【実施例1】
【0025】
本実施例1では、カードからのIDの読み取りと、画像認証とを用いた顔画像データの追加登録について説明する。
図1は、本実施例1に係る顔画像データの追加登録について説明するための説明図である。
【0026】
まず、入退室管理の対象となるゲート装置30の前にはカードリーダ10が設置されている。また、ゲート装置30及びカードリーダ10に近づく人物を撮像可能な位置にカメラ20が設置されている。
【0027】
図1に示すように、予め登録された利用者がカードリーダ10に接近し、IDカードをカードリーダ10にかざすと、カードリーダ10は、IDカードから利用者IDを読み出す。
図1では、読み出した利用者IDが「0001」である場合を示している。
【0028】
また、カメラ20は、カードリーダ10に接近する利用者を連続的に撮像する。入退室管理装置40は、カメラ20の出力を用い、撮像タイミングの異なる複数の画像からそれぞれ顔画像を検出する。
【0029】
入退室管理装置40は、検出した顔画像を入力顔画像データとし、顔認証データベース42aを用いて認証処理を行う。顔認証データベース42aは、利用者IDに対し、成熟度や登録顔画像データ等を関連づけたデータベースである。
【0030】
成熟度は、利用者IDに対する登録顔画像データの登録状態を評価した評価値である。この成熟度は、登録顔画像データの登録実績(登録数、登録回数等)や、認証における使用実績等を用いて算出する。例えば、登録顔画像データの登録数が、利用者IDに対して定められた上限数の10%未満である場合には成熟度「C」、10%以上30%未満である場合には成熟度「B」、30%以上である場合には成熟度「A」とする。以下の説明では、利用者IDに関連づけられた成熟度を「利用者IDの成熟度」という。
【0031】
認証処理では、顔認証データベース42aに登録された登録顔画像データの各々と入力顔画像データとを照合処理し、最も類似度が高い登録顔画像データの利用者IDを認証IDとする。
【0032】
入退室管理装置40は、カードリーダ10により読み取った利用者IDと認証IDとが一致するか否かを判定し、その判定結果に基づいて入力顔画像データを登録顔画像データとして追加登録するか否かを決定する。
【0033】
追加登録の基準は、登録処理テーブル42bにより規定されている。具体的には、読み取った利用者IDの成熟度が「A」であれば、読み取った利用者IDと認証IDとが一致し、かつ、認証時の類似度が所定の閾値(第1の登録閾値)以上である場合にのみ、入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。
【0034】
読み取った利用者IDの成熟度が「B」であれば、読み取った利用者IDと認証IDとが一致した場合には、認証時の類似度に関わらず入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。一方、読み取った利用者IDと認証IDとが不一致である場合には、認証時の類似度が所定の閾値(第2の登録閾値)未満である場合にのみ、入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。ここで、認証時の類似度が低いケースは、入力顔画像データが最も類似する登録顔画像データは、別の利用者IDに対応付けられているが、その類似の程度は低い場合に対応する。読み取った利用者IDの成熟度が「B」の場合には、このような入力顔画像データも追加登録することとしている。なお、第2の登録閾値は、第1の登録閾値と同一であってもよい。本実施例1では、第2の登録閾値と第1の登録閾値とが同一であることとし、類似度がこの登録閾値を超える場合を類似度「高」、類似度が登録閾値以下である場合を類似度「低」とする。
【0035】
読み取った利用者IDの成熟度が「C」であれば、読み取った利用者IDと認証IDとが一致するか否かに関わらず、また、認証時の類似度に関わらず、入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。
【0036】
すなわち、登録処理テーブル42bによれば、成熟度が低い場合には追加登録の条件を緩くして登録顔画像データを増やすことを優先し、成熟度が高くなるほど追加登録の条件を厳しくして認証精度の向上に寄与するデータを厳選するようにしている。
【0037】
図1の例では、カードリーダ10が読み取った利用者IDが「0001」であり、利用者ID「0001」の成熟度は「B」である。そのため、入力顔画像データの認証IDが「0001」であれば、類似度に関わらず入力顔画像データを利用者ID「0001」の登録顔画像データとして追加登録する。また、入力顔画像データの認証IDが「0002」であり、類似度が低ければ、入力顔画像データを利用者ID「0001」の登録顔画像データとして追加登録する。入力顔画像データの認証IDが「0002」であり、類似度が高い場合には、入力顔画像データの登録顔画像データの追加登録は行わない。
【0038】
このように、本実施例1に係る入退室管理装置40は、カードリーダ10により利用者IDを読み取るとともに、画像認証により認証IDをもとめ、そのIDの比較結果と、読み取った利用者IDの成熟度とに応じて、入力顔画像データを追加登録するか否かを決定するので、成熟度が低い場合には登録顔画像データを増やすことを優先し、成熟度が高くなるほど誤登録を厳しく防止して、高精度な顔認証データベースを早期に構築することができる。
【0039】
次に、入退室管理装置40の内部構成について説明する。
図2は、入退室管理装置40の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、入退室管理装置40は、カードリーダ10、カメラ20及びゲート装置30と接続される。また、入退室管理装置40は、その内部に入出力部41、記憶部42及び制御部43を有する。
【0040】
カードリーダ10は、IDカードから利用者IDを読み出すための装置である。IDカードとしては、磁気カードや近距離無線通信式のカード等、記録や読み書きの方法を問わず、任意の記録媒体を用いることができる。また、カード以外の形状の記録媒体であってもよい。
【0041】
カメラ20は、利用者を撮像して入退室管理装置40に出力するCCD(Charge Coupled Device)素子などからなる撮像装置である。このカメラ20は、カードリーダ10及
びゲート装置30に至る途中での利用者の顔部分を撮像できる画角にあらかじめ設定されている。ゲート装置30は、入退室管理装置40の制御を受けて開閉する。
【0042】
入出力部41は、液晶パネル、キーボード、マウス等の入出力デバイス群である。記憶部42は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、顔認証データベース42a及び登録処理テーブル42bを記憶する。
【0043】
制御部43は、入退室管理装置40を全体制御する制御部であり、利用者ID取得部43a、顔画像検出部43b、認証処理部43c、ゲート制御部43d、登録処理部43e及び選別処理部43fを有する。実際には、これらの機能部に対応するプログラムを図示しないROM(Read Only Memory)や不揮発性メモリに記憶しておき、これらのプログラムをCPU(Central Processing Unit)にロードして実行することにより、利用者ID取得部43a、顔画像検出部43b、認証処理部43c、ゲート制御部43d、登録処理部43e及び選別処理部43fにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0044】
利用者ID取得部43aは、カードリーダ10がIDカードから読み取った利用者IDを取得する処理部である。顔画像検出部43bは、カメラ20の出力を用い、撮像タイミングの異なる複数の画像からそれぞれ顔画像を検出する。具体的には、顔画像検出部43bは、人の一般的な顔の輪郭を示すテンプレート(マスクパターン)を用い、テンプレートをずらしマッチングすることで、画像内に存在する顔画像を検出する。なお、かかるテンプレートマッチングだけではなく、公知の各種顔検出アルゴリズム(画像処理技術)を用いることができる。顔画像検出部43bは、検出した顔画像を入力顔画像データとして出力する。
【0045】
認証処理部43cは、顔画像検出部43bが出力した入力顔画像データと、顔認証データベース42aに登録された登録顔画像データの各々とを照合処理し、最も類似度が高い登録顔画像データの利用者IDを認証IDとして出力する。
【0046】
ゲート制御部43dは、IDカードによる認証と、顔画像による認証のいずれかが成立した場合にゲート装置30に対してゲートの開放を指示する。具体的には、ゲート制御部43dは、利用者ID取得部43aが読み取った利用者IDが、顔認証データベース42aに登録された利用者IDである場合に、ゲート装置30に対してゲートの開放を指示する。また、ゲート制御部43dは、認証処理部43cにより認証IDが出力され、かつ類似度が認証閾値以上である場合にも、ゲート装置30に対してゲートの開放を指示する。
【0047】
登録処理部43eは、利用者ID取得部43aにより利用者IDが取得され、顔画像検出部43bにより入力顔画像データが出力された場合に、登録処理テーブル42bに従って追加登録処理を行う処理部である。
【0048】
選別処理部43fは、登録顔画像データを選別する処理部である。具体的には、選別処理部43fは、成熟度がAである利用者IDについて、登録されてから所定時間以上が経過し、かつ認証への寄与が少ない登録顔画像データを削除することで、登録顔画像データを選別する。
【0049】
次に、入退室管理装置40の記憶部42が記憶するデータの具体例について説明する。
図3は、入退室管理装置40の記憶部42が記憶するデータを説明するための説明図である。
【0050】
図3に示すように、顔認証データベース42aは、利用者IDに対し、成熟度、登録顔画像データ、登録日時、認証使用回数及び累積認証スコアを関連づけたデータベースである。
【0051】
登録日時、認証使用回数及び累積認証スコアは、登録顔画像データごとに関連づけられている。登録日時は、当該登録顔画像データを登録した日時を示す。認証使用回数は、認証時において、当該登録顔画像データとの類似度が最大となった回数を示している。累積認証スコアは、認証時において、当該登録顔画像データとの類似度が最大となる度に、その類似度を加算した値である。
【0052】
この累積認証スコアは、認証使用回数が多いほど、また、類似度が高いほど大きな値となるので、認証への寄与の大きさの指標となる。さらに、累積認証スコアを認証使用回数で除算すれば、当該登録顔画像データとの類似度が最大となった場合の平均の類似度である平均認証スコアを求めることができる。平均認証スコアにより、当該登録顔画像データを用いた場合における認証の精度を評価することが可能である。
【0053】
例えば、選別処理部43fが登録顔画像データを選別する場合には、登録日時から所定時間以上が経過し、かつ累積認証スコアが選別閾値以下の登録顔画像データを削除すればよい。累積認証スコアに代えて、平均認証スコアにより削除の可否を判定してもよい。
【0054】
また、累積認証スコアや平均認証スコアは、成熟度の判定に用いてもよい。累積認証スコアや平均認証スコアを加味することにより、登録顔画像データの数のみならず、その質も考慮して成熟度を決定することができる。
【0055】
図3に示す顔認証データベース42aは、利用者ID「0001」に成熟度「B」と、登録顔画像データ「G001001.jpg」及び登録顔画像データ「G001002.jpg」とが関連づけられた状態を示している。また、登録顔画像データ「G001001.jpg」の登録日時は「2011/05/02 11:42」であり、認証使用回数は「9」、累積認証スコアは「540」である。登録顔画像データ「G001002.jpg」の登録日時は「2011/05/02 11:42」であり、認証使用回数は「8」、累積認証スコアは「640」である。
【0056】
また、
図3に示す顔認証データベース42aは、利用者ID「0002」に成熟度「A」と、登録顔画像データ「G002001.jpg」及び登録顔画像データ「G002002.jpg」とが関連づけられた状態を示している。また、登録顔画像データ「G002001.jpg」の登録日時は「2011/10/10 15:10」であり、認証使用回数は「4」、累積認証スコアは「320」である。登録顔画像データ「G002002.jpg」の登録日時は「2011/10/11 09:30」であり、認証使用回数は「7」、累積認証スコアは「630」である。
【0057】
図3に示すように、登録処理テーブル42bは、IDの比較結果と、認証IDの類似度と、利用者IDの成熟度とに応じて追加登録の可否を決定するテーブルである。ここで、利用者IDの成熟度としては、カードリーダ10がIDカードから読み取った利用者IDに関連づけられた成熟度を用いる。具体的には、利用者IDの成熟度が「A」であれば、読み取った利用者IDと認証IDとが一致し、かつ、認証時の類似度が「高」である場合にのみ、入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。
【0058】
利用者IDの成熟度が「B」であれば、読み取った利用者IDと認証IDとが一致した場合には、認証時の類似度に関わらず入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。一方、読み取った利用者IDと認証IDとが不一致である場合には、認証時の類似度が「低」である場合にのみ、入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。
【0059】
利用者IDの成熟度が「C」であれば、読み取った利用者IDと認証IDとが一致するか否かに関わらず、また、認証時の類似度に関わらず、入力顔画像データを読み取った利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する。
【0060】
次に、入退室管理装置40による追加登録の処理手順について説明する。
図4は、入退室管理装置40による追加登録の処理手順を示すフローチャートである。まず、利用者ID取得部43aは、カードリーダ10がIDカードから読み取った利用者IDを取得する(ステップS101)。また、利用者ID取得部43aは、取得した利用者IDの成熟度を顔認証データベース42aから取得する(ステップS102)。
【0061】
顔画像検出部43bは、カメラ20の出力を用い、撮像タイミングの異なる複数の画像からそれぞれ顔画像を検出し、入力顔画像データとして出力する(ステップS103)。登録処理部43eは、未処理の入力顔画像データを1つ選択する(ステップS104)。登録処理部43eは、利用者IDの成熟度が「A」であるか否かを判定し(ステップS105)、成熟度が「A」であれば(ステップS105;Yes)、ステップS106に移行する。
【0062】
ステップS106では、認証処理部43cは、入力顔画像データと、顔認証データベース42aに登録された登録顔画像データの各々とを照合処理し、最も類似度が高い登録顔画像データの利用者IDを認証IDとして出力する。
【0063】
ステップS106の後、登録処理部43eは、ステップS101で取得した利用者IDと認証IDとが一致するか否かを判定する(ステップS107)。IDが一致するならば(ステップS107;Yes)、ステップS106で求めた認証IDの類似度が「高」であるか否かを判定する(ステップS108)。そして、類似度が「高」であれば(ステップS108;Yes)、入力顔画像データをステップS101で取得した利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する(ステップS109)。
【0064】
成熟度が「A」でなければ(ステップS105;No)、登録処理部43eは、利用者IDの成熟度が「B」であるか否かを判定し(ステップS111)、成熟度が「B」であれば(ステップS111;Yes)、ステップS112に移行する。
【0065】
ステップS112では、認証処理部43cは、入力顔画像データと、顔認証データベース42aに登録された登録顔画像データの各々とを照合処理し、最も類似度が高い登録顔画像データの利用者IDを認証IDとして出力する。
【0066】
ステップS112の後、登録処理部43eは、ステップS101で取得した利用者IDと認証IDとが一致するか否かを判定する(ステップS113)。IDが一致するならば(ステップS113;Yes)、入力顔画像データをステップS101で取得した利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する(ステップS114)。IDが一致しなければ(ステップS113;No)、登録処理部43eは、ステップS112で求めた認証IDの類似度が「高」であるか否かを判定する(ステップS115)。そして、類似度が「高」でなければ(ステップS115;No)、入力顔画像データをステップS101で取得した利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する(ステップS114)。
【0067】
成熟度が「B」でない場合(ステップS111;No)、すなわち成熟度が「C」である場合、登録処理部43eは、入力顔画像データをステップS101で取得した利用者IDの登録顔画像データとして追加登録する(ステップS116)。
【0068】
ステップS109、ステップS114又はステップS116において入力顔画像データを登録した後はステップS110に移行する。また、ステップS107においてIDが一致しない場合(ステップS107;No)、ステップS108において類似度が「低」である場合(ステップS108;No)、ステップS115において類似度が「高」である場合(ステップS115;Yes)にも、ステップS110に移行する。
【0069】
ステップS110では、登録処理部43eは、全ての入力顔画像データを処理済みであるか否かを判定する。そして、未処理の入力顔画像データが残っている場合(ステップS110;No)には、ステップS104に移行し、全ての入力顔画像データを処理した場合(ステップS110;Yes)に、追加登録処理を終了する。
【0070】
次に、入退室管理装置40によるゲート制御の処理手順について説明する。
図5は、入退室管理装置40によるゲート制御の処理手順を示すフローチャートである。ゲート制御部43dは、利用者ID取得部43aがIDカードから利用者IDを取得したか否かを判定する(ステップS201)。
【0071】
利用者ID取得部43aが利用者IDを取得しているならば(ステップS201;Yes)、ゲート制御部43dは、取得された利用者IDが顔認証データベース42aに登録済の利用者IDであるか否かを検証する(ステップS202)。登録済の利用者IDでなければ(ステップS202;No)、ゲート制御部43dは、認証エラーを出力して利用者に報知し(ステップS203)、ゲート制御処理を終了する。一方、登録済の利用者IDであるならば(ステップS202;Yes)、ゲート制御部43dは、ゲート装置30に対してゲートの開放を指示して(ステップS204)、ゲート制御処理を終了する。
【0072】
利用者ID取得部43aが利用者IDを取得していなければ(ステップS201;No)、ゲート制御部43dは、顔画像検出部43bがカメラ20の出力から顔画像を検出したか否かを判定する(ステップS205)。顔画像検出部43bが顔画像を検出していなければ(ステップS205;No)、ゲート制御部43dは、ゲート制御処理を終了する。
【0073】
顔画像検出部43bが顔画像を検出したならば(ステップS205;Yes)、認証処理部43cは、検出された顔画像を含む入力顔画像データと、顔認証データベース42aに登録された登録顔画像データの各々とを照合処理し、最も類似度が高い登録顔画像データの利用者IDを認証IDとして出力する(ステップS206)。さらに、認証処理部43cは、最も類似度が高い登録顔画像データについて、その類似度が認証閾値以上であるか否かを判定し、認証閾値以上であれば認証成功とする。認証が成功した場合には(ステップS207;Yes)、ゲート制御部43dは、ゲート装置30に対してゲートの開放を指示して(ステップS204)、ゲート制御処理を終了する。認証が成功していなければ(ステップS207;No)、ゲート制御部43dは、ゲート制御処理を終了する。
【0074】
上述してきたように、本実施例1に係る入退室管理装置40は、カードリーダ10により利用者IDを読み取るとともに、画像認証により認証IDをもとめ、そのIDの比較結果と、読み取った利用者IDの成熟度とに応じて、入力顔画像データを追加登録するか否かを決定するので、成熟度が低い場合には登録顔画像データを増やすことを優先し、成熟度が高くなるほど誤登録を厳しく防止して、高精度な顔認証データベースを早期に構築することができる。
【実施例2】
【0075】
本実施例2では、誤登録された登録顔画像データの削除について説明する。
図6は、本実施例2に係る誤登録された登録顔画像データの削除について説明するための説明図である。
【0076】
まず、入退室管理の対象となるゲート装置30の前にはカードリーダ10が設置されている。また、ゲート装置30及びカードリーダ10に近づく人物を撮像可能な位置にカメ
ラ20が設置されている。
【0077】
図6に示すように、予め登録された利用者がカードリーダ10に接近し、IDカードをカードリーダ10にかざすと、カードリーダ10は、IDカードから利用者IDを読み出す。
図6では、読み出した利用者IDが「0001」である場合を示している。
【0078】
また、カメラ20は、カードリーダ10に接近する利用者を連続的に撮像する。入退室管理装置140は、カメラ20の出力を用い、撮像タイミングの異なる複数の画像からそれぞれ顔画像を検出する。
【0079】
入退室管理装置140は、検出した顔画像を入力顔画像データとし、顔認証データベース142aを用いて認証処理を行う。顔認証データベース142aは、利用者IDに対し、登録顔画像データ等を関連づけたデータベースである。また、各登録顔画像データには、一致カウントNTと不一致カウントNFとが関連づけられている。
【0080】
認証処理では、顔認証データベース142aに登録された登録顔画像データの各々と入力顔画像データとを照合処理し、最も類似度が高い登録顔画像データの利用者IDを認証IDとする。
【0081】
入退室管理装置140は、カードリーダ10により読み取った利用者IDと認証IDとが一致するか否かを判定し、IDが一致するならば、入力顔画像データとの類似度が最も高くなった登録顔画像データの一致カウントNTを1加算する。また、IDが一致しなければ、入力顔画像データとの類似度が最も高くなった登録顔画像データの不一致カウントNFを1加算する。そして、不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きくなった登録顔画像データを削除する。
【0082】
不一致カウントが大きい登録顔画像データは、登録先の利用者IDではなく、他の利用者IDに登録された登録顔画像データとの類似が高いことが示される。すなわち、不適切な顔画像が誤って登録された可能性が高いと考えられる。このように誤って登録された登録顔画像データは、認証精度の低下を引き起こす。そこで、不一致カウントが大きい登録顔画像データを削除するのである。
【0083】
図6の例では、カードリーダ10が読み取った利用者IDが「0001」である。そのため、入力顔画像データの認証IDが「0001」であれば、類似度が最も高くなった登録顔画像データの一致カウントNTを1加算する。また、入力顔画像データの認証IDが「0002」であれば、類似度が最も高くなった登録顔画像データの不一致カウントNFを1加算する。
【0084】
このように、本実施例2に係る入退室管理装置140は、カードリーダ10により利用者IDを読み取るとともに、画像認証により認証IDをもとめ、そのIDの比較結果により、登録顔画像データの一致カウントと不一致カウントを加算する。そして、不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きくなった登録顔画像データを削除するので、誤登録された登録顔画像データを自動的に削除し、認証精度の向上に寄与することができる。
【0085】
次に、入退室管理装置140の内部構成について説明する。
図7は、入退室管理装置140の内部構成を示すブロック図である。
図7に示すように、入退室管理装置140は、カードリーダ10、カメラ20及びゲート装置30と接続される。また、入退室管理装置40は、その内部に入出力部41、記憶部42及び制御部143を有する。
【0086】
記憶部42は、顔認証データベース42a及び登録処理テーブル42bではなく、顔認証データベース142aを記憶する点が実施例1と異なる。また、制御部143は、登録処理部43e及び選別処理部43fではなく、誤登録削除処理部143gを有する点が実施例1と異なる。その他の構成及び動作は実施例1に示した入退室管理装置40と同様であるので同一の構成要素には同一の構成要素を付して説明を省略する。
【0087】
顔認証データベース142aは、
図8に示すように、利用者IDに対し、登録顔画像データ、一致カウントNT及び不一致カウントNFを関連づけたデータベースである。具体的には、利用者ID「0001」に、登録顔画像データ「G001001.jpg」及び登録顔画像データ「G001002.jpg」とが関連づけられた状態を示している。登録顔画像データ「G001001.jpg」の一致カウントNTは「9」であり、不一致カウントNFは「1」である。登録顔画像データ「G001002.jpg」の一致カウントNTは「8」であり、不一致カウントNFは「2」である。
【0088】
また、
図8に示す顔認証データベース142aは、利用者ID「0002」に、登録顔画像データ「G002001.jpg」及び登録顔画像データ「G002002.jpg」とが関連づけられた状態を示している。登録顔画像データ「G002001.jpg」の一致カウントNTは「4」であり、不一致カウントNFは「6」である。登録顔画像データ「G002002.jpg」の一致カウントNTは「7」であり、不一致カウントNFは「3」である。
【0089】
誤登録削除処理部143gは、誤登録された登録顔画像データを削除する処理部である。具体的には、カードリーダ10により利用者IDが読み取られ、画像認証により認証IDが求められた場合に、そのIDを比較し、比較結果によって登録顔画像データの一致カウントNTと不一致カウントNFを加算する。そして、不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きくなった登録顔画像データを削除する。
【0090】
ここで、登録顔画像データの削除についてさらに説明する。誤登録削除処理部143gは、不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きくなった登録顔画像データを削除対象データとし、削除対象データと各利用者IDとの類似度を算出する。
【0091】
そして、削除対象データが複数の利用者IDと類似している場合には、削除対象データを顔認証データベース142aから削除する。一方、削除対象データが特定の利用者と高い類似度を示す場合には、当該利用者IDに削除対象データを移動する。
【0092】
例えば、利用者ID「0001」の登録顔画像データのいずれかが削除対象データとなる場合に、削除対象データの利用者ID「0001」における他の登録顔画像データとの類似度が40、利用者ID「0002」の登録顔画像データとの類似度が20、利用者ID「0003」の登録顔画像データとの類似度が20、利用者ID「0004」の登録顔画像データとの類似度が20であれば、削除対象データは様々な利用者と類似度が高いので、顔認証データベース142aから削除する。
【0093】
一方、削除対象データの利用者ID「0001」における他の登録顔画像データとの類似度が40、利用者ID「0002」の登録顔画像データとの類似度が60であれば、削除元の利用者ID「0001」よりも利用者ID「0002」との類似度の方が高く、かつ、その他の利用者とは類似していない。そこで、削除対象データを利用者ID「0001」から削除し、利用者ID「0002」に移動させる。
【0094】
図9及び
図10は、削除の連鎖について説明するための説明図である。誤登録削除処理部143gは、削除対象データを削除する際に、削除元の利用者IDに関連づけられた複数の登録顔画像データが互いにどれだけ類似しているかによって、連鎖して削除を行うか否かを決定する。
【0095】
具体的には、誤登録削除処理部143gは、同一の利用者IDに関連づけられた複数の登録顔画像データについて、互いに類似度を算定し、類似度が所定値(例えば認証閾値)以上となる登録顔画像データの間にリンクを張る。そして、削除対象データの削除により、孤立する登録顔画像データが存在する場合には、孤立する登録顔画像データも削除する。孤立する登録顔画像データは、削除対象データとの類似度が高いために誤って登録された可能性が高いからである。
【0096】
図9は、削除の連鎖が起きないケースを示している。削除対象データとリンクが張られている登録顔画像データであっても、その登録顔画像データが他の登録顔画像データとリンクを張っている場合には、削除対象データのみを削除すればよい。かかる削除により登録顔画像データの孤立が発生しないためである。
【0097】
具体的には、登録顔画像データ「G001003.jpg」は登録顔画像データ「G001001.jpg」及び登録顔画像データ「G001002.jpg」とリンクしている。また、登録顔画像データ「G001001.jpg」と登録顔画像データ「G001002.jpg」とはリンクしている。このため、登録顔画像データ「G001003.jpg」を削除対象データとしても、登録顔画像データ「G001001.jpg」及び登録顔画像データ「G001002.jpg」は孤立しない。従って、登録顔画像データ「G001003.jpg」のみを削除する。
【0098】
また、削除対象データと他の登録顔画像データとのリンクが1つしかない、すなわち、削除対象データがリンク関係の端部に位置する場合には、削除対象データのみを削除する。
【0099】
具体的には、登録顔画像データ「G001004.jpg」は登録顔画像データ「G001001.jpg」のみとリンクしている。このため、登録顔画像データ「G001004.jpg」を削除対象データとする場合には、登録顔画像データ「G001004.jpg」のみを削除する。
【0100】
図10は、削除の連鎖が起きるケースを示している。
図10に示すように、削除対象データの削除により、同一利用者ID内で孤立する登録顔画像データが存在する場合には、孤立する登録顔画像データも削除対象データの削除に連鎖して削除する。
【0101】
具体的には、登録顔画像データ「G001001.jpg」は登録顔画像データ「G001002.jpg」、「G001003.jpg」及び登録顔画像データ「G001004.jpg」とリンクしている。また、登録顔画像データ「G001002.jpg」と登録顔画像データ「G001003.jpg」とはリンクしている。登録顔画像データ「G001001.jpg」を削除対象データとすると、登録顔画像データ「G001002.jpg」及び登録顔画像データ「G001003.jpg」は孤立しないが、登録顔画像データ「G001004.jpg」は孤立する。従って、登録顔画像データ「G001001.jpg」の削除と連鎖して、登録顔画像データ「G001004.jpg」も削除する。
【0102】
次に、入退室管理装置140による誤登録データ削除の処理手順について説明する。
図11は、入退室管理装置140による誤登録データ削除の処理手順を示すフローチャートである。まず、利用者ID取得部43aは、カードリーダ10がIDカードから読み取った利用者IDを取得する(ステップS301)。
【0103】
顔画像検出部43bは、カメラ20の出力を用い、撮像タイミングの異なる複数の画像からそれぞれ顔画像を検出し、入力顔画像データとして出力する(ステップS302)。誤登録削除処理部143gは、未処理の入力顔画像データを1つ選択する(ステップS303)。認証処理部43cは、ステップS303で選択された入力顔画像データと、顔認証データベース42aに登録された登録顔画像データの各々とを照合処理し、最も類似度が高い登録顔画像データの利用者IDを認証IDとして出力する認証処理を行う(ステップS304)。
【0104】
誤登録削除処理部143gは、ステップS301で取得した利用者IDと認証IDとが一致するか否かを判定する(ステップS305)。IDが一致したならば(ステップS305;Yes)、誤登録削除処理部143gは、入力顔画像データとの類似度が最も高くなった登録顔画像データの一致カウントNTを1加算する(ステップS306)。
【0105】
IDが一致しなければ(ステップS305;No)、誤登録削除処理部143gは、入力顔画像データとの類似度が最も高くなった登録顔画像データの不一致カウントNFを1加算する(ステップS308)。そして、当該登録顔画像データの不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きくなったか否かを判定する(ステップS309)。
【0106】
不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きくなったならば(ステップS309;Yes)、誤登録削除処理部143gは、当該登録顔画像データを削除対象データとして削除を行う(ステップS310)。また、ステップS310では、削除対象データの他の利用者IDへの移動や、削除の連鎖の必要性を判定し、必要に応じて移動や連鎖を行う。
【0107】
ステップS306の後、ステップS310の後、若しくは不一致カウントNFが一致カウントNT以下である場合(ステップS309;No)、誤登録削除処理部143gは、全ての入力顔画像データを処理済みであるか否かを判定する(ステップS307)。そして、未処理の入力顔画像データが残っている場合(ステップS307;No)には、ステップS303に移行し、全ての入力顔画像データを処理した場合(ステップS307;Yes)に、誤登録データ削除処理を終了する。ゲート制御の処理手順については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0108】
上述してきたように、本実施例2に係る入退室管理装置140は、カードリーダ10により利用者IDを読み取るとともに、画像認証により認証IDをもとめ、そのIDの比較結果により、登録顔画像データの一致カウントNTと不一致カウントNFを加算する。そして、不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きくなった登録顔画像データを削除するので、誤登録された登録顔画像データを自動的に削除し、認証精度の向上に寄与することができる。
【0109】
本実施例2では、不一致カウントNFが一致カウントNTよりも大きいことを条件に登録顔画像データの削除を行う場合を例示したが、不一致カウントNFと一致カウントNTとの関係を適宜規定し、削除の条件とすることができる。例えば、一致カウントに対する不一致カウントの比率を削除の条件として規定してもよい。また、同一利用者ID内において一致カウントが上位である所定数の登録顔画像データについては、削除の対象としないこととしてもよい。
【0110】
なお、説明の便宜上、追加登録について説明するための実施例1と、誤登録データの削除について説明するための実施例2とを個別に説明したが、追加登録と誤登録データの削除の双方を行う入退室管理装置として実施してもよいことは言うまでもない。この場合には、実施例1に開示した入退室管理装置40において、顔認証データベース42aに一致カウントNT及び不一致カウントNFをさらに関連づけ、制御部43に誤登録削除処理部143gをさらに持たせればよい。
【0111】
また、上記実施例1及び2では、入退室管理装置40及び入退室管理装置140に本発明を適用する場合について説明したが、制御部43及び制御部143の各処理部をコンピュータに実行させるプログラムとして本発明を実施してもよい。
【0112】
また、上記実施例1及び2では、本発明を入退室管理システムに適用した場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、勤怠管理システムなど各種システムに適用することができる。これにより、入退室管理や勤怠管理に顔認証を導入することができる。また、入退室管理や勤怠管理を行わず、データベースの管理のみを行う装置やプログラムとして実施してもよい。
【0113】
また、上記実施例1及び2では、顔部分の画像を認証に用いる場合を例に説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、人物の顔以外の部分画像や、全身画像、上半身画像などを認証に用いる場合にも適用可能である。