(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのような選択的かつ高感度なCpG ODN選択系を提供することが本発明の目的の1つである。
【0014】
驚くべきことに、家禽TLR21のToll−インターロイキンI受容体抵抗性(TIR)ドメインと哺乳類TLR9の細胞外リガンド結合性ドメインとを含むハイブリッドtoll様受容体が、前記の低い機能的発現または非発現の問題を克服しうることが本発明において見出された。TLRは、N末端シグナルペプチド、ロイシンに富む反復配列を含有する細胞外リガンド結合性ドメイン、単一TMドメインおよび主にToll−インターロイキンI受容体抵抗性(TIR)ドメインを含む細胞質領域、から構成される、良く保存されたI型膜貫通(TM)タンパク質である。
【0015】
単なる一例に過ぎないが、マウスTLR9の細胞外ドメインはa.a.(アミノ酸)1−820の領域に伸長し、膜貫通ドメインはa.a.820−838の領域に伸長し、細胞質ドメインはa.a.838−1032の領域に伸長する。TIRドメインは、a.a.872−1032の領域に伸長する(Kajitaら,BBRC 343:578−584(2006))。
【0016】
TLR9の及び家禽ホモログTLR21の区画化は、「細胞外ドメイン」と称されるTLR9および21の部分がエンドリソソーム内に位置する点で、TLR1、2、4、5および6の区画化とは或る程度異なっている。その結果、TLR9/21のTM領域は細胞膜ではなくエンドリソソーム膜に伸長する。TLRのこの態様および細胞生物学全般は、Barton G.M.およびKagan,J.C.,Nature Reviews 9;535−542(2009)に概説されている。哺乳類TLRの一例に過ぎないが、ウシ、家禽およびイヌTLR9の配列は、それぞれ配列1、3および5(核酸配列)、ならびに配列番号2、4および6(アミノ酸配列)に記載されている。
【0017】
哺乳類TLR9の細胞外リガンド結合性ドメインのCpG ODN特異性と家禽TLR21のToll−インターロイキンI受容体抵抗性(TIR)ドメインのシグナリング特性とを併せ持つ本発明のハイブリッドTLRは、許容し得ない悪影響を伴うことなくトランスフェクト化細胞により受容され、同時に、それらは、哺乳類種に対して特異的に免疫刺激性であるCpG ODNの特異的検出に非常に良く適していることが判明している。そのようなハイブリッドTLRをコードするDNAを含むプラスミドでの例えばHEK293細胞またはMDCK細胞のトランスフェクションはハイブリッドTLRの安定発現をもたらし、そしてこれは、哺乳動物において活性であることが知られている外因性CpG ODN(例えば、2006−ODNおよび2007−ODN)での刺激に際して顕著なNF−κB活性化を招いた。
【0018】
したがって、本発明の第1実施形態は、家禽TLR21のToll−インターロイキンI受容体抵抗性(TIR)ドメインと哺乳類TLR9の細胞外リガンド結合性ドメインとを含むことを特徴とするハイブリッドtoll様受容体に関する。
【0019】
膜貫通領域(TM領域)の起源および細胞質ドメインの非TIR関連部分の起源は決定的に重要なものではなく、これらは、独立して、TLR9またはTLR21に由来しうる。
【0020】
この実施形態の好ましい形態においては、哺乳類TLR9の細胞外リガンド結合性ドメインは、ヒト、ウシ、ブタまたはイヌ由来である。哺乳類TLR9の細胞外リガンド結合性ドメインがウシ、ブタまたはイヌ由来である本発明のハイブリッドTLRの例は、それぞれ、配列番号8、10および12(核酸配列)、ならびに配列番号9、11および13(アミノ酸配列)に示されている。
【0021】
「免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチド」は、NF−κBまたはインターフェロン調節因子3(IRF3)のような転写因子の活性化を招くシグナリングカスケードの始動を刺激する非メチル化シチジン−ホスファート−グアノシンジヌクレオチド配列を含有するオリゴデオキシヌクレオチドを意味する。そしてこの活性化は、炎症性サイトカインの発現および他の細胞活性化事象を引き起こす。NF−κB結合部位およびNF−κBにより影響される遺伝子発現は、とりわけ、SchindlerおよびBaichwal(1994)により記載されている。
【0022】
オリゴデオキシヌクレオチドなる語は、デオキシヌクレオチド(すなわち、ホスファート基に及び交換可能な有機塩基に結合した多数のデオキシリボースを含む分子)の短い核酸重合体を意味する。そのような有機塩基は、置換ピリミジンまたは置換プリンである。具体例としては、それぞれ、シトシンおよびチミンならびにアデニンおよびグアニンが挙げられる。本発明のオリゴヌクレオチドは修飾を含みうる。そのような修飾の例としては、例えば、ヌクレオシドの3’および/または5’末端に位置するホスホジエステルヌクレオシド間架橋における修飾が挙げられる。そのような修飾は、とりわけ、例えばホスホロチオアートまたはホスホロジチオアートによるホスホジエステルの置換に関するものである。基本的に、合成方法に応じて2つのヌクレオチド間の通常の一般結合型は、ホスホジエステル(PDE)結合およびホスホロチオアート(PTO)結合である。CpG ODNの安定性および免疫刺激効果を改善するために、合成オリゴデオキシヌクレオチドのビルディングブロックには、それらがPTO結合を形成するようにホスホロチオアートが付与されうる。
【0023】
他の修飾としては、例えば、デホスホ架橋によるホスホジエステル架橋の置換が挙げられる。デホスホ架橋の例としては、メチルヒドロキシルアミン、ホルムアセタールおよびジメチレンスルホン基が挙げられる。
【0024】
更に他の修飾としては、5−フルオロシトシン、7−デアザ−7−置換グアニン、7−デアザ−8−置換グアニン、2−チオウラシル、ジヒドロウラシル、5−ブロモ−シトシン、6−置換シトシンまたはN4−置換シトシンのような非天然ヌクレオシド塩基による天然ヌクレオシド塩基の置換に関する修飾が挙げられる。
【0025】
この場合もまた、他の修飾としては、修飾糖単位、例えばL−2’−デオキシリボースまたは2’−L−アラビノースによる糖単位、すなわち、β−リボース糖またはβ−D−2’リボース糖単位の置換に関する修飾が挙げられる。
【0026】
オリゴヌクレオチドにおける更なる洞察を示している書籍としては、例えば、“PCR Primer:A Laboratory Manual”,Second Edition,2003,Carl W.Dieffenbach編, National Institute of Allergy and Infectious Diseases;Gabriela S.Dreksler,Uniformed Services University of the Health Sciences,Cold Spring Harbor Laboratory Press ISBN 978−087969654−2が挙げられる。
【0027】
新規CpG ODNの検出のためには、本発明のハイブリッドTLRを含む細胞を含む系が必要である。
【0028】
したがって、本発明の第2実施形態は、本発明のハイブリッドTLRを含む細胞に関する。
【0029】
前記のとおり、TLR9に対するCpG ODNアゴニストは、主としてNFカッパ−B(NF−κB)経路を介してシグナル伝達する(Medzhitov 2001)。したがって、細胞における(NF−κB)経路の化合物の量および発生に対するCpG ODNの効果の検出は、PAMPとしてのその活性を示す。Brownlieら(2009)は、NF−κBルシフェラーゼに基づくレポーター系を記載している。他のレポーター系は、例えば、IL−8転写産物の測定またはサイトカイン分泌またはNO分泌の検出に基づく。
【0030】
したがって、この実施形態の好ましい形態は、NF−κBレポーター遺伝子を含むプラスミドを含むことを特徴とする本発明の細胞に関する。
【0031】
前記のそのようなレポーター系は、有用ではあるがそれらがそれほど高感度ではないという欠点を有する。既存の及び新たに開発されたCpG ODNの活性の厳密な決定のためには、高感度検出系が予め必要である。本発明者らはここで、驚くほどに高感度であることが判明した本発明における検出系を使用した。この系は、レポーター遺伝子によりコードされるレポーター酵素としての、分泌性アルカリホスファターゼ(SEAP)と称される酵素の使用に基づく。SEAPは哺乳類系におけるレポーター酵素である(Yangら,1997)。この系においては、SEAP発現は、ELAMプロモーターと組合された5つのNF−κB転写因子結合部位により制御される(J.Biol.Chem.1991,Feb 5;266(4):2466−73)。
【0032】
したがって、この第2の実施形態のより好ましい形態は、レポーター遺伝子が分泌性アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードしている本発明の細胞に関する。SEAP系は、基質としてのパラ−ニトロフェニルホスファート(pNPP)と共に使用される。
【0033】
既存の形態と比較した場合のもう1つの重要な改善は、レポーター遺伝子を含有するプラスミドの細胞内への導入および細胞内での安定維持である。これまでは、全ての検出系は、レポーター遺伝子での細胞の一過性トランスフェクションを用いていた。そのような一過性系は、CpG ODNの効力の信頼しうる並列的比較を可能にしない。通常、プラスミドの安定維持は、プラスミド上に耐性遺伝子が存在する抗生物質のような1以上の選択的試薬の圧力下、細胞を増殖させることにより得られる。したがって、プラスミドの喪失は、プラスミドを喪失した細胞を死亡させる。残存している生細胞はプラスミドを尚も含有するであろう。安定は、プラスミドが、数回の細胞分裂周期後に好ましくは細胞ゲノム内に組込まれて依然として存在することを意味する。CpG ODNに関する再現可能な用量/反応曲線が本発明において初めて作成可能となったのは、レポーター遺伝子の細胞内への導入および細胞内での安定維持による。そのような曲線は、種々のCpG ODN活性間の信頼しうる比較を行おうとする場合に必須である。
【0034】
したがって、細胞に関するこの第2実施形態のもう1つの好ましい形態は、NF−κBレポーター遺伝子をコードするプラスミドを含むものであり、プラスミドは細胞内で安定に維持される。そのような細胞は、CpG分子のスクリーニング、より詳細には、本発明のCpG分子のスクリーニングにおける使用に非常に適している。実施例は、細胞内で安定に維持されうるレポーター遺伝子をコードするプラスミドを含むそのような細胞の入手方法に関する十分な指針を記載している。
【0035】
基本的には、NF−κBレポーター遺伝子、好ましくは前記のSEAP遺伝子を含有するプラスミドの導入および好ましくは安定維持を可能にする本発明のハイブリッドTLRを含有するいずれかの細胞または細胞系は、TLR9特異的CpG ODNを試験するのに適している。TLR9特異的CpG ODNを試験するためのそのような適当な細胞系の一例は、細胞系HEK293(ATCC番号CRL−1573)である。TLR9特異的CpG ODNを試験するための好ましい細胞系は、細胞系Madin Darby(メイディン・ダービー)イヌ腎臓(ATCC番号CCL−34)(MDCK)である。
【0036】
したがって、この第2実施形態のもう1つの好ましい形態は、細胞がHEK293細胞、好ましくはMDCK細胞である本発明の細胞に関する。
【0037】
本発明の実施例に詳細に記載されている方法および細胞系は、哺乳類種において使用される種々のCpG ODN間の信頼しうる並列的比較を初めて可能にする。したがって、本発明の免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドの検出方法に関する本発明の更にもう1つの実施形態は、a)オリゴデオキシヌクレオチドを本発明の細胞と接触させ、そして、b)レポーター遺伝子の産物のレベルを検出する工程を含む。
【0038】
この方法の好ましい形態においては、レポーター遺伝子の産物はSEAPである。
【0039】
後記実施例に示されているとおり、本発明のハイブリッドtoll様受容体は、新規CpG ODNの特定のために広範に使用されている。本発明のCpGオリゴデオキシヌクレオチドは、ほとんどの場合、インビトロ試験系およびインビボの両方において、2桁または更に時には1桁のナノモル濃度において活性である。オリゴデオキシヌクレオチドの半最大有効濃度(EC50)は、経時的に半最大吸光度変化を示す量の、レポーター細胞における(405nmで吸光する着色産物を産生する)レポーター酵素SEAPを誘導するために必要なオリゴデオキシヌクレオチドの量である。示されているVmax指標は、SEAPの色素原基質が405nmの吸光度を有する着色成分に変化する速度の指標である。高いVmaxは、CpG ODNがTLR反応を迅速に誘導しうることを示す。以下の新規免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドは、低いEC50(2桁または更には1桁のnM濃度)を有し、したがって、既に非常に低い濃度において非常に有効であることが判明した。
【0040】
[gacgtt]n、ここで、n>
=4
[gacgatcgtc]n、ここで、n>
=3
[tcgtcgttttcg]n、ここで、n>
=3
[tcgtcgttgtcgttttgtcgtt]n、ここで、n>
=2
(tx[ttcgtt]ty)n、ここで、n>
=5,x=0−5およびy=0−5[ttcgtN1]n、ここで、N1=tまたはc、およびn>
=5
[N1tcgtc]n、ここで、N1=tまたはc、およびn>
=5
[gN1cgtt]n、ここで、n>
=4およびN1=aまたはt
[tcg]x、ここで、n>
=6
[tcgN1]n、ここで、N1=cまたはg、およびn>
=6
[N1cgt]n、ここで、N1=gまたはcまたはaまたはt、およびn>
=6
[acga]n、ここで、n>
=6。
【0041】
これらの新規免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドの全ては、ホスホロチオアート(PTO)型のものであることに留意すべきである。したがって、本発明の更にもう1つの実施形態は、前記の12個の一般式のいずれかを有する免疫刺激性非メチル化PTOオリゴデオキシヌクレオチドに関する。
【0042】
全般的には、オリゴデオキシヌクレオチドの活性は、nが増加するにつれて増加することが見出された。この効果は、nが増加するにつれて一様になる。したがって、基本的には、バックボーン構造の数nは、少なくとも示されているnの数であるべきである。好ましくは、nの高域範囲はn<
=100である。これは、単に、合成配列が長くなればなるほど製造が困難になるからである。したがって、実際には、より好ましいnの高域範囲はn<
=40、より一層好ましくは、n<
=20である。
【0043】
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドを、反応性化学基を介して担体またはハプテンに結合させることは十分に可能である。そのような結合は、組み合わされた分子の免疫刺激効果を増強する。そのような成分の単なる具体例としては、例えば、ジゴキシゲニン、アミノヘキシル−、テキサスレッドおよびビオチンが挙げられる。好ましい担体またはハプテンは、3’−および5’−標識テキサスレッドならびに5’−標識ジゴキシゲニンである。ハプテン/担体にオリゴデオキシヌクレオチドを結合させることは、当該技術分野でよく知られている。
【0044】
したがって、この実施形態の好ましい形態は、前記の12個の一般式のいずれかを有する免疫刺激性非メチル化PTOオリゴデオキシヌクレオチドに関するものであり、ここで、オリゴデオキシヌクレオチドは、担体またはハプテンに結合している。
【0045】
本発明のもう1つの実施形態は、本発明の免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドを含むベクターに関する。そのようなベクターは、核酸分子、例えばプラスミド、ウイルス、バクテリオファージであるか、または分子生物学で使用されるいずれかの他のベクターでありうる。単なる一例であるが、免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドを含むベクターは、例えば、本発明の免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドがクローニングされた、細菌内で増殖しうるプラスミドのようなDNA分子でありうる。そのようなプラスミドは、好ましくは、多数のプラスミドを宿主内に存在させる活性複製起点を有する。そのような細菌の大規模な増殖およびそれに続くプラスミドの単離は、本発明の免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドの合成的製造の代替手段となる。この実施形態は、PDE型の免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドのみに適用されることに留意すべきである。
【0046】
本発明の目的の1つは、抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報および医薬上許容される担体と共に、感染症を予防または抑制するワクチンにおける有効な免疫刺激成分として使用されうる新規CpG ODNを提供することである。
【0047】
一般に、抗原成分なる語は、ヒトまたは動物に投与された場合に免疫応答を誘導、刺激または増強しうる少なくとも1つのエピトープを含む組成物を意味する。
【0048】
抗原成分は任意の種類の抗原成分でありうるが、好ましくは、野生型形態においてヒトまたは動物に対して病原性である微生物またはウイルスに由来する。
【0049】
抗原成分は、好ましくは不活化または弱毒化形態の、全病原体、病原体の抽出物、または病原体の免疫原性タンパク質(の免疫原性部分)でありうる。抗原成分が病原体の免疫原性タンパク質(の免疫原性部分)である場合、その免疫原性タンパク質は、好ましくは、インビトロ培養細胞において発現され、または細胞から回収される。
【0050】
したがって、もう1つの実施形態は、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドおよび/または本発明のベクターの免疫刺激量、抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報の免疫原性量と、医薬上許容される担体とを含むことを特徴とする、感染症を予防または抑制するためのワクチンに関する。
【0051】
オリゴデオキシヌクレオチドの免疫刺激量と抗原成分の免疫原性量とは強く相関する、と当業者は理解するであろう。感染症を予防または抑制するのに必要な抗原成分の量を低減しうる新規オリゴデオキシヌクレオチドが提供されることが、本発明の利点の1つである。感染症を予防または抑制するのに必要な抗原成分の量は、抗原成分の免疫原性量と称される。オリゴデオキシヌクレオチドの免疫刺激量は、抗原成分の免疫原性量(すなわち、感染症を予防または抑制するのに必要な抗原成分の量)を減少させうる量である。したがって、基本的には、「オリゴデオキシヌクレオチドの免疫刺激量」および「免疫原性量」なる語は、互いに関連していると理解される必要がある。
【0052】
言うまでもなく、ワクチンが抗原成分をコードする遺伝情報を含む場合、この遺伝情報により発現される抗原成分の量は、感染症を予防または抑制するのに十分なものであるべきである。すなわち、それは免疫原性量でなければならない。
【0053】
本発明の非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドが免疫刺激性であることは、それらがワクチンにおける抗原成分の免疫学的効力を増強することを意味する。その理由により、本発明のワクチンは、多くの場合、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドが存在しない場合より少ない、抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報を含むであろう。幾つかの場合には、免疫刺激性オリゴヌクレオチドの添加を伴わない抗原成分自体は、いずれにせよ大量が与えられなければならないほどに低い免疫原性特性を有していて、所望の免疫原性レベルには到達しないことがある。そのような場合、所望のレベルの免疫原性を得るために、抗原成分は、今回は本発明のオリゴデオキシヌクレオチドと共に通常の高い濃度で与えられうる。
【0054】
したがって、本発明のオリゴヌクレオチドと共に投与される抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報の量は、概括的には、オリゴヌクレオチドの非存在下で与えられる量に等しいか又はそれ未満であろう。特定のワクチンの製造に関わる当業者は、その特定のワクチンの量を認識するであろう。また、実施例は、例えば、使用される抗原成分の量に関する指針(例えば、イヌ種に対する狂犬病ワクチンに関するもの)を示している。
【0055】
抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報と共に投与される必要のある本発明のオリゴデオキシヌクレオチドの量は、選択されたオリゴデオキシヌクレオチドおよび抗原成分の両方に左右される。本発明のオリゴデオキシヌクレオチドの非常に好適な量は、通常、1〜100ナノモルの間で変動するであろう。例えば、ナノモル範囲でインビトロ試験において活性であることが示された30デオキシヌクレオチドの平均長を有する5〜50μgの本発明のオリゴデオキシヌクレオチドで、非常に良好なインビボの結果が得られている。ピコモル範囲で活性であるオリゴデオキシヌクレオチドの群からオリゴデオキシヌクレオチドが選択された場合、1ナノモル未満の量、おそらくは1ナノモルよりかなり少ない量、すなわち、ピコモルの量(例えば100〜1000ng)を、ナノモル量を試験する前に試験する価値があると当業者は認識するであろう。本発明のオリゴデオキシヌクレオチドのそれぞれの最適量が存在しうる、と当業者は認識すべきである。
【0056】
本発明のワクチンは、医薬上許容される担体を含む。この担体の性質は、とりわけ投与経路に左右される。投与経路が経口または鼻腔内経路である場合、担体は、無菌水、生理的塩溶液またはバッファーのように単純なものでありうるであろう。注射が好ましい経路である場合、担体は、好ましくは等張性であり、それを注射に適したものにするpH制限を有するべきである。しかし、そのような担体は当該技術分野で広く知られている。
【0057】
本発明のワクチンは、抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報および本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに加えてアジュバントを含む。一般に、アジュバントは、宿主の免疫応答を非特異的に増強する物質である。例えばフロイント完全および不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロック重合体およびポリアミド、例えば硫酸デキストラン、カルボポールおよびピラン、水酸化アルミニウムのような多数のアジュバントが好適であることが当該技術分野で公知である。リン酸化アルミン、サポニン、植物油、例えばトコフェロール、および鉱油も頻繁に使用される。非常に効率的なアジュバントは、水中油型エマルションおよび特に油中水型エマルション(更に、水中油型アジュバントおよび油中水型アジュバントとも称される)である。そのようなエマルションは、当該技術分野でよく知られている。したがって、好ましくは、ワクチンは油中水型アジュバントを含む。
【0058】
好ましくは、抗原成分は、野生型形態においてヒト、ブタ、イヌまたはウシ種に対して病原性であるウイルスまたは微生物であるか、そのようなウイルスまたは微生物に由来する。
【0059】
多数の病原体に関するワクチンが商業的に入手可能である。これらの病原体を以下に列挙する。
【0060】
したがって、より好ましくは、前記ウイルスまたは微生物は、ヒトパピローマウイルス、結核、ジフテリア、百日咳、破傷風、肺炎または髄膜炎を引き起こす細菌、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、B型肝炎ウイルス、レプトスピラ(Leptospira)、マイコバクテリウム・ヒオニューモニエ(Mycobacterium hyopneumomiae)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、口蹄疫ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ブタ呼吸器および生殖症候群ウイルス、イヌパルボウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、ブタサーコウイルス2、ウシヘルペスウイルス、狂犬病ウイルス、ブタコレラウイルス、ウマヘルペスウイルス、ブタパルボウイルス、大腸菌(Escherichia coli)、パスツレラ(とりわけ、パスツレラ・ムルトシダ(P.multocida))、ボルデテラ(Bordetella)(とりわけ、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(B.bronchiseptica))、仮性狂犬病ウイルス、エリシペロトリクス(Erysipelothrix)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ウシパラインフルエンザウイルス、マンヘイミア(とりわけ、マンヘイミア・ヘモリチカ(M.haemolytica))、フゾバクテリウム(Fusobacterium)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、クラミドフィラ(Chlamidophila)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ブルセラ・アボルツス(Brucella abortus)、ジクチオカウリス(Dictyocaulis)、トキソプラズマ・ゴンジ(Toxoplasma gondii)、バベシア(Babesia)(とりわけ、バベシア・カニス(B.canis))、ネオスポラ(Neospora)、ジアルジア(Giardia)、サルコシスチス(Sarcocystis)およびリーシュマニア(Leishmania)からなる群から選択される。
【0061】
本発明の更にもう1つの実施形態は、医薬としての使用のための、抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報の免疫学的量および医薬上許容される担体と組み合わされた本発明の免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドに関する。
【0062】
本発明の更にもう1つの実施形態は、哺乳類種、好ましくはヒト、ブタ、ウシおよびイヌ種における感染症の予防または抑制における使用のための、抗原成分または抗原成分をコードする遺伝情報の免疫学的量および医薬上許容される担体と組み合わされた本発明の免疫刺激性非メチル化オリゴデオキシヌクレオチドに関する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】MDCK(イヌ)−pNifTyhyg:種々のPAMPとの反応性。縦軸:mOD450nm/分。
【
図2】MDCK(イヌ)−pNifTyhyg:種々のPAMPとの反応性。縦軸:mOD450nm/分。
【
図3】MDcanK−pNifTyhyg−単細胞クローン1−46−huTNF−アルファ刺激。横軸:左から右へ;クローン1からクローン46まで、プールおよび対照。
【
図5】canTLR9−21MDCKpNifTyhyg−単細胞クローン1−54−2006−PTO刺激。横軸:左から右へ;クローン1からクローン54へ、それに続いて、「canTLR9−TLR21−プール」(単細胞クローニング前のポリクローナル細胞系)。反応性は棒グラフのペアで示されている:左棒グラフ(灰色)は1マイクロMの2006−PTOでの刺激のレベルであり、右棒グラフ(黒色)は対照である。
【
図18】MDCK−pNifTyhyg−pIRESpuro−canTLR9−21融合体:示されているとおりの幾つかのPAMPでの刺激。
【
図19】MDCK−pNifTyhyg−pigTLR9/TLR21−単細胞クローン1−75 ODN−2006−PTO刺激。横軸:左から右へ;クローン1からクローン75へ、「canis−TLR9/21−クローン17」(陽性対照としてのイヌTLR9−21融合クローン細胞系(番号17))および「MDCK−pNifTyhyg」(トランスフェクション実験に使用される基礎MDCK細胞系)。
【
図31】示されているとおりの種々のPAMPで試験されたMDCK−pNifTyhyg−pigTLR9/TLR21−融合体。
【
図32】示されているとおりのhio−tcg−8−PTOの存在下および非存在下のノビバック(Nobivac)狂犬病ワクチンの抗体価。
【0064】
参考文献:
【表1】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
実施例
実施例1
ウシtoll様受容体9(TLR−9)の遺伝子クローニング
ウシTLR9メッセンジャーRNA(mRNA)源として、近所の食肉解体処理場から新鮮なウシ脾臓を得た。市販キットおよびその説明書(TRIZOL(登録商標),GIBCOBRL)を用いて、ChomczynskiおよびSacchi(1987)により概説されているのと実質的に同じ方法で、ウシ脾臓組織から総RNAを調製した。逆転写酵素(−Expand Reverse Transcriptase,Roche)の供給業者により記載されているのと実質的に同じ方法で、ウシ脾臓総RNAから第1鎖cDNAを合成した。開始コドン領域から終止コドンの下流の3’UTR領域までのウシTLR9(Genbank AY859726)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のためのプライマーを設計した(Bov−TLR9−forおよびBov−TLR9−rev,後記を参照されたい)。しかし、完全長産物(予想:〜3100bp)の増幅を目的としたウシ脾臓第1鎖cDNAを使用する初期PCR実験(Expand High Fidelity PCRキット,Roche)は、反復的に陰性であることが判明した。ウシTLR9遺伝子の更に詳細な精査は高いGC含量(〜64%)を示した。したがって、この特定の問題に関して最適化されたPCR系(Advantage(商標)GC2,Clontech)を試験することに決定した。対応PCR反応は、予想サイズ(〜3100bp)の弱いDNA断片を与えた。
【0069】
プライマー配列:
Bov−TLR9−for:GGGTACCATGGGCCCCTACTGTGCCCCGCAC
Bov−TLR9−rev:GTCTAGAGTCTGTGCTATTCGGCTGTCGTGG
pCR2.1−Topo(Invitrogen)内へのPCR断片のクローニングを行い、PCR無過誤形態(pCR2.1−Topo−ウシTLR9)を特定するために4個のクローンを配列決定した。プライマー導入KpnIおよびXbaI制限酵素部位を利用することにより、ウシTLR9インサートを切り出し、アガロースゲルで精製し、KpnI/XbaI切断哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(neo)およびpcDNA3.1(hyg)(共にInvitrogen)内にサブクローニングして、それぞれpcDNA3.1(neo)−ウシTLR9およびpcDNA3.1(hyg)−ウシTLR9を得た。対応インサートを再配列決定した(後記を参照されたい)。
【0070】
pcDNA3.1インサート配列ウシTLR9(プライマー配列は下線で示されており、開始/終止コドンは太字で示されている),3090bp。
【化1】
【0071】
【0072】
翻訳配列を、Genbankに寄託された10個のウシTLR9完全長cDNA配列(2011年9月,P8−141108−prot−280109.pro Bov−TLR9−NM 183081.pro Bov−rom−TLR9−EF076723.pro Bov−ang−TLR9−EF076724.pro Bov−braf−TLR9−EF076725.pro Bov−brah−TLR9−EF076726.pro Bov−char−TLR9−EF076727.pro Bov−hol−TLR9−EF076728.pro Bov−lim−TLR9−EF076729.pro Bov−pied−TLR9−EF076731.pro Bov−TLR9−AY859726.pro)と整列(アライメント)させた。11個のウシTLR9ポリペプチド配列のアライメント(ClustalW;DNAStar)は、7個の位置において多形を示した。5つのケースにおいて、本発明者らのTLR9クローン(P8−141108−prot−280109)の翻訳配列は大部分のポリペプチド配列に適合した。他の2つの位置においては、Genbank配列AY859726の場合と同じ残基が見出された。
【0073】
したがって、ウシTLR9の正しい形態がクローニングされていると結論づけられる。
【0074】
実施例2
ブタtoll様受容体9(TLR−9)の遺伝子クローニング
ブタTLR9メッセンジャーRNA(mRNA)源として、近所の食肉解体処理場から新鮮なブタ脾臓を得た。市販キットおよびその説明書(TRIZOL(登録商標),GIBCOBRL)を用いて、ChomczynskiおよびSacchi(1987)により概説されているのと実質的に同じ方法で、ブタ脾臓組織から総RNAを調製した。逆転写酵素(Expand Reverse Transcriptase,Roche)の供給業者により記載されているのと実質的に同じ方法で、ブタ脾臓総RNAから第1鎖cDNAを合成した。
【0075】
開始コドン領域から終止コドンの下流の3’UTR領域までのブタTLR9(Genbank NM 213958)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のためのプライマーを設計した(PigTLR9for1およびPigTLR9rev1,後記を参照されたい)。しかし、完全長産物(予想:3246bp)の増幅を目的としたブタ脾臓第1鎖cDNAを使用する初期PCR実験は、反復的に陰性であることが判明した。したがって、PCRアプローチにより適した2つのほぼ等しいサイズの断片(それぞれ1501bpおよび1745bp)へとブタTLR9遺伝子を二分するユニークXhoI部位を利用することに決定した。この目的のために、ユニークXhoI部位の近傍で重複するPCR断片を得るための、前方向のXhoI部位の上流の及び逆方向のXhoI部位の下流のプライマーを設計した(PigTLR9XhoI−forおよびPigTLR9XhoI−rev,後記を参照されたい)。
【0076】
プライマー配列:
【化2】
【0077】
プライマーペアPigTLR9for1/ PigTLR9XhoI−rev(5’遺伝子断片の増幅用)およびPigTLR9XhoI−for/PigTLR9rev1(3’遺伝子断片の増幅用)を使用して、PCR反応(Expand High Fidelity PCRキット,Roche)を行った。対応PCR産物をアガロースゲルで精製し、pCR2.1−Topo(Invitrogen)内へクローニングし、PCR無過誤形態を特定するために3個のクローンのそれぞれを配列決定した。ベクターに基づく及びPCR断片に基づくXhoI部位を利用することにより、対応する5’−および3’−PCR断片を完全長ブタTLR9遺伝子に結合させた。対応構築物(pCR2.1−Topo−ブタTLR9)から、インサートをHindIII/NotI消化により切り出し、アガロースゲルで精製し、HindIII/NotI切断哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(neo)およびpcDNA3.1(hyg)(共にInvitrogen)内にサブクローニングして、それぞれpcDNA3.1(neo)−ブタTLR9およびpcDNA3.1(hyg)−ブタTLR9を得た。対応インサートを再配列決定した(後記を参照されたい)。
【0078】
pcDNA3.1インサート配列ブタTLR9(プライマー配列は下線で示されており、開始/終止コドンは太字で示されており、ユニークXhoI部位は太字で示されている)
【化3】
【0079】
【0080】
翻訳配列を、Genbankに寄託された4個のブタTLR9完全長cDNA配列(2011年9月,P1−181109−prot.pro,pig−TLR9−NM 213958.pro,pig−TLR9−AK349013.pro,pig−TLR9−GU138029.pro,pig−TLR9−AY859728.pro)と整列(アライメント)させた。5個のブタTLR9ポリペプチド配列のアライメント(ClustalW;DNAStar)は、9個の位置において多形を示した。各場合において、本発明者らのTLR9クローン(P8−181109−prot)の翻訳配列は大部分のポリペプチド配列に適合し、cDNAクローンAY859728の翻訳と同一であった。したがって、ブタTLR9の正しい形態がクローニングされていると結論づけられる。
【0081】
実施例3
イヌtoll様受容体9(TLR−9)の遺伝子クローニング
イヌリンパ節およびイヌ脾臓からの総RNAをZyagenから購入し、TLR9メッセンジャーRNA(mRNA)源として使用した。逆転写酵素(Expand Reverse Transcriptase,Roche)の供給業者により記載されているのと実質的に同じ方法で、イヌ脾臓またはリンパ節総RNAから第1鎖cDNAを合成した。
【0082】
開始コドン領域から終止コドンの下流の3’UTR領域までのイヌTLR9(Genbank NM 001002998)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のためのプライマーを設計した(Canis(イヌ)−TLR9forおよびCanis−TLR9rev1,後記を参照されたい)。しかし、完全長産物(予想:〜3100bp)の増幅を目的としたイヌリンパ節および脾臓第1鎖cDNAを使用する初期PCR実験は、反復的に陰性であることが判明した。したがって、PCR重複伸長アプローチのための準備のために、PCRアプローチにより適した2つの重複TLR9遺伝子断片を調製することに決定した。この目的のために、〜1600bpの5’−PCRイヌTLR9産物を得るためのプライマー(Canis−TLR9−forおよびCanTLR9olr,後記を参照されたい)、および〜1700bpの3’−PCRイヌTLR9産物を得るためのプライマー(CanTLR9olfおよびCanis−TLR9−rev)を設計した。
【0083】
プライマー配列:
【化4】
【0084】
PCR反応(Expand High Fidelity PCRキット,Roche)を行い、対応PCR産物をアガロースゲルで精製し、pCR2.1−Topo(Invitrogen)内へクローニングし、対応翻訳産物をお互いに対して及びデータベース配列NM 00102998およびAY859723に対して比較することにより、PCR無過誤形態を特定するために3個のクローンのそれぞれを配列決定した。ついで、重複伸長アプローチによりイヌTLR9遺伝子の5’および3’領域を結合させるために、これら(pCR2.1−Topo−canTLR9−NtermおよびpCR2.1−Topo−canTLR9−Cterm)を使用した。この目的のために、pCR2.1−Topo−canTLR9−Nterm(プライマー:Canis−TLR9−forおよびCanTLR9olr)およびpCR2.1−Topo−canTLR9−Cterm(プライマー:CanTLR9olfおよびCanis−TLR9−rev)のインサートを、プルーフリーディングポリメラーゼ(Phusion(登録商標)Hot Start High−Fidelity DNA Polymerase,Thermo Scientific)を使用して9サイクルでPCR増幅した。得られたPCR産物をアガロースゲルで精製し、ついで、プライマーCanis−TLR9−forおよびCanis−TLR9−revを使用する組合せ重複伸長PCRにおいて併用した。得られた〜3100bpのPCR産物をアガロースゲルで精製し、pCRBlunt−II(Invitrogen)内にクローニングした。4個の独立したクローンを配列決定し、1個のクローンを更なる加工のために選択した(pCR2.1−Topo−イヌTLR9)。
【0085】
この構築物から、インサートをHindIII/XbaI消化により切り出し、アガロースゲルで精製し、HindIII/XbaI切断哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(neo)およびpcDNA3.1(hyg)(共にInvitrogen)内にサブクローニングして、それぞれpcDNA3.1(neo)−イヌTLR9およびpcDNA3.1(hyg)−イヌTLR9を得た。対応インサートを再配列決定した(後記を参照されたい)。
【0086】
pcDNA3.1インサート配列イヌTLR9(プライマー配列は下線で示されており、開始/終止コドンは太字で示されている)
【化5】
【0087】
【0088】
【0089】
翻訳配列を、Genbankに寄託された2個のイヌTLR9完全長cDNA配列(2011年9月,P1−010709−prot.pro,TLR−9−NM 001002998.pro,TLR−9−AY859723.pro)と整列(アライメント)させた。3個のイヌTLR9ポリペプチド配列のアライメント(ClustalW;DNAStar)は、8個の位置において多形を示した。1個の位置(本発明者らの配列におけるT459、それらの2つのデータベース配列におけるP459)を除き、本発明者らのTLR9クローン(P1−010709−prot)における全ての多形位置は、NM 00102998または、AY859723に適合した。T459はイヌリンパ節および脾臓cDNAからの4個の独立したPCR産物において確認されており、このことは、これがドナーイヌの遺伝子型に対応することを示唆している。したがって、イヌTLR9の正しい形態がクローニングされていると結論づけられる。
【0090】
実施例4
NF−κB活性化レポーター細胞としてのメイディン・ダービー・イヌ腎臓細胞
MEM、1×非必須アミノ酸、8%(v/v)iFCS内で維持されたメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞をATCCから得た。分泌性アルカリホスファターゼ活性の存在に関する消費増殖培地の試験は陰性であり、これはレポーター遺伝子アッセイにおけるこの細胞系の使用のための前提条件である。
【0091】
第1段階として、選択マーカーとしてのゼオシン耐性遺伝子およびNF−κB結合部位の制御下の分泌性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を含有するプラスミドであるpNifTy2−SEAP(Invivogen)でMDCK細胞をトランスフェクトすることを計画した。しかし、本発明者らの研究は、MDCK細胞はかなりゼオシン(mg/ml範囲)に耐性であることを示しており、このことはpNifTy2−SEAPの使用を妨げる。したがって、pcNA3.1(hyg)におけるポリリンカーの部分(プラスミドのNruI/XbaI消化および大きな断片のアガロースゲル単離)およびCMVプロモーター領域を、pNifTy2−SEAPのSEAP遺伝子およびNF−κB結合部位を含有するSwaI/NheI断片により置換することにより、「pNifTy−hyg−SEAP」を作製することに決定した。それにより、MDCK細胞上で有効な細胞増殖抑制物質であるヒグロマイシンの培地への添加により、レポーター遺伝子カセットの存在が今や選択可能となった。
【0092】
MDCK細胞をpNifTy−hyg−SEAPでトランスフェクトし、選択圧を適用し(300μg/ml ヒグロマイシン)、選択培地内の反復継代培養により耐性系を選択した。選択された細胞系を、ヒト腫瘍壊死因子(huTNF−α;NF−κB経路の適切な機能およびレポーター遺伝子活性化に関する陽性対照)により、および病原体関連分子パターン(PAMP、例えば大腸菌(E.coli)リポ多糖(LPS、TLR4)、ポリ−I/ポリC(二本鎖RNA,TLR3)、ムラミルジペプチド(MDP,NOD2)、PAM3CysSK4(合成リポペプチド,TLR1/2)およびR−848(TLR7の低分子量アゴニスト))の選択により、SEAP誘導に関して試験した。結果を
図1および2に示す(
図2は
図1のy軸拡大図である)。
【0093】
huTNF−αは、ポリクローナルMDCK−pNifTy−hyg−SEAP細胞系においてSEAP産生を強力に誘導し、これはレポーター遺伝子アッセイにおけるこの細胞系の使用のための第2の前提条件である。NF−κB経路内に供給される5つの異なるパターン認識受容体を扱うPAMPは、低いSEAP誘導を示すか又はSEAP誘導を全く示さず、このことは、本発明者らのMDCK−pNifTy−hyg−SEAP細胞系が対応受容体のコピーを全く発現しないか又はごく僅かしか発現しないことを示唆しており、これはレポーター遺伝子アッセイにおけるこの細胞系の使用のための第3の前提条件である。最高バックグラウンド(それでも非常に低いが)がdsRNAで見られ、これにMDPが続き、一方、LPS、PAM3CysSK4およびR−848は実質的に全く示さなかった。
【0094】
これらの結果は、本発明者らがMDCK−pNifTy−hyg−SEAP細胞系の単細胞クローニングを行うこと、ポリクローナル系において見られる特性を安定化させること、およびより優れたクローンを特定することを促した。96ウェルプレートにおける限外希釈により46個のクローンを選択し、増殖後、それらをhuTNF−αで刺激して、最高NF−κB誘導性SEAP産生能を有するクローンを特定した(
図3を参照されたい)。
【0095】
実施例5
イヌ、ブタおよびウシTLR9−21融合構築物の作製および発現ベクターpIRES−puro内へのサブクローニング
ウシTLR9の細胞外ドメインおよびニワトリTLR21の細胞内ドメインをコードする融合構築物を、「PCRソーイング(sewing)」法を用いて作製した。
【0096】
「PCRソーイング」は3つの工程を含む(
図4を参照されたい)。第1に、1つの構築物へと融合されるべきDNA断片に、相補的配列をPCRにより付加する。第2に、相補的配列を有するそれらの2つの断片を、プライマーを加えることなくPCR反応において一緒にする。相補的配列は、それらの断片がアニールしDNAポリメラーゼによる伸長反応を始動することを可能にする。第3のPCR工程において、キメラ分子の5’および3’末端にアニールするプライマーを付加して、融合分子を増幅する。ウシTLR9の細胞外ドメインをコードする配列をpcDNA3.1(neo)−ウシTLR9構築物(断片1)からPCRにより増幅し、ニワトリTLR21の膜貫通および細胞内ドメインをコードする配列をpcDNA3.1(neo)−ニワトリTLR21(後記配列)から増幅した。5’突出部を有するプライマー(後記配列)を使用して、PCRにより、相補的配列を細胞外(TLR9)断片の3’末端およびTLR21断片の5’末端に付加した。全てのPCRにExpand High Fidelity PCRキット(Roche)を使用した。
【0097】
cDNA3.1(neo)−ニワトリTLR21インサート配列;開始/終止コドンが太字で示されている
【化6】
【0098】
【0099】
ウシTLR9(細胞外ドメイン)のためのプライマー:
cowT9−chT21 5’Eco:GCGGATATCACCATGGGCCCCTACTGTGC
cowT9−chT21fusRV:ATAGAGCCCCAGGTCCAGGAAGCAGAGGCGCAGGTCCTGTGT
ニワトリTLR21(膜貫通および細胞内ドメイン)のためのプライマー:
cowT9−chT21fusFW:ACACAGGACCTGCGCCTCTGCTTCCTGGACCTGGGGCTCTAT
cowT9−chT21 3’Eco:GCGGAATTCCTACATCTGTTTGTCTCCTT。
【0100】
融合産物をpCRII−TOPO(Invitrogen)内にクローニングし、1個のクローンを配列決定して、配列がPCR無過誤であるかどうかを調べた。配列は1個のコード化突然変異を含有し、これを、StratageneのQuik Change II XL部位特異的突然変異誘発キットおよび以下のプライマーを使用して矯正した。
【0101】
突然変異誘発プライマー:
18−CowT9−chT21:CCAAGACCACCATCTTCAACGACCTGACCCAGCTGCGCAGACTCAACC
19−CowT9−chT21:GGTTGAGTCTGCGCAGCTGGGTCAGGTCGTTGAAGATGGTGGTCTTGG
突然変異誘発法の後、部位特異的突然変異誘発が成功し新たな突然変異が導入されなかったかどうかを調べるために、複数(5個)のクローンを配列決定した。プライマーにより導入されたEcoRIおよびEcoRV部位を使用して、pIRESpuro3(Clontech)内に融合構築物を再クローニングするために、正しいクローンを使用した。得られたベクター(pIRESpuro−bovTLR9−21)における融合構築物を再配列決定した(後記を参照されたい)。
【0102】
pIRESpuro−bovTLR9−21インサート配列;(部分)プライマー配列が下線で示されており、TLR21(コード化)配列がイタリック体で示されており、開始/終止コドンが太字で示されている。
【化7】
【0103】
【0104】
【0105】
ブタTLR9の細胞外ドメインとニワトリTLR21の膜貫通および細胞内ドメインとの融合構築物のクローニング
ブタTLR9の細胞外ドメインとニワトリTLR21の細胞内ドメインとをコードする融合構築物を、前記の「PCRソーイング」法を用いて作製した。
【0106】
pcDNA3.1(neo)−ブタTLR9構築物(実施例2に記載されている)からのブタTLR9の細胞外ドメインをコードする配列、ならびにpcDNA3.1(neo)−ニワトリTLR21(前記配列)からのニワトリTLR21の膜貫通および細胞内ドメインをコードする配列をPCRにより増幅した。5’突出部を有するプライマー(後記配列)を使用して、PCRにより相補的配列を細胞外(TLR9)断片の3’末端およびTLR21断片の5’末端に付加した。全てのPCRにExpand High Fidelity PCRキット(Roche)を使用した。
【0107】
ブタTLR9(細胞外ドメイン)のためのプライマー:
piT9−chT21 5’E:GCGGAATTCCACCATGGGCCCCCGCTGCAC
pigT9−chT21fusRV:ATAGAGCCCCAGGTCCAGGAAGCAGAGGCGCAGGTCTTGCGC
ニワトリTLR21(膜貫通および細胞内ドメイン)のためのプライマー:
pigT9−chT21fusFW:GCGCAAGACCTGCGCCTCTGCTTCCTGGACCTGGGGCTCTAT
pig/dogT9−chT21−:GCGGCGGCCGCCTACATCTGTTTGTCTCCTT
融合産物をpCRII−TOPO(Invitrogen)内にクローニングし、1個のクローンを配列決定して、配列がPCR無過誤であるかどうかを調べた。このクローンは適切であり、これを使用して、プライマーにより導入されたEcoRIおよびNotI部位を用いてpIRESpuro3(Clontech)内に融合構築物を再クローニングした。pIRESpuro3における融合構築物の5’および3’連結部位を配列決定して、プラスミドにおける断片の適切な挿入を確認した。適切な得られたベクターは、pIRESpuro−porTLR9−21(後記配列)である。
【0108】
pIRESpuro−porTLR9−21インサート配列;(部分)プライマー配列が下線で示されており、TLR21(コード化)配列がイタリック体で示されており、開始/終止コドンが太字で示されている。
【化8】
【0109】
【0110】
イヌTLR9の細胞外ドメインとニワトリTLR21の膜貫通および細胞内ドメインとの融合構築物のクローニング
イヌTLR9の細胞外ドメインとニワトリTLR21の細胞内ドメインとをコードする融合構築物を、前記の「PCRソーイング」法を用いて作製した。
【0111】
pcDNA3.1(neo)−イヌTLR9構築物(実施例3に記載されている)からのイヌTLR9の細胞外ドメインをコードする配列、ならびにpcDNA3.1(neo)−ニワトリTLR21(前記配列)からのニワトリTLR21の膜貫通および細胞内ドメインをコードする配列をPCRにより増幅した。5’突出部を有するプライマー(後記配列)を使用して、PCRにより、相補的配列を細胞外(TLR9)断片の3’末端およびTLR21断片の5’末端に付加した。全てのPCRにExpand High Fidelity PCRキット(Roche)を使用した。
【0112】
イヌTLR9(細胞外ドメイン)のためのプライマー:
doT9−chT21 5’E:GCGGAATTCCACCATGGGCCCCTGCCGTGG
dogT9−chT21fusRV:ATAGAGCCCCAGGTCCAGGAAGCAGAGGCGCAGGTCCTGTGC
ニワトリTLR21(膜貫通および細胞内ドメイン)のためのプライマー:
dogT9−chT21fusFW:GCACAGGACCTGCGCCTCTGCTTCCTGGACCTGGGGCTCTAT
pig/dogT9−chT21−:GCGGCGGCCGCCTACATCTGTTTGTCTCCTT
融合産物をpCRII−TOPO(Invitrogen)内にクローニングし、1個のクローンを配列決定して、配列がPCR無過誤であるかどうかを調べた。配列は1個のコード化突然変異および1個のサイレント突然変異を含有していた。このコード化突然変異を、Quik Change II XL部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)およびプライマーを使用して矯正した。
【0113】
突然変異誘発プライマー:
dT9−chT21mt FW:GCAGGCTGCCGCGCTAGCCCTGGCCCTGGCCCAGGGC
dT9−chT21mt RV:GCCCTGGGCCAGGGCCAGGGCTAGCGCGGCAGCCTGC
突然変異誘発法の後、部位特異的突然変異誘発が成功したかどうかを調べるために、複数(8個)のクローンを配列決定した。1個のクローンは適切なヌクレオチドを含有していた。このクローンを使用して、pCRII−TOPO内に存在するプライマー導入EcoRIおよびEcoRV部位を用いてpIRESpuro3(Clontech)内に融合構築物を再クローニングした。得られたベクター(pIRESpuro−canTLR9−21)を、完全に配列決定した。配列は、アミノ酸配列に影響を及ぼさない2つのサイレント突然変異を特定した。したがって、このクローンが更なる用途に使用可能であると結論づけられた。
【0114】
pIRESpuro−canTLR9−21インサート配列;(部分)プライマー配列が下線で示されており、TLR21(コード化)配列がイタリック体で示されており、開始/終止コドンが太字で示されている。
【化9】
【0115】
【0116】
実施例6
イヌTLR9−21融合構築物でのMDCK−pNifTyhyg−SEAPのトランスフェクション
a)クローンのトランスフェクションおよび選択
TLR9−21融合構築物の発現および検出のためのMDCK−pNifTyhyg−SEAK−クローン15の可能性を調べるために、このクローン細胞系をpIRES−puro−イヌTLR9−21でトランスフェクトした。300μg/ml ヒグロマイシンおよび8μg/ml ピューロマイシンで補足された培地での反復継代によりトランスフェクタントを選択した。標準的なオリゴヌクレオチドODN−2006−PTOでの得られたポリクローナル細胞系の試験は、SEAP分泌の誘導を示した。単細胞クローニングを行い、ODN−2006−PTOでの更なる試験のために54個のクローンを増殖させた(後記グラフを参照されたい)。大量のSEAPの誘導を示す多数のクローンが特定された。最良のシグナル対ノイズ比を有する4個のクローン(番号17、23、32および40)を増殖および凍結安定体の作製のために選択した。再試験後、クローン番号17を更なる実験のために選択した(
図5を参照されたい)。
【0117】
b)MDCK−pNifTyhyg−SEAP−pIRESpuro−canTLR9−21−クローン17:オリゴヌクレオチドの刺激活性の試験
実験1:
ヒト用医薬からの標準的なオリゴヌクレオチド2006−PTOおよび2007−PTOと共に、一連のホスホロチオアートオリゴヌクレオチド(PTO−ODN,thio(チオ)5−4からthio5−10まで)を試験した。
【表2】
【0118】
この実験から、作製されたpIRESpuro−canTLR9−21発現MDCK−pNifTyhyg細胞系は、EC50値の計算により種々の効力を定めうると推定されうる(
図6を参照されたい)。
【0119】
gtcgtcのような構造要素を有する免疫刺激性ODNに関しては、cg要素の数が重要である(9>7>6>5>>4>>3)と示されうる(前記表を参照されたい)。この実験は構造活性相関(SAR)の入手および免疫刺激性ODNのリード最適化のためのこの細胞系の潜在性の概要をも直ちに示す。
【0120】
また、ヒト研究から既知のPTO−ODN(2006−PTOおよび2007−PTO)はイヌTLR9−21融合タンパク質に対して非常に有効であることが示されたが、本発明者らの初期「リード最適化」の少なくとも1つの候補(thio5−10)は、イヌTLR9−21に対してこれらのヒト標準ODNと同等に強力またはそれらより若干強力であることが判明した。
【0121】
実験2:
ヒト用医薬からの標準的なオリゴヌクレオチド2006−PTOと共に、ニワトリTLR21(融合部分のドナー)に対して非常に強力であることが判明した一連のホスホジエステルオリゴヌクレオチド(10個のPDE−ODN)をイヌTLR9−21融合体に対して試験した。
【0122】
結果:これらの10個のPDE−ODNはいずれも試験範囲(500nM〜3.9nM)においてSEAP誘導活性を全く示さなかったが、2006−PTOは、このODNの予想範囲である〜4nMのEC50を示した。
【0123】
解釈:ODNの認識は、N末端融合部分(この場合はイヌTLR9)によって決まる。PDE−ODN認識の劇的な種特異性が存在する。なぜなら、試験されたODNは、ニワトリTLR21に対しては1桁のnMまたは更にはpMのEC50値を示しているが、2006−PTOは、この受容体に対してはイヌTLR9−21融合体に対してほどは強力ではない(31nM)からである。
【0124】
実験3:
ここでは、ヒトおよびマウスの場合に文献において使用されているPTO−ODN(1668−PTO、2216−PTOおよび2395−PTO)に関する実験を行った。
【表3】
【0125】
【0126】
3個全てのPTO−ODNは、2桁のnM EC50値でイヌTLR9−21融合体に対して活性である。しかし、SEAP産生の最大達成可能刺激(Vmax)に関しては、効力の順序は1668>2395>2216である(
図8を参照されたい)。顕著なことに、ニワトリTLR21に対する同じODNの試験は、2216−PTOが不活性であり、1668−PTOが〜1000nMのEC50を有し、2395−PTOのみが、39.4nMのEC50を示すことにおいて、幾らかの効力を有することを示している。
【0127】
実験4:
公開されているオリゴヌクレオチド1668−PTO、2216−PTOおよび2395−PTOからの恐らく活性要素でありうるものに基づいて、「リード最適化」を試みた。これらの活性要素は親ODNにおいては下線および/またはイタリック体で示されており、mod1/2 ODNにおいては反復配列内に配置されている。
【表4】
【0128】
EC50値に基づけば、「リード最適化」は成功であることが判明している。全3個の場合において、mod1/2 PTO−ODN形態はそれらの親PTO−ODNより強力であった。更に、2216−PTOおよび2395−PTOの場合、Vmaxの有意な増加が視認可能であった。6個中5個の新たに設計されたPTO−ODNが模範2006−PTOの活性範囲内である(
図9を参照されたい)。
【0129】
実験5:
可能な活性要素に基づく「リード最適化」を、公開されているオリゴヌクレオチド2007−PTOに関して試みた。
【表5】
【0130】
5’末端または3’末端またはそれらの両方へのcg含有要素の付加、および2007−PTOの二量体化は、活性の改善につながらなかったが(EC50およびVmaxの両方に関して)、それは活性喪失を招かなかった。1桁のナノモル活性が維持されている。挙げられているODNは、いずれも現在までに文献において報告されていない(
図10を参照されたい)。
【0131】
実験6:
ここでは、文献に記載されている2個のPTO−ODN(ODN−17およびODN−Ling1)を試験した。また、thio5−8におけるCpG要素の完全(thio5−8pde2A)および部分(thio5−8pde2B)ホスホロチオアート結合の置換の影響を試験した。更に、免疫調節要素−ttcgtc−の多量体を試験した。
【表6】
【0132】
【0133】
CpG要素内のPDE結合によるPTOの置換は、PTO−ODNの刺激活性を時には増強することが文献において報告されている。この見解をthio5−8で試験した。本発明者らの場合においては、PDE修飾形態は、イヌTLR9−21融合体に対して、親「PTOのみ」ODNより遥かに低い活性を示した。本発明者らは、イヌTLR9−21融合体に対して2006−PTOと同様に活性である1個の更に新規のPTO−ODN(thio9−5)を特定した。更に、Ling1−PTOは強力なPTO−ODNであることが判明した(
図11を参照されたい)。
【0134】
実験7:
ここでは、5’−および3’dG連続(run)と組合された場合にニワトリTLR21に対して高活性であることが判明したPDEオリゴヌクレオチドのPTO形態の幾つかを試験した。しかし、PTO形態は、5’−および3’dG連続を欠いている(したがって、マイナスG,「mG」)。
【表7】
【0135】
全ての試験ODNは、標準PTO−ODN 2006と同じ又は近いEC50およびVmax値を有し、非常に強力であることが判明した(
図12を参照されたい)。
【0136】
実験8:
更に、ODN X4、X43、Z11およびCC−Xの活性要素(ニワトリTLR21)に基づく一連のPTO−ODNを、イヌTLR9−21融合体にするそれらの効力に関して試験した。
【表8】
【0137】
全ての新規PTO−オリゴヌクレオチドは、2nM未満のEC50を有するZ11−30−PTOおよびCC−X−30−PTOの場合に、イヌTLR9−21に対して高い刺激活性(1桁のナノモル範囲のEC50)および比較しうるVmaxを有する。これらのPTO−ODNは、いずれもイヌにおけるそれらの使用に関して未だ記載されていない(
図13および14を参照されたい)。
【0138】
実験9:
この実験においては、頻繁に使用される免疫刺激性要素gacgttおよびgtcgttの反復配列を、イヌTLR9−21融合体に対するそれらの効力に関して試験した。
【表9】
【0139】
【0140】
反復要素gacgttの場合、反復数が重要であることを実験は示している。五量体は2nM未満のEC50に達する。この新たなバッチの2216−PTOの低いEC50ついては明らかでないところがある。しかし、Vmax値は、試験された全ての他のODNの場合より明らかに低い(
図15を参照されたい)。
【0141】
実験10:
この実験においては、三つ組および四つ組要素の反復配列をイヌTLR9−21融合体に対するそれらの効力に関して試験した。
【表10】
【0142】
【0143】
TCG−8は高活性であるが、ACG−8はイヌTLR9−21融合体の刺激を何ら示さないことが注目される。この研究においては、PTO−ODN TCGT−6の「SAR」を詳細に調べた。5’T、ついで3’Tを全ての他の塩基で置換した。意外にも、誘導体の全てがEC50に関して高活性であることが判明しており、劇的な活性低下は認められなかった。Vmaxに関しては、CCGT−6では効力の大きな低下が認められ、GCGT−6では小さな低下が認められた。G/Cのみを含有するPTO−ODNはこのアッセイにおいて限界的に活性であるに過ぎなかった。
【0144】
これは、テトラヌクレオチドモチーフの六量体に基づくcanTLR9−21に関する包括的な構造活性相関の決定である(
図16および17を参照されたい)。
【0145】
実験11:
この実験においては、免疫調節性六量体および四量体配列要素の組合せをイヌTLR9−21融合体に対するそれらの効力に関して試験した(
図18を参照されたい)。
【表11】
【0146】
結論:MDCK−pNifTyhyg−SEAP−pIRESpuro−canTLR9−21は、イヌTLR9リガンドの特定のための特有のスクリーニング手段であることが示されている。幾つかの新規活性ODNが特定されている。
【0147】
実施例7
ブタTLR9−21融合構築物でのMDCK−pNifTyhyg−SEAPのトランスフェクション
a)クローンのトランスフェクションおよび選択
MDCK−pNifTyhyg−SEAK−クローン15を、pIRES−puro−ブタTLR9−21でトランスフェクトした。300μg/ml ヒグロマイシンおよび8μg/ml ピューロマイシンで補足された培地での反復継代によりトランスフェクタントを選択した。標準的なオリゴヌクレオチドODN−2006−PTOでの得られたポリクローナル細胞系の試験は、SEAP分泌の誘導を示した。単細胞クローニングを行い、ODN−2006−PTOでの更なる試験のために、75個のクローンを増殖させた。SEAPの誘導を示す多数のクローンが特定された。最良のシグナル対ノイズ比を有する幾つかのクローンを、増殖および凍結安定体の作製のために選択した。再試験後、クローン番号20を更なる実験のために選択した(
図19を参照されたい)。
【0148】
b)MDCK−pNifTyhyg−SEAP−pIRESpuro−ブタTLR9−21−クローン20:オリゴヌクレオチドの刺激活性の試験
実験1:
ヒト用医薬からの標準的なオリゴヌクレオチド2006−PTOと共に、一連のホスホロチオアートオリゴヌクレオチド(PTO−ODNs,thio(チオ)5−4からthio5−10まで、thio9−3およびthio9−5)を試験した。
【表12】
【0149】
【0150】
この実験から、作製されたpIRESpuro−ブタTLR9−21発現MDCK−pNifTyhyg細胞系は、EC50値の計算により種々の効力を定めうると推定されうる。
【0151】
gtcgtcのような構造要素を有する免疫刺激性ODNに関しては、cg要素の数が重要である(9〜7>6>5>4>3)と示されうる(前記表を参照されたい)。この実験は構造活性相関(SAR)の入手および免疫刺激性ODNのリード最適化のためのこの細胞系の潜在性の概要をも直ちに示す。
【0152】
また、ヒト研究から、既知の2006−PTOは、ブタTLR9−21融合タンパク質に対して非常に有効であることが示された。更に、thio5−8におけるCpG要素の完全(thio5−8pde2A)および部分(thio5−8pde2B)ホスホロチオアート結合の置換の影響を試験した。本発明者らの場合においては、PDE修飾形態は、ブタTLR9−21融合体に対して、親「PTOのみ」ODNより遥かに低い活性を示した。最後に、モチーフttcgtcの三量体および四量体であるそれぞれthio9−3およびthio9−5を試験した(結果、
図20を参照されたい)。
【0153】
実験2:
ここでは、5’−および3’dG連続(run)と組合された場合にニワトリTLR21に対して高活性であることが判明したPDEオリゴヌクレオチドのPTO形態の幾つかを試験した。しかし、PTO形態は、5’−および3’dG連続を欠いている(したがって、マイナスG,「mG」)。
【表13】
【0154】
【0155】
更に、公開されている報告からの2つのPTO−ODN(ODN17およびODN−Ling1)を試験した。X4−X4−I−およびX4−II−PTO−誘導体は、全て30〜50nMのEC50値の強い活性を有することが判明したが、ニワトリTLR21に対して高活性であるX4−pent−PDEは、EC50および予想Vmaxのどちらに関しても低刺激物質であることが判明した。興味深いことに、ODN−17−PTO(gtcgtt三つ組)は100nMを超えるEC50を示したが、ODN−Ling1−PTOは2006−PTOと同程度に活性であることが判明した(
図21を参照されたい)。
【0156】
実験3:
この実験においては、三つ組および四つ組要素の反復配列をブタTLR9−21融合体に対するそれらの効力に関して試験した。
【表14】
【0157】
【0158】
ACG−8は、ブタTLR9−21融合体の僅かな刺激を示しているに過ぎず、一方、TCG−8は、〜62nMのEC50を示す。この研究においては、PTO−ODN TCGT−6の「SAR」を詳細に調べた。5’T、ついで3’Tを全ての他の塩基により置換した。EC50に関しては、TCGT−6は、標準的2006−PTOより一層良好に働く明らかに最良の誘導体であることが判明した。canTLR9−21の場合と同様に、Vmaxについても、ブタTLR9−21に対して、CCGT−6に関しては大きな効力低下が認められ、GCGT−6に関しては小さな効力低下が認められた。G/Cのみを含有するPTO−ODNはこのアッセイにおいて限界的に活性であるに過ぎず、GCGC−6が最良のものであった。
【0159】
これは、テトラヌクレオチドモチーフの六量体に基づくブタTLR9−21に関する包括的な構造活性相関の決定である(
図22および23を参照されたい)。
【0160】
実験4:
ここでは、公開されているオリゴヌクレオチド1668−PTO、2216−PTOおよび2395−PTOからの恐らく活性要素でありうるものに基づいて、「リード最適化」を試みた。これらの「活性要素」は、親ODNにおいては下線および/またはイタリック体で示されており、mod1/2 ODNにおいては反復配列内に配置されている。
【表15】
【0161】
【0162】
結果:
図24、25および26を参照されたい。
【0163】
実験5:
この実験においては、頻繁に使用される免疫刺激性要素gacgttおよびgtcgttの反復配列を、ブタTLR9−21融合体に対するそれらの効力に関して試験した。
【表16】
【0164】
結果:
図27を参照されたい。
【0165】
実験6:
ここでは、公開されているオリゴヌクレオチド2007−PTOからの可能な活性要素に基づく「リード最適化」を試みた。
【表17】
【0166】
結果:
図28を参照されたい。
【0167】
実験7:
更に、ODN X4、X43、Z11およびCC−Xの活性要素(ニワトリTLR21)に基づく一連のPTO−ODNを、ブタTLR9−21融合体に対するそれらの効力に関して試験した。
【表18】
【0168】
ほとんどの新規PTO−オリゴヌクレオチドは、ブタTLR921に対する高い刺激活性(1桁のナノモル範囲のEC50)および比較しうるVmaxを有する。Z11(ctcgtc)のモチーフが特に強力であるらしい。これらのPTO−ODNはいずれも、ブタに関しては未だ記載されていない(
図29および30を参照されたい)。
【0169】
実験8:
この実験においては、免疫調節性六量体および四量体配列要素の組合せをブタTLR9−21融合体に対するそれらの効力に関して試験した。
【表19】
【0170】
この実験においては、gtcgtc−、gtcgtt−、gtcgac−およびtcgt−含有PTO ODNの種々の組合せは、ブタTLR9−21に対する同様の2桁のナノモル効力を有することが判明した(
図31を参照されたい)。
【0171】
実施例8
実験計画
狂犬病に対するワクチン接種がされていない3〜4月齢の5頭のビーグル子イヌ(このうちの雌イヌは過去12カ月間に狂犬病に対するワクチン接種がされていない)の2群を使用した。子イヌに1mlのそれぞれのワクチン組成物をワクチン接種した。ワクチン接種の直前(T=0)ならびにワクチン接種後のT=2、T=4、T=6、T=8、T=12、T=16、T=20およびT=24週の時点で血液サンプルを採取し、狂犬病ウイルスに対する抗体価を決定した。
【表20】
【0172】
ワクチン
Nobivac(登録商標)Rabies(狂犬病)
製剤:商標的に入手可能なワクチン
提供形態:10mlの栓付小瓶
供給業者:Intervet International BV,Boxmeer,The Netherlands。
【0173】
投与量および投与
1ml当たり5μgのThio−tcg−8−PTO(TCGTCGTCGTCGTCGTCGTCGTCG)の添加を伴う(群2)または伴わない(群1)1mlのNobivac(登録商標)Rabiesワクチンを、子イヌの頸部の皮下(s.c.)にワクチン接種した。
【0174】
抗体の誘導
ワクチン接種の直前(T=0)ならびにワクチン接種後のT=2、T=4、T=6、T=8、T=12、T=16、T=20およびT=24週の時点で血液サンプルを各子イヌから採取した。血液サンプルを2〜8℃で一晩にわたって凝固させた。遠心分離後、血清を適当な容器内に移し、分析まで−20℃で保存した。ウイルス中和試験である迅速蛍光フォーカス抑制試験(Rapid Fluorescent Focus Inhibition Test)(RFFIT)を用いて、血清における狂犬病に対する抗体価を決定した。
【0175】
迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)
RFFITは、狂犬病中和抗体の存在を定量するための標準的なインビトロ試験として国際的に認識されている。検査すべき血清の系列3倍希釈物を調製し、標準的用量(30〜300フォーカス形成単位(FFU)の力価を有するWHO/PHEURによるもの)を含有する等体積の狂犬病ウイルス懸濁液と混合した。血清/ウイルス混合物を37℃および5% CO2において90分間インキュベートした。プレインキュベーション期間後の非中和ウイルスを増殖させるために、感受性細胞(BHK細胞)を混合物中に加え、37℃および5% CO2において24時間インキュベートして、単層を形成させた。インキュベーションおよび狂犬病ウイルス特異的免疫染色の後、顕微鏡検査により蛍光フォーカスに関して単層を観察し、ついで力価(単位:IU/ml)を計算した。
【0176】
結果:
図32から認められうるとおり、Nobivac狂犬病ワクチンおよびCpG ODN Thio−tcg−8−PTO(TCGTCGTCGTCGTCGTCGTCGTCG)が投与されたイヌにおいて見出された抗狂犬病ウイルス力価は、このCpG ODNを含有しない同じ狂犬病ワクチンの場合の量の3倍である。