(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る防災システム、受信機、及び感知器の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
〔実施の形態の基本的概念〕
まずは、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、防災システム、受信機、及び感知器に関するものである。この「防災システム」は、監視領域における異常の発生の有無を監視するためのシステムであり、少なくとも1台の受信機と複数台の感知器とを備えて構成されている。この監視領域の設定対象は任意であり、例えば、集合住宅、オフィスビス、あるいは商業施設を含む。「受信機」は、複数台の感知器に基づいて所定処理を行う受信手段であり、例えば、管理室に設置されている。「感知器」は、監視領域における異常の発生の有無を感知する感知手段であり、監視領域に設定された複数の監視区画の各々に設置されている。この感知器の具体的な種類は任意であるが、煙や熱を感知する火災感知器、ガスを感知するガス漏れ感知器、あるいは人体を感知する人感センサが該当する。本実施の形態においては、感知器が煙を感知する火災感知器として構成されているものとして説明する。
【0019】
受信機と複数台の感知器の各々との相互間の通信は、任意の方式で行うことができ、例えば、公知の近距離無線通信規格に準じた近距離無線通信や有線通信を用いて行うことができる。このような近距離無線規格としては、例えば、Zigbee(登録商標)やECHONET Lite(登録商標)を挙げることができる。本実施の形態では、受信機と複数台の感知器の各々との相互間において、426MHz帯及び920MHz帯の1つ又は2つの周波数帯により双方向で無線送信を行うことが可能となっている。
【0020】
また、これら受信機と複数台の感知器の各々との相互間の通信は、直接的に行うようにしてもよいが、他の機器を介在させてもよい。本実施の形態では、本実施の形態では「受信中継器」を介して、受信機と複数台の感知器の相互間の通信を間接的に行う。この場合、受信機と受信中継器の相互間の通信や、受信中継器と感知器の相互間の通信は、任意の方式で行うことができる。本実施の形態では、受信機と受信中継器の相互間において双方向有線通信を行う。また、本実施の形態では、受信中継器と感知器の相互間において双方向無線通信を行うものとし、具体的には、受信中継器から感知器への信号送信を、426MHz帯と920MHz帯のいずれか一方により行い、感知器から受信中継器への信号送信を、426MHz帯と920MHz帯のいずれか他方により行うこととして、2つの周波数帯により迅速な通信を行うことを可能としている。
【0021】
〔実施の形態の具体的内容〕
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0022】
(構成)
まず、防災システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る防災システムの構成を示す概略図である。この
図1に示すように、防災システム1は、受信機10、受信中継器20、及び複数の感知器30を備えて構成されている。受信機10と受信中継器20は、通信線2にて接続され、受信中継器20と複数の感知器30の各々は、無線にて通信可能となっている。
【0023】
(構成−受信機)
最初に、受信機10の構成について説明する。
図2は、受信機10の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この
図2に示すように、受信機10は、入力部11、出力部12、通信部13、記憶部14、及び制御部15を備えている。
【0024】
(構成−受信機−入力部)
入力部11は、受信機10の動作に必要な情報の入力を受け付ける入力手段であり、例えば、タッチパネル、スイッチ、及び外部入力端子を備える。受信機10のユーザは、例えば、タッチパネルやスイッチを介して、出力部12に監視状態を表示すべき監視区画を切り替えたり、警報出力を停止させたり、あるいは、これらの情報を任意の外部機器から外部入力端子を介して入力することができる。
【0025】
(構成−受信機−出力部)
出力部12は、受信機10の動作に必要な情報の出力を行う出力手段であり、例えば、スピーカ、ディスプレイ、表示灯、及び外部出力端子を備える。受信機10のユーザは、例えば、警報出力をスピーカを介して出力させたり、監視区画の監視状態をディスプレイや表示灯を介して出力させたり、あるいは、これらの情報を任意の外部機器に対して外部出力端子を介して移報出力することができる。
【0026】
(構成−受信機−通信部)
通信部13は、受信中継器20との通信を行う受信機側通信手段であり、例えば、受信中継器20を受信機10に有線接続するための接続端子を備えて構成されている。
【0027】
(構成−受信機−記憶部)
記憶部14は、受信機10の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段である。この記憶部14は、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されているが、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記憶媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記憶媒体を含む、その他の任意の記憶媒体を用いることができる(この点は他の装置や機器の記憶部も同様)。この記憶部14には、感知器情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)14aと、制御情報DB14bとが記憶されている。
【0028】
感知器情報DB14aは、感知器情報を格納する感知器情報格納手段である。「感知器情報」とは、感知器30を特定するための情報であり、
図3に例示するように、項目「感知器ID」、項目「受信中継器ID」、及び項目「設置位置」を含み、これら各項目の情報を相互に対応付けて構成されている。項目「感知器ID」の情報は、感知器30を一意に識別するための感知器識別情報であり、例えば、感知器30の出荷前に任意の方法で付与される。項目「受信中継器ID」の情報は、受信中継器20を一意に識別するための受信中継器識別情報であり、例えば、受信中継器20の出荷前に任意の方法で付与される。項目「設置位置」の情報は、監視領域において感知器30が設置された位置を特定するための感知器位置特定情報であり、例えば、設置位置=「F1−R1」は、感知器30の設置位置が1階(F1)の第1室(R1)であることを示す。この感知器情報は、感知器30及び受信中継器20の設置位置が決定された後に、受信機10のユーザによって感知器情報DB14aに設定される。
【0029】
制御情報DB14bは、感知器30の制御情報を格納する制御情報格納手段である。「制御情報」とは、感知器30の制御内容を特定するための情報であり、
図4に例示するように、項目「感知状態」、項目「設置位置」、及び項目「制御内容」を含み、これら各項目の情報を相互に対応付けて構成されている。項目「感知状態」の情報は、感知器30の感知状態を特定するための感知状態特定情報である。この情報は、例えば、煙濃度の増加率が所定値以上であるが煙濃度が所定の異常判定閾値未満であるために火災断定には至っていない「煙濃度増加」、煙濃度が異常判定閾値以上であるために火災断定に至っている「火災断定」、あるいは、煙濃度増加若しくは火災断定の状態から、煙濃度の増加率が所定値未満でかつ煙濃度が異常判定閾値未満となったために通常感知状態に復帰した「復帰」のいずれかである。項目「設置位置」は、感知状態を受信機10に対して通信してきた感知器30(以下、基準感知器30)を基準として、当該基準感知器30自体や他の感知器30を制御する場合に、これら制御すべき対象となる感知器30を特定するための情報であり、本実施の形態においては、基準感知器30を基準とした設置位置を特定するための情報である。例えば、設置位置=「基準感知器」は、制御対象が基準感知器30自体であることを示し、設置位置=「隣接」は、制御対象が基準感知器30から最も近い位置に設置されている他の感知器30であることを示し、設置位置=「同一中継範囲」は、制御対象が基準感知器30と同じ受信中継器20の中継範囲内に設置されている他の全ての感知器30であることを示している。項目「制御内容」は、感知状態を受信機10に対して通信してきた特定の感知器30を基準として当該特定の感知器30又は他の感知器30を制御する場合に、制御内容を特定するための制御内容特定情報である。この情報は、例えば、感知器30から受信中継器20へ信号送信する際の通信間隔(以下、単に「通信間隔」と称する)を、所定のデフォルトの通信間隔(以下、単に「基準通信間隔」と称する)よりも短くする「通信間隔短縮」、通信間隔を基準通信間隔よりも長くする「通信間隔延長」、あるいは通信間隔を基準通信間隔に復帰させる「通信間隔復帰」のいずれかである。この制御情報は、受信機10のユーザによって決定され制御情報DB14bに設定される。
【0030】
(構成−受信機−制御部)
制御部15は、受信機10を制御する制御手段である。この制御部15は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである(この点は他の装置や機器の制御部も同様)。特に、本実施の形態に係る受信機用プログラムは、任意の記憶媒体又はネットワークを介して受信機10にインストールされることで、制御部15の各部を実質的に構成する。
【0031】
この制御部15は、機能概念的に、受信機側制御部15aを備えて構成されている。この受信機側制御部15aは、複数の感知器30の中の一部の感知器30の状態に関する状態信号を通信部を介して受信した場合には、当該受信した状態信号に基づいて、当該一部の感知器30を制御するための制御信号、又は複数の感知器30の中の他の全部又は一部の感知器30を制御するための制御信号を、通信部を介して送信する、受信機側制御手段である。なお、この受信機側制御部15aにより行われる具体的な処理については後述する。
【0032】
(構成−受信中継器)
次に、受信中継器20の構成について説明する。
図5は、受信中継器20の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この
図5に示すように、受信中継器20は、通信部21、記憶部22、及び制御部23を備えている。
【0033】
(構成−受信中継器−通信部)
通信部21は、受信機10及び感知器30との通信を行う中継側通信手段であり、例えば、受信機10と有線にて通信を行うための入出力端子や、感知器30と近距離無線通信を行うためのアンテナや周波数変換部を備えて構成されている。
【0034】
(構成−受信中継器−記憶部)
記憶部22は、受信中継器20の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段である。この記憶部22には、当該受信中継器20の受信中継器IDが記憶されている。この受信中継器IDは、例えば、受信中継器20の出荷前に記憶部に記憶される。
【0035】
(構成−受信中継器−制御部)
制御部23は、受信中継器20を制御する制御手段である。特に、本実施の形態に係る受信中継器用プログラムは、任意の記憶媒体又はネットワークを介して受信中継器20にインストールされることで、制御部23の各部を実質的に構成する。
【0036】
(構成−感知器)
次に、感知器30の構成について説明する。
図6は、感知器30の電気的構成を機能概念的に示すブロック図である。この
図6に示すように、感知器30は、異常検知部31、出力部32、通信部33、記憶部34、及び制御部35を備えている。
【0037】
(構成−感知器−異常検知部)
異常検知部31は、感知器30が設置された住戸における監視領域の異常を検知する異常検知手段である。この異常検知部31の具体的な構成は任意であるが、例えば、感知器30=火災感知器である場合には煙センサや熱センサであり、感知器30=ガス漏れ感知器である場合にはガスセンサであり、感知器30=人感センサである場合には赤外線センサである。上述したように、本実施形態における感知器30は、煙を感知する火災感知器であるため、異常検知部31は煙センサとして構成されている。
【0038】
(構成−感知器−出力部)
出力部32は、感知器30の動作に必要な情報の出力を行う出力手段であり、異常検知部31にて異常が検知された場合に警報出力を行う出力手段であって、例えば、スピーカ及び表示灯を備える。
【0039】
(構成−感知器−通信部)
通信部33は、受信中継器20との通信を行う感知器側通信手段であり、例えば、受信中継器20と近距離無線通信を行うためのアンテナや周波数変換部を備えて構成されている。
【0040】
(構成−感知器−記憶部)
記憶部34は、感知器30の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段(防災情報格納手段)である。この記憶部34には、当該感知器30の感知器IDが記憶されている。この感知器IDは、例えば、感知器30の出荷前に記憶部に記憶される。
【0041】
(構成−感知器−制御部)
制御部35は、感知器30を制御する制御手段である。特に、本実施の形態に係る感知器用プログラムは、任意の記憶媒体又はネットワークを介して感知器30にインストールされることで、制御部35の各部を実質的に構成する。
【0042】
この制御部35は、機能概念的に、感知器側制御部35aを備えている。この感知器側制御部35aは、自己の状態に関する状態信号を通信部を介して受信機10に送信する感知器側制御手段であって、受信機10から制御信号を通信部を介して受信した場合には、当該制御信号に基づく制御を行う感知器側制御手段である。なお、感知器側制御部35aにより行われる具体的な処理については後述する。
【0043】
(処理)
次に、このように構成される防災システム1によって実行される処理について説明する。この処理は、感知器30の状態を特定するための状態特定処理と、感知器30を制御するための制御処理に大別される。これら各処理は、受信機10、受信中継器20、及び感知器30への電源投入後にこれら各機器により繰り返して実行される。
【0044】
(処理−状態特定処理)
最初に、状態特定処理について説明する。
図7は、状態特定処理のフローチャートである。なお、以下では、「ステップ」を「S」と略記する。
【0045】
まず、各感知器30の異常検知部31は、当該感知器30が設置された監視区画の異常を公知の方法で所定の異常検知周期で検知し、各感知器30の感知器側制御部35aはこの検知結果に基づいて監視区画の異常状態を判定する(SA1)。例えば、感知器側制御部35aは、この検知結果を所定の異常判定閾値と比較すること等により、監視領域における異常の有無を判定し、検知結果が異常判定閾値未満である場合には、監視領域における異常無し(本実施の形態においては火災未断定)と判定し、検知結果が異常判定閾値以上である場合には、監視領域における異常有り(本実施の形態においては火災断定)と判定する。また、感知器側制御部35aは、監視領域における異常有りと判定した後に、検知結果が異常判定閾値未満になった場合には、監視領域における異常が解消した(本実施の形態においては復帰)と判定する。
【0046】
そして、感知器側制御部35aは、この検知結果(本実施の形態においては煙濃度)及び判定結果(本実施の形態においては火災未断定、火災断定、あるいは復帰のいずれか)と、記憶部34に記憶されている感知器IDとを含む状態信号を生成し、当該生成した状態信号を通信部33を介して受信中継器20に無線送信する(SA2)。この無線送信は、複数の感知器30から送信された状態信号の輻輳の問題を解消するために、所定の通信間隔で行う。すなわち、感知器側制御部35aは、受信中継器20への無線送信を行った後、通信間隔(例えば10秒)が経過するか否かを監視し、再度の無線送信は、この通信間隔が経過するまでは行わず、この通信間隔が経過した以降に行う(以下の感知器30からの送信に関しても同様)。
【0047】
受信中継器20の制御部23は、感知器30から送信される状態信号の受信状態を監視しており、感知器30から送信された状態信号を通信部21を介して受信した場合には、この状態信号に自己の受信中継器IDを付加した上で、この状態信号を通信部21を介して受信機10に送信する。なお、この際、感知器30には、自己の中継を行う受信中継器20の受信中継器IDを予め登録しておき、感知器30から状態信号を送信する際に当該状態信号に受信中継器IDを含め、受信中継器20においては受信した状態信号に自己の受信中継器IDが含まれている場合にのみ、当該状態信号の中継を行うようにしてもよい(受信機10から感知器30に送信される信号についても、受信機10において受信中継器IDを含めて送信することで、受信中継器20における中継要否の判定を行うようにしてもよい)。なお、この受信中継器20の処理は、
図7において省略する。
【0048】
一方、受信機10の受信機側制御部15aは、受信中継器20から送信される状態信号の受信状態を監視しており、受信中継器20から送信された状態信号を通信部13を介して受信した場合には(SA3、Yes)、この状態信号に含まれる検知結果及び判定結果に基づいて、監視区画の感知状態を特定する(SA4)。例えば、判定結果=火災未断定である場合や、判定結果=復帰である場合には、検知結果を解析することで、監視区画の異常発生可能性を判定する。例えば、受信機10の受信機側制御部15aは、受信中継器20から受信した状態信号を記憶部に蓄積しており、この蓄積された状態信号と、新規に受信した状態信号とに基づいて、監視区域における煙濃度の増加率を算定し、この煙濃度の増加率が所定値以上である場合には、感知状態=煙濃度増加と特定する。また、判定結果=火災断定である場合には、検知結果に関わらず、感知状態=火災断定特定する。あるいは、上述のように、判定結果=火災未断定である場合や、判定結果=復帰である場合において、検知結果を解析した結果、煙濃度の増加率が所定値未満であると判定した場合には、感知状態=復帰と特定する。これにて状態特定処理を終了する。
【0049】
(処理−制御処理)
次に、制御処理について説明する。
図8は、制御処理のフローチャートである。まず、受信機側制御部15aは、状態特定処理のSA4で判定した感知状態に基づいて、制御すべき感知器30と、当該感知器30の制御内容とを特定する(SB1)。例えば、受信機側制御部15aは、SA4で判定した感知状態に基づいて制御情報DB14bを参照することにより、この感知状態に対応する設置位置及び制御内容を取得する。次いで、受信機側制御部15aは、状態特定処理のSA3で受信した状態信号に含まれる感知器IDと受信中継器IDとに基づいて感知器情報DB14aを参照することにより、この状態信号を送信した感知器30(つまり、基準感知器30)の設置位置を特定する。そして、受信機側制御部15aは、当該特定した基準感知器30の設置位置と、制御情報DB14bから取得した設置位置とに基づいて、基準感知器30以外の感知器30であって、制御対象に含めるべき感知器30の感知器IDを取得する。そして、受信機側制御部15aは、基準感知器30の感知器IDと、制御情報DB14bから取得した基準感知器30に対する制御内容とを含んだ制御信号を生成し、当該生成した制御信号を通信部13を介して送信する(SB2)。また、受信機側制御部15aは、基準感知器30以外の感知器30であって、制御対象に含めるべき感知器30の感知器IDと、制御情報DB14bから取得した当該基準感知器30以外の感知器30に対する制御内容とを含んだ制御信号を生成し、当該生成した制御信号を通信部13を介して送信する(同じくSB2)。
【0050】
例えば、感知状態=煙濃度増加である場合には、制御情報DB14bから、「設置位置=基準感知器」と「制御内容=通信間隔短縮」とを取得し、「設置位置=隣接」と「制御内容=通信間隔延長」とを取得し、「設置位置=同一中継範囲」と「制御内容=通信間隔延長」とを取得する。そして、基準感知器30の感知器IDと、隣接する感知器30の感知器IDと、同一中継範囲の感知器30の感知器IDとを感知器情報DB14aから取得する。この際の感知器IDの具体的な取得方法は任意である。例えば、基準感知器30の感知器IDは、SA3で受信した状態信号に含まれる感知器IDとして取得される。また、隣接する感知器30の感知器IDに関しては、基準感知器30と同一の部屋に設置されている感知器30がある場合には当該感知器30を特定し、このような感知器30がない場合には基準感知器30と同一階における最も近い部屋に設置されている感知器30(例えば、感知器情報の設置位置において、基準感知器30とFが同一でRが連番である感知器30)を特定した上で、これら特定された感知器30の感知器IDを感知器情報DB14aから取得する。例えば、基準感知器30の感知器ID=SID0001である場合には、感知器情報DB14aから、基準感知器30と隣接する感知器30の感知器IDとして感知器ID=SID0002が取得される。あるいは、隣接する感知器30を特定する情報を予め感知器情報に格納しておき、この情報を参照することにより特定してもよい。また、同一中継範囲の感知器30の感知器IDに関しては、受信中継器IDが共通の感知器30を特定する。例えば、基準感知器30の感知器ID=SID0001である場合には、感知器情報DB14aから、感知器ID=SID0003を取得する。従って、感知器ID=SID0001と制御内容=通信間隔短縮を含んだ制御信号、感知器ID=SID0002と制御内容=通信間隔延長を含んだ制御信号、及び感知器ID=SID0003と制御内容=通信間隔延長を含んだ制御信号が送信される。
【0051】
受信中継器20の制御部は、受信機10から送信される制御信号の受信状態を監視しており、受信機10から送信された制御信号を通信部21を介して受信した場合には、この制御信号を通信部21を介して感知器30に送信する。なお、この受信中継器20の処理は、
図8において省略する。
【0052】
一方、感知器30の感知器側制御部35aは、受信中継器20から送信される制御信号の受信状態を監視しており、受信中継器20から送信された制御信号を通信部33を介して受信した場合には(SB3、Yes)、この制御信号に含まれる感知器IDが自己の記憶部に記憶された感知器IDと一致するか否かを判定し(SB4)、一致しない場合には(SB4、No)、この制御信号は自己宛てに送信された制御信号ではないとして、SB3に戻り、一致する場合には(SB4、Yes)、この制御信号に含まれる制御内容に応じた制御を行う(SB5)。例えば、制御内容=通信間隔短縮である場合には、通信間隔を基準通信間隔よりも短い所定の通信間隔(以下、短縮通信間隔。例えば5秒)に短縮し、制御内容=通信間隔延長である場合には、通信間隔を基準通信間隔よりも長い所定の通信間隔(以下、延長通信間隔。例えば20秒)に延長し、制御内容=通信間隔復帰である場合には、通信間隔を基準通信間隔に復帰させる。これにて制御処理が終了する。
【0053】
以降同様に、このような状態特定処理と制御処理を繰り返し行うことで、感知器30の検知状態に基づいて、基準感知器30や他の感知器30を自動的に制御することが可能になる。例えば、
図4の制御情報によれば、基準感知器30の煙濃度が増加した場合には、基準感知器30によって火災が断定される可能性が高いため、基準感知器30自身については通信間隔を短縮することで火災断定を早期に受信機10に通知することが可能になり、隣接する感知器30や同一中継範囲の感知器30については通信間隔を延長することで基準感知器30から送信される状態信号との輻輳を防止することが可能になる。また、基準感知器30で火災断定された場合には、基準感知器30は既に火災断定しており、この旨の通信信号が少なくとも1回は受信機10に送信済であり、基準感知器30から受信機10への通知をこれ以上早期に行う必要性は低いため、基準感知器30自身については通信間隔を延長することで他の感知器30から送信される状態信号との輻輳を防止し、隣接する感知器30については延焼等を感知する可能性が最も高いため、通信間隔を短縮することで火災断定を早期に受信機10に通知することが可能になり、同一中継範囲の感知器30については延焼等を感知する可能性が2番目に高いため、通信間隔を復帰することで火災断定を早期に受信機10に通知することが可能になる。あるいは、基準感知器30が復帰した場合には、いずれの感知器30についても、通常通りの監視を行わせることが適切であると考えられるため、通信間隔を復帰する。
【0054】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0055】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。例えば、従来のシステムよりも防災性を向上できない場合であっても、従来のシステムと同程度の防災性を従来のシステムとは異なる本願発明のシステムによって達成できている場合には、本願発明の課題が解決されている。
【0056】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。例えば、受信機10や受信中継器20をそれぞれ複数の装置に分散して構成したり、受信機10や受信中継器20を相互に統合したり、受信機10の感知器情報DB14aや制御情報DB14bをそれぞれ複数のDBに分散若しくは統合したり、受信機10又は受信中継器20の一方の機能の一部を他方に持たせたりしてもよい。また、各部を分散する場合において、これら各部の相互間の連携は、有線と無線のいずれか一方又は両方により行うことができる。
【0057】
(実施の形態の相互関係について)
複数の実施の形態が記載されている場合において、これら複数の実施の形態の相互間においては、その構成や処理の一部を相互に入れ替えたり、一方の構成や処理を他方に適用したりしてもよい。
【0058】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0059】
(状態信号や制御信号について)
感知器30の状態に関する状態信号は、上記煙感知状態のような感知状態に関する状態信号の他、例えば、感知器30が電池駆動である場合における電池電圧の状態を示す状態信号や、感知器30が自動で自己の機能の試験を行った結果を示す状態信号であってもよい。例えば、電池電圧の状態を示す状態信号を送信する場合、受信機10は、特定の感知器30の電池電圧が所定値未満になった場合には、当該特定の感知器30の検知間隔や通信間隔を延長することで消費電力を低減して検知寿命を延長する一方、隣接する感知器30の検知間隔や通信間隔を短縮することで防災性が低下することを防止するようにしてもよい。あるいは、試験結果を示す状態信号を送信する場合、受信機10は、特定の感知器30に不具合が生じたことが試験により判定された場合には、当該特定の感知器30を機能停止させて誤報を防止する一方、隣接する感知器30の検知間隔や通信間隔を短縮することで防災性が低下することを防止するようにしてもよい。また、上記実施の形態において、感知器30の状態の判定のうち、火災断定の判定は感知器30で行い、煙濃度の増加の判定は受信機10で行うものとして説明したが、このような判定は感知器30と受信機10のいずれかで行うようにしてもよい。
【0060】
(その他の機器について)
また、上記実施の形態で説明した機器以外の他の機器を含めて防災システム1を構成してもよい。例えば、携帯型の設定用通信機(図示を省略する)を含めてもよい。この設定用通信機は、感知器30の設定を遠隔的に行うためのもので、感知器30と近距離無線双方向通信が可能なように構成され、感知器IDと任意の設定内容とを含む設定信号を送信することができる。この設定信号を受信した感知器30は、設定信号に含まれている感知器IDが自己の感知器IDと一致する場合には、設定信号に含まれている設定内容に基づいて自己の設定を行う。例えば、ユーザは、感知器30の設定内容や感知器30に蓄積させた異常検知履歴を設定用通信機に送信させ、これらの情報を設定用通信機によって受信する。このように受信した情報は、設定用通信機に設けた表示部によって表示する。あるいは、このように受信した情報を、設定用通信機に一次的に記憶させた後、この設定用通信機をコンピュータ等に接続した後で、設定用通信機からコンピュータ等に転送して、コンピュータ等で蓄積したり出力させるようにしてもよい。このような設定用通信機を防災システム1に含めることで、例えば、受信中継器20から感知器30に送信した制御信号を設定用通信機によっても受信し、受信中継器20から送信された制御信号の内容を設定用通信機において表示させて確認したり蓄積してもよい。
【0061】
(付記)
上述した課題を解決し、目的を達成するために、付記1に記載の防災システムは、受信機と複数の感知器とを備える防災システムであって、前記受信機は、前記複数の感知器との通信を行う受信機側通信手段と、前記複数の感知器の中の一部の感知器の状態に関する状態信号を前記受信機側通信手段を介して受信した場合には、当該受信した状態信号に基づいて、当該一部の感知器を制御するための制御信号、又は前記複数の感知器の中の他の全部又は一部の感知器を制御するための制御信号を、前記受信機側通信手段を介して送信する、受信機側制御手段とを備え、前記複数の感知器の各々は、前記受信機との通信を行う感知器側通信手段と、監視領域の異常を検知する検知手段と、自己の状態に関する状態信号を前記感知器側通信手段を介して前記受信機に送信する感知器側制御手段であって、前記受信機から制御信号を前記感知器側通信手段を介して受信した場合には、当該制御信号に基づく制御を行う感知器側制御手段とを備える。
【0062】
付記2に記載の防災システムは、付記1に記載の防災システムにおいて、前記受信機の前記受信機側通信手段は、前記複数の感知器と無線通信を行うものであり、前記受信機の前記受信機側制御手段は、前記一部の感知器において異常発生の可能性が向上したことを示す状態信号を受信した場合には、当該一部の感知器から当該受信機に対する通信間隔を制御するための制御信号、又は前記複数の感知器の中の他の全部又は一部の感知器から当該受信機に対する通信間隔を制御するための制御信号を送信し、前記感知器の前記感知器側通信手段は、前記受信機と無線通信を行うものであり、前記感知器側制御手段は、自己の状態に関する状態信号を前記受信機に所定の通信間隔で送信し、前記受信機から制御信号を受信した場合には、当該制御信号に基づいて自己の通信間隔を変更する。
【0063】
付記3に記載の防災システムは、付記2に記載の防災システムにおいて、前記受信機の前記受信機側制御手段は、前記一部の感知器において異常発生の可能性が向上したことを示す状態信号を受信した場合には、当該一部の感知器から当該受信機に対する通信間隔が短くなるように制御するための制御信号を送信すると共に、前記複数の感知器の中の他の全部又は一部の感知器から当該受信機に対する通信間隔が長くなるように制御するための制御信号を送信する。
【0064】
付記4に記載の受信機は、複数の感知器との通信を行う受信機側通信手段と、前記複数の感知器の中の一部の感知器の状態に関する状態信号を前記受信機側通信手段を介して受信した場合には、当該受信した状態信号に基づいて、当該一部の感知器を制御するための制御信号、又は前記複数の感知器の中の他の全部又は一部の感知器を制御するための制御信号を、前記受信機側通信手段を介して送信する、受信機側制御手段とを備えた。
【0065】
付記5に記載の感知器は、受信機との通信を行う感知器側通信手段と、監視領域の異常を検知する検知手段と、自己の状態に関する状態信号を前記感知器側通信手段を介して前記受信機に送信する感知器側制御手段であって、前記受信機から制御信号を前記感知器側通信手段を介して受信した場合には、当該制御信号に基づく制御を行う感知器側制御手段とを備える。
【0066】
(付記の効果)
付記1に記載の防災システムによれば、複数の感知器の中の一部の感知器の状態に基づいて、当該一部の感知器や、他の全部又は一部の感知器が制御されるので、複数の感知器の相互間の制御状態を連係させることにより、防災性を向上させることが可能になる。
【0067】
付記2に記載の防災システムによれば、複数の感知器の中の一部の感知器の状態に基づいて、当該一部の感知器の通信間隔や、他の全部又は一部の感知器の通信間隔が制御されるので、複数の感知器の通信間隔を調整することができ、各感知器と受信機との通信状態を好適化することができるので、防災性を向上させることが可能になる。
【0068】
付記3に記載の防災システムは、複数の感知器の中の一部の感知器において異常発生の可能性が向上したことが検知された場合には、当該一部の感知器の通信間隔を短くすることにより、当該一部の感知器においてその後に火災断定された場合にはその旨を早期に受信機に通知することが可能になり、他の全部又は一部の感知器の通信間隔を長くするので、異常発生の可能性の向上を検知した感知器から送信される信号との輻輳を防止することが可能になる。
【0069】
付記4に記載の受信機によれば、複数の感知器の中の一部の感知器の状態に基づいて、当該一部の感知器や、他の全部又は一部の感知器が制御されるので、複数の感知器の相互間の制御状態を連係させることにより、防災性を向上させることが可能になる。
【0070】
付記5に記載の感知器によれば、複数の感知器の中の一部の感知器の状態に基づいて、当該一部の感知器や、他の全部又は一部の感知器が制御されるので、複数の感知器の相互間の制御状態を連係させることにより、防災性を向上させることが可能になる。