(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
データサーバが、管理システムから受信した制御情報に含まれる列車の編成番号にシーケンス番号を割り当て、前記編成番号と前記シーケンス番号とを含むポーリング要求の電文情報を生成して送信し、受信したポーリング応答の電文情報に含まれる編成番号及びシーケンス番号に基づいて、前記列車の在線状況を管理することを特徴とする請求項5記載の無線通信方法。
データサーバが、制御チャネルを用いて基地局と移動局との間で送受信されるスーパーフレームのフレーム番号をシーケンス番号として、下り制御チャネルで連続する第1、第2のスーパーフレームで送信されるポーリング要求の電文情報を送信し、上り制御チャネルで連続する第1、第2のスーパーフレームにおいてポーリング応答の電文情報を受信しなかった在線抹消候補の列車がある場合、前記下り制御チャネルの第1、第2のスーパーフレームに続く第3のスーパーフレームで送信されるポーリング要求の電文情報として、前記在線抹消候補の列車の編成番号に対応して、前記下り制御チャネルの第1、第2のスーパーフレームにおけるポーリング要求の電文情報と同一のシーケンス番号を割り当てた第1の電文情報と、前記上り制御チャネルの第1、第2のスーパーフレームにおいて連続してポーリング応答の電文情報を受信した正常応答列車の編成番号に対応するシーケンス番号を割り当てた第2の電文情報とを生成して送信することを特徴とする請求項6記載の無線通信方法。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
移動無線システム、例えば、列車無線システムに用いられる無線通信システムは、列車に対する制御情報を伝達すると共に、列車からの状態情報を収集し、稼働中の列車の管理(在線管理)を行うために、統制局(中央装置)と列車に搭載された車上局(移動局)との間で通信を行うものである。
中央装置と車上局との間には基地局が設けられており、中央装置と基地局との間の通信は有線、基地局と車上局との間は無線で実現される。
【0003】
このような列車無線システムでは、複数列車からの同時送信を避けるため、中央装置から送信可能な列車を指定し、指定された列車の車上局のみが応答を返す、ポーリング方式が採用されている。
【0004】
近年、電波資源の枯渇を防止するため、列車無線システムは、π/4シフト四位相偏移偏重方式(Quadriphase Phase-Shift Keying、以下QPSK)をはじめとしたデジタル方式が主流となっている。
【0005】
デジタル列車無線の多重化方式は、周波数分割多重接続方式(Frequency-Division Multiple Access、以下FDMA)が主流であり、FDMA方式のデジタル列車無線では、ARIB-STD(Association of Radio Industries and Business Standard)-T61の標準規格が採用されている。デジタル化により、アナログ方式に比べ、1チャンネルあたりの帯域幅は拡張された。
【0006】
FDMA方式の場合、通信用のチャネルとは別に制御情報を送信するためのチャネルが必要になる。具体的には、基地局から車上局に対する下り制御チャネルのスーパーフレームは、制御情報として、報知チャネル(Broadcast Control Channel)、一斉呼出チャネル(Paging Channel)、信号制御チャネル(Signaling Control Channel)が必要になる。
報知チャネルは、規格上必要なチャネルであり、一斉呼出チャネルは、音声通話を行うための物理通信チャネルの割付制御で使用される。信号制御チャネルは、緊急情報(防護発報など)の送信で使用される。
【0007】
そして、残ったフレームがユーザデータパケットチャネル(User Packet Channel、ユーザデータ領域)として使用できる。
車上局とのポーリング通信は、ユーザデータ領域を用いて行われる。
【0008】
一方、車上局から基地局に対する上り制御チャネルのスーパーフレームは、下り制御チャネルに対応して、制御情報として、一斉呼出チャネルに対する信号制御チャネル、及び、車上局(移動局)からの音声発信及び応答用のチャネルである信号制御チャネルを備える必要がある。
【0009】
このように、FDMA方式を用いた場合は、制御チャネルのために、一つのスーパーフレーム内でポーリング通信できる車上局の数が少なくなってしまう。
そこで、使用する周波数チャネルを1波増やして2波で通信を行うことが考えられる。
【0010】
[従来の無線通信システムにおける無線機の設置状況:
図11]
FDMA方式であっても、周波数チャネルを1波から2波にすれば、倍の列車とのポーリング通信が可能となる。
この場合の無線通信システムにおける無線機の設置状況について
図11を用いて説明する。
図11は、従来の無線通信システムにおける無線機の設置状況を示す概略図である。
FDMA方式では1周波数チャネルあたり1つの無線機が必要であるため、チャネルを追加する分、基地局の無線機も追加しなければならない。
【0011】
図11の例は、基地局230と、車上局310,320,...との間でポーリング通信を行うものである。
基地局230には、制御チャネルC1用の無線機231と、制御チャネルC2用の無線機232と、音声通話やデータ通信に使用する音声通信チャネル(以下、通信チャネル)T1用の無線機233と、通信チャネルT2用の無線機234と、4チャネル分の周波数に応じて変復調する高周波部235が設けられている。
【0012】
また、車上局310には、制御チャネルC1用の無線機311と、通信チャネルT1用の無線機312と、2チャネル分の周波数に応じて変復調する高周波部313が設けられ、同様に、車上局320には、制御チャネルC2用の無線機321と、通信チャネルT2用の無線機322と、高周波部323が設けられている。
【0013】
このように、FDMAを用いた従来の無線通信システムは、各無線局に複数の無線機が設けられ、特に基地局110においては、無線信号の合成/分配を行う高周波部235の構成が複雑になっていた。また、使用する周波数チャネルを追加する例を説明したが、周波数チャネルは、法制上ユーザが自由に追加できるものではない。
【0014】
[関連技術]
尚、ポーリング通信を行う従来技術としては、特開2004−172942号公報「無線通信システム」(株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、通信局装置が、複数の異なる送信タイミングで基地局装置に送信したポーリング応答について、基地局装置からその受信状況の情報を取得し、適切な無線通信タイミングを設定することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信方法は、基地局と車上局とが制御チャネル及び通信チャネルを用いて時分割の無線通信を行うものであって、基地局が、下り制御チャネルで車上局にポーリング要求を送信し、車上局が、上り制御チャネルでポーリング応答を送信し、基地局が、下り通信チャネルに、通信情報を送受信するトラフィックチャネルと、制御情報を送受信する付随制御チャネルとを含めて送信し、車上局が、基地局から受信した下り通信チャネルに含まれる付随制御チャネルの制御情報に基づいて通信の制御を行うようにしており、制御情報を通信チャネルで送受信することにより、制御チャネルにおけるユーザデータ領域を拡大して、多くの車上局とポーリング通信を行うことができ、ポーリング通信の効率を向上させることができるものである。
【0034】
[実施の形態に係る無線通信システムのポーリング通信概略:
図1]
実施の形態に係る無線通信システム(本システム)のポーリング通信の概略について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムのポーリング通信の概略を示す説明図である。
図1の例では、中央装置(統制局)1と、基地局21,22,...(以下、「基地局2」とする)と、車上局31,32...(以下、「車上局3」とする)とを備えている。後述するように、本システムの例では、車上局3は6台まで通信可能であるが、
図1では、説明を簡単にするために基地局2及び車上局3はそれぞれ2台のみ示している。
【0035】
中央装置1は、列車無線システム全体の管理及び回線制御を行うと共に、列車の在線状況を管理する交換装置である。
具体的には、中央装置1は、車上局3に対してポーリング要求を送信し、車上局3からのポーリング応答を受信して列車ごとに在線状況を判断する。また、中央装置1は、車上局3と音声通話やデータ通信を行う。
【0036】
基地局2は、中央装置1と車上局3との間の通信を中継し、中央装置1とは有線通信、車上局3とは無線通信を行う中継装置である。
車上局3は、中央装置1からのポーリング要求を基地局2を介して受信して、それに対してポーリング応答を送信する。また、車上局3は、中央装置1と音声通話等を行う無線送受信装置である。
【0037】
そして、本システムでは、TDMA(Time Division Multiple Access;時分割多重化)方式により通信を行う。これにより、無線機1台で4チャネル(制御チャネルを2チャネル、通信チャネルを2チャネル)の無線回線を実現しており、FDMA方式に比べて簡易な構成で通信を行うことができるものである。
【0038】
ポーリング通信について説明する。
図1に示すように、中央装置1では、各車上局3に対するポーリング要求の電文情報を生成して、全ての基地局2に送信する。
図1の例では、ポーリング要求(1)は車上局31に対するポーリング要求であり、ポーリング要求(2)は車上局32に対するポーリング要求である。
基地局2では、受信したポーリング要求の電文情報をスーパーフレームの所定のフレームに挿入して、下り制御チャネルを用いて無線送信する。
【0039】
車上局3は、基地局からの下り制御チャネルに含まれる自己宛のポーリング要求を受信すると、所定のフレームにポーリング応答を挿入して上り制御チャネルを用いて基地局2に送信する。
具体的には、車上局31は、ポーリング要求(1)を受信すると、それに対してポーリング応答(1)を送信し、車上局32は、ポーリング要求(2)を受信すると、ポーリング応答(2)を送信する。
そして、基地局2では受信したポーリング応答から電文情報を生成して、中央装置1に送信するようになっている。
【0040】
[本システムにおける制御チャネルと通信チャネルの構成]
本システムでは、通信に必要な制御情報を、制御チャネルだけでなく通話音声や通信データなどの通信情報を送信する通信チャネル(通話、データ通信チャネル)に挿入して送信することにより、制御チャネルにおけるユーザデータ領域を広く確保して、1回のスーパーフレーム通信で多くの車上局とのポーリング通信を行うようにしている。
【0041】
具体的には、通信チャネルに、トラフィックチャネル(TCH;Traffic Channel)と、付随制御チャネル(ACCH;Associated Control Channel)とを設け、通話に必要な制御情報である報知チャネル(BCCH;Broadcasting Control Channel)、一斉呼出チャネル(PCH;Paging Channel)、個別ゾーン用シグナリングチャネル(SCCH;Signaling Control Channel)の機能を全てACCHにより実現するようにしている。
【0042】
これらの情報は、従来制御チャネルに挿入されていたものであるが、通信チャネルのACCHで実現することにより、制御チャネルのスーパーフレームにおけるユーザデータ領域を拡大することができるものである。
これにより、本システムでは、1回の通信でポーリング通信可能な車上局3の数を増やすことができるものである。
【0043】
[本システムにおけるスーパーフレームの構成例:
図2]
本システムにおける制御チャネルのスーパーフレームの構成例について
図2を用いて説明する。
図2は、本システムにおけるスーパーフレームの構成例を示す説明図である。
図2に示すように、本システムにおける制御チャネルのスーパーフレームは、16フレーム640msecであり、ランダムアクセスポーリングチャネル(R;Random Access Polling Channel)の4フレームを除いた12フレームをユーザデータ領域とすることができるものである。
【0044】
図2に示すように、基地局2からの下り制御チャネルで送信されるポーリング要求は、1チャネルでU1〜U6の6台の車上局向けに送信される。従来の4台に比べて、多くの車上局3とポーリング通信可能として、効率を向上させることができるものである。
また、制御チャネルを2チャネルとすれば、12台の社状況3とのポーリング通信を行うことができるものである。
【0045】
ここで、
図2に示すように、下り制御チャネルにおいて、従来は連続する2フレームを用いて同一の車上局宛のポーリング要求を送信していたが、本システムでは、連続する2フレームの内の前のフレーム(第1のフレーム)でポーリング要求を送信し、続く第2のフレームではアイドル信号を送信するようにしている。
【0046】
アイドル信号の挿入について説明する。
アイドル信号をいれずに、基地局2から2フレーム連続でポーリング要求を送信した場合、車上局3において2フレーム目のみを受信してしまうことがある。その場合、車上局3が2フレーム目を1フレーム目と誤認識して動作することで、通信のタイミングがずれてしまう。
このようなタイミングのずれを防ぐために、本システムではポーリング要求の2フレーム目をアイドル信号としている。
尚、
図2に示すように、上り制御チャネルでは、確実に応答するために2フレーム連続でポーリング応答を送信する。
【0047】
ランダムアクセスポーリングチャネル(R)は、割り込み通話要求や緊急信号等のデータ通信に用いられる。
通信チャネルにおいて、一旦通話状態となると通話が終了するまでデータ通信ができないため、通話中でも実施する必要があるデータ通信は、制御チャネルのランダムアクセスポーリングチャネル(R)によって行われるものである。
【0048】
[本システムにおける通話チャネルのシーケンス例:
図3]
次に、本システムにおける通話チャネル(通信チャネル)のシーケンス例について
図3を用いて説明する。
図3は、本システムにおける通話チャネルのシーケンス例を示すシーケンス図である。
図3に示すように、定常状態において、基地局(地上局)2は、通話チャネルの付随制御チャネル(ACCH)を用いて空線信号を送出して(S100)、車上局3との通信可能状態を保持し、車上局3は、ACCHで発呼を待ち受けている。
つまり、本システムでは、通話に関する制御を制御チャネルではなく通話チャネルのACCHを用いて行う。
【0049】
そして、基地局2に接続する地上端末から発信操作が為されると(S102)、基地局2は、通話チャネルのACCHを用いて発呼する(S104)。
車上局3は、発呼を受信すると、ACCHで発呼応答を送信し(S106)、車上端末が着信動作(着信報知動作)を行う(S108)。
【0050】
車上端末で応答操作が為されると(S110)、車上端末3は、ACCHで送信権要求を送信し(S112)、基地局2がこれを受信してACCHで送信権付与を送信する(S114)。
これにより、基地局2は通話状態に移行し、ACCHからトラフィックチャネル(TCH)に変更する。
【0051】
基地局2から音声信号がTCHで送信されると(S116)、地上端末は通話中の表示となり(S120)、車上局3がこれを受信してACCHからTCHに変更し(S122)、TCHで音声信号を送信する(S124)。
これにより、地上端末と車上端末との間で音声通話が実現される(S128)。
【0052】
そして、地上端末で終話操作が為されると(S130)、基地局2はTCHからACCHに切り替えて(S132)、ACCHで空線信号を送信し(S134)、地上端末は通話中の表示を終了する(S136)。
車上局3は、空線信号を受信すると、TCHからACCHに変更して(S138)、ACCHで発呼を待ち受ける待ち受け状態となり、車上端末は通話中表示を終了する(S140)。
このようにして、本システムにおける通信チャネルを用いたシーケンスが行われるものである。
【0053】
[本システムにおける無線機の設置状況:
図4]
次に、本システムにおける無線機の設置状況について
図4を用いて説明する。
図4は、本システムにおける無線機の設置状況を示す概略説明図である。
図4に示すように、本システムでは、4回線を実現するTDMAを用いているため、基地局2、車上局31、車上局32には、それぞれ1台の無線機211、311、321を搭載することで通信を実現でき、無線信号の合成や分配を行う高周波回路も不要となっている。
このようにして、本システムでは、回路を簡易にすることができるものである。
【0054】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信方法によれば、基地局2が、下り制御チャネルでポーリング要求を送信し、車上局3が、上り制御チャネルでポーリング応答を送信し、基地局2が、下り通信チャネルに、音声等を送受信するトラフィックチャネル(TCH)と、制御情報を送受信する付随制御チャネル(ACCH)とを含めて送信し、車上局3が、下り通信チャネルに含まれる付随制御チャネルの制御情報に基づいて通話の制御を行うようにしているので、制御チャネルのユーザデータ領域を拡大して、一度のスーパーフレームの送信でポーリング通信できる車上局3の数を増大させ、ポーリング通信の効率を向上させることができる効果がある。
【0055】
[別の実施の形態]
次に、本発明の別の実施の形態に係る無線通信システム(別のシステム)及び無線通信方法について説明する。
列車無線システムでは、列車の数が増えるに従って中央装置における処理が煩雑になり、負荷が増大してしまう。
そこで、別のシステムでは、より処理能力の高いデータサーバを用いてポーリング情報の管理を行うことで、中央装置の負荷を軽減し、より複雑な制御情報の管理ができるようにし、更に、ポーリング失敗による在線抹消を低減させるようにしている。
【0056】
[別の無線通信システムの構成:
図5]
図5は、本発明の別の実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信方法の概略構成を示す説明図である。
図5に示すように、別の実施の形態に係る無線通信システム(別のシステム)は、
地上設備として、運行管理システム41と、データサーバ42と、中央装置43と、基地局441,442,...(総称して「基地局44」とする)と、クライアント端末46と、操作盤47とを備え、車上局装置として、車上局51,52,53,...(総称して「車上局5」とする)とを備えている。
車上局51,52,53は、それぞれ、列車01,列車02,列車03に搭載されている。
中央装置43、基地局44、車上局5の構成は、上述した本システムのものと同じである。
【0057】
また、運行管理システム41とデータサーバ42とはローカルネットワーク1によって接続され、データサーバ42と中央装置43とはローカルネットワーク2によって接続されている。
そして、別のシステムでは、地上設備の操作盤47と、列車に搭載される車上局5との間で音声及びデータ通信を行い、運行管理システム1で列車の運行状況を管理する。
尚、別のシステムにおいても上述した本システムと同様に、多重化方式をTDMAとし、制御チャネル2チャネル、通信チャネル2チャネルで通信を行うものとする。
【0058】
別の無線通信システムの各構成部分について説明する。
運行管理システム41は、列車の運行状況を管理するものであり、コンピュータで構成される処理装置である。別のシステムの特徴として、運行管理システム41は、運行中の列車の制御情報をデータサーバ42に送信する。
【0059】
データサーバ42は、別のシステムの特徴部分であって、基本的に、制御部と、記憶部と、インタフェース部とを備えたコンピュータで構成され、ポーリング要求の電文情報を生成して、中央装置43及び基地局44を介して車上局5に送信する。
それと共に、データサーバ42は、車上局5からのポーリング応答の電文情報を受信して、各列車が在線しているかどうかを判断する在線管理を行う。データサーバ42の在線管理の処理については後述する。
また、データサーバ42は、システム内で発生した障害の履歴や、データ通信の履歴の管理を行い、これらの履歴はクライアント端末46から閲覧可能となっている。
【0060】
中央装置43は、回線制御を行う。
操作盤47は、オペレータによって操作され、車上局5とのデータ通信や通話を行う。
基地局44は、従来と同様に、中央装置43とは有線で、車上局5と無線で通信を行い、データサーバ42からのポーリング要求を車上局5に送信すると共に、車上局5からのポーリング応答に基づいて電文情報を生成し、データサーバ42に送信する。
ここで、基地局44は、ポーリング要求の電文情報に基づいて下り制御チャネルのスーパーフレームを組み立て、上り制御チャネルのスーパーフレームを分解して、ポーリング応答が含まれるフレーム番号に基づいてポーリング応答の電文情報を生成する。
基地局44の動作については後述する。
【0061】
別のシステムの動作概略について説明する。
ポーリング要求送信時には、データサーバ42が、運行管理システム41から列車の制御情報を取得して、ポーリング要求の電文情報を生成し、ローカルネットワーク2を介して中央装置43に送信する。
中央装置43は、ポーリング要求の電文情報を全ての基地局44(441,442,...)に送信する。
各基地局44は、受信したポーリング要求の電文情報に基づいて下り制御チャネルのスーパーフレームを生成して、車上局5に無線送信する。
【0062】
また、ポーリング応答受信時には、基地局44が、車上局5からの上り制御チャネルのスーパーフレームを受信し、それに基づいて当該車上局5のポーリング応答の電文情報を生成して、中央装置43を介してデータサーバ42に送信する。
データサーバ42は、ポーリング応答の電文情報に基づいて、各列車の在線/非在線を判断し、応答結果及び列車状態情報を運行管理システム41に通知する。
このようにして、別のシステムにおける在線管理の動作が行われる。
【0063】
[スーパーフレームの構成:
図6]
次に、別のシステムにおける下り制御チャネルのスーパーフレームの構成について
図6を用いて説明する。
図6は、別のシステムにおける下り制御チャネルのスーパーフレームの構成例を示す説明図である。
図6に示すように、別のシステムにおけるスーパーフレームは、40msecの26フレームから成り、全体では1040msecの長さである。
そして、制御チャネルには、非常情報用や緊急割り込み用として、R1〜R4のランダムアクセスポーリングチャネルが設けられている。
【0064】
別のシステムにおいても、上述した本システムと同様に、通話に伴う制御情報を通信チャネルで送受信して、制御チャネルにおけるユーザ領域を広く確保している。
図6の例では、ランダムアクセスポーリングチャネル以外のユーザデータ領域がポーリング要求の送信フレームとなり(P01〜P22)、CH1とCH2の2チャネルで最大22編成の列車に搭載された車上局5とのポーリング通信が可能となる。
このように、通常は1つのスーパーフレームによって、各車上局5は、ポーリング要求を1回受信するようになっている。
【0065】
また、本システムと同様に、下り制御チャネルでは、連続する2フレームの内、第1のフレームでポーリング要求を送信し、第2のフレームではアイドル信号(I)を送信する。
尚、上り制御チャネルでは、2フレーム続けてポーリング応答を送信する。
【0066】
[ポーリング要求の電文情報作成:
図7]
次に、別のシステムにおけるポーリング要求の電文情報の作成について
図7を用いて説明する。
図7は、別のシステムにおけるポーリング要求の電文情報の作成を示す模式説明図である。
図7に示すように、別のシステムでは、運行管理システム41が、運行中の各列車の制御情報(01編成制御情報、02編成制御情報、...xx編成制御情報)をデータサーバ42に通知する。
【0067】
データサーバ42は、受信した制御情報に、シーケンス番号(Seq.01、Seq.02、...Seq.xx)を割り当てて、編成番号(01編成、02編成、...xx編成)とシーケンス番号とを含むポーリング要求の電文情報を生成し、中央装置43に送信する。
データサーバ42は、シーケンス番号と編成番号とを対応付けた情報を保持しておく。シーケンス番号と編成番号とが一致している必要はない。
【0068】
ここで、シーケンス番号は、無線通信におけるフレーム番号を指定する情報となっている。
そして、ポーリング要求の電文情報を受信した基地局は、それに含まれるシーケンス番号に基づいて、ポーリング要求を所定のフレームに挿入する。
例えば、
図7のように、編成番号01に対するポーリング要求の電文情報に、シーケンス番号01が含まれていれば、
図6に示すように、基地局44は、当該列車の編成番号を含むポーリング要求を1番のフレームに設定して送信する(ここでは下り制御チャネルのCH2で送信)。
【0069】
ポーリング要求を受信した車上局5は、下り制御チャネルでポーリング要求を受信したフレーム番号及びそれに続く番号のフレームを用いて、ポーリング応答を2フレーム連続して上り制御チャネルで送信する。
基地局44は、編成番号を含むポーリング応答を受信すると、受信したフレーム番号をシーケンス番号に変換して、編成番号及びシーケンス番号を含むポーリング応答の電文情報を作成して、データサーバ42に送信する。
これにより、データサーバ42は、どの列車(車上局5)からのポーリング応答を受信したかを判断する。
つまり、別のシステムでは、列車の編成番号とシーケンス番号とフレーム番号とを対応付けることで個々の列車に関するポーリング情報を管理するものである。
【0070】
[制御情報の遅延]
運行管理システム41からの制御情報が遅れた場合、所定のタイミングでポーリング要求を送信できなくなる恐れがある。
そこで、データサーバ42では、運行管理システム41から制御情報を受信すると、内部の記憶部に記憶しておく。
そして、次のポーリング要求の電文生成時に、運行管理システム41からの制御情報が受信できなかった場合、記憶している制御情報を用いてポーリング要求の電文情報を生成する。
これにより、運行管理システム41からの制御情報の通知が間に合わなくてもポーリング要求の送信を継続することができるものである。
【0071】
[ポーリング通信のタイミング]
通常、データサーバ42は、車上局5へのポーリング要求が途絶えないよう、所定の間隔で電文情報を送信し続けるが、データサーバ42と中央装置43との間のネットワークには、他の装置(クライアント端末46等)が接続されており、データサーバ42は、これらの装置とも通信を行っている。
そのため、データサーバ42は、ポーリング要求の電文情報を常に一定のタイミングで送信できるとは限らない。
【0072】
そこで、別のシステムでは、データサーバ42から複数列車宛の電文情報をまとめてブロックとして送信し、中央装置43が、受信した電文情報のブロックから、クロックに従って1つずつ電文情報を読み出して送信するようにしている。これにより、ポーリング要求の電文情報は、中央装置43から一定のタイミングで基地局44に送出することができるものである。
【0073】
[タイミングを一定にする別の構成:
図8]
また、別の構成として、データサーバ42では電文情報をまとめずに逐次送信して、中央装置43がポーリング要求の電文情報を一定のタイミングで送信することも可能である。
図8は、ポーリング要求の電文情報を一定のタイミングで送信する別の方法を示す模式説明図である。
図8に示すように、中央装置43は、インタフェース部を備え、データサーバ42から不規則なタイミングで送信されるポーリング要求の電文情報を受信すると、インタフェース部のデータ保持キューに保持する。
【0074】
そして、中央装置43は、データ保持キューに保持したポーリング要求の電文情報を、クロック信号のタイミングに従って取り出し、一定のタイミングで基地局44に送信する。
これにより、電文情報は一定のタイミングで基地局44に送出されるものである。
【0075】
[中央装置43のキューを一定に保つ方法:
図9]
次に、中央装置43内部のキューを一定に保つ方法について
図9を用いて説明する。
図9は、中央装置内部のキューを一定に保つ方法の説明図である。
データサーバ42からのポーリング要求の電文情報が一定タイミングで中央装置43に送信されない場合もあるため、インタフェース内部のキューが保持するデータ数が減少してしまうことがある。
【0076】
そこで、別のシステムでは、中央装置43からデータサーバ42に対して、定期的に現在キューが保持している電文情報の件数を通知し(S1)、データサーバ42が、通知に基づいて、送信するポーリング要求の電文情報を件数を増減するようにしている(S2)。
あるいは、中央装置43は、キュー内の電文情報の件数が特定値を下回った場合にデータサーバ42に通知するようにしてもよい。
【0077】
[ポーリング通信の失敗による在線抹消の低減]
データサーバ42は、上り制御チャネルにおいて3スーパーフレームで連続してポーリング応答を受信しなかった列車がある場合に、その旨を運行管理システム41に通知する。それにより、当該列車は在線抹消され、運行停止となる。
しかし、列車が運行中であるにもかかわらず、ポーリング通信の失敗によって運行停止となってしまうことがある。
【0078】
別のシステムのデータサーバ42では、このようなポーリング通信の失敗による運行停止を低減するよう、ポーリング要求の電文情報を生成する。
別のシステムにおける在線管理の動作について具体的に説明する。
データサーバ43は、ポーリング要求の電文情報を生成して送信し、この電文情報は、基地局44から下り制御チャネルのスーパーフレーム(下り制御チャネルの第1のスーパーフレーム)で車上局5に送信される。
データサーバ42は、次の電文情報の送信タイミングになると、次のスーパーフレーム(下り制御チャネルの第2のスーパーフレーム)で送信されるポーリング要求の電文情報を生成して送信する。
【0079】
車上局5では、下り制御チャネルの第1のスーパーフレームでポーリング要求を受信すると、上り制御チャネルのスーパーフレーム(上り制御チャネルの第1のスーパーフレーム)でそれに対するポーリング応答を送信し、続く下り制御チャネルの第2のスーパーフレームでもポーリング要求を受信すると、上り制御チャネルの第1のスーパーフレームに続く第2のスーパーフレームでポーリング応答を送信する。
【0080】
データサーバ42は、中央装置43を介して基地局44からの電文情報を受信し、列車の編成番号毎にポーリング応答の受信/非受信を判定し、連続失敗回数と連続成功回数を保持しておく。データサーバ42は、ソフトウェアによって実現されるカウンタを備えている。
そして、データサーバ42は、2スーパーフレーム連続してポーリング応答を受信しなかった列車(在線抹消候補の列車)がある場合、次のスーパーフレームにおいて、当該在線抹消候補の列車に対して、1回多く(つまり2回)ポーリング要求を送信するように電文情報を生成する。
【0081】
[具体的な処理:
図10]
データサーバ42の具体的な処理を
図10を用いて説明する。
図10は、データサーバ42の在線抹消を低減する処理を示すフローチャートである。
図10に示すように、データサーバ42は、ポーリング応答をチェックして、非受信の列車があるかどうかを判断する(100)。
非受信の列車がない場合(Noの場合)には、処理100に戻る。
【0082】
ポーリング応答非受信の列車がある場合(YESの場合)、データサーバ42は、当該列車が、2スーパーフレーム連続で非受信となっている在線抹消候補であるかどうかを判断する(102)。
在線抹消候補でない場合(Noの場合)、処理100に戻る。
【0083】
当該列車が在線抹消候補であった場合(Yesの場合)、データサーバ41は、2スーパーフレーム以上連続してポーリング応答を受信した列車(正常応答列車)の中から、いずれか1編成を選択する(104)。
選択する正常応答列車は、なるべく電文情報の送信タイミングの早いものが望ましい。
【0084】
そして、データサーバ42は、次のポーリング要求の電文情報生成時に、正常応答列車の編成番号に対応するシーケンス番号に、在線抹消候補の編成番号を割り当てたポーリング要求の電文情報を生成して送信する(106)。
この電文情報は、請求項に記載した第2の電文情報に相当する。
第2の電文情報による抹消候補の列車に対するポーリング要求は、下り制御チャネルの第1、第2のスーパーフレームに続く第3のスーパーフレームにおいて、それまで正常応答列車に対するポーリング要求を送信していたフレームに挿入されて送信される。
当該正常応答列車については、ポーリング通信が1回省略されることになるので、同じ列車のポーリング通信が何度も省略されないように選択する。
【0085】
更に、データサーバ42は、在線抹消候補の編成番号に対して、下り制御チャネルの第1、第2のスーパーフレームで送信されたものと同じポーリング要求の電文情報を生成する。つまり、それまでと同じシーケンス番号に、在線抹消候補の編成番号を割り当てたポーリング要求の電文情報を生成して送信する(108)。
この電文情報は、請求項に記載した第1の電文情報に相当する。
第1の電文情報による在線抹消候補の列車に対するポーリング要求は、下り制御チャネルの第3のスーパーフレームでも、第1、第2のスーパーフレームと同じフレームに挿入されて送信される。
尚、
図10では、正常応答列車に対応するシーケンス番号が在線抹消候補の編成番号に対応するシーケンス番号よりも小さい場合の例を示している。
【0086】
これにより、第3のスーパーフレームでは、在線抹消候補の列車に対するポーリング要求を2つのフレームで送信することができ、ポーリング応答の機会を増やして、3スーパーフレーム連続してポーリング応答非受信となることで運行停止になってしまうのを極力防ぐものである。
【0087】
[別の実施の形態の効果]
本発明の別の実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信方法によれば、データサーバ42が、運行管理システム41から制御情報を受信して、制御情報に含まれる列車の編成番号にシーケンス番号を割り当て、編成番号とシーケンス番号を含むポーリング要求の電文情報を生成して送信し、基地局44が、下り制御チャネルのスーパーフレームにおいてシーケンス番号のフレームに当該ポーリング要求を挿入して送信すると共に、上り制御チャネルのスーパーフレームにおいてポーリング応答が含まれるフレーム番号をシーケンス番号に変換して編成番号とシーケンス番号を含むポーリング応答の電文情報を生成して送信し、データサーバ42が、ポーリング応答の電文情報に基づいて列車の在線管理を行うようにしているので、中央装置43の処理を軽減することができる効果がある。
【0088】
また、別の実施の形態に係る無線通信システム及び無線通信方法によれば、基地局42が、2スーパーフレーム連続してポーリング応答を受信しない在線抹消候補の列車がある場合、次の電文情報生成時に、在線抹消候補の列車の編成番号に対応して、それまでと同じシーケンス番号を割り当てた第1の電文情報と、2スーパーフレーム以上連続してポーリング応答を受信している正常応答列車の編成番号に対応するシーケンス番号を割り当てた第2の電文情報とを生成して送信するようにしているので、在線抹消候補の列車に対して、1つのスーパーフレームで2回のポーリング要求を送信して、ポーリング応答の機会を増やすことができ、ポーリング通信の失敗によって在線抹消になってしまうことを極力防ぐことができる効果がある。
【0089】
尚、上述した実施の形態では、無線通信システムが列車無線システムである場合を例にあげて説明した。しかし、本発明の無線通信システムは列車無線システムに限定されるものではなく、移動局にポーリング要求を送信するシステムに広く適用できることはいうまでもない。