特許第6427402号(P6427402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アマダの特許一覧

特許6427402ブラシテーブルの火災消火方法及びレーザ加工機
<>
  • 特許6427402-ブラシテーブルの火災消火方法及びレーザ加工機 図000002
  • 特許6427402-ブラシテーブルの火災消火方法及びレーザ加工機 図000003
  • 特許6427402-ブラシテーブルの火災消火方法及びレーザ加工機 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427402
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】ブラシテーブルの火災消火方法及びレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/00 20060101AFI20181112BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20181112BHJP
【FI】
   A62C3/00 E
   B23K26/00 Q
   B23K26/00 M
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-251401(P2014-251401)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-112077(P2016-112077A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 広一
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−123581(JP,A)
【文献】 特開平10−006053(JP,A)
【文献】 特開2004−130324(JP,A)
【文献】 特開2009−142419(JP,A)
【文献】 特開2014−090782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/00
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工機におけるブラシテーブルの火災消火方法であって、集塵装置に連通した集塵口をブラシテーブルに備え、前記集塵口の周囲に備えた複数のブラシ束に、又は複数のブラシ束に近接した位置に、当該ブラシ束の火災を検知する火災検知手段を備え、この火災検知手段が当該ブラシ束の火災を検知したときに、レーザ光の発振を停止すると共に、レーザ加工機におけるレーザノズルから消火用流体を噴出して前記ブラシ束の消火を行うことを特徴とするブラシテーブルの火災消火方法。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシテーブルの火災消火方法において、前記消火用流体は不活性ガスであって、ブラシに支持されている板状のワーク下側を不活性ガスリッチ状態として消火を行うことを特徴とするブラシテーブルの火災消火方法。
【請求項3】
板状のワークを支持する複数のブラシ束を備えたブラシテーブルと、前記ワークのレーザ加工を行うレーザ加工ヘッドとを備えたレーザ加工機であって、前記ブラシテーブルに、集塵装置に連通した集塵口を備え、この集塵口の周囲に備えた複数のブラシ束に、又は複数のブラシ束に近接した位置に、当該ブラシ束の火災を検知する火災検知手段を備え、この火災検知手段が当該ブラシ束の火災を検出したときに、レーザ発振器を停止すると共にレーザノズルからの噴出流体を消火用流体に制御する制御装置を備えていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工機において、前記火災検知手段は電気又はレーザ光を導く導線であることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工機において、前記導線は、前記ブラシ束と一体的に備えられていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工機において、前記導線の折り返し位置は、ブラシテーブルの床面と前記ブラシ束の頂部との間に備えられていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載のレーザ加工機において、火災検知手段を備えた複数のブラシ束は、火災検知手段を有しない適数のブラシ束を間にして適宜間隔に配置してあることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項8】
請求項5,6又は7に記載のレーザ加工機において、複数のブラシ束に備えられた複数の導線は並列接続して備えられていることを特徴とするレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシテーブルを備えたレーザ加工機における前記ブラシテーブルの火災消火方法及びレーザ加工機に係り、さらに詳細には、ブラシテーブルにおけるブラシ束の焼損を早期に検知して消火することができるブラシテーブルの火災消火方法及びレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状のワークを支持するワークテーブルに対してワークが相対的に移動する形式のレーザ加工機においては、ワークの下面(裏面)に擦傷が生じることを防止するために、ワークテーブルの上面にブラシを備えたブラシテーブルを使用している。前記ブラシは難燃性のブラシが使用されている。しかし、ワークの下面のオイルがブラシに付着したり、ワーク下面のゴミや塵埃等がブラシ上に堆積することがある。
【0003】
そして、レーザ加工時のスパッタが付着したり、例えば、バーニング、ガウジング等のワークの切断不良が発生してワークの下面が高温(例えば400℃〜500℃)になると、ブラシに火災が発生することがある。そこで、消火機能を備えたレーザ加工機が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−123581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の構成は、レーザ加工ヘッドの周囲付近のブラシテーブルを、加工ヘッドカバーで覆う構成である。そして、加工ヘッドカバー内に火災が生じると、加工ヘッドカバー内の火災検知センサで前記火災を検知し、前記加工ヘッドカバー内へ消火剤を噴射する構成である。すなわち、特許文献1に記載の構成は、加工ヘッドカバー、消火剤供給装置を必要とし、構成が複雑であると共に、前記火災検知センサは、加工ヘッドカバー内の温度上昇を検知する構成であるから、火災検知に時間を要する、という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、レーザ加工機におけるブラシテーブルの火災消火方法であって、集塵装置に連通した集塵口をブラシテーブルに備え、前記集塵口の周囲に備えた複数のブラシ束に、又は複数のブラシ束に近接した位置に、当該ブラシ束の火災を検知する火災検知手段を備え、この火災検知手段が当該ブラシ束の火災を検知したときに、レーザ光の発振を停止すると共に、レーザ加工機におけるレーザノズルから消火用流体を噴出して前記ブラシ束の消火を行うことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記ブラシテーブルの火災消火方法において、前記消火用流体は不活性ガスであって、ブラシに支持されている板状のワーク下側を不活性ガスリッチ状態として消火を行うことを特徴とするものである。
【0008】
また、板状のワークを支持する複数のブラシ束を備えたブラシテーブルと、前記ワークのレーザ加工を行うレーザ加工ヘッドとを備えたレーザ加工機であって、前記ブラシテーブルに、集塵装置に連通した集塵口を備え、この集塵口の周囲に備えた複数のブラシ束に、又は複数のブラシ束に近接した位置に、当該ブラシ束の火災を検知する火災検知手段を備え、この火災検知手段が当該ブラシ束の火災を検出したときに、レーザ発振器を停止すると共にレーザノズルからの噴出流体を消火用流体に制御する制御装置を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記レーザ加工機において、前記火災検知手段は電気又はレーザ光を導く導線であることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記レーザ加工機において、前記導線は、前記ブラシ束と一体的に備えられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記レーザ加工機において、前記導線の折り返し位置は、ブラシテーブルの床面と前記ブラシ束の頂部との間に備えられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記レーザ加工機において、火災検知手段を備えた複数のブラシ束は、火災検知手段を有しない適数のブラシ束を間にして適宜間隔に配置してあることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記レーザ加工機において、複数のブラシ束に備えられた複数の導線は並列接続して備えられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブラシテーブルにおけるブラシ束に、又はブラシ束に近接した位置に導線を配置する構成であるから、簡単な構成でもってブラシテーブルの火災を検知することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工機を概念的、概略的に示した正面説明図である。
図2】上記レーザ加工機のワークテーブル(ブラシテーブル)を示した平面説明図である。
図3】ブラシテーブルにおけるブラシ束の火災を検知し消火するシステム構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明するに、理解を容易にするために、本発明の実施形態に係るレーザ加工機の全体的構成について概念的、概略的に説明する。
【0018】
図1,2に示すように、本発明の実施形態に係るレーザ加工機1は、フレーム3を備えており、このフレーム3には、板状のワークWにプレス加工を行うためのパンチP、ダイDを備えた上下のタレット5U,5Lが上下に対向して水平に回転自在に備えられている。また、前記フレーム3には、パンチング加工位置に割出し位置決めされたパンチPを打圧するストライカ7が上下動自在に備えられていると共に、前記ワークWを支持するワークテーブル9が備えられている。
【0019】
上記ワークテーブル9は、ワークWを支持する複数のブラシ束11を備えたブラシテーブルに構成してある。そして、上記ブラシテーブル9は、固定テーブル9FとY軸方向に移動自在の移動テーブル9Mとを備えた構成である。前記固定テーブル9Fは、前記タレット5U,5Lに対応してX軸方向の中央部に配置してあり、前記移動テーブル9Mは、前記固定テーブル9Fを間にしてX軸方向の両側に配置してある。
【0020】
そして、前記移動テーブル9Mには、ワークWをX,Y軸方向へ移動位置決め自在なワーク移動位置決め装置13が備えられている。すなわち、両側の前記移動テーブル9Mには、X軸方向に長いキャリッジベース15の両端側が一体的に支持されている。そして、このキャリッジベース15には、キャリッジ17がX軸方向へ移動自在に支持されており、このキャリッジ17にはワークWの一端縁をクランプ自在な複数のワーククランプ19が備えられている。
【0021】
したがって、キャリッジベース15をY軸方向に移動し、キャリッジ17をX軸方向に移動することにより、ワーククランプ19にクランプされたワークWを、X,Y軸方向へ移動位置決めすることができるものである。
【0022】
前記ワークWにレーザ加工を行うために、前記固定テーブル9Fの上方に位置する上部フレーム3Uには、レーザ加工ヘッド21がY軸方向へ移動位置決め自在に備えられている。そして、前記レーザ加工ヘッド21がY軸方向に移動する移動領域に対応して、前記固定テーブル9Fには、集塵装置(図示省略)に連通した集塵口23がY軸方向に長く形成してある。
【0023】
前記構成において、前記パンチP、ダイDによるパンチング加工位置に対してワークWの位置決めを行い、前記ストライカ7によってパンチPを打圧することにより、ワークWにパンチング加工が行われる。そして、前記レーザ加工ヘッド21からワークWにレーザ光を照射すると共に、ワークWをX,Y軸方向へ相対的に移動位置決めすることにより、ワークWのレーザ切断加工が行われるものである。
【0024】
前述のごとくワークWをX,Y軸方向へ移動位置決めしてパンチング加工やレーザ切断加工を行う際、例えばワークWの裏面に付着していたオイルや塵埃等がブラシ束11に付着堆積することがある。したがって、アシストガスとして、例えば酸素を使用してのレーザ切断加工時に、例えばガウジングやバーニング等の切断不良が生じると、ワークWの裏面(下面)が高温(例えば400℃〜500℃)になり、ブラシ束11に火災を発生することがある。
【0025】
そこで、本実施形態においては、ブラシテーブル9におけるブラシ束11に火災が発生したことを検知する火災検知手段25(図3参照)が備えられている。より詳細には、前記集塵口23(図3には図示省略)の周囲に備えた複数のブラシ束11内には、火災検知手段25の1例としての細い複数の導線27A,27B,27Cが折り返し屈曲して備えられている。上記複数の導線27A,27B,27Cは電源29に並列に接続してある。そして、前記各導線27A,27B,27Cの電気抵抗R1,R2,R3はそれぞれ異にしてあり、前記各導線27A,27B,27Cの切断を検出するために電流計31が備えられている。なお、前記電気抵抗R1,R2,R3はそれぞれ等しくてもよいものである。
【0026】
前記各導線27A,27B,27Cは、前記集塵口23の周囲に配置した全てのブラシ束11内に配置することも可能である。しかし、本実施形態においては、図3に示すように、適数のブラシ束11を間にして適宜間隔のブラシ束11に備えられている。そして、各導線27A,27B,27Cの折り返し位置(屈曲位置)27Tは、ブラシテーブル9の床面9Fと前記ブラシ束11の頂部11Tとの間の中間位置に配置してある。
【0027】
上記構成より、 ブラシ束11に火災が発生して、適宜の導線27が燃焼し切断されると、並列接続の電気抵抗が変化し、電流値が変化するので、前記電流計31によって電流変化を検出することにより、ブラシ束11の火災発生を検知できるものである。そして、前記電流計31により電流変化を検出すると、レーザ加工機1におけるレーザ発振器が停止されると共に、前記レーザ加工ヘッド21に備えたレーザノズルからの噴出流体が消火用流体に制御されるものである。なお、前記電流計31は、導線27が損傷されたことを検出するものであるから、導線27の損傷を検出する損傷検出装置を構成するものである。
【0028】
前記レーザ加工機1には、制御装置33が備えられている。この制御装置33は、コンピュータから構成してあって、CPU35を備えていると共に、レーザ発振器37の出力停止をも含むレーザ出力の制御を行うレーザ出力制御手段39を備えている。さらに、前記制御装置33には、前記レーザ加工ヘッド21に備えたレーザノズルから噴出するアシストガス種の切換えを行う切換弁41の切換動作を制御する切換弁制御手段43が備えられている。
【0029】
上記構成において、前述したようにワークWのレーザ切断加工時に、ブラシ束11に火災が発生すると、ブラシ束11内に配置した導線27A,27B,27Cが焼損により切断されることになる。導線27A,27B,27Cが焼損されると、並列接続の電気抵抗が変化し、この電気抵抗の変化に起因する電流変化は電流計31によって検出される。電流計31が電流変化を検出すると、制御装置33においてブラシ束11の火災として検知される。
【0030】
上述のように、ブラシ束11の火災が検知されると、制御装置33におけるレーザ出力制御手段39の制御の下にレーザ発振器37のレーザ発振が停止される。また、切換弁制御手段43の制御の下に切換弁41が切換えられて、レーザ加工ヘッド21におけるレーザノズルからは、不活性ガスとしての窒素ガスが噴出されることになる。また、前述のごとく、ブラシ束11の火災が検知されると、前記制御装置33に備えた動作制御手段45の制御の下にワークWの移動が停止されるものである。
【0031】
したがって、前記レーザノズルから噴出された消火用流体としての不活性ガス(窒素ガス)の一部は、ワークWに切断された切断溝からワークWの下方向へ噴出され、ブラシテーブル9の床面9Fと複数のブラシ束11に支持されたワークWとの間の空間に充満されることになる。すなわち、ワークWの下側の空間は、不活性ガスリッチ状態となって、前記ブラシ束11の火災が消火されるものである。
【0032】
以上のごとき説明から理解されるように、本実施形態によれば、ブラシテーブル9におけるブラシ束11内に細線(導線)27A,27B,27Cを配置する簡単な構成でもってブラシ束11の火災を検知することができる。そして、前記細線がブラシ束11内に配置してあることにより、ブラシ束11の火災を迅速に検知することができるものである。
【0033】
ところで、本発明は、前述した実施形態のみに限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能なものである。導線としては、レーザ光を導く光ファイバーを採用し、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を利用した構成とすることも可能である。また、導線は、ブラシ束11内に限ることなく、ブラシ束11に近接した位置に配置した構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
9 ワークテーブル(ブラシテーブル)
11 ブラシ束
21 レーザ加工ヘッド
23 集塵口
25 火災検知手段
27 導線
29 電源
31 電流計
33 制御装置
35 CPU
37 レーザ発振器
39 レーザ出力制御手段
41 切換弁
43 切換弁制御手段
図1
図2
図3