(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の圧力式アクチュエータは、本体が水没する場合には、水の浸入を防止することができない。自動車のエンジンルームは下方に向けて開口しているため、冠水路を走行するときにはエンジンルームの下部が水没する。また、エンジンルームのレイアウトでは、他の装置との兼ね合いから圧力式アクチュエータの本体をエンジンルームの下部に配置せざるを得ない場合がある。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、自動車のエンジンルームに配置される圧力式アクチュエータの大気圧室への水の浸入を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、自動車のエンジンルーム(100)に配置される圧力式アクチュエータ(32)であって、変位可能な隔壁(74A)によって互いに区画された圧力室(73A)及び大気圧室(72A)を備えた本体(71A)と、前記隔壁に結合された基端と、前記本体から突出して作動対象に接続される先端とを備えた駆動軸(75A)と、前記圧力室を圧力供給源に接続する圧力供給通路(81)と、前記大気圧室に接続された一端と、大気に向けて開口した開口端(85A)とを備えた呼吸通路(85)とを有し、前記開口端は、前記本体よりも上方に配置されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、呼吸通路の開口端が本体よりも上方に配置されるため、本体が水没する場合にも開口端を水面上に維持することができ、大気圧室への水の浸入を防止することができる。
【0009】
また、上記の発明において、前記エンジンルームには、シリンダブロック(6)に対してシリンダヘッド(7)が上方に配置された内燃機関(1)が設けられ、前記内燃機関は、前記シリンダヘッドの上部に結合されたヘッドカバー(8)と、前記ヘッドカバーの上部を覆い、前記ヘッドカバーとの間に前記エンジンルームと連通した空間(101)を画定するエンジンカバー(9)とを有し、前記開口端は、前記空間内に配置されているとよい。
【0010】
この構成によれば、エンジンルームの上部に配置されるヘッドカバーとエンジンカバーとによって画定される空間内に開口端が配置されるため、開口端が水没する虞が低くなる。また、ヘッドカバー及びエンジンカバーによって開口端が覆われているため、エンジンルーム内において飛散した水滴や粉塵が開口端に侵入し難くなる。
【0011】
また、上記の発明において、前記エンジンルームには、変位可能な隔壁(74B)によって互いに区画された圧力室(73B)及び大気圧室(72B)を備えた本体(71B)を有する他の圧力式アクチュエータ(46)が設けられ、前記他の圧力式アクチュエータの本体(71B)は、当該圧力式アクチュエータの前記本体(71A)よりも上方に配置され、前記開口端は、前記他の圧力式アクチュエータの大気圧室(72B)に接続されているとよい。
【0012】
この構成によれば、開口端が、自身の本体よりも上方に配置された他の圧力式アクチュエータの本体の大気圧室に配置されるため、水没する虞が低くなる。また、他の圧力式アクチュエータの大気圧室に接続されるため、エンジンルーム内において飛散した水滴や粉塵が開口端に侵入し難くなる。
【0013】
また、上記の発明において、前記エンジンルームには、内燃機関(1)が設けられ、前記内燃機関は、燃焼室に空気を供給する吸気装置(14)を有し、前記開口端は、前記吸気装置によって構成される吸気通路に接続されているとよい。
【0014】
この構成によれば、内燃機関の内で比較的水が侵入し難い吸気通路に、呼吸通路の開口端が接続されるため、開口端に水が浸入し難くなる。吸気通路に水が進入するとエンジンストールが発生する虞が高いため、吸気通路の入口はエンジンルームの上部に配置されることが通常である。また、吸気通路内は水滴や粉塵が少ないため、これらが開口端から吸い込まれる虞が低くなる。
【0015】
また、上記の発明において、前記エンジンルームには、第1及び第2過給装置(21、22)を備えた内燃機関(1)が配置され、前記第1過給装置(21)は、前記第2過給装置(22)の下方に、回転軸線が水平方向に延在するように配置されたタービンハウジング(27)と、前記タービンハウジングに受容されたタービンブレード(25)と、前記タービンハウジングに設けられ、前記タービンブレードに供給される排気の圧力を調整する可変ノズル機構(30)とを有し、前記駆動軸の前記先端は、前記可変ノズル機構に結合され、前記本体は、前記タービンハウジングよりも下方に配置されていてもよい。また、前記エンジンルームにおける前記内燃機関の前方にはラジエータ(17)が配置され、前記第1及び第2過給装置は、前記内燃機関の本体(2)と前記ラジエータとの間に配置されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1及び第2過給装置のレイアウトからエンジンルームの下部に配置される圧力式アクチュエータの大気圧室への水の侵入を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成によれば、圧力式アクチュエータの大気圧室への水の浸入を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る圧力式アクチュエータを自動車用エンジンの多段過給装置に適用した各実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、自動車の前進方向を前方として各方向を定める。
【0020】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、自動車のエンジンルーム100に配置される内燃機関1は、内燃機関本体2を有している。内燃機関本体2は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであってよい。内燃機関本体2は、直列に配置された複数の気筒を有する。内燃機関本体2は、シリンダ列が左右に延在するように、車体に対して横置きに配置される。内燃機関本体2は、下側からオイルパン5、シリンダブロック6、シリンダヘッド7、ヘッドカバー8を有する。ヘッドカバー8の上部にはエンジンカバー9が結合されている。エンジンカバー9はヘッドカバー8の上面を覆うように設けられ、ヘッドカバー8との間に空間101を画定する。エンジンカバー9及びヘッドカバー8の間に形成される空間101は、密閉されておらず、エンジンルーム100と連通しており、大気圧となっている。エンジンカバー9の内側(ヘッドカバー8と対向する側)には、ウレタン等からなる吸音材が設けられている。
【0021】
内燃機関本体2は、シリンダ軸線が鉛直線に対して後傾している。シリンダブロック6は、下部が前後に張り出したクランクケース6Aを有し、その右端面にはトランスミッション10が接合されている。
【0022】
シリンダヘッド7には、シリンダブロック6に形成された気筒に連続する吸気ポート及び排気ポートが形成されている。排気ポートはシリンダヘッド7の前側面に開口しており、吸気ポートはシリンダヘッド7の後側面に開口している。
【0023】
シリンダヘッド7の前側面には、各排気ポートに接続する排気マニホールド11が締結されている。排気マニホールド11の下流端には、多段過給装置12の排気側部分が設けられている。なお、各排気ポートがシリンダヘッド7内で集合される場合には、排気マニホールド11はシリンダヘッド7と一体に形成され、多段過給装置12はシリンダヘッド7に直接に接続される。多段過給装置12の排気側部分の下流側には、触媒コンバータ13が接続され、その下流にはDPF、NOx浄化装置、マフラー等が直列に連結されている。
【0024】
吸気ポートには、吸気装置14が接続されている。吸気装置14は、上流側から順にエアインレット、エアクリーナ14A、多段過給装置12の吸気側部分、インタークーラ、スロットルバルブ、吸気マニホールドを直列に有する。吸気装置14及び吸気ポートは、シリンダに燃焼用空気を供給する吸気通路を構成する。吸気装置14は、エアインレットが内燃機関本体2の前側に配置され、内燃機関本体2の左方を通過して後方に延び、吸気マニホールドにおいてシリンダヘッド7の後側面に結合されている。本実施形態では、エアインレットは、予め設定された水没高さWLよりも上方に配置されている。水没高さWLは、車種に応じて設定された路面からの高さであり、自動車が走行可能な冠水路の水深の上限として設定した値である。本実施形態に係る自動車では、水没高さWLは
図2に示すように前輪Wの上端と概ね同じ高さに配置されている。任意の装置は、水没高さWLよりも上方に配置されることによって、自動車の想定される使用態様において水没することはない。
【0025】
図2に示すように、内燃機関本体2の前方にはラジエータ17が配置されている。ラジエータ17は、フィンを有する水管を並列、又は折り曲げて平板状に配設した熱交換部17Aと、熱交換部17Aに空気を供給する箱形の軸流ファンであるファン17Bとを有する。熱交換部17Aは内燃機関本体2の前方において回転軸線が前後を向くように配置され、ファン17Bは熱交換部17Aの後方において主面が前後を向くように配置されている。シリンダブロック6が下部に前後に張り出したクランクケース6Aを有するため、また、内燃機関本体2が後傾して配置されているため、内燃機関本体2の前側とファン17Bの後側との間には、上方に進むほど前後における幅が広くなる空隙18が形成されている。ラジエータ17及び内燃機関本体2の上方には、車体に支持されたエンジンフード19が配置される。空隙18の上端は、エンジンフード19によって画定される。空隙18には、多段過給装置12が配置されている。
【0026】
図1〜
図6に示すように、多段過給装置12は、高圧段過給装置(第1過給装置)21と、低圧段過給装置(第2過給装置)22とを備え、シーケンシャルターボチャージャシステムを構成している。
【0027】
図3に示すように、高圧段過給装置21は、高圧段シャフト24によって同軸かつ一体回転するように連結された高圧段タービンブレード25及び高圧段コンプレッサブレード26と、高圧段タービンブレード25を収容する高圧段タービンハウジング(第1タービンハウジング)27と、高圧段コンプレッサブレード26を収容する高圧段コンプレッサハウジング(第1コンプレッサハウジング)28と、高圧段タービンハウジング27と高圧段コンプレッサハウジング28とを連結すると共に高圧段シャフト24を回転可能に支持する高圧段ベアリングハウジング29とを備えている。高圧段タービンハウジング27及び高圧段コンプレッサハウジング28は、それぞれ中空円盤形状を呈し、それぞれの中心軸が高圧段シャフト24の軸線と同軸となるように、筒状の高圧段ベアリングハウジング29の両端に連結されている。
【0028】
高圧段過給装置21は、高圧段タービンハウジング27に可変ノズル機構30を有する。可変ノズル機構30は、高圧段タービンハウジング27にそれぞれ回転可能に支持された複数の可変ノズルベーン30Aと、各可変ノズルベーン30Aに結合されたリンク部材30Bとを有する。複数の可変ノズルベーン30Aは、高圧段シャフト24の軸線を中心とした円周上に、それぞれの回転軸線が高圧段シャフト24の軸線と平行になり、かつ先端側が高圧段タービンハウジング27の径方向内側を向くように配置されている。リンク部材30Bは、例えば円環形状に形成され、高圧段シャフト24の軸線と同軸に配置されている。リンク部材30Bが変位(回転)することによって、各可変ノズルベーン30Aの向きが変化し、各可変ノズルベーン間に形成される排気の流路断面積が変化する。可変ノズルベーン30Aは、例えば、エンジン回転数が低い場合に流路断面積を絞ることによって、排気圧力(排気流速)を大きくして過給効率を高め、エンジン回転数が高い場合に流路断面積を大きくすることによって排気圧力(排気流速)を下げて排気抵抗を低減する。リンク部材30Bは、第1アクチュエータ32によって駆動される。
【0029】
低圧段過給装置22は、低圧段シャフト33によって同軸かつ一体回転するように連結された低圧段タービンブレード34及び低圧段コンプレッサブレード35と、低圧段タービンブレード34を収容する低圧段タービンハウジング36と、低圧段コンプレッサブレード35を収容する低圧段コンプレッサハウジング37と、低圧段タービンハウジング36と低圧段コンプレッサハウジング37とを連結すると共に低圧段シャフト33を回転可能に支持する低圧段ベアリングハウジング38とを備えている。低圧段タービンハウジング36及び低圧段コンプレッサハウジング37は、それぞれ中空円盤形状を呈し、それぞれの中心軸が低圧段シャフト33の軸線と同軸となるように、筒状の低圧段ベアリングハウジング38の両端に連結されている。低圧段タービンハウジング36は、低圧段コンプレッサハウジング37に比べて径方向に小さく、容積が小さい。低圧段タービンハウジング36は高圧段タービンハウジング27よりも径方向に大きい。
【0030】
高圧段タービンハウジング27の外周部には、排気入口となる管状の第1排気通路部材41の下流端が連結されている。高圧段タービンハウジング27の中心部であって、高圧段ベアリングハウジング29側と相反する側には、排気出口となる管状の排気連結通路部材42の上流端が連結されている。排気連結通路部材42の下流端は、低圧段タービンハウジング36の外周部に連結されており、低圧段タービンハウジング36の排気入口通路となる。低圧段タービンハウジング36の中央部であって、低圧段ベアリングハウジング38側と相反する側には、排気出口となる管状の第2排気通路部材43の下流端が連結されている。
【0031】
また、第1排気通路部材41と排気連結通路部材42とは、高圧段タービンハウジング27を迂回する排気バイパス通路部材44によって連結されている。なお、排気バイパス通路部材44と排気連結通路部材42との連結形態は、様々な形態とすることができる。例えば、排気バイパス通路部材44の下流端を低圧段タービンハウジング36の外周部に連結し、排気バイパス通路部材44に排気連結通路部材42の下流端を連結してもよい。また、排気バイパス通路部材44及び排気連結通路部材42を、それぞれ独立した状態で低圧段タービンハウジング36の外周部に個別に連結してもよい。
【0032】
排気バイパス通路部材44の内部には、排気バイパス弁45が設けられている。排気バイパス弁45は、スイングバルブ(ポペットバルブ)であり、第2アクチュエータ46によって開閉駆動される。
【0033】
図5に示すように、第1排気通路部材41の上流端に形成された接続フランジ部47が、排気マニホールド11の下流端にボルト締結されることによって、排気マニホールド11及び第1排気通路部材41の内部に形成された通路が互いに連通している。第2排気通路部材43の下流端に形成された接続フランジ部48が、触媒コンバータ13の上流端にボルト締結されることによって、第2排気通路部材43及び触媒コンバータ13の内部に形成された通路が互いに連通している。
【0034】
低圧段タービンハウジング36には、排気連結通路部材42と第2排気通路部材43とを直接に接続し、低圧段タービンハウジング36の内部を迂回するウェイストゲート通路51が形成され、ウェイストゲート通路51にはウェイストゲートバルブ52が設けられている。ウェイストゲートバルブ52は、ウェイストゲート通路51に流入する排気量を調節し、低圧段タービンハウジング36に流入する排気量を調節する。ウェイストゲートバルブ52は、スイングバルブであり、第3アクチュエータ54によって開閉駆動される。
【0035】
低圧段コンプレッサハウジング37は、その中央部であって、低圧段ベアリングハウジング38側とは相反する側に吸気入口となる第1吸気通路部材61の下流端が接続され、その外周部に吸気出口となる吸気連結通路部材62の上流端が接続されている。高圧段コンプレッサハウジング28は、その高圧段ベアリングハウジング29側とは相反する中心部に吸気入口となる吸気連結通路部材62の下流端が接続され、その外周部に吸気出口となる第2吸気通路部材63の上流端が接続されている。第1吸気通路部材61の上流側は、エアクリーナ14Aの下流側に接続されている。第2吸気通路部材63の下流側は、インタークーラ、吸気マニホールドを順に介してシリンダヘッド7に接続されている。
【0036】
吸気連結通路部材62と第2吸気通路部材63とは、高圧段コンプレッサハウジング28を迂回する吸気バイパス通路部材64によって互いに接続されている。吸気バイパス通路部材64の内部には、吸気バイパス弁65が設けられている。吸気バイパス弁65は、スイングバルブであり、第4アクチュエータ66によって開閉駆動される。吸気バイパス弁65は、吸気バイパス通路部材64に流入する吸気量を調節し、高圧段コンプレッサハウジング28に流入する吸気量を調節する。
【0037】
図4に示すように、高圧段過給装置21と低圧段過給装置22とは、高圧段シャフト24の軸線と低圧段シャフト33の軸線とが互いに平行となり、かつ左右方向に延在するように配置されている。また、高圧段コンプレッサハウジング28に対して高圧段タービンハウジング27が設けられた方向と、低圧段コンプレッサハウジング37に対して低圧段タービンハウジング36が設けられた方向とが同一方向となっている。高圧段過給装置21は、低圧段過給装置22に対して、下方に配置されると共に、軸線方向に左方に偏倚して配置されている。また、正面視において、高圧段タービンハウジング27と低圧段コンプレッサハウジング37とは上下に互いに重なり合う部分を有するように配置されている。また、高圧段コンプレッサハウジング28の径が最大となる部分と、低圧段コンプレッサハウジング37の径が最大となる部分とが、軸線方向に偏倚して互いに干渉しないように、高圧段過給装置21の低圧段過給装置22に対する位置が定められている。また、
図5及び
図6に示すように、高圧段過給装置21は、低圧段過給装置22に対して、前方に配置されている。詳細には、高圧段シャフト24の軸線は、低圧段シャフト33の軸線よりも前方に配置されている。これにより、
図2に示すように、多段過給装置12は、後傾した内燃機関本体2の前側面に沿うように配置することができ、空隙18内に収まるように配置される。以上の配置において、高圧段過給装置21と低圧段過給装置22とは、吸気連結通路部材62及び排気連結通路部材42の屈曲が大きくならない範囲で、多段過給装置12全体のサイズをコンパクトにするために互いに近接して配置されている。
【0038】
可変ノズル機構30を駆動する第1アクチュエータ32と、排気バイパス弁45を駆動する第2アクチュエータ46と、ウェイストゲートバルブ52を駆動する第3アクチュエータ54と、吸気バイパス弁65を駆動する第4アクチュエータ66とは、それぞれ圧力式アクチュエータである。以下、各アクチュエータ32、46、54、66の構成において、第1アクチュエータ32の構成は符号に添字Aを付し、第2アクチュエータ46の構成は符号に添字Bを付し、第3アクチュエータ54の構成は符号に添字Cを付し、第4アクチュエータ66の構成は符号に添字Dを付す。また、各アクチュエータ32、46、54、66に共通する事項を説明する場合には、添字を省略して説明する。
【0039】
図7を参照して、第1アクチュエータ32の構成を代表して説明する。第2〜第4アクチュエータ46、54、66は、概ね第1アクチュエータ32と同様の構成であるため、対応する構成には対応する番号とそれぞれ添え字を付して、説明を省略する。
図7に示すように、第1アクチュエータ32は、内室を有する中空の本体71Aと、本体71Aの内室を大気圧室72Aと圧力室73Aとに区画する隔壁74Aと、隔壁74Aに結合された基端と、本体71Aから突出して作動対象に接続される先端とを備えた駆動軸75Aとを有する。
【0040】
隔壁74Aは、本体71A内において変位可能であり、大気圧室72A及び圧力室73Aの圧力差に応じて大気圧室72A及び圧力室73Aの体積を変化させる。本実施形態では、隔壁74Aは可撓性を有するダイヤフラムであり、縁部が本体71Aに結合されている。他の実施形態では、隔壁74Aは本体71Aの内室に摺動可能に設けられたピストンであってもよい。
【0041】
駆動軸75Aは、隔壁74Aに結合された基端から大気圧室72A内を通過して本体71Aの外方に突出している。本体71Aには、駆動軸75Aが通過する貫通孔76Aが形成され、貫通孔76Aには駆動軸75Aとの間を液密にシールするシール部材77Aが設けられている。また、貫通孔76Aの外方を覆うように、蛇腹形状のブーツ78Aが駆動軸75Aと本体71Aの外面とに設けられている。
【0042】
圧力室73Aは、圧力供給通路81Aを形成する圧力供給通路部材82Aによって図示しない圧力供給源に接続されている。本実施形態では、圧力供給源は公知の負圧ポンプであり、負圧を圧力室73Aに供給する。圧力供給通路部材82Aは、本体71Aに形成された孔や、管等を組み合わせて形成される。圧力供給源は、各アクチュエータ32、46、54、66に対して共通に1つ設けられているとよい。圧力供給通路81Aには、図示しない圧力制御弁が設けられ、圧力室73Aに供給される負圧が制御される。
【0043】
本体71Aは、本体71Aの外面から大気圧室72Aに延びる貫通孔である呼吸孔83Aを有している。呼吸孔83Aによって大気圧室72Aは大気圧に維持される。
【0044】
圧力室73Aには、隔壁74Aを大気圧室72A側に付勢する付勢部材84Aが設けられている。本実施形態では、付勢部材84Aは圧縮コイルばねであり、隔壁74Aの圧力室73A側部分に当接した一端と、本体71Aの隔壁74Aと対向する部分に当接した他端とを有している。付勢部材84Aにより、圧力室73Aに圧力が供給されていない初期状態では、隔壁74Aは大気圧室側に位置し、駆動軸75Aは最も突出した位置にある。圧力供給通路81Aを介して圧力室73Aに負圧が供給されると、隔壁74Aは付勢部材84Aの付勢力に抗して圧力室73A側に移動し、駆動軸75Aの突出長さが小さくなる。
【0045】
図4〜
図6に示すように、第1アクチュエータ32の本体71Aは、高圧段コンプレッサハウジング28に結合された支持部材87Aに支持されている。第1アクチュエータ32の駆動軸75Aの先端は、可変ノズル機構30のリンク部材30Bに結合されている。駆動軸75Aの先端に対して本体71Aが下方に配置され、かつ駆動軸75Aが高圧段タービンハウジング27の接線方向に延びるように、第1アクチュエータ32は高圧段過給装置21に対して配置されている。第1アクチュエータ32の本体71Aは、高圧段タービンハウジング27よりも下方に配置され、エンジンルーム100における比較的下方に配置される。本実施形態では、第1アクチュエータ32の本体71Aは、水没高さWLよりも下方に配置される。そのため、第1アクチュエータ32の本体71Aは、自動車の想定される使用態様において水没する虞がある。第1アクチュエータ32は、圧力室73Aに供給される負圧に応じて駆動軸75Aの突出長さを変化させ、リンク部材30Bの回転位置を変化させる。
【0046】
第2アクチュエータ46の本体71Bは、高圧段コンプレッサハウジング28に結合された支持部材87Bに支持されている。第3アクチュエータ54の本体71Cは、低圧段コンプレッサハウジング37に接合された支持部材87Cに支持されている。第4アクチュエータ66の本体71Dは、高圧段コンプレッサハウジング28に接合された支持部材87Dに支持されている。第2〜第4アクチュエータ46、54、66の本体71B〜71Dは、第1アクチュエータ32の本体71Aよりも上方、かつ水没高さWLよりも上方に配置されている。そのため、第2〜第4アクチュエータ46、54、66の本体71B〜71Dは、自動車の想定される使用態様において水没する虞がない位置に配置されている。
【0047】
第1アクチュエータ32は、呼吸孔83Aを介して大気圧室72Aに接続された一端と、大気に向けて開口した開口端85Aとを備えた呼吸通路85を有する。呼吸通路85は、管部材からなる呼吸通路部材86によって形成されている。呼吸通路部材86は、複数の金属管や樹脂管、ゴム管を繋ぎ合わせて形成されてよく、適所において高圧段コンプレッサハウジング28や低圧段コンプレッサハウジング37、ヘッドカバー8、エンジンカバー9等に支持部材を介して支持されている。呼吸通路85の開口端85Aは、本体71Aよりも上方に配置されている。また、呼吸通路85の開口端85Aは、エンジンルーム100の上部であって、水没高さWLよりも上方に配置されている。本実施形態では、呼吸通路85の開口端85Aは、エンジンカバー9の内側、すなわちエンジンカバー9とヘッドカバー8とによって画定される空間101に配置されている。
【0048】
本実施形態では、内燃機関本体2及びラジエータ17の間の空隙18に多段過給装置12を配置するために、第1アクチュエータ32の本体71Aがエンジンルーム100の下部の水没の虞が生じる位置に配置される。しかしながら、第1アクチュエータ32は呼吸通路85を有し、開口端85Aが本体71Aよりも上方に配置されているため、本体71Aが水没する場合にも開口端85Aを水面上に維持することができ、大気圧室72Aへの水の浸入を防止することができる。
【0049】
また、エンジンルーム100の上部に配置されるヘッドカバー8とエンジンカバー9とによって画定される空間101内に開口端85Aが配置されるため、開口端85Aが水没する虞が低くなる。また、ヘッドカバー8及びエンジンカバー9によって開口端85Aが覆われているため、飛散した水滴や粉塵が開口端85Aに侵入し難くなる。
【0050】
第1実施形態の一部変形実施例として、開口端85Aを吸気装置14の吸気通路に接続させてもよい。この場合、開口端85Aは、吸気通路におけるエアクリーナ14Aの下流側かつ低圧段過給装置22の上流側に接続されることが好ましい。吸気装置14は、水没を避けるためにエンジンルーム100の上部に配置されるため、吸気通路に開口端85Aを接続させることで開口端85Aへの水の浸入を防止することができる。また、エアクリーナ14Aを通過することによって空気から粉塵等の異物が取り除かれるため、開口端85Aに異物が進入することも防止することができる。
【0051】
第1実施形態の他の一部変形実施字形体として、
図8に示すように、呼吸通路85の開口端85Aを第2アクチュエータ46の大気圧室72Bに接続させてもよい。これにより、大気圧は、第2アクチュエータ46の呼吸孔83B、大気圧室72B、及び呼吸通路85を順に通過して第1アクチュエータ32の大気圧室72Aに供給される。上記したように、第2アクチュエータ46の本体71Bは、第1アクチュエータ32の本体71Aよりも上方に配置されているため、水没の可能性が低い。また、第2アクチュエータ46の本体71Bは、水没高さWLより上方に配置されているため、自動車の想定される使用態様において水没する虞がない。なお、呼吸通路85の開口端85Aは、第2アクチュエータ46の大気圧室72Bに代えて、第3アクチュエータ54の大気圧室72C又は第4アクチュエータ66の大気圧室72Dに接続させてもよい。また、呼吸通路85の開口端85Aは、エンジンルーム100に配置された他の圧力式アクチュエータであって、本体が第1アクチュエータ32の本体71Aよりも上方に配置された圧力式アクチュエータの大気圧室72に接続させてもよい。このようなアクチュエータは、例えば排気通路から吸気通路に排気の一部を還流するEGR通路に設けられたEGR弁を開閉するアクチュエータであってもよい。
【0052】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、多段過給装置12に設けられる圧力式アクチュエータに本発明を適用した例を示したが、本発明はエンジンルーム100に配置された様々な装置に使用される圧力式アクチュエータに適用することができる。例えば、EGR弁を開閉するアクチュエータに本発明を適用してもよい。