特許第6427458号(P6427458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6427458タンク、特に自動車タンクを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427458
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】タンク、特に自動車タンクを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/08 20060101AFI20181112BHJP
   F17C 1/12 20060101ALI20181112BHJP
   F17C 3/04 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   F17C3/08
   F17C1/12
   F17C3/04 Z
   F17C3/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-83230(P2015-83230)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-203502(P2015-203502A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年11月8日
(31)【優先権主張番号】10 2014 207 300.6
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391009671
【氏名又は名称】バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ソウチェク
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−500536(JP,A)
【文献】 特表平07−507490(JP,A)
【文献】 特開2006−316817(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0236259(US,A1)
【文献】 米国特許第03114469(US,A)
【文献】 米国特許第03942331(US,A)
【文献】 特開2002−106794(JP,A)
【文献】 特開平05−044643(JP,A)
【文献】 特開平07−310657(JP,A)
【文献】 特表2009−516129(JP,A)
【文献】 特開2008−51279(JP,A)
【文献】 特表2011−523693(JP,A)
【文献】 特開2010−144843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/08
F17C 1/12
F17C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動物質を受容する内側タンク(1)と、該内側タンク(1)を取り囲んでいる外被(2)と、前記内側タンク(1)と前記外被(2)との間に配置される絶縁層(3)とを備えた、前記作動物質を低温状態で貯留するためのタンク(10)、特に自動車タンクを製造するための方法において、
前記作動物質を前記内側タンク(1)に挿入し、該作動物質によって前記内側タンク(1)内で30℃ないし120℃の温度、好ましくは70℃ないし85℃の温度を得るステップと、
前記内側タンク(1)と前記外被(2)との間に配置されている前記絶縁層(3)内に負圧を発生させるステップと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記作動物質を、前記内側タンク(1)内へ挿入する前に予め温度調整することにより、30℃ないし120℃の温度、好ましくは70℃ないし85℃の温度を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作動物質を前記内側タンク(1)内で温度調整することにより、30℃ないし120℃の温度、好ましくは70℃ないし85℃の温度を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記負圧を、前記絶縁層(3)内の絶対圧が10−3mbarないし10−5mbarになるように発生させることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記内側タンク(1)内へ挿入する際の前記作動物質の温度が0℃ないし70℃、好ましくは20℃ないし50℃であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記負圧を真空ポンプを用いて、特にターボ分子ポンプを用いて発生させることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記負圧を発生させるステップを、または、
前記作動物質を挿入して前記負圧を発生させるステップを、
モバイルで行い、特に車両に配置されている車両タンク内、特に自動車内に配置されている自動車タンク内で実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記タンク(10)への作動物質の最初の供給の範囲内で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記タンク(10)が、過臨界状態の水素を前記作動物質として受容するために形成された低温圧力タンクであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動物質を低温状態で貯留するためのタンク、特に自動車タンクを製造するための急速処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温状態にある作動物質は、今日では、車両または自動車を駆動するためのエネルギー源として使用されることが多くなっている。特許文献1は、車両低温燃料をモバイルでリバーシブルに貯留するための圧力容器を記載している。この圧力容器は、車両低温燃料を受容するための内側容器と、この内側容器を取り囲んでいる外側容器とを含んでいる。内側容器と外側容器との間には真空空間があり、真空空間は、内側容器内に貯留されている車両低温燃料を熱絶縁するために用いられる。真空空間は数日にわたる真空プロセスで生成されるが、その際外側タンクは外部の熱源によってほぼ100−120℃の温度に保持せねばならない。これはかなりの技術的、エネルギー的、時間的コストを必要とし、それ故圧力容器の製造に高コストを生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1546601A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記技術水準から出発して、本発明の課題は、エネルギー効率的に実施でき、高い付加的技術コストなしにコスト上好ましくて適用可能な、低温状態で作動物質を貯留するためのタンクを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、作動物質を受容する内側タンクと、該内側タンクを取り囲んでいる外被と、前記内側タンクと前記外被との間に配置される絶縁層とを備えた、前記作動物質を低温状態で貯留するためのタンク、特に自動車タンクを製造するための方法において、i)前記作動物質を前記内側タンクに挿入し、該作動物質によって前記内側タンク内で30℃ないし120℃の温度、好ましくは70℃ないし85℃の温度を得るステップと、ii)前記内側タンクと前記外被との間に配置されている前記絶縁層内に負圧を発生させるステップとによって解決される。可能な作動物質としては、たとえば液体水素、過臨界状態にある極低温水素、液体天然ガス、他の液状化ガスまたは極低温ガスが挙げられ、これらは特に車両または自動車を駆動するためのエネルギー源として貯留される。本発明による方法により、負圧の発生または真空の形成のために外被を加熱するための外部加熱装置を技術コストをかけて投入する必要がない。絶縁層内の真空化過程に必要な加熱温度は、内側タンクに挿入される作動物質によってもたらされる。内側タンク内に得られる温度により、内側タンクの壁も加熱される。この壁を介してその後隣接する絶縁層への熱伝達が行なわれる。この内側から外側への熱伝達の過程は、外側容器を加熱することによる熱伝達よりもかなりエネルギー効率的である。というのは、内側タンクは、温度に影響する外側の環境ファクタに曝されていないからである。他方、絶縁層内での圧力低下が大きくなるに従って内側タンクの熱絶縁がますます改善され、これによって内側タンク内の温度を長時間にわたって更なるエネルギーを消費することなく保持することができ、または、非常にゆっくりと低下していき、このことは真空化過程を加速させ、そのエネルギー効率を促進させる。
【0006】
従属項は本発明の有利な更なる構成を含んでいる。
【0007】
有利な更なる構成によれば、作動物質を、内側タンク内へ挿入する前に予め温度調整することにより、30℃ないし120℃の温度、好ましくは70℃ないし85℃の温度を得る。換言すれば、製造プロセスを改善させる熱交換である。暖かい作業物質は真空化プロセスに引き続いて消費され、新たなより低温の作動物質が内側タンク内へ充填される。
【0008】
これとは択一的に、または、これに加えて、作動物質を内側タンク内で温度調整することにより、30℃ないし120℃の温度、好ましくは70℃ないし85℃の温度を得る。これは、たとえば内側タンク内設けられる熱交換器を用いて行うことができる。
【0009】
本発明に従って製造されたタンクの使用時に作動物質の非常に好適な熱絶縁を提供するため、負圧を、絶縁層内の絶対圧が10−3mbarないし10−5mbarになるように発生させるのが好ましい。
【0010】
さらに有利には、内側タンク内へ挿入する際の作動物質の温度は0℃ないし70℃、好ましくは20℃ないし50℃である。通常使用される作動物質は、記載したこの温度範囲では非常に操作性がよい。その圧縮性のために、当該作動物質を内側タンクに充填する際、少なくとも30℃の、好ましくは少なくとも70℃ないし最大で85℃の十分な加熱温度を簡単に得ることができる。
【0011】
真空化過程を加速させるため、負圧を好ましくは真空ポンプを用いて、特にターボ分子ポンプを用いて発生させる。
【0012】
本発明は、さらに、i)前記負圧を発生させるステップを、または、ii)前記作動物質を挿入して前記負圧を発生させるステップを、モバイル(mobil)で行い、特に車両に配置されている車両タンク内、特に自動車内に配置されている自動車タンク内で実施するように構成されている。これはタンクのムーバブルな(ortsungebunden)製造を可能にし、これによって本発明に従って製造されるタンクを備えた車両または自動車の工場内での製造時間を短くさせることができる。
【0013】
タンクへの作動物質の最初の供給の範囲内で本発明による方法を実施することにより、製造時間をさらに節約することができる。加えて、真空化プロセスのために内側タンク内へ挿入される作動物質を、エネルギーを発生させるためにも使用することができる。
【0014】
本発明による方法は、過臨界状態の水素を作動物質として受容するために形成された低温圧力タンクを製造するためにも適している。
【発明の効果】
【0015】
本発明による解決手段およびその更なる構成により、以下の利点が得られる。
【0016】
本発明による方法は非常にエネルギー効率的であり、従ってコスト上好ましく適用可能である。
【0017】
本発明にによる方法は、ムーバブルに実施することができる。
【0018】
本発明による方法により、工場側で必要な製造時間が減少する。
【0019】
本発明による方法は、高い技術コストなしに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の更なる詳細、構成および利点は、以下の説明および図面から明らかである。
図1】本発明の1実施形態に従って製造されたタンクの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を1実施形態に関して詳細に説明する。図1には、本発明の主要な構成のみが図示されており、他の構成要素は図面を見やすくするためにすべて省略してある。
【0022】
図1はタンク10の詳細図であり、タンク10はたとえばいわゆる低温圧力タンクとして、過臨界状態の水素を貯留するために設けられる。タンク10は、作動物質の受容および貯留に用いる内側タンク1を含んでいる。内側タンク1は圧力に耐えうるように形成され、外被2によって取り囲まれ、この場合内側タンク1は懸架部6によって外被2に対し支持されている。内側タンク1と外被2との間には、本発明による方法によって真空化可能な絶縁層3が配置されている。内側タンク1は、充填・取り出し管5を介して、チルド作動物質で充填可能である。内側タンク1はさらに熱交換器4を含み、熱交換器4は、後にタンク10を使用する際に、内側タンク1からの作動物質の確実な取り出しを保証する。
【0023】
本発明による方法を適用する際、充填・取り出し管5を介して作動物質を内側タンク1内に充填し、その際作動物質により内側タンク1内で30℃ないし120℃、好ましくは70℃ないし85℃の温度が達成される。このために、すでに予め温度調整した作動物質を使用してよい。これとは択一的に、または、これに加えて、作動物質を内側タンク1内に充填した後に、たとえば熱交換器4を用いて作動物質を加熱してもよい。充填過程の際に、内側タンク1内での許容最大圧力と許容最高温度とが考慮される。予め温度調整した作動物質を使用する場合には、作動物質は好ましくは0℃ないし70℃、特に20℃ないし50℃の温度を有している。充填過程の間に作動物質が内側タンク1内へ流入することにより作動物質が圧縮され、その結果所望の加熱温度を設定する際に考慮されるような更なる温度調整が行なわれる。内側タンク1内で拡散する熱は、内側タンクの壁を介して絶縁層3へ伝達される。
【0024】
さらに、たとえば真空ポンプを用いて、当初まだガスを含んでいる絶縁層に負圧を発生させる。絶縁層3内の圧力が低下することにより、絶縁層は内側タンク1に対し非常に迅速に熱絶縁の用を成し、その結果作動物質の温度を維持するための外部の加熱装置や付加的なエネルギーを使用する必要なく、加熱プロセスと真空プロセスとが加速される。
【0025】
真空化過程は、絶縁層3内に所望の絶対圧が、好ましくは最大で10−3の絶対圧力が達成されたときに終了することができる。
【0026】
本方法はモバイルで適用可能である。内側タンク1内にある作動物質は、真空過程の終了後にエネルギー源として、たとえば車両または自動車を駆動するためのエネルギー源としてさらに使用することができる。
【0027】
本発明に関する以上の説明は、実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本発明を限定する目的に用いられるものではない。発明およびその等価対象の範囲を逸脱しなければ、本発明の範囲内で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 内側タンク
2 外被
3 絶縁層
4 熱交換器
5 充填・取り出し管
6 懸架部
10 タンク
図1