【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の説明
高速スイッチングIGBTは大きいdI/dtおよびdU/dtを生じさせるが、これらは半導体モジュールの内部および外部のさまざまな電磁干渉問題の源となり得る。この電磁干渉作用は、U
ind=L
*dI/dtおよびI
ind=C
*dI/dtという関係に起因する。
【0009】
IGBTモジュール内部の1つの重要な設計パラメータは、ゲート−エミッタ電圧を接続して装置をオンおよびオフするために用いられる、主エミッタ端子と補助エミッタ端子との間のいわゆる共通エミッタ漂遊インダクタンスL
σ_CEである。典型的に大きいターンオン/オフコレクタ電流(dI
C/dt)を考慮すると、その共通エミッタ漂遊インダクタンスL
σ_CEの両端の電圧降下が著しいものになり得る。誘導電圧により、IGBTチップでは、モジュール端子U
GEに印加されたゲート電圧とは異なる実効ゲート電圧U
G’E’となる。
【0010】
以下の式は、共通エミッタ漂遊インダクタンスL
σ_CEの両端の誘導U
GE電圧と実効ゲート電圧U
G’E’との間の関係を示す。
【0011】
【数1】
【0012】
並列IGBTの場合、非対称のモジュール配置に起因して各々のIGBTが異なるU
GEとなり、不平衡動的電流共有を引起す可能性がある。一方、上記式から分かるように、有利な点は、dI/dtが増加しているときに実効ゲート電圧U
G’E’が減少し、それによってdI/dtが大きい場合の自己減衰としての役割を果たし、効果的な内蔵短絡保護を提供するということである。
【0013】
本発明の目的は、内蔵短絡保護を含む、制御し易くかつ構成し易い半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる例示的実施形態は従属請求項および以下の説明から明白である。
【0015】
本発明の一局面は半導体モジュールに関し、特に大電力半導体モジュールに関する。大電力は10Aを超える電流および/または1000Vを超える電流に関し得ることが理解されるべきである。モジュールは、全体として交換可能な半導体装置の部品であってもよく、たとえばその部材は、たとえば共通基板または共通ハウジングを介して互いに機械的に接続されてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、半導体モジュールは、コレクタ、エミッタ、およびゲートを有する少なくとも1つの半導体スイッチを含む少なくとも1つの半導体チップと、コレクタに接続されたコレクタ端子と、ゲートに接続されたゲート端子と、エミッタインダクタンスを有するエミッタ導体経路を介してエミッタに接続されたエミッタ端子と、エミッタに接続された補助エミッタ端子とを含む。
【0017】
言い換えると、半導体モジュールは、半導体スイッチを有するチップを含み、スイッチのコレクタ、エミッタ、およびゲートのための端子を備える。さらに、半導体モジュールは、ゲートを介してスイッチをスイッチングするために用いられる電圧を提供するために用いられ得る補助エミッタ端子を備える。通常、ゲートドライブはゲート端子と補助エミッタ端子との間に接続されている。
【0018】
さらに、半導体モジュールは、エミッタに接続された第1の導体経路と、エミッタに接続されるとともに、第1の導体経路とは異なる、エミッタ導体経路との相互誘導結合を有する第2の導体経路とを含む。導体経路は、回路基板上の金属片、ワイヤ、またはストリップラインなど如何なる種類の導体であってもよいことが理解されるべきである。2つの導体経路は、ゲート端子をエミッタに接続する異なるやり方を提供するために用いられる。特に、これらの異なる経路は、エミッタ導体経路との異なる結合を有し、したがって、導体経路のうち1つまたは両方を選択してゲートに接続することによって、上述した効果を利用してそのスイッチング特性を制御することが可能になる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および第2の導体経路は補助エミッタ端子に接続可能である。たとえば、半導体モジュールは補助エミッタ端子を1つ有するだけであるが、第1、第2の導体経路、または両方の導体経路を介して補助エミッタ端子をエミッタに接続する可能性を提供する。このように、半導体モジュールは、1つの補助エミッタ端子で、主エミッタ導体経路との所望の結合を提供するように構成され得る。
【0020】
半導体モジュールは、各々が異なるU
GE結合を有する2つ以上の共通エミッタ導体経路を備えてもよく、これらは、ボンドワイヤをそれぞれの位置に配置することによって選択され得る。この方法では、通常は製造後に結合を変更することができないが、モジュールのユーザは値を特定の範囲から選択することができ、ユーザは選択された値で与えられるモジュールを得る。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路は補助エミッタ端子に接続されるとともに第2の導体経路は第2の補助エミッタ端子に接続されている。半導体モジュールは、各々が別の導体経路を介してエミッタに接続された2つの補助エミッタ端子を備えてもよい。ゲートドライブは、エミッタをゲートに接続するための所望の結合を選択するために、第1、第2の補助エミッタ端子または両方の補助エミッタ端子に接続されてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの半導体スイッチはIGBTなどのトランジスタである。しかしながら、一般に半導体モジュールは、たとえばIGCTのようなサイリスタなど、他の種類の半導体スイッチを含み得る。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および/または第2の導体経路とエミッタインダクタンスとが共通部分を有するように、第1の導体経路および/または第2の導体経路はエミッタ導体経路に接続されている。言い換えると、それぞれの導体経路とエミッタ導体経路とが共通導体を有し得る。第1の導体経路は、一端で、エミッタ導体経路との第1の接続点に接続されてもよい。同様に、第2の導体経路は、一端で、エミッタ導体経路との第2の接続点に接続されてもよい。第2の接続点は第1の接続点と異なっていてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、第2の導体経路は、第1の導体経路とエミッタ導体経路との相互誘導結合より少なくとも2倍強い、エミッタ導体経路との相互誘導結合を有する。半導体モジュールは2つの補助エミッタ端子を備えてもよく、1つは(非常に)弱い結合を有し、1つは強い結合を有する。モジュールのユーザは所望の減衰を設定するために2つのうちから選択してもよく、または両方を用いてもよく、分圧抵抗も組合わせて用いてもよい。一般に、モジュールの供給業者および/またはモジュールのユーザは、自己減衰をその使用要件に適合させるようにU
GE結合の量を設定することが可能である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および第2の導体経路の各々は、当該導体経路を補助エミッタ端子に接続するためのブリッジング点(bridging points)を含む。たとえば、両方の導体経路は遮断(端部にブリッジング点を備える)を含んで設計されてもよく、当該遮断は、ボンドワイヤまたは他の導体で迂回し得る。したがって、ブリッジング点は導体を接続するためのランドであってもよい。所望の導体経路を補助エミッタ端子に接続するボンドワイヤまたは他の導体は、モジュールの製造によって既に配置されていてもよい。しかしながら、ブリッジング点は(たとえば半導体モジュールのハウジング上に設けられた)モジュールの製造後にアクセス可能であってもよく、および/または、所望の導体経路を補助エミッタ端子に接続するボンドワイヤもしくは他の導体がモジュールのユーザによって配置されることが可能であってもよい。
【0026】
半導体モジュールは第3の導体経路をさらに含んでもよく、この第3の導体経路はエミッタに接続されるとともにエミッタ導体経路との相互誘導結合を有し、当該相互誘導結合は第1の導体経路および第2の導体経路とエミッタ導体経路との相互誘導結合とは異なるものであってもよい。また、第3の導体経路は、第1および第2の導体経路について述べたように、ブリッジング点を介して補助エミッタ端子に接続されてもよい。
【0027】
第3の導体経路とエミッタ導体経路とは共通部分を有する。たとえば、第3の導体経路の結合は第1の導体経路の結合よりも強くてもよく、および/または第2の導体経路の結合よりも弱くてもよい。
【0028】
第3の導体経路は、エミッタ導体経路との第1の導体経路の第1の接続点と、エミッタ導体経路との第2の導体経路の第2の接続点との間の第3の接続点で、エミッタ導体経路に接続されている。言い換えると、第3の導体経路は、他の2つの経路の分岐点(すなわち接続点)間でエミッタ導体経路から分岐し得る。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および/または第2の導体経路は、エミッタインダクタンスとは異なる補助インダクタンスを含む。たとえば、それぞれの導体経路において接続された追加のインダクタが、半導体モジュールに設けられてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および/または第2の導体は、補助インダクタンスを介してエミッタインダクタンスと誘導結合されている。たとえば、2つの導体経路が、互いに平行に走るセクションを有し、これによって誘導結合を提供してもよい。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、半導体モジュールは少なくとも2つの半導体スイッチを含み、当該少なくとも2つの半導体スイッチは、エミッタ端子に接続されたそれぞれのエミッタを介して並列接続され、かつ、ゲート端子に接続されたそれぞれのゲートを介して並列接続されている。このように、半導体モジュールはより大きな電流を処理し得て、ただ1つのゲートユニットによって制御され得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、第1の半導体スイッチは、第1のエミッタインダクタンスを有する第1のエミッタ導体経路を介してエミッタ端子に接続され、第2の半導体スイッチは、第2のエミッタインダクタンスを有する第2のエミッタ導体経路を介してエミッタ端子に接続されている。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および第2の導体経路のうち少なくとも1つは、第1のエミッタ導体経路と第2のエミッタ導体経路とを相互接続するためのブリッジング点を含む。このように、各エミッタ導体経路がそれぞれの半導体スイッチのそれぞれのエミッタに同じインダクタンスを与えるように、補助エミッタ端子がすべてのエミッタインダクタンス経路に接続されてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも2つの半導体スイッチは、それぞれのエミッタで、共通エミッタインダクタンスを有する共通エミッタ導体経路を介して、エミッタ端子に接続されている。エミッタインダクタンスの大部分が共通導体経路によって提供され、この共通導体経路が一端で半導体スイッチのエミッタを相互接続するとともに他端でエミッタ端子に接続されることもあり得る。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの半導体チップと、エミッタ導体経路と、第1の導体経路と、第2の導体経路とが共通ハウジング内で組付けられている。コレクタ端子と、ゲート端子と、エミッタ端子と、補助エミッタ端子とが共通ハウジング上に設けられている。また、第3の導体経路、共通エミッタコンダクタンス経路など上述した他の部品もハウジング内に組付けられてもよい。さらに、第2の補助エミッタ端子も共通ハウジング上に設けられてもよい。
【0036】
本発明のさらなる局面は、第1の補助エミッタ端子と第2の補助エミッタ端子とを含む上述および下述の半導体モジュール、ならびに、第1の補助エミッタ端子と、第1の補助エミッタ端子および第1の補助抵抗と、第2の補助エミッタ端子と、第2の補助エミッタ端子および第2の補助抵抗とのうち少なくとも1つを介してゲート端子とエミッタとを相互接続するゲートドライブを含む、半導体アセンブリに関する。
【0037】
ゲートドライブは、2つの補助エミッタ端子によってさまざまな方法で半導体モジュールに接続されてもよい。たとえば、ゲートドライブは、第1または第2の補助エミッタ端子のうち1つのみに接続されてもよい。代替的に、ゲートドライブは、補助エミッタ端子とゲートドライブとの間に接続された1つ以上の補助抵抗を任意に介して、第1および第2の補助エミッタ端子の両方に接続されてもよい。
【0038】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下に説明される実施形態から明らかとなり、これらの実施形態を参照して解明されるだろう。
【0039】
図面の簡単な説明
以下の本文において、添付図面に示された例示的実施形態を参照して、本発明の主題をより詳細に説明する。