特許第6427443号(P6427443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427443
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】モータの駆動制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20181112BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   B62D5/04
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-49661(P2015-49661)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-171664(P2016-171664A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】岳 暁飛
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/010061(WO,A1)
【文献】 特開2011−176998(JP,A)
【文献】 特開2004−317905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子に2つの巻線組を備えたモータを巻線組毎に個別に駆動制御するように構成された、モータの駆動制御ユニットであって、
第1の巻線組の各巻線を駆動する第1インバータ回路、及び第2の巻線組の各巻線を駆動する第2インバータ回路が形成されたインバータ基板と、
前記第1インバータ回路を制御する第1制御器を含む第1制御回路、及び前記第2インバータ回路を制御する第2制御器を含む第2制御回路が形成された制御基板と、
前記インバータ基板及び前記制御基板が内部に並設される筐体と、
を含んで構成され、
前記制御基板の表面及び裏面のうち、一面側には前記第1制御回路を位置させ、他面側には前記第2制御回路を位置させて、前記一面側に位置する前記第1制御回路の発熱部品と前記他面側に位置する前記第2制御回路の発熱部品とが、平面視で重畳しないように表面実装されている、モータの駆動制御ユニット。
【請求項2】
前記第1制御回路及び前記第2制御回路は、平面視で線対称となる同一の導電パターンで形成されている、請求項1に記載のモータの駆動制御ユニット。
【請求項3】
固定子に2つの巻線組を備えたモータを巻線組毎に個別に駆動制御するように構成された、モータの駆動制御ユニットであって、
第1の巻線組の各巻線を駆動する第1インバータ回路、及び第2の巻線組の各巻線を駆動する第2インバータ回路が形成されたインバータ基板と、
前記第1インバータ回路を制御する第1制御器を含む第1制御回路、及び前記第2インバータ回路を制御する第2制御器を含む第2制御回路が形成された制御基板と、
前記インバータ基板及び前記制御基板が内部に並設される筐体と、
を含んで構成され、
前記制御基板の表面及び裏面のうち、一面側には前記第1制御回路を位置させ、他面側には前記第2制御回路を位置させ、
前記制御基板は、前記第1制御回路が形成される第1制御回路層、前記第2制御回路が形成される第2制御回路層、及び前記第1制御回路層と前記第2制御回路層とを電気的に絶縁する絶縁層を含む複数の層を積層した多層基板として形成され、
前記第1制御回路層に表面実装される前記第1制御器と前記第2制御回路層に表面実装される前記第2制御器との間で通信を行う通信線のみが、前記絶縁層を貫通して形成されている、モータの駆動制御ユニット。
【請求項4】
前記一面側に位置する前記第1制御回路の発熱部品と前記他面側に位置する前記第2制御回路の発熱部品とが、平面視で重畳しないように表面実装されている、請求項3に記載のモータの駆動制御ユニット。
【請求項5】
前記第1制御回路及び前記第2制御回路は、平面視で線対称となる同一の導電パターンで形成されている、請求項4に記載のモータの駆動制御ユニット。
【請求項6】
前記制御基板は、前記絶縁層の両側にグランド層が積層されている、請求項3〜請求項5のいずれか1つに記載のモータの駆動制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを駆動するインバータ回路が形成されたインバータ基板とインバータ回路を制御する制御回路が形成された制御基板とを筐体に収容して構成される、モータの駆動制御ユニットに関し、詳しくは、モータの駆動制御系統を冗長化させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動制御ユニットには、例えば、モータを駆動源として操舵補助力を発生させる電動パワーステアリングに適用された場合、車両の自動運転や機能安全等の要求から、異常発生時でも電動パワーステアリングの機能を維持するために、モータの駆動制御系統を2つにして冗長化し、2つの巻線組を備えたモータを巻線組毎に個別に駆動制御できるようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなモータの駆動制御ユニットでは、2つのインバータ回路が設けられたインバータ基板と、インバータ回路を個別に駆動する2つの制御系統を備えた制御基板と、が対向した状態で筐体に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−176998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パワー系のインバータ基板では、インバータ回路を構成する半導体スイッチのモジュール化等により実装密度を向上させることが可能であるので、モータの駆動制御系統を冗長化させても、インバータ基板の面積増大を抑制することは比較的容易である。
【0005】
しかしながら、信号系の制御基板では、インバータ回路の制御以外に、駆動制御ユニットの適用対象に応じて様々な制御が想定され、インバータ基板と比較するとモジュール化の可能範囲は狭くなる傾向にある。このため、制御基板では、モータの駆動制御系統を冗長化させると、実装部品点数や配線パターン面積が比例的に増加するので、制御基板の面積増大を抑制することは比較的困難である。そして、制御基板の面積が増大すると、駆動制御ユニットの体格が大型化してしまい、車載レイアウトの自由度に影響を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、モータの駆動制御系統の冗長化に伴う制御基板の面積増大を抑制した、モータの駆動制御ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明に係るモータの駆動制御ユニットの一態様では、固定子に2つの巻線組を備えたモータを巻線組毎に個別に駆動制御するように構成されていることを前提として、第1の巻線組の各巻線を駆動する第1インバータ回路、及び第2の巻線組の各巻線を駆動する第2インバータ回路が形成されたインバータ基板と、第1インバータ回路を制御する第1制御器を含む第1制御回路、及び第2インバータ回路を制御する第2制御器を含む第2制御回路が形成された制御基板と、インバータ基板及び制御基板が内部に並設される筐体と、を含んで構成され、制御基板の表面及び裏面のうち、一面側には第1制御回路を位置させ、他面側には第2制御回路を位置させて、一面側に位置する第1制御回路の発熱部品と他面側に位置する第2制御回路の発熱部品とが、平面視で重畳しないように表面実装されている
また、本発明に係るモータの駆動制御ユニットの別態様では、固定子に2つの巻線組を備えたモータを巻線組毎に個別に駆動制御するように構成された、モータの駆動制御ユニットであって、第1の巻線組の各巻線を駆動する第1インバータ回路、及び第2の巻線組の各巻線を駆動する第2インバータ回路が形成されたインバータ基板と、第1インバータ回路を制御する第1制御器を含む第1制御回路、及び第2インバータ回路を制御する第2制御器を含む第2制御回路が形成された制御基板と、インバータ基板及び制御基板が内部に並設される筐体と、を含んで構成され、制御基板の表面及び裏面のうち、一面側には第1制御回路を位置させ、他面側には第2制御回路を位置させ、制御基板は、第1制御回路が形成される第1制御回路層、第2制御回路が形成される第2制御回路層、及び第1制御回路層と第2制御回路層とを電気的に絶縁する絶縁層を含む複数の層を積層した多層基板として形成され、第1制御回路層に表面実装される第1制御器と第2制御回路層に表面実装される第2制御器との間で通信を行う通信線のみが、絶縁層を貫通して形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るモータの駆動制御ユニットによれば、モータの駆動制御系統の冗長化に伴う制御基板の面積増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電動パワーステアリングシステムの一例を示す概略構成図である。
図2】電動ユニットの一例を示す分解斜視図である。
図3】駆動制御ユニット及びモータの回路構成の一例を示す回路ブロック図である。
図4】制御基板の多層構造を模式的に示す展開斜視図である。
図5】制御基板の立体配線構造を模式的に示す断面図である。
図6】制御基板における電子部品の実装位置を模式的に示す平面図であり、(a)は表面の実装位置であり、(b)は表面から透視した裏面の実装位置である。
図7図6における電子部品の実装位置の別例を模式的に示す平面図であり、(a)は表面の実装位置であり、(b)は表面から透視した裏面の実装位置である。
図8】制御基板における導電パターンを表面から透視して模式的に示す平面図であり、(a)は第1制御回路の第3層における導電パターンであり、(b)が第2制御回路の第3層における導電パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明に係るモータの駆動制御ユニットの一実施形態を示し、車両用の電動パワーステアリングシステムにおいて操舵補助力を発生するモータの駆動制御系に適用した例を示す。
【0011】
電動パワーステアリングシステム100は、車両1に備えられ、操舵補助力をモータ110によって発生させるシステムである。
電動パワーステアリングシステム100は、モータ110、ステアリングホイール120、操舵トルクセンサ130、操舵角度センサ140、インバータを含む駆動制御ユニット150、及び、モータ110の回転を減速してステアリングシャフト160(ピニオンシャフト)に伝達する減速機170を含んで構成される。
操舵トルクセンサ130、操舵角度センサ140及び減速機170は、ステアリングシャフト160を内包するステアリングコラム180内に設けられる。
【0012】
ステアリングシャフト160の先端にはピニオンギア190aが設けられていて、このピニオンギア190aが回転すると、ラックギア190bが車両1の進行方向に対して左右に水平移動する。ラックギア190bの両端にはそれぞれ車輪200の操舵機構210が設けられており、ラックギア190bが水平移動することで車輪200の向きが変えられる。
【0013】
操舵トルクセンサ130は、車両1の運転者がステアリング操作を行うことでステアリングシャフト160に発生する操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクの検出信号STを駆動制御ユニット150に出力する。
操舵角度センサ140は、車両1の運転者がステアリング操作を行うことでステアリングホイール120を回転させたときのステアリングシャフト160の回転角度を操舵角度として検出し、検出した操舵角度の検出信号SAを駆動制御ユニット150に出力する。
【0014】
マイクロコンピュータ(演算処理装置)を備える駆動制御ユニット150には、操舵トルク信号ST及び操舵角度信号SAや、車速センサ220が出力する車速の信号VSPなどの操舵補助力の決定に用いる状態量の情報が入力される。
【0015】
そして、駆動制御ユニット150は、操舵トルク信号ST、操舵角度信号SA、車速信号VSPなどの車両1の運転状態に基づいてモータ110を制御し、モータ110の発生するトルクを介して操舵補助力を制御する。本実施形態において、駆動制御ユニット150は、モータ110と一体的に組み立てられて電動ユニット230を構成している。
【0016】
図2は、電動ユニット230の分解斜視図を示す。
電動ユニット230を構成するモータ110は、図示省略のステータ(固定子)を内部に固定し、ステータの中央部に形成した空間で回転可能に後述のロータ(永久磁石回転子)を保持したモータハウジング110aと、ロータに固定されて回転力を減速機170に伝達するシャフト110bと、駆動制御ユニット150とステータに巻き回された巻線(図示省略)とを電気的に接続するモータ端子110cと、を含んでなる。シャフト110bは、減速機170のウォームホイールと噛合するウォームシャフトとして形成されている。
【0017】
電動ユニット230を構成する駆動制御ユニット150は、モータ110を駆動するインバータ回路が形成されたインバータ基板10と、インバータ回路を制御する制御回路が形成された制御基板20と、箱状に形成されたケース30と、ケース30と接合可能に形成され、接合によりケース30の開口を液密に塞ぐカバー40と、外部の電源から駆動制御ユニット150の各部へ電源を供給するとともに、各種信号を入力する電気コネクタ50と、を含んでなる。
【0018】
ケース30及びカバー40は接合により内部空間を有する筐体を構成する。
ケース30の底部には、モータ110及び電気コネクタ50がそれぞれ密接に嵌め込まれる開口部30a,30bがさらに形成されている。このうちモータ110については、軸方向の一端部が開口部30aに嵌め込まれて、ケース30及びカバー40で構成される筐体の内部空間に臨んだ状態で固定される。モータ110のモータ端子110cは、開口部30aを通してインバータ基板10のインバータ回路と直接接続される。
【0019】
また、ケース30及びカバー40は、これらによって構成される筐体の内部空間において、モータ110の前記一端部に面して制御基板20が位置し、かつ、この制御基板20に対向してインバータ基板10が位置した状態で、制御基板20及びインバータ基板10を収容・固定するように構成されている。これにより、ケース30及びカバー40で構成される筐体の内部に、制御基板20及びインバータ基板10が並設される。
【0020】
制御基板20には、例えば、ガラスエポキシ基板等、電子部品の表面実装が可能なプリント基板が用いられるのに対し、インバータ基板10には、特に限定するものではないが、インバータ回路で生じた熱の放熱性を考慮して、金属基板を用いることができる。
【0021】
なお、本実施形態において、モータ110と駆動制御ユニット150とは、一体的に組み立てられて電動ユニット230を構成するものとしているが、他の実施形態では、モータ110と駆動制御ユニット150とは、離れた位置で互いに別体のユニットとして構成されていてもよい。このような実施形態では、駆動制御ユニット150のケース30には開口部30aが形成されず、モータ端子110cは電気コネクタ50を介して駆動制御ユニット150内のインバータ回路と電気的に接続される。
【0022】
図3は、モータ110及び駆動制御ユニット150の回路構成の一例を示す。
モータ110は、スター結線される3相巻線UA,VA,WAからなる第1巻線組CAと、同じくスター結線される3相巻線UB,VB,WBからなる第2巻線組CBとを有する3相同期電動機である。第1巻線組CAにおいて3相巻線UA,VA,WAが接続された点、及び第2巻線組CBにおいて3相巻線UB,VB,WBが接続された点は、それぞれ中性点をなす。第1巻線組CA及び第2巻線組CBは、図示省略したステータに互いに絶縁された状態で設けられて、第1巻線組CAと第2巻線組CBとは磁気回路を共有している。また、ステータの中央部には、前述したように、1つのロータ110Rが回転可能に備えられている。
【0023】
駆動制御ユニット150は、第1巻線組CAの各巻線UA,VA,WAを駆動制御する第1駆動制御系と、第2巻線組CBの各巻線UB,VB,WBを駆動制御する第2駆動制御系と、で構成され、車両1の自動運転や機能安全等の要求に応じて電動パワーステアリングの機能を維持するために、モータ110の駆動制御系統を2つにして冗長化している。そして、駆動制御ユニット150に接続される操舵トルクセンサ130及び操舵角度センサ140についても、第1駆動制御系と第2駆動制御系とで異なり、第1駆動制御系には操舵トルクセンサ130A及び操舵角度センサ140Aが接続され、第2駆動制御系には、操舵トルクセンサ130B及び操舵角度センサ140Bが接続されている。また、電源バッテリ240からの電源供給も電気コネクタ50で駆動制御系統毎に分けられている。ただし、駆動制御ユニット150に対して、車速信号VSPを出力する車速センサ220は共通している。
【0024】
駆動制御ユニット150には前述のようにインバータ基板10が収容され、このインバータ基板10に形成されたインバータ回路は、第1駆動制御系の第1インバータ回路12Aと第2駆動制御系の第2インバータ回路12Bとを有している。また、インバータ基板10には、第1インバータ回路12A及び第2インバータ回路12B以外に、電源リレー14A及び電源リレー14Bと、電流センサ16A及び電流センサ16Bと、が設けられている。
【0025】
第1インバータ回路12Aは、モータ端子110cを介して第1巻線組CA(3相巻線UA,VA,WA)と接続され、電源バッテリ240からの直流電力を変換して、3相巻線UA,VA,WAへそれぞれ交流電力を供給する。また、第2インバータ回路12Bはモータ端子110cを介して第2巻線組CB(3相巻線UB,VB,WB)と接続され、電源バッテリ240からの直流電力を変換して、3相巻線UB,VB,WBへそれぞれ交流電力を供給する。
【0026】
第1インバータ回路12Aは、第1巻線組CAのU相巻線UA、V相巻線VA及びW相巻線WAをそれぞれに駆動する3組の半導体スイッチを備えた3相ブリッジ回路からなる。また、第2インバータ回路12Bは、第2巻線組CBのU相巻線UB、V相巻線UB及びW相巻線WBをそれぞれに駆動する3組の半導体スイッチを備えた3相ブリッジ回路からなる。半導体スイッチは、例えば、FET(Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタ等、外部からの制御信号に応じてオン・オフするスイッチ動作が可能な、半導体を用いた電子部品である。
【0027】
モータ110は、通常時、第1インバータ回路12A及び第2インバータ回路12Bの2つのインバータ回路の合計出力で駆動されるようになっており、これにより、モータ110は、電動パワーステアリングシステム100において要求される操舵補助力に応じたトルクを発生するようになっている。第1インバータ回路12Aと第2インバータ回路12Bとの出力比率は、通常時、例えば、50%対50%に設定される。
【0028】
電源リレー14Aは、電源バッテリ240と第1インバータ回路12Aとの間に設けられ、所定の場合に、第1インバータ回路12Aへの電源供給を遮断するように構成されている。また、電源リレー14Bは、電源バッテリ240と第2インバータ回路12Bとの間に設けられ、所定の場合に、第2インバータ回路12Bへの電源供給を遮断するように構成されている。電源リレー14A,14Bは、第1インバータ回路12A及び第2インバータ回路12Bの半導体スイッチと同様に、外部からの制御信号に応じてオン・オフするスイッチ動作が可能な、半導体を用いた電子部品である。
【0029】
電流センサ16Aは、第1インバータ回路12Aの通電状態を検出するために、電源バッテリ240と第1インバータ回路12Aとを結ぶ正側母線18pA、及び第1インバータ回路12Aとグランドとを結ぶグランド側母線18mAのうち、例えば、グランド側母線18mAにシャント抵抗を直列に介挿し、このシャント抵抗の両端電位差を検出できるようにした電流検出器である。また、電流センサ16Bは、第2インバータ回路12Bの通電状態を検出するために、正側母線18pB及びグランド側母線18mBのうち、例えば、グランド側母線18mBにシャント抵抗を直列に介挿し、このシャント抵抗の両端電位差を検出できるようにした電流検出器である。
【0030】
駆動制御ユニット150には、前述のようにインバータ基板10と対向して制御基板20が収容され、この制御基板20に形成された制御回路は、第1駆動制御系の第1制御回路20Aと第2駆動制御系の第2制御回路20Bとを有している。第1制御回路20Aは、磁極位置センサ22A、電源IC(Integrated Circuit)24A、マイクロコンピュータ26A(第1制御器)及びプリドライバ28Aを備えて構成される。
なお、第2制御回路20Bは、磁極位置センサ22B、電源IC24B、マイクロコンピュータ26B(第2制御器)及びプリドライバ28Bを備えて構成されているが、第2制御回路20Bの各構成は、第1制御回路20Aの各構成と同様の機能を奏するので、以下、重複する説明を省略する。
【0031】
磁極位置センサ22Aは、ロータ110Rの磁極位置を検出する位置検出器であり、本実施形態では、一例として、モータ110の前記一端部(ロータ110R)の近傍で制御基板20に実装される磁気抵抗素子であるが、これに限定されず、制御基板20に実装されたホール素子やホールIC等、あるいは、モータ110のシャフト110bに接続されたレゾルバ等であってもよい。磁極位置センサ22Aは、回転するロータ110Rの磁極位置に応じた磁極位置検出信号をマイクロコンピュータ26Aに出力する。
なお、磁極位置センサ22Aを制御基板20に実装しない場合(例えば、レゾルバ等を使用する場合)には、モータ110に対する制御基板20とインバータ基板10との位置関係を入れ替えてもよい。
【0032】
電源IC24Aは、電源バッテリ240から電気コネクタ50を介して電源供給を受け、電源バッテリ20の電源電圧を、マイクロコンピュータ26A及び磁極位置センサ22Aの動作電圧へ調整してこれを供給する機能を有する。また、電源IC24Aは、電気コネクタ50を介して、駆動制御ユニット150の外部に配置される操舵トルクセンサ130A及び操舵角度センサ140Aに対しても、電源を供給している。
【0033】
マイクロコンピュータ26Aは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インタフェース、通信インタフェース等を備え、ROM等に保存されたプログラムを実行することで、以下の機能を奏するように構成されている。
すなわち、マイクロコンピュータ26Aは、電気コネクタ50を介して入力した、操舵トルクの検出信号ST、操舵角度の検出信号SA及び車速信号VSPに基づいて要求される操舵補助力を算出し、要求される操舵補助力に応じて、モータ110のトルクを発生できるように、第1インバータ回路12Aのグランド側母線18mAに流れる電流の目標値である目標電流値を算出する。そして、マイクロコンピュータ26Aは、第1インバータ回路12A及び第2インバータ回路12Bの通常時の出力比率をROM等のメモリから読み出して、この出力比率に応じて目標電流値を補正し、補正目標電流値を算出する。例えば、通常時の出力比率が50%対50%で設定されている場合、マイクロコンピュータ26Aは、目標電流値を半分の値に補正する。
【0034】
また、マイクロコンピュータ26Aは、電流センサ16Aのシャント抵抗の両端と電気的に接続されて、両端間の電位差に基づいて、第1インバータ回路12Aのグランド側母線18mAに実際に流れる電流の値である実電流値を算出し、補正目標電流値と実電流値との偏差に基づいて、第1インバータ回路12Aの半導体スイッチをPWM動作でオン・オフさせる時間の割合であるデューティ比を算出する。さらに、マイクロコンピュータ26Aは、磁極位置検出信号からロータ110Rの磁極位置を算出する。そして、マイクロコンピュータ26Aは、磁極位置とデューティ比とに応じたPWM制御信号を出力する。
【0035】
プリドライバ28Aは、マイクロコンピュータ26Aからの指令信号(PWM制御信号)に応じて第1インバータ回路12Aの3相ブリッジ回路を構成する半導体スイッチを駆動する回路である。
【0036】
このように、駆動制御ユニット150において、第1駆動制御系は、第1巻線組CAの各巻線UA,VA,WAを駆動する第1インバータ回路12Aと、第1インバータ回路12Aを制御する第1制御回路20Aと、で構成され、第2駆動制御系は、第2巻線組CBの各巻線UB,VB,WBを駆動する第2インバータ回路12Bと、第2インバータ回路12Bを制御する第2制御回路20Bと、で構成されている。
【0037】
マイクロコンピュータ26Aは、電流センサ16Aにより検出された実電流値のピーク値が所定時間継続したときに過電流が発生していると診断する等、第1駆動制御系について異常が発生しているか否かを診断する種々公知の異常診断機能を有している。マイクロコンピュータ26Bも同様の異常診断機能を有している。
【0038】
例えば、マイクロコンピュータ26Aが第1駆動制御系に異常が発生していると診断した場合には、プリドライバ28Aを介して電源リレー14Aを直ちにオフにして、電源バッテリ240から第1インバータ回路12Aへの電源供給を遮断し、第1巻線組CAへのインバータ出力を停止させる。このとき、マイクロコンピュータ26Aは、目標電流値・実電流値の演算等、各種の演算処理を中止してもよい。
【0039】
また、マイクロコンピュータ26Aとマイクロコンピュータ26Bとの間には、通信線CLが設けられており、マイクロコンピュータ26Aが第1駆動制御系に異常が発生していると診断した場合には、マイクロコンピュータ26Aは、直ちに、マイクロコンピュータ26Bに対し、通信線CLを介して、第1駆動制御系に異常が発生している旨のステータス情報を出力する。なお、この通信線CLは、ステータス情報の伝送以外に、マイクロコンピュータ26A及びマイクロコンピュータ26Bの両CPUの相互監視等、他の公知の用途にも用いられ得る。
【0040】
マイクロコンピュータ26Bは、マイクロコンピュータ26Aから受けたステータス情報に基づいて、目標電流値を補正する際に、ROM等のメモリから読み出すインバータ出力比率を、通常時の出力比率(例えば、50%対50%)から、異常時の出力比率(例えば、0%対100%)に切り替える。異常時の出力比率が0%対100%で設定されている場合、マイクロコンピュータ26Bは目標電流値を補正しない。
【0041】
なお、マイクロコンピュータ26Bが第2駆動制御系に異常が発生していると診断した場合には、マイクロコンピュータ26A及びマイクロコンピュータ26Bにおける異常時処理が逆になる。
【0042】
図4は、制御基板20の多層構造を模式的に示す展開斜視図である。
制御基板20は、表面側に第1制御回路20Aが位置し、裏面側に第2制御回路20Bが位置するように構成されている。第1制御回路20Aは、制御基板20の表面に電子部品を表面実装し、表面から内側に向けて積層された複数の層で構成されている。また、第2制御回路20Bは、制御基板20の裏面に電子部品を表面実装し、裏面から内側に向けて積層された複数の層で構成されている。そして、第1制御回路20Aと第2制御回路20Bとは、中間の絶縁層Mによって、一部を除き電気的に絶縁されている。このように制御基板20は複数の層を積層した多層基板を形成している。
【0043】
第1制御回路20Aは、電子部品DAが実装される表面から内側に向けて、順に、第1層L1A、第2層L2A、第3層L3A、第4層L4A及び第5層L5Aが積層された第1制御回路層をなしている。
また、第2制御回路20Bは、電子部品DBが実装される裏面から内側に向けて、順に、第1層L1B、第2層L2B、第3層L3B、第4層L4B及び第5層L5Bが積層された第2制御回路層をなしている。なお、第2制御回路層の各層は、第1制御回路層の同じ数字の層と同様であるので、以下、重複する説明を省略する。
【0044】
第1層L1A、第3層L3A及び第5層L5Aは、銅箔等の導電体で形成された導電層である。第2層L2A及び第4層L4Aは、絶縁性を有する樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を主成分として形成された薄板状又はシート状の絶縁層であり、第1層L1Aと第3層L3Aの間、第3層L3Aと第5層L5Aとの間を電気的に絶縁する。
【0045】
第1層L1Aは、電子部品DAを表面実装するための実装パッドであり、第3層L3Aは、第1制御回路20Aにおける配線回路を構成する導電パターンであり、第5層は制御基板20の平面方向に全域に広がるグランド層である。本実施形態において、導電パターンには、第3層L3Aだけでなく、第1層L1Aの実装パッドも含まれるものとする。
【0046】
図5は、制御基板20の立体配線構造を示す断面図である。
図5に示すように、第1層L1Aの実装パッドと第3層L3Aの導電パターンとは、例えば、制御基板20の厚さ方向に第2層L2Aを貫通したブラインドビアに導電性ペーストを充填・固化するなどして形成された層間導電路H1Aにより電気的に接続され、1つの電子部品DA1は、第1層L1A、第3層L3A及び層間導電路H1Aを介して、他の電子部品DA2と電気的に接続される。また、第5層L5Aは、第1層L1A又は第3層L3Aとの間で形成された層間導電路H2A,H3Aにより、第1層L1A又は第3層L3Aと電気的に接続され得る。したがって、第1制御回路20Aは制御基板20の表面側に立体的に構成される。
【0047】
ここで、第1制御回路20Aのマイクロコンピュータ26Aと第2制御回路20Bのマイクロコンピュータ26Bとは、図3に示すように、通信線CLで電気的に接続されるが、この通信線CLは、図5に示すように、第1制御回路20Aの第1層L1Aから第2制御回路20Bの第1層L1Bまで絶縁層Mを含む制御基板20を貫通した層間導電路HABにより形成される。このとき、層間導電路HABと第1制御回路20Aのグランド層である第5層L5A及び第2制御回路20Bのグランド層である第5層L5Bとの間で短絡を起こさないように、グランド層は、層間導電路HABが貫通する部分とその周囲が切り欠かれている。また、層間導電路HABは、第3層L3A,L3Bの導電パターンや、第1層L1A,L1Bのうち通信線CLに関係しない実装パッドとは接続されないように構成される。これにより、制御基板20における第1制御回路20Aと第2制御回路20Bとの間の電気的関係については、マイクロコンピュータ26Aとマイクロコンピュータ26Bとが層間導電路HABでのみ接続されるようにすることで、第1制御回路20A及び第2制御回路20Bの一方に異常が発生した場合であっても、他方にその影響が波及することを可及的に低減できるようにしている。
【0048】
図6は、制御基板20における電子部品DA,DBの実装位置を模式的に示す平面図である。なお、説明の便宜上、制御基板20は矩形に形成され、制御基板20を表面側から平面視したときの1組の対向辺の対向方向を図示のように左右方向とする。
【0049】
図6(a)に示すように、制御基板20の表面に実装される、第1制御回路20Aの電子部品DA(代表例として、磁極位置センサ22A、電源IC24A、マイクロコンピュータ26A及びプリドライバ28Aを示す)の実装位置については、制御基板20の表面側からみて、マイクロコンピュータ26A及びプリドライバ28Aなどの発熱部品(網掛けで表示)が右側に偏在し、発熱部品でない電源IC24Aが左側に偏在するようにしている。
【0050】
そして、図6(b)に示すように、制御基板20の裏面に実装される、第2制御回路20Bの電子部品DB(代表例として、マイクロコンピュータ26B、プリドライバ28B、磁極位置センサ22B及び電源IC24Bを示す)の実装位置を、制御基板20を表面から透視して、マイクロコンピュータ26B及びプリドライバ28Bなどの発熱部品(網掛けで表示)が左側に偏在し、発熱部品でない電源IC24Bが右側に偏在するように、第1制御回路20Aの電子部品DAの実装位置に対して左右対称にしている。
【0051】
このように、発熱部品を右側に偏在させた、第1制御回路20Aの電子部品DAの実装位置に対し、第2制御回路20Bの電子部品DBの実装位置が、制御基板20の平面視で左右対称となるように、第1制御回路20Aにおける第1層L1Aの実装パッド、及び第2制御回路20Bにおける第1層L1Bの実装パッドを形成している。したがって、制御基板20の表面側からみた第1層L1Aの実装パッドと制御基板20の裏面側からみた第1層L1Bの実装パッドとは同一の形状を呈する。
【0052】
電子部品DA,DBの実装位置を図6に示すようにする実装パッドを第1層L1A,L1Bに形成することで、第1制御回路20Aの発熱部品と第2制御回路20Bの発熱部品とが制御基板20の平面視で重畳せずに表面実装され、特に、第1駆動制御系及び第2駆動制御系に異常が発生していない通常時に第1制御回路20A及び第2制御回路20Bのいずれもが動作している場合に、第1制御回路20Aの発熱部品と第2制御回路20Bの発熱部品との間の相互発熱による影響を低減して、発熱部品の温度上昇を抑制するようにしている。
【0053】
また、電子部品DA,DBの実装位置を図6に示すようにする実装パッドを第1層L1A,L1Bに形成することで、実装パッドを第1制御回路20Aと第2制御回路20Bとで同一形状にして、設計効率ひいては製造効率の低下を抑制するようにしている。
【0054】
第1制御回路20Aがマイクロコンピュータ26A及びプリドライバ28Aを有するなど、1つの制御回路が複数の発熱部品を有する場合には、制御基板20の左右一方の側に発熱部品を偏在させる図6(a)の実装位置に替えて、以下のようにしてもよい。
【0055】
すなわち、図7(a)に示すように、制御基板20の表面に実装される、第1制御回路20Aの電子部品DAの実装位置については、制御基板20の表面側からみて、マイクロコンピュータ26Aを左側に偏在させ、プリドライバ28Aを右側に偏在させて、複数の発熱部品(網掛けで表示)が左右一方の側に偏在するが、左右方向で並んで位置しないようにしている。そして、図7(b)に示すように、制御基板20の裏面に実装される、第2制御回路20Bの電子部品DBの実装位置を、制御基板20を表面から透視して、マイクロコンピュータ26Bが右側に偏在し、プリドライバ28Bが左側に偏在するように、第1制御回路20Aの電子部品DAの実装位置に対して左右対称にする。このような実装位置となるように第1層L1A,第1層L1Bの実装パッドを形成することで、設計効率等の低下を抑制しつつ発熱部品の温度上昇を低減するようすることもできる。
【0056】
要するに、第1制御回路20Aにおける第1層L1Aの実装パッド、及び第2制御回路20Bにおける第1層L1Bの実装パッドは、それぞれの実装パッドに表面実装される電子部品の実装位置が制御基板20の平面視で線対称となり、かつ、それぞれの実装パッドに表面実装される発熱部品の実装位置が平面視で重畳しないように形成される。
【0057】
図8は、第1制御回路20Aにおける第3層L3Aの導電パターン、及び第2制御回路20Bにおける第3層L3Bの導電パターンを模式的に示す平面図である。
実装パッドは、図6及び図7に示すように、第2制御回路20Bの電子部品DBの実装位置が第1制御回路20Aの電子部品DAの実装位置に対して左右対称となるように形成されるので、第2制御回路20Bにおける第3層L3Bの導電パターンも第1制御回路20Aにおける第3層L3Aの導電パターンに対して制御基板20の平面視で左右対称となるように形成される。したがって、制御基板20の表面側から透視した第3層L3Aの導電パターンと制御基板20の裏面側から透視した第3層L3Bの導電パターンとは同一の形状を呈する。
【0058】
かかるモータ110の駆動制御ユニット150によれば、適用される電動パワーステアリングシステム100に対する、車両1の自動運転や機能安全等の要請から、モータ110の駆動制御系統を2つにして冗長化しても、制御基板20の表面側に第1制御基板20Aを形成し、制御基板20の裏面側に第2制御基板20Bを形成することで、制御基板20の基板面積の増大を抑制できるので、駆動制御ユニット150の体格を維持し、車載レイアウトの自由度に対する制限を緩和することが可能である。
【0059】
また、駆動制御ユニット150によれば、制御基板20の両面に第1制御回路20Aと第2制御回路20Bとをそれぞれ形成しても、発熱部品が平面視で重畳しないように実装されるので、発熱部品の温度上昇による熱劣化を低減でき、モータ110の駆動制御系統の冗長化による駆動制御ユニット150ひいては電動パワーステアリングシステム100の信頼性をさらに向上させることが可能である。特に、第1制御回路20Aにおける第1層L1Aの実装パッド及び第3層L3Aの導電パターンと、第2制御回路20Bにおける第1層L1Bの実装パッド及び第3層L3Bの導電パターンとが、制御基板20の平面視で線対称となるように形成されて同一形状を有するため、異なる実装パッド及び導電パターンを有する場合よりも、設計効率ひいては製造効率の低下を抑制することができる。
【0060】
さらに、駆動制御ユニット150によれば、制御基板20において、第1制御回路20Aと第2制御回路2Bとの電気的接続が、マイクロコンピュータ26Aとマイクロコンピュータ26Bとの間で通信を行う通信線CLとしての層間導電路HABだけであることから、第1制御回路20A及び第2制御回路20Bの一方に異常が発生した場合であっても、他方に対する影響を可及的に低減することができる。
【0061】
なお、前述の実施形態において、第1制御回路20Aにおける第1層L1Aの実装パッド及び第3層L3Aの導電パターンと第2制御回路20Bにおける第1層L1Bの実装パッド及び第3層L3Aの導電パターンとを、それぞれの実装パッドに表面実装される電子部品の実装位置が制御基板20の平面視で線対称となり、かつ、それぞれの実装パッドに表面実装される発熱部品の実装位置が平面視で重畳しないように形成していた。しかし、制御基板20の表面側に位置する第1制御回路20Aと裏面側に位置する第2制御回路20Bとで、インバータ基板10及び電気コネクタ50に対する位置関係が異なっても、インバータ基板10及び電気コネクタ50に対する電気的接続が困難とならない場合には、前述の線対称の構成に替えて、第1制御回路20Aを構成する実装パッド及び導電パターンと第2制御回路20Bを構成する実装パッド及び導電パターンとが、制御基板20の平面視で点対称となるように形成されてもよい。
【0062】
また、前述の実施形態において、設計効率や製造効率等を無視し得る場合には、第1制御回路20Aにおける第1層L1Aの実装パッド及び第3層L3Aの導電パターンと第2制御回路20Bにおける第1層L1Bの実装パッド及び第3層L3Aの導電パターンとを、それぞれの実装パッドに表面実装される電子部品の実装位置が制御基板20の平面視で線対称となるように形成せず、単に、それぞれの実装パッドに表面実装される発熱部品の実装位置が平面視で重畳しないように形成することができる。
【0063】
前述の実施形態において、駆動制御ユニット150は、異常時に、異常と診断された駆動制御系のインバータ出力を遮断して、正常と診断された駆動制御系のインバータ出力を100%にするように構成されていた。これに替えて、駆動制御ユニット150が、通常時は、例えば、第1インバータ回路12A及び第2インバータ回路12Bの出力比率を100%対0%としてモータ110を駆動し、第1インバータ回路12Aの異常時に、第1インバータ回路12Aの出力を遮断して、正常な第2インバータ回路12Bの出力を100%にするようにし、第2インバータ回路12Bを制御するマイクロコンピュータ26Bだけが動作するようにすることができる。この場合、異常診断後に発熱するのは、動作を開始するマイクロコンピュータ26Bであり、動作が停止したマイクロコンピュータ26Aは発熱を生じない。
【0064】
したがって、異常と診断されるまでにマイクロコンピュータ26Bがマイクロコンピュータ26Aから受けた熱を考慮しても、マイクロコンピュータ26Bの温度が許容温度を超えない場合には、第1制御回路20Aにおける第1層L1Aの実装パッド及び第3層L3Aの導電パターンと第2制御回路20Bにおける第1層L1Bの実装パッド及び第3層L3Aの導電パターンとを、それぞれの実装パッドに表面実装される発熱部品の実装位置が平面視で重畳するように形成してもよい。
【0065】
前述の実施形態において、駆動制御ユニット150の適用対象は電動パワーステアリングシステム100に限定されず、2つの巻線組CA,CBを備えたモータ110を駆動制御するものであれば、いかなるものにも適用可能である。例えば、電動ブレーキシステムの電動アクチュエータとして2つの巻線組CA,CBを備えたモータ110を用いる場合に、2つの駆動制御系統を有する駆動制御ユニット150を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…インバータ基板、12A…第1インバータ回路、12B…第2インバータ回路、20…制御基板、20A…第1制御回路、20B…第2制御回路、26A…マイクロコンピュータ、26B…マイクロコンピュータ、28A…プリドライバ、28B…プリドライバ、30…ケース、40…カバー、110…モータ、150…駆動制御ユニット、DA…電子部品、DB…電子部品、L1A…実装パッド、L1B…実装パッド、L3A…導電パターン、L3B…導電パターン、L5A…グランド層、L5B…グランド層、M…絶縁層、HAB(CL)…層間導電路(通信線)、CA…第1巻線組(UA,VA,WA)、CB…第2巻線組(UB,VB,WB)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8