(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力軸と、出力軸と、複数の遊星歯車機構と前記動力伝達装置における駆動力伝達経路を複数のモード間で選択的に切り替えるためのモード切替機構とを含み前記入力軸の回転を前記出力軸に伝達する歯車機構と、前記遊星歯車機構の回転要素に接続されるモータと、を有し、前記モータの回転速度を変化させることによって前記入力軸に対する前記出力軸の回転速度比を変化させるように構成される動力伝達装置を備える作業車両の制御方法であって、
車速を検出するステップと、
アクセル操作部材の操作量を検出するステップと、
前記車速と要求牽引力との関係を規定する要求牽引力特性に基づいて、前記車速から前記要求牽引力を決定するステップと、
前記動力伝達装置に入力されるトルクの目標値である目標入力トルクを決定するステップと、
前記要求牽引力に基づいて、前記動力伝達装置から出力されるトルクの目標値である目標出力トルクを決定するステップと、
前記動力伝達装置でのトルクの釣り合いを満たすように前記目標入力トルクと前記目標出力トルクとの関係を規定するトルクバランス情報により、前記目標入力トルクと前記目標出力トルクとから、前記モータへの指令トルクを決定するステップと、
を備え、
前記要求牽引力を決定するステップは、
前記アクセル操作部材の操作量に対する牽引力比率を規定する牽引力比率情報と、前記アクセル操作部材の操作量に対する車速比率を規定する車速比率情報とを参照して、前記アクセル操作部材の操作量に応じた前記牽引力比率と前記車速比率とを決定するステップと、
基準となる要求牽引力特性に対して、前記要求牽引力を示す縦軸方向に前記牽引力比率、前記車速を示す横軸方向に前記車速比率を乗じることによって、前記アクセル操作部材の操作量に応じた現在の前記要求牽引力特性を決定するステップと、
を含む、
作業車両の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両1の側面図である。
図1に示すように、作業車両1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行輪4,5と、運転室6とを備えている。作業車両1は、ホイールローダであり、走行輪4,5が回転駆動されることにより走行する。作業車両1は、作業機3を用いて掘削等の作業を行うことができる。
【0038】
車体フレーム2には、作業機3および走行輪4が取り付けられている。作業機3は、後述する作業機ポンプ23(
図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム11とバケット12とを有する。ブーム11は、車体フレーム2に装着されている。作業機3は、リフトシリンダ13とバケットシリンダ14とを有している。リフトシリンダ13とバケットシリンダ14とは、油圧シリンダである。リフトシリンダ13の一端は車体フレーム2に取り付けられている。リフトシリンダ13の他端はブーム11に取り付けられている。リフトシリンダ13が作業機ポンプ23からの作動油によって伸縮することによって、ブーム11が上下に揺動する。バケット12は、ブーム11の先端に取り付けられている。バケットシリンダ14の一端は車体フレーム2に取り付けられている。バケットシリンダ14の他端はベルクランク15を介してバケット12に取り付けられている。バケットシリンダ14が、作業機ポンプ23からの作動油によって伸縮することによって、バケット12が上下に揺動する。
【0039】
車体フレーム2には、運転室6及び走行輪5が取り付けられている。運転室6は、車体フレーム2上に載置されている。運転室6内には、オペレータが着座するシートや、後述する操作装置などが配置されている。車体フレーム2は、前フレーム16と後フレーム17とを有する。前フレーム16と後フレーム17とは互いに左右方向に揺動可能に取り付けられている。
【0040】
作業車両1は、ステアリングシリンダ18を有している。ステアリングシリンダ18は、前フレーム16と後フレーム17とに取り付けられている。ステアリングシリンダ18は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ18が、後述するステアリングポンプ30からの作動油によって伸縮することによって、作業車両1の進行方向が左右に変更される。
【0041】
図2は、作業車両1の構成を示す模式図である。
図2に示すように、作業車両1は、エンジン21、PTO22、動力伝達装置24、走行装置25、操作装置26、制御部27などを備えている。
【0042】
エンジン21は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン21の出力は、エンジン21のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより制御される。燃料量の調整は、エンジン21に取り付けられた燃料噴射装置28を制御部27が制御することで行われる。作業車両1は、エンジン回転速度検出部31を備えている。エンジン回転速度検出部31は、エンジン回転速度を検出し、エンジン回転速度を示す検出信号を制御部27へ送る。
【0043】
作業車両1は、作業機ポンプ23と、ステアリングポンプ30と、トランスミッションポンプ29とを有する。作業機ポンプ23と、ステアリングポンプ30と、トランスミッションポンプ29とは、油圧ポンプである。PTO22(Power Take Off)は、これらの油圧ポンプ23,30,29に、エンジン21からの駆動力の一部を伝達する。すなわち、PTO22は、これらの油圧ポンプ23,30,29と、動力伝達装置24とにエンジン21からの駆動力を分配する。
【0044】
作業機ポンプ23は、エンジン21からの駆動力によって駆動される。作業機ポンプ23から吐出された作動油は、作業機制御弁41を介して、上述したリフトシリンダ13とバケットシリンダ14とに供給される。作業機制御弁41は、後述する作業機操作部材52aの操作に応じては、リフトシリンダ13とバケットシリンダ14とに供給される作動油の流量を変更する。作業車両1は、作業機ポンプ圧検出部32を備えている。作業機ポンプ圧検出部32は、作業機ポンプ23からの作動油の吐出圧(以下、「作業機ポンプ圧」と呼ぶ)を検出し、作業機ポンプ圧を示す検出信号を制御部27へ送る。
【0045】
作業機ポンプ23は、可変容量型の油圧ポンプである。作業機ポンプ23の斜板或いは斜軸の傾転角が変更されることにより、作業機ポンプ23の吐出容量が変更される。作業機ポンプ23には、第1容量制御装置42が接続されている。第1容量制御装置42は、制御部27によって制御され、作業機ポンプ23の傾転角を変更する。これにより、作業機ポンプ23の吐出容量が制御部27によって制御される。例えば、第1容量制御装置42は、作業機制御弁41の前後での差圧が一定になるように、作業機ポンプ23の傾転角を調整する。また、第1容量制御装置42は、制御部27からの指令信号に応じて、作業機ポンプ23の傾転角を任意に変更することができる。詳細には、第1容量制御装置42は、図示しない第1バルブと第2バルブとを含む。上述した作業機制御弁41によって作業機3に供給される作動油が変更されると、作業機制御弁41の開度の変更に応じて作業機ポンプ23の吐出圧と作業機制御弁41の通過後の圧力との間に差圧が発生する。第1バルブは、制御部27によって制御されることで、作業機3の負荷が変動しても作業機制御弁41の前後での差圧を一定にするように作業機ポンプ23の傾転角を調整する。また、第2バルブは、制御部27によって制御されることで、作業機ポンプ23の傾転角をさらに変更することができる。作業車両1は、第1傾転角検出部33を備えている。第1傾転角検出部33は、作業機ポンプ23の傾転角を検出し、傾転角を示す検出信号を制御部27へ送る。
【0046】
ステアリングポンプ30は、エンジン21からの駆動力によって駆動される。ステアリングポンプ30から吐出された作動油は、ステアリング制御弁43を介して、上述したステアリングシリンダ18に供給される。作業車両1は、ステアリングポンプ圧検出部34を備えている。ステアリングポンプ圧検出部34は、ステアリングポンプ30からの作動油の吐出圧(以下、「ステアリングポンプ圧」と呼ぶ)を検出し、ステアリングポンプ圧を示す検出信号を制御部27へ送る。
【0047】
ステアリングポンプ30は、可変容量型の油圧ポンプである。ステアリングポンプ30の斜板或いは斜軸の傾転角が変更されることにより、ステアリングポンプ30の吐出容量が変更される。ステアリングポンプ30には、第2容量制御装置44が接続されている。第2容量制御装置44は、制御部27によって制御され、ステアリングポンプ30の傾転角を変更する。これにより、ステアリングポンプ30の吐出容量が制御部27によって制御される。作業車両1は、第2傾転角検出部35を備えている。第2傾転角検出部35は、ステアリングポンプ30の傾転角を検出し、傾転角を示す検出信号を制御部27へ送る。
【0048】
トランスミッションポンプ29は、エンジン21からの駆動力によって駆動される。トランスミッションポンプ29は、固定容量型の油圧ポンプである。トランスミッションポンプ29から吐出された作動油は、後述するクラッチ制御弁VF,VR,VL,VHを介して動力伝達装置24のクラッチCF,CR,CL,CHに供給される。作業車両1は、トランスミッションポンプ圧検出部36を備えている。トランスミッションポンプ圧検出部36は、トランスミッションポンプ29からの作動油の吐出圧(以下、「トランスミッションポンプ圧」と呼ぶ)を検出し、トランスミッションポンプ圧を示す検出信号を制御部27へ送る。
【0049】
PTO22は、エンジン21からの駆動力の一部を動力伝達装置24に伝達する。動力伝達装置24は、エンジン21からの駆動力を走行装置25に伝達する。動力伝達装置24は、エンジン21からの駆動力を変速して出力する。動力伝達装置24の構成については後に詳細に説明する。
【0050】
走行装置25は、アクスル45と、走行輪4,5とを有する。アクスル45は、動力伝達装置24からの駆動力を走行輪4,5に伝達する。これにより、走行輪4,5が回転する。作業車両1は、車速検出部37を備えている。車速検出部37は、動力伝達装置24の出力軸63の回転速度(以下、「出力回転速度」と呼ぶ)を検出する。出力回転速度は車速に対応しているため、車速検出部37は、出力回転速度を検出することで車速を検出する。また、車速検出部37は、出力軸63の回転方向を検出する。出力軸63の回転方向は、作業車両1の進行方向に対応しているため、車速検出部37は、出力軸63の回転方向を検出することで作業車両1の進行方向を検出する。車速検出部37は、出力回転速度及び回転方向を示す検出信号を制御部27に送る。
【0051】
操作装置26は、オペレータによって操作される。操作装置26は、アクセル操作装置51と、作業機操作装置52と、変速操作装置53と、FR操作装置54と、ステアリング操作装置57と、ブレーキ操作装置58を有する。
【0052】
アクセル操作装置51は、アクセル操作部材51aと、アクセル操作検出部51bとを有する。アクセル操作部材51aは、エンジン21の目標回転速度を設定するために操作される。アクセル操作検出部51bは、アクセル操作部材51aの操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を検出する。アクセル操作検出部51bは、アクセル操作量を示す検出信号を制御部27へ送る。
【0053】
作業機操作装置52は、作業機操作部材52aと作業機操作検出部52bとを有する。作業機操作部材52aは、作業機3を動作させるために操作される。作業機操作検出部52bは、作業機操作部材52aの位置を検出する。作業機操作検出部52bは、作業機操作部材52aの位置を示す検出信号を制御部27に出力する。作業機操作検出部52bは、作業機操作部材52aの位置を検出することで、ブーム11を操作するための作業機操作部材52aの操作量(以下、「ブーム操作量」と呼ぶ)、及び、バケット14を操作するための作業機操作部材52aの操作量(以下、「バケット操作量」と呼ぶ)を検出する。なお、作業機操作部材52aは例えば1つのレバーによって構成されており、レバーの各操作方向にブーム11の操作とバケット14の操作とが割り当てられてもよい。或いは、作業機操作部材52aは例えば2つのレバーによって構成されており、各レバーにブーム11の操作とバケット14の操作とが割り当てられてもよい。
【0054】
変速操作装置53は、変速操作部材53aと変速操作検出部53bとを有する。オペレータは、変速操作部材53aを操作することにより、動力伝達装置24の速度範囲を選択することができる。変速操作検出部53bは、変速操作部材53aの位置を検出する。変速操作部材53aの位置は、例えば1速及び2速など複数の速度範囲に対応している。変速操作検出部53bは、変速操作部材53aの位置を示す検出信号を制御部27に出力する。
【0055】
FR操作装置54は、FR操作部材54aとFR操作検出部54bとを有する。オペレータは、FR操作部材54aを操作することにより、作業車両1の前進と後進とを切り換えることができる。FR操作部材54aは、前進位置(F)と中立位置(N)と後進位置(R)とに選択的に切り換えられる。FR操作検出部54bは、FR操作部材54aの位置を検出する。FR操作検出部54bは、FR操作部材54aの位置を示す検出信号を制御部27に出力する。
【0056】
ステアリング操作装置57は、ステアリング操作部材57aとステアリング操作検出部57bとを有する。オペレータは、ステアリング操作部材57aを操作することにより、作業車両1の進行方向を左右に変更することができる。ステアリング操作検出部57bは、ステアリング操作部材57aの位置を検出する。ステアリング操作検出部57bは、ステアリング操作部材57aの位置を示す検出信号を制御部27に出力する。
【0057】
ブレーキ操作装置58は、ブレーキ操作部材58aとブレーキ操作検出部58bとを有する。オペレータは、ブレーキ操作部材58aを操作することにより、図示しないブレーキ装置を動作させて、作業車両1に制動力を生じさせる。ブレーキ操作検出部58bは、ブレーキ操作部材58aの位置を検出する。ブレーキ操作検出部58bは、ブレーキ操作部材58aの位置を示す検出信号を制御部27に出力する。
【0058】
制御部27は、CPUなどの演算装置と、RAM及びROMなどのメモリとを有しており、作業車両1を制御するための各種の処理を行う。また、制御部は、記憶部56を有する。記憶部56は、作業車両1を制御するための各種のプログラム及びデータを記憶している。
【0059】
制御部27は、アクセル操作量に応じたエンジン21の目標回転速度が得られるように、指令スロットル値を示す指令信号を燃料噴射装置28に送る。制御部27によるエンジン21の制御については後に詳細に説明する。
【0060】
制御部27は、作業機操作検出部52bからの検出信号に基づいて作業機制御弁41を制御することにより、油圧シリンダ13,14に供給される油圧を制御する。これにより、油圧シリンダ13,14が伸縮して、作業機3が動作する。
【0061】
制御部27は、ステアリング操作検出部57bからの検出信号に基づいてステアリング制御弁43を制御することにより、ステアリングシリンダ18に供給される油圧を制御する。これにより、ステアリングシリンダ18が伸縮して、作業車両1の進行方向が変更される。
【0062】
また、制御部27は、各検出部からの検出信号に基づいて、動力伝達装置24を制御する。制御部27による動力伝達装置24の制御については後に詳細に説明する。
【0063】
次に、動力伝達装置24の構成について詳細に説明する。
図3は、動力伝達装置24の構成を示す模式図である。
図3に示すように、動力伝達装置24は、入力軸61と、歯車機構62と、出力軸63と、第1モータMG1と、第2モータMG2と、キャパシタ64と、を備えている。入力軸61は、上述したPTO22に接続されている。入力軸61には、PTO22を介してエンジン21からの回転が入力される。歯車機構62は、入力軸61の回転を出力軸63に伝達する。出力軸63は、上述した走行装置25に接続されており、歯車機構62からの回転を上述した走行装置25に伝達する。
【0064】
歯車機構62は、エンジン21からの駆動力を伝達する機構である。歯車機構は、モータMG1, MG2の回転速度の変化に応じて、入力軸61に対する出力軸63の回転速度比を変化させるように構成されている。歯車機構62は、FR切替機構65と、変速機構66と、を有する。
【0065】
FR切替機構65は、動力伝達装置における駆動力伝達経路を前進の走行モードと後進の走行モードとの間で選択的に切り替える。FR切替機構65は、前進用クラッチCFと、後進用クラッチCRと、図示しない各種のギアとを有している。前進用クラッチCFと後進用クラッチCRとは、油圧式クラッチであり、各クラッチCF,CRには、トランスミッションポンプ29からの作動油が供給される。前進用クラッチCFへの作動油は、Fクラッチ制御弁VFによって制御される。後進用クラッチCRへの作動油は、Rクラッチ制御弁VRによって制御される。各クラッチ制御弁CF,CRは、制御部27からの指令信号によって制御される。前進用クラッチCFのオン(接続)/オフ(切断)と後進用クラッチCRのオン(接続)/オフ(切断)とが切り換えられることによって、FR切替機構65から出力される回転の方向が切り換えられる。
【0066】
変速機構66は、伝達軸67と、第1遊星歯車機構68と、第2遊星歯車機構69と、Hi/Lo切替機構70と、出力ギア71と、を有している。伝達軸67は、FR切替機構65に連結されている。第1遊星歯車機構68及び第2遊星歯車機構69は、伝達軸67と同軸上に配置されている。
【0067】
第1遊星歯車機構68は、第1サンギアS1と、複数の第1遊星ギアP1と、複数の第1遊星ギアP1を支持する第1キャリアC1と、第1リングギアR1とを有している。第1サンギアS1は、伝達軸67に連結されている。複数の第1遊星ギアP1は、第1サンギアS1と噛み合い、第1キャリアC1に回転可能に支持されている。第1キャリアC1の外周部には、第1キャリアギアGc1が設けられている。第1リングギアR1は、複数の遊星ギアP1に噛み合うとともに回転可能である。また、第1リングギアR1の外周には、第1リング外周ギアGr1が設けられている。
【0068】
第2遊星歯車機構69は、第2サンギアS2と、複数の第2遊星ギアP2と、複数の第2遊星ギアP2を支持する第2キャリアC2と、第2リングギアR2とを有している。第2サンギアS2は第1キャリアC1に連結されている。複数の第2遊星ギアP2は、第2サンギアS2と噛み合い、第2キャリアC2に回転可能に支持されている。第2リングギアR2は、複数の遊星ギアP2に噛み合うとともに回転可能である。第2リングギアR2の外周には、第2リング外周ギアGr2が設けられている。第2リング外周ギアGr2は出力ギア71に噛み合っており、第2リングギアR2の回転は出力ギア71を介して出力軸63に出力される。
【0069】
Hi/Lo切替機構70は、動力伝達装置24における駆動力伝達経路を、車速が高い高速モード(Hiモード)と車速が低い低速モード(Loモード)で切り替えるための機構である。このHi/Lo切替機構70は、Hiモード時にオンにされるHクラッチCHと、Loモード時にオンにされるLクラッチCLとを有している。HクラッチCHは、第1リングギアR1と第2キャリアC2とを接続又は切断する。また、LクラッチCLは、第2キャリアC2と固定端72とを接続又は切断し、第2キャリアC2の回転を禁止又は許容する。
【0070】
なお、各クラッチCH,CLは油圧式クラッチであり、各クラッチCH,CLには、それぞれトランスミッションポンプ29からの作動油が供給される。HクラッチCHへの作動油は、Hクラッチ制御弁VHによって制御される。LクラッチCLへの作動油は、Lクラッチ制御弁VLによって制御される。各クラッチ制御弁VH,VLは制御部27からの指令信号によって制御される。
【0071】
第1モータMG1及び第2モータMG2は、電気エネルギーによって駆動力を発生させる駆動モータとして機能する。また、第1モータMG1及び第2モータMG2は、入力される駆動力を用いて電気エネルギーを発生させるジェネレータとしても機能する。第1モータMG1に回転方向と逆方向のトルクが作用するように制御部27から指令信号が与えられた場合は、第1モータMG1はジェネレータとして機能する。第1モータMG1の出力軸には第1モータギアGm1が固定されており、第1モータギアGm1は第1キャリアギアGc1に噛み合っている。また、第1モータMG1には第1インバータI1が接続されており、この第1インバータI1に、第1モータMG1のモータトルクを制御するための指令信号が制御部27から与えられる。
【0072】
第2モータMG2は、第1モータMG1と同様の構成である。第2モータMG2の出力軸には第2モータギアGm2が固定されており、第2モータギアGm2は第1リング外周ギアGr1に噛み合っている。また、第2モータMG2には第2インバータI2が接続されており、この第2インバータI2に、第2モータMG2のモータトルクを制御するための指令信号が制御部27から与えられる。
【0073】
キャパシタ64は、モータMG1,MG2で発生するエネルギーを蓄えるエネルギー貯留部として機能する。すなわち、キャパシタ64は、各モータMG1,MG2の合計発電量が多いときに、各モータMG1,MG2で発電された電力を蓄電する。また、キャパシタ64は、各モータモータMG1,MG2の合計電力消費量が多いときに、電力を放電する。すなわち、各モータモータMG1,MG2は、キャパシタ64に蓄えられた電力によって駆動される。なお、キャパシタに代えてバッテリーが他の蓄電手段として用いられてもよい。
【0074】
制御部27は、各種の検出部からの検出信号を受けて、モータMG1,MG2への指令トルクを示す指令信号を各インバータI1,I2に与える。また、制御部27は、各クラッチCF,CR,CH,CLのクラッチ油圧を制御するための指令信号を各クラッチ制御弁VF,VR,VH,VLに与える。これにより、動力伝達装置24の変速比及び出力トルクが制御される。以下、動力伝達装置24の動作について説明する。
【0075】
ここでは、エンジン21の回転速度を一定に保ったまま車速が0から前進側に加速する場合における動力伝達装置24の概略動作を、
図4を用いて説明する。
図4は、車速に対する各モータMG1,MG2の回転速度を示したものである。エンジン21の回転速度が一定である場合には、車速は、動力伝達装置24の回転速度比に応じて変化する。回転速度比は、入力軸61の回転速度に対する出力軸63の回転速度の比である。従って、
図4において車速の変化は、動力伝達装置24の回転速度比の変化に一致する。すなわち、
図4は、各モータMG1,MG2の回転速度と動力伝達装置24の回転速度比との関係を示している。
図4において、実線が第1モータMG1の回転速度、破線が第2モータMG2の回転速度を示している。
【0076】
車速が0からV1までのA領域(Loモード)では、LクラッチCLがオン(接続)され、HクラッチCHがオフ(切断)される。このA領域では、HクラッチCHがオフされているので、第2キャリアC2と第1リングギアR1とが切断される。また、LクラッチCLがオンされるので、第2キャリアC2が固定される。
【0077】
このA領域においては、エンジン21からの駆動力は、伝達軸67を介して第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。一方、第1サンギアS1に入力された駆動力は第1遊星ギアP1から第1リングギアR1に伝達され、第1リング外周ギアGr1及び第2モータギアGm2を介して第2モータMG2に出力される。第2モータMG2は、このA領域においては、主としてジェネレータとして機能しており、第2モータMG2によって発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0078】
また、A領域においては、第1モータMG1は、主として電動モータとして機能する。第1モータMG1の駆動力は、第1モータギアGm1→第1キャリアギアGc1→第1キャリアC1→の経路で第2サンギアS2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は、第2遊星ギアP2→第2リングギアR2→第2リング外周ギアGr2→出力ギア71の経路で出力軸63に伝達される。
【0079】
車速がV1を超えるB領域(Hiモード)では、HクラッチCHがオン(接続)され、LクラッチCLがオフ(切断)される。このB領域では、HクラッチCHがオンされているので、第2キャリアC2と第1リングギアR1とが接続される。また、LクラッチCLがオフされるので、第2キャリアC2が解放される。従って、第1リングギアR1と第2キャリアC2の回転速度とは一致する。
【0080】
このB領域では、エンジン21からの駆動力は第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。また、第1サンギアS1に入力された駆動力は、第1キャリアC1から第1キャリアギアGc1及び第1モータギアGm1を介して第1モータMG1に出力される。このB領域では、第1モータMG1は主としてジェネレータとして機能するので、この第1モータMG1で発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0081】
また、第2モータMG2の駆動力は、第2モータギアGm2→第1リング外周ギアGr1→第1リングギアR1→HクラッチCHの経路で第2キャリアC2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力されるとともに、第2キャリアC2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力される。このようにして第2リングギアR2で合わさった駆動力が、第2リング外周ギアGr2及び出力ギア71を介して出力軸63に伝達される。
【0082】
なお、以上は前進駆動時の説明であるが、後進駆動時においても同様の動作となる。また、制動時には、第1モータMG1と第2モータMG2とのジェネレータ及びモータとしての役割は上記と逆になる。
【0083】
次に、制御部27による動力伝達装置24の制御について説明する。制御部27は、第1モータMG1及び第2モータMG2のモータトルクを制御することにより、動力伝達装置24の出力トルクを制御する。すなわち、制御部27は、第1モータMG1及び第2モータMG2のモータトルクを制御することにより、作業車両1の牽引力を制御する。
【0084】
以下、第1モータMG1及び第2モータMG2へのモータトルクの指令値(以下、「指令トルク」と呼ぶ)の決定方法について説明する。
図5〜13は、制御部27によって実行される処理を示す制御ブロック図である。
図5及び
図6に示すように、制御部27は、目標入力トルク決定部81と、目標出力トルク決定部82と、指令トルク決定部83と、を有する。
【0085】
目標入力トルク決定部81は、目標入力トルクTe_refを決定する。目標入力トルクTe_refは、動力伝達装置24に入力されるトルクの目標値である。目標出力トルク決定部82は、目標出力トルクTo_refを決定する。目標出力トルクTo_refは、動力伝達装置24から出力されるトルクの目標値である。指令トルク決定部83は、目標入力トルクTe_refと目標出力トルクTo_refとから、トルクバランス情報により、モータMG1, MG2への指令トルクTm1_ref, Tm2_refを決定する。トルクバランス情報は、動力伝達装置24でのトルクの釣り合いを満たすように目標入力トルクTe_refと目標出力トルクTo_refとの関係を規定する。トルクバランス情報は、記憶部56に記憶されている。
【0086】
上述したように、LoモードとHiモードとでは、動力伝達装置24における駆動力の伝達経路が異なる。このため、指令トルク決定部83は、LoモードとHiモードとでは、異なるトルクバランス情報を用いてモータMG1, MG2への指令トルクTm1_ref, Tm2_refを決定する。詳細には、指令トルク決定部83は、以下の数1に示す第1のトルクバランス情報を用いてLoモードでのモータMG1, MG2への指令トルクTm1_Low, Tm2_Lowを決定する。本実施形態において、第1のトルクバランス情報は、動力伝達装置24でのトルクの釣り合いの式である。
(数1)
Ts1_Low = Te_ref * r_fr
Tc1_Low = Ts1_Low * (-1) * ( (Zr1/Zs1) + 1 )
Tr2_Low = To_ref * (Zod/Zo)
Ts2_Low = Tr2_Low * (Zs2/Zr2)
Tcp1_Low = Tc1_Low + Ts2_Low
Tm1_Low = Tcp1_Low * (-1) * (Zp1/Zp1d)
Tr1_Low = Ts1_Low * (Zr1/Zs1)
Tm2_Low = Tr1_Low * (-1) * (Zp2/Zp2d)
また、指令トルク決定部83は、以下の数2に示す第2のトルクバランス情報を用いてHiモードでのモータMG1, MG2への指令トルクTm1_Hi,Tm2_ Hiを決定する。本実施形態において、第2のトルクバランス情報は、動力伝達装置24でのトルクの釣り合いの式である。
【0087】
(数2)
Ts1_Hi = Te_ref * r_fr
Tc1_Hi = Ts1_Hi * (-1) * ( (Zr1/Zs1) + 1 )
Tr2_Hi = To_ref * (Zod/Zo)
Ts2_Hi = Tr2_Hi * (Zs2/Zr2)
Tcp1_Hi = Tc1_Hi + Ts2_Hi
Tm1_Hi = Tcp1_Hi * (-1) * (Zp1/Zp1d)
Tr1_Hi = Ts1_Hi * (Zr1/Zs1)
Tc2_Hi = Tr2_Hi * (-1) * ( (Zs2/Zr2) + 1 )
Tcp2_Hi = Tr1_Hi + Tc2_Hi
Tm2_Hi = Tcp2_Hi * (-1) * (Zp2/Zp2d)
ここで、各トルクバランス情報のパラメータの内容は以下の表1の通りである。
【0088】
【表1】
次に、目標入力トルクTe_refと目標出力トルクTo_refとの決定方法について説明する。目標入力トルクTe_refと目標出力トルクTo_refとは任意に設定することができるが、本実施形態では、車速に応じて牽引力が連続的に変化する所定の車速−牽引力特性が得られるように、目標入力トルクTe_refと目標出力トルクTo_refとが決定される。
【0089】
図7は、目標出力トルクTo_refを決定するための処理を示している。
図7に示すように、制御部27は、トランスミッション要求決定部84を有している。トランスミッション要求決定部84は、アクセル操作量Aacと出力回転速度Noutとに基づいて、要求牽引力Toutを決定する。アクセル操作量Aacは、アクセル操作検出部51bによって検出される。出力回転速度Noutは、車速検出部37によって検出される。
【0090】
トランスミッション要求決定部84は、記憶部56に記憶されている要求牽引力特性情報D1に基づいて、出力回転速度Noutから要求牽引力Toutを決定する。目標出力トルク決定部82は、要求牽引力Toutに基づいて、目標出力トルクTo_refを決定する。詳細には、目標出力トルク決定部82は、要求牽引力Toutにトランスミッション出力率Rtmを乗じることによって目標出力トルクTo_refを決定する。なお、トランスミッション出力率Rtmについては後述する。
【0091】
要求牽引力特性情報D1は、出力回転速度Noutと要求牽引力Toutとの関係を規定する要求牽引力特性を示すデータである。要求牽引力特性は、上述した所定の車速−牽引力特性に対応している。すなわち、動力伝達装置24から出力される牽引力が、要求牽引力特性情報D1で規定されている要求牽引力特性に従うように、目標出力トルクTo_refが決定される。
【0092】
詳細には、
図8に示すように、記憶部56は、基準となる要求牽引力特性を示すデータLout1(以下、「基準牽引力特性Lout1」と呼ぶ)を記憶している。基準牽引力特性Lout1は、アクセル操作量Aacが最大値すなわち100%であるときの要求牽引力特性である。基準牽引力特性Lout1は、変速操作部材53aによって選択される速度範囲に応じて定められる。トランスミッション要求決定部84は、基準牽引力特性Lout1に、牽引力比率FWRと車速比率VRとを乗じることによって、現在の要求牽引力特性Lout2を決定する。
【0093】
記憶部56は、牽引力比率情報D2と車速比率情報D3とを記憶している。牽引力比率情報D2は、アクセル操作量Aacに対する牽引力比率FWRを規定する。車速比率情報D3は、アクセル操作量Aacに対する車速比率VRを規定する。トランスミッション要求決定部84は、アクセル操作量Aacに応じて牽引力比率FWRと車速比率VRとを決定する。トランスミッション要求決定部84は、基準牽引力特性Lout1に対して、要求牽引力を示す縦軸方向に牽引力比率FWR、出力回転速度Noutを示す横軸方向に車速比率VRを乗じることによって、アクセル操作量Aacに応じた現在の要求牽引力特性情報Lout2を決定する。
【0094】
牽引力比率情報D2は、アクセル操作量Aacが大きくなるほど大きくなる牽引力比率FWRを規定している。車速比率情報D3は、アクセル操作量Aacが大きくなるほど大きくなる車速比率VRを規定している。ただし、アクセル操作量Aacが0であるときの牽引力比率FWRは0より大きい。同様に、アクセル操作量Aacが0であるときの車速比率VRは0より大きい。このため、アクセル操作部材51aの操作が行われていないときでも、要求牽引力Toutは、0より大きな値になる。すなわち、アクセル操作部材51aの操作が行われていないときでも、動力伝達装置24から牽引力が出力される。これにより、トルクコンバータ式の変速装置で生じるクリープと同様の挙動がEMT式の動力伝達装置24において実現される。
【0095】
なお、要求牽引力特性情報D1は、出力回転速度Noutの減少に応じて増大する要求牽引力Toutを規定している。また、上述した変速操作部材53aが操作されると、トランスミッション要求決定部84は、変速操作部材53aによって選択された速度範囲に対応して、要求牽引力特性を変更する。例えば、変速操作部材53aによってシフトダウンが行われると、
図8に示すように、要求牽引力特性情報がLout2からLout2’に変更される。これにより、出力回転速度Noutの上限値が低減される。すなわち、車速の上限値が低減される。
【0096】
また、要求牽引力特性情報D1は、所定速度以上の出力回転速度Noutに対して、負の値の要求牽引力Toutを規定している。このため、選択されている速度範囲での出力回転速度の上限値よりも出力回転速度Noutが大きいときには、要求牽引力Toutが負の値に決定される。要求牽引力Toutが負の値であるときには、制動力が発生する。これにより、トルクコンバータ式の変速装置で生じるエンジンブレーキと同様の挙動がEMT式の動力伝達装置24において実現される。
【0097】
図9は、目標入力トルクTe_refを決定するための処理を示している。目標入力トルク決定部81は、トランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとに基づいて、目標入力トルクTe_refを決定する。詳細には、目標入力トルク決定部81は、トランスミッション要求馬力Htmにトランスミッション出力率Rtmを乗じた値と、エネルギーマネジメント要求馬力Hemとを合算することにより、トランスミッション要求入力馬力Htm_inを算出する。トランスミッション要求馬力Htmは、上述した要求牽引力特性を実現するために動力伝達装置24が必要とする馬力であり、上述した要求牽引力Toutに現在の出力回転速度Noutを乗じることで算出される(
図8参照)。エネルギーマネジメント要求馬力Hemは、後述するようにキャパシタ64を充電するために動力伝達装置24が必要とする馬力である。従って、トランスミッション要求入力馬力Htm_inは、動力伝達装置24からの所望の牽引力の出力と、動力伝達装置24でのキャパシタ64の充電とのために必要な馬力である。ただし、Hemが負の値である場合には、キャパシタ64の放電が要求されることを意味する。
【0098】
そして、目標入力トルク決定部81は、トランスミッション要求入力馬力Htm_inをトルクに換算し、所定の上限目標入力トルクMax_Teを超えないように、目標入力トルクTe_refを決定する。詳細には、目標入力トルク決定部81は、トランスミッション要求入力馬力Htm_inを現在のエンジン回転速度Neで除することにより、トランスミッション要求入力トルクTinを算出する。そして、目標入力トルク決定部81は、トランスミッション要求入力トルクTinと、上限目標入力トルクMax_Teとのうちの小さい方を、目標入力トルクTe_refとして決定する。
【0099】
図10は、上限目標入力トルクMax_Teを決定する処理を示している。
図10に示すように、上限目標入力トルクMax_Teは、上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoによって規定される。詳細には、目標入力トルク決定部81は、上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoと現在のエンジン回転速度Neとから、上限目標入力トルクMax_Te+Tptoを決定する。
【0100】
上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoは、記憶部56に記憶されており、上限目標入力トルクMax_Te+Tptoとエンジン回転速度Neとの関係を規定する。上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoは、任意に設定することができるが、本実施形態では、上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoは、トランスミッション要求入力馬力Htm_inと現在のエンジン回転速度Neとから決定されるエンジン21の目標出力トルクTenよりも上限目標入力トルクMax_Te+Tptoが小さくなるように規定されている。
【0101】
上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoから求められる上限目標入力トルクMax_Te+Tptoは、トランスミッション要求入力トルクTinだけではなく、作業機負荷トルクTptoも合わせた目標入力トルクの上限値を規定している。作業機負荷トルクTptoは後述するようにPTO22を介して油圧ポンプに分配されるトルクである。従って、目標入力トルク決定部81は、上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoから求めた上限目標入力トルクMax_Te+Tptoから作業機負荷トルクTptoを減ずることにより、目標入力トルクTe_refの上限値としての上限目標入力トルクMax_Teを算出する。
【0102】
次に、エネルギーマネジメント要求馬力Hemの決定方法について説明する。
図9に示すように、制御部27は、エネルギーマネジメント要求決定部85を有する。エネルギーマネジメント要求決定部85は、キャパシタ64での電力の残量に基づいてエネルギーマネジメント要求馬力Hemを決定する。
【0103】
詳細には、記憶部56は、目標キャパシタ容量情報D4を記憶している。目標キャパシタ容量情報D4は、出力回転速度Noutと目標キャパシタ容量Cp_targetとの関係を規定する。詳細には、エネルギーマネジメント要求決定部85は、出力回転速度Noutが増大するほど小さくなる目標キャパシタ容量Cp_targetを規定する。エネルギーマネジメント要求決定部85は、目標キャパシタ容量情報D4を参照して、出力回転速度Noutから目標キャパシタ容量Cp_targetを決定する。また、エネルギーマネジメント要求決定部85は、キャパシタ64の電圧Vcaから、現在のキャパシタ容量Cp_currentを決定する。そして、エネルギーマネジメント要求決定部85は、以下の数3式により、エネルギーマネジメント要求馬力Hemを決定する。
(数3)
Hem = ( Cp_target - Cp_current ) * P_gain
P_gainは、所定の係数である。エネルギーマネジメント要求決定部85は、現在のキャパシタ容量Cp_currentが少なくなるほど、エネルギーマネジメント要求馬力Hemを大きくする。また、エネルギーマネジメント要求決定部85は、目標キャパシタ容量Cp_targetが大きいほど、エネルギーマネジメント要求馬力Hemを大きくする。
【0104】
次に、制御部27によるエンジン21の制御について説明する。上述したように、制御部27は、指令信号を燃料噴射装置28に送ることでエンジン21を制御する。以下、燃料噴射装置28への指令スロットル値の決定方法について説明する。
【0105】
指令スロットル値Th_cmは、エンジン21において必要となるエンジン要求馬力Hdmに基づいて決定される(
図12参照)。上述したように、エンジン21からの駆動力の一部は、動力伝達装置24と油圧ポンプとに分配される。このため、制御部27は、上述したトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとに加えて、油圧ポンプに分配される馬力である作業機要求馬力Hptoに基づいて、エンジン要求馬力を決定する。
【0106】
図11に示すように、制御部27は、作業機要求決定部86を有する。作業機要求決定部86は、作業機ポンプ圧Pwpと作業機操作部材52aの操作量Awo(以下、「作業機操作量Awo」と呼ぶ)とに基づいて作業機要求馬力Hptoを決定する。本実施形態において、作業機要求馬力Hptoは、作業機ポンプ23に分配される馬力である。ただし、後述するように、作業機要求馬力Hptoは、ステアリングポンプ30及び/又はトランスミッションポンプ29に分配される馬力を含んでもよい。
【0107】
詳細には、作業機要求決定部86は、要求流量情報D5に基づいて、作業機操作量Awoから作業機ポンプ23の要求流量Qdmを決定する。要求流量情報D5は、記憶部56に記憶されており、要求流量Qdmと作業機操作量Awoとの関係を規定する。作業機要求決定部86は、要求流量Qdmと作業機ポンプ圧Pwpとから作業機要求馬力Hptoを決定する。詳細には、作業機要求決定部86は、以下の数4式により、作業機要求馬力Hptoを決定する。
(数4)
Hpto = Qdm / ηv * Pwp / ηt
ηvは容積効率である。ηtはトルク効率である。容積効率ηv及びトルク効率ηtは、作業機ポンプ23の特性に応じて定まる固定値である。作業機ポンプ圧Pwpは、作業機ポンプ圧検出部32によって検出される。
【0108】
また、作業機要求決定部86は、作業機ポンプ圧Pwpと作業機出力流量Qwoとに基づいて上述した作業機負荷トルクTptoを決定する。詳細には、作業機要求決定部86は、以下の数5式により、作業機負荷トルクTptoを決定する。
(数5)
Tpto = Qwp * Pwp / ηt
Qwpは、作業機ポンプ押しのけ容積である。作業機ポンプ押しのけ容積Qwpは、第1傾転角検出部33によって検出された傾転角から算出される。
【0109】
また、作業機要求決定部86は、作業機操作量Awoに基づいて作業機出力流量Qwoを決定する。詳細には、作業機要求決定部86は、上述した要求流量Qdmに作業機出力率Rptoを乗じることによって、作業機出力流量Qwoを決定する。作業機出力率Rptoについては後述する。制御部27は、上記のように決定された作業機出力流量Qwoに応じて、作業機ポンプ23の吐出容量を制御する。
【0110】
図12に示すように、制御部27は、エンジン要求決定部87を有する。エンジン要求決定部87は、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとに基づいて、エンジン要求馬力Hdmを決定する。詳細には、エンジン要求決定部87は、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとを合算することにより、エンジン要求馬力Hdmを決定する。
【0111】
図13に示すように、制御部27は、要求スロットル決定部89を有する。要求スロットル決定部89は、エンジン要求馬力Hdmと、アクセル操作量Aacとから、指令スロットル値Th_cmを決定する。
【0112】
詳細には、記憶部56は、エンジントルク線Letとマッチング線Lmaとを記憶している。エンジントルク線Letは、エンジン21の出力トルクとエンジン回転速度Neとの関係を規定する。エンジントルク線Letは、レギュレーション領域Laと全負荷領域Lbとを含む。レギュレーション領域Laは、指令スロットル値Th_cmに応じて変化する(
図13のLa’参照)。全負荷領域Lbは、定格点Prと、定格点Prよりも低エンジン回転速度側に位置する最大トルク点Pmとを含む。
【0113】
マッチング線Lmaは、エンジン要求馬力Hdmから第1要求スロットル値Th_tm1を決定するための情報である。マッチング線Lmaは任意に設定することができるが、本実施形態においては、マッチング線Lmaは、エンジントルク線Letの全負荷領域Lbにおいて定格点Prよりも最大トルク点Pmに近い位置を通るように設定されている。
【0114】
要求スロットル決定部89は、エンジン21の出力トルクがエンジン要求馬力Hdmに相当するトルクとなるマッチング点Pma1において、エンジントルク線Letとマッチング線Lmaとがマッチングするように、第1要求スロットル値Th_tm1を決定する。すなわち、エンジン要求馬力Hdmに相当する等馬力線Lhdmと、マッチング線Lmaとの交点が第1マッチング点Pma1として設定され、要求スロットル決定部89は、エンジントルク線Letのレギュレーション領域(La””参照)が第1マッチング点Pma1を通るように、第1要求スロットル値Th_tm1を決定する。
【0115】
要求スロットル決定部89は、第1要求スロットル値Th_tm1と、アクセル操作量Aacに相当する第2要求スロットル値Th_acとのうち、小さい方を指令スロットル値Th_cmとして決定する。
【0116】
次に、上述したトランスミッション出力率Rtmと作業機出力率Rptoとの決定方法について説明する。
図12に示すように、制御部27は、分配率決定部88を有する。分配率決定部88は、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとに基づいて、トランスミッション出力率Rtmと、作業機出力率Rptoとを決定する。エンジン21からの出力馬力は、PTO22によって、作業機ポンプ23と動力伝達装置24とに分配される。動力伝達装置24への出力馬力は、動力伝達装置24の牽引力用の馬力と、キャパシタ64への充電用の馬力とに分配される。しかし、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとの合計が、エンジン21からの出力馬力よりも大きくなると、各要求値の通りにエンジン21の出力馬力を分配することはできない。このため、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとのそれぞれに出力率Rpto, Rtmを乗じることによって、各要求値の合計がエンジン21からの出力馬力を越えないように制限される。
【0117】
詳細には、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとの合計が、所定の負荷上限馬力Hmax以下であるときには、トランスミッション出力率Rtmと作業機出力率Rptoとは、それぞれ「1」に設定される。すなわち、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとの各要求値の通りにエンジン21の出力馬力が分配される。なお、所定の負荷上限馬力Hmaxは、現在のエンジン回転速度Neに基づいて決定される。詳細には、所定の負荷上限馬力Hmaxは、
図10に示すように、上述した上限目標入力トルクMax_Te+Tptoと現在のエンジン回転速度Neとから決定される。
【0118】
作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとの合計が、所定の負荷上限馬力Hmaxより大きいときには、分配率決定部88は、トランスミッション出力率Rtmとして1より小さな値を設定する。この場合、分配率決定部88は、エネルギーマネジメント要求馬力Hemを優先して、トランスミッション出力率Rtmと作業機出力率Rptoとを決定する。すなわち、分配率決定部88は、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとを優先分と比例分とに分ける。分配率決定部88は、以下の順に優先的にエンジン21からの出力馬力を分配する。
1.エネルギーマネジメント要求馬力Hem
2.作業機要求馬力Hptoの優先分Hpto_A
3.トランスミッション要求馬力Htmの優先分Htm_A
4.作業機要求馬力Hptoの比例分Hpto_B
5.トランスミッション要求馬力Htmの比例分Htm_B
例えば、
図14に示すように、エネルギーマネジメント要求馬力Hemから作業機要求馬力Hptoの比例分Hpto_Bまでの合計(Hem_A+Hpto_A+Htm_A+Hpto_B)は所定の負荷上限馬力Hmaxより小さいが、エネルギーマネジメント要求馬力Hem_Aからトランスミッション要求馬力Htmの比例分Htm_Bまでの合計が所定の負荷上限馬力Hmaxより大きくなる場合、当該合計が所定の負荷上限馬力Hmax以下となるように、トランスミッション要求馬力Htmの比例分がHtm_Bから、Htm_B よりも小さいHtm_B’に修正される。そして、修正前のトランスミッション要求馬力Htmに対する修正後のトランスミッション要求馬力Htm’の比が、トランスミッション出力率Rtmとして決定される。
【0119】
次に、本実施形態にかかる作業車両1の動作時の制御の例として、Vシェープ作業中の制御について説明する。
図15は、Vシェープ作業での作業車両1の動作を示している。Vシェープ作業は、典型的には土砂等の荷物を土砂等の搬送物を堆積した堆積地300からダンプトラック200の荷台に積み込むための作業である。
図15に示すように、Vシェープ作業は、(1)前進して堆積地300に近づく、(2)堆積地300に突っ込んでバケット12に荷物を積み込む(以下、「掘削」と呼ぶ)、(3)後進して堆積地300から離れる、(4)前進してダンプトラック200に近づき(以下、「ダンプアプローチ」と呼ぶ、荷物をバケット12からダンプトラック200の荷台に降ろす(以下、「排土」と呼ぶ)、(5)後進してダンプトラック200から離れる、という5つの作業局面を含む。
【0120】
図16は、Vシェープ作業での作業車両1の各パラメータの変化を示すタイミングチャートである。
図16(A)は、車速を示している。なお、
図16(A)において、二点鎖線は、比較例として、従来のトルクコンバータ式の作業車両の車速を示している。
図16(B)は、エンジン回転速度を示している。なお、
図16(B)において、二点鎖線は、従来のトルクコンバータ式の作業車両のエンジン回転速度を示している。
図16(C)は、エンジン21の出力トルクを示している。なお、
図16(C)において、二点鎖線は、従来のトルクコンバータ式の作業車両のエンジンの出力トルクを示している。
図16(D)において実線は、作業機ポンプ圧を示している。
図16(D)において破線は、作業機ポンプ23の押しのけ容積を示している。すなわち、
図16(D)は、作業機ポンプ23への負荷を示している。
図16(E)において実線は、ブーム操作量を示している。
図16(E)において破線は、バケット操作量を示している。なお、
図16(E)において正の操作量は作業機3を上昇させる操作を意味し、負の操作量は作業機3を下降させる操作を意味する。
図16(F)において実線は、アクセル操作量を示している。なお、本実施形態では、Vシェープ作業においては、作業局面の切り換わり時など一部の場合を除いて、アクセル操作量は最大となっている。
図16(F)において破線は、指令スロットル値を示している。
図16(G)は、変速操作部材53aによって選択されている速度範囲を示している。
図16(H)は、FR操作部材54aの選択位置(FNR位置)を示している。
【0121】
上述したように、前進の作業局面(1)では、作業車両は、前進して堆積地300に近づく。このため、
図16(E)に示すように、作業機3の負荷が大きくなるような操作は概ね行われず、
図16(D)に示すように、作業機ポンプ23への負荷は小さい。従って、エンジン21の馬力は、主として動力伝達装置24に分配される。
【0122】
図16(A)に示すように、前進の作業局面(1)では、作業車両1は、停止状態から発進して、加速する。本実施形態に係る作業車両1では、
図8に示すように、トランスミッション要求決定部84は、出力回転速度Noutとアクセル操作量Aacとに基づいて要求牽引力Toutを決定し、トランスミッション要求馬力Htmに出力回転速度Noutを乗じることでトランスミッション要求馬力Htmを決定する。従って、発進時には車速が小さいので、トランスミッション要求馬力Htmは小さい。ただし、エンジン回転速度が上昇する前でも牽引力が発生するため、
図16(A)に示すように、従来のトルクコンバー式の車両と比較して、発進時の加速が良好である。なお、加速に必要なエネルギーは、キャパシタ64の電力によって追加的に供給されることができる。
【0123】
その後、車速が上昇してトランスミッション要求馬力Htmが増大すると、エンジン要求馬力Hdmが増大する。これにより、
図13に示すマッチング点Pma1がマッチング線Lmaに沿って移動することで、
図16(F)に示すように、指令スロットル値Th_cmが増大する。その結果、
図16(B)に示すように、エンジン回転速度が増大する。ただし、従来のトルクコンバータ式の作業車両では、作業機負荷がない場合には、エンジン負荷が小さくなることにより、エンジン回転速度が上昇する。その結果、燃料の消費量が大きくなる。これに対して、本実施形態の作業車両1では、トランスミッション要求馬力Htmに基づいて指令スロットル値Th_cmを決定しているため、エンジン回転速度が低く抑えられる。これにより、燃費を向上させることができる。
【0124】
次に、掘削の作業局面(2)では、作業車両1は、堆積地300に突っ込んでバケットに荷物を積み込む。
図16(A)に示すように、掘削の作業局面では、車速が小さい。このため、動力伝達装置24からの出力トルクは大きいが動力伝達装置24で必要となる馬力は小さい。一方、
図16(E)に示すように、掘削の作業局面(2)では、作業機3の操作が行われる。このため、エンジン21の馬力は、作業機ポンプ23に分配される。従って、エンジン21の馬力が小さすぎると掘削力が不足してしまうので、掘削の作業局面(2)では、動力伝達装置24と作業機ポンプ23とへの馬力の配分が重要となる。
【0125】
図16(G)に示すように、掘削の開始時には、オペレータは、まず変速操作部材53aを操作することで、速度範囲を2速から1速にシフトダウンする。本実施形態に係る作業車両1では、速度範囲が1速にシフトダウンされると、基準牽引力特性が2速の特性から1速の特性に変更される。これにより、例えば、
図8に示すように、要求牽引力特性がLout2からLout2’に変更される。この場合、車速(出力回転速度Nout)が1速での上限値よりも大きいときには、要求牽引力Toutが負の値に決定される。これにより、制動力が発生する。
【0126】
バケット12が堆積地300に突き刺さると、車速が低下する。この場合、トランスミッション要求決定部84は、1速の要求牽引力特性に従い、車速に応じて、要求牽引力Toutとトランスミッション要求馬力Htmとを決定する。
【0127】
掘削中には、オペレータがブーム11を上昇させるための操作を行う。この場合、
図11に示す作業機要求馬力Hptoが増大し、これにより
図12に示すエンジン要求馬力Hdmが増大する。このため、
図13に示すマッチング点Pma1がマッチング線Lmaに沿って移動することで、指令スロットル値Th_cmが増大する。その結果、エンジン回転速度が増大する。
【0128】
また、掘削中には、
図16(E)に示すように、オペレータは、バケット12を上昇させる操作を断続的に行うことがある。この場合、
図11に示す作業機要求馬力Hptoが上昇と下降とを繰り返し、これにより、
図12に示すエンジン要求馬力Hdmが上昇と下降とを繰り返す。このエンジン要求馬力Hdmの変化に応じて、
図13に示すマッチング点Pma1がマッチング線Lmaに沿って移動することで、
図16(F)に示すように、指令スロットル値Th_cmが変化し、その結果、
図16(B)に示すように、エンジン回転速度が調整される。
【0129】
後進して堆積地300から離れる作業局面(3)では、作業車両1は、後進して堆積地300から離れる。このため、
図16(E)に示すように、作業機3の負荷が大きくなるような操作は概ね行われず、
図16(D)に示すように、作業機ポンプ23への負荷は小さい。
【0130】
後進時には、作業車両1は、前進時と同様にまず加速を行う。これにより、後方への車速が増大する。
図16(A)に示すように、後進の発進時においても、前進の発進時と同様に、本実施形態に係る作業車両1では、従来のトルクコンバー式の車両と比較して、発進時の加速が良好である。
【0131】
作業車両1が、後進して土山から離れると、次に減速を行う。減速時には、要求牽引力Toutが低下するため、トランスミッション要求馬力Htmが低下する。これにより、
図13に示すマッチング点Pma1がマッチング線Lmaに沿って移動することで、
図16(F)に示すように指令スロットル値Th_cmが低下する。その結果、
図16(B)に示すようにエンジン回転速度が低下する。なお、減速時には、要求牽引力Toutが負の値となることで制動力が要求されることがある。例えば、
図16(G)に示すように、作業車両1の後進中にFR操作部材54aを後進位置から前進位置に切り換えた直後に、FR操作部材54aは前進位置に設定されているが、作業車両1が後進している場合には、制動力が要求される。制動力が発生した場合、制動力として吸収された運動エネルギーは、動力伝達装置24を介して、エンジン21或いはキャパシタ64に回生される。エンジン21にエネルギーが回生されることで、燃費を向上させることができる。また、キャパシタ64にエネルギーが回生されることで、エネルギーを使うタイミングを調整することができる。
【0132】
次に、ダンプアプローチ/排土の作業局面では、作業車両1は、前進してダンプトラック200に近づき、荷物をバケット12からダンプトラック200の荷台に降ろす。ダンプアプローチ時には、作業車両1は、バケット12に荷物が積まれている状態で加速する。このとき、バケット12を上昇させる操作が行われるため、作業機ポンプ23への負荷は大きい。また、ダンプアプローチ/排土の作業局面では、車速が早すぎると、バケット12が十分に上昇する前に作業車両1がダンプトラック200に到達してしまう。このため、車速と作業機3との良好な操作性が重要となる。
【0133】
ダンプアプローチ時には、作業機ポンプ23への負荷が大きい。このため、従来のトルクコンバータ式の作業車両では、作業ポンプの高負荷に対応するためにエンジン回転速度を増大させる。この場合、トルクコンバータの吸収トルクも増大し、その結果、車速が増大してしまう。このため、ブレーキ、インチングペダル、あるいはカットオフペダルなどの操作部材によって車速を調整する操作が必要となる。これに対して、本実施形態に係る作業車両1では、作業機操作検出部52bの操作に応じて作業機要求馬力Hptoが決定される。このため、作業機操作検出部52bの操作によって、作業機ポンプ23に必要なパワーを供給させることができる。また、アクセル操作量Aacに基づいて目標出力トルクTo_refが決定されるため、アクセル操作部材51aの操作によって容易に車速を調整することができる。このため、複雑な運転操作によらず、簡易に車速の調整と作業機3の操作とを行うことができる。
【0134】
また、本実施形態に係る作業車両1では、エンジンの出力が、馬力に基づいて調整される。このため、エンジン効率の高い低回転且つ高トルクの領域でエンジンを制御することができる。また、
図10に示すように、目標入力トルク決定部81は、所定の上限目標入力トルクMax_Teを超えないように、目標入力トルクTe_refを決定する。従って、エンジン回転速度を上昇させるための余剰トルクが残るように、目標入力トルクTe_refが決定される。これにより、エンジン21への負荷が大きいときであっても、エンジン回転速度が低下することが抑えられる。
【0135】
排土時には、オペレータは、ブーム11の上昇を終了し、アクセル操作量を低減させながら、バケット12を下降させる。従って、アクセル操作量の低減に従って、要求牽引力Tptoが低下し、トランスミッション要求馬力Htmが低下する。また、ブーム11の上昇が終了することにより、作業機要求馬力Hptoが低下する。これにより、
図13に示すマッチング点Pma1がマッチング線Lmaに沿って移動することで、
図16(F)に示すように、指令スロットル値Th_cmが低下する。その結果、
図16(B)に示すように、エンジン回転速度が低下する。
【0136】
後進してダンプトラック200から離れる作業局面(5)での制御は、後進して堆積地300から離れる作業局面(3)と同様であるため、説明を省略する。
【0137】
本実施形態に係る作業車両1は以下の特徴を有する。制御部27は、動力伝達装置24でのトルクの釣り合いにより、モータMG1, MG2への指令トルクTm1_ref, Tm2_refを決定することで、動力伝達装置24への所望の入力トルクと、動力伝達装置24からの所望の出力トルクと、を得ることができる。このため、所定の牽引力特性を精度よく得ることができる。一般的に、作業車両は、牽引力と作業機への負荷とを大きく変動させながら作業を行うことが要求される。従って、作業機の動作と駆動力とのバランスをとるために、動力伝達装置への入力トルク及び出力トルクを所望の値に調整できることが好ましい。本実施形態にかかる作業車両1では、目標入力トルクTe_refと目標出力トルクTo_refとを調整することにより、動力伝達装置24への所望の入力トルクと、動力伝達装置24からの所望の出力トルクと、を得ることができる。これにより、作業性と走行性とを両立させる作業車両を実現することができる。
【0138】
トランスミッション要求決定部84は、出力回転速度Noutとアクセル操作量Aacとに基づいて要求牽引力Toutを決定する。従って、出力回転速度Noutのみならずアクセル操作量Aacに基づいて要求牽引力Toutが決定される。目標出力トルク決定部82は、要求牽引力Toutに基づいて、目標出力トルクTo_refを決定するので、アクセル操作量Aacに基づいて目標出力トルクTo_refが決定される。これにより、オペレータの操作感を向上させることができる。
【0139】
トランスミッション要求決定部84は、要求牽引力特性情報D1に基づいて、出力回転速度Noutから要求牽引力Toutを決定する。トランスミッション要求決定部84は、アクセル操作量Aacに応じて要求牽引力特性情報D1を決定する。このため、アクセル操作量Aacに応じて要求牽引力特性情報D1を決定することにより、アクセル操作量Aacに基づいて要求牽引力Toutを決定することができる。
【0140】
トランスミッション要求決定部84は、基準要求牽引力特性Lout1に、牽引力比率FWRと車速比率VRとを乗じることによって現在の要求牽引力特性Lout2を決定する。また、トランスミッション要求決定部84は、アクセル操作量Aacに応じて牽引力比率FWRと車速比率VRとを決定する。このため、アクセル操作量Aacに応じた牽引力比率FWRと車速比率VRとを用いることで、アクセル操作量Aacに応じて現在の要求牽引力特性Lout2を決定することができる。
【0141】
要求牽引力特性情報D1は、所定速度以上の出力回転速度Noutに対して、負の値の要求牽引力Toutを規定する。このため、出力回転速度Noutが所定速度以上であるときには、要求牽引力Toutが負の値となる。すなわち、出力回転速度Noutが高いときには、制動力が発生するように動力伝達装置24が制御される。例えば、
図8の要求牽引力特性上の点Pに相当する状態で、要求牽引力特性がLout2からLout2’に変更されると、要求牽引力Toutは、生の値から負の値に変更される。これにより、制動力が発生する。従って、トルクコンバータ式の変速装置で生じるシフトダウンによるエンジンブレーキと同様の挙動がEMT式の動力伝達装置24において実現される。
【0142】
目標入力トルク決定部81は、トランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとに基づいて、目標入力トルクTe_refを決定する。このため、動力伝達装置24から要求牽引力に相当する牽引力を出力するために必要な馬力と、キャパシタ64に電力を蓄えるために必要な馬力とが得られるように、動力伝達装置24への目標入力トルクTe_refを決定することができる。
【0143】
目標入力トルク決定部81は、上限目標入力トルク線Lmax_Te+Tptoとエンジン回転速度Neとから目標入力トルクTe_refの上限値を決定する。このため、エンジン要求馬力Hdmとエンジン回転速度Neとから決定されるエンジン21の目標出力トルクよりも小さな値が目標入力トルクTe_refの上限値となる。従って、エンジン回転速度Neを上昇させるための余剰トルクが残るように、目標入力トルクTe_refが決定される。これにより、過負荷によるエンジン回転速度Neの低下を抑えることができる。
【0144】
作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとの合計が、所定の負荷上限馬力Hmaxより大きいときには、分配率決定部88は、トランスミッション出力率Rtmとして1より小さな値を設定する。このため、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとの合計が、所定の負荷上限馬力Hmaxより大きいときには、目標入力トルクTe_refの決定にあたり、トランスミッション要求馬力Htmの値は低減されるが、エネルギーマネジメント要求馬力Hemの値は維持される。すなわち、トランスミッション要求馬力Htmよりもエネルギーマネジメント要求馬力Hemを優先して目標入力トルクTe_refが決定される。これにより、エネルギーマネジメント要求馬力Hemを優先してエンジン21からの出力馬力を分配することができ、その結果、キャパシタ64に所定の電力を確保することができる。
【0145】
マッチング線Lmaは、エンジントルク線Letの全負荷領域Lbにおいて定格点Prよりも最大トルク点Pmに近い位置を通るように設定されている。このため、マッチング線Lmaが、エンジントルク線Letの全負荷領域Lbにおいて最大トルク点Pmよりも定格点Prに近い位置を通るように設定されている場合と比べて、マッチング点Pma1のエンジン回転速度Neが小さくなる。このため、燃費を向上させることができる。
【0146】
エンジン要求決定部87は、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとに基づいてエンジン要求馬力Hdmを決定する。このため、オペレータの操作に応じた作業機3の駆動及び走行装置25の駆動と、キャパシタ64への充電に適したエンジン要求馬力Hdmを決定することができる。
【0147】
上述した動力伝達装置24は、第1遊星歯車機構68と第2遊星歯車機構69とを有している。しかし、動力伝達装置が備える遊星歯車機構の数は、2つに限らない。動力伝達装置は1つの遊星歯車機構のみを有してもよい。あるいは、動力伝達装置は、3つ以上の遊星歯車機構を有してもよい。
図17は、第2の実施形態にかかる作業車両が備える動力伝達装置124の構成を示す模式図である。第2の実施形態にかかる作業車両の他の構成は、上述した実施形態に係る作業車両1と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、
図17において、上述した実施形態にかかる動力伝達装置24と同じ構成には同じ符号を付している。
【0148】
図17に示すように、動力伝達装置124は、変速機構166を有する。変速機構166は、遊星歯車機構168と、第1伝達軸167と、第2伝達軸191と、第2伝達軸ギア192とを有している。第1伝達軸167は、FR切替機構65に連結されている。遊星歯車機構168と第2伝達軸ギア192とは、第1伝達軸167及び第2伝達軸191と同軸上に配置されている。
【0149】
遊星歯車機構168は、サンギアS1と、複数の遊星ギアP1と、複数の遊星ギアP1を支持するキャリアC1と、リングギアR1とを有している。サンギアS1は、第1伝達軸167に連結されている。複数の遊星ギアP1は、サンギアS1と噛み合い、キャリアC1に回転可能に支持されている。キャリアC1は、第2伝達軸191に固定されている。リングギアR1は、複数の遊星ギアP1に噛み合うとともに回転可能である。また、リングギアR1の外周には、リング外周ギアGr1が設けられている。第2モータMG2の出力軸194には第2モータギアGm2が固定されており、第2モータギアGm2はリング外周ギアGr1に噛み合っている。
【0150】
第2伝達軸ギア192は、第2伝達軸191に連結されている。第2伝達軸ギア192は出力ギア71に噛み合っており、第2伝達軸ギア192の回転は出力ギア71を介して出力軸63に出力される。
【0151】
変速機構166は、第1高速用ギア(以下、「第1HギアGH1」と呼ぶ)と、第2高速用ギア(以下、「第2HギアGH2」と呼ぶ)と、第1低速用ギア(以下、「第1LギアGL1」と呼ぶ)と、第2低速用ギア(以下、「第2LギアGL2」と呼ぶ)と、第3伝達軸193と、Hi/Lo切替機構170とを有する。
【0152】
第1HギアGH1と第1LギアGL1とは、第1伝達軸167及び第2伝達軸191と同軸上に配置されている。第1HギアGH1は、第1伝達軸167に連結されている。第1LギアGL1は、第2伝達軸191に連結されている。第2HギアGH2は、第1HギアGH1と噛み合っている。第2LギアGL2は、第1 LギアGL1と噛み合っている。第2HギアGH2と第2LギアGL2とは、第3伝達軸193と同軸上に配置されており、第3伝達軸193に対して回転可能に配置されている。第3伝達軸193は、第1モータMG1の出力軸に連結されている。
【0153】
Hi/Lo切替機構170は、動力伝達装置24における駆動力伝達経路を、車速が高い高速モード(Hiモード)と車速が低い低速モード(Loモード)で切り替えるための機構である。このHi/Lo切替機構170は、Hiモード時にオンにされるHクラッチCHと、Loモード時にオンにされるLクラッチCLとを有している。HクラッチCHは、第2HギアGH2と第3伝達軸193とを接続又は切断する。また、LクラッチCLは、第2LギアGL2と第3伝達軸193とを接続又は切断する。
【0154】
次に、この第2の実施形態に係る動力伝達装置124の動作について説明する。
図18は、第2の実施形態にかかる作業車両での車速に対する各モータMG1,MG2の回転速度を示したものである。
図18において、実線が第1モータMG1の回転速度、破線が第2モータMG2の回転速度を示している。車速が0からV1までのA領域(Loモード)では、LクラッチCLがオン(接続)され、HクラッチCHがオフ(切断)される。このA領域では、HクラッチCHがオフされているので、第2HギアGH2と第3伝達軸193とが切断される。また、LクラッチCLがオンされるので、第2LギアGL2と第3伝達軸193とが接続される。
【0155】
このA領域においては、エンジン21からの駆動力は、第1伝達軸167を介してサンギアS1に入力され、この駆動力は、キャリアC1から第2伝達軸191に出力される。一方、サンギアS1に入力された駆動力は、遊星ギアP1からリングギアR1に伝達され、リング外周ギアGr1及び第2モータギアGm2を介して第2モータMG2に出力される。第2モータMG2は、このA領域においては、主としてジェネレータとして機能しており、第2モータMG2によって発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0156】
また、A領域においては、第1モータMG1は、主として電動モータとして機能する。第1モータMG1の駆動力は、第3伝達軸→第2LギアGL2→第1LギアGL1の経路で第2伝達軸191に出力される。このようにして第2伝達軸191で合わさった駆動力が、第2伝達軸ギア192及び出力ギア71を介して出力軸63に伝達される。
【0157】
車速がV1を超えるB領域(Hiモード)では、HクラッチCHがオン(接続)され、LクラッチCLがオフ(切断)される。このB領域では、HクラッチCHがオンされているので、第2HギアGH2と第3伝達軸193とが接続される。また、LクラッチCLがオフされるので、第2LギアGL2と第3伝達軸193と切断される。
【0158】
このB領域では、エンジン21からの駆動力はサンギアS1に入力され、この駆動力はキャリアC1から第2伝達軸191に出力される。また、エンジン21からの駆動力は、第1HギアGH1から、第2HギアGH2及び第3伝達軸193を介して第1モータMG1に出力される。このB領域では、第1モータMG1は主としてジェネレータとして機能するので、この第1モータMG1で発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0159】
また、第2モータMG2の駆動力は、第2モータギアGm2→リング外周ギアGr1→リングギアR1→キャリアC1の経路で第2伝達軸191に出力される。このようにして第2伝達軸191で合わさった駆動力が、第2伝達軸ギア192及び出力ギア71を介して出力軸63に伝達される。
【0160】
第2の実施形態にかかる作業車両での動力伝達装置124の制御は、上述した実施形態の動力伝達装置24の制御と同様である。ただし、動力伝達装置124の構造が動力伝達装置24と異なるため、トルクバランス情報は、上述したものと異なる。詳細には、第2の実施形態における第1のトルクバランス情報は、以下の数6式で表される。
(数6)
Ts1_Low = Te_ref * r_fr
Tc1_Low = Ts1_Low * (-1) * ( (Zr1/Zs1) + 1 )
Tr1_Low = Ts1_Low * (Zr1/Zs1)
Tcm1_Low = To_ref * (-1) * (Zod/Zo) + Tc1_Low
Tm1_Low = Tcm1_Low * (-1) * (Zm1_Low/Zm1d_Low)
Tm2_Low = Tr1_Low * (-1) * (Zm2/Zm2d)
【0161】
また、第2の実施形態における第2のトルクバランス情報は、以下の数7式で表される。
【0162】
(数7)
Tc1_Hi = To_ref * (-1) * (Zod/Zo)
Tr1_Hi = Tc1_Hi * (-1) * (1 / (Zs/Zr+1))
Ts1_Hi = Tr1_Hi * (Zs/Zr)
Tsm1_Hi =Ts1 + Te_ref * r_fr
Tm1_Hi = Tsm1_Hi * (-1) * (Zm1_Hi/Zm1d_Hi)
Tm2_Hi = Tr1_Hi * (-1) * (Zm2/Zm2d)
ここで、各トルクバランス情報のパラメータの内容は以下の表2の通りである。
【0163】
【表2】
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0164】
本発明は、上述したホイールローダに限らず、ブルドーザ、トラクタ、フォークリフト、或いはモータグレーダ等の他の種類の作業車両に適用されてもよい。
【0165】
本発明は、EMTに限らずHMTなどの他の種類の変速装置に適用されてもよい。この場合、第1モータMG1は、油圧モータ及び油圧ポンプとして機能する。また、第2モータMG2は、油圧モータ及び油圧ポンプとして機能する。第1モータMG1と第2モータMG2とは、可変容量型のポンプ/モータであり、斜板或いは斜軸の傾転角が制御部27によって制御されることにより、容量が制御される。そして、上記の実施形態と同様にして算出された指令トルクTm1_ref, Tm2_refが出力されるように、第1モータMG1と第2モータMG2との容量が制御される。
【0166】
動力伝達装置24の構成は上記の実施形態の構成に限られない。例えば、2つの遊星歯車機構68,69の各要素の連結、配置は、上記の実施形態の連結、配置に限定されるものではない。動力伝達装置124の構成は上記の実施形態の構成に限られない。例えば、遊星歯車機構168の各要素の連結、配置は、上記の実施形態の連結、配置に限定されるものではない。
【0167】
トルクバランス情報は、上記の実施形態のようなトルクの釣り合いの式に限られない。例えば、トルクバランス情報は、テーブル或いはマップなどの形式であってもよい。トルクバランス情報は、上述した第1のトルクバランス情報と第2のトルクバランス情報との2つのトルクバランス情報に限られない。動力伝達装置24において選択可能なモード数に合わせて3つ以上のトルクバランス情報が用いられてもよい。
【0168】
変速操作部材53aは、キックダウンスイッチを有してもよい。キックダウンスイッチは、動力伝達装置24の速度範囲を現在の速度範囲から1段階、あるいは複数段階、下げるための操作部材である。オペレータは、キックダウンスイッチを操作することにより、動力伝達装置24の速度範囲を現在の速度範囲から低速の速度範囲に、下げることができる。
【0169】
上記の実施形態では、作業機要求馬力Hpto及び作業機負荷トルクTptoの決定において、作業機3用の作業機ポンプ23での要求馬力及び負荷トルクが考慮されているが、補機用の油圧ポンプの要求馬力及び負荷トルクがさらに考慮されてもよい。補機用の油圧ポンプは、上述したトランスミッションポンプ29を含んでもよい。すなわち、作業機ポンプ23に加えて上述したトランスミッションポンプ29の要求馬力及び負荷トルクを考慮して作業機要求馬力Hpto及び作業機負荷トルクTptoが決定されてもよい。
【0170】
或いは、補機用の油圧ポンプは、上述したステアリングポンプ30を含んでもよい。すなわち、作業機ポンプ23に加えて上述したステアリングポンプ30の要求馬力及び負荷トルクを考慮して作業機要求馬力Hpto及び作業機負荷トルクTptoが決定されてもよい。
【0171】
或いは、作業車両1が、エンジン21を冷却するための冷却ファンと、冷却ファンを駆動するためのファンモータと、ファンモータを駆動するためのファンポンプを備えている場合には、補機用の油圧ポンプは、ファンポンプであってもよい。すなわち、ファンポンプの要求馬力及び負荷トルクをさらに考慮して、作業機要求馬力Hpto及び作業機負荷トルクTptoが決定されてもよい。
【0172】
或いは、作業機ポンプ23に加えて、上述した油圧ポンプの一部又は全ての要求馬力及び負荷トルクを考慮して作業機要求馬力Hpto及び作業機負荷トルクTptoが決定されてもよい。
【0173】
分配率決定部88によるエンジン21からの出力馬力の分配の優先順位は、上記の実施形態の順位に限られず、変更されてもよい。また、上記の実施形態では、トランスミッション要求馬力Htmの比例分Htm_Bの優先順位は、作業機要求馬力Hptoの比例分Hpto_Bの優先順位よりも低いが、トランスミッション要求馬力Htmの比例分Htm_Bと作業機要求馬力Hptoの比例分Hpto_Bとの優先順位が同じであってもよい。
【0174】
例えば、
図19に示すように、作業機要求馬力Hptoとトランスミッション要求馬力Htmとエネルギーマネジメント要求馬力Hemとの合計が、所定の負荷上限馬力Hmaxより大きいときには、当該合計が負荷上限馬力Hmax以下となるように、トランスミッション要求馬力Htmの比例分Htm_Bと作業機要求馬力Hptoの比例分Hpto_Bとに同じ比率α(<1)を乗じることによって、それぞれHtm_B’とHpto_B’とに修正されてもよい。すなわち、Htm_B’ = Htm_B * αであり、Hpto_B’ = Hpto_B * αである。そして、修正前のトランスミッション要求馬力Htmに対する修正後のトランスミッション要求馬力Htm’の比が、トランスミッション出力率Rtmとして決定される。また、修正前の作業機要求馬力Hptoに対する修正後の作業機要求馬力Hpto’の比が、作業機出力率Rptoして決定される。