特許第6427589号(P6427589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許64275892つの補助エミッタ導体経路を有する半導体モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427589
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】2つの補助エミッタ導体経路を有する半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20181112BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20181112BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20181112BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H02M1/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-551706(P2016-551706)
(86)(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公表番号】特表2017-508287(P2017-508287A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015050611
(87)【国際公開番号】WO2015121015
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年12月11日
(31)【優先権主張番号】14155208.3
(32)【優先日】2014年2月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】コッテ,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】キシン,スラボ
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−125923(JP,A)
【文献】 特開平03−263363(JP,A)
【文献】 特開2002−184940(JP,A)
【文献】 特開2010−124627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00−25/18
H01L 23/58−23/62
H02M 1/00−1/44
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュール(10)であって、
コレクタ(18)、エミッタ(22)、およびゲート(20)を有する少なくとも1つの半導体スイッチ(14)を含む少なくとも1つの半導体チップ(12)と、
前記コレクタ(18)に接続されたコレクタ端子(24)と、
前記ゲート(20)に接続されたゲート端子(26)と、
エミッタインダクタンス(32)を有するエミッタ導体経路(30)を介して前記エミッタ(22)に接続されたエミッタ端子(28)と、
前記エミッタ(22)に接続された補助エミッタ端子(38)と、
前記エミッタ(22)に接続された第1の導体経路(34)と、
前記エミッタ(22)に接続されるとともに、前記第1の導体経路(34)とは異なる、前記エミッタ導体経路(30)との相互誘導結合を有する第2の導体経路(36)とを含み、
前記第1の導体経路(34)および前記第2の導体経路(36)は前記補助エミッタ端子(38)に接続可能であり、
前記半導体スイッチ(14)はIGBTであり、
前記第1の導体経路(34)および前記第2の導体経路(36)の各々は、当該導体経路を前記補助エミッタ端子(38)に接続するための、ボンドワイヤによって短絡し得るブリッジング点(40)を含む、半導体モジュール(10)。
【請求項2】
前記第1の導体経路(34)および/または前記第2の導体経路(36)と前記エミッタインダクタンス(32)とが共通部分を有するように、前記第1の導体経路(34)および/または前記第2の導体経路(36)は前記エミッタ導体経路(30)に接続されている、請求項1に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項3】
前記第2の導体経路(36)は、前記第1の導体経路(34)と前記エミッタ導体経路(30)との相互誘導結合より少なくとも2倍強い、前記エミッタ導体経路(30)との相互誘導結合を有する、先行する請求項のうち1項に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項4】
前記第1の導体経路(34)および/または前記第2の導体経路(36)は、前記エミッタインダクタンス(32)とは異なる補助インダクタンス(54)を含み、および/または、前記第1の導体経路(34)および/または前記第2の導体(36)は補助インダクタンス(54)を介して前記エミッタインダクタンス(32)と誘導結合されている、先行する請求項のうち1項に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項5】
前記半導体モジュールは少なくとも2つの半導体スイッチ(14)を含み、前記少なくとも2つの半導体スイッチ(14)は、前記エミッタ端子(28)に接続されたそれぞれのエミッタ(22)を介して並列接続され、かつ、前記ゲート端子(26)に接続されたそれぞれのゲート(20)を介して並列接続されている、先行する請求項のうち1項に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項6】
第1の半導体スイッチ(14)は、第1のエミッタインダクタンス(32a)を有する第1のエミッタ導体経路(30a)を介して前記エミッタ端子(28)に接続され、第2の半導体スイッチ(14)は、第2のエミッタインダクタンス(32b)を有する第2のエミッタ導体経路(30b)を介して前記エミッタ端子(28)に接続され、
前記第1の導体経路(30a)および前記第2の導体経路(30b)のうち少なくとも1つは、前記第1のエミッタ導体経路(30a)と前記第2のエミッタ導体経路(30b)とを相互接続するための、ボンドワイヤによって短絡し得るブリッジング点(40)を含む、請求項5に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの半導体スイッチ(14)は、それぞれのエミッタ(22)で、共通エミッタインダクタンス(32)を有する共通エミッタ導体経路(30)を介して、前記エミッタ端子(28)に接続されている、請求項5に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの半導体チップ(12)と、前記エミッタ導体経路(30)と、前記第1の導体経路(34)と、前記第2の導体経路(36)とが共通ハウジング(56)内で組付けられ、
前記コレクタ端子(24)と、前記ゲート端子(26)と、前記エミッタ端子(28)と、前記補助エミッタ端子とが前記共通ハウジング(56)上に設けられている、先行する請求項のうち1項に記載の半導体モジュール(10)。
【請求項9】
半導体アセンブリ(58)であって、
第1の補助エミッタ端子(38)と第2の補助エミッタ端子(44)とを含む、先行する請求項のうち1項に記載の半導体モジュール(10)を含み、前記半導体アセンブリ(58)は、
前記第1の補助エミッタ端子(38)と、
前記第1の補助エミッタ端子(38)および第1の補助抵抗(62)と、
前記第2の補助エミッタ端子(44)と、
前記第2の補助エミッタ端子(44)および第2の補助抵抗(62)とのうち少なくとも1つを介して、前記ゲート端子(26)と前記エミッタ(22)とを相互接続するゲートドライブ(60)をさらに含む、半導体アセンブリ(58)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は大電力半導体の分野に関する。特に、本発明は半導体モジュールおよび半導体アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
半導体モジュールは1つ以上の半導体チップを含み、その各々が、ダイオード、トランジスタ、サイリスタなどの1つ以上の半導体を含む。このようなモジュールにおいて、10Aを超える電流および/または1000Vを超える電流をスイッチングするために、IGBTなどの大電力半導体スイッチが使用される。
【0003】
概して、スイッチング損失は最小限に保つべきであり、これは高速スイッチングによって達成され得る。一方、高速スイッチングは電磁干渉問題も引起し得る。したがって、スイッチング速度は、ゲート抵抗を介して、または(たとえばIもしくはdI/dtフィードバックを用いることによって)ゲート電流Iを制御するインテリジェントゲートドライブを介して制御されることがよくある。しかしながら、ゲート抵抗は短絡した場合に通常役に立たず、インテリジェントゲートドライバは実装して制御するには高価かつ複雑になる可能性がある。
【0004】
大抵のIGBTモジュールにおいて、共通エミッタインピーダンスは、(並列IGBTの場合)すべてのIGBTについて同一となるように、かつ、大きくまたは小さくなり過ぎないように注意深く設計されている。通常、実際の値はモジュールの製造業者によって選択されており、モジュールのユーザによって変更できない。
【0005】
あるIGBTモジュールは、ゲートドライブのための電圧を提供するために用いられ得る補助エミッタ端子を備える。特に、大電流IGBTモジュールは通常、補助エミッタを必要とする。さもなければスイッチングが遅過ぎるだろう。PCB設計によって結合を相殺することはできない。
【0006】
他の種類のモジュールは補助エミッタ端子を全く備えず、責任をPCBおよびゲートドライブ設計者に負わせる。概して、dI/dt減衰が小さいモジュールのための短絡保護には外部回路を適用しなければならず、これらの外部回路によって典型的には余分な損失および余分な部品が追加される。
【0007】
本技術分野において、一般的な半導体モジュールはUS2013/153958A1およびDE10005754A1から公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の説明
高速スイッチングIGBTは大きいdI/dtおよびdU/dtを生じさせるが、これらは半導体モジュールの内部および外部のさまざまな電磁干渉問題の源となり得る。この電磁干渉作用は、Uind=LdI/dtおよびIind=CdI/dtという関係に起因する。
【0009】
IGBTモジュール内部の1つの重要な設計パラメータは、ゲート−エミッタ電圧を接続して装置をオンおよびオフするために用いられる、主エミッタ端子と補助エミッタ端子との間のいわゆる共通エミッタ漂遊インダクタンスLσ_CEである。典型的に大きいターンオン/オフコレクタ電流(dI/dt)を考慮すると、その共通エミッタ漂遊インダクタンスLσ_CEの両端の電圧降下が著しいものになり得る。誘導電圧により、IGBTチップでは、モジュール端子UGEに印加されたゲート電圧とは異なる実効ゲート電圧UG’E’となる。
【0010】
以下の式は、共通エミッタ漂遊インダクタンスLσ_CEの両端の誘導UGE電圧と実効ゲート電圧UG’E’との間の関係を示す。
【0011】
【数1】
【0012】
並列IGBTの場合、非対称のモジュール配置に起因して各々のIGBTが異なるUGEとなり、不平衡動的電流共有を引起す可能性がある。一方、上記式から分かるように、有利な点は、dI/dtが増加しているときに実効ゲート電圧UG’E’が減少し、それによってdI/dtが大きい場合の自己減衰としての役割を果たし、効果的な内蔵短絡保護を提供するということである。
【0013】
本発明の目的は、内蔵短絡保護を含む、制御し易くかつ構成し易い半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる例示的実施形態は従属請求項および以下の説明から明白である。
【0015】
本発明の一局面は半導体モジュールに関し、特に大電力半導体モジュールに関する。大電力は10Aを超える電流および/または1000Vを超える電流に関し得ることが理解されるべきである。モジュールは、全体として交換可能な半導体装置の部品であってもよく、たとえばその部材は、たとえば共通基板または共通ハウジングを介して互いに機械的に接続されてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、半導体モジュールは、コレクタ、エミッタ、およびゲートを有する少なくとも1つの半導体スイッチを含む少なくとも1つの半導体チップと、コレクタに接続されたコレクタ端子と、ゲートに接続されたゲート端子と、エミッタインダクタンスを有するエミッタ導体経路を介してエミッタに接続されたエミッタ端子と、エミッタに接続された補助エミッタ端子とを含む。
【0017】
言い換えると、半導体モジュールは、半導体スイッチを有するチップを含み、スイッチのコレクタ、エミッタ、およびゲートのための端子を備える。さらに、半導体モジュールは、ゲートを介してスイッチをスイッチングするために用いられる電圧を提供するために用いられ得る補助エミッタ端子を備える。通常、ゲートドライブはゲート端子と補助エミッタ端子との間に接続されている。
【0018】
さらに、半導体モジュールは、エミッタに接続された第1の導体経路と、エミッタに接続されるとともに、第1の導体経路とは異なる、エミッタ導体経路との相互誘導結合を有する第2の導体経路とを含む。導体経路は、回路基板上の金属片、ワイヤ、またはストリップラインなど如何なる種類の導体であってもよいことが理解されるべきである。2つの導体経路は、ゲート端子をエミッタに接続する異なるやり方を提供するために用いられる。特に、これらの異なる経路は、エミッタ導体経路との異なる結合を有し、したがって、導体経路のうち1つまたは両方を選択してゲートに接続することによって、上述した効果を利用してそのスイッチング特性を制御することが可能になる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および第2の導体経路は補助エミッタ端子に接続可能である。たとえば、半導体モジュールは補助エミッタ端子を1つ有するだけであるが、第1、第2の導体経路、または両方の導体経路を介して補助エミッタ端子をエミッタに接続する可能性を提供する。このように、半導体モジュールは、1つの補助エミッタ端子で、主エミッタ導体経路との所望の結合を提供するように構成され得る。
【0020】
半導体モジュールは、各々が異なるUGE結合を有する2つ以上の共通エミッタ導体経路を備えてもよく、これらは、ボンドワイヤをそれぞれの位置に配置することによって選択され得る。この方法では、通常は製造後に結合を変更することができないが、モジュールのユーザは値を特定の範囲から選択することができ、ユーザは選択された値で与えられるモジュールを得る。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路は補助エミッタ端子に接続されるとともに第2の導体経路は第2の補助エミッタ端子に接続されている。半導体モジュールは、各々が別の導体経路を介してエミッタに接続された2つの補助エミッタ端子を備えてもよい。ゲートドライブは、エミッタをゲートに接続するための所望の結合を選択するために、第1、第2の補助エミッタ端子または両方の補助エミッタ端子に接続されてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの半導体スイッチはIGBTなどのトランジスタである。しかしながら、一般に半導体モジュールは、たとえばIGCTのようなサイリスタなど、他の種類の半導体スイッチを含み得る。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および/または第2の導体経路とエミッタインダクタンスとが共通部分を有するように、第1の導体経路および/または第2の導体経路はエミッタ導体経路に接続されている。言い換えると、それぞれの導体経路とエミッタ導体経路とが共通導体を有し得る。第1の導体経路は、一端で、エミッタ導体経路との第1の接続点に接続されてもよい。同様に、第2の導体経路は、一端で、エミッタ導体経路との第2の接続点に接続されてもよい。第2の接続点は第1の接続点と異なっていてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、第2の導体経路は、第1の導体経路とエミッタ導体経路との相互誘導結合より少なくとも2倍強い、エミッタ導体経路との相互誘導結合を有する。半導体モジュールは2つの補助エミッタ端子を備えてもよく、1つは(非常に)弱い結合を有し、1つは強い結合を有する。モジュールのユーザは所望の減衰を設定するために2つのうちから選択してもよく、または両方を用いてもよく、分圧抵抗も組合わせて用いてもよい。一般に、モジュールの供給業者および/またはモジュールのユーザは、自己減衰をその使用要件に適合させるようにUGE結合の量を設定することが可能である。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および第2の導体経路の各々は、当該導体経路を補助エミッタ端子に接続するためのブリッジング点(bridging points)を含む。たとえば、両方の導体経路は遮断(端部にブリッジング点を備える)を含んで設計されてもよく、当該遮断は、ボンドワイヤまたは他の導体で迂回し得る。したがって、ブリッジング点は導体を接続するためのランドであってもよい。所望の導体経路を補助エミッタ端子に接続するボンドワイヤまたは他の導体は、モジュールの製造によって既に配置されていてもよい。しかしながら、ブリッジング点は(たとえば半導体モジュールのハウジング上に設けられた)モジュールの製造後にアクセス可能であってもよく、および/または、所望の導体経路を補助エミッタ端子に接続するボンドワイヤもしくは他の導体がモジュールのユーザによって配置されることが可能であってもよい。
【0026】
半導体モジュールは第3の導体経路をさらに含んでもよく、この第3の導体経路はエミッタに接続されるとともにエミッタ導体経路との相互誘導結合を有し、当該相互誘導結合は第1の導体経路および第2の導体経路とエミッタ導体経路との相互誘導結合とは異なるものであってもよい。また、第3の導体経路は、第1および第2の導体経路について述べたように、ブリッジング点を介して補助エミッタ端子に接続されてもよい。
【0027】
第3の導体経路とエミッタ導体経路とは共通部分を有する。たとえば、第3の導体経路の結合は第1の導体経路の結合よりも強くてもよく、および/または第2の導体経路の結合よりも弱くてもよい。
【0028】
第3の導体経路は、エミッタ導体経路との第1の導体経路の第1の接続点と、エミッタ導体経路との第2の導体経路の第2の接続点との間の第3の接続点で、エミッタ導体経路に接続されている。言い換えると、第3の導体経路は、他の2つの経路の分岐点(すなわち接続点)間でエミッタ導体経路から分岐し得る。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および/または第2の導体経路は、エミッタインダクタンスとは異なる補助インダクタンスを含む。たとえば、それぞれの導体経路において接続された追加のインダクタが、半導体モジュールに設けられてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および/または第2の導体は、補助インダクタンスを介してエミッタインダクタンスと誘導結合されている。たとえば、2つの導体経路が、互いに平行に走るセクションを有し、これによって誘導結合を提供してもよい。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、半導体モジュールは少なくとも2つの半導体スイッチを含み、当該少なくとも2つの半導体スイッチは、エミッタ端子に接続されたそれぞれのエミッタを介して並列接続され、かつ、ゲート端子に接続されたそれぞれのゲートを介して並列接続されている。このように、半導体モジュールはより大きな電流を処理し得て、ただ1つのゲートユニットによって制御され得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、第1の半導体スイッチは、第1のエミッタインダクタンスを有する第1のエミッタ導体経路を介してエミッタ端子に接続され、第2の半導体スイッチは、第2のエミッタインダクタンスを有する第2のエミッタ導体経路を介してエミッタ端子に接続されている。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、第1の導体経路および第2の導体経路のうち少なくとも1つは、第1のエミッタ導体経路と第2のエミッタ導体経路とを相互接続するためのブリッジング点を含む。このように、各エミッタ導体経路がそれぞれの半導体スイッチのそれぞれのエミッタに同じインダクタンスを与えるように、補助エミッタ端子がすべてのエミッタインダクタンス経路に接続されてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも2つの半導体スイッチは、それぞれのエミッタで、共通エミッタインダクタンスを有する共通エミッタ導体経路を介して、エミッタ端子に接続されている。エミッタインダクタンスの大部分が共通導体経路によって提供され、この共通導体経路が一端で半導体スイッチのエミッタを相互接続するとともに他端でエミッタ端子に接続されることもあり得る。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの半導体チップと、エミッタ導体経路と、第1の導体経路と、第2の導体経路とが共通ハウジング内で組付けられている。コレクタ端子と、ゲート端子と、エミッタ端子と、補助エミッタ端子とが共通ハウジング上に設けられている。また、第3の導体経路、共通エミッタコンダクタンス経路など上述した他の部品もハウジング内に組付けられてもよい。さらに、第2の補助エミッタ端子も共通ハウジング上に設けられてもよい。
【0036】
本発明のさらなる局面は、第1の補助エミッタ端子と第2の補助エミッタ端子とを含む上述および下述の半導体モジュール、ならびに、第1の補助エミッタ端子と、第1の補助エミッタ端子および第1の補助抵抗と、第2の補助エミッタ端子と、第2の補助エミッタ端子および第2の補助抵抗とのうち少なくとも1つを介してゲート端子とエミッタとを相互接続するゲートドライブを含む、半導体アセンブリに関する。
【0037】
ゲートドライブは、2つの補助エミッタ端子によってさまざまな方法で半導体モジュールに接続されてもよい。たとえば、ゲートドライブは、第1または第2の補助エミッタ端子のうち1つのみに接続されてもよい。代替的に、ゲートドライブは、補助エミッタ端子とゲートドライブとの間に接続された1つ以上の補助抵抗を任意に介して、第1および第2の補助エミッタ端子の両方に接続されてもよい。
【0038】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下に説明される実施形態から明らかとなり、これらの実施形態を参照して解明されるだろう。
【0039】
図面の簡単な説明
以下の本文において、添付図面に示された例示的実施形態を参照して、本発明の主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体モジュールを概略的に示す図である。
図2】本発明のさらなる一実施形態に係る半導体モジュールを概略的に示す図である。
図3】本発明のさらなる一実施形態に係る半導体モジュールを概略的に示す図である。
図4】本発明のさらなる一実施形態に係る半導体モジュールを概略的に示す図である。
図5】本発明のさらなる一実施形態に係る半導体モジュールを概略的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体モジュールのハウジングを上から見た図である。
図7A】本発明の実施形態に係る半導体アセンブリを概略的に示す図である。
図7B】本発明の実施形態に係る半導体アセンブリを概略的に示す図である。
図7C】本発明の実施形態に係る半導体アセンブリを概略的に示す図である。
図7D】本発明の実施形態に係る半導体アセンブリを概略的に示す図である。
図7E】本発明の実施形態に係る半導体アセンブリを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面において使用される参照符号およびそれらの意味は、参照符号のリストにおいて概要の形でリスト化されている。原則として、図において同一の部分には同じ参照符号が与えられる。
【0042】
例示的実施形態の詳細な説明
図1は、半導体スイッチ14と、半導体スイッチ14に逆並列に接続された還流ダイオード16とを有する1つの半導体チップ12を含む半導体モジュール10を示す。
【0043】
半導体スイッチ14は、図に示すようにIGBTであってもよく、コレクタ18と、ゲート20と、エミッタ22とを含む。コレクタ18はコレクタ端子24に接続され、ゲート20はゲート端子26に接続され、エミッタ22は(主)エミッタ端子28に接続されている。端子24、26、28を用いて、半導体モジュール10を半導体装置のさらなる部品に接続してもよい。
【0044】
エミッタ端子28は、エミッタインダクタンス32を有する導体経路30を介して、エミッタ22に接続される。たとえば、エミッタインダクタンス32は1nH〜100nHの値を有し得る。
【0045】
半導体モジュール10は、エミッタに接続された2つのさらなる導体経路34、36をさらに含む。第2の導体経路36はエミッタインダクタンス32をエミッタコンダクタンス経路30と共有する。
【0046】
半導体モジュール10は、導体経路34、36のうち1つまたは両方に接続され得る補助エミッタ端子38を含む。導体経路34、36は、ボンドワイヤ42によって短絡し得るブリッジング点40を含む。図1において、補助エミッタ端子がインダクタンス32を介さずにエミッタ22に接続されるように、ボンドワイヤ42が第1の導体経路34のブリッジング点40を相互接続する。
【0047】
ボンドワイヤ42によって、半導体モジュール10は高速または低速スイッチングモジュールとなるように構成されてもよい。この設定は製造時に既に行なわれてもよい。
【0048】
図2は第1の補助エミッタ端子38と第2の補助エミッタ端子44とを含む半導体モジュール10を示す。第1の導体経路34は第1の補助エミッタ端子38に接続され、第2の導体経路36は第1の補助エミッタ端子44に接続されている。このように、導体経路34、36はともに別々の補助エミッタ端子38、44で利用可能である。モジュールのユーザは、スイッチング速度を自分自身で設定するなどのために、いずれの端子38、44を使用するかを選択し得る。
【0049】
図3は、並列のチップ12を有する半導体モジュール10を示す。各々のチップは、半導体スイッチ14と、逆並列に接続された還流ダイオード16とを含む。すべての半導体スイッチ14のコレクタ18はコレクタ端子24に接続されている。すべての半導体スイッチ14のゲート20はゲート端子24に接続されている。各々の半導体スイッチ14に対して、別々のエミッタ導体経路30a、30b、30cが設けられており、エミッタ導体経路30a、30b、30cはそれぞれのエミッタ22をエミッタ端子28に接続している。
【0050】
エミッタ導体経路30a、30b、30cは、同じ値を有し得るエミッタインダクタンス32a、32b、32cを含む。
【0051】
3つの異なる導体経路34、36、46が半導体モジュール10において設けられている。第1の導体経路34は、接続点48でエミッタ22に直接接続され、すべてのエミッタ22を補助エミッタ端子38と直接相互接続するためのブリッジング点40を有する。第2の導体経路36は、エミッタ端子28とエミッタインダクタンス32a、32b、32cとの間の接続点50に接続され、これらの点を補助エミッタ端子38と直接相互接続するためのブリッジング点40も有する。第3の導体経路46は、エミッタインダクタンス32a、32b、32cにおける接続点52に接続され、これらの点を補助エミッタ端子38と直接相互接続するためのブリッジング点40も有する。たとえば、第3の導体経路46のインダクタンスが第2の導体経路36のインダクタンスの値の2分の1となるように接続点52が選択されてもよい。
【0052】
図3に示す例では、第3の導体経路46のブリッジング点40はボンドワイヤ42によってつながれる/短絡する。ボンドワイヤ22を適用することによって、製造時に半導体モジュール10のスイッチング速度が設定されてもよい。
【0053】
図4図3に類似して、並列のチップ12を有する半導体モジュール10を示す。半導体スイッチのエミッタ22は互いに直接接続され、共通エミッタコンダクタンス経路30を介してエミッタ端子28に接続されている。図2と類似して、半導体モジュール10は2つの補助エミッタ端子38、44を有する。第1の補助エミッタ端子38は第1の導体経路34を介してエミッタ22に直接接続され、第2の補助エミッタ端子44は共通エミッタ導体経路30を介してエミッタ端子28に直接接続されている。
【0054】
図5図4に類似して、共通エミッタ導体経路30を有する並列のチップ12を含む半導体モジュール10を示す。しかしながら、図4では、第2の導体経路36が補助インダクタンス54を介して接続され、エミッタインダクタンス32と誘導結合されている。この場合、強いUGE結合が共通エミッタ導体経路30によって達成されるのではなく、代わりに2つの結合インダクタンス54、32によって達成される。
【0055】
図6は、たとえば図1から図5のモジュール10のための、半導体モジュール10のハウジング56を示す。チップ12と、導体経路30、34、36、46と、インダクタンス32、54とはハウジング56の内部にあってもよい。端子24、26、28、38、44はハウジング56上に設けられてもよい。図6において、端子24、28はそれぞれ、並列接続された3つの接点を含む。
【0056】
図7Aから図7Eは、2つの補助端子38、44がゲートドライブ60に異なる方法で接続された、半導体アセンブリ58の5つの異なる変形例を示す。これらの変形例によって、結合の量ひいては半導体モジュール10のスイッチング速度が調整されてもよい。第1の補助エミッタ端子36は第2の補助エミッタ端子44よりも小さいインダクタンスを提供する。
【0057】
図7Aは最も高速のスイッチングの変形例を示す。ゲートドライバ60は第1の補助端子36のみに接続されている。
【0058】
図7Bでは、ゲートドライバ60は第1の補助エミッタ端子36に直接接続され、第2の補助エミッタ端子44に補助抵抗62を介して接続されている。
【0059】
図7Cでは、ゲートドライバ60は第1の補助エミッタ端子36に直接接続され、第2の補助エミッタ端子44に直接接続されている。
【0060】
図7Dでは、ゲートドライバ60は第1の補助エミッタ端子36に補助抵抗62を介して接続され、第2の補助エミッタ端子44に直接接続されている。
【0061】
図7Eは最も低速のスイッチングの変形例を示す。ゲートドライバ60は第2の補助端子44のみに接続されている。
【0062】
図面および上記の説明において本発明を詳細に図示し説明してきたが、このような図示および説明は、例証的または例示的なものであると考えるべきであり、限定的なものであると考えるべきではない。本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形例は、図面、開示内容、および添付の特許請求の範囲を検討することによって、請求項に係る発明を実施する当業者により理解され成し遂げられ得る。特許請求の範囲において、「含む」という語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数形を除外するものではない。単一のプロセッサ、コントローラ、または他のユニットが、特許請求の範囲において記載されるいくつかの項目の機能を果たし得る。単に、ある方策が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、そのことが、これらの方策の組合せを有利に使用できないことを示すわけではない。請求項におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0063】
参照符号のリスト
10 半導体モジュール、12 半導体チップ、14 半導体スイッチ、16 還流ダイオード、18 コレクタ、20 ゲート、22 エミッタ、24 コレクタ端子、26 ゲート端子、28 エミッタ端子、30、30a、30b、30c エミッタ導体経路、32、32a、32b、32c エミッタインダクタンス、34 第1の導体経路、36 第2の導体経路、38 補助エミッタ端子、40 ブリッジング点、42 ボンドワイヤ、44 第2の補助エミッタ端子、46 第3の導体経路、48、50、52 接続点、54 補助インダクタンス、56 ハウジング、58 半導体アセンブリ、60 ゲートドライブ、62 補助抵抗。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E