特許第6427591号(P6427591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427591
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】制御可能な光透過要素
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/167 20060101AFI20181112BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   G02F1/167
   E06B9/24 C
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-553733(P2016-553733)
(86)(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公表番号】特表2016-538606(P2016-538606A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2014074820
(87)【国際公開番号】WO2015075007
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年11月15日
(31)【優先権主張番号】13193442.4
(32)【優先日】2013年11月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】レンセン カース−ミシェル ヒュバート
(72)【発明者】
【氏名】トゥロウボースト マリウス レーンデルト
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0195399(US,A1)
【文献】 特表2010−511196(JP,A)
【文献】 特開2007−147838(JP,A)
【文献】 特開平11−202804(JP,A)
【文献】 実開平2−5726(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15 − 1/19
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓を通る熱及び可視光の透過を、独立して制御するための光透過要素であって、
前記光透過要素は、筐体の内部に封入される複数の第1の粒子と複数の第2の粒子とを含み、前記筐体は、前記光透過要素を通る光の透過が2つの略平面の光学的に透過性の壁部材を通じて可能となるように互いに対向して配置される当該壁部材を含み、
前記複数の第1の粒子の分布は、前記光透過要素を透過する、実質的に赤外光に対応する第1の波長範囲内の光の量を主に制御するために、前記壁部材に対して平行な平面に付与される第1の電界によって制御可能であり、
前記複数の第2の粒子の分布は、前記光透過要素を透過する、実質的に可視光に対応する第2の波長範囲内の光の量を主に制御するために、前記壁部材に対して平行な平面に付与される、前記第1の電界とは異なる第2の電界によって制御可能であり、
前記第1の粒子は、前記第1の波長範囲の光を反射して前記第2の波長範囲の光を透過させる荷電粒子であり、前記第2の粒子は、前記第2の波長範囲の光を吸収して前記第1の波長範囲の光を透過させる荷電粒子である、
光透過要素。
【請求項2】
前記複数の第1の粒子は第1の区画内に配置され、前記複数の第2の粒子は、透明な壁部材によって前記第1の区画から分離される第2の区画であって、前記第1の区画と平行に且つ積み重ねられて配置される当該第2の区画内に配置される、請求項1に記載の光透過要素。
【請求項3】
前記第1の粒子は、前記第1の電界が付与されるときに、前記第1の粒子の濃度が前記筐体にわたってより不均一であるようにされ、前記第1の波長範囲の光の透過率が、付与される前記第1の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正され、前記第2の粒子は、前記第2の電界が付与されるときに、前記第2の粒子の濃度が前記筐体にわたってより不均一であるようにされ、前記第2の波長範囲の光の透過率が、付与される前記第2の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正される、請求項1に記載の光透過要素。
【請求項4】
前記第1の粒子は、0.5マイクロメートルよりも大きな寸法を有する、請求項1に記載の光透過要素。
【請求項5】
前記第2の粒子は、400ナノメートルよりも小さな寸法を有する、請求項1に記載の光透過要素。
【請求項6】
第1の側に空洞を含む第1の基板と、前記空洞及び第2の基板から前記筐体が形成されるように前記第1の基板と接触して配置される当該第2の基板と、を更に含む、請求項1に記載の光透過要素。
【請求項7】
可撓性の膜又はフォイルの形式で提供される、請求項1に記載の光透過要素。
【請求項8】
前記光学的に透過性の壁部材のうちの少なくとも1つと接触して且つ平行に配置される、剛性の光学的に透過性の支持構造を更に含む、請求項1乃至の何れか一項に記載の光透過要素。
【請求項9】
電界を生成するためのエネルギを提供するエネルギ生成ユニットを更に含む、請求項に記載の光透過要素。
【請求項10】
前記エネルギ生成ユニットは、太陽電池、又は無線電力を受信するための無線周波受信器ユニットである、請求項に記載の光透過要素。
【請求項11】
第1の剛性の光学的に透過性の支持構造と、第2の剛性の光学的に透過性の支持構造との間に挟まれる請求項1に記載の光透過要素を含む、窓。
【請求項12】
光透過要素を用いて、窓を通る熱及び可視光の透過を、独立して制御する方法であって、前記光透過要素は、前記光透過要素を通る光の透過が2つの光学的に透過性の壁部材を通じて可能となるように互いに対向して配置される当該壁部材を含む略平面の筐体に封入される、複数の第1の粒子と複数の第2の粒子とを含み、前記第1の粒子及び前記第2の粒子の分布は、前記壁部材に対して平行な平面に付与される電界によって制御可能であり、前記方法は、
前記第1の粒子の分布が修正されるように第1の電界を付与することを通じて、実質的に赤外光に対応する第1の波長範囲内の光の透過を主に制御するステップと、
前記第2の粒子の分布が修正されるように、前記第1の電界とは異なる第2の電界を付与することによって、実質的に可視光に対応する第2の波長範囲内の光の透過を主に制御するステップと、
を含み、
前記第1の粒子は、前記第1の波長範囲の光を反射して前記第2の波長範囲の光を透過させる荷電粒子であり、前記第2の粒子は、前記第2の波長範囲の光を吸収して前記第1の波長範囲の光を透過させる荷電粒子である、
方法
【請求項13】
前記第1の波長範囲の光の透過率が、付与される前記第1の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正され、前記第2の波長範囲の光の透過率が、付与される前記第2の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓を通る熱及び可視光の透過を、独立して制御するための光透過要素(エレメント、素子)に関する。詳細には、本発明は、可視光及び赤外光の透過を個別に制御することのできる光制御フォイル及び窓に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建物又は車両に配置される従来の窓は、光の波長とは無関係の一定の光の透過率を有する。例えば、可視光及び赤外光は、従来の窓を容易に通過する。したがって、赤外光(すなわち熱)が例えば建物の窓を通って建物から容易に去り、不必要な熱の損失につながる恐れがある。損失を補償するために、例えば建物の内部にいる人々のために快適な環境を提供するように建物の内部を温めるのに、より多くの電力が必要とされる。加えて、窓を通って容易に熱が入り、このことは、例えば暑い気候において、建物を冷やすための電力消費の増大につながる恐れがある。更に、例えば晴れているが寒い日に、グレアを低減させるが外部から入る熱は依然として利用するために、可視光を遮断するが熱は遮断しないことが望ましいときもある。
【0003】
最近、いわゆる「スマートウィンドウ」が市場に導入されている。自動車産業において一般的な「スマートウィンドウ」は、窓を通る光の透過を調節することができる。光の透過を制御することのできる装置、ひいては「スマートウィンドウ」は、国際特許出願公開第2013/003548号によって開示されている。国際特許出願公開第2013/003548号では、光の透過を制御するためにエレクトロクロミックセルが用いられる。国際特許出願公開第2013/003548号によって開示される装置は、様々な波長の光の透過を制御するための複数の層のセルを含む。更に、装置は、当該装置を適切に動作させるために、電解質の層や、単一壁カーボンナノチューブを含む電極を必要とする。
【0004】
従来技術に鑑み、より複雑性の低い構造を用いて、熱及び可視光を独立して制御することを可能にする装置の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上述の欠点及び他の欠点に鑑み、本発明の一般的な目的は、装置を通るそれぞれ赤外光及び可視光である光の透過を、独立して制御するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によると、筐体の内部に封入される複数の第1の粒子と複数の第2の粒子とを含む光透過要素が提供される。筐体は、光透過要素を通る光の透過が、少なくとも2つの略平面の光学的に透過性の壁部材を通じて可能となるように互いに対向して配置される当該壁部材を有する。複数の第1の粒子の分布は、光透過要素を透過する、実質的に赤外光に対応する第1の波長範囲内の光の量を主に制御するために、壁部材に対して平行な平面に付与される第1の電界によって制御可能である。複数の第2の粒子の分布は、光透過要素を透過する、実質的に可視光に対応する第2の波長範囲内の光の量を主に制御するために、壁部材に対して平行な平面に付与される、第1の電界とは異なる第2の電界によって制御可能である。
【0007】
本発明のコンテキストでは、「赤外光」との用語は、約700ナノメートル〜約2.5ミリメートルの範囲内の波長を有する電磁放射線を示すために用いられ、「可視光」との用語は、約400ナノメートル〜約700ナノメートルの範囲内の波長を有する電磁放射線を示すために用いられる。「実質的に」との副詞は、第1の波長範囲と第2の波長範囲との間に多少の重なりがあり得ることを示すために用いられる。例えば、赤外光の波長範囲は650ナノメートルの下限を有し、可視光の波長範囲は750ナノメートルの上限を有してもよい。これらの波長範囲の多少の重なりは、本発明を決して制限せず、したがって本発明の範囲を限定するものではない。
【0008】
本発明は、赤外光及び可視光に対応する別々の波長範囲の光が、それぞれ別々のタイプの粒子によって制御(例えば、遮断)され得るという理解に基づく。粒子は、例えば電界が付与される平面において平行移動されるといったように粒子が操作され得るような特性を有する。本発明の光透過要素では、複数の第1の粒子が赤外線を主に制御し、複数の第2の粒子が可視光を主に制御する。言い換えると、光透過要素を通る赤外線の透過は、複数の第1の粒子によって主に制御され、光透過要素を通る可視光の透過は、複数の第2の粒子によって主に制御される。本発明のコンテキストでは、「主に」との副詞は、少なくとも約一桁の大きさの差を示すために用いられる。
【0009】
更に、本発明は、別々のタイプの粒子(すなわち第1の粒子及び第2の粒子)が、別々の付与電界によって独立して制御可能であるように、2以上のタイプの粒子が懸濁液中に懸濁され得るという理解に基づく。これにより、懸濁液を通る、ひいては光透過要素を通る、別々の波長範囲の光の透過が、独立して制御され得る。壁部材は、粒子の懸濁液を定位置に保持する。更に、壁部材は、光が粒子の懸濁液に入る前に、光は壁部材のうちの1つを透過するように配置される。
【0010】
本コンテキストでは、略平面の壁部材は、光透過要素が広範囲にわたり湾曲することを除外しない。例えば、壁部材は、壁部材の延在の寸法と比べて大きな曲率半径を有し、したがって局所的に略平面であってもよい。湾曲した光透過要素は、例えば車のフロントガラスで用いられる。
【0011】
懸濁粒子の層に対して平行な平面に付与される電界は、懸濁液の平面における粒子の分布の柔軟な制御を可能にする。例えば、懸濁液の平面において第1の粒子又は第2の粒子を平行移動させることによって、それぞれ赤外光又は可視光の透過を制御することが可能になる。更に、懸濁粒子の層に対して平行な平面に電界を付与することは、電界を生成するための電極が、光透過要素を通って伝播する光を遮断しないように設置されることを可能にする。平面に付与される電界は、例えば壁部材の平面に対して垂直といった他の方向に電界成分があることを除外しない。
【0012】
赤外光及び可視光の透過を独立して制御することは、光透過要素を通る可視光の透過とは無関係に、熱の透過を制御することを可能にする。これにより、少なくとも部分的に可視光を遮断することによって例えば太陽からのグレアを低減させながら、熱は光透過要素を透過するか、光透過要素を通る可視光を許容しながら、熱は少なくとも部分的に遮断されるか、又は、熱(赤外光)及び/若しくは可視光の透過の少なくとも部分的な遮断/許容の任意の他の組合せが可能である。
【0013】
本発明の一実施形態によると、第1の粒子は、第1の波長範囲の光を反射して第2の波長範囲の光を透過させる荷電粒子であり、第2の粒子は、第2の波長範囲の光を吸収して第1の波長範囲の光を透過させる荷電粒子である。電荷を有する粒子を提供することにより、付与電界を通じた粒子の分布の効率的な制御が可能となる。第1の粒子は、当該第1の粒子を第1の波長範囲の光に対して反射性とするが、第2の波長範囲の光に対しては反射性としない特性を有する。同様に、第2の粒子は、当該第2の粒子に第2の波長範囲の光を吸収させるが、第1の波長範囲の光は吸収させない特性を有する。粒子は、有機材料、金属材料、又は半導体材料から形成される。例えば、第1の粒子は、PMMA、アルミニウム、金、銀、チタン、銅、又はスズ酸カドミウムから形成される。PMMAは、実質的に、赤外光に対して反射性(又は吸収性)であるが、可視光が材料を透過することは許容するので、PMMAが有利に用いられる。更に、例えばPMMAから形成される粒子は、例えばPMMA粒子が、赤外線を選択的に反射する特定の大きさの範囲内の大きさを有するように、0.5マイクロメートルよりも大きな適切な大きさを有して好都合に製造され得る。
【0014】
本発明の一実施形態によると、複数の第1の粒子は第1の区画内に配置され、複数の第2の粒子は、透明な壁部材によって第1の区画から分離される第2の区画であって、第1の区画と平行に且つ積み重ねられて配置される第2の区画内に配置される。したがって、第1の粒子及び第2の粒子は、これら粒子が互いに分離されるように配置される。2つの区画は、入射光が第1の区画及び第2の区画のうちの一方の区画(例えば第2の層)を透過する前に、入射光が他方の区画(例えば第1の層)を通過するように、2つの層に積み重ねられる。光の透過を制御するための粒子を別個の層に配置することは、特定の波長範囲のための光制御特性を有する各層を柔軟にデザインすることを可能にする。例えば、より効率的に赤外光の透過を低減させるためには、可視光の透過を低減させる際の効率性と比べて、より厚い層の例えば赤外線制御層を有することが望ましい。
【0015】
本発明の一実施形態によると、第1の粒子は、第1の電界が付与されるときに、第1の粒子の濃度が筐体にわたってより不均一であるようにされ、第1の波長範囲の光の透過率が、付与される第1の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正され、第2の粒子は、第2の電界が付与されるときに、第2の粒子の濃度が筐体にわたってより不均一であるようにされ、第2の波長範囲の光の透過率が、付与される第2の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正される。言い換えると、例えば第1の電界が付与されるとき、第1の粒子は、付与電界のないときと比べて、第1の粒子が筐体内のより小さなボリュームにわたって蓄積されるように再分布される。これにより、第1の波長範囲の光が筐体を透過することが許容される。第1の粒子及び/又は第2の粒子のいずれかの濃度が不均一であるとき、粒子は筐体の延在にわたって均一には広がらない。したがって、不均一な濃度中では、粒子は筐体のボリュームよりも小さなサブボリュームにわたって集められ(蓄積され)る。言い換えると、第1の電界が付与されるとき、第1の粒子間の平均距離が低減する。例えば、第1の粒子は、筐体の端部で蓄積される。同様に、第2の電界が付与されるとき、第2の粒子間の平均距離が低減する。
【0016】
更に、第1(第2)の電界の大きさが増大されるか、又は略平面の筐体の平面における電界が増大されるように電界の方向が変化される場合、第1(第2)の波長範囲の光の透過率は、増大した電界に比例して増大する。更に、第1(第2)の電界の大きさが低減され、ゼロまで減らされるか、又は略平面の筐体の平面における電界成分が低減されるように電界の方向が変化される場合、第1(第2)の波長範囲の光の透過率は、低減した電界に比例して低減する。例えば、電界の大きさが例えば10%だけ変化されるとき、光の透過率は例えば20%、10%、5%、又は例えば第1の粒子及び第2の粒子の懸濁液の特性、並びに/若しくは粒子自体の特性に依存する別の割合だけ変化される。電界と透過率との間の比例関係を決定する特性は、例えば粒子の電荷、すなわち粒子の官能化の強度及び/若しくは極性、並びに/又は粒子を担持する懸濁液中の電荷の強度及び/又は極性である。これにより、付与電界と粒子との間の結合が修正される。
【0017】
本発明の一実施形態では、第1の粒子は、0.5マイクロメートルよりも大きな寸法を有する。赤外光(特に、赤外光の波長の下方範囲内の波長を有する近赤外光)の透過を効率的に制御するために、粒子は約0.5マイクロメートルより大きな寸法を有しなければならない。
【0018】
本発明の一実施形態では、第2の粒子は、400ナノメートルよりも小さな寸法を有する。(例えば曇り又は不透明を引き起こす恐れのある)望ましくない光散乱を回避するために、粒子は大きすぎてはならず、好ましくは可視光の波長よりも小さい。適切な大きさは、400ナノメートルよりも小さく、例えば100ナノメートルである。
【0019】
本発明の一実施形態によると、第2の粒子は、第2の波長範囲の光を吸収して第1の波長範囲の光を透過させる荷電顔料粒子から形成される。斯様な粒子は、例えば、黒色顔料粒子、ダイを封入するシェルを有する粒子、又は透明マトリクス内に埋め込まれる顔料である。赤外光の波長と比べて小さな寸法の第2の粒子のために、複数の第2の粒子を通る赤外光の透過が可能である。
【0020】
本発明の一実施形態によると、光透過要素は、第1の側に空洞を含む第1の基板と、空洞及び第2の基板から筐体が形成されるように第1の基板と接触して配置される第2の基板とを更に含む。言い換えると、本発明の壁部材は、第1の基板が空洞を含む基板である。第2の基板が第1の基板と接触して且つ平行に配置されるとき、空洞は、第2の基板によって封止される場合に、筐体を形成する。基板は、例えばPET又はガラスから形成され、基板を共に保持するために樹脂が用いられる。
【0021】
本発明の一実施形態によると、光透過要素は、可撓性の膜又はフォイルの形式で提供される。膜又はフォイルは、可撓性であり、容易に表面に付着され得るシート材料である。したがって、粒子を含む懸濁液を膜又はフォイルの内部に配置することは、制御可能な光透過特性が望ましい表面に光透過要素を付与することを容易にする。
【0022】
本発明の一実施形態によると、光透過要素は、光学的に透過性の壁部材のうちの少なくとも1つと接触して且つ平行に配置される、剛性の光学的に透過性の支持構造を更に含む。光学的に透過性の支持構造は、例えば建物、車両等に配置される窓である。窓は、ガラス、又は類似の光学的に透過性の材料から形成されるシート材料である。窓は、例えば、建物又は車両の開口に配置されるフレームによって定位置に保持される。本発明による光透過要素を窓の表面に対して平行な平面に配置することは、窓を通る例えば赤外光及び可視光といった様々な波長範囲の光の透過を制御することを可能にする。更に、光透過要素を、例えば膜又はフォイルの形式で、従来の窓の表面に積み重ねることによって、窓の領域の選択的な部分だけが光透過制御特性を有する窓を得ることが可能である。したがって、光が透過する窓の他の部分は、例えば光学的に透明に近いガラスといった窓材料にすぎず、並びに/又は、窓の他の部分は、第1の波長範囲及び第2の波長範囲のうちの1つを主に制御するための制御特性を有してもよい。
【0023】
本発明の一実施形態では、光学的に透過性の支持構造は、電界を生成するためのエネルギを提供するエネルギ生成ユニットを含む。光学的に透過性の支持構造に隣接するか、又はこの内部に配置されるエネルギ生成ユニットによりエネルギが供給されることを可能にすることによって、例えば窓といった光学的に透過性の支持構造と、窓を通る光の透過を制御するためのエネルギを提供するための手段とを含む、単一のユニットが可能となる。これにより、少なくともエネルギ消費の点で環境に優しい自立ユニットが得られる。エネルギを取り入れるユニットは、有利には太陽電池、又は無線電力を受信するための無線周波受信器ユニットである。例えば、無線周波受信器ユニットは、遠隔の送信器から無線電力を受信するアンテナを備える。一実施例では、光透過要素の端部の周囲にコイル状の構造が配置されるか、又は透明導電体が無線周波受信器として用いられる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、光透過要素は、第1の剛性の光学的に透過性の支持構造と、第2の剛性の光学的に透過性の支持構造との間に挟まれる。したがって、光透過要素は、光学的に透過性の支持構造の内部に、ひいては光学的に透過性の支持構造の材料の内部に配置される。光学的に透過性の支持構造は、例えば、ガラス又は類似の材料から形成される窓である。一実施例では、光透過要素は、ガラス等の窓の材料の間に挟まれる。サンドイッチ構造を適用することによって、光透過要素の破損の場合にガラス窓の交換の必要なしに光透過要素が交換されるか、又は破損した窓が光透過要素とは別個に交換され得る。したがって、窓及び光透過要素のメンテナンスが容易になる。
【0025】
本発明の第2の態様によると、光透過要素を通る光の透過を制御する方法であって、光透過要素は、光透過要素を通る光の透過が少なくとも2つの光学的に透過性の壁部材を通じて可能となるように互いに対向して配置される当該壁部材を含む略平面の筐体に封入される、複数の第1の粒子と複数の第2の粒子とを含み、第1の粒子及び第2の粒子は、壁部材に対して平行な平面に付与される電界によって制御可能であり、方法は、第1の粒子の分布が修正されるように第1の電界を付与することを通じて、第1の波長範囲内の光の透過を主に制御するステップと、第2の粒子の分布が修正されるように、第1の電界とは異なる第2の電界を付与することによって、第2の波長範囲内の光の透過を主に制御するステップとを含む、方法が提供される。
【0026】
本発明の一実施形態では、第1の波長範囲の光の透過率が、付与される第1の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正され、第2の波長範囲の光の透過率が、付与される第2の電界の大きさ及び/又は方向に比例して修正される。
【0027】
本発明のこの第2の態様の効果及び特徴は、本発明の第1の態様との関連で上述された効果及び特徴と大部分において同様である。
【0028】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の請求項及び以下の説明を研究するときに明らかになるであろう。当業者は、以下に説明される実施形態以外の実施形態を作り出すために、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の様々な特徴が組み合わされ得ることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態による光透過要素の例示的なアプリケーションを示す。
図2】本発明の実施形態による光透過要素を示す。
図3】本発明の実施形態による光透過要素を示す。
図4A】本発明の実施形態による光透過要素を制御する方法を示す。
図4B】本発明の実施形態による光透過要素を制御する方法を示す。
図5】本発明の実施形態による光透過要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明において、本発明は主に、例えばオフィスビルといった建物に配置される窓を参照して説明される。しかしながら、これは本発明の範囲を決して限定せず、本発明は、車両の窓、又は可視光及び赤外光の透過の制御が望ましい任意の他のアプリケーション等の、他のアプリケーションにも等しく当てはまることに留意されたい。
【0031】
図1は、本発明の実施形態の例示的なアプリケーションを示す。図1は、建物の開口104に配置される窓102を有する建物100を示す。窓は、窓102の材料に対して平行な平面に配置される光透過要素106を含む。光透過要素106は、窓102を通る可視光及び赤外光の透過を、個別に制御する。光透過要素106は、例えば、窓102の表面に取り付けられるフォイルの形式である。
【0032】
図2は、本発明の例示的な実施形態を示す。図2は、第1の壁部材202と第2の壁部材204とを有する光透過要素200を示す。第1の壁部材202と第2の壁部材204とは、例えば第1の壁部材202の外側の方向から入射する光が、第1の壁部材202と第2の壁部材204とを通じて光透過要素200を透過するように、互いに対向して配置される。更に、複数の第1の粒子206及び複数の第2の粒子208が、壁部材202、204によって形成される筐体207内に配置される。第1の粒子の分布は、壁部材202、204に対して平行な平面に電界を付与することによって制御可能である。同様に、第2の粒子の分布は、壁部材202、204に対して平行な平面に第2の電界を付与することによって制御可能である。第1の粒子の分布を制御することによって、光透過要素を透過する、赤外光に対応する第1の波長範囲内の光の量が主に制御される。言い換えると、光透過要素における第1の粒子の分布を変化させることによって、光透過要素を通る赤外光の透過率が主に修正される。同様に、第2の粒子の分布を制御することによって、光透過要素を透過する、可視光に対応する第2の波長範囲内の光の量が主に制御される。一実施例では、第1の粒子は、赤外光に対応する第1の波長範囲の光を反射する官能基化されたPMMA粒子であり、第2の粒子は、可視光を吸収する黒色顔料粒子である。顔料粒子は、黒ではない他の色を有してもよい。一実施形態では、第1の波長範囲及び第2の波長範囲の光の透過率は、壁部材202、204の平面に付与される第1の付与電界及び第2の付与電界の大きさに比例して修正される。第1の粒子206及び第2の粒子208は、分岐鎖アルカン(例えばアイソパー)又は直鎖アルカン(例えばドデカン)等の液体中に懸濁される。
【0033】
図3は、本発明の例示的な実施形態を示す。図3は、互いに対向して配置される第1の壁部材302と第2の壁部材304とを含む、光透過要素300を示す。更に、第1の区画306内に配置される複数の第1の粒子206と、第2の区画308内に配置される第2の粒子208とがある。更に、第2の区画308は、第1の区画306から分離され、第1の区画306と平行に且つ積み重ねられて配置される。更に、第1の区画306と第2の区画308とを分離する光学的に透過性の壁部材310がある。しかし、別の実施例では、第1の区画306と第2の区画308とは、第1の層と第2の層とが、各々の層306、308の中に懸濁されるそれぞれの粒子206、208に対応する制御可能な光透過特性を各々が有する、2つの別個のユニットへと互いに物理的に切り離されるように、2つの壁部材によって分離される。
【0034】
図4A及び図4Bは、図1に示される光透過要素と同様の光透過要素200を透過する光の量を制御する方法を示す。図4A及び図4Bでは、光透過要素200の両側に電極210、212が配置される。電極は、壁部材202、204に対して平行な平面に電界が付与されるように、第1の電極210と第2の電極212との間に延在する電界を生成する。電界を生成するための電力は、太陽電池、又は無線電力を受信するための無線周波受信器ユニット等のエネルギ生成ユニットから提供される。図4Aでは、壁部材202、204の平面に第1の電界が付与される。第1の電界は、第1の粒子206の分布が修正されることを引き起こす。図4Aでは、第1の粒子206は光透過要素200の左側に蓄積され、増大した量の、赤外光に対応する第1の波長範囲の光が、光透過要素200を透過することを許容する。したがって、第1の粒子の濃度は、筐体207にわたって不均一である。同様に、図4Bに示されるように、第2の電界は、第2の粒子208の分布が修正されることを引き起こす。図4Bでは、第2の粒子208は光透過要素200の左側に蓄積され、増大した量の、可視光に対応する第2の波長範囲の光が、光透過要素200を透過することを許容する。したがって、第2の粒子の濃度は、筐体207にわたって不均一である。当然、第1の粒子及び第2の粒子は、第1の粒子及び/又は第2の粒子の分布の変化によって光の透過が修正される限り、光透過要素の任意の側に移動してよい。
【0035】
図5は、本発明の例示的な実施形態を示す。図5は、第1の側に空洞504を含む第1の基板502と、空洞及び第2の基板から筐体207が形成されるように第1の基板502と接触して配置される第2の基板506とを含む、光透過要素500を示す。言い換えると、壁部材202、204は、第1の基板が当該基板の一方側に設置される空洞504を有する基板の形式である。次いで、第1の基板502の空洞504を覆うように第2の基板506が取り付けられ、したがって第2の基板506は、空洞によって第1の基板502と第2の基板506との間に筐体207が形成されるように、第1の基板502と平行に配置される。基板は、例えばPET又はガラスから形成され、基板を共に保持するために樹脂が用いられる。更に、基板は、リソグラフィ工程を通じてSU‐8によって形成される空洞を有するガラスから形成されてもよい。
【0036】
更に、当業者によって、特許請求された発明を実施するにあたり、図面、明細書、及び添付の請求項の研究から、開示された実施形態のバリエーションが理解され達成され得る。例えば、粒子は、有機材料、金属材料、又は半導体材料等の、本明細書に説明された実施例におけるもの以外の材料から形成されてもよい。第1の粒子の例は、PMMA、アルミニウム、金、銀、チタン、銅、又はスズ酸カドミウムである。更に、電界を生成するための電極の位置は例示的であり、粒子が制御され得るように、電界線の少なくとも一部分が壁部材に対して平行な平面に延在する状態で電界が生成される限り、他の位置に設置されてもよい。例えば、電極は壁部材に対して平行な平面に設置されてもよい。更に、壁部材は平面として示されているが、平面に近い形状にすぎない形状を有してもよい。言い換えると、壁部材は、光透過要素の延在の寸法と比べて大きな曲率半径を有する等の、平面に近い湾曲を有してもよい。
【0037】
請求項で、「含む」の文言は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを意味するわけではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5