特許第6427372号(P6427372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427372
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】ロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
   B25J19/00 K
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-191632(P2014-191632)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-60015(P2016-60015A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 祥
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−171029(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113552(WO,A1)
【文献】 特開2006−222835(JP,A)
【文献】 特開2014−117720(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/010396(WO,A1)
【文献】 特開2008−197856(JP,A)
【文献】 特開2005−196441(JP,A)
【文献】 特開2004−299049(JP,A)
【文献】 特開2006−013678(JP,A)
【文献】 特開2000−228791(JP,A)
【文献】 特開2005−182110(JP,A)
【文献】 特開2004−038855(JP,A)
【文献】 特開2002−287816(JP,A)
【文献】 特開2007−042061(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/127822(WO,A1)
【文献】 特表2015−517705(JP,A)
【文献】 特開2010−131705(JP,A)
【文献】 特表2008−531320(JP,A)
【文献】 特開2000−099127(JP,A)
【文献】 特開平06−015550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
F24F 11/00 − 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの動作を制御するロボット制御装置と、
前記ロボット制御装置に設けられた無線送受信機との間で無線通信を行う可搬式操作装置とを備え
前記ロボット制御装置は、前記無線送受信機における第1ポートを用いた第1無線通信ライン、及び同無線送受信機における前記第1ポートとは異なる第2ポートを用いた第2無線通信ラインで、前記可搬式操作装置との間で無線通信の接続を確立し、
前記可搬式操作装置は、前記第1無線通信ラインを介して前記ロボットの動作を制御するための動作制御信号を前記ロボット制御装置に送信し、前記第2無線通信ラインを介して前記ロボットの状態を示すロボット状態情報を受信するロボット制御システムであって、
前記ロボット制御装置は複数設けられ、
前記可搬式操作装置は、複数の前記ロボット制御装置を特定するための特定情報が記憶された記憶部を備え、
前記可搬式操作装置が、前記特定情報によって特定されるいずれか一つのロボット制御装置に対して、前記ロボット状態情報の送信を要求する旨を示す状態情報要求信号を送信し、
前記状態情報要求信号を受信したロボット制御装置は、前記状態情報要求信号の送信元の前記可搬式操作装置に対して前記第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立を許可し、
無線通信の接続の確立を許可した前記ロボット制御装置が、前記可搬式操作装置に対して前記第2無線通信ラインを介して前記ロボット状態情報を送信し、
前記ロボット状態情報を送信したロボット制御装置が、前記可搬式操作装置に対する前記第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立を解除し、
前記可搬式操作装置が、前記特定情報によって特定される複数のロボット制御装置のうち、前記状態情報要求信号を送信してから前記ロボット状態情報を送信していない他のロボット制御装置に対して、前記状態情報要求信号を送信する
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
ロボットの動作を制御するロボット制御装置と、
前記ロボット制御装置に設けられた無線送受信機との間で無線通信を行う可搬式操作装置とを備え、
前記ロボット制御装置は、前記無線送受信機における第1ポートを用いた第1無線通信ライン、及び同無線送受信機における前記第1ポートとは異なる第2ポートを用いた第2無線通信ラインで、前記可搬式操作装置との間で無線通信の接続を確立し、
前記可搬式操作装置は、前記第1無線通信ラインを介して前記ロボットの動作を制御するための動作制御信号を前記ロボット制御装置に送信し、前記第2無線通信ラインを介して前記ロボットの状態を示すロボット状態情報を受信するロボット制御システムであって、
前記ロボット制御装置は、前記第1無線通信ラインでの無線通信の接続を確立するに際して、無線通信の接続の確立に必要な認証情報及び無線通信の接続の確立を要求する旨を示す前記可搬式操作装置からの接続確立要求信号を受信し、
前記ロボット制御装置は、前記第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立している状態から前記第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立している状態へと切り替えられ、その後、当該第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立している状態から前記第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立している状態に切り替えられる際には、前記認証情報の受信を要さずに、前記可搬式操作装置に対して前記第1無線通信ラインでの無線通信の接続の確立を許可する
ことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項3】
前記ロボット制御装置は、前記第2無線通信ラインを介して前記動作制御信号を受信した場合には、当該動作制御信号を無効化する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロボットの動作等を制御するロボット制御装置とそのロボット制御装置に動作制御信号を入力するための可搬式操作装置とを、無線通信により接続する技術が提案されている。また、特許文献1のロボット制御システムにおいては、ロボットの状態に関するロボットの状態情報が、ロボット制御システムから無線通信により可搬式操作装置に送信される。送信されたロボットの状態情報は可搬式操作装置により受信され、その可搬式操作装置のディスプレイに、ロボット制御装置によって制御されているロボットの状態に関する情報が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−161486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のロボット制御システムのように、ロボット制御装置と可搬式操作装置とが無線通信を行う技術においては、権限のない者がロボットを操作したり、未知の無線通信デバイスとロボット制御装置との間で予期せず無線通信の接続が確立したりすることを防止する必要がある。そこで、この種の技術においては、両者の無線通信の接続を確立するに際してパスワード(認証情報)の入力等のログイン操作を要求し、これにより無線通信の安全性を確保することが一般的である。
【0005】
しかしながら、可搬式操作装置とロボット制御装置との間で送受信される信号は多種多様であり、その中には高い安全性を確保する必要性があるもの、安全性を確保する必要性が低いものが混在する。具体的には、例えば、可搬式操作装置からロボット制御装置へと送信される動作制御信号は、ロボットの動作に直接的に影響を与えるものであることから、比較的に高い安全性を確保するべきである。一方、可搬式操作装置がロボット制御装置からロボットの状態情報を受信したとしても、それによってロボットの動作に影響を及ぼすことはない。したがって、ロボットの状態情報の送受信に関しては、高い安全性を確保する必要性に乏しいこともある。
【0006】
このように要求される安全性が異なる信号が混在しているにも拘らず、従来の技術では、無線通信の接続の確立にあたって画一的なログイン操作を要求している。そのため、仮に、無線通信に関して高い安全性を確保すると、可搬式操作装置がロボット制御装置からロボットの状態情報を受信する際に、操作者に対して過度に煩雑なログイン操作を強いることになりかねない。また、仮に、ログイン操作を省略・簡略化して安全性を低くすると、可搬式操作装置からロボット制御装置へと動作制御信号を送信する際に十分な安全性が確保されなくなって、権限のない者にロボットの操作を許してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、無線通信の接続を確立する際の操作性を、可搬式操作装置とロボット制御装置との間で送受信される信号に応じて適正化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ロボットの動作を制御するロボット制御装置と、前記ロボット制御装置に設けられた無線送受信機との間で無線通信を行う可搬式操作装置とを備え前記ロボット制御装置は、前記無線送受信機における第1ポートを用いた第1無線通信ライン、及び同無線送受信機における前記第1ポートとは異なる第2ポートを用いた第2無線通信ラインで、前記可搬式操作装置との間で無線通信の接続を確立し、前記可搬式操作装置は、前記第1無線通信ラインを介して前記ロボットの動作を制御するための動作制御信号を前記ロボット制御装置に送信し、前記第2無線通信ラインを介して前記ロボットの状態を示すロボット状態情報を受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロボットの動作を制御するための動作制御信号及びロボットの状態を示すロボットの状態情報が、それぞれ異なる無線通信ラインでやり取りされるので、特にロボットやロボット制御装置の状態を可搬式操作装置で把握しようとする際の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ロボット制御システムの概略図。
図2】無線ティーチペンダント及びロボット制御装置のブロック図。
図3】ロボット操作モードにおける無線通信の接続確立処理を説明するフローチャート。
図4】ロボット操作モードにおける無線通信の接続確立処理を説明するフローチャート。
図5】状態確認モードの処理を説明するフローチャート。
図6】状態確認モードの処理を説明するフローチャート。
図7】状態確認モードの処理を説明するフローチャート。
図8】ロボット操作モードにおける第1無線通信ラインでの無線通信の再接続確立処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ロボット制御システムの構成)
本発明のロボット制御システムの実施形態を説明する。先ず、ロボット制御システムの概要について説明する。
【0013】
図1に示すように、ロボット制御システムのロボット制御装置RC1は、ロボットR1の動作を制御するものであり、コンピュータや各種のモジュールが内蔵されている。また、ロボット制御装置RC1は無線通信機能を有する。図1に示すように、ロボット制御装置RC1には、有線でロボットR1が接続されている。ロボットR1は、例えば、サーボモータによって駆動される複数のアームを有し、その先端のアームに溶接トーチが搭載された多関節型の溶接ロボットである。そして、ロボットR1は、ロボット制御装置RC1からの信号によってアーム等の動作が制御される。
【0014】
図1に示すように、ロボット制御システムは、ロボット制御装置RC1及びロボットR1と同一構成のロボット制御装置RC2及びロボットR2、ロボット制御装置RC3及びロボットR3を含んで構成されている。また、ロボット制御システムは、ロボットR1〜R3を操作するのに必要な動作制御信号を送信する可搬式操作装置としての無線ティーチペンダントTPを含んで構成されている。無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置RC1〜RC3に対して無線通信で信号を送受信する。
【0015】
次に、ロボット制御システムを構成する各装置の電気的構成について説明する。なお、ロボット制御装置RC1〜RC3は、いずれも同一の構成であるため、以下の説明ではロボット制御装置RC1を代表して説明する。
【0016】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPには、演算処理や通信処理等を実行するティーチペンダント制御部11(以下、TP制御部11と略記する。)が内蔵されている。TP制御部11は、中央演算装置(CPU)として機能し、各種のプログラムを実行する。無線ティーチペンダントTPには、TP制御部11がプログラム等を実行するに際してデータが一時的に格納される揮発性のRAM12が内蔵されている。RAM12には、無線通信の接続の確立処理に関する一時的なデータとして、接続確立フラグ及び再接続フラグが記憶されている。接続確立フラグは、各ロボット制御装置RC1〜RC3に対して無線通信の接続が確立されているか否かを示すものであり、例えば、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1との間で無線通信の接続が確立されている場合には、ロボット制御装置RC1に対する接続確立フラグがオンされる。再接続フラグは、過去に各ロボット制御装置RC1〜RC3に対して無線通信の接続が確立されていたこと、そのロボット制御装置RC1〜RC3に対して再び無線通信の接続を確立する予定であることを示すものである。例えば、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1と間の無線通信の接続の確立が解除され、かつ、その後、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1で無線通信の接続を確立する予定がある場合に、再接続フラグがオンされる。
【0017】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPには、TP制御部11が実行するプログラム等が格納される不揮発性の記憶部13が内蔵されている。記憶部13には、ロボット制御装置RC1〜RC3のうちのいずれのロボット制御装置であるかを特定することができるロボットの特定情報が記憶されている。ロボット特定情報は、ロボット制御装置RC1〜RC3それぞれに付された番号「RC1」〜「RC3」と、ロボット制御装置RC1〜RC3それぞれに特有のネットワーク情報(例えばSSID(Service Set Identifier))とが関連付けられたものである。また、記憶部13には、過去一定期間における無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立したロボット制御装置RC1〜RC3の特定情報や、無線通信の接続が確立した時刻が、RC接続履歴として記憶されている。
【0018】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPには、時間を計測するためのタイマ14が設けられている。タイマ14は、TP制御部11からの指示に基づいて、カウント値をカウントアップする。また、タイマ14は、TP制御部11からの指示に基づいて、カウントアップしたカウント値をクリアして初期値に戻す。さらに、タイマ14は、現在時刻を示す時計としても機能する。
【0019】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPには、各種の情報を表示するためのディスプレイ15が設けられている。ディスプレイ15は、TP制御部11からの画像信号に基づいて、ロボットR1〜R3の状態を示す情報、ロボットR1〜R3に対する教示内容、無線ティーチペンダントTPの操作案内などを表示する。無線ティーチペンダントTPには、情報を入力するためのキーボード16が設けられている。キーボード16は、例えば、ディスプレイ15上で表示されている選択位置(カーソル位置)を移動させるための矢印キーや文字情報を入力するための文字キーである。無線ティーチペンダントTPには、音声を発生するブザー17が内蔵されている。ブザー17は、TP制御部11からの指示に基づいて警告音を発生する。
【0020】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPには、ロボット制御装置RC1〜RC3と無線通信を行うための無線送受信機18が内蔵されている。無線送受信機18は、電波を送受信するためのアンテナ、及びそのアンテナによる無線通信を制御するための通信モジュールを備え、無線LAN規格(IEEE802.11規格)による無線通信を行う。
【0021】
図2に示すように、TP制御部11、RAM12、記憶部13、タイマ14、ディスプレイ15、キーボード16、ブザー17、無線送受信機18等は、無線ティーチペンダントTP内部のバス19によって電気的に接続されており、バス19を介して情報をやり取りする。
【0022】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPには、ロボットR1〜R3への電力供給を許可するためのイネーブルスイッチ21が搭載されている。イネーブルスイッチ21は、例えば押ボタンスイッチであり、TP制御部11によって押下操作されたか否かが監視されている。このイネーブルスイッチ21が操作されると、無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置RC1〜RC3に対してイネーブル信号を送信する。そして、イネーブル信号を受信したロボット制御装置RC1〜RC3においては対応するロボットR1〜R3への駆動電力の供給が許容される。また、無線ティーチペンダントTPには、ロボットR1〜R3を非常停止させるための非常停止スイッチ22が搭載されている。非常停止スイッチ22は、例えば押ボタンスイッチであり、TP制御部11によって押下操作されたか否かが監視されている。この非常停止スイッチ22が操作されると、無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置RC1〜RC3に対して非常停止信号を送信する。非常停止信号を受信したロボット制御装置RC1〜RC3は、対応するロボットR1〜R3に対する駆動電力の供給を停止する。
【0023】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPには、無線ティーチペンダントTPの動作モードを切り換えるためのモード切換スイッチ23が搭載されている。モード切換スイッチ23は、例えば押ボタンスイッチであり、TP制御部11によって押下操作されたか否かが監視されている。無線ティーチペンダントTPは、電源が投入された直後の初期状態では、ロボットR1〜R3を操作するための「ロボット操作モード(第1モード)」を実行し、モード切換スイッチ23が操作されると「状態確認モード(第2モード)」に移行する。
【0024】
図2に示すように、ロボット制御装置RC1には、ロボット制御処理や通信処理等を実行するロボット制御部31が内蔵されている。ロボット制御部31は、中央演算装置(CPU)として機能し、各種のプログラムを実行する。ロボット制御装置RC1には、ロボット制御部31がプログラム等を実行するに際してデータが一時的に格納される揮発性のRAM32、ロボット制御部31が実行するプログラム等が格納される不揮発性の記憶部33が内蔵されている。
【0025】
図2に示すように、記憶部33には、操作者が無線ティーチペンダントTPを用いてロボットR1に教示したロボット教示データが記憶されている。ロボット教示データには、例えば、ロボットR1の各アームの動作、ロボットR1の溶接トーチに供給する電流・電圧の値などが含まれる。また、記憶部33には、過去一定期間におけるロボット駆動履歴が記憶されている。ロボット駆動履歴には、ロボット制御装置RC1又はロボットR1に異常が発生していることを示す異常通知が含まれる。例えば、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、ロボット制御装置RC1又はロボットR1の各電子部品に正常な電圧が供給されていないことを検出した場合、異常が発生していると判断して、異常通知を記憶部33に記憶させる。また、ロボット駆動履歴には、異常通知以外に、ロボット制御装置RC1及びロボットR1の電源がオンにされてからの稼働時間、ロボットR1が生産したワークの生産数(加工数)、ワークを溶接するのに要した溶接時間、ワークを実際に溶接する際に取得した実溶接ログデータなどが含まれる。記憶部33には、ロボット制御装置RC1と無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立した履歴がTP接続履歴として記憶されている。TP接続履歴には、ロボット制御装置RC1との間で無線通信の接続が確立した無線ティーチペンダントTPのIPアドレスや、その無線通信の接続が確立した時刻が含まれる。また、記憶部33には、無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続を確立するのに必要な認証情報としてパスワードが記憶されている。
【0026】
図2に示すように、ロボット制御装置RC1には、時間を計測するためのタイマ34が設けられている。タイマ34は、ロボット制御部31からの指令に基づいて、カウント値をカウントアップする。また、タイマ34は、ロボット制御部31からの指令に基づいて、カウントアップしたカウント値をクリアして初期値に戻す。さらに、タイマ34は、現在時刻を示す時計としても機能する。
【0027】
図2に示すように、ロボット制御装置RC1には、無線ティーチペンダントTPと無線通信を行うための無線送受信機38が内蔵されている。無線送受信機38は、電波を送受信するためのアンテナ、及びそのアンテナによる無線通信を制御するための通信モジュールを備え、無線LAN規格(IEEE802.11規格)による無線通信を行う。
【0028】
図2に示すように、ロボット制御部31、RAM32、記憶部33、タイマ34、無線送受信機38等は、ロボット制御装置RC1内部のバス39によって電気的に接続されており、バス39を介して情報をやり取りする。
【0029】
図2に示すように、ロボット制御装置RC1には、外部入力装置として操作ボックスOPが有線で接続されている。操作ボックスOPには、例えば、押ボタンスイッチとして非常停止スイッチが搭載されており、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31によって押下操作されたか否かが監視されている。操作ボックスOPの非常停止スイッチが操作されると、ロボット制御装置RC1はロボットR1に対する駆動電力の供給を停止する。
【0030】
図2に示すように、無線ティーチペンダントTPの無線送受信機18及びロボット制御装置RC1の無線送受信機38は、ソケット通信で無線通信を行うものであり、無線通信の接続の確立に際して、互いにポート番号を通知し合う。本実施形態では、無線ティーチペンダントTPの無線送受信機18における「ポートA」と、ロボット制御装置RC1の無線送受信機38における「ポートA」との間で、第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立する。この第1無線通信ラインでの無線通信の接続の確立は、パスワードの入力が必要となるように設定されており、比較的に安全性が高い通信である。
【0031】
また、図2に示すように、無線ティーチペンダントTPの無線送受信機18における「ポートB」と、ロボット制御装置RC1の無線送受信機38における「ポートB」との間で、第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立する。この第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立は、パスワードの入力等のログイン操作が不要なように設定されており、比較的に安全性が低い通信である。また、無線ティーチペンダントTPにおいて第2無線通信ラインは受信専用の通信ラインとされている。そのため、無線ティーチペンダントTPは、無線通信の接続の確立を維持するための信号など必要最小限の信号を除いては、第2無線通信ラインを介してロボット制御装置RC1に信号を送信しない。同様に、ロボット制御装置RC1において第2無線通信ラインは送信専用の通信ラインとされている。そのため、ロボット制御装置RC1は、無線通信の接続の確立を維持するための信号など必要最小限の信号を除いては、第2無線通信ラインを介して無線ティーチペンダントTPに信号を送信しない。また、ロボット制御装置RC1は、無線通信の接続の確立を維持するための信号など予め設定されている信号以外の信号が第2無線通信ラインを介して受信された場合、その信号を無効化する。例えば、ロボット制御装置RC1は、第1無線通信ラインを介して受信するべき動作制御信号を、混信等によって第2無線通信ラインを介して受信した場合、その動作制御信号に基づくロボットR1の制御を行わずにその動作制御信号を破棄する。
【0032】
(ロボット操作モードにおける無線通信の接続確立処理)
次に、ロボット操作モードにおける無線通信の接続確立処理について、図3及び図4に従って説明する。なお、以下の説明では、無線ティーチペンダントTP及びロボット制御装置RC1との間の無線通信の接続確立に関して説明するが、ロボット制御装置RC2、RC3の場合でも同様である。
【0033】
無線ティーチペンダントTPの電源がオンにされると、無線ティーチペンダントTPはロボット操作モードとなる。そして、図3に示すように、ロボット操作モードでは、無線ティーチペンダントTPは、先ず、ステップST11の処理を実行する。ステップST11では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、記憶部13に格納されているロボットの特定情報(ロボット制御装置の番号及びネットワーク情報)を読み出し、ディスプレイ15に選択可能に表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST12に移行する。
【0034】
ステップST12では、TP制御部11は、特定情報が選択されたか否かを判断する。操作者が無線ティーチペンダントTPのキーボード16を操作せず、特定情報が選択されていない場合(ステップST12においてNO)には、引き続き特定情報が選択されるのを待つ。操作者が無線ティーチペンダントTPのディスプレイ15に表示された特定情報を確認し、キーボード16を操作していずれか特定情報を選択した場合(ステップST12においてYES)には、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST13に移行する。なお、以下の説明では、複数の特定情報のうち、ロボット制御装置RC1を特定するための特定情報(ロボット制御装置の番号「RC1」)が選択されたものとする。
【0035】
ステップST13では、TP制御部11は、ディスプレイ15にパスワードの入力を要求する旨の案内を表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST14に移行する。ステップST14では、TP制御部11は、パスワードが入力されたか否かを判断する。操作者が無線ティーチペンダントTPのキーボード16を操作せず、無線ティーチペンダントTPにパスワードが入力されていない場合(ステップST14においてNO)には、引き続きパスワードが入力されるのを待つ。操作者が無線ティーチペンダントTPのキーボード16を操作し、無線ティーチペンダントTPにパスワードが入力された場合(ステップST14においてYES)には、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST15に移行する。
【0036】
ステップST15では、無線ティーチペンダントTPは、ステップST12において選択された特定情報によって特定されるロボット制御装置RC1宛に、無線通信の接続の確立を要求する旨を示す接続確立要求信号を送信する。また、無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置RC1宛に、ステップST14で入力されたパスワードを送信する。このとき、無線ティーチペンダントTPは、自身のIPアドレスをロボット制御装置RC1に通知するとともに、無線通信の接続を確立するポート番号として無線送受信機18の「ポートA」をロボット制御装置RC1に通知する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST16に移行する。
【0037】
ステップST16では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、タイマ14にカウント値のクリア(初期化)を指示する。その上で、TP制御部11は、タイマ14にカウント値のカウントアップを指示する。ステップST16の処理が終了すると、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST17に移行する。
【0038】
ステップST17では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ステップST16でカウントアップを開始したタイマ14のカウント値が所定値に達したか否かを判断する。これにより、接続確立要求信号及びパスワードを送信してから所定時間(例えば、数秒〜数十秒)経過したか否かが判断される。例えば、無線ティーチペンダントTPがロボット制御装置RC1の無線通信の範囲外に存在する場合、ステップST15で接続確立要求信号及びパスワードを送信しても、これらはロボット制御装置RC1に受信されず、また、無線ティーチペンダントTPはロボット制御装置RC1からの応答通知を受信できない。このとき、カウント値はカウントアップされ続ける。そして、カウント値が所定値に達した場合(ステップST17においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST18に移行する。
【0039】
ステップST18では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ディスプレイ15に無線通信の接続の確立ができなかった旨の警告表示を表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPにおける一連の無線通信の接続確立処理が終了し、無線通信の接続確立処理が最初から実行される。
【0040】
一方、図3に示すように、ロボット制御装置RC1は、無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立されていない状態においては、無線ティーチペンダントTPからの接続確立要求信号及びパスワードの受信を待機している。そして、ステップST31では、ロボット制御装置RC1は、無線ティーチペンダントTPからの接続確立要求信号及びパスワードを受信する。その後、ロボット制御装置RC1の処理は、ステップST32に移行する。
【0041】
ステップST32では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、受信したパスワードが予めロボット制御装置RC1の記憶部33に記憶されているものと一致するか否かを判断する。パスワードが一致する場合には、ロボット制御装置RC1の処理は、図4に示すステップST33に移行する。
【0042】
図4に示すように、ステップST33では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、接続確立要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対する無線通信の接続の確立を許可する。そして、ロボット制御装置RC1は、接続確立要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対して、接続許可通知を送信する。このとき、ロボット制御装置RC1は、無線通信の接続を確立するポート番号として、無線送受信機38の「ポートA」を通知する。その後、ロボット制御装置RC1の処理は、ステップST34に移行する。
【0043】
ステップST34では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、無線ティーチペンダントTPとの間で第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立していることを確認する。その上で、ロボット制御部31は、無線通信の接続が確立している無線ティーチペンダントTPのIPアドレスをTP接続履歴として記憶部33に記憶させる。また、ロボット制御部31は、タイマ34を参照して無線通信の接続が確立した時刻を、TP接続履歴として記憶部33に記憶させる。この処理により、ロボット制御装置RC1における無線通信の接続確立処理は終了する。
【0044】
無線ティーチペンダントTPにおいて、タイマ14のカウント値が所定値に達していない場合(図3に示すステップST17においてNO)には、無線ティーチペンダントTPは、ステップST19の処理を実行している。ステップST19では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ステップST33でロボット制御装置RC1が送信した接続許可通知を受信したか否かを判断する。接続許可通知を受信した場合(ステップST19においてYES)には、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1との間で、無線通信の接続が確立する。この無線通信の接続の確立は、無線ティーチペンダントTPにおける無線送受信機18の「ポートA」とロボット制御装置RC1における無線送受信機38の「ポートA」とを繋ぐ第1無線通信ラインで行われる。そして、第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されて以後は、当該第1無線通信ラインを介して無線ティーチペンダントTPからロボット制御装置RC1へと、ロボットR1の動作を制御するための動作制御信号を送信することが可能となる。ステップST19の処理を経て第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立された場合、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST20及びステップST21に移行する。
【0045】
ステップST20では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、無線通信の接続が確立したロボット制御装置RC1の特定情報をRC接続履歴として記憶部13に記憶させる。また、無線ティーチペンダントTPは、タイマ14を参照して、無線通信の接続が確立した時刻をRC接続履歴として記憶部13に記憶させる。ステップST21では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、無線通信の接続が確立していることを示す接続確立フラグをオンにしてRAM12に記憶させる。その後、無線ティーチペンダントTPにおける無線通信の接続確立処理は終了する。なお、無線通信の接続確立処理が終了した後も、モード切換スイッチ23が操作されなければ、無線ティーチペンダントTPはロボット操作モードのままである。
【0046】
ところで、図3に示すロボット制御装置RC1のステップST32の処理において、ロボット制御装置RC1が受信したパスワードが記憶部33に記憶されているものと一致しないことがある。この場合(ステップST32においてNO)、ロボット制御装置RC1の処理は、図4に示すステップST35に移行する。
【0047】
図4に示すように、ステップST35では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、接続確立要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対する無線通信の接続の確立を拒否する。そして、ロボット制御装置RC1は、接続確立要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対して、接続拒否通知を送信する。ステップST35の処理が終了すると、ロボット制御装置RC1における無線通信の接続の確立処理は終了する。
【0048】
一方、無線ティーチペンダントTPにおいて、タイマ14のカウント値が所定値に達しておらず(図3に示すステップST17においてNO)、なおかつ接続許可通知を受信していない(図4に示すステップST19においてNO)場合、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST22に移行している。
【0049】
ステップST22では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ロボット制御装置RC1がステップST35の処理で送信した接続拒否通知を受信したか否かを判断する。接続拒否通知を受信していない場合(ステップST22においてNO)には、無線ティーチペンダントTPの処理は、図3に示すステップST17に移行する。その後のステップST17〜ステップST21の処理については、上で説明したのと同様である。接続拒否通知を受信した場合(ステップST22においてYES)には、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST23に移行する。
【0050】
ステップST23では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、パスワードが一致しなかったため、無線通信の接続が確立しなかった旨の警告表示をディスプレイ15に表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPにおける一連の無線通信の接続確立処理が終了する。なお、ステップST23を経て無線通信の接続確立処理を終了した場合、無線ティーチペンダントTPは、いずれのロボット制御装置RC1〜RC3に対しても、無線通信の接続が確立していない状態である。したがって、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST11の処理に戻り、再び、無線通信の接続確立処理が開始される。
【0051】
(状態確認モードにおける処理)
次に、状態確認モードにおける処理について、図5図7に従って説明する。
無線ティーチペンダントTPのモード切換スイッチ23が操作されると、無線ティーチペンダントTPは状態確認モードとなる。そして、図5に示すように、状態確認モードでは、先ず、無線ティーチペンダントTPは、ステップST41の処理を実行する。ステップST41では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、RAM12を参照して接続確立フラグがオンであるか否かを判断する。接続確立フラグがオンでない場合(ステップST41においてNO)、すなわち、無線ティーチペンダントTPがいずれのロボット制御装置RC1〜RC3に対しても無線通信の接続が確立されていない場合、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST45に移行する。接続確立フラグがオンである場合(ステップST41においてYES)、すなわち、無線ティーチペンダントTPがいずれかのロボット制御装置RC1〜RC3に対して第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されている場合、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST42に移行する。なお、本実施形態においては、ロボット操作モードにおいて第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されることは無いので、状態確認モードのステップST41の処理の時点で第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されていることはない。
【0052】
ステップST42では、無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置RC1〜RC3のうち、第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立しているロボット制御装置RC1〜RC3に対して、当該第1無線通信ラインでの無線通信の接続確立の解除を要求する旨を示す接続解除要求信号を送信する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST43及びステップST44に移行する。
【0053】
なお、ロボット制御装置RC1〜RC3は、ステップST81の処理において、無線ティーチペンダントTPが送信した接続解除要求信号を受信する。そして、ロボット制御装置RC1〜RC3のロボット制御部31は、第1無線通信ラインでの無線通信の接続の確立を解除する。
【0054】
一方、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ステップST43において、接続確立フラグをオフにしてRAM12に記憶させる。また、ステップST44では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、再接続フラグをオンにしてRAM12に記憶させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST45に移行する。
【0055】
ステップST45では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、状態情報要求信号の送信先のロボット制御装置RC1〜RC3の番号として「RC1」を設定する。その後のステップST46では、無線ティーチペンダントTPは、ロボットの状態を示すロボットの状態情報の送信を要求する旨を示す状態情報要求信号を、ロボット制御装置RC1に送信する。このとき、無線ティーチペンダントTPは、自身のIPアドレスをロボット制御装置RC1に通知するとともに、無線通信の接続を確立するポート番号として無線送受信機18の「ポートB」をロボット制御装置RC1に通知する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST47に移行する。なお、状態確認モードの場合は、ロボット操作モードにおける接続確立処理の場合(図3参照)とは異なり、パスワードの入力に関する処理やパスワードの送信に関する処理は行われない。
【0056】
ステップST47では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、タイマ14にカウント値のクリア(初期化)を指示する。その上で、TP制御部11は、タイマ14にカウント値のカウントアップを指示する。ステップST47の処理が終了すると、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST48に移行する。
【0057】
ステップST48では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ステップST47でカウントアップを開始したタイマ14のカウント値が所定値に達したか否かを判断する。これにより、状態情報要求信号を送信してから所定時間(例えば、数秒〜数十秒)経過したか否かが判断される。例えば、無線ティーチペンダントTPがロボット制御装置RC1の無線通信の範囲外に存在する場合、ステップST46で状態情報要求信号を送信しても、その信号がロボット制御装置RC1に受信されず、また、無線ティーチペンダントTPはロボット制御装置RC1からの応答通知を受信できない。このとき、カウント値はカウントアップされ続ける。そして、カウント値が所定値に達した場合(ステップST48においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST49に移行する。
【0058】
ステップST49では、TP制御部11は、ディスプレイ15にロボット制御装置RC1の状態が確認できなかった旨の警告表示を表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、図7におけるステップST61に移行する。なお、無線ティーチペンダントTPのステップST61に処理については後述する。
【0059】
一方、図5に示すように、ロボット制御装置RC1〜RC3は、無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立されていない状態においては、無線ティーチペンダントTPからの状態情報要求信号を待機している。そして、ステップST46において無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置RC1宛に状態情報要求信号を送信している。したがって、ステップST82では、ロボット制御装置RC1は、無線ティーチペンダントTPからの状態情報要求信号を受信する。その後、ロボット制御装置RC1の処理は、図6に示すステップST83に移行する。なお、状態確認モードの場合には、無線ティーチペンダントTPからパスワードが送信されないので、ロボット制御装置RC1においてもパスワードが一致するか否かの判断処理は行われない。
【0060】
図6に示すように、ステップST83では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、状態情報要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPが無線通信の接続の確立を要求しているものとみなす。そして、状態情報要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対する無線通信の接続の確立を許可する。次いで、ロボット制御装置RC1は、状態情報要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対して、接続許可通知を送信する。このとき、ロボット制御装置RC1は、無線通信の接続を確立するポート番号として、無線送受信機38の「ポートB」を通知する。その後、ロボット制御装置RC1の処理は、ステップST84に移行する。
【0061】
ステップST84では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、無線ティーチペンダントTPとの間で第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立していることを確認する。その上で、ロボット制御部31は、記憶部33に記憶されているロボット教示データ、ロボット駆動履歴、及びTP接続履歴を読み出す。ロボット制御装置RC1は、これらロボット教示データ、ロボット駆動履歴、及びTP接続履歴をロボットR1の状態情報として、第2無線通信ラインを介して、無線ティーチペンダントTPに送信する。その後、ロボット制御装置RC1の処理は、ステップST85に移行する。
【0062】
無線ティーチペンダントTPにおいて、タイマ14のカウント値が所定値に達していない場合(図5に示すステップST48においてNO)には、無線ティーチペンダントTPは、ステップST50の処理を実行している。ステップST50では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ステップST83でロボット制御装置RC1が送信した接続許可通知を受信したか否かを判断する。接続許可通知を受信した場合(ステップST50においてYES)には、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1との間で、無線通信の接続が確立する。この無線通信の接続の確立は、無線ティーチペンダントTPにおける無線送受信機18の「ポートB」とロボット制御装置RC1における無線送受信機38の「ポートB」とを繋ぐ第2無線通信ラインで行われる。そして、第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されて以後、無線ティーチペンダントTPは、当該第2無線通信ラインを介してロボット制御装置RC1からのロボットR1の状態情報を受信可能となる。ステップST50の処理を経て第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立された場合、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST51及びステップST52に移行する。なお、接続許可通知を受信していない場合(ステップST50においてNO)、無線ティーチペンダントTPの処理は、図5に示すステップST48に戻る。
【0063】
ステップST51では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ロボット制御装置RC1がステップST84で送信したロボットの状態情報を受信する。そして、ステップST52では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、受信したロボットR1の状態情報に異常通知が含まれているか否かを判断する。例えば、ロボット制御装置RC1やロボットR1の各電気部品に正常な電圧が供給されてなく、ロボット制御装置RC1やロボットR1が正常に動作していない、又はそのおそれがある場合には、ロボットR1の状態情報として受信されたロボット駆動履歴に異常通知が含まれている。異常通知が含まれていない場合(ステップST52においてNO)には、無線ティーチペンダントTPの処理は、図7に示すステップST58に移行する。異常通知が含まれている場合(ステップST52においてYES)には、無線ティーチペンダントTPの処理は、図6に示すステップST53及びステップST54に移行する。
【0064】
ステップST53では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ブザー17を作動させることにより、警報を発生させる。また、ステップST54では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ロボットR1において異常が発生している旨を示す警告表示をディスプレイ15に表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST55に移行する。
【0065】
ステップST55では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、警報解除操作されたか否かを判断する。具体的には、操作者が警報及び警告表示を確認して、無線ティーチペンダントTPのキーボード16を操作すると、その旨の信号がTP制御部11に入力される。TP制御部11は、キーボード16からの信号が入力されたか否かに基づいて、警報解除操作されたか否かを判断する。警報解除操作されていない場合(ステップST55においてNO)、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST53に戻り、引き続きブザー17を作動させ続けるとともにディスプレイ15に警告表示を表示させ続ける。警報解除操作された場合(ステップST55においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST56及びステップST57に移行する。
【0066】
ステップST56では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ブザー17の作動を停止させることにより、警報を停止させる。また、ステップST57では、TP制御部11は、ディスプレイ15に、警告表示を解除させる。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、図7に示すステップST58に移行する。
【0067】
図7に示すように、ステップST58では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、受信した状態情報に基づいて、ロボットR1の状態をディスプレイ15に表示させる。具体的には、TP制御部11は、ロボットR1の各アームの動作、ロボットR1の溶接トーチに供給する電流・電圧の値などのロボット教示データ、ロボットR1の稼働時間、溶接時間、実溶接ログデータなどのロボット駆動履歴、無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立した履歴であるTP接続履歴が表示される。なお、これらは、ディスプレイ15上において一画面として表示してもよいし、キーボード16の矢印キー等の操作に基づいて切り換え、スクロール可能に複数画面に亘って表示してもよい。ロボットR1の状態をディスプレイ15に表示させた後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST59に移行する。
【0068】
ステップST59では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、確認操作がされたか否かを判断する。具体的には、操作者がディスプレイ15上に表示されたロボットR1の状態を確認して、無線ティーチペンダントTPのキーボード16を操作すると、その旨の信号がTP制御部11に入力される。TP制御部11は、キーボード16からの信号が入力されたか否かに基づいて、確認操作されたか否かを判断する。確認操作されていない場合(ステップST59においてNO)、引き続き確認操作されるのを待つ。確認操作された場合(ステップST59においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST60に移行する。
【0069】
ステップST60では、無線ティーチペンダントTPは、第2無線通信ラインでの無線通信の接続が確立しているロボット制御装置RC1に対して、当該第2無線通信ラインでの無線通信の接続確立の解除を要求する旨を示す接続解除要求信号を送信する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST61に移行する。
【0070】
一方、ロボット制御装置RC1は、ステップST84の処理においてロボットR1の状態情報を送信した後、接続解除要求信号の受信を待機した状態にある。そして、ステップST85では、ロボット制御装置RC1は、無線ティーチペンダントTPが送信した接続解除要求信号を受信する。そして、接続解除要求信号を受信すると、ロボット制御装置RC1は、第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立を解除する。
【0071】
無線ティーチペンダントTPは、第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立が解除された後、ステップST61の処理を行う。ステップST61では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、状態情報要求信号の送信先のロボット制御装置RC1〜RC3の番号が、「RC3」よりも小さいか否かを判断する。これまでの説明では、ロボット制御装置RC1〜RC3の番号は「RC1」に設定されていたので、「RC3」よりも小さいと判断される(ステップST61においてYES)。その後のステップST62では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ロボット制御装置RC1の番号に「1」を加算した「RC2」を、状態情報要求信号の送信先のロボット制御装置の番号として設定する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、図5に示すステップST46に移行する。そして、ロボット制御装置RC2を対象として、ステップST46〜ステップST61の処理が上で説明したのと同様に実行される。そして、再びステップST62の処理に至ると、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ロボット制御装置RC1の番号「RC2」に「1」を加算した「RC3」を状態情報要求信号の送信先のロボット制御装置の番号として設定する。その後、ロボット制御装置RC2を対象として、ステップST46〜ステップST61の処理が上で説明したのと同様に実行される。
【0072】
ステップST61において状態情報要求信号の送信先のロボット制御装置RC1〜RC3の番号が「RC3」よりも小さくない、すなわち、「RCx=RC3」である場合、ロボット制御装置RC1〜RC3すべてに対して状態情報要求信号を送信したことになる。この場合(ステップST61においてNO)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST63に移行する。ステップST63では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、RAM12を参照して、再接続フラグがオフであるか否かを判断する。再接続フラグがオフである場合(ステップST63においてYES)には、無線ティーチペンダントTPは、状態確認モードを終了する。このようにして状態確認モードを終了した場合には、無線ティーチペンダントTPは、いずれのロボット制御装置RC1〜RC3に対しても無線通信の接続が確立されていない。したがって、無線ティーチペンダントTPの処理は、ロボット操作モードにおける無線通信の確立処理(図3におけるステップST11)に移行する。
【0073】
一方、ステップST63において再接続フラグがオンであると判断された場合(ステップST63においてNO)、無線ティーチペンダントTPは状態確認モードを終了し、それに引き続いてロボット操作モードにおける無線通信の再接続確立処理を実行する。すなわち、本実施形態において状態確認モードは、無線ティーチペンダントTPのモード切換スイッチ23が操作されて図5に示すステップST41の処理が開始されてから、図7に示すステップST63の処理が終了するまでの期間である。
【0074】
(ロボット操作モードにおける無線通信の再接続確立処理)
次に、ロボット操作モードにおける無線通信の再接続確立処理について、図8に従って説明する。なお、以下の説明では、状態確認モードに移行したとき(図5に示すステップST41の処理のとき)に、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1との間で第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立していたものとする。
【0075】
状態確認モードにおける無線ティーチペンダントTPのステップST63の処理で、再接続フラグがONであると判断されると、引き続き無線ティーチペンダントTPの処理はステップST64に移行する。ステップST64では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、記憶部13に記憶されているRC接続履歴を参照して、ロボット制御装置RC1〜RC3のうち、直近に第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立していたロボット制御装置RC1〜RC3を確認する。この実施形態の場合では、ロボット制御装置RC1である。そして、無線ティーチペンダントTPは、無線通信の接続の確立を要求する旨及びこの接続確立の要求が再接続確立である旨を示す再接続確立要求信号をロボット制御装置RC1宛に送信する。このとき、無線ティーチペンダントTPは、自身のIPアドレスをロボット制御装置RC1に通知するとともに、無線通信の接続を確立するポート番号として無線送受信機18の「ポートA」をロボット制御装置RC1に通知する。その後、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST65に移行する。なお、無線通信の再接続確立処理の場合は、接続確立処理の場合(図3参照)とは異なり、パスワードの入力に関する処理やパスワードの送信に関する処理は行われない。
【0076】
ステップST65では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、タイマ14にカウント値のクリア(初期化)を指示する。その上で、TP制御部11は、タイマ14にカウント値のカウントアップを指示する。ステップST65の処理が終了すると、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST66に移行する。
【0077】
ステップST66では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ステップST65でカウントアップを開始したタイマ14のカウント値が所定値に達したか否かを判断する。これにより、再接続確立要求信号を送信してから所定時間(例えば、数秒〜数十秒)経過したか否かが判断される。例えば、無線ティーチペンダントTPがロボット制御装置RC1の無線通信の範囲外に存在する場合、ステップST64で再接続確立要求信号を送信しても、これらはロボット制御装置RC1に受信されず、また、無線ティーチペンダントTPはロボット制御装置RC1からの応答通知を受信できない。このとき、カウント値はカウントアップされ続ける。そして、カウント値が所定値に達した場合(ステップST66においてYES)、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST67に移行する。
【0078】
ステップST67では、TP制御部11は、ディスプレイ15に、ロボット制御装置RC1への無線通信の再接続確立ができなかった旨の警告表示を表示させる。その後、無線ティーチペンダントTPにおける一連の無線通信の再接続確立処理が終了する。そして、この場合、いずれのロボット制御装置RC1〜RC3に対しても無線通信の接続が確立されていない。したがって、無線ティーチペンダントTPの処理は、ロボット操作モードにおける無線通信の確立処理(図3におけるステップST11)に移行する。
【0079】
一方、図8に示すように、ロボット制御装置RC1〜RC3は、無線ティーチペンダントTPとの間で無線通信の接続が確立されていない状態においては、無線ティーチペンダントTPからの接続確立要求信号の受信を待機している。そして、ステップST64において無線ティーチペンダントTPは、ロボット制御装置RC1宛に再接続確立要求信号を送信している。したがって、ステップST86では、ロボット制御装置RC1は、無線ティーチペンダントTPからの再接続確立要求信号を受信する。そして、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、再接続確立要求信号を受信したことにより、第1無線通信ラインでの無線通信の接続の確立にあたって、パスワードの受信、及びその後のパスワードが一致するか否かの判断処理が不要であると判断する。したがって、この無線通信の再接続確立処理においては、ロボット制御装置RC1におけるパスワードが一致するか否かの判断処理は行われない。その後、ロボット制御装置RC1の処理は、ステップST87に移行する。
【0080】
ステップST87では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、再接続確立要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対する無線通信の接続の確立を許可する。そして、ロボット制御装置RC1は、再接続確立要求信号の送信元の無線ティーチペンダントTPに対して、接続許可通知を送信する。このとき、ロボット制御装置RC1は、無線通信の接続を確立するポート番号として、無線送受信機38の「ポートA」を通知する。その後、ロボット制御装置RC1の処理は、ステップST88に移行する。
【0081】
ステップST88では、ロボット制御装置RC1のロボット制御部31は、無線ティーチペンダントTPとの間で第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立していることを確認する。その上で、ロボット制御部31は、第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立している無線ティーチペンダントTPのIPアドレスをTP接続履歴として記憶部33に記憶させる。また、ロボット制御部31は、タイマ34を参照して無線通信の接続が確立した時刻を、TP接続履歴として記憶部33に記憶させる。この処理により、ロボット制御装置RC1における無線通信の再接続確立処理は終了する。
【0082】
無線ティーチペンダントTPにおいて、タイマ14のカウント値が所定値に達していない場合(図8に示すステップST66においてNO)には、無線ティーチペンダントTPは、ステップST68の処理を実行している。ステップST68では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、ステップST33でロボット制御装置RC1が送信した接続許可通知を受信したか否かを判断する。接続許可通知を受信した場合(ステップST68においてYES)には、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1との間で、無線通信の接続が確立する。この無線通信の接続の確立は、無線ティーチペンダントTPにおける無線送受信機18の「ポートA」とロボット制御装置RC1における無線送受信機38の「ポートA」とを繋ぐ第1無線通信ラインで行われる。そして、第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されて以後は、当該第1無線通信ラインを介して無線ティーチペンダントTPからロボット制御装置RC1へと、ロボットR1の動作を制御するための動作制御信号を送信することが可能となる。ステップST68の処理を経て第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立された場合、無線ティーチペンダントTPの処理は、ステップST69及びステップST70に移行する。なお、接続許可通知を受信していない場合(ステップST68においてNO)、無線ティーチペンダントTPの処理はステップST66に戻る。
【0083】
ステップST69では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、無線通信の接続が確立したロボット制御装置RC1の特定情報をRC接続履歴として記憶部13に記憶させる。また、無線ティーチペンダントTPは、タイマ14を参照して、無線通信の接続が確立した時刻をRC接続履歴として記憶部13に記憶させる。ステップST70では、無線ティーチペンダントTPのTP制御部11は、無線通信の接続が確立していることを示す接続確立フラグをオンにしてRAM12に記憶させる。その後、無線ティーチペンダントTPにおける無線通信の再接続確立処理は終了する。
【0084】
(実施形態の作用及び特徴)
上記の実施形態のロボット制御システムによる特徴をその作用とともに記載する。
(1)上記実施形態では、無線ティーチペンダントTPは、第1無線通信ラインで動作制御信号をロボット制御装置RC1〜RC3に送信し、第1無線通信ラインとはポート番号の異なる第2無線通信ラインでロボットR1〜R3の状態情報を受信する。このように無線通信ラインを複数持つことで、無線通信ライン毎にパスワード入力の有無を設定することができる。その結果、動作制御信号及びロボットの状態情報それぞれに応じて、無線通信の接続を確立する際の操作性を適正化できる。
【0085】
(2)上記実施形態では、第2無線通信ラインで無線通信の接続を確立するに際し、パスワードの入力を不要とした。第2無線通信ラインでやり取りされるロボットR1〜R3の状態情報は、ロボットR1〜R3の動作に影響を与えるものではないので、第2無線通信ラインの安全性が低くても、その弊害は最小限に留められる。その一方で、ロボットR1〜R3の動作制御信号がやり取りされる第1無線通信ラインでの無線通信の接続の確立には、パスワードの入力を要しているので、相応の安全性が確保できる。
【0086】
(3)上記実施形態の状態確認モードでは、無線ティーチペンダントTPの記憶部13に特定情報が記憶されているロボット制御装置RC1〜RC3それぞれから、順番に対応するロボットR1〜R3の状態情報が送信され、無線ティーチペンダントTPにおいて受信される。したがって、操作者は、ロボットR1〜R3及びロボット制御装置RC1〜RC3の数に応じた操作を行わなくても、ロボットR1〜R3及びロボット制御装置RC1〜RC3の状態を確認できる。
【0087】
(4)上記実施形態において第2無線通信ラインは、パスワードの入力を要さずに、無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1〜RC3との間の無線通信の接続が確立される。そのため、混信等を原因として予期しない他の無線ティーチペンダントからの動作制御信号が受信されるおそれが捨てきれない。この点、上記実施形態においては、ロボット制御装置RC1〜RC3は、予め設定されている信号以外の信号が第2無線通信ラインを介して受信された場合、その信号を無効化する。したがって、上述したように、予期しない他の無線ティーチペンダントからの動作制御信号が受信されても、その動作制御信号に基づいてロボットR1〜R3が動作することはない。
【0088】
(5)上記実施形態では、状態確認モードに移行した場合に、既に無線ティーチペンダントTPとロボット制御装置RC1〜RC3のいずれかとの間で、第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立している場合には、その無線通信の接続確立を解除する。また、状態確認モードにおいて、いずれか1つのロボット制御装置RC1〜RC3との間における第2無線通信ラインでの無線通信の接続確立時には、他のロボット制御装置RC1〜RC3との間における第2無線通信ラインでの無線通信の接続確立は解除されている。すなわち、上記実施形態では、同時に2つの無線通信ラインで無線通信の接続が確立されることはない。したがって、無線ティーチペンダントTPの無線送受信機18やロボット制御装置RC1〜RC3の無線送受信機38として、通信ブリッジが1つのみの機器を採用できる。
【0089】
(6)上記実施形態では、再接続フラグがオンであるとき、すなわち状態確認モードを実行する際に既に無線ティーチペンダントTPに対して第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されているロボット制御装置RC1〜RC3がある場合には、同一のロボット制御装置RC1〜RC3に対してパスワードの入力を要さずに第1無線通信ラインでの無線通信の接続を確立する。したがって、ロボット操作モードから状態確認モードへと移行し、再び状態確認モードからロボット操作モードに移行する場合に、面倒なパスワードの入力操作が省略でき、操作者に過度な操作を強いることがない。
【0090】
(7)上記実施形態では、状態確認モードにおいて無線ティーチペンダントTPが受信したロボットR1〜R3の状態情報に異常通知が含まれる場合、警報の発生及び警告表示が行われる。したがって、ロボット制御装置RC1〜RC3やロボットR1〜R3に異常が生じている場合には、そのことを操作者に対して確実に通知できる。
【0091】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。また、各変更例を適宜組み合わせて適用してもよい。
【0092】
・ 上記実施形態では、ロボット制御システムにおいてロボット制御装置及びロボットの組が3組であったが、これに限らず、ロボット制御装置及びロボットの組は1組、2組でもよいし、4組以上でもよい。
【0093】
・ 上記実施形態では、第1無線通信ラインでの無線通信の接続の確立の際にパスワードの入力を要したが、これに代えて又は加えて他のログイン操作を必要としてもよい。例えば、ロボット制御装置RC1〜RC3の操作ボックスに設けられている特定のスイッチを操作することをログイン操作としてもよい。また、無線ティーチペンダントTPやロボット制御装置RC1〜RC3に、特定の認証情報を出力できるデバイス(例えばUSBドングルキー、近距離通信デバイス)を接続・提示することをログイン操作としてもよい。
【0094】
・ 上記実施形態では、第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立の際にパスワードの入力を不要としたが、何らかのログイン操作を要するようにしてもよい。例えば、第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立の際に、第1無線通信ラインでの無線通信の接続の確立の際よりも桁数・文字数の少ないパスワードを要するようにしてもよい。この場合、図5に示す無線ティーチペンダントTPのステップST45の処理とステップST46の処理の間に、パスワードの入力処理が必要である。また、図5に示すロボット制御装置RC1〜RC3のステップST82の処理の後に、パスワードが一致するか否かの判断処理が必要である。
【0095】
・ 上記実施形態において、無線ティーチペンダントTPが第1無線通信ラインを介して各ロボットR1〜R3の状態情報を受信してもよい。例えば、その時点において第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されているロボット制御装置やそれによって制御されるロボットの状態を確認したい場合がある。この場合、第1無線通信ラインでの無線通信の接続を確立したまま当該第1無線通信ラインで各ロボットR1〜R3の状態情報を受信したほうが、無線ティーチペンダントTP等の処理負担は小さい。
【0096】
・ 上記実施形態において第2無線通信ラインは、ロボットの状態情報やそれに関する信号専用の通信ラインとされているが、第2無線通信ラインを介して動作制御信号を送信してもよい。この場合、他の無線通信デバイスの電波の混信を抑制したり、権限のある操作者以外がロボット制御装置RC1〜RC3の通信範囲内に入れないようしたりすることが好ましい。
【0097】
・ 上記実施形態の第1無線通信ライン及び第2無線通信ラインに加えて、他の無線通信ラインを追加してもよい。追加した無線通信ラインでの無線通信の接続の確立にあたってパスワードの入力等のログイン操作を要するか否かは、その無線通信ラインで送信又は受信される信号に求められる安全性に応じて決定すればよい。
【0098】
・ 上記実施形態の状態確認モードにおいて、異常通知が含まれる場合のブザー17の作動やディスプレイ15の警告表示を省略してもよい。この場合、図6におけるステップST52〜ステップST57の処理が省略される。
【0099】
・ 上記実施形態の状態確認モードでは、ロボット制御装置の番号「RC1」〜「RC3」の順に状態情報要求信号を送信したが、状態情報要求信号の送信順序は問わない。さらに、ロボット制御装置RC1〜RC3に対して順番に状態情報要求信号を送信している途中で、状態確認モードを終了するようにしてもよい。具体的には、状態確認モードの途中で無線ティーチペンダントTPのモード切換スイッチ23が操作された場合に、無線ティーチペンダントTPの処理が強制的にステップST63に移行するようにしてもよい。
【0100】
・ 上記実施形態の状態確認モードでは、ロボット制御装置RC1〜RC3のすべてに状態情報要求信号を送信した後、状態確認モードが終了するようにしたが、ロボット制御装置RC1〜RC3の何れかから通知される状態情報に異常通知が含まれるまで、状態確認モードの処理がループするようにしてもよい。例えば、図7に示す状態確認モードの各処理において、ステップST59の処理に代えて、所定時間が経過したか否かを判断する処理を行い、所定時間が経過した場合にステップST60に移行する。また、ステップST61における処理でロボット制御装置の番号が「RCx=RC3」であると判断された場合(ステップST61においてNO)に、ロボット制御装置の番号を「RCx=RC1」に設定する処理を行う。このように変更すれば、ロボット制御装置の番号「RC1」〜「RC3」の順に状態情報要求信号が送信され、再び、ロボット制御装置の番号「RC1」〜「RC3」の順に状態情報要求信号が送信される。なお、この変更例の場合、例えば無線ティーチペンダントTPのモード切換スイッチ23が操作された場合に、状態確認モードを終了するようにするとよい。
【0101】
・ 上記実施形態の状態確認モードのように、記憶部13に記憶されている特定情報で特定されるロボット制御装置RC1〜RC3すべてに状態情報要求信号を送信するのに限らず、状態情報要求信号を送信するロボット制御装置RC1〜RC3を選択できるようにしてもよい。この場合、例えば、状態確認モードにおける無線ティーチペンダントTPのステップST45の処理よりも前に、ロボットの特定情報をディスプレイ15に選択可能に表示させ、選択された特定情報によって特定されるロボット制御装置RC1〜RC3を対象として処理を行えばよい。
【0102】
・ ロボット制御装置RC1〜RC3から無線ティーチペンダントTPに送信されるロボットR1〜R3の状態情報は、上記実施形態のように、ロボット教示データ、ロボット駆動履歴、TP接続履歴すべてを状態情報として送信する場合に限らず、これらのうちのいずれかを送信してもよい。また、上記の状態情報は例示であり、ロボット制御装置RC1〜RC3やロボットR1〜R3の過去・現在の状態を示す情報であれば、いかなるものであっても状態情報として許容できる。
【0103】
・ 上記実施形態の状態確認モードにおいて、ロボット制御装置RC1〜RC3がロボット状態情報を送信した後、無線ティーチペンダントTPからの接続解除要求信号を待たずに、第2無線通信ラインでの無線通信の接続の確立を解除してもよい。この場合、図7に示す無線ティーチペンダントTPのステップST60及びロボット制御装置RC1〜RC3のステップST85の処理が省略されることになる。
【0104】
・ 上記実施形態において、状態確認モードの後のロボット操作モードにおける無線通信の再接続確立処理を省略してもよい。この場合、状態確認モードからロボット操作モードに移行して第1無線通信ラインでの無線通信の接続を確立する場合には、図3及び図4の一連の処理を要する。
【0105】
・ 無線ティーチペンダントTPの無線送受信機18及びロボット制御装置RC1〜RC3の無線送受信機38として、同時に複数の無線通信ラインの接続が確立できるように、複数の通信ブリッジを備えたものを採用してもよい。また、無線ティーチペンダントTP及びロボット制御装置RC1〜RC3が複数の無線送受信機を備えていてもよい。これらの変更例の場合、状態確認モードにおいて、既に第1無線通信ラインでの無線通信の接続が確立されている場合に当該第1無線通信ラインの接続の確立を解除する必要はない。したがって、図5におけるステップST41〜ステップST44の処理を省略できる。
【0106】
・ 上述の変更例のように、無線ティーチペンダントTPが同時に複数の無線通信ラインの接続確立をできる場合、複数のロボット制御装置RC1〜RC3に対して同時に第2無線通信ラインでの無線通信の接続を確立してもよい。
【0107】
以下の技術的思想は、上記実施形態及び変更例から導き出すことができる。
・ ロボット状態情報には、ロボット及びロボット制御装置における異常の有無を示す異常通知が含まれており、
前記可搬式操作装置は、受信した前記異常通知に基づいて警報を発する警報部、及び受信した前記異常通知に基づく画像を表示する表示部の少なくとも一方を備える
ことを特徴とするロボット制御システム。
【0108】
・ 可搬式操作装置は、
記憶部に記憶されている複数の特定情報が選択可能に表示される表示部と、
前記記憶部に記憶された複数の前記特定情報のうちのいずれかを選択できる選択部とを備え、
前記可搬式操作装置は、前記選択部によって選択された特定情報によって特定されるロボット制御装置に対して前記状態情報要求信号を送信する
ことを特徴とするロボット制御システム。
【符号の説明】
【0109】
TP…無線ティーチペンダント、11…TP制御部、12…RAM、13…記憶部、15…ディスプレイ、17…ブザー、18…無線送受信機、23…モード切換スイッチ、RC1〜RC3…ロボット制御装置、31…ロボット制御部、32…RAM、33…記憶部、38…無線送受信機、R1〜R3…ロボット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8