(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427388
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20181112BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
H01L29/78 301N
H01L29/78 301G
H01L29/78 301S
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-224330(P2014-224330)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-92182(P2016-92182A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三室 陽一
【審査官】
宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−091689(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0023785(US,A1)
【文献】
特開2003−309258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上に設けられたLOCOS酸化膜と、
前記シリコン基板上であって、前記LOCOS酸化膜以外の能動領域内の、前記LOCOS酸化膜に隣接するチャネル領域の表面に設けられた前記LOCOS酸化膜よりも薄く均一な膜厚のゲート酸化膜と、
前記ゲート酸化膜及び前記LOCOS酸化膜の上に形成されたゲート電極と、
前記能動領域内の前記チャネル領域とは反対の方向の前記LOCOS酸化膜に隣接する高濃度領域を含むドレイン領域と、
を有するMOSトランジスタを含む半導体装置であって、
前記高濃度領域の表面に、膜厚が前記ゲート酸化膜よりも厚く、前記LOCOS酸化膜よりも薄い、均一な膜厚のドレイン酸化膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ドレイン酸化膜の耐圧が、前記ドレインの耐圧より高いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記LOCOS酸化膜に対して、前記ゲート電極は前記LOCOS酸化膜のチャネル方向の長さの1/2以上の重なり長さを有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS型半導体素子、特に高い耐圧を有するMOS型半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を構成している、MOS型のトランジスタ構造を有するMOS型半導体素子において、高いドレイン耐圧を実現するためには、そのドレイン近傍の電界緩和が必要である。ドレイン近傍の電界緩和を実現する手法の一つには、LOCOS法で形成する厚い酸化膜(フィールド酸化膜)をドレイン近傍に配置する、いわゆるLOCOSドレイン型MOSトランジスタがある。
【0003】
図2はLOCOSドレイン型MOSトランジスタの断面図をに示している。P型のシリコン基板1の表面にソース領域となる高濃度のN型拡散層5とドレイン領域となる中濃度のN型拡散層2が離間して配置されている。高濃度のN型拡散層5と中濃度のN型拡散層2との間のチャネル領域は、厚いゲート酸化膜を形成してしまうと電流駆動能力が下がってしまうので、その部分には薄いゲート酸化膜6Aを設けている。ドレイン領域となる中濃度のN型拡散層2の上には厚い酸化膜であるLOCOS酸化膜7が配置されている。チャネル領域上の薄いゲート酸化膜6AからLOCOS酸化膜7にかけてゲート電極7が配置される。中濃度のN型拡散層2には高濃度のN型拡散層4が金属層との接続を取るために隣接して形成され、高濃度のN型拡散層4の表面には薄いドレイン上の酸化膜(以下ドレイン酸化膜)6Bが設けられている。
【0004】
ドレイン領域を形成する中濃度のN型拡散層2および高濃度のN型拡散層4の下にはさらに低濃度のN型拡散層3が設けられることもある。低濃度のN型拡散層3はN型のウェル領域で形成することも可能である。LOCOS酸化膜7の本来の目的は素子分離であるが、これを高耐圧MOSトランジスタのドレインに利用した構造であり、工程を増やすことなく高耐圧MOSトランジスタを実現できる手法である。なお、図においてN+なる記載はN±よりも不純物濃度が高いことを示している。そして、N±はNWELLの濃度よりも不純物濃度が高いとする。
LOCOSドレイン型MOSトランジスタに対しては、ドレイン耐圧のばらつきの低減等様々な工夫がなされてきた。(例えば特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−329728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LOCOSドレイン型MOSトランジスタを搭載した集積回路を設計する上ではドレイン近傍のLOCOS酸化膜7のチャネルに沿った方向の長さはできる限り短いことが望ましい。しかし、この長さが短いと、集積回路を製造する過程で、そのゲート電極となるポリシリコン膜をパターニングする際、位置ずれが発生する場合があり、望ましくないパターンが形成される恐れがある。
【0007】
このようなパターン形成不良の様子を
図3に示す。本来はポリシリコン膜により形成されたゲート電極8は、LOCOS酸化膜7の上面の平坦部まで形成されるが、パターン形成不良が生じると、LOCOS酸化膜7を超えてドレインの高濃度領域4の上に設けられた薄いドレイン酸化膜6Bにまで至る場合がある。図面の符号12は薄いドレイン酸化膜6Bの上にまで延伸したゲート電極の部分を示している。ドレイン領域とゲート電極の間には大きな電位差が印加されるので、このような構造になってしまうと、ドレインの高濃度領域にまで至ったゲート電極の下のドレイン酸化膜は薄く、耐圧が低いため、このLOCOSドレイン型MOSトランジスタにおいては要求される本来の耐圧を有することができず耐圧不良に至る。
【0008】
そこで、本発明は上記のような望ましくないパターンが形成された場合にも、耐圧が低下しないMOS型のトランジスタ構造を有するMOS型半導体素子を含む半導体装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は以下のような構成をした。即ち、LOCOSドレイン型MOSトランジスタのドレイン側の高濃度領域の上にはゲート酸化膜に比べ厚いドレイン酸化膜が配置された構造とする。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いることにより、パターン欠陥がある場合でも、ドレインの能動領域にまで至ったゲート電極の下のドレイン酸化膜の耐圧が低下することがない。パターン異常が発生しても耐圧劣化が生じないため、良品率が安定する。またパターン異常が生じても、連続使用状態での絶縁耐性の経年劣化が回避でき、経年劣化不良を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係るLOCOSドレイン型MOSトランジスタの断面模式図である。
【
図2】従来のLOCOSドレイン型MOSトランジスタの断面模式図である。
【
図3】従来のLOCOSドレイン型MOSトランジスタにおいてパターン異常が生じた場合の断面模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係るLOCOSドレイン型MOSトランジスタの製造工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明を実施するための形態を示す。P型のシリコン基板1の表面にソース領域となる高濃度のN型拡散層5とドレイン領域となる中濃度のN型拡散層2が離間して配置されている。高濃度のN型拡散層5と中濃度のN型拡散層2との間のチャネル領域には、比較的薄いゲート酸化膜6Aが設けられている。厚いゲート酸化膜を形成してしまうと電流駆動能力が下がってしまうからである。ゲート酸化膜6Aに連続して、ドレイン領域となる中濃度のN型拡散層2の上には厚い酸化膜であるLOCOS酸化膜7が配置されている。これは、ドレイン領域のチャネル側の端部において酸化膜に大きな電界が加わるので、その電界に耐えるためである。そして、チャネル領域上の薄いゲート酸化膜6AからLOCOS酸化膜7の平坦部にかけてゲート電極7が配置される。
【0013】
ドレインとなる中濃度のN型拡散層2には高濃度のN型拡散層4が配線となる金属層との接続を取るために隣接して形成され、高濃度のN型拡散層4の表面には薄いゲート酸化膜6Aよりも膜厚が厚いドレイン酸化膜9が設けられている。高濃度のN型拡散層4の表面にはLOCOS酸化膜が設けられていないのでドレインの能動領域を形成している。ここで、ドレイン酸化膜9の厚さは、通常の動作において、ゲート電極とドレイン領域との間に印加される最大の電位差では破壊されない厚さとする。ドレイン領域を形成する中濃度のN型拡散層2および高濃度のN型拡散層4の下にはさらに低濃度のN型拡散層3が設けられることもある。低濃度のN型拡散層3はN型のウェル領域で形成することも可能である。
【0014】
上に示したように、本実施例においては、LOCOS酸化膜7に連続してドレインの高濃度領域4の表面に設けられるドレイン酸化膜9の膜厚がチャネル領域上に設けられる薄いゲート酸化膜6Aの膜厚よりも大きいことが特徴である。なお、図にも示してあるようにドレイン酸化膜9の膜厚はLOCOS酸化膜7に比べれば薄くなっている。
【0015】
こうした構造とすることで、ゲート電極7のパターニングにおいて位置ずれが発生し、ゲート電極8がLOCOS酸化膜7を超えてドレインの高濃度領域4の上に設けられたドレイン酸化膜9にまで至ったとしても、ドレイン酸化膜9は通常の動作において、ゲート電極とドレイン領域との間に印加される最大の電位差によっては破壊されない厚さを有しているので、静電破壊する畏れは小さくなり、信頼性を保つことが可能である。
【0016】
LOCOS酸化膜7のチャネル方向の長さが極めて短い場合、ゲート電極8の位置がずれてもチャネル領域を覆い、オフセットを形成することがないように、LOCOS酸化膜に対して、ゲート電極はLOCOS酸化膜のチャネル方向の長さの1/2以上の重なり長さを有するのが好ましい。即ち、LOCOS酸化膜7はその半分以上がゲート電極8により覆われていることが好ましい。
【0017】
図4に、
図1に示した実施例を製造する工程を示す。
図4(a)に示すように、まずP型シリコン基板1に、低濃度のN型拡散層3を形成し、続いてシリコン酸化膜10、シリコン窒化膜11を順次形成する。その後パターンニングを行い、LOCOS酸化膜を形成する部分のみシリコン窒化膜11をエッチング除去し、その部分に中濃度のN型拡散層を形成する。この状態で、LOCOS酸化を行い、LOCOS酸化膜を形成する。
LOCOS酸化膜を形成後にシリコン窒化膜、その下に形成されていた、シリコン酸化を除去することで
図4(b)の構造を得る。
【0018】
その後、
図4(c)に示すように、ドレイン酸化膜9となる酸化膜を高耐圧のMOS型半導体素子のLOCOS酸化膜により覆われていない領域に形成する。この膜厚は、ドレイン耐圧より高い耐圧となるように決定する。例えば、ドレイン耐圧が25Vである場合、この厚いゲート酸化膜は、300A程度の膜厚とする。
【0019】
その後、
図4(d)に示すように、ソース側の能動領域であるソース領域およびチャネル領域の上のドレイン酸化膜のみエッチング除去し、ドレイン酸化膜9よりも薄いゲート酸化膜6Aを形成する。この膜厚は、目標とする電流駆動能力やドレイン耐圧によって決定する。続いて、ポリシリコン膜を形成し、パターニングを行って、ゲート電極を形成し、高濃度のソース領域及びドレイン領域となる高濃度のN型拡散層を形成すれば、
図1に示したMOS型半導体素子となる。
【符号の説明】
【0020】
1 P型シリコン基板
2 中濃度N型拡散層
3 低濃度N型拡散層
4 ドレイン側の高濃度N型拡散層
5 ソース側の高濃度N型拡散層
6A ゲート酸化膜
6B、9 ドレイン酸化膜
7 LOCOS酸化膜
8 ゲート電極
10 シリコン酸化膜
11 シリコン窒化膜