特許第6427427号(P6427427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427427
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 15/00 20060101AFI20181112BHJP
   F02P 17/12 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   F02P15/00 F
   F02P17/00 F
   F02P17/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-12739(P2015-12739)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-138476(P2016-138476A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青地 高伸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 正道
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−64358(JP,A)
【文献】 特開2013−96382(JP,A)
【文献】 特開平11−230017(JP,A)
【文献】 特開2010−112209(JP,A)
【文献】 特開2013−87667(JP,A)
【文献】 特公平6−80312(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 15/00
F02P 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室の混合気に点火する燃焼サイクルを繰り返す点火装置(1)であって、
互いの間に放電ギャップを設けて対向配置された中心電極(21)及び接地電極(22)と、上記中心電極(21)を内側に保持する絶縁碍子(23)とを備えた点火プラグ(2)と、
上記中心電極(21)と上記接地電極(22)との間に電圧を印加する電圧印加手段(3)と、
上記点火プラグ(2)に生じた放電が上記絶縁碍子(23)の表面に沿う沿面放電であるか否かを検出する検出手段(4)と、を有し、
上記電圧印加手段(3)は、上記中心電極(21)が正極となるプラス放電電圧と、上記中心電極(21)が負極となるマイナス放電電圧と、を切り替えて上記中心電極(21)と上記接地電極(22)との間に電圧を印加することができるよう構成されており、
上記検出手段(4)が上記沿面放電を検出していない間は、上記電圧印加手段(3)は上記マイナス放電電圧を上記中心電極(21)と上記接地電極(22)との間に印加し、
上記検出手段(4)が上記沿面放電を検出したとき、その後の所定の燃焼サイクルにおいて、上記電圧印加手段(3)が上記プラス放電電圧を上記中心電極(21)と上記接地電極(22)との間に印加するよう構成してあることを特徴とする点火装置(1)。
【請求項2】
上記検出手段(4)は、各燃焼サイクルにおいて、上記点火プラグ(2)に点火信号が送られた時点から所定の時間内に、所定の電圧値以上の電圧が、上記中心電極(21)と上記接地電極(22)との間に複数回生じたとき、当該放電が沿面放電であると判定するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の点火装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室の混合気に点火する燃焼サイクルを繰り返す点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の内燃機関には、燃焼室の混合気に点火する燃焼サイクルを繰り返す点火装置が備えられている。点火装置は、点火プラグの中心電極と接地電極との間に火花放電を生じさせることにより、燃焼室の混合気に点火する。すなわち、中心電極と接地電極との間の放電ギャップに火花放電が繰り返し生じることとなる。繰り返しの放電によって電極が徐々に消耗して、その消耗速度が点火プラグの寿命に影響するため、電極の消耗を抑制する技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、中心電極を正極とするプラス放電と、中心電極を負極とするマイナス放電とを切り替えることにより、電極の消耗を抑制するよう構成した点火装置が提案されている。すなわち、特許文献1の発明は、プラス放電は比較的放電電圧を低くすることができる一方、電極を消耗させやすいという性質に着目している。そして、各燃焼サイクルにおいて、プラス放電によって中心電極と接地電極との間に放電を開始した後、マイナス放電に切り替えて放電を維持することで、電極の消耗を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−64358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の発明においては、放電の途中からマイナス放電に切り替えるものの、各燃焼サイクルにおいて最初の段階でプラス放電を生じさせる。つまり、毎回の燃焼サイクルにおいてプラス放電を生じさせるため、電極の消耗を充分に抑制することは困難である。
【0006】
また、高過給領域等、燃焼室の圧力が高い状態においてマイナス放電を生じさせる場合には、放電ギャップにおける放電が生じにくくなり、絶縁碍子の表面に沿った沿面放電が生じやすくなる。その結果、失火する燃焼サイクルが続くことが懸念され、内燃機関の正常な運転を妨げる要因となり得る。
【0007】
また、特許文献1の点火装置においては、一つの燃焼サイクルにおいて、プラス放電からマイナス放電へと切り替えるため、マイナス放電に切り替える際に大きな放電電流が必要となる。それゆえ、点火コイルや電源等の設計に制約が生じ、設計自由度が低くなるという問題もある。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、内燃機関の正常な運転を確保しつつ、点火プラグの耐久性を向上することができる、設計自由度の高い点火装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、内燃機関の燃焼室の混合気に点火する燃焼サイクルを繰り返す点火装置であって、
互いの間に放電ギャップを設けて対向配置された中心電極及び接地電極と、上記中心電極を内側に保持する絶縁碍子とを備えた点火プラグと、
上記中心電極と上記接地電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
上記点火プラグに生じた放電が上記絶縁碍子の表面に沿う沿面放電であるか否かを検出する検出手段と、を有し、
上記電圧印加手段は、上記中心電極が正極となるプラス放電電圧と、上記中心電極が負極となるマイナス放電電圧と、を切り替えて上記中心電極と上記接地電極との間に電圧を印加することができるよう構成されており、
上記検出手段が上記沿面放電を検出していない間は、上記電圧印加手段は上記マイナス放電電圧を上記中心電極と上記接地電極との間に印加し、
上記検出手段が上記沿面放電を検出したとき、その後の所定の燃焼サイクルにおいて、上記電圧印加手段が上記プラス放電電圧を上記中心電極と上記接地電極との間に印加するよう構成してあることを特徴とする点火装置にある。
【発明の効果】
【0010】
上記点火装置において、検出手段が沿面放電を検出していない間は、電圧印加手段はマイナス放電電圧を中心電極と接地電極との間に印加する。これにより、中心電極及び接地電極の消耗を抑制しながら、放電ギャップにおける火花放電を生じさせることができる。なお、マイナス放電電圧を印加することにより放電ギャップに生じる火花放電を適宜「マイナス放電」、プラス放電電圧を印加することにより放電ギャップに生じる火花放電を適宜「プラス放電」という。
【0011】
そして、検出手段が沿面放電を検出したとき、その後の所定の燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段がプラス放電電圧を中心電極と接地電極との間に印加する。これにより、繰り返される燃焼サイクルにおいて、異常な火花放電が繰り返されることを防ぐことができる。すなわち、沿面放電が検出されたとき、その後の所定の燃焼サイクルにおいては、沿面放電を招きにくいプラス放電電圧を、中心電極と接地電極との間に印加する。これにより、放電ギャップにおける正常な火花放電を直ぐに取り戻し、内燃機関の正常な運転を確保することができる。
【0012】
また、マイナス放電電圧とプラス放電電圧との間の切り替えは、各燃焼サイクルにおける放電の途中ではなく、燃焼サイクルの間に行うため、切り替えのために特に大きな電流を供給する必要がない。それゆえ、点火装置の設計自由度を向上させることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、内燃機関の正常な運転を確保しつつ、点火プラグの耐久性を向上することができる、設計自由度の高い点火装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1における、点火装置の回路図。
図2】実施形態1における、点火プラグの先端部の側面図。
図3】実施形態1における、正常な放電の電圧波形を示す線図。
図4】実施形態1における、沿面放電の際の電圧波形を示す線図。
図5】実施形態1における、点火装置の動作フロー図。
図6】実施形態2における、点火装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
点火装置の実施形態につき、図1図5を用いて説明する。
点火装置1は、内燃機関の燃焼室の混合気に点火する燃焼サイクルを繰り返すものである。
そして、点火装置1は、図1に示すごとく、点火プラグ2と、電圧印加手段3と、検出手段4と、を有する。
【0016】
点火プラグ2は、図2に示すごとく、互いの間に放電ギャップを設けて対向配置された中心電極21及び接地電極22と、中心電極21を内側に保持する絶縁碍子23とを備えている。
図1に示すごとく、電圧印加手段3は、中心電極21と接地電極22との間に電圧を印加するよう構成されている。
検出手段4は、点火プラグ2に生じた放電が絶縁碍子23の表面に沿う沿面放電であるか否かを検出する。
【0017】
電圧印加手段3は、中心電極21が正極となるプラス放電電圧と、中心電極21が負極となるマイナス放電電圧と、を切り替えて中心電極21と接地電極22との間に電圧を印加することができるよう構成されている。
検出手段4が沿面放電を検出していない間は、電圧印加手段3はマイナス放電電圧を中心電極21と接地電極22との間に印加する。
検出手段4が沿面放電を検出したとき、その後の所定の燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段3はプラス放電電圧を中心電極21と接地電極22との間に印加する。
【0018】
点火装置1は、車両用エンジン等の内燃機関において、混合気への着火手段として用いられる。
点火プラグ2は、内燃機関の燃焼室に先端部が突出するように配設される。図2に示すごとく、点火プラグ2は、内燃機関に螺合するハウジング24の内側に絶縁碍子23が保持され、絶縁碍子23の内側に中心電極21が保持されている。接地電極22は、一端がハウジング24の先端に接合されると共に、他端が中心電極21と軸方向に対向する位置に配された接地母材220と、該接地母材220における中心電極21側の面に接合された接地突起部221とを有する。接地母材220は、例えばニッケル合金からなり、接地突起部221は、例えば白金合金等の貴金属からなる。
【0019】
中心電極21は、絶縁碍子23に保持された中心母材210と、中心母材210の先端に接合された中心突起部211とを有する。中心母材210は、例えばニッケル合金からなり、中心突起部211は、例えばイリジウム合金、白金合金等からなる。
【0020】
上述のごとく、点火装置1は、点火プラグ2に電圧を印加する電圧印加手段3と、点火プラグ2に生じた放電が沿面放電か否かを検出する検出手段4とを有する。
図1に示すごとく、電圧印加手段3は、点火コイル5、第一イグナイタ61及び第二イグナイタ62、エンジン制御装置12によって構成されている。点火コイル5は、二つの一次コイル511、512と、一つの二次コイル52とを有する。
【0021】
各一次コイル511、512は、バッテリ11と接続されており、該バッテリ11からの電流を通電可能である。一次コイル511、512は、二次コイル52と磁気的に結合されており、該二次コイル52との間において相互誘導可能である。また、2つの一次コイル511、512は、互いの巻回方向が逆方向となるように配置されている。ゆえに、一次コイル511、512のうち一方への導通により形成される磁界の方向は、他方への導通により形成される磁界の方向と逆向きとなる。
【0022】
二次コイル52は、点火プラグ2と接続されており、当該二次コイル52に誘導される電圧によって、中心電極21と接地電極22との間に放電電圧を印加する。
【0023】
以上の構成において、一方の一次コイル511は、プラス放電用の一次コイルである。プラス放電用の一次コイル511は、燃焼サイクル毎にバッテリ11からの通電が遮断されることにより、点火プラグ2の中心電極21と接地電極22との間に二次コイル52からプラス放電電圧が印加されるように、二次コイル52に電圧を誘導する。他方の一次コイル512は、マイナス放電用の一次コイルである。マイナス放電用の一次コイル512は、バッテリ11からの通電が遮断されることにより、点火プラグ2の中心電極21及び接地電極22間に二次コイル52からマイナス放電電圧が印加されるように、二次コイル52に電圧を誘導する。これらの通電とその遮断は、第一イグナイタ61及び第二イグナイタ62のスイッチングにより行われる。
【0024】
第一イグナイタ61及び第二イグナイタ62は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)等のスイッチング素子によって構成される。各イグナイタ61、62のIGBTのゲートは、エンジン制御装置12と接続されている。イグナイタ61、62は、エンジン制御装置12からゲートに入力される点火制御信号に基づいて、コレクタ及びエミッタ間における電流の導通及び遮断を切り換える。第一イグナイタ61は、プラス放電用の一次コイル511と接続されており、点火制御信号に基づいて、バッテリ11から当該一次コイル511への通電のオン状態及びオフ状態を切り換える。また、第二イグナイタ62は、マイナス放電用の一次コイル512と接続されており、点火制御信号に基づいて、バッテリ11から当該一次コイル512への通電のオン状態及びオフ状態を切り換える。
【0025】
エンジン制御装置12は、例えばマイクロコンピュータを主体に構成され、記憶領域としてのフラッシュメモリ、演算処理の作業領域としてのRAMを有する制御装置である。エンジン制御装置12は、内燃機関及び当該内燃機関を搭載する車両に設けられた種々のセンサと接続されており、これらのセンサから、例えば出力軸の回転速度、冷却水の温度、燃焼室に吸入される吸入空気量等の検出結果を取得する。エンジン制御装置12は、取得した検出結果、予め構築された制御用のプログラム、及び予め規定された制御用のマップ等に基づいて、内燃機関の稼動を制御する。このようなエンジン制御装置12による演算及び制御の一部が、検出手段4による沿面放電の検出、及び、電圧印加手段3による点火プラグ2への電圧印加の制御である。エンジン制御装置12は、点火コイル5の一次コイル511、512への通電を制御する点火制御信号を、各イグナイタ61、62に出力する。
【0026】
また、検出手段4は、点火プラグ2に印加される電圧を測定する電圧計41を有する。電圧計41によって測定された電圧信号は、エンジン制御装置12に送られる。これにより、エンジン制御装置12において、電圧信号を基に、点火プラグ2に生じた放電が沿面放電か否かを検出する。ゆえに、本例において、検出手段4は、電圧計41とエンジン制御装置12とによって構成される。
【0027】
検出手段4は、各燃焼サイクルにおいて、点火プラグ2に点火信号が送られた時点から所定の時間内に、所定の電圧値以上の電圧が、中心電極21と接地電極22との間に複数回生じたとき、当該放電が沿面放電であると判定するよう構成されている。具体的には、例えば、点火信号が送られた時点から100μ秒間の間に、2回以上、25kV以上の放電電圧が電圧計41によって計測された場合に、沿面放電が生じたと判定する。
例えば、図3に示す電圧波形が、正常な放電時に計測される波形であり、図4に示す電圧波形が、沿面放電が生じた場合に計測される波形である。
なお、点火プラグ2に点火信号が送られた時点とは、本実施形態においては、エンジン制御装置12から第二イグナイタ62に点火信号が送られた時点と同一である。
【0028】
上記のような電圧印加手段3と検出手段4とを備えた点火装置1は、図5に示すフローに沿って動作する。
すなわち、まず、電圧印加手段3は、各燃焼サイクルごとに、マイナス放電電圧を点火プラグ2に印加する。これにより、点火プラグ2の放電ギャップに火花放電(マイナス放電)を生じさせて、混合気に着火して、内燃機関の運転を行う。そして、各燃焼サイクルにおける放電電圧を逐一計測する(ステップS1)。
【0029】
そして、各燃焼サイクルごとに計測された放電電圧を基に、当該放電が沿面放電であるか否かを、検出手段4によって検出する(ステップS2)。当該放電が沿面放電でないと判断された場合には、次の燃焼サイクルにおいても、マイナス放電電圧を点火コイル2に印加する(ステップS1)。一方、当該放電が沿面放電であると判断された場合には、次の燃焼サイクルにおいて、プラス放電電圧を点火コイル2に印加して、プラス放電を生じさせる(ステップS3)。
【0030】
そして、プラス放電を、所定回数(n回)の燃焼サイクル分、繰り返す(ステップS4)。そして、所定回数(n回)、プラス放電の燃焼サイクルを繰り返したのち、再びマイナス放電にて燃焼サイクルを行う(ステップS1)。
このようにして、点火装置1は、通常は、検出手段4にて沿面放電の有無をモニタリングしながらマイナス放電にて燃焼サイクルを繰り返し、沿面放電が検出されたとき、その後の所定の燃焼サイクルをプラス放電にて行う。
【0031】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記点火装置1において、検出手段4が沿面放電を検出していない間は、電圧印加手段3はマイナス放電電圧を中心電極21と接地電極22との間に印加する。これにより、中心電極21及び接地電極22の消耗を抑制しながら、放電ギャップにおける火花放電を生じさせることができる。
【0032】
そして、検出手段4が沿面放電を検出したとき、その後の所定の燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段3がプラス放電電圧を中心電極21と接地電極22との間に印加する。これにより、繰り返される燃焼サイクルにおいて、異常な火花放電が繰り返されることを防ぐことができる。すなわち、沿面放電が検出されたとき、その後の所定の燃焼サイクルにおいては、沿面放電を招きにくいプラス放電電圧を、中心電極21と接地電極22との間に印加する。これにより、放電ギャップにおける正常な火花放電を直ぐに取り戻し、内燃機関の正常な運転を確保することができる。
【0033】
また、マイナス放電電圧とプラス放電電圧との間の切り替えは、各燃焼サイクルにおける放電の途中ではなく燃焼サイクルの間に行うため、切り替えのために特に大きな電流を供給する必要がない。それゆえ、点火装置1の設計自由度を向上させることができる。
【0034】
また、検出手段4は、各燃焼サイクルにおいて、点火プラグ2に点火信号が送られた時点から所定の時間内に、所定の電圧値以上の電圧が、中心電極21と接地電極22との間に複数回生じたとき、当該放電が沿面放電であると判定するよう構成されている。これにより、沿面放電か否かを、容易かつ正確に検出することができる。
【0035】
以上のごとく、本実施形態によれば、内燃機関の正常な運転を確保しつつ、点火プラグの耐久性を向上することができる、設計自由度の高い点火装置を提供することができる。
【0036】
(実施形態2)
本実施形態は、図6に示すごとく、実施形態1に対して、電圧印加手段3の回路構成を変更したものである。
すなわち、本実施形態においては、電圧印加手段3を構成する点火コイル5として、一つの一次コイル51と一つの二次コイル52とからなるものを用いる。そして、二次コイル52の高電位側端子521と低電位側端子522とが、それぞれスイッチ31、32を介して、点火プラグ2に接続されるよう構成されている。スイッチ31は、高電位側端子521の接続先を、点火プラグ2と接地(グランド)との間で切り替えることができるよう構成されている。また、スイッチ32は、低電位側端子522の接続先を、点火プラグ2と接地(グランド)との間で切り替えることができるよう構成されている。なお、高電位側端子521は、一次コイル51への通電の遮断に伴い二次コイル52に電圧が誘起された際に高電位側となる端子であり、低電位側端子522はその反対側の端子である。
【0037】
したがって、マイナス放電電圧を点火プラグ2に印加する際には、高電位側端子521をグランドに接続すると共に、低電位側端子522を点火プラグ2に接続する(図6の状態)。この状態において、イグナイタ6を通電から遮断に切り替えることにより、二次コイル52にマイナス放電電圧を誘起し、点火プラグ2に印加する。
【0038】
一方、プラス放電電圧を点火プラグ2に印加する際には、低電位側端子522をグランドに接続すると共に、高電位側端子521を点火プラグ2に接続する。この状態において、イグナイタ6を通電から遮断に切り替えることにより、二次コイル52にプラス放電電圧を誘起し、点火プラグ2に印加する。
【0039】
このようにして、マイナス放電電圧とプラス放電電圧とを適宜選択して、点火プラグ2に印加することができる。マイナス放電とプラス放電との使い分けは、実施形態1と同様に、検出手段4の検出結果に基づいて行われる。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態1と同じ符号は、同様の構成要素等を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0040】
本実施形態においては、トランス5の構成を簡素化することができると共に、イグナイタの数を減らすことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0041】
以上、それぞれ本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、検出手段が沿面放電を検出した際、必ずしも、当該燃焼サイクルの次の燃焼サイクルからプラス放電電圧に切り替えなくてもよく、例えば、当該燃焼サイクルの次の次の燃焼サイクルから切り替えてもよい。また、電圧印加手段の回路構成についても、上記実施形態に示したものとは異なる回路構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 点火装置
2 点火プラグ
21 中心電極
22 接地電極
23 絶縁碍子
3 電圧印加手段
4 検出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6