特許第6427508号(P6427508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6427508壁紙用物品支持具および物品取付け用のアンカーシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427508
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】壁紙用物品支持具および物品取付け用のアンカーシート
(51)【国際特許分類】
   A47G 29/00 20060101AFI20181112BHJP
   F16B 47/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   A47G29/00 E
   F16B47/00 V
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-2901(P2016-2901)
(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公開番号】特開2017-121437(P2017-121437A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】寺田 愛
(72)【発明者】
【氏名】手塚 洋登
(72)【発明者】
【氏名】服部 和歌子
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5043340(JP,B2)
【文献】 特開2009−001667(JP,A)
【文献】 特開2010−100688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/00
F16B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付けて使用する物品を、当該壁面に貼られた壁紙に対して貼着する際に用い、凹凸面を有する壁紙に剥離可能に取り付けられるアンカーシートを含み、上記アンカーシートを上記壁紙へと固定するようにした壁紙用物品支持具であって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成される粘着剤層とからなり、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、上記アンカーシートを壁紙から取り外す際に上記粘着剤層が凝集破壊を起こすことがない粘着剤からなり、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴とする壁紙用物品支持具。
【請求項2】
壁面に取り付けて使用する物品を、当該壁面に貼られた壁紙に対して貼着する際に用い、凹凸面を有する壁紙に剥離可能に取り付けられるアンカーシートを含み、上記アンカーシートを上記壁紙へと固定するようにした壁紙用物品支持具であって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成される粘着剤層とからなり、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、層厚が10〜50μmとされ、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴とする壁紙用物品支持具。
【請求項3】
上記粘着剤層の層厚が10〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項4】
上記基材が和紙であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項5】
上記粘着剤層の粘着剤がアクリル系粘着剤であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項6】
上記アンカーシートの表面にフック、フィルムミラー、小物入れ、額縁等の物品が取り付けられるベースプレートをさらに含み、上記アンカーシートを介して、上記ベースプレートを上記壁紙へと固定するようにされており、
上記ベースプレートは、その裏面側に上記アンカーシートとの接着手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項7】
上記接着手段は、上記基材に対して3N/20mm以上の接着力を有することを特徴とする請求項6に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項8】
上記接着手段が、両面粘着テープであることを特徴とする請求項6または7に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項9】
上記ベースプレートは、上記物品が取り付けられた際に、撓みなどの変形が生じない材料からなることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項10】
上記ベースプレートは、樹脂シートからなることを特徴とする請求項9に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項11】
上記ベースプレートは木材からなることを特徴とする請求項9に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項12】
上記ベースプレートは金属材料からなることを特徴とする請求項9に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項13】
上記ベースプレートには、図柄や色彩等の印刷が施されていることを特徴とする請求項6ないし12のいずれか1項に記載の壁紙用物品支持具。
【請求項14】
凹凸面を有する壁紙にフック、フィルムミラー、小物入れ、額縁等の物品を取り付けるにあたって、上記壁紙の上記物品の取り付け位置に貼着し、上記物品と上記壁紙との間に介在される物品取付け用のアンカーシートであって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成され、上記壁紙に対して貼着を行うための粘着剤層とを備え、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、上記アンカーシートを壁紙から取り外す際に上記粘着剤層が凝集破壊を起こすことがない粘着剤からなり、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴とする物品取付け用のアンカーシート。
【請求項15】
凹凸面を有する壁紙にフック、フィルムミラー、小物入れ、額縁等の物品を取り付けるにあたって、上記壁紙の上記物品の取り付け位置に貼着し、上記物品と上記壁紙との間に介在される物品取付け用のアンカーシートであって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成され、上記壁紙に対して貼着を行うための粘着剤層とを備え、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、層厚が10〜50μmとされ、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴とする物品取付け用のアンカーシート。
【請求項16】
上記基材が和紙であることを特徴とする請求項14または15に記載のアンカーシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸面のある壁紙に貼着可能な壁紙用物品支持具および物品取付け用のアンカーシートに関し、さらに詳しくいえば、金属製フック等のある程度重量のある物品を支持することができるとともに、壁紙を傷つけることなく剥離することができる壁紙用物品支持具および物品取付け用のアンカーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
フック等の物品を壁面に取り付けるには、両面粘着テープ等を介して壁面に貼り付けたり、くぎやねじ等の締結部品を介して壁面に取り付けるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、現在の家屋の壁面には下地の保護や装飾的な観点から壁紙が貼られていることが多い。そのため、粘着テープを介してフック等を取り付けた場合には、それを取り外す際に粘着テープの粘着面とともに壁紙が剥がれ、場合によっては、壁紙のみならず壁面も傷つけてしまうという問題があった。
【0004】
また、現在、一般的に普及している壁紙の多くがその表面に凹凸を有する塩化ビニル製である。そのため、両面粘着テープを介してフック等の係止具を固定しようとしても、両面粘着テープの粘着面は壁紙の凸部と単に接触しているにすぎず、安定的な固定状態を保つことができない。
【0005】
特に、例えば、金属製などの、ある程度重量のあるフック等では、すぐに脱落してしまい、取付けは殆ど不可能であった。
【0006】
一方、フック等の係止具をくぎやねじ等を介して壁面に取り付ける方法では、壁紙が平坦であるか凹凸面であるかにかかわらず、確実に取り付けることはできるとはいうものの、壁紙のみならず壁面にもくぎやねじ等の穴が残り、両面粘着テープの場合と同様に壁面を傷つけてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、最近では、凹凸面のある壁面に対して物品を固定するとともに、壁面を傷つけることなく再剥離できる粘着テープとして、水膨潤性の粘着剤を用いた粘着テープが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0008】
この粘着テープは、基材に透水性のある素材を使用するとともに、基材の層間破壊強度を粘着剤の粘着強度より弱めることにより、粘着テープを壁面から剥がす際に、破壊された基材の上から水をかけることによって水膨潤性を含む粘着剤に水を浸透させ膨潤させて粘着力を落とし、壁面に傷をつけずに物品を取り外すことができる。
【0009】
しかしながら、この水膨潤性の粘着剤を用いた粘着テープは、高湿度下で保管した場合に粘着力が低下するといった問題があるほか、粘着力が弱いため、ポスターなどの軽量物しか保持することができない。
【0010】
また、下記特許文献2にあるように、アクリルやウレタンなどの復元性を有する発泡樹脂を利用した粘着テープもあるが、粘着剤に水溶性のアクリル樹脂を塗布していることから、下記特許文献1と同様に、高湿度下においては粘着力の低下が懸念されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−100688号公報
【特許文献2】特開2009−120742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、凹凸面のある壁紙に貼着可能で、かつ、取り外す際にも壁面を傷つけることなく容易に剥離させることができ、ある程度重量があるフック等の物品を確実に支持することができる壁紙用物品支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を達成するため、本発明は、壁面に取り付けて使用する物品を、当該壁面に貼られた壁紙に対して貼着する際に用い、凹凸面を有する壁紙に剥離可能に取り付けられるアンカーシートを含み、上記アンカーシートを上記壁紙へと固定するようにした壁紙用物品支持具であって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成される粘着剤層とからなり、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、上記アンカーシートを壁紙から取り外す際に上記粘着剤層が凝集破壊を起こすことがない粘着剤からなり、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴と
している。
また、本発明は、壁面に取り付けて使用する物品を、当該壁面に貼られた壁紙に対して貼着する際に用い、凹凸面を有する壁紙に剥離可能に取り付けられるアンカーシートを含み、上記アンカーシートを上記壁紙へと固定するようにした壁紙用物品支持具であって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成される粘着剤層とからなり、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、層厚が10〜50μmとされ、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴としている。
【0014】
上記発明の好ましい態様として、上記基材を植物繊維を原料とする和紙とするとよい。また、上記粘着剤層の粘着剤をアクリル系粘着剤とし、上記粘着剤層の層厚を10〜50μmとすることが好ましい。
【0015】
また、上記アンカーシートの表面にフック等の物品が取り付けられるベースプレートをさらに含み、
上記アンカーシートを介して、上記ベースプレートを上記壁紙へと固定するようにされており、上記ベースプレートは、その裏面側に上記アンカーシートとの接着手段を備えることもできる。
【0016】
上記発明において、上記接着手段は、上記基材に対して3N/20mm以上の接着力を有することが好ましく、上記接着手段を両面粘着テープとしてもよい。
【0017】
また、上記発明において、上記ベースプレートは、上記物品が取り付けられた際に、撓みなどの変形が生じない材料とすることが好ましく、例えば、樹脂シート、あるいは木材や金属材料などで構成するとよく、図柄や色彩等の印刷が施されていてもよい。
【0018】
また、本発明は、凹凸面を有する壁紙にフック、フィルムミラー、小物入れ、額縁等の物品を取り付けるにあたって、上記壁紙の上記物品の取り付け位置に貼着し、上記物品と上記壁紙との間に介在される物品取付け用のアンカーシートであって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成され、上記壁紙に対して貼着を行うための粘着剤層とを備え、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、上記アンカーシートを壁紙から取り外す際に上記粘着剤層が凝集破壊を起こすことがない粘着剤からなり、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴としている。
また、本発明は、凹凸面を有する壁紙にフック、フィルムミラー、小物入れ、額縁等の物品を取り付けるにあたって、上記壁紙の上記物品の取り付け位置に貼着し、上記物品と上記壁紙との間に介在される物品取付け用のアンカーシートであって、
上記アンカーシートは、基材と、上記基材の一方の面に形成され、上記壁紙に対して貼着を行うための粘着剤層とを備え、
上記粘着剤層は、再剥離性を有し、層厚が10〜50μmとされ、
上記基材は、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材からなることを特徴としている。
【0019】
上記発明の好ましい態様として、上記基材を植物繊維を原料とする和紙とするとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、壁紙に貼着されるアンカーシートの基材を、例えば、和紙のように、その原料繊維が長く、表面に細かな凹凸を有する柔軟性のある紙材とすることにより、基材を壁紙の凹凸面に追従するように接触させることができるため、壁紙に対する十分な接着面積を確保することができる。そのため、従来では難しかった凹凸面のある壁紙にフック等の物品を確実に保持することができる。
【0021】
また、アンカーシートの粘着剤層は、例えば、再剥離性を有し、変形が自由で被着体の選択性のあるアクリル系粘着剤とすることにより、アンカーシートを剥がす際に、壁面に対して糊残りさせることなく容易に取り外すことができる。
【0022】
さらに、ベースプレートとアンカーシートの間に貼着される、例えば、両面粘着テープなどの接着手段の粘着力を、基材に対して3N/20mm以上の粘着力とすることにより、ベースプレートに比較的荷重のある物品を取り付けた場合であっても、ベースプレートがアンカーシートから剥がれることなく、物品を安定的に固定することができる。
【0023】
さらにまた、ベースプレートを、ある程度荷重のある物品をベースプレートに取り付けても撓みなどの変形が生じない材料とすることにより、ベースプレートとアンカーシートとを確実に接着できるため、物品を安定的に支持することができる。
【0024】
この場合、ベースプレートに図柄や色彩等の印刷を施せば、インテリア雑貨としての装飾性を持たせることもできる。
【0025】
また、本発明によれば、凹凸面を有する壁紙に、例えば、両面粘着テープなどの接着手段を介してフック等の物品を取り付けるにあたって、例えば、和紙のように、その原料繊維が長く、表面に細かな凹凸を有する柔軟性のある紙材からなるアンカーシートを壁紙と両面粘着テープとの間に介在させることにより、従来では難しかった凹凸面のある壁紙にフック等の物品を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る壁紙用物品支持具を分解して模式的に示す斜視図。
図2】本実施形態に係る壁紙用物品支持具を分解して模式的に示す断面図。
図3】本実施形態に係る壁紙用物品支持具を壁面に取り付けた状態を拡大して示す断面図。
図4】本実施形態に係る粘着テープ保持力(凝集力)試験に用いた実験サンプルを模式的に示す説明図。
図5】実施例1で使用した基材の表面形状を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図1図3を参照して本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
図1および図2に示すように、本発明の壁紙用物品支持具は、フック等の係止具Hが取り付けられるベースプレート1と、壁紙Wに再剥離可能に貼着さるアンカーシート2とから構成されている。
【0029】
なお、本発明の壁紙用物品支持具は、従来では取付けが困難であった、例えば、塩化ビニル製などの凹凸面を有する壁紙に貼着可能であるため、以下の説明において、壁紙は、図2および図3に示すように、凹凸面を有する壁紙Wを例として説明する。
【0030】
ベースプレート1は、その表面1aにフック等の係止具Hが取り付けられるようになっているが、その裏面1b側には、アンカーシート2への貼着可能な接着手段3が備えられる。
【0031】
ベースプレート1は、フック等の係止具Hが取り付けられた際に撓みなどの変形が生じない材料からなり、本実施形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)からなる透明な樹脂シートとしている。
【0032】
なお、この例では、ベースプレート1に750gと比較的加重のある係止具Hを取り付ける例で説明しているため、撓みなどの変形がなく、面として作用するように、その厚みが0.5mmとされているが、ベースプレートの厚みは取り付けられる物品の重さに応じて適宜設計すればよい。
【0033】
また、ベースプレート1には、図示はされていないが、その裏面1b側に図柄や色彩等の印刷を施しても良く、これにより、壁面を装飾するインテリア雑貨として装飾性を持たせることができる。
【0034】
本実施形態において、接着手段3は、アンカーシート2へと貼り付けられた際に、高荷重性能を発揮することができるよう、例えば、後述するアンカーシート2の基材21に対して3N/20mm以上の接着力とされている。
【0035】
なお、接着手段3は、ベースプレート1の裏面1b側に上記接着力を有する粘着剤により粘着剤層を形成してもよいが、この例では、例えば、発泡オレフィン系基材の両面にゴム系もしくはアクリル系の粘着剤を塗工した両面粘着テープが用いられている。
【0036】
アンカーシート2は、基材21と、基材21の一方の面に形成される粘着剤層22とからなり、この例で基材21は厚みが0.07mmの和紙から構成されている。
【0037】
本発明において、粘着剤層22は、再剥離性を有する粘着剤から形成されており、その粘着力は、アンカーシート2を壁紙Wから取り外す際に、粘着剤層22が凝集破壊を起こすことなく、壁紙Wからスムーズに剥離させることができる程度の粘着力とされている。
【0038】
粘着剤層22を構成する粘着剤は、上記のような再剥離性を有する粘着力を備えるものであれば良いが、価格や被着体の選択性、耐熱、耐候性の観点から、好ましくはアクリル系粘着剤とするとよく、この例では、乳化重合によるアクリル系共重合体をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が用いられている。
【0039】
なお、粘着剤層22は、エマルジョン系、ホットメルト系等の塗工方法は問わないが、塗工時の作業性、剥離時の剥がしやすさ、また、壁紙Wへの保持能力を考慮して10〜50μmが好ましいが、この例では、厚みが15μmとされている。
【0040】
ここで、粘着剤22の厚みを10μm以下とすると、粘着力が低くなりすぎ、保持性能を発揮できないため好ましくなく、また、糊厚50μm以上では、粘着力が強くなりすぎ、剥離時に壁紙破壊を起こす可能性があるため、好ましくない。
【0041】
また、本実施形態において、ベースプレート1とアンカーシート2とは、ともに同一径を有する円形状とされており、この例では、例えば、直径125mmの円形状とされている。
【0042】
ここで、本実施形態の壁紙用物品支持具を壁紙Wに取り付ける方法を説明すると、まず、アンカーシート2の粘着剤層22の表面に取り付けられた剥離紙(図示せず)を取り外し、アンカーシート2を壁紙Wへとを取り付ける。
【0043】
次に、アンカーシート2の基材21と壁紙Wの凹凸面とが馴染む時間を確保するため、少なくとも6時間以上放置する(以下、基材が壁紙Wの凹凸面に馴染んでいくことを、基材の壁紙Wへの「追従性」という。)ことが好ましい。
【0044】
そして、両面粘着テープ3を介して、ベースプレート1をアンカーシート2の基材21へと重ね併せて貼り付ける。この場合、フックHをベースプレートに予め取り付けておいてもよいし、ベースプレート1をアンカーシート2に貼り付けた後に取り付けてもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、基材21を植物繊維を原料とする和紙として説明しているが、基材21は和紙に限らず、壁紙Wの凹凸面へと追従できれば良く、例えば、表面に平滑性を持たせた一般的なコート紙(印刷紙)は不向きであるが、クレープ紙など、表面に原料繊維に起因する微細な凹凸面がある紙材であれば本発明の基材に適用可能である。
【0046】
また、基材21は植物繊維を原料とする紙材に限らず、壁紙壁紙Wの凹凸面へと追従できる繊維材料であればよく、例えば、ナイロンやアクリルなどの柔軟性に富む合成繊維であってもよい。
【0047】
本実施形態では、ベースプレート1とアンカーシート2の形状を直径125mmの円形状としているが、この大きさおよび形状に限られることはなく、例えば、三角形状、四角形状、星形状などの適宜の大きさおよび形状が選択可能である。
【0048】
また、本実施形態においては、ベースプレート1をPET樹脂としているが、これに限られることはなく、物品を取り付けた際に変形が生じないものであれば、ABS樹脂やPP樹脂などの他の樹脂シートであってよい。また、ベースプレート1として、撓みなどの変形が生じない木材や金属製としてもよい。
【0049】
本実施形態では、フックHは両面粘着テープ3を介してベースプレート1のほぼ中央に取り付けられている。これは、フックHにかかる荷重を考慮してのことであり、フックHにかかる荷重が軽量であれば、フックHを装飾板のどの位置に取り付けても差し支えはない。
【0050】
なお、上記実施形態では、ベースプレート1に取り付けられる物品をフックH等の係止具で説明しているが、本発明のベースプレート1に取り付けられる物品はそれに限られることはなく、例えば、薄型のフィルムミラーや小物入れ、あるいは額縁などであってよい。
【0051】
また、フック等の物品を凹凸ある壁紙Wに取り付けるにあたって、ベースプレート1を介在させず、直接、両面粘着テープなどの接着手段を介して、物品をアンカーシート2に貼着して壁紙Wに固定してもよく、このような態様も本発明に含まれる。
【0052】
本実施形態において、両面粘着テープ12を、例えば、発泡オレフィン系基材の両面にゴム系もしくはアクリル系の粘着剤を塗工したものとしているが、これに限られることはなく、アンカーシート2の基材21に対して3N/20mm以上の粘着力を備えていればよく、アクリルフォームタイプの両面粘着テープや基材(気泡含有層)自体が粘着性をもった粘着剤であってよい。
【0053】
以下、本発明について、実施例等を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定されるものではない。
【0054】
上記従来技術でも問題としたように、一般的な再剥離性を有する粘着剤を塗工した粘着テープでは、凹凸面を有する壁紙への保持力が弱く、比較的軽量なフック等であっても、長時間壁紙に固定することは難しい。
【0055】
また、現在、基材の片面に再剥離性粘着剤を塗工した基材としては、和紙、塩化ビニルシート(PVC)、二軸延伸ポリプレンフィルム(OPP)、ポリエチレンテレクタレート(PET)などが使用されているが、粘着剤はゴム系、アクリル系を問わず使用されている。
【0056】
そこで、本発明者らは、凹凸面を有する壁紙に対して保持力を発揮するのは、接着剤というよりは、基材が大きく起因しているのではないかと考え、基材による凹凸面のある壁紙に対する保持力の違いを試験した(実施例1;基材別保持力測定実験)
【0057】
〔実施例1;基材別保持力測定実験〕
再剥離性粘着シートの基材として、和紙(厚み;0.07mm)、PVC(厚み;0.07mm)、OPP(厚み;0.04mm)、PET(厚み;0.025mm)を用い、基材に再剥離性の溶剤型アクリル系粘着剤(トーヨーケム社製;BPS−6066)を、糊厚が15μmとなるように塗工した試験片Aを作成した。
作成した試験片Aを、図4に示すように、10mm×20mmの面積になるように被着体(壁紙(アサヒペン製;SD−06))Bに貼付し、そこに2kgのローラで1往復させて荷重G(50g)をかけ、40℃下に30分放置し、試験片ごとの壁紙から剥がれ落ちた際の時間を測定した。
この実験を3回(試験時間;1日(1440分))行い、その平均値を以下に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
この結果から、同じ粘着剤、同じ糊厚を塗工した粘着シートであっても、基材の違いによって保持時間に違いがあることが検証された。また、糊厚15μmの接着剤を塗工した粘着シートでは、和紙の保持性能が優れていることが検証された。
なお、今回の実験では、一般的な基材ごとの保持性能を単に検証することを目的としたため、和紙は、市場でマスキングテープの基材として流通している標準的なもの選んでいる。同様に、PVC,OPP,PETも多く市場に流通しているものを選択した。
【0060】
本発明者らは、凹凸面のある壁紙に対する和紙の保持性能の高さは、和紙が、壁紙と粘着剤との接着面積を向上させているからではないかと考え、被着体として使用した壁紙の表面図と断面図を観察し、以下の見解を得た。
【0061】
[壁紙の基材評価]
今回使用した壁紙(アサヒペン製;SD−06)では、凹凸が格子状に並んでおり、凸部と凸部との間隔が約2mm、深さが約0.5mm程度であった(図5参照)。このことから、実施例1での試験片は、その粘着剤が壁紙の凸部に貼り付くことにより保持性能を発揮しているものと考えられたため、実施例1の試験片で用いた基材ごとに以下の特性を検証した。
【0062】
[壁紙および基材の表面粗さ]
凹凸を持つ壁紙のような被着体に対し、特に和紙の保持性能が高かった理由として、壁紙に付着した粘着剤を覆うように、和紙が壁紙の凹凸面に馴染んでいくのではないかと考えられた(以下、和紙が壁紙の凹凸面に馴染んでいくことを、和紙の壁紙への「追従性」という。)。
そこで、実施例1にて被着体として使用した壁紙(アサヒペン製;SD−06)の凸部と、試験片に使用した基材ごとの表面荒さを表面荒さ測定機(小坂研究所製;SE3500) 機器条件;波長 0.8mm,先端半径 2μm,トレース長さ 4.8mm)にて測定した。
【0063】
その結果を以下に示す。なお、算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定基準までの偏差の絶対値を合計し平均したものであり、その区間の凹凸状態を平均値で表したものである。
また、最大高さ(Ry)は、凹凸部の長さを示したものである。
【0064】
【表2】

これにより、壁紙の凸部に細かな凹凸があることや、和紙の表面が他の基材の表面に比べてかなり粗いことがわかった。
【0065】
[壁紙および基材の表面形状]
次に、表面荒さ測定機(小坂研究所製;SE3500) 機器条件;波長 0.8mm,先端半径 2μm,トレース長さ 4.8mm)によるデータをもとに、壁紙および基材の表面形状を図に示す。
これによると、壁紙(アサヒペン製;SD−06)と同様に、和紙にも凹凸があることがわかる。これに対して、PVC,OPP,PETのような基材には凹凸がない。
このことから、和紙の凹凸は壁紙に比して細かいものであるが、和紙が壁紙に対する保持力が高かった理由として、壁紙の凹凸面への食い込みが考えられる。
また、和紙の表面の凹凸は原料繊維である植物(コウゾ、ミツマタ)などを混抄して製作されるため、原料繊維が長くなることに起因するとも考えられる。これに対して、PVC,OPP,PETのような基材は、延伸されて製造されるため、それらの表面が滑らかな平滑面となっていると考えられる。
【0066】
[基材の剛性と弾性]
次に、発明者らは、和紙が壁紙に対して保持機能を発揮した要因として、和紙の壁紙の凹凸面に対する追従性であると考えたが、その起因を検証するため、基材の剛性と弾力を調べることとした(カトーテック社製;純曲げ試験機KES FB2 機器条件;曲げ曲率 2.5cm−1(0.4〜2.5),感度 4(max),繰り返し 1回,方向 WARP,特性計算データ(B1=0.5;B2=1.5;2HB=1.0)。
【0067】
その結果を表3に示す
【表3】

今回の測定のうち、曲げ剛性は、人間が物体を曲げたときに感じる柔らかさと相関が取れ、この値が大きくなるほど硬く、小さくなるほど柔らかい。また、弾力は、人間が物体を曲げて戻した時に感じる弾力性と相関が取れ、この値が大きくなるほど弾力性が悪く、小さくなるほど弾力性が良い。
この結果によると、和紙を除いたPVC,OPP,PETは、厚みが増すほど曲げ性が硬くなっている。これに対して、和紙は、PETより厚みがあるにもかかわらず、PETに近い柔らかさを備えていることが判る。
なお、弾力性に関しては、PVCの弾力性が非常に悪いことはわかったが、和紙が特に弾力性に優位性を持っているとは考えられず、基材の弾力性は、和紙の壁紙への保持性能とは関係ないことが判った。
【0068】
[糊厚の検討]
上記実施例1では、糊厚が15μmでは、基材が和紙である場合に壁紙への保持性能が一番高いことが判った。そこで、糊厚の変化により、和紙以外の基材でも壁紙への同様の保持性能があるのではないかと考えられるため、糊厚を変化させることにより、実施例1と同様の試験を行った。
【0069】
その試験結果を表4に示す。
【表4】

これによると、糊厚が15μmでは保持性能が悪かったOPPとPETでは、糊厚を高くすることによって保持性能が向上することが判る。これは、糊厚が高くなることにより、壁紙の凹凸面に糊が入り込んで粘着力が高くなったためと考えられる。
なお、PVCは、糊厚を高くしても保持性能は上がらず、この理由として先の弾性試験において、PVCの弾力性が他の基材に比べて低いことが要因ではないかと考えられる。弾力性がないと言うことは、基材に力を加えても変形しないため、壁紙への追従性が図れないからと思われる。
【0070】
[基材の凹凸面ある壁紙への保持性能の検討結果]
以上の実験および検証から、再剥離性粘着シートのうち、基材を和紙とした凹凸面のある壁紙への保持性能の優位性を知ることができた。そして、糊厚が薄い場合では、和紙の保持性能は他の基材より格段優れていることも検証できた。
そして、この保持能力の優位性は、和紙の表面に原料繊維である植物繊維による凹凸があることに加えて、和紙が他の基材に比べて非常に柔らかいことから、被着体(壁紙)に対する追従性がよく、接着面積が確保できるためと考えられる。
なお、糊厚を厚くすれば、和紙以外のOPPやPETでも保持性能が上がることは確認できたが、コスト面、環境面などを考慮すれば、和紙の優位性は変わらないものと考えられる。
【0071】
以上により、アンカーシートの基材は、糊厚が薄い場合は基材を和紙とすることが好ましいが、糊厚を厚くすれば他の基材(OPPやPET)でも代用可能であることがわかった。
【0072】
ただし、本発明においては、フック等の係止具Hが取り付けられたベースプレート1をアンカーシート2の基材21に重ね貼りして用いることから、ベースプレート1がアンカーシート2から脱落しないことが重要である。したがって、基材21の表面21aには、背面処理(剥離処理)がなされていないことが望ましい。
【0073】
しかしながら、本発明のアンカーシート2として適用される再剥離性を有する粘着剤層を有する、いわゆる粘着シートは、通常、製品として巻物にされるため、粘着剤層と重ね合わされる基材21の表面21aには背面処理がなされているか剥離紙が貼付されている。
【0074】
そこで、背面処理がなされている場合には、背面処理がなされていない場合と同様の接着力を得ることができないことから、ベースプレート1がアンカーシート2から剥がれない粘着力を知るため、以下の実験を行った(実施例2;ベースプレート1とアンカーシート2との接着力)
【0075】
[実施例2;ベースプレート1とアンカーシート2との接着力]
剥離処理の異なる和紙を基材とする市販のマスキングシートを用い、ベースプレート1の両面粘着テープ12と同じ組成からなる両面粘着テープ(日東電工株式会社製;両面粘着テープNo.575)のマスキングテープに対する接着力(背面接着力)を比較した。
剥離処理の異なる4種のマスキングテープA,B,C,Dの基材表面を被着体とし、両面粘着テープ(日東電工株式会社製;両面粘着テープNo.575)を、10mm×20mmの面積になるように被着体に貼付し、そこに23℃の条件下で2kgのローラで1往復させ、20分経過後に引張試験機(ORIENTEC社製;RTC−1210A)で180度方向に引張速度300mm/minで剥離したときの接着力を測定した。
その結果を表5に示す。
【表5】
【0076】
[実施例3;壁紙用物品支持具と壁紙との接着力]
また、表6に示す構成とした壁紙用物品支持具SにフックHを取り付けたサンプルを作製し、これを実施例2で接着力を測定したマスキングテープを用いて、壁紙に取付け、それぞれの保持能力を検証した。
【表6】
【0077】
本実施例では、アサヒペン製SD−06を被着体とし、実施例2と同じマスキングテープを被着体Cに貼付し、23℃の条件下で2kgのローラで1往復させ、40℃の室温で30分放置した後、750gのフックを取付け1ヶ月保持させた。これの試験を5回繰り返したが、表7に示すように、両面粘着テープの接着力が3N/20mm以下のものは、マスキングテープから脱落することがわかった。
【表7】
【0078】
[ベースプレートとアンカーシートとの保持性能の検討結果]
実施例2及び実施例3から、アンカーシート2のベースプレート1への保持性能は、両面粘着テープ12の基材表面21に対する接着力が3N/20mm以上のものが好ましいことがわかった。
【0079】
[実施例4;アンカーシートの壁紙への追従確保時間]
上記マスキングテープDを用い、壁紙(アサヒペン製SD−06)の凹凸に馴染む
(追従性確保)時間を検証するため、以下のような試験を行った。
壁紙(アサヒペン製SD−06)を被着体とし、上記マスキングテープDを15mm×15mmの面積になるように被着体に貼付し、そこに23℃の条件下で2kgのローラで1往復させ、所定時間経過後に引張試験機(SHIMADZU社製;AGS−X)で180度方向に引張速度50mm/minで剥離したときの接着力を測定した。
【0080】
その結果を表8に示す。
【表8】
【0081】
以上の実施例などにより、凹凸面のある壁紙への保持性能を高める第1の要因は、基材であることがわかった。また、基材は、その表面に凹凸面が備えられることにより壁紙の凹凸面に追従することがかわった。
【0082】
また、紙材は繊維材料からなり、その表面に凹凸面を有することは知られているが、特に原料繊維が長い和紙が、基材として優位性が高いと思われる。
【符号の説明】
【0083】
1 ベースプレート
2 アンカーシート
21 基材
22 粘着剤層
3 接着手段
W 壁紙
H フック
図1
図2
図3
図4
図5