【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0009】
任意選択で組み合われ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0010】
本発明によると、電気絶縁コンパウンドにより互いに物理的に分離される少なくとも2つの接続ピンと、2つの接続ピンに電気伝導可能に接続される電橋線とを備える、車両安全システムのインフレータのための火工点火器において、電橋線が接続ピンに溶接されるところの締結部分が、各々の接続ピンのところに設けられ、上から見た場合の締結部分のリムと絶縁コンパウンドの間の最小距離が約0.01mm〜0.5mm、特に約0.01mm〜0.2mmとなる。このように、溶接接合部が接続ピンのリムに非常に接近しており、電橋線と接続ピンのリムとの起こり得る接触を防止する。例えば、このような接触が、点火混合薬を充填することによる機械的負荷または電橋線と接続ピンとの間を望ましくないマイクロ溶接することによる機械的負荷を伴って行われる場合、接続ピンの間の電気抵抗および電橋線のefficient長さが変化する可能性がある。いずれの場合も、電橋線を通って電流が流れるとき、所望される理想的な加熱が行われない。この問題は、溶接接合部のための締結部分を接続ピンのリムに可能な限り接近させて配置構成することにより、解消される。
【0011】
加えて、本発明により、絶縁コンパウンドまでの距離が短すぎる場合に発生し得るように汚染されたりまたは不純物が混ざったりすることにより溶接接合部の機能が損なわれることがなくなる。これは特に絶縁コンパウンドがプラスチック材料である場合に重要である。溶接接合部が汚染されると電気抵抗も変化してしまい、それにより、加熱挙動が制御され得なくなる。
【0012】
接続ピンのリムから締結部分までの最小距離を0.01mm〜0.5mm、特に0.001mm〜0.2mmの距離となるように選択することにより、所望されずに抵抗が変化することを最適に低減することができることが分かっている。
【0013】
好適には、各接続ピンは絶縁コンパウンドから突出する端面を有し、締結部分がこの端面上に配置され、最小距離はこの端面のリムから測定される。
【0014】
電橋線は例えばクロム−ニッケルワイヤ(CrNiワイヤ)であってよい。
【0015】
好適には、電橋線は約0.3Ωmm
2/m〜0.32Ωmm
2/mの固有抵抗を有する。
【0016】
電橋線の好適な直径は約20.8μm〜21.5μmである。
【0017】
上記のパラメータを有する電橋線を上で言及した距離で溶接すると、電気抵抗の再現性および加熱挙動に関して特に良好な結果が得られることが分かっている。
【0018】
さらに、火工点火器では、点火器から突出する接続ピンの自由端部は、インフレータの全耐用年数を通して良好な電気伝導率を維持しなければならず、悪条件下でも良好な電気伝導率を維持しなければならない。
【0019】
したがって、本発明の別の目的は、点火器が単純な形で保護されるような点火器を提供することである。
【0020】
この目的は、請求項2および/または請求項3の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0021】
任意選択で組み合わされ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0022】
本発明によると、電気絶縁コンパウンドにより互いに物理的に分離される少なくとも2つの接続ピンを備える、車両安全システムのインフレータのための点火器において、各接続ピンが無塩素の金被膜を備える。この金被膜は接続ピンを腐食から保護し、接続ピンと取り付けられるプラグとの間で良好な電気的接触が行われるようにする。無塩素の金被膜の利点は、このような形態の接続ピンのところで塩素誘起の腐食が起こることが安全に防止されることである。
【0023】
好適には、全体の金被膜のうちの少なくとも1つの層がフラッシュゴールド(flash gold)被膜によって形成される。これは、0.25μm未満、特に好適には0.13μm未満の層厚さを有する非常に薄い金層である。この層厚さは好適には0.05μmから0.08μmである。
【0024】
金層全体を形成するのに一層のフラッシュゴールド層を使用するだけでも十分となり得る。
【0025】
フラッシュゴールド層を堆積させることは好適には化学的に実施され、すなわち、無電流堆積(current−less deposition)によって実施されるが、ガルバニック堆積も可能である。
【0026】
別の実施形態によると、金層全体の厚さは、0.75μmを超えるように、特に0.76μmから0.90μmとなるように設定されてよい。
【0027】
この場合も、堆積は好適には無電流で金を被膜することにより実施される。しかし、別の方法においてガルバニック堆積またはガルバニック被膜も可能である。
【0028】
別の好適な実施形態では、フラッシュゴールド被膜が接続ピンの本体に付着され、フラッシュゴールド被膜にさらに硬質金被膜が付着される。
【0029】
フラッシュゴールド層は好適には0.08μm未満の厚さを有する。硬質金層は、好適には、0.76μmを超える厚さ、特に0.76μmから0.90μmの厚さを有する。
【0030】
また、この場合、硬質金層およびフラッシュゴールド層は化学的に堆積され得る。
【0031】
硬質金層はフラッシュゴールド層上に直接に付着され得る。
【0032】
別の好適な実施形態によると、フラッシュゴールド層と硬質金層との間にニッケル層が付着されてよい。
【0033】
ニッケル層は、好適には、スルファミン酸ニッケル(nickel sulfamate)電解質からのスルファミン酸ニッケル(sulfamate nickel)層としてガルバニックにより堆積される。しかし、無電流堆積も可能である。
【0034】
電気化学堆積とは異なり、ニッケルおよび金のいずれの場合も、無電流(化学)堆積は、外部から電圧を一切印加しない、電解質からの金属堆積である。堆積させる金属を還元することは、電解質水溶液中に存在する物質を酸化させることによって行われる。
【0035】
別の好適な実施形態によると、約1.0μmから2.0μmの厚さのニッケル被膜が接続ピンに付着され、さらにニッケル層には、少なくとも0.76μmの厚さ、特に0.76μmから0.90μmの厚さを有する金層が付着される。金層は好適には硬質金層である。
すべての実施形態では、接続ピンは1.4404ステンレス鋼(X2CrNiMo17−12−2鋼とも称される)の本体を含むことができる。
【0036】
ガルバニックプロセスで金層を付着させることも可能であり、この場合、その後の浄化プロセスで使用される浄化用の水溶液(purifying solution)に塩素トラップを導入することにより、金層内に塩素イオンが堆積することが実質的になくなる。
【0037】
別の好適な実施形態によると、約50nm〜70nmの厚さ、好適には70nmの厚さを有するパラジウム層が接続ピンに付着され、上記のパラジウム層には、約10nm、特に約5nmの最大厚さを有する金層が付着され、これは好適にはガルバニックにより付着される。
【0038】
いずれの場合も、上で言及した層は、好適には、接続ピンの本体の単一被膜を形成する
。しかし、別の層が存在してもよい。
【0039】
本発明の別の目的は、点火器を低コストで単純に製造するのを可能にすることである。
【0040】
この目的は、請求項4の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0041】
任意選択で組み合わせられ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0042】
本発明によると、車両安全システムのインフレータのための点火器内の、点火器の棒体、および/または、点火器を外側から閉じているキャップが、実質的な直線状チェーン構造(linear chain structure)または架橋チェーン構造(cross−linked chain structure)を有するプラスチック材料から構成される。これらのプラスチック材料には、主として架橋プラスチック材料と比較して良好な加工性を有するという利点がある。これらは高い流動性を有することから、例えばそれにより射出成形性が向上する。また、架橋プラスチック材料を使用する場合と比較して、形成される空胞が少ない。さらに、直線状チェーン構造を有するプラスチック材料はより良好に染色され得る。
【0043】
このプラスチックの特に好適な材料は、直線形状の硫化ポリフェニレン(polyphenylene sulfide(PPS))である。架橋されるPPSでは、分枝ポリマーチェーンが物理的な架橋箇所を介して両面側から相互連結されるが、架橋部分をほとんど有さない直線状のPPSのチェーンは集積すると高次上部構造を形成することから、直線状のPPSは主として、架橋されるPPSと比較して高い靱性を有し、破断時の伸びが大きい。このプラスチック材料は架橋される硫化ポリフェニレンであってもよい。
【0044】
別の好適な変更形態では、プラスチック材料はガラス繊維強化ポリアミドであり、詳細には、Leis PolytechnikのNYLAFORCE(登録商標)である。プラスチック材料内のガラス繊維の含有量は好適には50%である。このようなプラスチック材料は、点火器の棒体およびキャップを射出成形によって製造するのに非常によく適する。
【0045】
別の熱プラスチックを使用することも可能である。
【0046】
上で言及したすべてのプラスチックは、その特性により、棒体にキャップを締結することを目的として、さらには、例えば超音波溶接などにより点火器を密閉することを目的として、キャップと棒体との間を溶接により接続することを可能にする。
【0047】
材料コストおよび製造コストのために、点火器の棒体およびキャップをプラスチック材料で製造することがさらに有利である。
【0048】
したがって、本発明の別の目的は、単純で低コストの点火器を提供することである。
【0049】
この目的は、請求項5の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0050】
任意選択で組み合わせられ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0051】
本発明によると、車両安全システムのインフレータのための火工点火器において、点火器の棒体、および/または、点火器を外側から閉じているキャップが、熱硬化性プラスチックで作られる。熱硬化性プラスチックには、負荷容量が高く、温度安定性が比較的高く、また、低コストで製造されるように適合され得るという利点がある。
【0052】
熱可塑性プラスチックは以下のようなプラスチックのことである:硬化状態では空間的に非常に密に化学架橋される(spatially fine−meshed chemically cross−linked)構造を有することから、硬化後に、塑性的に変形したり再溶解したりすることがない。硬化およびクロスリンキングは、熱硬化性プラスチックのための一次生成物の混合中に触媒を加えるかまたは高温で熱活性化させるかのいずれかで実施され得る。これらの特性により、一次生成物の混合物を射出成形プロセスで処理することが可能となる。
【0053】
したがって、点火器の棒体は射出成形により容易に製造され得、ここでは、好適には点火器の接続ピンも射出成形される。
【0054】
他の構成要素と同様に単純な形で、点火器のキャップも射出成形プロセスで予め製造され得る。
【0055】
適切な熱硬化性プラスチックは、例えば、ポリウレタンまたはポリエチレンテレフタレートである。
【0056】
熱硬化性プラスチックの特性により、キャップと点火器の棒体との間を例えば超音波溶接により溶接接続することは不可能であることから、第1の好適な実施形態では、キャップは点火器の棒体に接着される。プラスチック、さらには熱硬化性プラスチックは、適切な接着剤により、気密状態でしっかりと固定されて永久的に良好に接続され得る。
【0057】
好適には、キャップは、棒体の周囲平坦肩部表面に接着される周囲平坦端面を含む。このような幾何形状により、接着剤を単純な形で一様に塗布することが可能となる。
【0058】
別法としてまたは追加で、キャップの内側円周方向壁の周囲部分が、棒体の円周方向壁の周囲部分に接着され得る。また、この場合、広い面積を容易に接着させて接続させることができる。
【0059】
接着は、キャップと棒体との間のみを締結させればよい。
【0060】
別の好適な実施形態によると、キャップは第1の係合要素を含み、棒体は第2の係合要素を含み、キャップが棒体に係止係合される。棒体とキャップとの間を確実に堅固にかつ永久的に接続させることは、係止係合的にも行われ得る。
【0061】
例えば、キャップは、その自由リムのところに、棒体の端面の周りの周囲係合突出部に係合される周囲係合縁部を有することができる。
【0062】
キャップと棒体との間の係合接続は、キャップと棒体との間のみを締結させればよい。
【0063】
しかし、係止係合と接着とを組み合わせることも可能であり、また、例えば係合接続部に加えて1つまたは複数の接着接合部を使用することも可能である。接着接合部および係合要素はキャップおよび棒体の上述した箇所以外の別の箇所に設けられてもよく、また、別の構成であってもよい。
【0064】
接着および/または係止係合によりキャップと棒体とを説明したように接続させることはもちろん別の点火器でも使用され得、それらの点火器の棒体およびキャップは任意適当な材料で作られる。
【0065】
また、電橋線に関しては、クロムの含有量が約20%であるニッケルクロム合金がこれまで使用されている。接続ピンおよび電橋線が良好な電気伝導率および高い耐食性を有しさらに同時に最適な固有抵抗を有することが望ましい。
【0066】
本発明の別の目的は、電気伝導要素の電気的特性を維持しながら火工点火器の耐食性を向上させることである。
【0067】
この目的は、請求項6の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0068】
任意選択で組み合わされ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0069】
本発明による車両安全システムのインフレータのための火工点火器は、2つの接続ピンと、電気伝導可能に2つの接続ピンに接続される電橋線とを備える。電橋線は、11%から24%の割合のクロムと、12.5%から17%の割合のモリブデンと、さらには、0%から7%の割合の任意選択で追加される鉄および/または0%から4.5%の割合のタングステンを含む、ニッケル合金から構成される。電橋線の固有抵抗は0.25Ωmm
2/m〜3Ωmm
2/mの範囲内である。
【0070】
すべての割合は重量パーセントである。
【0071】
接続ピンのニッケル合金は、好適には、NiCr21Mo14W(材料番号2.4602)、NiCr23Mo16Al(材料番号2.4605)、NiMo16CrTi(材料番号2.4610)およびNiMo16Cr15W(材料番号2.4819)からなる群から選択される。上記の材料は、点火器を安全に点火するのに十分な電気伝導率と、インフレータの全耐用年数を通して点火器の機能を保証することができるような高い耐食性との両方を有する。
【0072】
好適な実施形態によると、電橋線は、0.25Ωmm
2/mから2Ωmm
2/mの、または、0.25Ωmm
2/mから1.3Ωmm
2/mの固有抵抗を有する。
【0073】
好適には、接続ピンおよび電橋線は最適な材料適合性が得られるように同じ材料で作られる。
【0074】
別の実施形態によると、接続ピンは、10%から14%のニッケル含有量と0%から2.5%のモリブデン含有量を有するオーステナイトステンレス鋼で形成され得る。このようなステンレス鋼の一例は、X2CrNiMo17−12−2 (材料番号1.4404)である。
【0075】
また、点火器が、最初は棒体から分離されておりかつ棒体に接続される前には点火混合薬で充填されていないキャップを有する場合の欠点は、水分が点火器の内部まで侵入する可能性があることである。
【0076】
したがって、本発明の別の目的は個別の付加機能(respective enhancement)を提供することである。
【0077】
この目的は、請求項7の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0078】
任意選択で組み合わされ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0079】
本発明によると、2つの接続ピンを含む棒体と、点火器を外側から閉じているキャップとを備える、車両安全システムのインフレータのための火工点火器において、シーリングコンパウンドのシールが、棒体とキャップとの間および/または接続ピンと棒体との間に設けられる。このシールは点火器のために設けられるものであり、詳細には、点火器の内部に収容される点火混合薬が周囲から気密密閉され、それにより液体およびガスが侵入することが防止される。このシールは、棒体とキャップとの間の接触領域さらには棒体からの接続ピンの出口孔などの位置を特に保護する。
【0080】
密閉に使用されるシーリングコンパウンドは、例えば、樹脂、接着剤、ニスまたはプラスチックであってよい。しかし、シーラントとして適する任意の別の物質がシーリングコンパウンドとして採用されてもよい。このシーリングコンパウンドは、好適には、容易に加工され得かつ隙間の中に密閉状態で侵入できるがそれでも連続的なシールを形成するためにキャップ、棒体および接続ピンに完全に密着するような粘性も有するような流体である。
【0081】
好適な実施形態では、棒体および/またはキャップは少なくとも部分的にシールで被膜される。詳細には、シーリングコンパウンドはキャップと棒体との間の隙間を覆う。
【0082】
このシールは棒体およびキャップを完全に覆うことができる。この場合、シールは、有利には、点火器をシーリングコンパウンド内に浸漬することにより作られるか、または、点火器の周りでシーリングコンパウンドを射出成形することにより作られる。
【0083】
また、キャップと棒体との間の隙間にシールを設けることで十分である場合もある。このような隙間は例えばキャップと棒体とを超音波溶接するときに残る可能性がある。というのは、キャップおよび棒体を全周囲部において相互接続させても、キャップおよび棒体を点火器の周囲部全体のすべての箇所において継ぎ目なく重ね合わせることはできないからである。シールはこれらの隙間内に導入されてこれらの隙間を充填することができ、ここでは、キャップと棒体との間の移行部のところにおいて点火器の外側に滑らかな表面を形成することができる。
【0084】
超音波溶接により隙間が残る可能性があることから、シールはキャップの端面と棒体の肩部表面との間に配置されることが好適であり、また、棒体とキャップとの間の別の接続部の場合もシールはこのような位置に配置されることが好適である。
【0085】
また、大量のシーラントを隙間内に導入するのを可能にすることを目的として個々の部分の形状をしたポーチ内にシーラントを射出することができるような方式で、棒体内に、および/または、直接に点火器内に、ポーチを形成することも可能である。
【0086】
シールはその接着効果により点火器の安定性を向上させることができる。
【0087】
好適には、シールはまた、棒体からの接続ピンの出口孔を覆い、さらには、両方の接続ピンを少なくとも部分的に囲む。こうすることにより、棒体からの接続ピンの出口孔も高い信頼性をもって安全に密閉される。
【0088】
また、点火器の出力は、キャップ内に収容される点火混合薬の量およびその種類によって決定される。
【0089】
したがって、本発明の別の目的は点火器の出力を向上させるのを可能にすることである。
【0090】
この目的は、請求項8の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0091】
任意選択で組み合われ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0092】
少なくとも2つの接続ピンを含む棒体と、点火器を外側から閉じているキャップとを備える、車両安全システムのインフレータのための火工点火器において、点火器の長手方向におけるキャップの長さが約7mmから15mm、特に約8mmから12mmである。従来の点火器(約6mmの長さ)と比較してキャップが伸長されることにより、キャップ内により大量の点火混合薬を入れることができ、それにより点火出力が向上する。
【0093】
好適には、キャップの直径および棒体の直径は従来の点火器を基準として変更されないままであり、それにより、従来の点火器と同様の点火器が実質的に設置され得るようになる。
【0094】
キャップの直径は5mmから11mm、特に6mmから10mmである。キャップの直径は、その閉じられた端面の領域内の、特に円周方向壁の領域内で測定される。
【0095】
好適な一手法では、キャップは、約250mgから800mgのZPP(ジルコニウム−過塩素酸カリウム(zirconium potassium perchlorate))、特に約260mgから600mgのZPPを収容することができるように寸法決定される。
【0096】
特に好適には、600mgのZPPを収容できるようにするために、キャップの長さは約11mmから12mmである。
【0097】
上述したように、絶縁コンパウンドは棒体の一部分であり、棒体は点火器の下側部分も構成する。点火器は、棒体に接続されるキャップによってその頂部が閉じられる。キャップの内部では、電橋線を加熱することによって点火される点火混合薬が点火チャンバ内に収容される。点火器の内圧を増大させるようなこのような形態では、キャップが破断するかまたは開いて、高温ガスおよび/または高温粒子が漏れ得るようになり、それによりインフレータの主推進薬装入物(main propellant charge)を点火させることができるようなる。
【0098】
したがって、本発明の別の目的は、キャップの開放挙動を容易に誘起し得るような点火器を提供することである。
【0099】
この目的は、請求項9および/または請求項10の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0100】
任意選択で組み合わせられ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0101】
本発明によると、少なくとも2つの接続ピンを含む棒体と、点火器を外側から閉じているキャップとを備える、車両安全システムのインフレータのための点火器において、キャップが2つの異なるプラスチック成分を含む。こうすることにより、特に、キャップの複数の区間で使用される材料が異なっていることにより、単部品として設計されるキャップ内の選択された材料のところで、開放挙動をする誘起することができる。
【0102】
したがって、キャップの端壁は、キャップの円周方向壁と比較してより柔らかいプラスチックまたはより脆いプラスチックで作られ得る。したがって、円周方向壁自体は端壁より高い剛性を有してよいが、キャップの端壁の材料により所定の開口部ゾーンが既に画定されている。また、円周方向壁は、ガス圧力がキャップの端面に向かうように誘導され得るようにするために、硬質プラスチック材料を選択することにより特別に強化され得る。
【0103】
有利には、キャップの端壁は、D30からD80の間のショア硬さの範囲内のプラスチックで作られ、および/または、キャップの周囲方向壁は、D80からD95の間のショア硬さの範囲内のプラスチックで作られる。
【0104】
これは、点火器の長手方向におけるキャップの高さが標準的な値より大きくなるように、すなわち、例えば6.5mm、好適には7mmから15mmより大きくなるように選択される場合に、特に有利である。
【0105】
2つ以上の異なるプラスチック成分を使用することにより、キャップの破断強さ、靱性または硬さが異なる区間ごとに個別に調整され得るようになり、ここでは、例えば円周方向壁または端壁の厚さなどの、キャップの幾何寸法を修正する必要がなく、また、ノッチまたは壁の厚さが縮小される領域などの構造的な脆弱化領域を設ける必要がない。
【0106】
このようなキャップを製造するには、好適には、2つ以上のプラスチック成分が射出成形金型に導入され、キャップ全体が同じ加工ステップで製造される。完成したキャップでは、キャップの異なる場所に異なるプラスチック材料が設けられる。
【0107】
火工点火器では、2つの接続ピンを接続させる電橋線には電流が流れていることからこの電橋線を加熱することにより、点火混合薬が点火される。キャップ内部のガス圧力が増大することにより、所定の箇所でキャップが破断する。外に流れ出る高温ガスおよび/または高温粒子がインフレータの主推進薬装入物を点火させる。
【0108】
点火器から出るガス流れを誘導するために、キャップ内にはしばしば脆弱化領域が配置される。
【0109】
したがって、本発明の別の目的は、インフレータの推進薬装入物を迅速かつ一様に点火させるのを単純な形で可能にする点火器を提供することである。
【0110】
この目的は、請求項11の特徴を備える火工点火器によって達成される。
【0111】
任意選択で組み合わせられ得る有利な実施形態がサブクレームに記載される。
【0112】
本発明によると、少なくとも2つの接続ピンを含む棒体と、点火器を外側から閉じているキャップとを備える、車両安全システムのインフレータのための点火器において、この点火器がさらに、点火器の作動時に点火器内の内圧を受けてキャップの材料が降伏するような所定の脆弱化領域を含み、この脆弱化領域はキャップの側方円周方向壁内に配置される。既知の点火器では、脆弱化領域はキャップの端面のところに形成され、したがって、キャップは点火器の長手方向に沿って破断し、ガスは点火器の長手方向に沿って流れ出る。本発明では、これとは異なり、脆弱化領域はキャップの側方円周方向壁内に設けられることから、ガスは、点火器の長手方向の延在部に対して垂直な方向に流れ出る。こうすることにより、点火器から流れ出る高温ガスが、特に複数の位置において、点火器を囲むインフレータの推進薬装入物のところへと導入され得るようになり、それにより、上記の推進薬装入物を一様に点火させることができるようになる。
【0113】
側方の脆弱化領域(複数可)に加えて、点火器の端面内に別の脆弱化領域を設けることも可能である。
【0114】
脆弱化領域は、例えば、少なくとも1つのノッチ、エンボスメント、壁の厚さが縮小される領域などにより、および/または、キャップの円周方向壁の他の部分の材料より高い弾性を有するプラスチック材料を使用することにより、形成され得る。
【0115】
点火器を作動させると、好適には脆弱化領域がガス出口オリフィスを形成する。この目的のために、脆弱化領域は好適には円形状またはスリット形状を有する。脆弱化領域が破断した後も、キャップは実質的にその幾何形状を維持する。
【0116】
点火器からガスが側方に排出されることは、例えば、点火器のキャップが、標準的なインフレータで用意される点火混合薬より多い量の点火混合薬を含有する場合に、有利である。この場合、大量のガスが、インフレータの周りの推進薬装入物内へと迅速に流れ込むことができる。
【0117】
火工点火混合薬(pyrotechnical igniting mixture)として例えば260mgから600mgまでの量のZPP(ジルコニウム−過塩素酸カリウム(zirconium potassium perchlorate))を含有するキャップと任意選択で組み合わせて上記の側方排出オリフィスを使用することにより、点火器の周りの主推進薬装入物を直接に点火させることが可能となり、ここでは点火器の周りに別の伝爆薬装入物(booster charge)を用意する必要はない。
【0118】
本発明の別の好適な実施形態が個々のサブクレームの主題を構成する。以下では、同封の図面に関連する実施形態により本発明を詳細に説明する。