(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の分野において、タッチパネルやタッチパッド等の入力デバイスが良く用いられるようになってきた。この入力デバイスは、操作者(ユーザ)が指先を操作面に接触させたときに、静電容量値等の変化によって操作面上における指先の座標位置を検出し、その座標位置に応じた入力操作を可能にするというものである。例えば、この種の入力デバイスは、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示装置の前面に設置されており、ユーザが表示装置の画面に表示されている所望の操作領域上に指先を置くと、その操作領域の操作内容が実行されるようなっている。
【0003】
ところで、この種の入力デバイスでは、ユーザが自身の指先を操作面に接触させて操作した際に、指先に伝わる感覚には操作(入力)前後で差異が生じないので、ユーザにとっての操作感(操作感触)が得られなかった。そこで、従来より、ユーザの指先に触覚刺激(触覚フィードバック)を与える触覚刺激発生装置が提案されて、この触覚刺激発生装置と組み合わされて入力デバイスが用いられる場合があった。この触覚刺激発生装置の代表的な例として、振動を与えて触覚刺激を付与するタイプが最も利用されている。
【0004】
この振動タイプの触覚刺激発生装置として、特許文献1では、
図10及び
図11に示すような電磁アクチュエータ900が提案されている。
図10は、従来例の電磁アクチュエータ900を説明する図であって、
図10(a)は、その概略を示す縦断面図であり、
図10(b)は、
図10(a)に示すP部分の主要構成部品(アクチュエータ部分)を抜き出した構成図である。
図11は、
図10(b)に示すアクチュエータ部分の作用を示す磁路解析結果であって、
図11(a)は、初期状態での磁束線図であり、
図11(b)は、コイル918に通電した状態での磁束線図である。
【0005】
図10に示す電磁アクチュエータ900は、軸線Oの方向に所定のギャップを介して対向配置された第1の固定鉄心912及び第2の固定鉄心914と、このギャップの近傍において軸線Oに沿って移動自在に配置された可動鉄心916と、2つの固定鉄心(第1の固定鉄心912、第2の固定鉄心914)及び可動鉄心916に磁界を及ぼしてこれらに磁路を形成し、可動鉄心916を軸線Oに沿って移動させるコイル918と、を備えている。これらの各部材は基本的に回転対称に、すなわち円形状に形成され、円筒形のハウジング920の中に収容されている。
【0006】
そして、電磁アクチュエータ900は、
図11(a)に示す初期状態から、コイル918に通電すると、2つの固定鉄心(第1の固定鉄心912、第2の固定鉄心914)から可動鉄心916に対してそれぞれ磁気吸引力が発生する。その際に、第2の固定鉄心914と軸線Oの方向に沿って延びた可動鉄心916の磁束誘導部934とが磁束を誘導する作用を主に担い、第1の固定鉄心912と軸線Oに交差する方向に延びた可動鉄心916の磁束作用部932とが主に吸引作用を担っている。これにより、第2の固定鉄心914側より第1の固定鉄心912側の磁気吸引力が大きくなり、通電時には可動鉄心916は第1の固定鉄心912に向けて移動し、
図11(b)に示す状態になる。この際の可動鉄心916の移動により、振動が発生するようになる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態では、振動発生装置VB3及びこの振動発生装置VB3を用いた操作感触付与型入力装置101について説明する。先ず、操作感触付与型入力装置101について説明を行う。
図1は、本発明の第1実施形態に係わる振動発生装置VB3を用いた操作感触付与型入力装置101を説明する側面構成図である。
【0026】
本発明の第1実施形態の操作感触付与型入力装置101は、
図1に示すように、ユーザの指先等の身体特定部位F99により操作される操作面TPpを有した入力器TP1と、本発明の第1実施形態の振動発生装置VB3と、から構成されている。そして、入力器TP1が振動発生装置VB3に接続されて、振動発生装置VB3からの振動を入力器TP1に付与されるようになっている。
【0027】
先ず、操作感触付与型入力装置101の入力器TP1について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係わる入力器TP1を説明する構成図であって、
図2(a)は、入力器TP1の斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すZ1側から見た上面図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係わる入力器TP1の分解斜視図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係わる入力器TP1を説明する構成図であって、
図2(b)に示すIV−IV線における断面図である。
【0028】
入力器TP1は、ユーザの指先である身体特定部位F99(以下、指先として述べる)の座標位置を検出可能な、所謂タッチパッドを用いている。この入力器TP1(タッチパッド)は、静電容量式と呼ばれる検出方式であり、ユーザが自身の指先を操作面TPpに近接または接触させたときに、静電容量値の変化によって操作面TPp上における指先の座標位置を検出し、指先の座標位置に応じた入力情報を出力するようになっている。
【0029】
また、入力器TP1は、振動発生装置VB3に接続、具体的には後述する振動発生装置VB3の振動伝達部材5に載置されており(
図1を参照)、ユーザによる入力操作が行われた際に、振動発生装置VB3から振動が付与されるようになっている。
【0030】
次に、入力器TP1の詳細な構成について説明する。入力器TP1は、
図2に示すように、全体としてシート状をなしており、
図3及び
図4に示すように、ガラスフィラーが含有されたエポキシ樹脂製の絶縁基板51と、この絶縁基板51の一方面側(
図3に示すZ1方向側)に積層されたX座標検出層11と、絶縁基板51の他方面側(
図3に示すZ2方向側)に積層されたY座標検出層21と、X座標検出層11を覆うトップカバー71と、
図3及び
図4では図示していない、X座標検出層11及びY座標検出層21の静電容量を検出する静電容量検出部91(
図6を参照)と、を備えて構成されている。
【0031】
先ず、入力器TP1の絶縁基板51とX座標検出層11とY座標検出層21は、所謂両面のプリント配線板(PWB、printed wiring board)を用いて作製されている。つまり、両面のプリント配線板(PWB)の一方側面の銅箔をパターニングしてX座標検出層11とし、他方側面の銅箔をパターニングしてY座標検出層21としている。そして、X座標検出層11とY座標検出層21とが協働して、指先が位置する座標検出を行っている。
【0032】
入力器TP1のX座標検出層11は、詳細な図示はしないが、短冊状の第1電極が多数配設されており、これら第1電極が均等な分布で配置されて第1検出電極群を構成している。そして、第1検出電極群のうち複数の第1電極がY方向に一列に並んで連結されており、この第1電極の列がX方向に等間隔に分散配置されている。このため、どの列の第1電極がユーザの指先と相互作用しているのかを示す検出データに基づいて、操作面TPp上における指先のX座標を検出することができる。
【0033】
また、入力器TP1のY座標検出層21は、X座標検出層11と同様に、短冊状の第2電極が多数配設されており、これら第2電極が均等な分布で配置されて第2検出電極群を構成している。そして、第2検出電極群のうち複数の第2電極がX方向に一列に並んで連結されており、この第2電極の列がY方向に等間隔に分散配置されている。このため、どの列の第2電極がユーザの指先と相互作用しているのかを示す検出データに基づいて、操作面TPp上における指先のY座標を検出することができる。なお、タッチパッドの検出原理は公知であるため詳細な説明を省略するが、ユーザが指先を近接または接触させると、この指先の近傍で第1電極と第2電極との間の静電容量値が変化することにより、この容量値変化に基づいて指先の座標位置を検出できるようになっている。
【0034】
次に、入力器TP1のトップカバー71は、
図3に示すように、ユーザの指先が近接または接触される操作面TPpを有したカバーシート71Cと、カバーシート71Cの外周端部を覆う細長い枠状のカバー枠71Wと、から構成されている。また、カバーシート71Cは、一般的なフィルム基材であるポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethylene terephthalate)のシートから作製されているとともに、カバー枠71Wは、ABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)を射出成形して作製されている。そして、カバーシート71Cとカバー枠71Wとが両面テープ等の粘着剤で貼り付けられているとともに、トップカバー71がX座標検出層11を覆うようにして貼り付けられている。
【0035】
次に、入力器TP1の静電容量検出部91は、後述する配線基板90(
図6を参照)に搭載されており、容量検出回路を有した集積回路を備え、X座標検出層11及びY座標検出層21と指(身体特定部位F99)との静電容量を検出している。また、静電容量検出部91は、集積回路に制御回路を有したコントロール部を備えており、検出した静電容量の検出結果を外部機器に出力している。なお、X座標検出層11及びY座標検出層21と静電容量検出部91との接続は、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC、Flexible printed circuits)により行っている。
【0036】
次に、操作感触付与型入力装置101における、本発明の第1実施形態の振動発生装置VB3について説明する。
図5は、本発明の第1実施形態の振動発生装置VB3の斜視図である。
図6は、振動発生装置VB3の分解斜視図である。
図7は、
図5に示すVII−VII線における振動発生装置VB3の縦断面図である。なお、
図7に示す振動発生部材3の振動体13の断面は簡略して示しており、詳細な振動体13の断面は、後述する
図8に示している。
【0037】
振動発生装置VB3は、
図5に示すような箱形状の外観を呈し、
図6及び
図7に示すように、振動方向VD(
図5に示すZ方向)に動作可能な可動部13Jを有する振動発生部材3と、振動発生部材3を保持する基体4と、可動部13Jと接続される振動伝達部材5と、から構成されている。また、本発明の第1実施形態では、振動発生装置VB3は、
図6に示すように、振動発生部材3と振動伝達部材5とを互いに離反する方向に付勢する付勢部材7(
図7を参照)と、基体4に固定されている天板部材40と、入力器TP1の静電容量検出部91が搭載された配線基板90と、を備えている。そして、振動発生装置VB3は、入力器TP1が振動伝達部材5に載置されて(接続されて)、ユーザの入力器TP1のタッチ操作に応じて振動発生部材3を駆動し、ユーザに対して、振動を伝える(付与する)ことができる。これにより、振動発生装置VB3は、操作感覚が得られ難い装置に対して、ユーザに操作感、すなわち振動フィードバック感触を与えることができる。
【0038】
先ず、振動発生装置VB3の振動発生部材3について説明する。
図8は、振動発生部材3を説明する模式図であって、
図8(a)は、
図7に示す振動体13の断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すR部分の拡大断面図である。
図9は、振動発生部材3の振動体13を説明する模式図であって、
図9(a)は、振動体13の第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bを示す上面図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すY2側から見た第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bの側面図である。
【0039】
振動発生部材3は、
図6に示すように、振動方向VDに動作可能な可動部13Jを有する振動体13と、振動体13を制御する制御部33と、振動体13と制御部33とを電気的に接続するフレキシブルプリント基板(FPC、Flexible printed circuits)(図示していない)と、を備えて構成されている。
【0040】
先ず、振動発生部材3の振動体13は、
図8に示すように、振動方向VD(
図5に示すX方向)に動作可能な可動部13Jと、振動方向VDで離間して配設された第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bと、第1ヨーク13Aの近傍に配設されたコイル13Cと、第1ヨーク13Aを振動方向VDへ移動可能に支持する支持体13S(
図8では、ばね部材13f及び支持板13g)と、を備えて構成されている。他に、本発明の第1実施形態では、振動体13は、
図6に示すように、円筒状で第1ヨーク13A、第2ヨーク13B及びコイル13C等を収容した本体ケース13Kと、
図8(a)に示すように、本体ケース13Kの下方側(
図8に示すZ2方向側)を覆う本体カバー13Lと、を有している。そして、コイル13Cに通電されると、第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bに磁路が形成され、第1ヨーク13A及び第2ヨーク13B間に磁気吸引力が発生するようになる。
【0041】
先ず、振動体13の可動部13Jは、鉄等の金属材料から作製されており、
図6に示すように、本体ケース13Kの中央部分を貫いて配設され、振動体13に加えられる駆動信号によって、可動部13Jが振動方向VDに沿って往復自在に移動するようになっている。また、ユーザによる押圧操作によっても、可動部13Jが押圧方向(振動方向VDと一致)の往復動作が可能となっている。
【0042】
また、可動部13Jは、
図7に示すように、後述する第1保持板16及び第2保持板26により振動伝達部材5の天面15tに上端側(
図7に示すZ1側)が固定され、振動伝達部材5に接続されるようになる。これにより、可動部13Jの振動方向VDへの動作が振動伝達部材5に伝わることとなる。
【0043】
次に、振動体13の第1ヨーク13Aは、鉄等の軟磁性体材料から作製されており、
図9(a)に示すように、その外形形状が平面視して円形で、中央部分が円形に開口したリング状の第1平板部13aと、第1平板部13aの外側に形成されたリング状の第2平板部13bと、を有している。また、第1ヨーク13Aは、
図8に示すように、第2平板部13bの内側端部から垂直に延設された(
図8ではZ1方向に延設)内壁部13wを有するとともに、第2平板部13bの外側端部から垂直に延設された外壁部13xを有している。そして、第1ヨーク13Aは、
図8に示すように、第2平板部13bと内壁部13wと外壁部13xとで、U字形状の断面を形成している。
【0044】
また、第1ヨーク13Aは、
図8に示すように、支持体13Sの支持板13gに固定されており、この支持板13gが支持体13Sのばね部材13fによって本体ケース13Kに移動可能に支持されている。このため、第1ヨーク13Aの振動方向VDへの移動が可能になる。
【0045】
また、詳細な図示はしていないが、支持板13gが可動部13Jと係合されているので、第1ヨーク13Aの振動方向VDへの移動が支持板13gを介して可動部13Jに伝達することとなる。なお、本発明の第1実施形態では、第1ヨーク13Aを振動方向VDへ移動可能に支持する支持体13Sとして、詳細な部品を省略しているが、ばね部材13f、支持板13g及び本体ケース13Kが挙げられる。
【0046】
次に、振動体13の第2ヨーク13Bは、第1ヨーク13Aと同様に、鉄等の軟磁性体材料から作製されており、
図8に示すように、その外形形状が平面視して円形で、中央部分が円形に開口したリング状の平板部13eを有している。また、第2ヨーク13Bは、
図8に示すように、平板部13eの外側端部から垂直に延設された外壁部13zを有している。そして、
図8に示すように、平板部13eと外壁部13zとで、L字形状の断面を形成している。また、第2ヨーク13Bは、
図8に示すように、本体カバー13Lに固定されている。
【0047】
そして、振動体13が組み立てられた際には、第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとは、
図8及び
図9(b)に示すように、振動方向VDで対向するように離間して配設されて、第1ヨーク13Aの外壁部13xと第2ヨーク13Bの外壁部13zとが対向するとともに、第1ヨーク13Aの第1平板部13aと第2ヨーク13Bの平板部13e(以後、ここの部分を対向平板部13tとする)とが対向するようになる。また、第1ヨーク13Aの外形サイズより第2ヨーク13Bの外形サイズの方が大きく形成されており、第2ヨーク13Bの平板部13e及び外壁部13zで形成された収納部に第1ヨーク13Aの第1平板部13a、内壁部13w及び外壁部13xが収容されるようになっている。この際には、第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bの中心位置を一致させて配設している。
【0048】
また、前述したように、第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bの外形形状が平面視して円形であるので、部品作製の際の公差等でお互いの位置関係が所望する位置関係より多少ずれたとしても、特定方向への偏りが少なくなり、偏心の少い振動を得ることができる。
【0049】
以上のように構成されて組み立てられた第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bは、第1ヨーク13Aの第1平板部13aには、第2ヨーク13Bの対向平板部13tと振動方向VDで対向する第1振動側対向面13pを有するとともに、第2ヨーク13Bの対向平板部13tには、第1振動側対向面13pと対向する第2振動側対向面13qを有するようになる。
【0050】
一方、振動方向VDと直交する直交方向HDでは、第1ヨーク13Aの外壁部13xには、第2ヨーク13Bの外壁部13zと直交方向HDで対向する第1直交側対向面13rを有するとともに、第2ヨーク13Bの外壁部13zには、第1直交側対向面13rと対向する第2直交側対向面13sを有することとなる。
【0051】
そして、
図8(b)に示すように、第1ヨーク13Aの第1振動側対向面13pと第2ヨーク13Bの第2振動側対向面13qとの間に第1隙間GP1が生じ、第1ヨーク13Aの第1直交側対向面13rと第2ヨーク13Bの第2直交側対向面13sとの間に第2隙間GP2が生じる。この第1隙間GP1は、第2隙間GP2より狭くなるように構成されている。これにより、コイル13Cに通電された際に、第1隙間GP1の方の第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの磁気吸引力が強くなる。このため、第1隙間GP1の方の振動方向VDで第1ヨーク13Aが第2ヨーク13B側により速く移動し、振動方向VDに振動することとなる。このことにより、振動方向VDに動作可能な可動部13Jを介して振動伝達部材5により、振動方向VDへのより強い振動を入力器TP1に与えることができる。
【0052】
しかも、本発明の第1実施形態では、第1振動側対向面13pと第2振動側対向面13qのいずれか一方が他方を包含する面積で形成されているので、磁気吸引力が発生した際に、第1ヨーク13Aが振動方向VDに移動したとしても、第1振動側対向面13pと第2振動側対向面13qとが必ず重なることとなり、安定した磁気吸引力を得ることができる。
【0053】
更に、本発明の第1実施形態では、振動方向VDにおいて、第1隙間GP1が全周に亘って設けらているので、第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの磁気吸引力をより強く、しかも安定して得ることができる。このことにより、振動方向VDにより一層強く、しかも安定して振動させることができる。
【0054】
また、磁気吸引力が発生していない初期状態において、直交方向HDの第1直交側対向面13rと第2直交側対向面13sとの対向面積が、振動方向VDの第1振動側対向面13pと第2振動側対向面13qとの対向面積よりも大きく構成されている。このため、コイル13Cに通電された際に、第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bで構成する磁気回路における第2隙間GP2で生じる磁気抵抗(磁束の流れやすさ)を下げることができる。このため、全体の磁気回路における磁気抵抗を下げることができ、振動方向VD(第1隙間GP1の方)の第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの磁気吸引力をより強くすることができる。このことにより、振動方向VDで第1ヨーク13Aが第2ヨーク13B側により一層速く移動することとなり、振動方向VDに動作可能な可動部13Jを介して振動伝達部材5により一層強い振動を与えることができる。
【0055】
しかも、本発明の第1実施形態では、磁気吸引力が発生していない初期状態において形成される外壁部13xの第1直交側対向面13rと外壁部13zの第2直交側対向面13sに対して、第1ヨーク13Aが移動する方向(
図8に示すZ2方向)とは反対の方向(
図8に示すZ1方向)に外壁部13zと対向しない第1ヨーク13Aの外壁部13xが設けられているとともに、第1ヨーク13Aが移動する方向に外壁部13xと対向しない第2ヨーク13Bの外壁部13zが設けられている構成となっている。
【0056】
これにより、磁気吸引力が発生して第1ヨーク13Aが移動した際に、初期状態において第2ヨーク13Bの外壁部13zと対向していなかった外壁部13x(第2平板部13bの側端部側)が第2ヨーク13Bの外壁部13zと対向するとともに、初期状態において第1ヨーク13Aの外壁部13xと対向していなかった外壁部13z(平板部13eの側端部側)が第1ヨーク13Aの外壁部13xと対向するようになる。つまり、磁気吸引力が発生した際に、第1直交側対向面13rと第2直交側対向面13sとの対向面積が増えることとなる。このため、主に磁束を誘導する作用を有する部分の面積が増えることとなり、従来例のように第2の固定鉄心914と磁束誘導部932との対向面積が減じて磁気抵抗が高くなることとは逆に、この部分の磁気抵抗が下がるようになる。このことにより、第1隙間GP1の方の第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの磁気吸引力がより一層強くなり、一層強い振動を与えることができる。
【0057】
次に、振動発生部材3の制御部33は、集積回路(IC、integrated circuit)を用いており、
図6に示すように、配線基板90に搭載されている。そして、制御部33は、振動発生装置VB3に接続された入力器TP1の入力操作に応じた命令信号に基づいて、振動体13に駆動信号を送信している。
【0058】
次に、振動発生部材3のフレキシブルプリント基板(FPC)は、一般に広く用いられているポリイミド(PI、Polyimide)樹脂ベースのフィルム基材を用いており、一方が振動体13に接続されて、他方が
図6に示すコネクタCNを介して制御部33に接続されている。
【0059】
次に、振動発生装置VB3の基体4について説明する。基体4は、ABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)樹脂等の合成樹脂を射出成形して作製されており、
図6に示すように、下方側(
図6に示すZ2方向側)が開放された(
図7を参照)箱形形状の基部14と、基部14と下端側で接続され(
図7を参照)外周を囲む外周壁部24と、から構成されている。
【0060】
基体4の基部14は、略正方形状の上壁部14tと、上壁部14tの四方端から下方に延設した側壁部14wと、基部14と外周壁部24とを接続する連結部14r(
図7を参照)と、から構成されている。そして、基部14の側壁部14wと外周壁部24とで、溝部4mが形成されている。
【0061】
基部14の上壁部14tには、中央部に円形の貫通孔14hと、上壁部14tから上方に延出した3つの円柱状の突起部14sと、が設けられている。そして、振動発生装置VB3が組み立てられた際には、
図7に示すように、振動発生部材3の可動部13Jがこの貫通孔14hに挿通されるとともに、詳細な図示はしていないが、基部14の内側の収容部14cに振動体13の本体ケース13Kが収納される。また、ネジ等により上壁部14tの内側に振動体13の本体ケース13Kが固定されて、振動発生部材3が基体4に保持される。また、上壁部14tには、付勢部材7が載置される。
【0062】
次に、振動発生装置VB3の天板部材40について説明する。天板部材40は、ABS樹脂等の合成樹脂を射出成形して矩形板状に作製されており、
図6に示すように、中央部に円形形状の貫通穴40hを有しているとともに、
図7に示すように、貫通穴40hを囲む位置に下面側からの下方に突出した規制部40tを有している。そして、天板部材40は、天板部材40の下面と基体4の突起部14sとが接着若しくは溶着され、基体4に一体にして固定される。
【0063】
次に、振動発生装置VB3の振動伝達部材5について説明する。振動伝達部材5は、ABS樹脂等の合成樹脂を射出成形して作製されており、
図6に示すように、下方側が開放された(
図7を参照)箱形形状のベース部15と、ベース部15の上面側の外周に沿って形成され上方側に突出した載置部25と、から構成されている。
【0064】
振動伝達部材5のベース部15は、
図6に示すように、略正方形状の天面15tと、天面15tの四方端から下方に延設した側壁15wと、から構成されている。そして、振動発生装置VB3が組み立てられた際には、
図7に示すように、ベース部15の側壁15wが基体4の溝部4mに挿入されて、振動伝達部材5が振動方向VDに対して移動可能な空間を有して配設されている。
【0065】
ベース部15の天面15tには、
図6に示すように、中央部に円形の第1穴部15hと、基体4の突起部14sに対応した位置に3つの第2穴部15kと、が形成されている。そして、振動発生装置VB3が組み立てられた際には、
図7に示すように、振動発生部材3の可動部13Jが第1穴部15hに挿通されるとともに、基体4の基部14の突起部14sが第2穴部15kに挿通される。
【0066】
また、前述したように、第1保持板16及び第2保持板26により天面15tが挟持されて、ナットNTで締め付けられることで、振動伝達部材5と可動部13Jとが接続されて固定される。これにより、可動部13Jの振動方向VDへの動作が振動伝達部材5に伝わることとなる。
【0067】
振動伝達部材5の載置部25は、
図6に示すように、ベース部15の上面側から上方に延設されて、ベース部15の外周に沿って枠状に形成されている。そして、この載置部25には、
図1に示すように、詳細な図示はしていないが、入力器TP1が載置されて固定されている。これにより、上述した振動発生装置VB3を用いているので、ユーザの指先等の身体特定部位F99で入力器TP1の操作面TPpに操作がされた際に、入力器TP1に対して強い振動が与えられるようになる。このことにより、コイル13Cにより多くの電流を通電し大きな磁場を発生させなくても、より強い操作感触が付与される操作感触付与型入力装置101を提供することができる。
【0068】
また、本発明の第1実施形態では、この載置部25に入力器TP1が一体的に接続されているので、振動発生装置VB3で発生させた振動が効率良くダイレクトに入力器TP1に伝わることとなる。従って、第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bの体積を小さくするか、あるいはコイル13Cを小さくしても振動発生装置VB3で発生させた振動が効率良く入力器TP1に伝達されるため、操作感触を損なうことなく振動発生装置VB3を小型化することができる。
【0069】
次に、振動発生装置VB3の付勢部材7について説明する。付勢部材7は、
図6に示すように、一般的なコイルばねを4つ用いて構成されている。そして、
図7に示すように、付勢部材7は、基体4の上壁部14tと振動伝達部材5の天面15tとの間に配設され、振動発生部材3と振動伝達部材5とを互いに離反する方向に付勢している。また、付勢部材7としてコイルばねを用いているので、振動方向VD(
図6に示すZ方向)への変形が可能となっており、振動伝達部材5の振動方向VDへの移動が許容される。なお、付勢部材7はコイルばねに限らず、例えば磁石を用いても良い。磁石を用いる場合、
図7で付勢部材7がある位置に、複数の磁石をZ方向に空隙を介して互いに同極が対向するように配置することで、磁石の反発力によって入力器TP1の押圧方向PDへの往復動作を可能に支持することが可能となる。
【0070】
最後に、振動発生装置VB3の配線基板90について説明する。配線基板90は、一般に用いられている両面配線タイプのプリント配線板(PWB、printed wiring board)を用いており、
図7に示すように、基部14の内側の収容部14cに収納され、詳細な図示はしていないが、ネジ等により基体4に固定されている。また、
図6に示すように、配線基板90には、振動発生部材3の制御部33、入力器TP1の静電容量検出部91及びコネクタCN等が搭載されている。
【0071】
以上のように構成された本発明の第1実施形態の振動発生装置VB3及び振動発生装置VB3を用いた操作感触付与型入力装置101における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0072】
本発明の第1実施形態の振動発生装置VB3は、振動発生部材3の第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの間で振動方向VDに形成された第1振動側対向面13pと第2振動側対向面13qとの第1隙間GP1が、第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの間で直交方向HDに形成された第1直交側対向面13rと第2直交側対向面13sとの第2隙間GP2より狭いので、コイル13Cに通電された際に、第1隙間GP1の方の第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの磁気吸引力が強くなる。このため、第1隙間GP1の方の振動方向VDで第1ヨーク13Aが第2ヨーク13B側により速く移動し、振動方向VDに振動することとなる。このことにより、振動方向VDに動作可能な可動部13Jを介して振動伝達部材5により、振動方向VDへのより強い振動を与えることができる。従って、コイル13Cにより多くの電流を通電し大きな磁場を発生させなくても、より強い操作感触を与えられる振動発生装置VB3を提供することができる。
【0073】
また、第1隙間GP1より隙間が広い第2隙間GP2における第1直交側対向面13rと第2直交側対向面13sとの対向面積が第1隙間GP1における第1振動側対向面13pと第2振動側対向面13qとの対向面積よりも大きいので、コイル13Cに通電された際に、第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bで構成する磁気回路における第2隙間GP2で生じる磁気抵抗(磁束の流れやすさ)を下げることができる。このため、全体の磁気回路における磁気抵抗を下げることができ、振動方向VD(第1隙間GP1の方)の第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの磁気吸引力がより強くなる。このことにより、振動方向VDで第1ヨーク13Aが第2ヨーク13B側により一層速く移動することとなり、振動方向VDに動作可能な可動部13Jを介して振動伝達部材5により一層強い振動を与えることができる。
【0074】
磁気吸引力が発生した際に、第1直交側対向面13rと第2直交側対向面13sとの対向面積が増えるので、主に磁束を誘導する作用を有する部分の面積が増えることとなる。このため、従来例のように第2の固定鉄心914と磁束誘導部932との対向面積が減じて磁気抵抗が高くなることとは逆に、この部分の磁気抵抗が下がるようになる。このことにより、第1隙間GP1の方の第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bとの磁気吸引力がより一層強くなり、一層強い振動を与えることができる。
【0075】
本発明の第1実施形態の操作感触付与型入力装置101は、上記のいずれかに記載の振動発生装置VB3を用いているので、ユーザの指先等の身体特定部位F99で入力器TP1の操作面TPpに操作がされた際に、入力器TP1に対して強い振動が与えられるようになる。このことにより、コイル13Cにより多くの電流を通電し大きな磁場を発生させなくても、より強い操作感触が付与される操作感触付与型入力装置101を提供することができる。
【0076】
また、入力器TP1が振動発生装置VB3の振動伝達部材5に一体的に接続されているので、振動発生装置VB3で発生させた振動が効率良くダイレクトに入力器TP1に伝わることとなる。このことにより、より一層強い操作感触が入力器TP1に付与される。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0078】
<変形例1>
上記第1実施形態では、第1ヨーク13Aを振動方向VDへ移動可能に支持する支持体13Sとして、ばね部材13fを用いる構成としたが、このばね部材13fを用いない構成でも良い。その際には、振動伝達部材5を介して可動部13Jの振動方向VDへの移動を許容している付勢部材7が、可動部13Jと係合している第1ヨーク13Aの振動方向VDへの移動を支持する支持体としての機能を担うこととなる。
【0079】
<変形例2>
上記第1実施形態では、コイル13Cが第1ヨーク13Aの近傍に配設される構成としたが、これに限らず、第1ヨーク13Aと第2ヨーク13Bの少なくとも一方の近傍に配設されいれば良い。
【0080】
<変形例3>
上記第1実施形態では、入力器TP1として、静電容量式のタッチパッドを好適に用いて構成したが、これに限るものではない。例えば透光性の基材や透光性の電極を用いた、所謂タッチパネルでも良い。例えば電極として導電フィラーを含有した導電性パターンを用いたタイプのパネルでも良い。
【0081】
<変形例4>
上記第1実施形態では、第1ヨーク13A及び第2ヨーク13Bの外形形状が平面視して円形で好適に構成したが、これに限るものではない。例えば外形形状が平面視して矩形状に構成しても良い。例えば振動方向VDにそれぞれ独立して設けた構成でも良い。
【0082】
<変形例5>
上記第1実施形態では、X座標検出層11、Y座標検出層21及び絶縁基板51として好適に両面のプリント配線板(PWB)を用いて作製したが、これに限るものではない。例えばフィルム基材の両面に導電性ペーストを印刷、硬化して作製しても良いし、例えば、ガラス基材の両面に透明導電成膜(例えばITO、tin-doped indium oxide)を成膜して作製しても良い。
【0083】
<変形例6>
上記第1実施形態に加え、入力器TP1への押圧操作を検出する検出部材を設けた構成でも良い。例えば検出部材として、プッシュスイッチ等のスイッチ部材や圧力センサやフォースセンサ等のセンサ部材を用いて、可動部13Jの近傍に配設しても良い。
【0084】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。