【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
− 対象物に導入される導入素子と、
− 対象物内で導入素子を移動させる移動ユニットと、
− 放射線ビームを用いて、対象物内の導入素子の追跡画像を生成する追跡画像生成ユニット(ここでは、“イメージャ”としても参照する)と、
− 追跡画像生成ユニットを制御するコントローラと
を有し、移動ユニットは、移動パラメータを追跡画像生成ユニットに提供するよう適応され、移動パラメータは、移動ユニットによって引き起こされる対象物内の導入素子の移動についての情報を保持し、コントローラは、提供された移動パラメータが移動条件を満足することに応じて、追跡画像生成ユニットの動作を制御するよう構成されている、介入システムが提供される。
【0007】
一実施形態において、制御動作は放射線ビームに関係する。より具体的には、制御動作は、イメージャの放射線ビームの生成又は変更に関係する。よりいっそう具体的には、一実施形態によれば、コントローラによる制御することは、i)対象物の横断後に追跡画像生成ユニットの検出器によって検出可能な放射線ビームを生成することが可能な、追跡画像生成ユニットの放射線源を、オン若しくはオフに切り換えること、又はii)追跡画像生成ユニットのフレームレートを上昇若しくは低下させること、又はiii)ビームの強度を上昇若しくは低下させること、又はiv)追跡画像生成ユニットのコリメータの開口を拡大若しくは縮小すること、のうちの何れか1つ又は組み合わせを含む。
【0008】
要するに、コントローラは、(自動的に)i)x線ビームをそれが必要なときに生成することを可能にするとともに、必要な場合に、使用されることができるようにビームを変更することを可能にする。移動ユニットによって生成される移動パラメータが制御動作に利用され、移動パラメータが(ユーザ定義可能な)移動条件を満足すると制御動作が発効される。制御動作は、一部の実施形態において、ユーザ−イメージャ間のインタラクションが必要とされないという意味で自動的であるが、一部の実施形態において、ユーザがなおもイメージャを制御することができるよう、“無効(オーバーライド)”機能が想定される。
【0009】
より具体的には、そして、一実施形態によれば、コントローラは、提供された移動パラメータが、i)導入素子が少なくとも所定の距離だけ移動したこと、及び/又はii)導入素子の速さが所定の速さ閾値を超えていることを指し示す場合に、放射線源をスイッチオンするよう動作する。この実施形態において、移動条件は、所定の距離及び/又は所定の速さ閾値に関して表現される。一部の実施形態において、移動パラメータは、移動の向き(左、右、前方、後方)を記録する。換言すれば、移動パラメータは、導入素子が対象物内で移動するときに導入素子が経験する“運動学的イベント”を記録する。一実施形態において、導入素子はカテーテルであり、対象物は人間又は動物の患者である。提案するシステムが使用され得る介入は、PCI又は同様の介入である。つまり、このシステムは、例えば、詳細な画像が必要とされる状況においてのみビームが使用されるので、非常に低い線量コストで、患者内でのカテーテルの安全なナビゲーションをユーザに提供する。
【0010】
一実施形態によれば、ユーザ入力装置が、ユーザインタラクションを受けて、追跡画像生成ユニットの動作を変更する要求を発行するように構成され、コントローラは、移動パラメータが移動条件を満足することを、提供された移動パラメータが指し示すまで、該要求を阻止する。
【0011】
一実施形態によれば、コントローラは、無効要求に応答して、移動パラメータが移動条件を満足していなくても上記阻止の動作を中止するよう構成される。
【0012】
例示的な一実施形態において、コントローラは、移動パラメータが移動条件を満足することを、提供された移動パラメータが指し示すまで、x線源をスイッチオンする要求を阻止する。これは、例えば経験の浅いユーザがシステムを操作するときに、過剰な放射線量から患者を保護することを可能にする。
【0013】
一実施形態によれば、当該介入システムは更に、移動パラメータに基づいて対象物内の導入素子の位置を決定する位置決定ユニットを有し、追跡画像生成ユニットの動作を制御することは、導入素子の決定された位置に依存する。
【0014】
より具体的には、そして、例示的な一実施形態によれば、追跡画像生成ユニットの動作を制御することは、放射線源をオンに切り換えること又はコリメータの開口を拡大することを含み、放射線源をオンに切り換えること又はコリメータの開口を拡大することは、導入素子の決定された位置が距離閾値を超える場合にのみ行われる。この動作は“コールド追跡”を可能にする。この実施形態において想定されることには、ユーザは、スクリーン上に示されるロードマップ画像(より詳細に後述する)によって支援され、該スクリーン上で、受け取られた移動パラメータに従って好適なインジケータが更新される。コールド追跡中は、ライブでのエクスポージャは収集されない。換言すれば、ロードマップ画像上に描かれる経路は、受け取られた移動パラメータのみに基づく見積もりである。しかしながら、移動パラメータが移動条件を満足すると、例えば、カテーテルが所定の距離閾値を超えて又は高速で進められたことを移動パラメータが指し示すと、新たな最新ライブ画像を収集するために照射がトリガーされる。換言すれば、見積もられたロードマップ経路を“現実(リアリティ)チェック”することができる。
【0015】
一実施形態によれば、コントローラは、放射線源のフレームレートを制御する。一実施形態によれば、導入素子の決定された位置に応じてフレームレートが上昇又は低下される。具体的には、そして、例示的な一実施形態によれば、移動パラメータは、速さ及び/又は進められた距離を記録し、速さが低いほど、又は進められた距離が短いほど、フレームレートが高くされる。
【0016】
一実施形態によれば、導入素子は、入口地点を介して対象物に導入されて対象物内の経路を辿り、追跡画像生成ユニットの動作を制御することは、導入素子が入口地点に関して経路に沿って前進する動きで移動されていることを位置決定ユニットが記録することに応じて行われ、及び/又は、追跡画像生成ユニットの動作を制御することは、導入素子が入口地点に関して経路に沿って後進する動きで移動されていることを位置決定ユニットが記録することに応じて行われる。
【0017】
例示的な一実施形態によれば、導入素子が入口地点に関して経路に沿って前進する動きで移動されていることを位置決定ユニットが記録することに応じて、フレームレートが上昇され、及び/又は、導入素子が入口地点に関して経路に沿って後進する動きで移動されていることを位置決定ユニットが記録することに応じて、フレームレートが低下される。
【0018】
一実施形態によれば、追跡画像生成ユニットの動作を制御することは、対象物内の標的まで所定の距離の範囲内又は範囲外に導入素子があることを位置決定ユニットが記録することに応じて行われる。
【0019】
一実施形態によれば、対象物内の標的まで所定の距離の範囲内又は範囲外に導入素子があることを位置決定ユニットが記録することを受けて、フレームレートが上昇又は低下される。
【0020】
上述の実施形態において、フレームレートを変化させることに代えて、あるいは加えて、コントローラは、一部の実施形態において、放射線ビームの強度を変化させるよう動作し、あるいは、放射線源が、1つ又は一組の移動条件によって規定されるように適宜にオン又はオフに切り換えられる。これは、放射線ビームを変更あるいは生成することを、介入の異なるフェイズに合わせて、あるいは異なる種類の装置(例えば、カテーテル及びガイドワイヤ)に合わせて、あるいは対象物の内部の異なる(解剖学的若しくはその他の)環境に合わせて調整することを可能にする。
【0021】
放射線強度を低減あるいは増大させることは、放射線源の電圧及び/又はアンペア数を上昇又は低下させることの何れかによって実現され得る。好ましくは、変化されるのは、電圧ではなくアンペア数である。一実施形態において、放射線源をオン又はオフに切り換えることに代えて、コリメータが開口を開く又は開口を閉じるように制御される。換言すれば、この実施形態においては、放射線ビームがイメージャの検出器に衝突することを可能にしたり防止したりするのは、コリメータの遮蔽機能である。
【0022】
一実施形態によれば、追跡画像生成ユニットは、放射線ビームをコリメートするコリメータを有し、追跡画像生成ユニットの動作を制御することは、導入素子を含んでいる対象物の領域をビームが横切ることをもたらす。
【0023】
移動ユニットが、対象物内の導入素子の移動を定めるものである移動パラメータ又は複数の移動パラメータのストリームを、追跡画像生成ユニットに提供するように適応されているので、追跡画像生成ユニットは、導入素子の実際の物理的移動を知ることになり、それをコントローラが用いることで、導入素子を含んでいる対象物の領域を放射線ビームが横切るように追跡画像生成ユニットが制御される。この放射線ビームの制御は、導入素子の既知の実際の物理的移動に基づいて非常に正確に実行されることができ、それ故に、導入素子が追跡画像によって実際に捕捉されることを確保するために対象物の比較的大きい領域を照射することが必要ないようにし、それにより、対象物に投与される放射線量が低減されることを可能にする。
【0024】
好ましくは、移動パラメータは、対象物内の導入素子の先端の移動を定め、コントローラは、導入素子の先端を含んでいる対象物の領域を放射線ビームが横切るように、提供された移動パラメータに応じて追跡画像生成ユニットを制御するよう適応される。
【0025】
導入素子は好ましくは、好ましくは人間若しくは動物のような生物である対象物に導入されるカテーテル、針、又はその他の介入器具である。移動ユニットは好ましくは、対象物内で導入素子をロボット制御で移動させるロボットであり、このロボット制御の移動は、自動(すなわち、ユーザインタラクションなしで)制御されることができ、あるいは、キーボード、ジョイスティック、タッチスクリーン、マウスなどのような入力ユニットを介して移動ユニットを(遠隔)制御し得る医師のようなユーザによって制御されることができる。追跡画像生成ユニットは好ましくは、導入素子が対象物内を移動する間に、導入素子を示す一連の追跡画像を生成するよう適応される。好ましくは、追跡画像生成ユニットは、対象物内の導入素子を示すx線画像を生成するよう適応される。追跡画像生成ユニットは、例えば、x線Cアームユニットである。
【0026】
一実施形態によれば、追跡画像生成ユニットは、放射線ビームをコリメートするコリメータを有し、コントローラは、導入素子を含んでいる対象物の領域を放射線ビームが横切るように、提供された移動パラメータに応じて放射線ビームがコリメートされるよう、コリメータを制御するように適応される。コントローラは、移動パラメータによって定められる移動の速さ及び/又は当該介入システムの応答時間に応じてコリメータを制御するよう適応されてもよい。特に、コントローラは、移動パラメータによって定められる移動方向に関して導入素子の前方にある放射線ビームの部分が、速さの増大とともに且つ/或いは応答時間の増大とともに増大するように、移動パラメータによって定められる移動の速さ及び/又は当該介入システムの応答時間に応じてコリメータを制御するよう適応されることができる。
【0027】
故に、コントローラは、追跡画像生成ユニットのコリメータを制御することによって放射線ビームを制御するよう適応され得る。しかしながら、コントローラはまた、放射線ビームを制御するために、追跡画像生成ユニットの放射線源及び放射線検出器のような、追跡画像生成ユニットのその他のコンポーネントを制御するように適応されることもできる。例えば、コントローラは、所望の向きの放射線ビームを提供するよう、これらのコンポーネントの位置を制御するように適応されてもよい。
【0028】
好適な一実施形態において、介入システムは更に、生成された追跡画像内で導入素子を識別する識別ユニットを有し、コントローラは、生成された追跡画像内での導入素子の識別に応じて追跡画像生成ユニットを制御するよう適応される。故に、移動パラメータだけでなく、生成された追跡画像内での導入素子の識別も、追跡画像生成ユニットを制御するのに使用され得る。生成された追跡画像内での導入素子の識別は、対象物内の導入素子の実際の物理的位置を指し示す。追跡画像生成ユニット(特に、放射線ビーム)を制御することに、追跡画像から得られる対象物内の導入素子の実際の物理的位置に関するこの情報を、移動ユニットによって提供された移動パラメータとともに使用することは、追跡画像を用いることによって導入素子を追跡することの品質を更に向上させる。例えば、追跡画像内での導入素子の識別を用いて放射線ビームの方向を制御することができ、例えば、導入素子(特に、導入素子の先端)が追跡画像内の中心に位置付けられるように放射線ビームを制御することができ、放射線ビームの幅又は形状若しくは断面が移動パラメータに応じて制御され得る。
【0029】
識別ユニットは好ましくは、導入素子を識別するために、既知のセグメンテーションアルゴリズムを用いて、生成された追跡画像内で導入素子をセグメント化するよう適応される。換言すれば、1つ以上の追跡画像によって捕捉された実際の物理的位置を用いることは、以上にて先述したコールド追跡モードとは区別される“ホット”追跡モードでのシステムの動作を可能にする。
【0030】
介入システムは更に、移動パラメータに基づいて対象物内の導入素子の位置を決定する位置決定ユニットを有することができ、コントローラは、導入素子の決定された位置に応じて追跡画像生成ユニットを制御するよう適応され得る。また、追跡画像生成ユニットは、放射線ビームをコリメートするコリメータを有することができ、位置決定ユニットは、位置の決定の精度を指し示す精度値を更に決定するように適応されることができ、コントローラは、精度値に応じてコリメータを制御するように適応されることができる。これは、追跡画像生成ユニットが一時的に追跡画像を生成しないスイッチオフ期間中に追跡画像生成ユニットを制御することを可能にする。スイッチオフ期間の終了時に追跡画像生成ユニットが再びスイッチオンされると、生成される追跡画像は、導入素子がスイッチオフ期間中に移動されていたとしても、導入素子を直ちに示す。
【0031】
好ましくは、コントローラは、精度値が高めの精度を指し示す場合にコリメータが狭めの開口又は絞りを有するように、また、精度値が低めの精度を指し示す場合にコリメータが広めの開口を有するように、コリメータを制御するよう適応される。精度値は、例えば、移動パラメータによって定められる移動の速さに応じて、且つ/或いはスイッチオフ期間中の移動パラメータによって定められる移動の総量に応じて決定され得る。この移動の総量は、スイッチオフ期間中に導入素子が進んだ総距離として定義され得る。
【0032】
介入システムは更に、a)移動パラメータに基づいて対象物内の導入素子の位置を決定する位置決定ユニット、b)対象物を示す対象物画像を提供する対象物画像提供ユニット、及びc)対象物画像と、対象物画像内の導入素子の決定された位置に導入素子を表現するものとを表示するディスプレイを有し得る。対象物画像は、対象物のより大きい部分を示す概観画像とし得る。例えば、対象物画像は、人物の血管ツリーを示すロードマップ画像とすることができ、この血管ツリーの或る血管内で導入素子が移動され得る。対象物内の導入素子の位置が移動パラメータに基づいて決定され、ディスプレイ上で、対象物画像内(例えば、ロードマップ画像内)の導入素子の決定された位置に導入素子を表現するものが示されるので、現時において追跡画像が生成されていなくても、対象物内の導入素子の位置をディスプレイ上に示すことができる。例えば、現時において追跡画像が生成されていなくても、ロードマップ画像内に導入素子の先端の位置を示すことができる。
【0033】
介入システムはまた、a)対象物を示す対象物画像を提供する対象物画像提供ユニット、b)対象物画像及び標的画像の重ね合わせであるオーバーレイ画像を決定するオーバーレイ画像決定ユニット、及びc)対象物画像及び追跡画像を互いに重ね合わせて表示するディスプレイを有し得る。対象物画像は、例えば、人物の血管ツリーを示すロードマップ画像とし得る。追跡画像は導入素子を示すので、対象物画像及び追跡画像を互いに重ね合わせて表示することにより、対象物内の導入素子の位置をユーザに示すことができる。この実施形態においても、対象物画像は好ましくは、対象物のより大きい部分を示す概観画像である。
【0034】
本発明の他の一態様において、介入方法が提示され、当該介入方法は、
− 移動ユニットにより、対象物内で導入素子を移動させることと、
− 追跡画像生成ユニットにより、対象物内の導入素子の追跡画像を生成することであり、追跡画像生成ユニットの放射線源により、対象物を横切る放射線ビームが放射され、追跡画像生成ユニットの放射線検出器により、対象物を横切った後に放射線ビームが検出される、生成することと
を有し、
移動ユニットが、対象物内の導入素子の移動を定めるものである移動パラメータを追跡画像生成ユニットに提供し、コントローラが、導入素子を含んでいる対象物の領域を放射線ビームが横切るように、提供された移動パラメータに応じて追跡画像生成ユニットを制御する。
【0035】
一実施形態によれば、移動パラメータは、移動中に経験される導入素子の速さ、及び/又は移動中に導入素子によって進まれた距離を記録する。一部の実施形態において、移動パラメータは、進行方向及び速さ(速度)を記録する。速さ/速度は、或る時間インターバル内での最大速さとして、あるいは或る時間インターバルにわたる平均として、あるいは瞬時速さ/速度として記録され得る。
【0036】
一実施形態によれば、移動条件は、i)所定の距離以上の導入素子の移動、及び/又はii)速さ閾値を超える速さ若しくは速さ閾値より低い速さでの導入素子の移動、のうちの何れか1つ又は組み合わせを含む。
【0037】
つまり、以上の実施形態から理解されるように、ユーザのロボット制御操作(例えば、ジョイスティック作動イベント)それ自体はビーム制御に影響を及ぼすものではなく、ビーム制御は、カテーテルの実際の動き(移動パラメータ内で捕捉される)が移動条件を満足するかどうかのみに応答する。
【0038】
理解されるべきことには、それぞれの独立請求項との従属請求項又は上述の実施形態の組み合わせも本発明の一好適実施形態とすることができる。
【0039】
本発明のこれら及びその他の態様が、以下に記載される実施形態を参照して明らかになる。
【0040】
定義
“放射線源がオンに切り換えられる/トリガーされる”:放射線が線源を出て対象物を照射し、画像が収集される。
“放射線源がオフに切り換えられる”:画像が収集されない。
“放射線源が有効化される”:イメージャ(特に、放射線源又は検出器)が画像収集する準備が整っている。
“放射線源が無効化される”:放射線源(特に、放射線源又は検出器)が画像収集する準備が整っていない。
“スクリーン/ディスプレイ/モニタ”は、ここでは相互に言い換え可能に使用される。
“追跡画像生成ユニット”及び“イメージャ”は、ここでは相互に言い換え可能に使用される。