特許第6427477号(P6427477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427477
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】拡大孔掘削用ヘッド
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/32 20060101AFI20181112BHJP
   E21B 10/44 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   E21B10/32
   E21B10/44
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-186775(P2015-186775)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-61787(P2017-61787A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201504
【氏名又は名称】前田製管株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147557
【氏名又は名称】日本ベース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066094
【弁理士】
【氏名又は名称】米屋 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100123146
【弁理士】
【氏名又は名称】米屋 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】畠山 喜代満
(72)【発明者】
【氏名】駒澤 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】駒澤 和男
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4945603(JP,B2)
【文献】 特開平03−212506(JP,A)
【文献】 特開平11−006381(JP,A)
【文献】 実開昭54−089001(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02400869(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
E02D 5/22−5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に駆動軸と連結する連結部を備えた上部シャフトの下端部に、所定角度正逆回転可能となるように下部シャフトを接続するとゝもに、前記下部シャフトには、直径方向で相対向する少なくとも二つの位置においてそれぞれ拡大翼を所定角度内で回動可能に軸支する上部ブラケット及び下部ブラケットからなる拡大翼支持部材を、前記上部シャフトには、その正回転時に、一端が前記拡大翼のアーム部の後端と当接して、前記拡大翼を前記下部シャフトに装着した掘削用刃の半径内に折り畳み状態に保持するトルク伝達部として、又逆回転時に、他端が前記拡大翼の先端部と衝当して、前記拡大翼の前記先端部が前記掘削用刃の半径から突出する位置まで前記拡大翼を強制的に外方向へ拡径する蹴り出し部としてそれぞれ機能する拡大翼操作部材を装着した拡大孔掘削用ヘッドであって、前記上部シャフトの正回転時に前記拡大翼の前記アーム部の内側面が当接して前記拡大翼が拡径することを防止するストッパーとして、又前記上部シャフトの逆回転時には前記拡大翼の前記アーム部の前記内側面が当接してせん断破断され、前記拡大翼の拡径を検知する検知部としてそれぞれ機能する拡大翼検知手段を、前記拡大翼支持部材の前記上部ブラケット及び前記下部ブラケット間に備え、前記拡大翼の前記アーム部の外側面と当接して前記拡大翼が拡径及び縮径する動きを制限するストッパー部材を前記拡大翼支持部材に備えたことを特徴とする拡大孔掘削用ヘッド。
【請求項2】
前記拡大翼検知手段が、前記拡大翼支持部材の前記上部ブラケット及び前記下部ブラケットに上下両端部をそれぞれ固定したボルトであって、前記拡大翼の軸部近傍の厚さより大きい間隔をおいて、せん断誘導溝を上下2ヶ所に備えたことを特徴とする請求項1に記載の拡大孔掘削用ヘッド。
【請求項3】
前記下部シャフトに装着した前記掘削用刃に、ほぼ杭外径まで拡径する補助拡大翼と位置決め部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の拡大孔掘削用ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は拡大孔掘削用ヘッドに係り、特に土木工事において球根部を有する基礎鋼管杭又はコンクリート杭を構築する場合に使用する拡大孔掘削用ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎鋼管杭又はコンクリート杭を構築するためには、アースドリルやスクリューオーガ等で地中孔を掘削し、基礎鋼管杭又はコンクリート杭を建込む。この際、基礎鋼管杭等の支持力を高めるために、地中孔の底部を所要深さ位置で拡径掘削し、地中孔の下端部を球根状に拡幅することが行われる。
【0003】
このように、地中孔の下端部に球根状の拡幅部を形成する手段としては、例えば特開平11ー350473号公報に開示されているような拡大掘削刃を備えた掘削ヘッドや、実開平1−75194号公報に開示されている拡大掘削装置などがある。
【0004】
前記特開平11ー350473号公報に開示されている発明は、鋼管杭の先端が支持層に達した時点で、鋼管杭の内部に挿入したオーガースクリューを逆転させ、該オーガースクリューの下端部に縮径状態で挿入した拡大ビットを拡径させると同時に上下動させることにより、前記鋼管杭の先端が位置する部分を拡削する方法である。
【0005】
また、前記実開平1−75194号公報の拡大掘削装置は、掘削羽根を地山に食い込ませて回転を拘束したうえで掘削ロッドを逆転し、押圧ノックの先端を拡大刃の後端部に向かって突き出してこれを押圧することにより拡大刃を外方に強制的に回転させ、広がった拡大刃により拡大掘削するようにしている。
【0006】
これらの掘削ヘッドや拡大掘削装置では、拡大孔を掘削するには、正回転(時計回り方向)から逆回転(反時計回り方向)に操作を変更しなければならない。その場合、オーガヘッドの先端や掘削羽根は逆向きで回転するため、地中孔の底部を掘削する能力は著しく低下し、作業能率も著しく低下する。また、拡大掘削装置においては掘削ロッドの正回転時において、拡大刃をロックする手段がないため、正回転時に拡大刃と押圧ノックとの間に岩石等が進入して拡大刃を回転させて、不用意に拡大孔を掘削することとなる惧れもある。
【0007】
そこで、発明者らは、特許第2711236号公報および特許第4945603号公報に記載の発明のように、拡大孔を掘削するときも正回転で行え、拡大孔を所望の深さに形成できるとともに、正回転時に拡大刃が不用意に拡開するのを防止した拡大孔掘削用ヘッドが提案されている。すなわち、特許2711236号公報に記載の拡大孔掘削用ヘッドは、拡大孔を掘削するとき、掘削用刃を孔底部に食い込ませて外筒体を固定した後駆動軸を逆回転させると、シャフトがキー部とキー溝が遊嵌する範囲内で逆回転して蹴飛ばしピンが拡大刃から外れ、拡大刃を半径方向外方へ押すことにより拡開させる。
【0008】
そして、駆動軸を正回転させると、拡大刃は土の抵抗を受けて完全に拡開し、掘削用刃とともに土を掘削する。そして、所定深さの掘削孔を穿削した後は、駆動軸を逆回転させながら上方へ引き上げると、拡大刃は土の抵抗を受けて回動しながら折り畳まれ、蹴飛ばしピンが拡大刃に係合して当初の状態に復帰する。
【0009】
また特許第4945603号公報に記載の拡大孔掘削用ヘッドでは、拡大孔を掘削する際に、拡大翼操作部材により掘削用刃の半径内に折り畳状態に保持されている拡大翼の径縮保持の解除と、拡大翼を外方向へ蹴り出して拡径させる動作をほぼ同時に行うことで、拡大翼の径縮,拡径の動作を確実に行え、また上部シャフトの逆回転時に、拡大翼操作部材の蹴り出し部が、拡大翼の先端部が前記掘削用刃の半径から突出する位置まで強制的に拡大翼を外方向へ押し広げることで、粘性土地盤の場合でも掘削用刃の半径の外に位置するまで確実に拡径できる。
【0010】
さらに拡大翼が所定角度まで押し拡げられた際、拡大翼の軸部近傍の内側面がストッパーと当接するため、前記拡大翼が所定角度まで押し拡げられて拡径した状態が保持され、所望径の拡大孔を確実に掘削することができるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11ー350473号公報
【特許文献2】実開平1−75194号公報
【特許文献3】特許第2711236号公報
【特許文献4】特許第4945603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記発明では、粘性土地盤にでも対応する構造としているため、拡大孔掘削用ヘッドの構造が複雑になる一方、掘削径の大きな大径杭の施工では耐久性が低下して、頻繁に掘削用ヘッドを補修する必要が生じるなど使用上の制限があった。また掘削抵抗(N値)の大きなN値の高い礫質地盤では掘削自体が困難になる等の不都合も生じていた。
【0013】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を克服するために、拡大翼の拡径・縮径の操作を簡素な構造で実現することができるとゝもに、耐久性の向上を図り、掘削抵抗の大きな地盤であっても確実に拡大孔を形成できる拡大孔掘削用ヘッドを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本願の第1の発明は、上端部に駆動軸と連結する連結部を備えた上部シャフトの下端部に、所定角度正逆回転可能となるように下部シャフトを接続するとゝもに、前記下部シャフトには、直径方向で相対向する少なくとも二つの位置においてそれぞれ拡大翼を所定角度内で回動可能に軸支する上部ブラケット及び下部ブラケットからなる拡大翼支持部材を、前記上部シャフトには、その正回転時に、一端が前記拡大翼のアーム部の後端と当接して、前記拡大翼を前記下部シャフトに装着した掘削用刃の半径内に折り畳み状態に保持するトルク伝達部として、又逆回転時に、他端が前記拡大翼の先端部と衝当して、前記拡大翼の前記先端部が前記掘削用刃の半径から突出する位置まで前記拡大翼を強制的に外方向へ拡径する蹴り出し部としてそれぞれ機能する拡大翼操作部材を装着した拡大孔掘削用ヘッドであって、前記上部シャフトの正回転時に前記拡大翼の前記アーム部の内側面が当接して前記拡大翼が拡径することを防止するストッパーとして、又前記上部シャフトの逆回転時には前記拡大翼の前記アーム部の前記内側面が当接してせん断破断され、前記拡大翼の拡径を検知する検知部としてそれぞれ機能する拡大翼検知手段を、前記拡大翼支持部材の前記上部ブラケット及び前記下部ブラケット間に備え、前記拡大翼の前記アーム部の外側面と当接して前記拡大翼が拡径及び縮径する動きを制限するストッパー部材を前記拡大翼支持部材に備えたことを特徴とする拡大孔掘削用ヘッドである。
【0015】
また、本願の請求項2に記載の発明は、前記拡大翼検知手段が、前記拡大翼支持部材の前記上部ブラケット及び前記下部ブラケットに上下両端部をそれぞれ固定したボルトであって、前記拡大翼の軸部近傍の厚さより大きい間隔をおいて、せん断誘導溝を上下2ヶ所に備えたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本願の請求項に記載の発明は、前記下部シャフトに装着した前記掘削用刃に、ほぼ杭外径まで拡径する補助拡大翼と位置決め部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、前記拡大翼支持部材の上部ブラケット及び下部ブラケットに、拡大翼のアーム部の内側面が上部シャフトの正回転時に当接して前記拡大翼が拡径することを防止するストッパーとして、又前記上部シャフトの逆回転時には前記拡大翼のアーム部の内側面が衝当してせん断破断され、前記拡大翼の拡径を検知する検知部としてそれぞれ機能する検知手段からなる拡大翼操作部材を備えた構造とすることで構造を簡素化することができ、この結果構成部材厚を大きくして耐久性を高めることができる。
【0018】
また、拡大翼のアーム部の外側面と当接して拡大翼が拡径する動きを制限するストッパー部材を拡大翼支持部材に備えた構造とすることで、拡大翼の回転半径を一定に保つことができ、地中孔の下部において所望の径の大きさの掘削孔を確実に掘削することができる。
【0019】
また、拡大翼支持部材に備えたストッパー部材は、拡大翼のアーム部の外側面と当接して拡大翼が縮径する動きを制限するため、拡大翼が下部シャフト側に入り込みすぎないようにすることができる。
【0020】
また、本発明では、前記拡大翼検知手段を観察することで拡大翼が確実に拡径し、拡径した状態で所定径の拡大孔が穿削されたことを確認することができる。
【0021】
また、本発明では、前記拡大翼検知手段が、前記拡大翼支持部材の上部ブラケット及び下部ブラケットに上下両端部をそれぞれ固定したボルトであって、前記拡大翼の軸部近傍の厚さより大きい間隔をおいて、せん断誘導溝を上下2ヶ所に備えた構成とすることで、前記ボルトが圧力を受けた場合に前記せん断誘導溝の位置で確実にせん断され、拡大翼の拡径が阻害されることがなく、拡大翼を拡径させたいときに確実に拡径させることができる。
【0022】
また、本発明によれば、下部シャフトに装着した掘削用刃に、ほぼ杭外径まで拡径する補助拡大翼と位置決め部材を設けたことから、掘削抵抗が大きなN値の高い礫質地盤でも拡大孔の掘削が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る拡大孔掘削用ヘッドの正面図である。
図2】同拡大孔掘削用ヘッドの右側面図である。
図3】同拡大孔掘削用ヘッドの補助拡大翼が拡径した状態の正面図である。
図4図1のC−C線断面図である。
図5図1のB−B線断面図である。
図6】拡大翼の拡径操作開始時の図1のC−C線断面図である。
図7】同拡大翼の拡径操作開始時の図1のB−B線断面図である。
図8】同拡大翼の拡径操作第1段階時の図1のC−C線断面図である。
図9】同拡大翼の拡径操作第1段階時の図1のB−B線断面図である。
図10】同拡大翼の拡径操作第2段階時の図1のC−C線断面図である。
図11】同拡大翼が最大まで拡径した状態のC−C線断面図である。
図12】補助拡大翼が最大まで拡径した状態の底面図である。
図13図2のD部分の拡大図である。
図14図2のD部分のシャーピンせん断後の拡大図である。
図15】拡大孔掘削時の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図1乃至図15に示す実施例により詳細に説明する。図において、1は本発明に係る拡大孔掘削用ヘッドで、2は上端部に駆動軸101との連結部3を有する上部シャフトである。4,4は前記上部シャフト2の軸孔5の内周面に形成したキー溝で、軸方向Aに延びている前記キー溝4,4は、前記上部シャフト2の直径方向で相対向する位置にそれぞれ形成されている。なお、図中6は前記上部シャフト2の下部外周面に設けたらせん状の掘削刃である。
【0025】
8は下部シャフトで、その上端部の外周面には前記上部シャフト2の軸孔5内のキー溝4,4に遊嵌して係合するキー部9,9を、下部シャフトの下部の外周面にはらせん状の掘削用刃10をそれぞれ備えており、前記下部シャフト8の上端部を前記上部シャフト2の下部の軸孔5内に挿入して前記両シャフト2,8が連結されている。
【0026】
そして、前記上部シャフト2と下部シャフト8は、前記キー溝4とキー部9が遊嵌する範囲内、例えば本実施例にあっては、上部シャフト2が下部シャフト8に対して中心角が60度の範囲内で正回転(時計方向)及び逆回転(反時計方向)できる構造としている。なお、図中11は前記掘削用刃10の下端部に一列に設けた複数本の掘削刃先である。
【0027】
12は前記下部シャフト8の上部に固定した拡大翼支持部材で、上下に離間して装着した平面視が横長方形状の上部ブラケット12a及び下部ブラケット12bで構成されており、この上部・下部両ブラケット12a,12bの両端の側面12c付近にあって、前記下部シャフト8の直径方向で相対向する二つの位置に、後述するボルト13aを取り付けるための挿入孔14が形成されている。
【0028】
15は拡大翼で、耐久性を高めるために幅や厚さが大きく形成されたアーム部18とその先端に設けた先端刃19とから構成されており、前記アーム部18の内側面18a側に折れ曲がる後端部近傍で、前記上部・下部両ブラケット12a,12b間の両端部付近に円柱状の軸部16,16によって回動可能となるように設置されている。
【0029】
20は前記上部シャフト2にプレート21を介して装着された拡大翼操作部材で、前記プレート21の外周面21aにおいて前記上部シャフト2の直径方向で相対向する位置からそれぞれ垂下する正面視が横台形状の板材でそれぞれ形成されており、一側端20aは一方の拡大翼15のアーム部18の後端面18b側を向き、他側端20bは他方の拡大翼15の先端刃19側を向くように前記プレート21に固定され、上部シャフト2を中心として円周方向に回動可能に設置されている。
【0030】
上記構成により、前記上部シャフト2を正回転させ、拡大翼操作部材20の一側端20aを一方の拡大翼15のアーム部18の後端面18bに当接させることで、この拡大翼15の軸部16を中心とした拡径する動きを阻止することができる。また、前記上部シャフト2を逆回転させ、拡大翼操作部材20の他側端20bを他方の拡大翼15の先端刃19の内側部19aに衝当させることで、軸部16を中心として拡大翼15を強制的に拡径させることができる。
【0031】
13は前記拡大翼15が不用意に拡径するのを防止するストッパーとしての機能と、前記拡大翼15が拡径した場合にこれを検知する拡大翼検知手段として機能するシャーピンで、その外周面に前記拡大翼15の軸部近傍の厚さよりやや大きな間隔をおいて、上下に離間して二本のせん断誘導溝13c,13cを形成したボルト13aで形成されている。なお、図中13bは前記下部ブラケット12aの下面側からボルト13aに螺合せしめたナットであり、前記シャーピン13は前記上部・下部両ブラケット12a,12bの間にかけ渡すように固定されている。
【0032】
22は前記上部・下部両ブラケット12a,12bの両端付近の側面12cに装着したストッパー部材で、前記拡大翼15の軸部近傍のアーム部18の外側面18c付近に配置されている。このストッパー部材22は、前記下部シャフト8の直径方向で相対向する位置に二つ配置されているとゝもに、上部・下部両ブラケット12a,12bの間に橋渡すように固定されている。
【0033】
上記構成により、まず前記拡大翼15が掘削用刃6,10の半径R内に折り畳まれた状態のときに、前記拡大翼15の軸部近傍のアーム部18の外側面18cが前記ストッパー部材22の斜面22aと当接しているため、前記拡大翼15が前記軸部16を中心として下部シャフト8側に必要以上に縮径する動きを制限し、拡大翼15が下部シャフト8側に入り込みすぎないようになっている。
【0034】
また、前記拡大翼15が前記軸部16を中心として外方向へ拡径し、拡大翼15のアーム部18の内側面18aによって前記シャーピン13が強い圧力を受けた場合、前記シャーピン13は前記上下二条のせん断誘導溝13c,13c間でせん断され、前記拡大翼15が拡径したことを検知することができる。前記シャーピン13がせん断された後は、前記拡大翼15のアーム部18の後端部が前記上部・下部両ブラケット12a,12bに残ったシャーピン13,13の間を自由に通過できるようになる。
【0035】
前記上部・下部両ブラケット12a,12bに残ったシャーピン13,13の間をアーム部18の後端部が通過し、前記拡大翼15が軸部16を中心として最大限拡径した時、すなわち、前記下部シャフト8の直径方向で相対向する二つの前記拡大翼15,15が一直線となる位置までそれぞれが拡径した時、前記拡大翼15,15の軸部近傍のアーム部18の外側面18cが前記ストッパー部材22の先端面22bと当接し、前記拡大翼15の拡径の動きが止められ、前記軸部16を中心とした拡大翼15のそれ以上の拡径が阻止される。
【0036】
23は前記下部シャフト8の掘削用刃10の外周付近に設けられた補助拡大翼で、位置決め部材であるL字状のブラケット24の内側に、前記掘削用刃10を挟むようにして両面にボルト25a及びナット25bによって回動自在に支持されている。この補助拡大翼23は、前記掘削用刃10の半径R内に折り畳まれた状態から、前記補助拡大翼23の側面部23aが前記ブラケット24の上辺部24aに当接する状態までボルト25aを中心として拡径することができ、その拡径した二本の補助拡大翼23,23によって地中孔111の下部において拡大孔を掘削することができる。
【0037】
また、通常時は前記補助拡大翼23が不用意に拡径しないように、折り畳まれた状態で点溶接により前記掘削用刃10に固定されている。また、前記補助拡大翼23は最大まで拡径した場合の回転半径r1が前記拡大翼15が最大まで拡径した場合の回転半径r2よりもやや小さくなるように、前記補助拡大翼23の長さは設定されている。
【0038】
次に、拡大孔掘削用ヘッド1の動作について説明すると、地面から所定の深さの地中孔111を掘削する場合は、駆動軸101を正回転(時計方向に回転)させることで、駆動軸101に連結部3を介して連結されている上部シャフト2、および上部シャフト2にプレート21を介して装着された拡大翼操作部材20がそれぞれ同方向に回転する。
【0039】
拡大翼操作部材20が正回転することで、図4及び図5に示すように、拡大翼操作部材20の垂下部の一側端20aが拡大翼15のアーム部18の後端面18bと当接する。その結果、拡大翼15の軸部16を中心とした拡径する動きが阻止され、拡大翼15は掘削用刃6,10の半径R内に折り畳まれた状態が保持される。
【0040】
同時に、拡大翼15の軸部近傍のアーム部18の外側面18cがストッパー部材22の斜面22aと当接し、拡大翼15の軸部16を中心とした下部シャフト8側への更なる動き(縮径する動き)も阻止されている。その結果、拡大翼15は軸部16を中心に回動することができず掘削用刃6,10の半径R内に折り畳まれた状態が固定される。
【0041】
ここで、何らかの不具合により、上部シャフト2が逆回転し、図6及び図7に示すように、拡大翼操作部材20の一側端20aが拡大翼15のアーム部18の後端面18bからやや離れた場合であっても、拡大翼15のアーム部18の内側面18aがシャーピン13に当接し、拡大翼15の軸部16を中心とした拡径する動きが阻止され、拡大翼15は掘削用刃10の半径R内に折り畳まれた状態が保持される。
【0042】
上部シャフト2および上部シャフト2にプレート21を介して装着された拡大翼操作部材20がそれぞれ正回転し、図5に示すように、上部シャフト2の軸孔5のキー溝4の正回転方向側の端面4aが下部シャフト8のキー部9と当接する。そして、上部シャフト2が更に正回転すると下部シャフト8は上部シャフト2と一緒に正回転する。
【0043】
それにより、上部シャフト2及び下部シャフト8の外周面に装着した掘削用刃6,10及び掘削刃先11が同一方向に回転するので、駆動軸101によって上部シャフト2を介して下部シャフト8に対して軸方向Aの押し込み力を加えることにより、地面113に所定深さの地中孔111を掘削することができる。
【0044】
次に、地中孔111が地面から所定の深さまで達した後、地中孔111の下部に拡大孔112を形成する場合は、駆動軸101の回転を一旦停止するとゝもに、駆動軸101によって上部シャフト2を介して下部シャフト8に対して軸方向Aの押し込み力を加えることにより、下部シャフト8の掘削用刃10の下端部に設けられた掘削刃先11を孔底114に食い込ませ、下部シャフト8を孔底114に固定する。
【0045】
そして、下部シャフト8が孔底114に固定された状態で駆動軸101を逆回転(反時計方向に回転)させ、駆動軸101に連結されている上部シャフト2を逆回転させる。すなわち、上部シャフト2を図4及び図5に示す状態から、上部シャフト2のキー溝4と下部シャフト8のキー部9とが遊嵌する範囲内、例えば本実施例では60度の範囲内で上部シャフト2を逆回転させることで、上部シャフト2のキー溝4の逆回転方向側の端面4bが下部シャフト8のキー部9と図9に示す状態で衝当する。
【0046】
上部シャフト2が逆回転することにより、上部シャフト2にプレート21を介して装着された拡大翼操作部材20の垂下部の一側端20aは、一方の拡大翼15のアーム部18の後端面18bと当接する図4に示す状態から離れる。そして、上部シャフト2の逆回転を続けることで、拡大翼操作部材20は円弧を描きながら他方の拡大翼15に近づいてゆき、図8に示すように、拡大翼操作部材20の垂下部の他側端20bが拡大翼15の先端刃19の内側部19aと当接する。
【0047】
そして、上部シャフト2のキー溝4の逆回転方向側の端面4bが下部シャフト8のキー部9と衝当した図9に示す状態の後も上部シャフト2を逆回転させると、拡大翼操作部材20の垂下部の他側端20bが拡大翼15の先端刃19の内側部19aの位置まで移動する(図8参照)。これに伴い拡大翼15の先端刃19は拡大翼操作部材20によって強制的に押し出され、軸部16を中心として反時計方向に回転して先端刃19の外側部19bが掘削用刃6,10の半径Rの外側に突出する位置まで移動(拡径)する。
【0048】
上記のように、拡大翼操作部材20によって拡大翼15が軸部16を中心として反時計方向(外方向)へ拡径することにより、二つの拡大翼15,15のアーム部18の後端部も軸部16を中心として反時計方向に回転する。その結果、図13に示すように、上部・下部両ブラケット12a,12bの間にかけ渡すように固定されているシャーピン13がアーム部18の内側面18aによって圧力を受け、図14に示すように、せん断誘導溝13c,13cの位置でせん断される。そして、上部・下部両ブラケット12a,12bに残ったシャーピン13のせん断誘導溝13c,13c間を拡大翼15のアーム部18の後端部が自由に通過でき、拡大翼15が拡径できるようになる。
【0049】
次に、図8に示す状態から駆動軸101を正回転させる。それに伴い、駆動軸101に連結されている上部シャフト2も同方向に回転し、図に示すように、キー溝4の正回転方向側の端面4aが下部シャフト8のキー部9と当接する。そして、駆動軸101を更に正回転させると、下部シャフト8は駆動軸101に連結されている上部シャフト2を介して駆動軸101と同方向に回転する。
【0050】
下部シャフト8が正回転することで、掘削用刃6,10の半径Rの外側に突出する位置まで移動している拡大翼15の先端刃19が掘削土の抵抗を受け、拡大翼15は軸部16を中心として徐々に拡径する(図8図10参照)。そして、上記のように上部・下部両ブラケット12a,12bに残ったシャーピン13のせん断誘導溝13c,13c間を拡大翼15のアーム部18の後端部が通過し、図11に示すように、下部シャフト8の直径方向で相対向する二つの拡大翼15,15はそのアーム部18,18が一直線になるまで拡径する。
【0051】
そのとき、拡大翼15の軸部近傍のアーム部18の外側面18cがストッパー部材22の先端面22bと当接するため、拡大翼15のそれ以上の拡径する動きが阻止される。そのため、駆動軸101の正回転を持続させて掘り進めることで、図15に示すように、所望深さの地中孔111の下部において拡大翼15の先端刃19によって拡大孔112を掘削することができる。
【0052】
所望深さの地中孔111の下部に拡大孔112を掘削する作業が終了した場合には、駆動軸101を今度は逆回転させる。それに伴い、駆動軸101に連結されている上部シャフト2も同方向に回転するため、図9示すように、上部シャフト2のキー溝4の逆回転方向側の端面4bが下部シャフト8のキー部9と当接し、下部シャフト8が上部シャフト2と同方向に徐々に逆回転していく。
【0053】
そして、下部シャフト8が逆回転することで、掘削用刃6,10の半径Rの外側に突出する位置まで拡径している拡大翼15の先端刃19は、そのアーム部18の外側面18cが掘削土の抵抗を受け、拡大翼15は軸部16を中心として徐々に縮径していき、掘削用刃6,10の半径Rの内側まで回転移動する。
【0054】
上記のように、拡大翼15の先端刃19が掘削用刃6,10の半径Rの内側まで回転移動した時点で駆動軸101を今度は正回転させる。それに伴い、駆動軸101に連結されている上部シャフト2も同方向に回転し、拡大翼操作部材20の垂下部の一側端20aが拡大翼15のアーム部18の後端面18bと当接する。その結果、拡大翼15の軸部16を中心とした拡径する動きが阻止され、拡大翼15は掘削用刃6,10の半径R内に折り畳まれた状態が保持される。
【0055】
ここで、上部・下部両ブラケット12a,12bには、図13及び図14に示すように拡大翼15が拡径したことを検知するためのシャーピン13が固定されているため、拡大孔112の掘削作業が終了した後、拡大孔掘削用ヘッド1を上方へ引き上げ、シャーピン13の状態を観察することで、拡大翼15が拡径したか否かを検知することができる。
【0056】
したがって、拡大孔掘削用ヘッド1が上方へ引き上げられた際に拡大翼15が折り畳まれた状態であったとしても、シャーピン13がせん断誘導溝13cの位置でせん断されていれば、拡大孔112の掘削時に拡大翼15が実際に拡径したと検知することができ、また地中孔111の下部に拡大孔112を掘削できたことを把握することができる。
【0057】
また、試験掘りによって地盤が硬く拡大翼15だけでは拡大孔112の掘削が困難と判断した場合は、補助拡大翼23の上記点溶接による固定を解除する。それにより、駆動軸101とともに下部シャフト8が正回転することで、補助拡大翼23が掘削用刃6,10の半径R内に折り畳まれた図2に示す状態から、補助拡大翼23の先端部23bが掘削土の抵抗を受けてボルト25aを中心として徐々に拡径する。
【0058】
そして、補助拡大翼23の側面部23aがブラケット24の上辺部24aに当接する図3及び図12に示す状態まで補助拡大翼23が拡径するため、拡大孔112を掘削することが可能となる。
【0059】
また、拡大孔112の掘削作業が終了し、拡大孔掘削用ヘッド1が上方へ引き上げられる際、上記のように下部シャフト8は駆動軸101と共に逆回転するため、補助拡大翼23は掘削土の抵抗を受けて徐々に縮径していき、図2に示すように、掘削用刃6,10の半径R内に折り畳まれた状態に戻る。
【0060】
ここで、仮に拡大孔掘削用ヘッド1を引き上げる途中で土砂を噛んで補助拡大翼23が折り畳まれなくなった場合には、補助拡大翼23が固定されている位置の掘削用刃10の肉厚は上記のように他の位置に比べて薄く上下方向の抵抗に対して弱い構造であるため、強引に拡大孔掘削用ヘッド1を上方へ引き上げて掘削用刃10の補助拡大翼23が固定されている薄い位置を破壊しながら引き上げる。
【0061】
また、掘削用刃10に補助拡大翼23を回動自在に支持しているボルト25aに、引張抵抗の弱いボルト25aを使用してもよい。こうすることで、土砂が噛んで補助拡大翼23が折り畳まれなくなった場合に、強引に拡大孔掘削用ヘッド1を上方へ引き上げてボルト25aを破断し、補助拡大翼23を掘削用刃10から脱落させながら拡大孔掘削用ヘッド1を上方へ引き上げることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 拡大孔掘削用ヘッド
2 上部シャフト
3 連結部
4 キー溝
5 軸孔
6 掘削用刃
7 軸部近傍部
8 下部シャフト
9 キー部
10 掘削用刃
11 掘削刃先
12 拡大翼支持部材
12a 上部ブラケット
12b 下部ブラケット
12c 側面
13 シャーピン
13a ボルト
13c せん断誘導溝
14 挿入孔
15 拡大翼
16 軸部
18 アーム部
18a 内側面
18b 後端面
19 先端刃
19a 内側面
20 拡大翼操作部材
20a 一側端
20b 他側端
21 プレート
22 ストッパー部材
22a 斜面
22b 先端面
23 補助拡大翼
24 ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15