凹凸状にプレス成形して構成される。なお、各セパレータ13、15は、金属セパレータに代えて、例えば、カーボンセパレータを使用してもよい。
【0027】
図1及び
図2Aに示すように、セパレータ13のMEA24に向かう面13aには、燃料ガス供給連通孔21aと燃料ガス排出連通孔21bとを連通する燃料ガス流路27が形成される。燃料ガス流路27は、セパレータ13の長手方向に延在する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)により形成される。
【0028】
セパレータ15のMEA24に向かう面15aには、酸化剤ガス供給連通孔17aと酸化剤ガス排出連通孔17bとを連通する酸化剤ガス流路29が形成される。酸化剤ガス流路29は、セパレータ15の長手方向に延在する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)により形成される。
【0029】
セパレータ13の面13bと隣接するセパレータ15の面15bとの間には、冷却媒体供給連通孔19aと冷却媒体排出連通孔19bとに連通する冷却媒体流路31が形成される。冷却媒体流路31は、セパレータ13、15の長手方向に延在する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)により形成される。
【0030】
図2Aに示すように、セパレータ13には、セパレータ13の外周部を周回してシール部材33が一体的又は個別に設けられる。セパレータ15には、セパレータ15の外周部を周回してシール部材35が一体的又は個別に設けられる。シール部材33、35としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
【0031】
補強フィルム16は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)又は変性ポリオレフィン等で構成される。
【0032】
図1〜
図2Bに示すように、補強フィルム16は、固体高分子電解質膜18の外周を補強するためのものであって、固体高分子電解質膜18の外周面に接着剤26により接合されるとともにカソード電極22を周回するように延在したフレーム部材(樹脂枠部材)である。つまり、補強フィルム16の内孔28には、カソード電極22が配設されている(
図2A参照)。補強フィルム16は、固体高分子電解質膜18の外側に突出するとともに環状に延在している。換言すれば、補強フィルム16の外周は、矩形状に形成されている。
【0033】
次に、上記の補強フィルム16を成形するためのプレス加工装置10について加工前のワークであるフィルム材12との関係で説明する。
【0034】
図3及び
図4に示すように、フィルム材12は、四角形の枠形状に構成されており、補強フィルム16の外形よりも一回り大きい外形を有している。フィルム材12には、カソード電極22を配設するための内孔28が形成されている一方、酸化剤ガス供給連通孔17a、酸化剤ガス排出連通孔17b、冷却媒体供給連通孔19a、冷却媒体排出連通孔19b、燃料ガス供給連通孔21a及び燃料ガス排出連通孔21bが形成されていない。ただし、この内孔28は、後の工程で形成するようにしてもよい。なお、以下の説明では、酸化剤ガス供給連通孔17a、酸化剤ガス排出連通孔17b、冷却媒体供給連通孔19a、冷却媒体排出連通孔19b、燃料ガス供給連通孔21a及び燃料ガス排出連通孔21bを区別しない場合に単に貫通孔30ということがある。
【0035】
図4において、フィルム材12には、複数(図示例では2つ)の第1位置決め孔34と、複数(図示例では4つ)の第2位置決め孔36とが形成されている。複数の第1位置決め孔34は、フィルム材12の長手方向の両端側に内孔28を挟むように設けられている。複数の第1位置決め孔34は、フィルム材12のピアス加工ラインLp(貫通孔30に対応する加工ライン)の内側に位置するように設けられている。各第1位置決め孔34は、フィルム材12の短手方向の略中央に位置している。複数の第2位置決め孔36は、フィルム材12の外縁部に設けられている。複数の第2位置決め孔36は、フィルム材12の短手方向から各第1位置決め孔34を挟むように位置している。第2位置決め孔36は、少なくとも2つあればよい。第2位置決め孔36は、フィルム材12の短手方向の一方の外縁部に長手方向に互いに離間するように設けられるのが好ましい。
【0036】
図3に示すように、プレス加工装置10は、矢印A方向に互いに近接離間可能に対向配置された第1型40と第2型42とを備える。第1型40は、下型として構成された固定金型であり、第2型42は、上型として構成された可動金型である。
【0037】
第1型40は、第1ベース部44と、第1ベース部44に設けられてフィルム材12が配置される第1型本体46と、第1ベース部44及び第1型本体46に対して矢印A方向に変位可能な複数の支持部48とを有する。
【0038】
第1ベース部44には、第2型42を矢印A方向に案内するための複数の第1ガイド部50が設けられ、これら第1ガイド部50は、第1ベース部44から第2型42が位置する側(矢印A1方向)に突出している。
【0039】
各支持部48は、第1ベース部44及び第1型本体46を矢印A方向に貫通するように配設されている。各支持部48は、フィルム材12を裏側から支持するものであって、矢印A方向に延在した棒状部材である。
【0040】
図3及び
図4に示すように、複数の支持部48のうち第1位置決め孔34に対向する支持部48には、第1位置決め孔34に挿入される第1位置決めピン52が設けられている。第1位置決めピン52は、支持部48の矢印A1方向の端面から矢印A1方向に突出している。また、第1型40には、フィルム材12の第2位置決め孔36に挿入される複数の第2位置決めピン54が設けられている(
図4参照)。
【0041】
第2型42は、第1型40に対して矢印A方向に移動(昇降)可能に設けられた第2ベース部56と、第2ベース部56に設けられた第2型本体58とを有する。第2ベース部56には、第1ガイド部50が挿入される内孔60aを有する複数の中空状の第2ガイド部60が設けられている。本実施形態では、第2ガイド部60の内孔60aに第1ガイド部50が挿入されることによって第2型42が矢印A方向に案内される構成であるが、第1ガイド部50を中空状に形成して第1ガイド部50の内孔に第2ガイド部60を挿入するようにしてもよい。第2型本体58は、第1型本体46に矢印A方向に対向配置されている。
【0042】
図3及び
図5に示すように、第2型本体58には、第1型40(第1型本体46)との間でフィルム材12を挟持する押さえ部62と、フィルム材12をピアス加工するための複数(
図5では6つ)のパンチ部64と、フィルム材12をトリム加工するためのトリム刃66とが設けられている。
【0043】
押さえ部62は、フィルム材12と第2型本体58の間に配置された状態で第2型本体58に対して複数の付勢部材68によって支持されている。付勢部材68は、押さえ部62をフィルム材12が位置する側(矢印A2方向)に付勢するものであって、例えば、圧縮コイルばねが用いられる。ただし、付勢部材68は、エアーシリンダであってもよい。押さえ部62には、各パンチ部64が挿通される複数(
図5では6つ)の挿通孔70が形成されている。プレス加工装置10には、付勢部材68(圧縮コイルばね)の伸縮に伴う押さえ部62の移動を案内する図示しないガイド部を備えていてもよい。
【0044】
図3において、複数のパンチ部64は、第2型本体58から矢印A2方向に突出している。各パンチ部64は、中空状に構成されており、第2位置決めピン54が挿入可能な内孔64aを有している。ただし、第2位置決めピン54が設けられていない支持部48に対向するパンチ部64は、中実に構成されていてもよい。各パンチ部64の先端は、押さえ部62のうちフィルム材12に接触する面62aよりも矢印A1方向に位置している。
【0045】
図3及び
図5に示すように、トリム刃66は、四角環状に形成されており、補強フィルム16の外周の短辺をフィルム材12に形成するための2つの刃部72と、補強フィルム16の外周の長辺をフィルム材12に形成するための2つの刃部74とを有する。ただし、トリム刃66は、互いに対向する一対の刃部72又は一対の刃部74のみを有していてもよい。2つの刃部72は互いに対向し、2つの刃部74は互いに対向している。各刃部72、74は、トリム刃66の移動方向(矢印A方向)と交差(直交)する方向に延在している。具体的には、各刃部72はフィルム材12の短辺方向に沿って直線状に延在し、各刃部74はフィルム材12の長辺方向に沿って直線状に延在している。ただし、これら刃部72、74は、例えば、補強フィルム16の外周形状が曲線状に延在している場合には、曲線状に延在する。
【0046】
各刃部72の先端のエッジ部には、鋭利な刃先73が形成されている。ただし、各刃部72の先端側は、先端に向かって厚さが薄く形成されていてもよい。刃先73は、その全長に亘って矢印A方向と直交する方向に延在している。
【0047】
図3、
図5及び
図9Aに示すように、各刃部74の先端のエッジ部には、鋭利な刃先75が形成されている。ただし、各刃部74の先端側は、先端に向かって厚さが薄く形成されていてもよい。
図3及び
図9Aにおいて、刃先75は、刃部74の延在方向の中央部から両端に向かって刃部74の基端側に傾斜した2つの傾斜刃先75aと、これら傾斜刃先75aの間に設けられた中央刃先75bとを有する。
【0048】
傾斜刃先75aは、刃部74の延在方向の中央部から両端に向かって直線状に傾斜している。各傾斜刃先75aのフィルム材12の表面12aに対する傾斜角度θは、2°以上4°以下に設定されるのが好ましい(
図9A参照)。ただし、傾斜角度θは、任意に設定可能である。本実施形態では、中央刃先75bの両側に位置する傾斜刃先75aの傾斜角度θは互いに同一であるが、これら傾斜刃先75aの傾斜角度θは互いに異なっていてもよい。
【0049】
中央刃先75bは、2つの傾斜刃先75aの端部同士が連結された角である。つまり、本実施形態では、中央刃先75bは、刃部74の最先端に位置している。この中央刃先75bは、パンチ部64の先端よりも基端側(矢印A1方向)に位置している(
図3参照)。つまり、中央刃先75bは、パンチ部64によってフィルム材12に貫通孔30が形成された後でフィルム材12の表面に接触する。なお、中央刃先75bは、刃先75の延在方向の略中央付近にあればよい。
【0050】
次に、本実施形態に係るプレス加工装置10を用いたプレス加工方法について説明する。
【0051】
まず、
図3及び
図4に示すように、第1型40に対してフィルム材12を位置決めする(
図6のステップS1:位置決め工程)。具体的には、フィルム材12の第1位置決め孔34に第1型40の第1位置決めピン52を挿入するとともにフィルム材12の第2位置決め孔36に第1型40の第2位置決めピン54を挿入する。
【0052】
続いて、
図7に示すように、第2型42を矢印A2方向に移動(第1型40に近接)させることにより、押さえ部62と第1型本体46とでフィルム材12を挟持する(
図6のステップS2:押さえ工程)。具体的には、第2型42が矢印A2方向に移動すると、押さえ部62がフィルム材12の表面12aに接触して付勢部材68が圧縮変形する。そうすると、押さえ部62には、圧縮変形した付勢部材68からフィルム材12が位置する側に向かう方向の付勢力が作用するため、押さえ部62と第1型本体46とでフィルム材12が挟持される。
【0053】
次いで、
図8に示すように、第2型42を矢印A2方向にさらに移動(第1型40に近接)させることにより、第1型本体46と押さえ部62とでフィルム材12を挟持した状態で第2型本体58に設けられた複数のパンチ部64でフィルム材12を複数のピアス加工ラインLp(
図4参照)に沿ってせん断加工する(
図6のステップS3:ピアス加工工程)。これにより、フィルム材12に複数の貫通孔30が形成される。
【0054】
その後、第2型42を矢印A2方向にさらに移動(第1型40に近接)させることにより、第1型本体46と押さえ部62とでフィルム材12を挟持した状態で第2型本体58に設けられたトリム刃66でフィルム材12をトリム加工ラインLt(
図4参照)に沿ってせん断加工する(
図6のステップS4:トリム加工工程)。
【0055】
このトリム加工工程では、ピアス加工工程においてフィルム材12に対して複数の貫通孔30が形成された後で、中央刃先75bと刃先73がフィルム材12の表面12aに接触する(
図9A参照)。その後、傾斜刃先75aとフィルム材12とが互いに傾斜した状態でトリム刃66がフィルム材12の厚さ方向(矢印A2方向)に移動する。そうすると、傾斜刃先75aの中央刃先75b側の部分がフィルム材12に対して接触する一方で傾斜刃先75aの両端部側の部分がフィルム材12に対して非接触となる(
図9B参照)。続いて、トリム刃66が矢印A2方向にさらに移動すると、傾斜刃先75aとフィルム材12との接触部位Cが矢印A方向と直交する方向(刃部74の延在方向の両側)に移動する。つまり、傾斜刃先75aの中央刃先75b側の部分がフィルム材12に対して非接触になるとともに傾斜刃先75aの両端部側の部分がフィルム材12に対して接触する(
図9C参照)。そして、フィルム材12がトリム刃66によって切断されるに至る。これにより、補強フィルム16が成形される。
【0056】
次に、本実施形態の効果について以下に説明する。
【0057】
プレス加工方法は、燃料電池14の固体高分子電解質膜18に設けられて固体高分子電解質膜18から外側に突出するとともに環状に延在するフィルム状の成形品である補強フィルム16を成形する。
【0058】
プレス加工方法では、フィルム材12を第1型40と押さえ部62とで挟持する押さえ工程と、第1型40と押さえ部62とでフィルム材12を挟持した状態で第2型42を第1型40に近接させることによって第2型42に設けられたトリム刃66でフィルム材12を切断するトリム加工工程と、を行う。トリム刃66は、トリム刃66の移動方向と交差(直交)する方向に延在して先端に刃先75が形成された刃部74を有し、刃先75は、刃部74の延在方向の中央部から刃部74の両端に向かって刃部74の基端側に傾斜した2つの傾斜刃先75aを含む。トリム加工工程では、傾斜刃先75aとフィルム材12とが互いに傾斜した状態でトリム刃66がフィルム材12の厚さ方向(矢印A2方向)に移動することによって、傾斜刃先75aとフィルム材12との接触部位Cがフィルム材12の厚さ方向と直交する方向に移動する。
【0059】
これにより、フィルム材に対して平行に延在する刃先を有するトリム刃によって刃先の全体をフィルム材に接触させながらフィルム材を切断する場合と比較して、フィルム材12に対するトリム刃66の接触面積を小さくすることができる。よって、トリム加工に必要なプレス荷重(プレス加工装置10に対する負荷)を低減することができる。よって、プレス加工装置10、特にトリム刃66の寿命の長期化を図ることができる。
【0060】
成形品である補強フィルム16の外周は矩形状に形成され、トリム刃66は、互いに対向する2つの刃部74を有している。そして、トリム加工工程では、各刃部74によってフィルム材12を切断することにより、補強フィルム16の互いに対向する2辺(各長辺)を形成する。これにより、トリム加工に必要な工程を効果的に削減することができる。
【0061】
プレス加工方法では、第1型40と押さえ部62とでフィルム材12を挟持した状態で第2型42に設けられたパンチ部64によりフィルム材12に貫通孔30を形成するピアス加工工程を行う。トリム加工工程では、ピアス加工工程においてフィルム材12に貫通孔30が形成された後で、刃部74がフィルム材12に接触する。これにより、ピアス加工工程とトリム加工工程とを同時に行う場合と比較してこれら加工に必要なプレス荷重を低減することができる。
【0062】
プレス加工方法では、フィルム材12に形成された第1位置決め孔34に第1型40の第1位置決めピン52を挿入するとともにフィルム材12に形成された第2位置決め孔36に第1型40の第2位置決めピン54を挿入することにより、フィルム材12を第1型40に対して位置決めする位置決め工程を押さえ工程の前に行う。そして、ピアス加工工程では、フィルム材12のうち第1位置決め孔34が位置する部位を切除し、トリム加工工程では、フィルム材12のうち第2位置決め孔36が位置する部位(フィルム材12の外縁部)を切除する。これにより、最終的な成形品である補強フィルム16に位置決め孔を形成することなくピアス加工工程及びトリム加工工程の加工精度を向上させることができる。
【0063】
パンチ部64は、第1位置決めピン52が挿入される内孔64aを有しており、ピアス加工工程では、パンチ部64の内孔64aに第1位置決めピン52が位置するようにフィルム材12に貫通孔30を形成している。これにより、ピアス加工工程の際にパンチ部64が第1位置決めピン52に干渉することを簡易な構成で防止することができる。
【0064】
傾斜刃先75aのフィルム材12の表面12aに対する傾斜角度θは、2°以上4°以下である。これにより、刃部74を矢印A方向の寸法の短縮化を図るとともに傾斜刃先75aとフィルム材12との接触面積を効果的に小さくすることができる。よって、トリム加工に必要なプレス荷重を一層低減することができる。
【0065】
刃先75は、2つの傾斜刃先75aが連結した角である中央刃先75bを含んでいる。これにより、中央刃先75bを矢印A方向と直交する方向に延在させた場合と比較してプレス荷重をより低減することができる。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。傾斜刃先75aは、矢印A2方向に凸状に湾曲していてもよい。中央刃先75bは、刃部74の延在方向に沿って線状に延在していてもよい。補強フィルム16の短辺を形成するための刃部72の刃先73は、刃先75と同様に構成されていてもよい。この場合、トリム加工に必要なプレス荷重を一層低減することができる。また、固体高分子型燃料電池は、メタノールを燃料とする直接メタノール燃料電池であってもよい。