(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の非晶質炭素系薄膜の膜厚が前記ピンホールのないところで1層あたり10〜150nmであり、前記第1の酸化ケイ素系薄膜の膜厚が前記ピンホールのないところで1層あたり5〜100nmである、請求項1又は2に記載の薄膜積層フィルム。
不活性ガスからなる希釈ガスと炭化水素ガスとが混合された炭素系原料ガスに、大気圧下において高周波パルス電圧を印加して該炭素系原料ガスを放電プラズマ化し、該放電プラズマ化された炭素系原料ガスをプラスチックフィルムの一方の表面に接触させて第1の非晶質炭素系薄膜を形成する工程と、
不活性ガスからなる希釈ガスと蒸気化されたケイ素を含む有機金属化合物と酸素ガスとが混合された金属酸化物原料ガスに、大気圧下において高周波パルス電圧を印加して該金属酸化物原料ガスを放電プラズマ化し、該放電プラズマ化された金属酸化物原料ガスを、前記第1の非晶質炭素系薄膜の一方の表面に接触させて、直径10〜200nmの範囲のピンホールを有する第1の酸化ケイ素系薄膜を形成する工程と、
不活性ガスからなる希釈ガスと炭化水素ガスとが混合された炭素系原料ガスに、大気圧下において高周波パルス電圧を印加して該炭素系原料ガスを放電プラズマ化し、該放電プラズマ化された炭素系原料ガスを前記第1の酸化ケイ素系薄膜の一方の表面に接触させて第2の非晶質炭素系薄膜を形成する工程と、
を含み、
大気圧プラズマCVD法により形成された前記第2の非晶質炭素系薄膜が、大気圧プラズマCVD法により形成さた前記第1の酸化ケイ素系薄膜の前記ピンホールの内部に嵌入している、薄膜積層フィルムの製造方法。
前記有機金属化合物は、トリメチルシラン(TrMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)よりなる群のうち少なくとも1種である、請求項4に記載の薄膜積層フィルムの製造方法。
前記金属酸化物原料ガスにおける前記有機金属化合物の濃度は、10〜200ppm(体積比)であり、前記金属酸化物原料ガスにおける前記酸素ガスの濃度は、1〜10体積%である、請求項4に記載の薄膜積層フィルムの製造方法。
前記第2の非晶質炭素系薄膜の膜厚が前記ピンホールのないところで1層あたり10〜150nmであり、前記第1の酸化ケイ素系薄膜の膜厚が前記ピンホールのないところで1層あたり5〜100nmである、請求項4に記載の薄膜積層フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、大気圧プラズマCVD法で成膜した薄膜(DLC,酸化ケイ素などの薄膜)は、真空法に比べて密度が低く、厚みあたりのガスバリア性に劣るため、真空法に比べて厚い成膜が必要となり、成膜時間が長い、加工時の折り曲げ応力などでクラックを生じてバリア性が低下するなどの問題があった。また、大気圧プラズマCVD法では、大気圧下でプラズマ放電を持続させるため、数mm程度の間隔の電極間に高周波パルス電圧を印加する必要があり、フィルム基材に面している対向電極に原料ガス由来の活性種が再結合した粒子状の化合物が生成して堆積してしまい、連続で安定なコーティングフィルムの製造が困難である。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、低コストでバリア性に優れる薄膜積層フィルムを提供することである。また、設備コストおよび運転経費が安い大気圧プラズマCVD法によって、薄膜をプラスチックフィルム上に複数層被覆する薄膜積層フィルム製造方法、及び、さらに長期間連続運転が可能で、高速で被覆できる薄膜積層フィルム製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る薄膜積層フィルムは、基材となるプラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、酸化ケイ素を主成分とする酸化ケイ素系薄膜及び非晶質炭素系薄膜を1層ずつ積層又は合計3層以上交互に積層してなり、かつ、前記酸化ケイ素系薄膜の上に前記非晶質炭素系薄膜が形成されていることを1組とする積層単位を少なくとも一つ含み、前記酸化ケイ素系薄膜は、直径10〜200nmの範囲のピンホールを有していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る薄膜積層フィルムでは、前記酸化ケイ素系薄膜の上に形成されている前記非晶質炭素系薄膜が前記酸化ケイ素系薄膜の前記ピンホールの内部に嵌入している形態が包含される。
【0012】
本発明に係る薄膜積層フィルムでは、前記非晶質炭素系薄膜が前記プラスチックフィルムの表面に形成されており、該非晶質炭素系薄膜の上に前記酸化ケイ素系薄膜と前記非晶質炭素系薄膜の順序で、薄膜層が全体として3層ないしそれ以上交互にさらに積層してなることが好ましい。このような構成を採ることで、薄膜の基材に対する密着性を高め、かつ、ガスバリア性をさらに高めることができる。さらに薄膜積層フィルムが折り曲げ、変形等の二次加工を受けた場合においてガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明に係る薄膜積層フィルムでは、 前記非晶質炭素系薄膜の膜厚が前記ピンホールのないところで1層あたり10〜150nmであり、前記酸化ケイ素系薄膜の膜厚が前記ピンホールのないところで1層あたり5〜100nmであることが好ましい。このような構成を採ることで、薄膜のクラック発生を抑制しつつ、ガスバリア性をさらに高めることができる。
【0014】
本発明に係る薄膜積層フィルムでは、前記プラスチックフィルムは、ポリエステル系フィルム又はナイロンフィルムであることが好ましい。ポリエステル系フィルムは、包装材料として各種グレードがあることから利用しやすく、また、ナイロンフィルムは高湿度において酸素バリア性が低下する性質があるものの本発明によればこの低下を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る薄膜積層フィルムの製造方法は、基材となるプラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、酸化ケイ素系薄膜及び非晶質炭素系薄膜を1層ずつ積層又は合計3層以上交互に積層してなり、かつ、前記酸化ケイ素系薄膜の上に前記非晶質炭素系薄膜が形成されていることを1組とする積層単位を少なくとも一つ含む薄膜積層フィルムの製造方法であって、前記非晶質炭素系薄膜を形成するための工程は、不活性ガスからなる希釈ガスと炭化水素ガスとが混合された炭素系原料ガスに、大気圧下において高周波パルス電圧を印加して該炭素系原料ガスを放電プラズマ化し、該放電プラズマ化された炭素系原料ガスを成膜の対象となる表面に接触させて、該表面に前記非晶質炭素系薄膜を形成する工程を含み、前記酸化ケイ素系薄膜を形成するための工程は、不活性ガスからなる希釈ガスと蒸気化されたケイ素を含む有機金属化合物と酸素ガスとが混合された金属酸化物原料ガスに、大気圧下において高周波パルス電圧を印加して該金属酸化物原料ガスを放電プラズマ化し、該放電プラズマ化された金属酸化物原料ガスを成膜の対象となる表面に接触させて、該表面に前記酸化ケイ素系薄膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る薄膜積層フィルムの製造方法では、前記有機金属化合物は、トリメチルシラン(TrMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)よりなる群のうち少なくとも1種であることが好ましい。酸化ケイ素系薄膜を安定して成膜することができる。
【0017】
本発明に係る薄膜積層フィルムの製造装置は、基材となる帯状のプラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、大気圧プラズマCVD法によって少なくとも2種以上の薄膜を積層して成膜する薄膜積層フィルムの製造装置であって、該製造装置は、並べて配置された少なくとも2つ以上のチャンバーと、高周波パルス電源を有し、前記各チャンバーは、前記帯状のプラスチックフィルムが、チャンバー内部を往復して通過するための出入り口を有し、前記各チャンバーの内部空間には、往路にある前記帯状のプラスチックフィルムの非成膜面が接触し、かつ自らの軸線まわりに回転して該帯状のプラスチックフィルムを搬送する複数のロール電極からなる第1ロール電極群と、復路にある前記帯状のプラスチックフィルムの非成膜面が接触し、かつ自らの軸線まわりに回転して該帯状のプラスチックフィルムを搬送する複数のロール電極からなる第2ロール電極群とが、前記往路にある帯状のプラスチックフィルムの被成膜面と前記復路にある帯状のプラスチックフィルムの被成膜面とが隙間をもって平行となる位置に配置されており、かつ、前記薄膜の1層を形成するための原料ガスを吹き出す原料ガスノズルが配置されており、前記第1ロール電極群の複数のロール電極は、互いに接触し合わず、ロール外周に誘電体層を有し、前記第2ロール電極群の複数のロール電極は、互いに接触し合わず、ロール外周に誘電体層を有し、前記第1ロール電極群及び前記第2ロール電極群は、いずれか一方が前記高周波パルス電源から高周波パルス電圧が印加され、他方が接地されており、前記第1ロール電極群と前記第2ロール電極群との間の空間は、前記高周波パルス電圧の印加によって放電空間となり、前記原料ガスノズルは、前記放電空間に向けて前記原料ガスを吹き出し、隣り合う前記チャンバーの前記原料ガスノズルは、互いに異種の前記原料ガスを流すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薄膜積層フィルムは、ガスバリア性が高く、包装材料としての加工時に折り曲げ、印刷などの応力によってもガスバリア性が低下しにくい。また大気圧CVD法を利用しているため、従来の真空プロセスに比べ、装置コスト、運転コストが低い。さらに成膜の速度が真空プロセスに比べて早いため、製造コストが大幅に低下できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以降、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0021】
[薄膜積層フィルム]
本実施形態に係る薄膜積層フィルムは、基材となるプラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、酸化ケイ素を主成分とする酸化ケイ素系薄膜及び非晶質炭素系薄膜を1層ずつ積層又は合計3層以上交互に積層してなり、かつ、酸化ケイ素系薄膜の上に非晶質炭素系薄膜が形成されていることを1組とする積層単位を少なくとも一つ含み、酸化ケイ素系薄膜は、直径10〜200nmの範囲のピンホールを有している。ここで、本実施形態に係る薄膜積層フィルムでは、酸化ケイ素系薄膜の上に形成されている非晶質炭素系薄膜が酸化ケイ素系薄膜のピンホールの内部に嵌入している形態を包含する。
【0022】
大気圧CVDで成膜した非晶質炭素系薄膜は、ポリマーライクのためガスバリア性の改善効果は大きくないが、柔軟性があり、基材との密着性が高いため、折り曲げに強い。一方、酸化ケイ素系薄膜は、SEM観察によれば、直径0.01〜0.2μmのピンホールが多く発生する。しかし、酸化ケイ素系薄膜は、非晶質炭素系薄膜と比較すれば無機膜に近く、ピンホールを除くとガスバリア性が高い。しかし、酸化ケイ素系薄膜は緻密なため、密着性や折り曲げ加工には弱い。そこで、非晶質炭素系薄膜を酸化ケイ素系薄膜の上に被覆すると、酸化ケイ素系薄膜のピンホールを非晶質炭素が埋めるように堆積し、ガスバリア性が飛躍的に向上するとともに、非晶質炭素系薄膜が緩衝することによって、加工時の損傷が少なくなる。
【0023】
基材となるプラスチックフィルムは、ポリエステル系フィルム又はナイロンフィルムとすることが好ましい。ポリエステル系フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレート系コポリエステル樹脂(例えば、ポリエステルのアルコール成分にエチレングリコールの代わりに、シクロヘキサンジメタノールを使用したコポリマー)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂を含む。ナイロンフィルムは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を含む脂肪族ポリアミドおよび脂肪族ポリアミドに芳香族ポリアミド芳香族ジカルボン酸、例えば、メタキシリレンジアミンをブレンドしたポリアミドフィルムを含む。フィルムの厚さは、例えば、12〜50μmであり、12〜20μmとすることがより好ましい。積層膜の成膜面は、プラスチックフィルムの片面又は両面である。片面のみに積層膜を成膜する場合には、薄膜を積層しない面に異なるプラスチックフィルムもしくは紙または板紙をラミネートしてもよい。
【0024】
酸化ケイ素を主成分とする酸化ケイ素系薄膜は、SiO
2膜のみならず、SiO:CHなどと表記され、有機ケイ素化合物に由来するCおよびHが骨格中に結合している膜であるSiO
X膜を包含する。ここで、酸化ケイ素系薄膜は、プラズマCVD法において、大気圧よりも低い圧力下で成膜する真空法を用いるとピンホールは発生しない(例えば、非特許文献1の
図8を参照。)。しかし、大気圧下で成膜する大気圧法を用いると、上述のピンホールが生じる。したがって本実施形態に係る薄膜積層フィルムは、大気圧法を用いたときに発生するピンホールの問題を解決する。酸化ケイ素系薄膜の膜厚は、ピンホールのないところで1層あたり5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。膜厚が5nm未満であると、ガスバリア性が得られない場合がある。また膜厚が100nmを超えると、クラックが生じやすくなる。
【0025】
非晶質炭素系薄膜は、大気圧法で成膜したDLCであって水素原子を最大50原子%含む非晶質水素化炭素膜(a-C:H)を包含する。非晶質炭素系薄膜の膜厚は、積層したときに酸化ケイ素系薄膜のピンホールのないところで1層あたり10〜150nmであることが好ましく、50〜100nmであることがより好ましい。膜厚が10nm未満であると、ガスバリア性が得られない場合がある。また膜厚が150nmを超えると、クラックが生じやすくなる。また、積層するに際して、非晶質炭素系薄膜の膜厚を酸化ケイ素系薄膜の膜厚よりも大きくすることが好ましい。酸化ケイ素系薄膜のクラック発生の抑制効果がより発揮できる。
【0026】
次に酸化ケイ素系薄膜と非晶質炭素系薄膜の積層形態について説明する。本実施形態に係る薄膜積層フィルムは、酸化ケイ素系薄膜の上に非晶質炭素系薄膜が形成されていることを1組とする積層単位を少なくとも一つ含む。したがって、酸化ケイ素系薄膜と非晶質炭素系薄膜を1層ずつ積層する場合、プラスチックフィルム上に酸化ケイ素系薄膜を成膜し、その上に非晶質炭素系薄膜を成膜する。合計3層以上交互に積層する場合には、プラスチックフィルム上に酸化ケイ素系薄膜を成膜し、その上に非晶質炭素系薄膜を成膜し、その上に酸化ケイ素系薄膜を成膜し、さらに積層する場合には交互にこれらの薄膜を積層する。また、別の形態として、プラスチックフィルム上に非晶質炭素系薄膜を成膜し、その上に酸化ケイ素系薄膜を成膜し、その上に非晶質炭素系薄膜を成膜し、さらに積層する場合には交互にこれらの薄膜を積層する。いずれの形態も前記の積層単位が少なくとも1つ含まれることとなる。
【0027】
本実施形態に係る薄膜積層フィルムは、非晶質炭素系薄膜がプラスチックフィルムの表面に形成されており、該非晶質炭素系薄膜の上に酸化ケイ素系薄膜と非晶質炭素系薄膜の順序で、薄膜層が全体として3層ないしそれ以上交互にさらに積層してなることが好ましい。非晶質炭素系薄膜がプラスチックフィルムの表面に形成されることで密着性が優れることとなる。その上に、酸化ケイ素系薄膜のピンホールを非晶質炭素系薄膜が覆った
積層単位を1組以上積層することで、高いガスバリア性を得ることができる。積層数の上限は、酸化ケイ素系薄膜の層と非晶質炭素系薄膜の層の合計が10層であることが好ましい。10層を超えると、膜厚が大きくなり、積層した薄膜にクラックが生じやすくなる恐れがあり、積層に要する工程も複雑で、時間を要し、実用上の経済性に欠ける。より好ましい積層数は、3〜5層である。
【0028】
[薄膜積層フィルムの製造方法]
次に薄膜積層フィルムの製造方法を説明する。薄膜積層フィルムの積層形態は前述したとおりである。非晶質炭素系薄膜又は酸化ケイ素系薄膜を形成するために次に示す工程をそれぞれ行う。
【0029】
(非晶質炭素系薄膜を形成するための工程)
不活性ガスからなる希釈ガスと炭化水素ガスとが混合された炭素系原料ガスを原料ガスとする。大気圧プラズマ法を採用することから、不活性ガスは窒素ガスとすることが好ましい。炭化水素ガスは、炭素、水素および/または酸素を含有する化合物であり、アセチレン、メタン、エタン、プロパンのいずれか一種またはこれらの混合物であることが好ましい。炭素系原料ガスにおける炭化水素ガスの濃度は、1〜10体積%であることが好ましく、2〜5体積%であることがより好ましい。大気圧下において高周波パルス電圧を印加して炭素系原料ガスを放電プラズマ化し、放電プラズマ化された炭素系原料ガスを成膜の対象となる表面に接触させて、この表面に非晶質炭素系薄膜を形成する。高周波パルス電圧のパルス繰り返し周波数は10〜50kHzとすることが好ましく、15〜30kHzとすることがより好ましい。印加する高周波パルス電圧は、0-ピークで5〜30kVとすることが好ましく、7〜20kVとすることがより好ましい。また、パルスピーク幅は、1〜10マイクロ秒とすることが好ましく、2〜5マイクロ秒とすることがより好ましい。成膜時間は、所望の膜厚が得られるための時間とするが、例えば、0.5〜2秒とすることが好ましい。
【0030】
(酸化ケイ素系薄膜を形成するための工程)
不活性ガスからなる希釈ガスと蒸気化されたケイ素を含む有機金属化合物と酸素ガスとが混合された金属酸化物原料ガスを原料ガスとする。不活性ガスは窒素ガスとすることが好ましい。有機金属化合物は、トリメチルシラン(TrMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)よりなる群のうち少なくとも1種であることが好ましい。金属酸化物原料ガスにおける有機金属化合物の濃度は、10〜200ppm(体積比)であることが好ましく、20〜100ppmであることがより好ましい。金属酸化物原料ガスにおける酸素ガスの濃度は、1〜10体積%であることが好ましく、2〜5体積%であることがより好ましい。不活性ガスと有機金属化合物と酸素ガスの混合の順番は、3つ同時に混合する形態、いずれか2つを先の混合し、残り一つをさらに混合する形骸がある。本実施形態では、有機金属化合物のバブリングのために不活性ガスと有機金属化合物をまず混合し、次にこれに酸素ガスを混合する順番が好ましい。TrMSは常温、大気圧において気体であるので、不活性ガスおよび酸素ガスとそれぞれ所定の比率で混合して原料ガスとしてもよい。大気圧下において高周波パルス電圧を印加して金属酸化物原料ガスを放電プラズマ化し、放電プラズマ化された金属酸化物原料ガスを成膜の対象となる表面に接触させて、この表面に酸化ケイ素系薄膜を形成する。高周波パルス電圧の引加条件は、非晶質炭素系薄膜を形成するための条件と同じである。
【0031】
非晶質炭素系薄膜を形成するための工程と酸化ケイ素系薄膜を形成するための工程を、いずれか一方を先に行い、次に他方を行うことで、薄膜を積層することができる。必要に応じて、これらの工程を繰り返し交互に行う。これらの工程を繰り返す場合に、前の薄膜形成工程の後に0〜60秒の範囲の時間内に次の薄膜形成工程を行うことが好ましい。
積層の間隔が短いほど、雰囲気中の水分等の吸着がすくなく薄膜同士の良好な密着性が得られる。
【0032】
[薄膜積層フィルムの製造装置]
本実施形態に係る薄膜積層フィルムの製造装置は、基材となる帯状のプラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、大気圧プラズマCVD法によって少なくとも2種以上の薄膜を積層して成膜する。この製造装置は、帯状のプラスチックフィルムを搬送しながら連続して成膜を行い、かつ、薄膜を積層することができ、高い生産性を持つ。
図1を参照して、本実施形態に係る薄膜積層フィルムの製造装置を説明する。
【0033】
図1は本実施形態に係る薄膜積層フィルムの製造装置100を示しており、(A)は全体図、(B)はロール電極51の拡大図である。製造装置100は、並べて配置された少なくとも2つ以上のチャンバー7(7A,7B)と、高周波パルス電源45,46を有する。
図1において、チャンバー7Aとチャンバー7Bとは直列に配置されている。製造装置100が3つ以上のチャンバー7を有する場合も直列に配列する(不図示)。製造装置100は、基材となる帯状のプラスチックフィルムが巻かれた成膜用のロール1と、成膜後の帯状のプラスチックフィルムを巻き取るためのロール2とを有している。ロール1から巻き出された帯状のプラスチックフィルムは、まずチャンバー7Aの内部を通り、その中で第1層の薄膜が製膜され、続いて、チャンバー7Bの内部を通り、その中で第2層の薄膜が成膜される。続いてチャンバー7Bを出たのちに帯状のプラスチックフィルムは、反転用の搬送ロール5,6によって反転されて、再びチャンバー7Bの内部を通り、その中で第3層の薄膜が成膜される。続いて、再びチャンバー7Aの内部を通り、その中で第4層の薄膜が成膜される。続いて帯状のプラスチックフィルムは、チャンバー7Aを出たのちにロール2に巻き取られる。帯状のプラスチックフィルムは、反転用の搬送用ロール5,6に到達するまでは、往路にあるプラスチックフィルム3であり、それ以降は復路にあるプラスチックフィルム4である。往路にあるプラスチックフィルム3は、搬送用ロール21,22,23,24,25,26によって、搬送ルートが決められる。復路にあるプラスチックフィルム4は、搬送用ロール27,28,29,30,31,32によって、搬送ルートが決められる。反転用の搬送用ロール5,6はプラスチックフィルムを挟みこんでいる。また、いずれの搬送用ロールもプラスチックフィルムの搬送がスムーズに行えるように、同調して回転駆動させられることが好ましい。
【0034】
製造装置100は、第1層の薄膜と第4層の薄膜が同一組成(A組成という。)であり、第2層の薄膜と第3層の薄膜が同一組成(B組成という。)である。したがって、得られた薄膜積層フィルムは、帯状のプラスチックフィルム上に、下からA組成/B組成/A組成の3層構造を有することとなる。
【0035】
次にチャンバー7Aについて詳細に説明する。チャンバー7Aは、帯状のプラスチックフィルム3,4が、チャンバー7Aの内部を往復して通過するために仕切り8に出入り口12a,12bを有し、仕切り9に出入り口13a,13bを有する。この出入口は、帯状のプラスチックフィルム3,4と干渉せず、かつ、チャンバー内外のガスの出入りを極力抑制するという観点から、フィルムと出入り口の端部との距離が0.1〜0.5mmとなることが好ましい。出入り口13a、13bには、シート又は布状のカーテンを設けて、プラスチックフィルムと接触させることによってチャンバー内外のガスの出入りを防止してもよい。チャンバー7Aの内部空間には、往路にある帯状のプラスチックフィルム3の非成膜面が接触し、かつ自らの軸線まわりに回転して往路にある帯状のプラスチックフィルム3を搬送する複数のロール電極53,54からなる第1ロール電極群55と、復路にある帯状のプラスチックフィルム4の非成膜面が接触し、かつ自らの軸線まわりに回転して復路にある帯状のプラスチックフィルム4を搬送する複数のロール電極50,51からなる第2ロール電極群52とが、往路にある帯状のプラスチックフィルム3の被成膜面と復路にある帯状のプラスチックフィルム4の被成膜面とが隙間をもって平行となる位置に配置されている。隙間の間隔(往路にある帯状のプラスチックフィルム3の被成膜面と復路にある帯状のプラスチックフィルム4の被成膜面との距離)は1〜5mmが好ましく、1〜3mmが特に好ましい。なお、隙間の間隔は、ロール電極の移動機構によって調整が可能である。第1ロール電極群55の複数のロール電極53,54は、互いに接触し合わないように間隔が設けられている。
図1では、第1ロール電極群55の複数のロール電極が2本である形態を示したが、3本以上あってもよい。第2ロール電極群52の複数のロール電極50,51は、互いに接触し合わないように間隔が設けられている。
図1では、第2ロール電極群52の複数のロール電極が2本である形態を示したが、3本以上あってもよい。第1ロール電極群55の複数のロール電極53,54及び第2ロール電極群52の複数のロール電極50,51は、それぞれロール外周に誘電体層を有する。
図1(B)を参照して、ロール電極51について説明する。ロール電極51は、円柱状の電極体51aと円柱の軸線に位置する回転軸51bを有し、さらに円柱状の電極体51aのロール外周に誘電体層51cを有する。他のロール電極50,53,54,56,57,59,60についても同様である。誘電体層51cは、例えば、ポリイミドテープ、フッ素系ゴムテープ、シリコーン系ゴムをロール外周に巻きつける形態、アルミナなどの絶縁酸化被膜をロール外周にコーティングする形態がある。ロール外周の全面を誘電体層で覆うことが好ましい。
図1では、第1ロール電極群55が接地されている。また第2ロール電極群52は、高周波パルス電源45から高周波パルス電圧が印加されている。なお、第1ロール電極群55に高周波パルス電圧を印加し、第2ロール電極群52を接地してもよい。第1ロール電極群55の複数のロール電極53,54は互いに導電部材で電気的に連結されており、この導電部材を接地することが好ましい。また、第2ロール電極群52の複数のロール電極50,51は、互いに導電部材で電気的に連結されており、この導電部材に高周波パルス電圧を印加することが好ましい。導電部材は、例えばロール電極の回転軸と導通する。第1ロール電極群55と第2ロール電極群52との間の空間71は、高周波パルス電圧の印加によって放電空間となる。さらにチャンバー7Aの内部空間には、薄膜の1層を形成するための原料ガスを吹き出す原料ガスノズル41が配置されている。原料ガスノズル41は、往路にあるプラスチックフィルム3と復路にあるプラスチックフィルム4とが、往路にあるプラスチックフィルム3からみて最初に空間71を通過する手前の位置に配置されることが好ましい。空間71のフィルム搬送方向における長さは例えば20〜200mmである。原料ガスノズル41は、放電空間(空間71)に向けて原料ガスを吹き出す。また、チャンバー7Aの内部空間には、排気口42が、空間71を介して原料ガスノズル41と対向する位置に設けられている。放電空間(空間71)を通過した原料ガスが排気口42を通って排気される。
【0036】
次にチャンバー7Bについて詳細に説明する。チャンバー7Bは、帯状のプラスチックフィルム3、4が、チャンバー7Bの内部を往復して
通過するために仕切り10に出入り口14a,14bを有し、仕切り11に出入り口16a,16bを有する。この出入口は、帯状のプラスチックフィルム3,4と干渉せず、かつ、チャンバー内外のガスの出入りを極力抑制するという観点から、フィルムと出入り口の端部との距離が0.1〜0.5mmとなることが好ましい。出入り口14a、14bには、シート又は布状のカーテンを設けて、プラスチックフィルムと接触させることによってチャンバー内外のガスの出入りを防止してもよい。チャンバー7Bの内部空間には、往路にある帯状のプラスチックフィルム3の非成膜面が接触し、かつ自らの軸線まわりに回転して往路にある帯状のプラスチックフィルム3を搬送する複数のロール電極59,60からなる第1ロール電極群61と、復路にある帯状のプラスチックフィルム4の非成膜面が接触し、かつ自らの軸線まわりに回転して復路にある帯状のプラスチックフィルム4を搬送する複数のロール電極56,57からなる第2ロール電極群58とが、往路にある帯状のプラスチックフィルム3の被成膜面と復路にある帯状のプラスチックフィルム4の被成膜面とが隙間をもって平行となる位置に配置されている。隙間の間隔(往路にある帯状のプラスチックフィルム3の被成膜面と復路にある帯状のプラスチックフィルム4の被成膜面との距離)が1〜5mmが好ましく、1〜3mmが特に好ましい。なお、隙間の間隔は、ロール電極の移動機構によって調整が可能である。第1ロール電極群61の複数のロール電極59,60は、互いに接触し合わないように間隔が設けられている。
図1では、第1ロール電極群61の複数のロール電極が2本である形態を示したが、3本以上あってもよい。第2ロール電極群58の複数のロール電極56,57は、互いに接触し合わないように間隔が設けられている。
図1では、第2ロール電極群58の複数のロール電極が2本である形態を示したが、3本以上あってもよい。第1ロール電極群61の複数のロール電極59,60及び第2ロール電極群58の複数のロール電極56,57は、それぞれロール外周に誘電体層(ロール電極51の誘電体層51cと同様である。)を有する。誘電体層は、例えば、ポリイミドテープ、フッ素系ゴムテープ、シリコーン系ゴムをロール外周に巻きつける形態、アルミナなどの絶縁酸化被膜をロール外周にコーティングする形態がある。ロール外周の全面を誘電体層で覆うことが好ましい。
図1では、第1ロール電極群61が接地されている。また第2ロール電極群58は、高周波パルス電源46から高周波パルス電圧が印加されている。なお、第1ロール電極群61に高周波パルス電圧を印加し、第2ロール電極群58を接地してもよい。第1ロール電極群61の複数のロール電極59,60は互いに導電部材で電気的に連結されており、この導電部材を接地することが好ましい。また、第2ロール電極群58の複数のロール電極56,57は、互いに導電部材で電気的に連結されており、この導電部材に高周波パルス電圧を印加することが好ましい。導電部材は、例えばロール電極の回転軸と導通する。第1ロール電極群61と第2ロール電極群58との間の空間72は、高周波パルス電圧の印加によって放電空間となる。さらにチャンバー7Bの内部空間には、薄膜の1層を形成するための原料ガスを吹き出す原料ガスノズル43が配置されている。原料ガスノズル43は、往路にあるプラスチックフィルム3と復路にあるプラスチックフィルム4とが、往路にあるプラスチックフィルム3からみて最初に空間72を通過する手前の位置に配置されることが好ましい。空間72のフィルム搬送方向における長さは例えば20〜200mmである。原料ガスノズル43は、放電空間(空間72)に向けて原料ガスを吹き出す。また、チャンバー7Bの内部空間には、排気口44が、空間72を介して原料ガスノズル43と対向する位置に設けられている。放電空間(空間72)を通過した原料ガスが排気口44を通って排気される。
【0037】
チャンバー7Aとチャンバー7Bとの間には、仕切り9,10で挟まれた中部屋17を設けることが好ましい。中部屋17には、排気口15が設けられている。出入り口13a,13b,14a,14bから中部屋17に漏れた各チャンバー7A、7Bからの原料ガスを含むガスが排気口15から排気される。これによって、各チャンバー7A、7Bの内部空間の互いのガス混入が抑制される。
【0038】
隣り合うチャンバー(7Aと7B)の原料ガスノズル41,43は、互いに異種の原料ガスを流す。原料ガスは、例えば、チャンバー7Aの原料ガスノズル41からは、前記炭素系原料ガスを流し、チャンバー7Bの原料ガスノズル43からは、前記炭素系原料ガスを流し、金属酸化物原料ガスを流す。こうすることによって、薄膜積層フィルムは、帯状のプラスチックフィルム上に、下から非晶質炭素系薄膜/酸化ケイ素系薄膜/非晶質炭素系薄膜の3層構造を有することとなる。また、ガスの種類の関係を逆にすれば、薄膜積層フィルムは、帯状のプラスチックフィルム上に、下から酸化ケイ素系薄膜/非晶質炭素系薄膜/酸化ケイ素系薄膜の3層構造を有することとなる。
【0039】
次に製造装置100の変形例を示す。チャンバー7A、チャンバー7B、折り返し用の搬送ロール5,6と順に並んでいるところに一つチャンバーを追加してチャンバー7A、チャンバー7B、チャンバー(不図示。以降チャンバーCという。)、折り返し用の搬送ロール5,6と順に配置してもよい。3つのチャンバーを直列に配置し、かつ、隣り合うチャンバーの原料ガスノズルは互いに異種の原料ガスを流すことで、薄膜の積層数を増やすことができる。例えば、チャンバー7AにはA組成の薄膜を成膜するための原料ガスAを用い、チャンバー7BにはB組成の薄膜を成膜するための原料ガスBを用い、チャンバーC1には原料ガスAを用いることで、薄膜積層フィルムは、帯状のプラスチックフィルム上に、下からA組成の薄膜/B組成の薄膜/A組成の薄膜/B組成の薄膜/A組成の薄膜の5層構造を有することとなる。さらに、チャンバーCと折り返し用の搬送ロール5,6との間にチャンバーを1つ以上追加してもよい。こうすることで、さらに積層数を増やすことができる。
【0040】
次に
図2を参照して製造装置200を説明する。製造装置100のロール電極群の代わりに製造装置200では、一対のプレート状電極152,155を配置している。プレート状電極152のプレート152aには、高周波パルス電源145が接続されている。プレート状電極155のプレート155aは接地されている。これらの接続関係は逆にしてもよい。プレート状電極152,155のプラスチックフィルム3,4の進行方向の前後には、プラスチックフィルム3,4を一対のプレート状電極152,155の隙間空間内にスムーズに導入するための搬送用ロール153が配置されていることが好ましい。プレート152a,155aの対向しあう面には誘電体層152b,155bをそれぞれ設けてもよい。誘電体層152b,155bは、製造装置100と同様の誘電体層とすることができる。この場合、プラスチックシート3,4が接触して滑っていくために誘電体層152b,155bの表面はプラスチックフィルム3,4との摩擦係数が低いことが好ましい。また、チャンバー7Bのロール電極群の代わりに一対のプレート状電極158,161を配置している。一対のプレート状電極158,161の構成は、一対のプレート状電極152,155と同様にすることが好ましい。
【0041】
次に
図3を参照して製造装置300を説明する。製造装置100のロール電極群の代わりに製造装置300では、ベルト駆動ローラ250,251に導電性を有するベルト270を巻きつけたベルト状の電極群252を配置している。また、ベルト駆動ローラ253,254に導電性を有するベルト271を巻きつけたベルト状の電極群255を配置している。ベルト状の電極群252とベルト状の電極群255とは一対であり、ベルト270と271とが対向しあう面同士が平行になるようにベルト状の電極群252とベルト状の電極群255が配置されている。ベルト駆動ローラ251は、回転軸251aによって回転が可能であり、他のベルト駆動ローラも同様に回転軸を有する。ベルト駆動ローラ250,251,253,254は、ベルト270と271とがプラスチックフィルム3,4の搬送と同期して回動する機構を有していることが好ましい。ベルト270,271の材質は、金、銀、白金、ステンレス、銅、鉄などの金属が好ましく、ベルト270,271の互いに対向する面は、誘電体層270a,271aで覆われていることが好ましい。誘電体層270a,271aは、シリコンゴム、耐熱性プラスチックなどの誘電体シートであることが好ましい。ベルト270の誘電体層270aを設けた面の反対面、即ち、ベルト270の内側面は金属露出面であり、ロール型接点274と接触している。ロール型接点274の回転軸には高周波パルス電源245が接続されている。ベルト271の誘電体層271aを設けた面の反対面、即ち、ベルト271の内側面は金属露出面であり、ロール型接点275と接触している。ロール型接点275の回転軸は接地されている。なお、電力の入力と接地の接続関係は逆にしてもよい。また、チャンバー7Bのロール電極群の代わりに一対のベルト状の電極群258,261を配置している。一対のベルト状の電極群258,261の構成は、一対のベルト状の電極群252,255と同様にすることが好ましい。
【0042】
各チャンバーにおける薄膜の成膜速度は、所定のフィルム搬送速度としたときに所望の膜厚が得られるように、それぞれ、原料ガスの供給量、原料ガスの濃度、原料ガスのプラズマ化条件などを調整する。また、成膜条件を決定するための試験運転時では、各チャンバーにおける薄膜の成膜速度が一定となる条件(例えば、DLC成膜速度は50nm/秒、SiOx膜の成膜速度は10nm/秒)で運転を行い、フィルム搬送速度を調整することで、所望の膜厚となるように成膜を行ってもよい。この場合は、各チャンバーにおける成膜を常時オンとせずに適時オン・オフを行うことで、フィルム搬送速度の調整を行えるようにする。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
製造装置100の変形例で示したチャンバーを3つ(チャンバー7A、チャンバー7B及び
図1では不図示のチャンバーC)、直列に並べたタイプを用いて本発明の目的とする薄膜積層フィルムを作製する例を示す。チャンバー7Aが成膜用のロール1側にあり、チャンバーCが搬送用ロール5,6側にある。
【0045】
(基材)
基材としては、ナイロンフィルム(興人製、ボニールRX、厚み15μm)を、幅100mm、長さ10mのロール状にして使用した。また、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、ルミラーS10、厚み23μm)を、幅100mm、長さ10mのロール状にして使用した。
【0046】
各実験例の実験条件を表1に示した。なお、放電空間(空間71,72)の間隔はいずれのチャンバーにおいても2mmとした。プラズマ放電化は、常圧条件として、95kPa(0.095MPa)で実施し、チャンバー内部の圧力(放電空間(空間71,72)における圧力を含む)も同じ圧力を維持するようにした。高周波電圧の印加条件は、18kVの負ピーク電圧で、20kHzでピーク幅10マイクロ秒である。また、チャンバーの内部は、95kPaの圧力の窒素ガスに置換した常圧条件とした。ロール電極は銅製であり、ロールの外周に巻かれた誘電体層は、シリコンゴムテープである。対向するロール電極に生じるプラズマ発生空間のフィルム進行方向の距離は20mmである。
【0047】
チャンバーBにおいて、金属酸化物原料ガスは、次のように調整した。
【0048】
(TrMSを用いる場合)
窒素ガスからなる希釈ガスとTrMSと酸素ガスを混合した原料ガスを、原料ガスノズル43に導入した。
【0049】
(HMDSOを用いる場合)
窒素ガスからなる希釈ガスとHMDSOを蒸気発生器(エバポレーター)で混合して蒸気状の前駆体化合物とし、かかる蒸気状の前駆体化合物と酸素ガスを混合した原料ガスを、原料ガスノズル43に導入した。
【0050】
原料ガスノズルはスリット状のガス導入部を有し、放電空間(空間71,72)の幅と同じとした。排気口はスリット状の吸い込み口を有し、放電空間(空間71,72)の幅と同じとした。
【0051】
フィルム搬送速度は、積層する各層に所定の膜厚を得るために、その都度速度を調整した。本実験条件での非晶質炭素系薄膜(DLC薄膜と表記する。)の成膜速度は50nm/秒、酸化ケイ素系薄膜(SiOx薄膜と表記する)の成膜速度は10nm/秒であるので、プラズマ発生空間の距離20mmの移動時間を搬送時間によって調整し各層の膜厚を制御した。なお、前述のとおり、実用装置では一定の搬送速度において、プラズマ発生空間の距離を替えることによって各層の膜厚の制御が可能である。
【0052】
実験例33及び34については、次の通り成膜を行った。すなわち、チャンバー7Aで成膜を行わず、チャンバー7Bを通過させて成膜を行い、さらにチャンバー7Cを通過させて成膜を行い、その後復路はチャンバー7B,チャンバー7Aともに成膜を行わずに巻き取りした。
【0053】
(OTR)
酸素ガス透過係数(OTR)は、酸素ガス透過率測定器(Mocon社製、型式Oxtran2/20)を用いて測定した。
(膜厚)
膜厚は、触針式表面形状測定器(Dektak3030、Veeco Instruments Inc.,USA社製)を用いて測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
実験例1〜34について、実験条件、得られた薄膜の層構成及びOTRの測定結果をまとめた。また、
図4〜
図11に、走査型電子顕微鏡による表面観察の画像を示した。
図4は、実験例1のSEM画像であり、基材は未被覆である。
図5は、実験例3のSEM画像であり、SiOx50nmの膜で被覆されている。
図6は、実験例5のSEM画像であり、SiOx100nmの膜で被覆されている。
図7は、実験例7のSEM画像であり、DLC50nmの膜で被覆されている。
図8は、実験例9のSEM画像であり、DLC100nmの膜で被覆されている。
図9は、実験例15のSEM画像であり、DLC100nm/SiOx50nm/DLC100nmの積層膜で被覆されている。
図10は、実験例19のSEM画像であり、DLC100nm/SiOx100nm/DLC100nmの積層膜で被覆されている。
図11は、実験例33のSEM画像であり、SiOx50nm/DLC100nmの積層膜で被覆されている。
【0056】
図5及び
図6を参照すると、基材の上に成膜したSiOx膜は直径10〜200nmのピンホールが多く発生していた。これに対して、
図7〜
図8を参照すると、基材の上に成膜したDLC膜はピンホールの発生が見られず、表面は平滑であった。さらに、
図9及び
図10を参照すると、基材の上に成膜したDLC/SiOx/DLCの3層構造の薄膜は、白い斑点状の組織が観察された。また
図11を参照すると、基材の上に成膜したSiOx/DLCの2層構造の薄膜は、3層構造と同様の白い斑点状の組織が観察された。
【0057】
図9及び
図10の白い斑点状の部分は、DLC薄膜上に成膜されたSiOx薄膜に発生したピンホールがその上に成膜されたDLC薄膜によって埋められた跡であることが確認できた。SiOx薄膜のピンホールではない部分の上にもDLC薄膜が成膜されていた。そして、SiOx薄膜の上に形成されているDLC薄膜がSiOx薄膜のピンホールの内部に嵌入していることも確認できた。
図11から、SiOx薄膜上にDLC薄膜を成膜したのみであっても、SiOx薄膜上のピンホールが埋められていることが確認できた。
【0058】
ガスバリア性として酸素ガス透過率(OTR)の改善率を比較する。例えば、15μ厚のポリアミドフィルム(39cc/day/m
2/atm、50%RH,135cc/day/m
2/atm、90%RH)を基材とした場合、大気圧CVDによるSiOxコーティング、膜厚50nmでは(実験例3,4)、OTRは15.5cc/day/m
2/atm、50%RH,66cc/day/m
2/atm、90%RHである。大気圧CVDによるDLCコーティング、膜厚100nmでは(実験例9,10)、38cc/day/m
2/atm、50%RH,130cc/day/m
2/atm、90%RHである。しかし、積層の構成をDLC100nm/SiOx50nm/DLC100nmの3層とすると(実験例15,16)、6cc/day/m
2/atm、50%RH,18cc/day/m
2/atm、90%RHに低下する。さらにDLC100nm/SiOx50nm/DLC100nm/SiOx50nm/DLC100nmとすると(実験例17、18)、2.5cc/day/m
2/atm、50%RH,12cc/day/m
2/atm、90%RHに低下する。またSiOx50nm/DLC100nm(実験例33、34)のような2層構造であっても、6cc/day/m
2/atm、50%RH,29cc/day/m
2/atm、90%RHに低下する。さらにポリアミドフィルムは50RH%の湿度条件から90%RHになるとOTRが顕著に高くなるが、2層、3層又は5層の積層フィルムでは、OTRの増加を低く抑える効果が見られる。
【0059】
この理由は、大気圧CVDで成膜したDLC層は、ポリマーライクのためガスバリア性の改善効果は大きくないが、柔軟性があり、基材との密着性が高いため折り曲げに強く、一方、SiOx膜は、SEM観察の結果、10〜200nmのピンホールが多く発生するがDLC薄膜と比較すればより無機膜に近く、ピンホールを除くとガスバリア性が高い(実験例3と7との比較による。)。しかしSiOx膜は、緻密なため、密着性や折り曲げ加工には弱い。このDLC膜をSiOx膜の上に被覆するとSiOx膜のピンホールにDLCが埋めるように堆積し、ガスバリア性が飛躍的に向上するとともに、DLC膜が緩衝することによって、加工時の損傷が少なくなるものと考えられる。また基材に最初にDLC膜を被覆することにより、吸湿や応力によって基材に生じる変形をDLC膜が緩衝し、またSiOx膜との密着性もよいためSiOx膜が変形を受けてクラックを生じる現象を防ぐ効果もあると考えられる。