(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書及び図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
グリップと、フレームと、前記グリップと前記フレームとを連結するシャフトとを有するバドミントンラケットであって、前記フレームは、前記シャフトの軸に沿う縦方向において、前記シャフト側である下側に第1位置と、前記第1位置よりも上側に第2位置とを有し、前記フレーム内に形成される打面に沿う方向に前記フレームの側面を見た場合に、前記第1位置での方が前記第2位置に比べて、前記フレームの側面の厚さが薄く、前記打面の垂直方向に前記フレームの正面を見た場合に、前記第2位置での方が前記第1位置に比べて、前記フレームの正面の厚さが薄いことを特徴とするバドミントンラケットである。
このようなバドミントンラケットによれば、フレームがしなり易く、ねじれ易くなる。そのため、スイングスピードが遅い初級中級者や中高年の競技者が使用する場合にも、スイング時にフレームをしならせたりねじらせたりすることができる。よって、シャトルの飛距離を向上させることができる。また、上記のようなバドミントンラケットによれば、フレームの上部の正面に対する空気抵抗を低減できる。そのため、フレームの正面が打球方向に向いている割合が高いスイングを行う初級中級者や中高年の競技者が使用する場合にも、ラケットの振り抜きを良くし、スイングスピードを上げられる。よって、シャトルの飛距離を向上させることができる。
【0010】
かかるバドミントンラケットであって、前記フレームは、前記第1位置を含む前記縦方向に沿う領域であって、前記フレームの側面の厚さが前記第2位置での前記フレームの側面の厚さよりも薄く且つ一定である第1領域を有することを特徴とするバドミントンラケットである。
このようなバドミントンラケットによれば、初級中級者や中高年の競技者が使用する場合にも、より確実にフレームをしならせたりねじらせたりすることができ、シャトルの飛距離を向上させることができる。また、フレームの下部の側面の厚さを、フレームがしなり易くねじれ易くなる側面の厚さであり、フレームの強度低下を防止できる側面の厚さに設定できる。
【0011】
かかるバドミントンラケットであって、前記第1領域は前記フレームの前記縦方向の中心よりも前記縦方向の下側に位置することを特徴とするバドミントンラケットである。
このようなバドミントンラケットによれば、初級中級者や中高年の競技者が使用する場合にも、より確実にフレームをしならせたりねじらせたりすることができ、シャトルの飛距離を向上させることができる。
【0012】
かかるバドミントンラケットであって、前記フレームは、前記第1領域よりも前記縦方向の上側に、前記フレームの側面の厚さが前記縦方向の上側に向かうに従って厚くなるテーパー領域を有することを特徴とするバドミントンラケットである。
このようなバドミントンラケットによれば、第1領域よりも縦方向の上側の部位では、第1領域に比べて側面の厚さを厚くでき、また、局所的な力の集中を防止できる。よって、フレームの強度低下を防止できる。
【0013】
かかるバドミントンラケットであって、前記フレームは、前記テーパー領域よりも前記縦方向の上側に、前記縦方向に沿う領域であって、前記フレームの側面の厚さが前記第1位置での前記フレームの側面の厚さよりも厚く且つ一定である第2領域を有することを特徴とするバドミントンラケットである。
このようなバドミントンラケットによれば、第2領域では第1領域に比べて側面の厚さを厚くできる。よって、フレームの強度低下を防止できる。また、フレームの上部において側面の厚さが厚くなり過ぎる部位が生じてしまうことを防止できる。
【0014】
===バドミントンラケットの基本構成===
図1Aは、バドミントンラケット(以下、ラケット)1の正面図であり、
図1Bは、ラケット1の側面図である。ラケット1は、グリップ30と、環状のフレーム10(一般には縦長の略楕円形状のフレーム)と、グリップ30とフレーム10とを連結するシャフト20と、を有する。以下、シャフト20の軸に沿う方向を「縦方向」、フレーム10内に形成される打面上において縦方向に直交する方向を「横方向」、縦方向と横方向に直交する方向(打面に直交する方向)を「側面厚方向」と呼ぶ。また、フレーム10においてシャフト20が位置する側を「縦方向の下側」、その逆側を「縦方向の上側」と呼ぶ。
【0015】
また、フレーム10には、ストリング40を通して打面を形成するために、フレーム10の内周面10aから外周面10bまで貫通するストリング孔11がフレーム10のほぼ全周に亘って設けられている。なお、フレーム10の外周面10bに溝部12を設け、溝部12にストリング孔11の開口部を設け、溝部12でストリング40を折り返すようにしてもよい。
【0016】
===フレームの形状===
図2は、フレーム10の概略側面図である。
図3Aは、フレーム10の概略正面図であり、
図3B及び
図3Cは、
図3Aの位置AA、位置BBにおいて、フレーム10を側面厚方向、及び、正面厚方向に切った概略断面図である。以下、フレーム10の内周面10a又は外周面10bにおける各位置での法線方向(各位置での接線に対する垂直方向)を「正面厚方向」と呼ぶ。
【0017】
本実施形態のラケット1のフレーム10は、
図2に示すように、縦方向の上側から、上部領域13と、テーパー領域14と、下部領域15とを有する。各領域13〜15は縦方向に沿う領域である。即ち、縦方向に長さを有する領域である。
【0018】
上部領域13は縦方向の位置によらずに側面厚方向の厚さ(以下、側面厚)が一定である。例えば、
図2に示すように、縦方向の位置p1での側面厚TH1と、縦方向の位置p2での側面厚TH2とが等しくなっている(TH1=TH2)。
また、下部領域15も縦方向の位置によらずに側面厚が一定である。例えば、
図2に示すように、縦方向の位置p5での側面厚TH5と、縦方向の位置p6での側面厚TH6とが等しくなっている(TH5=TH6)。
但し、下部領域15の側面厚の方が上部領域13の側面厚に比べて、厚さが薄くなっている(TH5,TH6<TH1,TH2)。
【0019】
テーパー領域14では縦方向の上側に向かうに従って側面厚が徐々に厚くなっている。例えば、
図2に示すように、縦方向の位置p4での側面厚TH4に比べて、その位置p4よりも縦方向の上側の位置p3での側面厚TH3の方が厚くなっている(TH4<TH3)。また、テーパー領域14を介して上部領域13と下部領域15とが連結されている。よって、テーパー領域14の上端の側面厚は上部領域13の側面厚と等しくなっており、テーパー領域14の下端の側面厚は下部領域15の側面厚と等しくなっている。
【0020】
また、本実施形態のラケット1のフレーム10では、
図3Aに示すように、上部領域13の正面厚方向の厚さ、即ち、内周面10aから外周面10bまでの垂直方向の厚さ(以下、正面厚)が一定となっている。また、下部領域15(シャフト20との連結部以外)の正面厚も一定となっている。但し、上部領域13の正面厚の方が下部領域15の正面厚に比べて薄くなっている。例えば、
図3Aに示す上部領域13の位置AAでの正面厚th1(
図3B)の方が、下部領域15の位置BBでの正面厚th2(
図3C)に比べて薄くなっている。そして、テーパー領域14では縦方向の上側に向かうに従って正面厚が徐々に薄くなっている。
【0021】
ラケット1の具体例としては、上部領域13の縦方向の長さが90〜110mmの範囲の長さであり、テーパー領域14の縦方向の長さが40〜60mmの範囲の長さであり、下部領域15の縦方向の長さが90〜110mmの範囲の長さであり、下部領域15の側面厚TH5,TH6が10mm以下であり、上部領域13の側面厚TH1,TH2が11mm以上であり、下部領域15の正面厚th2が5.8mm以上であり、上部領域13の正面厚th1が5.5mm以下のものが挙げられる。なお、
図3B及び
図3Cに示すように、フレーム10の内周面10aが湾曲していたり、外周面10bに溝部12が設けられていたりする。そのため、正面厚方向におけるフレーム10の最大厚さを正面厚とする。
【0022】
ところで、上級者や若年の競技者は上腕や前腕をひねらせたスイングを行う。よって、スイング時にフレームの側面が打球方向に向いている割合が高い。また、スイングは円弧運動であり、フレームの上部の方が下部に比べてスピードが速く、空気抵抗の影響が大きい。そのため、上級者や若年の競技者向けのラケットでは、フレームの上部の側面厚を下部の側面厚に比べて薄くすることで、ラケットの振り抜きを良くすることができる。また、上級者や若年の競技者の場合、スイングスピードが速いので、フレームの下部の側面厚が厚くてもフレームをしならせたりねじらせたりすることができる。
【0023】
一方、初級中級者や中高年の競技者は打面が起きたスイングを行い易い。よって、スイング時にフレームの正面が打球方向に向いている割合が高い。そのため、上記のような上級者や若年の競技者向けのラケット、即ち、フレームの上部の側面厚が薄くなっているラケットを初級中級者や中高年の競技者が使用しても、ラケットの振り抜きを良くすることができない。また、初級中級者や中高年の競技者の場合、スイングスピードが遅いので、フレームの下部の側面厚が厚いとフレームをしならせたりねじらせたりすることができず、シャトルの飛距離を伸ばすことができない。
【0024】
そこで、本実施形態のラケット1では、フレーム10内に形成される打面に沿う方向にフレーム10の側面を見た場合に(
図2)、下部領域15内の縦方向の位置(例えば
図2のp5やp6、第1位置に相当)での方が上部領域13内の縦方向の位置(例えば
図2のp1やp2、第2位置に相当)に比べて、フレーム10の側面厚が薄くなっている。
【0025】
そうすることで、例えば、フレームの下部の側面厚が厚くなっているラケットに比べて、フレーム10がしなり易くねじれ易くなる。そのため、スイングスピードの遅い初級中級者や中高年の競技者が使用する場合にも、スイング時にフレーム10をしならせたりねじらせたりすることができる。よって、シャトルの飛距離を向上させることができる。
【0026】
また、フレーム10の下部の断面形状(
図3C)はフレーム10の上部の断面形状(
図3B)に比べて、側面厚方向の両側部が湾曲しており、丸(楕円)に近い形状となっている。このようにフレーム10の下部の断面を丸形形状にすることで、フレーム10がよりねじれ易くなり、シャトルの飛距離をより確実に向上させることができる。
【0027】
更に、本実施形態のラケット1では、打面の垂直方向にフレーム10の正面を見た場合に(
図3A)、上部領域13内の縦方向の位置(例えば
図3AのAA、第2位置に相当)での方が下部領域15内の縦方向の位置(例えば
図3AのBB、第1位置に相当)に比べて、フレーム10の正面厚が薄くなっている。
【0028】
そうすることで、空気抵抗の影響が大きいフレーム10の上部の方が下部に比べて、フレーム10の正面に対する空気抵抗を低減できる。そのため、フレーム10の正面が打球方向に向いている割合が高いスイングを行う初級中級者や中高年の競技者が使用する場合にも、ラケット1の振り抜きを良くし、スイングスピードを上げられる。よって、シャトルの飛距離を向上させることができる。また、下部領域15では上部領域13に比べて、側面厚が薄くなっている代わりに正面厚が厚くなっている。よって、フレーム10の下部の強度低下を抑制できる。
【0029】
また、フレーム10は、縦方向に沿い、縦方向に長さを有する下部領域15(第1領域)を有する。その下部領域15では、フレーム10の側面厚が上部領域13のフレーム10の側面厚よりも薄く、且つ、一定である。
【0030】
このように、下部領域15を縦方向に沿う領域とすることで、例えば、フレーム10の下部の側面厚が局所的に狭くなっている場合に比べて、フレーム10がしなり易くねじれ易くなる。そのため、初級中級者や中高年の競技者が使用する場合にも、より確実にシャトルの飛距離を向上させることができる。また、側面厚が局所的に狭くなっている部位に力が集中してしまうことがなく、フレーム10の強度低下を防止できる。
【0031】
また、仮に、下部領域15の側面厚がテーパー領域14のように縦方向の下側に向かうに従って薄くなる場合、フレーム10の下部に側面厚が厚過ぎる部位と薄過ぎる部位とが生じてしまう。よって、フレーム10がしなり難くねじれ難くなったり、フレーム10の強度が低下したりしてしまう。そのため、本実施形態のラケット1のように下部領域15の側面厚を一定にすることで、フレーム10がしなり易くねじれ易くでき、且つ、フレーム10の強度低下を防止できる。
【0032】
また、フレーム10は、下部領域15及びテーパー領域14よりも縦方向の上側に、縦方向に沿い、縦方向に長さを有する上部領域13(第2領域)を有する。その上部領域13では、フレーム10の側面厚が下部領域15のフレーム10の側面厚よりも厚く、且つ、一定である。
【0033】
そうすることで、例えば、フレーム10の全体の側面厚を下部領域15の側面厚程に薄くしてしまう場合に比べて、フレーム10の強度低下を防止できる。特に、上部領域13では下部領域15に比べて正面厚が薄くなっているので、側面厚を厚くすることでフレーム10の上部の強度低下を抑制できる。
また、仮に、上部領域13の側面厚を縦方向の上側に向かうに従って厚くする場合、フレーム10の上部において側面厚が厚過ぎる部位が生じてしまう。しかし、上部領域13の側面厚を一定にすることで、側面厚が厚過ぎる部位が生じず、フレーム10の重量化を防げる。
また、上部領域13のフレーム10の側面厚を厚くすることで、シャトルの衝突時にフレーム10の上部が進行方向とは逆方向にしなってしまうことを抑制できる。よって、シャトルを打面でしっかりと捉えられるので、シャトルの反発性を高め、シャトルの飛距離を向上させることができる。
【0034】
以上のように上部領域13と下部領域15とがそれぞれ機能するように、
図2に示すように、下部領域15をフレーム10の縦方向の中心CLよりも縦方向の下側に設けるとよい。そうすることで、上部領域13によってフレーム10の強度低下を防ぎつつ、下部領域15によってフレーム10をしなり易くねじれ易くすることができる。
【0035】
また、上部領域13と下部領域15の間に、フレーム10の側面厚が縦方向の上側に向かうに従って厚くなるテーパー領域14を設けることで、上部領域13の側面厚を所望の厚さで一定にしつつ、下部領域15の側面厚を所望の厚さで一定にできる。
また、仮に、上部領域13と下部領域15がテーパー領域14を介さずに連結される場合、その境界部に力が集中してしまう。しかし、側面厚が徐々に変化するテーパー領域14を設けることで、局所的な力の集中を防ぎ、フレーム10の強度低下を防止できる。
また、下部領域15よりも縦方向の上側にテーパー領域14を設けることで、下部領域15よりも縦方向の上側の部位の側面厚を下部領域15の側面厚よりも厚くできる。このことからも、フレーム10の強度低下を防止できると言える。
【0036】
なお、上記実施形態のラケット1に限らない。例えば、下部領域15よりも縦方向の上側の全域をテーパー領域(縦方向の上側に向かうに従って側面厚が厚くなる領域)としたラケットでもよい。また、フレーム10の全域をテーパー領域としたラケットでもよい。また、例えば、上部領域13内で正面厚が変化するラケットや、下部領域15内で正面厚が変化するラケットでもよい。また、例えば、フレーム10の縦方向の中心CLよりも縦方向の上側に下部領域15が延びたラケットでもよい。
【0037】
以上、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
例えば、本発明に係るバドミントンラケットは、フレーム内にストリングが張設されたラケットに限らず、フレーム内にストリングが張設されていないラケットも含まれる。