(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化物半導体層によって覆われた前記ゲート絶縁層の前記第1部分において、前記上層絶縁層の厚さは、25nm以上450nm以下であり、前記下層絶縁層の厚さは、25nm以上500nm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、酸化物半導体層TFTでは、製造プロセス中などに、酸化物半導体層に還元性のガス(例えば水素ガス)が接触すると酸素欠損が生じ、TFTの特性が変化するという問題があった。また、長時間駆動後またはエージング試験後に、酸化物半導体層に外部から水分などが侵入することによってTFT特性が変動することが知られている。具体的には、水分などの侵入によってn型の酸化物半導体層が還元作用を受けると、閾値電圧Vthがマイナス側にシフトし、オフリーク電流が増大したり、デプレッション化(ノーマリオン状態)が生じて表示不良を引き起こすおそれがある。
【0008】
例えば、チャネルエッチ型の酸化物半導体TFTでは、ソース電極とドレイン電極との間において、酸化物半導体層のチャネル領域が保護層(パッシベーション層と呼ばれることもある)によって覆われている。しかし、保護層としてSiN
x膜などを成膜する場合、この工程において水素が酸化物半導体層に拡散してTFTの特性を変動させるという問題があった。また、チャネルエッチ型構造のTFTでは、各層端部で形成される段差が多く、保護層のカバレッジ(段差被覆性)が十分ではなくて、保護層形成後にも酸化物半導体層へのガスや水分の到達を防ぎきれない場合があった。
【0009】
これに対して、酸化物半導体層への水素や水分等の到達を防ぐための種々の方法が検討されている。特許文献2は、酸化物半導体TFT上に設けられる平坦化樹脂膜を覆うように保護膜を設ける構成を開示している。この構成において、吸湿性の高い平坦化樹脂膜(有機感光性樹脂膜など)をSiN
xなどの防湿性の保護膜で覆うことによって、平坦化樹脂膜への水分の侵入を抑制している。また、特許文献2には、液晶層を囲むシール材と平坦化樹脂膜とを重ねないようにこれらを設けることによって、液晶パネルの外部から平坦化樹脂膜に水分が侵入することを抑制する構成が記載されている。これにより、平坦化樹脂膜を介して酸化物半導体層に水分が到達することを抑制している。
【0010】
また、特許文献3および特許文献4には、TFT特性を安定させるために、酸化物半導体層を覆う保護層を組成の異なる2層で形成する技術が記載されており、特に、上層を35〜75nmの窒化シリコン層から形成することが開示されている。特許文献4は、島状に形成された下層の酸窒化シリコン層を、上層の窒化シリコン層(または酸窒化シリコン層)によって側面も含め全体的に覆うことを記載している。
【0011】
しかし、従来の方法では、酸化物半導体TFTのデプレッション化を十分に抑制しきれなかったり、良好な素子特性を得るために製造プロセスが複雑化することによって製造コストの上昇を招いたりするおそれがあった。
【0012】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、酸化物半導体TFTを備える半導体装置において、安定したTFT特性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による一実施形態の半導体装置は、基板と、前記基板に支持された薄膜トランジスタであって、ゲート電極、酸化物半導体層、前記ゲート電極と前記酸化物半導体層との間に形成されたゲート絶縁層、および、前記酸化物半導体層と電気的に接続された、ソース電極およびドレイン電極を有する薄膜トランジスタとを備え、前記ゲート絶縁層は、前記酸化物半導体層によって覆われた第1部分と、前記第1部分と隣接し、前記酸化物半導体層、前記ソース電極および前記ドレイン電極のいずれにも覆われない第2部分とを含み、前記第2部分は前記第1部分よりも薄く、前記第2部分の厚さと前記第1部分の厚さの差が0nm超50nm以下である。
【0014】
ある実施形態において、前記ゲート絶縁層は、前記ゲート電極と接する下層絶縁層と、前記下層絶縁層の上に設けられた上層絶縁層とを含み、前記第2部分における前記上層絶縁層の厚さが、前記第1部分における前記上層絶縁層の厚さよりも小さく、かつ、前記第2部分における前記下層絶縁層の厚さと、前記第1部分における前記下層絶縁層の厚さとが同一である。
【0015】
ある実施形態において、前記ゲート絶縁層は、前記ゲート電極と接する下層絶縁層と、前記下層絶縁層の上に設けられた上層絶縁層とを含み、前記上層絶縁層は、前記第1部分において設けられ、前記第2部分において設けられていない。
【0016】
ある実施形態において、前記上層絶縁層は、シリコン酸化物層であり、前記下層絶縁層は、シリコン窒化物層である。
【0017】
ある実施形態において、前記酸化物半導体層によって覆われた前記ゲート絶縁層の前記第1部分において、前記上層絶縁層の厚さは、25nm以上450nm以下であり、前記下層絶縁層の厚さは、25nm以上500nm以下である。
【0018】
ある実施形態において、前記半導体装置は、前記酸化物半導体層、前記ソース電極およびドレイン電極を覆う保護層をさらに備え、前記保護層は、前記酸化物半導体層の上面と接する下層保護層と、前記下層保護層の上に設けられた上層保護層とを含み、前記下層保護層は、シリコン酸化物層であり、前記上層保護層は、シリコン窒化物層である。
【0019】
ある実施形態において、前記上層保護層の厚さは、25nm以上150nm以下である。
【0020】
ある実施形態において、前記ソース電極および前記ドレイン電極は、前記酸化物半導体層と接する下層電極と、前記下層電極の上に設けられた上層電極とを含み、前記下層電極はTiまたはMoを含み、前記上層電極はCu、AlおよびMoのうち少なくとも1種の金属元素を含む。
【0021】
ある実施形態において、前記酸化物半導体層は、In−Ga−Zn−O系の半導体を含む。
【0022】
ある実施形態において、前記酸化物半導体層は、結晶質部分を含む。
【0023】
ある実施形態において、前記薄膜トランジスタはチャネルエッチ構造を有する。
【0024】
本発明による一実施形態の半導体装置の製造方法は、基板を用意する工程と、基板上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層上に前記ゲート電極と少なくとも部分的に重なる酸化物半導体層を設ける工程と、前記酸化物半導体層上において互いに離間して配置され、それぞれが前記酸化物半導体層と接続されるソース電極およびドレイン電極を形成する工程とを包含し、前記ソース電極およびドレイン電極を形成する工程は、TiまたはMoを含む下層電極膜を堆積する工程と、前記下層電極膜の上に、Cu、AlおよびMoのうち少なくとも1種の金属元素を含む上層電極膜を堆積する工程と、前記上層電極膜上にレジストを設けウエットエッチングによって前記上層電極膜をパターニングする工程と、前記上層電極膜をパターニングした後に、前記レジストを用いてドライエッチングによって前記下層電極膜をパターニングする工程と、前記下層電極膜のパターニングによって露出した前記ゲート絶縁層の上面を、0nm超50nm以下の深さまでさらにドライエッチングする工程とを包含する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による一実施形態によると、配線の低抵抗化を達成しながら、良好な酸化物半導体TFT特性を実現することができる半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態による半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、酸化物半導体TFTを備えている。なお、本実施形態の半導体装置は、酸化物半導体TFTを備えていればよく、アクティブマトリクス基板、各種表示装置、電子機器などを広く含む。
【0028】
(実施形態1)
図1は、それぞれ、液晶表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板(半導体装置)100の1画素に対応する領域における模式的な平面図である。また、
図2(a)および(b)は、
図1に示すa−a’線およびb−b’線に沿った断面を示す。
【0029】
図1、
図2(a)および(b)に示すように、アクティブマトリクス基板100は、基板10上に設けられた酸化物半導体TFT5と、酸化物半導体TFT5を覆う保護層22と、保護層22を覆う平坦化層24と、平坦化層24の上層に設けられ酸化物半導体TFT5に電気的に接続された画素電極30とを備える。酸化物半導体TFT5は、
図1に示すように、水平方向に延びる走査線2と、垂直方向に延びる信号線4とによって駆動される。本実施形態では、走査線2と信号線4とによって囲まれた領域が1画素Pxに対応する。なお、
図1には1画素Pxのみを示しているが、アクティブマトリクス基板100では、複数の画素Pxが水平方向および垂直方向に沿ってマトリクス状に配列されている。
【0030】
本実施形態のアクティブマトリクス基板100は、FFS(Fringe Field Switching)モードで動作する液晶表示装置に用いられ、
図2(a)および(b)に示すように、アクティブマトリクス基板100では平坦化層24の上に共通電極32が設けられている。共通電極32は、層間絶縁層(無機絶縁層)26によって覆われており、画素電極30は、層間絶縁層26上で共通電極32と対向している。
【0031】
画素電極30は、複数の直線状部分(または複数のスリット)を有しており、層間絶縁層26、平坦化層24および保護層22を貫通するように形成されたコンタクトホールCHの底部で、酸化物半導体TFT5に接続されている。一方、共通電極32は、コンタクトホールCHの外側領域まで拡大された開口部を有しており、層間絶縁層26によって画素電極30と絶縁されている。この構成において、画素電極30と共通電極32との間にフリンジ電界を形成することができる。
【0032】
酸化物半導体TFT5は、基板10上に設けられたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うゲート絶縁層20と、ゲート絶縁層20を介してゲート電極12に重なるように設けられた典型的には島状の酸化物半導体層18と、酸化物半導体層18に接続されたソース電極14およびドレイン電極16とを備える。ソース電極14およびドレイン電極16は、酸化物半導体層18上で互いに離間して対向するように設けられている。このように、酸化物半導体TFT5は、チャネルエッチ型(バックチャネルエッチ(BCE))のTFTである。
【0033】
図示するように、「チャネルエッチ型のTFT」では、チャネル領域上にエッチストップ層が形成されておらず、ソースおよびドレイン電極のチャネル側の端部は、酸化物半導体層の上面と接するように配置されている。チャネルエッチ型のTFTは、例えば酸化物半導体層上にソース・ドレイン電極用の導電膜を形成し、ソース・ドレイン分離を行うことによって形成される。ソース・ドレイン分離工程において、チャネル領域の表面部分がエッチングされる場合がある。
【0034】
ゲート電極12は走査線2に接続されており、また、ソース電極14は信号線4に接続されている。
図1に示すように、本実施形態では、垂直方向に延びる信号線4の一部がソース電極14を形成している。ただしこれに限られず、ソース電極14は、信号線4から水平方向に突出するように設けられていてもよい。
【0035】
本実施形態において、ソース電極14およびドレイン電極16は、それぞれ、Cuを含む上層ソース電極14aおよび上層ドレイン電極16aと、酸化物半導体層18と接する下層ソース電極14bおよび下層ドレイン電極16bとを含んでいる。以下、上層ソース電極14aおよび上層ドレイン電極16aをまとめて上層電極、下層ソース電極14bおよび下層ドレイン電極16bをまとめて下層電極と呼ぶことがある。また、ソースおよびドレイン電極14、16をまとめて、SD電極と呼ぶことがある。
【0036】
上層電極は、Cu、AlおよびMoのうち少なくとも1種の金属元素を含んでいてもよい。上層電極は、例えば、Cuを主成分として含む層であってよく、不純物を略含まないCu層(純度99.99at%以上のCuからなる層)や不純物を含むCu層(例えば、90at%以上のCuを含む層)、あるいは、Cu合金層(例えば、CuCa系合金層)であってよい。導電性の高いCuを主成分とする上層電極を形成することによって、抵抗を小さくすることができる。このため、アクティブマトリクス基板100を表示装置に用いた場合に、データ信号の遅延やなまりによる表示品位の低下を抑制することができる。なお、上層電極は、Alを主成分とする層(例えばAl層)、Moを主成分とする層(例えばMo層)であってもよい。
【0037】
一方、下層電極は、例えば、TiやMoなどから形成されていてよい。このように、下層電極を設けることによって、酸化物半導体層18とSD電極とのコンタクト抵抗を低減できる。
【0038】
ただし、これに限られず、上層電極および下層電極は、種々の構成を有していてよい。例えば、上記には上層電極/下層電極をCu/Tiとする2層電極構造を例示したが、上層から順にTi/Al/Tiの3層構造を有していてもよい。ソース電極14およびドレイン電極16の構成例としては、他にも、Cu/Mo、Cu/Mo合金、Cu合金/Cu/Ti、Mo/Cu/Ti、Mo合金/Cu/Ti、Al/Ti、Mo/Al/Mo、Mo/Al/Tiなどがあげられる。上記のCu合金は、例えば、CuCa系合金、CuMgAl系合金、またはCuMn系合金などであってよい。また、上記のMo合金は、例えば、MoNiNb系合金であってよい。また、酸化物半導体層18と接する最下層の電極層は、TiN、Ti酸化物などを含んでいてもよい。
【0039】
なお、ゲート電極12も、SD電極と同様に、Cu/Ti積層構造を有していてもよい。SD層(信号線4、ソース電極14およびドレイン電極16を含む層)と、ゲート層(走査線2およびゲート電極12を含む層)とを同様の構成にすれば、製造プロセスを簡素化できるという利点が得られる。
【0040】
酸化物半導体層18に含まれる酸化物半導体は、アモルファス酸化物半導体であってもよいし、結晶質部分を有する結晶質酸化物半導体であってもよい。結晶質酸化物半導体としては、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体などが挙げられる。また、結晶質酸化物半導体は、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質酸化物半導体などであってもよい。
【0041】
酸化物半導体層18は、2層以上の積層構造を有していてもよい。酸化物半導体層18が積層構造を有する場合には、酸化物半導体層18は、非晶質酸化物半導体層と結晶質酸化物半導体層とを含んでいてもよい。あるいは、結晶構造の異なる複数の結晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。酸化物半導体層18が上層と下層とを含む2層構造を有する場合、上層に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップは、下層に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。ただし、これらの層のエネルギーギャップの差が比較的小さい場合には、下層の酸化物半導体のエネルギーギャップが上層の酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きくてもよい。
【0042】
非晶質酸化物半導体および上記の各結晶質酸化物半導体の材料、構造、成膜方法、積層構造を有する酸化物半導体層の構成などは、例えば特開2014−007399号公報に記載されている。参考のために、特開2014−007399号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0043】
酸化物半導体層18は、例えば、In、GaおよびZnのうち少なくとも1種の金属元素を含んでもよい。本実施形態では、酸化物半導体層18は、例えば、In−Ga−Zn−O系の半導体を含む。ここで、In−Ga−Zn−O系の半導体は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)の三元系酸化物であって、In、GaおよびZnの割合(組成比)は特に限定されず、例えばIn:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:2等を含む。このような酸化物半導体層18は、In−Ga−Zn−O系の半導体を含む酸化物半導体膜から形成され得る。なお、In−Ga−Zn−O系の半導体を含む活性層を有するチャネルエッチ型のTFTを、「CE−InGaZnO−TFT」と呼ぶことがある。
【0044】
In−Ga−Zn−O系の半導体は、アモルファスでもよいし、結晶質でもよい。結晶質In−Ga−Zn−O系の半導体としては、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質In−Ga−Zn−O系の半導体が好ましい。
【0045】
なお、結晶質In−Ga−Zn−O系の半導体の結晶構造は、例えば、上述した特開2014−007399号公報、特開2012−134475号公報、特開2014−209727号公報などに開示されている。参考のために、特開2012−134475号公報および特開2014−209727号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。In−Ga−Zn−O系半導体層を有するTFTは、高い移動度(a−SiTFTに比べ20倍超)および低いリーク電流(a−SiTFTに比べ100分の1未満)を有しているので、駆動TFTおよび画素TFTとして好適に用いられる。
【0046】
酸化物半導体層18は、In−Ga−Zn−O系半導体の代わりに、他の酸化物半導体を含んでいてもよい。例えばIn−Sn−Zn−O系半導体(例えばIn
2O
3−SnO
2−ZnO)を含んでもよい。In−Sn−Zn−O系半導体は、In(インジウム)、Sn(スズ)およびZn(亜鉛)の三元系酸化物である。あるいは、酸化物半導体層18は、In−Al−Zn−O系半導体、In−Al−Sn−Zn−O系半導体、Zn−O系半導体、In−Zn−O系半導体、Zn−Ti−O系半導体、Cd−Ge−O系半導体、Cd−Pb−O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg−Zn−O系半導体、In−Ga−Sn−O系半導体、In−Ga−O系半導体、Zr−In−Zn−O系半導体、Hf−In−Zn−O系半導体などを含んでいてもよい。
【0047】
本実施形態のアクティブマトリクス基板100において、ゲート絶縁層20は、下層絶縁層20bと、下層絶縁層20b上に設けられた上層絶縁層20aとを含む積層構造を有している。下層絶縁層20bの下面は、基板10やゲート電極12などと接している。一方、上層絶縁層20aの上面は、酸化物半導体層18やSD電極と接している。
【0048】
下層絶縁層20bは、例えば、SiN
xやSiN
xO
y(x>y)から形成されていてよい。また、上層絶縁層20aは、例えば、SiO
2やSiO
xN
y(x>y)から形成されていてよい。酸化物半導体層18と接する上層絶縁層20aとして、酸素を含む層(例えばSiO
2などの酸化物層)を用いると、酸化物半導体層に酸素欠損が生じた場合にも、酸化物層に含まれる酸素によって酸素欠損を回復することが可能となる。
【0049】
ここで、
図2(a)に示すように、上層絶縁層20aは、酸化物半導体層18で覆われている第1部分20a1と、第1部分20a1と隣接し、酸化物半導体層18で覆われていない第2部分20a2とを含んでいる。第1部分20a1は、第2部分20a2よりも厚く形成されている。このように厚さが異なる第1部分20a1および第2部分20a2が形成されている理由は、後述するように、ソース電極14およびドレイン電極16を形成する工程(以下、SD電極形成工程と呼ぶことがある)においてパターニングのために導電膜のエッチングが進行すると、下地となるゲート絶縁層20が露出する部分もあり、この部分においてゲート絶縁層20の表面もエッチング(オーバーエッチ)されるからである。より具体的には、
図9(a)に示すように、上記のSD電極形成工程において、酸化物半導体層18(またはソース電極14、ドレイン電極16を形成するためのレジスト)で覆われていない第2部分20a2の一部または全部が選択的にエッチングされ、酸化物半導体層18などで覆われている第1部分20a1はエッチングされない。その結果、第2部分20a2は第1部分20a1よりも薄く形成されている。
【0050】
上層絶縁層20aにおける第1部分20a1と第2部分20a2との厚さの差Δt(
図2(a)、
図9(a)参照:以下、段差Δtと呼ぶことがある)は、0nm超50nm以下の範囲に設定されている。この段差Δtは、SD電極形成工程において、露出した第2部分20a2をエッチングしたときのエッチング量に対応する。
【0051】
なお、
図2(a)には、第2部分20a2において薄層化された上層絶縁層20aが残存する形態を示しているが、これに限られない。上層絶縁層20aは、第1部分20a1(すなわち、酸化物半導体層18、ソース電極14、ドレイン電極16のいずれかによって覆われている部分)においてのみ選択的に形成され、第1部分20a1の外側では上層絶縁層20aが設けられておらず、下層絶縁層20bが露出する形態であってもよい。これは、上記のSD電極形成工程において、第2部分20a2における上層絶縁層20aをエッチングにより完全に除去したときの形態に対応する。
【0052】
なお、上層絶縁層20aは厚さの異なる第1部分20a1と第2部分20a2とを含んでいるが、下層絶縁層20bの厚さは全体で略同じ一定の厚さであってよい。第1部分20a1における上層絶縁層20aの厚さは、25nm以上450nm以下であってよく、下層絶縁層20bの厚さは、25nm以上500nm以下であってよい。これらの厚さは、SD電極形成工程を行う前における上層絶縁層20aと下層絶縁層20bの厚さを意味している。
【0053】
ゲート絶縁層20において、第1部分20a1と第2部分20a2との境界に形成される段差Δtが0nm超50nm以下と比較的小さい場合、段差Δtを形成する側面は比較的垂直に近い角度で形成され、少なくとも下側が内に向かって傾斜する(逆テーパ状になる)ことはない。このことによって、その上層に形成される保護層22のカバレッジが向上する。
【0054】
上記の段差Δtが50nmを超える場合、例えば、下層絶縁層20bのサイドエッチングが進行することによって、酸化物半導体層18のアウトラインの内側に下層絶縁層20bの側面が入り込むことがある。この場合には、保護層22を設けたときに隙間が生じることがあり、カバレッジが低下することによって、酸化物半導体層18に水素や水分が到達しやすくなる。一方で、段差Δtが小さすぎる場合、ソース−ドレイン電極の分離が十分に行われず、酸化物半導体層18のチャネル領域上に導電層の残渣が生じる場合がある。このため、段差Δtがある程度の大きさであることが、適切なTFT特性を実現するためには好ましい。この観点からは、段差Δtは、5nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。
【0055】
また、本実施形態のアクティブマトリクス基板100において、保護層22は、下層保護層22bと上層保護層22aとを含んでいる。下層保護層22bは、例えば、SiO
2やSiO
xN
y(x>y)から形成されていてよく、上層保護層22aは、例えば、SiN
xやSiN
xO
y(x>y)から形成されていてよい。
【0056】
ここで、上記のようにゲート絶縁層20の段差Δtの大きさが適切な範囲にあれば、ソース電極14とドレイン電極16とを適切に分断し、これら電極の間に残渣となる導電材料を残すことなく、保護層22の十分なカバレッジが確保できる。したがって、酸化物半導体TFT5の特性を安定させることができる。
【0057】
以下、
図3等を参照しながら、アクティブマトリクス基板100の製造工程を説明する。
【0058】
まず、
図3(a1)、(a2)に示すように、基板10上に、ゲート電極12および走査線2を含むゲート層を形成する。基板10としては、例えばガラス基板、シリコン基板、耐熱性を有するプラスチック基板(樹脂基板)などを用いることができる。
【0059】
なお、
図3(a1)には、
図3(a2)に示すa−a’線に沿った断面が示されている。以下、
図3(b1)〜(d1)、(b2)〜(d2)についても同様である。
【0060】
ゲート電極12および走査線2は、例えばガラス基板10上に、スパッタ法などによって、金属膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成し、これをパターニングすることによって形成される。パターニングは、フォトリソグラフィ法を適用してウェットエッチングによって行うことができる。
【0061】
金属膜として、本実施形態では、Ti(厚さ5〜100nm)膜とCu膜(厚さ100〜500nm)とをこの順に積層したCu/Ti膜を設ける。ただし、金属膜の材料は特に限定されず、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属又はその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。
【0062】
次に、
図3(b1)、(b2)に示すように、ゲート電極12および走査線2を覆うゲート絶縁層20を形成し、その後、ゲート絶縁層20を介してゲート電極12と少なくとも部分的に重なる典型的には島状の酸化物半導体層18を形成する。
【0063】
ゲート絶縁層20を得るために、まず、基板10からの不純物等の拡散防止のために例えば厚さ25〜500nmのSiN
x膜を形成し、その上に、例えば厚さ25〜450nmのSiO
2膜を形成する。これにより、SiN
xから形成される下層絶縁層20bおよびSiO
2から形成される上層絶縁層20aを含むゲート絶縁層20が得られる。
【0064】
また、酸化物半導体層18は、酸化物半導体膜(例えば厚さ30nm以上200nm以下)をスパッタ法によって成膜し、これをパターニングすることによって形成することができる。なお、スパッタリングにおけるターゲットの材料を変更することによって、互いに異なる組成を有する多層構造の酸化物半導体膜を形成してもよい。多層構造の酸化物半導体膜において、上層におけるガリウム原子比率が下層におけるガリウム原子比率よりも大きくなるように、組成を調節してもよい。酸化物半導体膜を設けた後のパターニングでは、フォトリソグラフィ法を利用してレジストを設け、ウェットエッチングによって、レジストで覆われていない領域をエッチングする。その後、レジスト剥離工程および洗浄工程が行われる。
【0065】
その後、
図3(c1)、(c2)に示すように、上層電極および下層電極を含むSD層を形成するための金属膜15’を堆積する。
【0066】
この工程では、まず、スパッタ法によりTi膜(下層金属膜15b’)を厚さ5〜100nmで形成し、続いて、Cu膜(上層金属膜15a’)を厚さ100〜500nmで形成する。次に、形成したCu/Ti膜上に、フォトリソグラフィ法によってレジストを設ける。
【0067】
レジストを設けた状態で、まず、上側のCu膜15a’を例えばウェットエッチングすることによって上層電極を形成する。エッチング液としては、例えば、過酸化水素H
2O
2を含むエッチャントを用いることができる。ここで、ウェットエッチングは等方性エッチングであるので、レジストで覆われていたCu膜の一部もエッチング(サイドエッチ)されてもよい。
【0068】
次に、下層のTi膜15b’を例えばドライエッチングすることによって、下層電極を形成する。これにより、
図3(d2)に示すように、酸化物半導体層18上で分離されたソース電極14およびドレイン電極16が形成される。
【0069】
ここで、
図3(d1)に示すように、本実施形態では、下層電極のエッチングを行うときに、その下地層となる上層絶縁層20aの一部もエッチングされる。より具体的には、上層絶縁層20aは、0nm超50nm以下の深さまでエッチングされる。上層絶縁層20aのエッチングは、下層電極のエッチング時間を長くすることによって実行される。
【0070】
ここで、
図9(a)に示すように、SD電極形成におけるエッチング工程では、酸化物半導体層18、および、ソース電極14とドレイン電極16とを覆うレジストなどによって覆われていない第2部分20a2において選択的にエッチングが進行する。一方で、酸化物半導体層18、および、ソース電極14とドレイン電極16とを覆うレジストによって覆われている第1部分20a1では上層絶縁層20aのエッチングが進行しない。その結果、上層絶縁層20aの厚さに、第1部分20a1と第2部分20a2とで差Δtが生じる。
【0071】
また、このエッチングは、第2部分20a2における上層絶縁層20aが完全に除去され、下層絶縁層20bが露出するまで行われて良い。ただし、本実施形態では、下層絶縁層20bが露出してからはエッチングを行わない。これは、
図9(b)に示すように、下層絶縁層20bがエッチングされると、下層絶縁層20bの第1部分20b1と第2部分20b2との境界において、下層絶縁層20bの側面が、逆テーパに形成されるおそれがあるからである。
【0072】
このようにして第1部分20b1と第2部分20b2との境界(酸化物半導体層18の周縁)において酸化物半導体層18の内側に彫り込まれた部分がゲート絶縁層20に形成されていると、これらを覆うように保護層22を形成したとしても、カバレッジが低下し、隙間などが生じてしまう場合がある。
【0073】
図4(a)は、SD層(Cu/Ti層)のエッチング工程において、ゲート絶縁層20の下層絶縁層20bまでエッチングが進行した時の比較例(
図9(b)に対応)を示す断面図である。特に、上層絶縁層20aがSiO
2から形成されており、下層絶縁層20bがSiN
xから形成されている場合、エッチングレートがSiN
x>SiO
2であるので、下層絶縁層20bのエッチングが進行しやすく、SiO
2の下側に彫り込まれるようにエッチングが進行して、側面が逆テーパ形状となることがある。このような状態が生じることを防止するためには、
図4(b)に示す本実施形態のように、オーバーエッチ量(段差Δx)を、上層絶縁層20aの厚さ以下となるように制御することが好ましい。
【0074】
また、
図4(c)に比較例として示すように、SiO
2から形成される上層絶縁層20aの厚さが例えば100nm程度と比較的厚い場合や、ゲート絶縁層20をSiO
2の単層(例えば厚さ200nm)で形成する場合もある。ただし、これらの場合であっても、オーバーエッチ量が50nmを超えると、境界部において逆テーパの側面が形成されてしまう場合がある。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁層20のオーバーエッチ量を上層絶縁層20aの厚さ以下にし、かつ、その量(段差Δt)を50nm以下にすることによって、保護層22のカバレッジを向上させている。
【0075】
図5(a)および(c)は、
図4(a)に示した比較例のように下層絶縁層20bまでエッチングが進行した時に下層保護層22bおよび上層保護層22aを設けたときの形態を示し、
図5(b)および(d)は、
図4(b)に示した本実施形態のように、上層絶縁層20aの途中までエッチングが進行した状態で、下層保護層22bおよび上層保護層22aを設けたときの形態を示す。
【0076】
図5(a)に示すように、上層絶縁層20aと下層絶縁層20bとの境界(酸化物半導体層18の周辺部分)で隙間20xが生じていると、その上に形成される下層保護層22bとしてのSiO
2膜にも隙間が生じるおそれがある。また、
図5(c)に示すように、その後に上層保護層22aとしてのSiN
x膜を設けたときにも隙間が生じるおそれがある。この場合、保護層22のカバレッジが低いために、エージング試験において平坦化層24を介して酸化物半導体層18に水分が侵入して、TFT5をデプレッション化させるおそれがある。また、上層保護層22a(SiN
x膜)を形成する工程において発生した水素が酸化物半導体層18に到達し、TFT5をデプレッション化させるおそれがある。なお、上層保護層22aの膜厚を大きくすれば、隙間20xに連通する隙間をカバーすることができるが、上層保護層22aからの脱離水素量が多くなるという問題がある。このため、上層保護層22aを厚くしすぎることも好ましくなく、上層保護層22aは例えば25nm以上150nm、さらに好ましくは75nm以下の厚さに形成されていてよい。
【0077】
一方、
図5(b)および(d)に示す本実施形態のように、上層絶縁層20aの途中までエッチングが進行し、下層絶縁層20bまでエッチングが達していない場合、その上に設けられる下層保護層22bおよび上層保護層22aのカバレッジが良好である。このため、平坦化層24を介して酸化物半導体層18に水分が到達することが防止され、TFT特性の変動を抑制することができる。また、上層保護層22aをSiN
x膜から形成する場合にも、上記のように25nm以上75nm以下の適切な厚さに形成してもよく、上層保護層22aを形成する工程において発生した水素が酸化物半導体層18に侵入することによってTFT5がデプレッション化することを防止できる。
【0078】
なお、保護層22は、上記に限らず、例えば、下層保護層22bとしてのSiO
2膜を厚さ100〜400nmでCVD法によって形成し、次に、上層保護層22aとしてのSiN
x膜、SiO
xN
y膜、SiN
xO
yを厚さ20〜200nm(好ましくは35〜75nm)でCVD法によって形成することによって得られてもよい。
【0079】
なお、
図3(d1)、(d2)に示したようにソース電極14およびドレイン電極16を形成した後、保護層22を設ける前に、酸素を含むガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。これにより、ソースおよびドレイン電極14、16の間で露出する酸化物半導体層18の酸素濃度を高めることができる。より具体的には、例えば、N
2Oガス流量:3000sccm、圧力:100Pa、プラズマパワー密度:1W/cm
2、処理時間:200〜300sec、基板温度:200℃でN
2Oプラズマ処理を行ってもよい。なお、酸化処理は、N
2Oガスを用いたプラズマ処理に限定されない。例えばO
2ガスを用いたプラズマ処理、オゾン処理などによって酸化処理を行うことができる。工程数を増加させずに処理をするためには、後述する保護層22の形成工程の直前に行うことが望ましい。具体的にはCVD法で保護層22を形成する場合であれば、N
2Oプラズマ処理を行えばよく、スパッタ法で保護層22を形成する場合にはO
2プラズマ処理を行えばよい。もしくは、アッシング装置でのO
2プラズマ処理により酸化処理を行っても良い。
【0080】
その後、
図2(a)および(b)に示したように、酸化物半導体TFT5を覆う保護層22の上に平坦化層24を設ける。平坦化層24は、例えば有機絶縁層であってもよい。平坦化層24は、例えば厚さ1〜3μmのポジ型の感光性樹脂膜を設け、コンタクトホールCHに対応する開口部を形成することによって得られる。
【0081】
その後、
図2(a)および(b)に示したように、共通電極32を平坦化層24上に形成する。共通電極32は、例えば次のようにして形成される。まず、平坦化層24上に例えばスパッタ法によって透明導電膜(図示せず)を形成し、透明導電膜をパターニングすることによって、透明導電膜に開口部を形成することで得られる。パターニングには、公知のフォトリソグラフィを用いることができる。また、透明導電膜に形成する開口部は、平坦化層に設けられた開口部の外側まで広がるように設けられる。
【0082】
透明導電膜としては、例えばITO(インジウム・錫酸化物)膜(厚さ:50nm以上200nm以下)、IZO膜やZnO膜(酸化亜鉛膜)などを用いることができる。
【0083】
その後、
図2(a)および(b)に示したように、共通電極32上に層間絶縁層26を設ける。層間絶縁層26は、コンタクトホールCHの側面を覆うように形成されていてもよい。層間絶縁層26は、例えば酸化珪素(SiO
2)膜、窒化珪素(SiNx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)膜等(例えば厚さ100〜400nm)などをCVD法によって形成することによって得られてよい。
【0084】
また、層間絶縁層26を設けた後に、コンタクトホールCHの底部における保護層22および層間絶縁層26をエッチングしてドレイン電極の延長部16’を露出させる。
【0085】
その後、
図2(a)および(b)に示したように、画素電極30を形成する。画素電極30は、コンタクトホールCH内および層間絶縁層26上に、例えばスパッタ法により透明導電膜(図示せず)を形成し、これをパターニングすることによって得られる。画素電極30は、
図1に示したような複数のスリット(または細長電極部分)が設けられた平面形状を有していてもよいし、櫛型の平面形状を有していてもよい。
【0086】
画素電極30を形成するための透明導電膜としては、例えばITO(インジウム・錫酸化物)膜(厚さ:50nm以上150nm以下)、IZO膜やZnO膜(酸化亜鉛膜)などを用いることができる。
【0087】
以上の工程によってアクティブマトリクス基板100が作製される。さらに、
図6に示すように、上記のように形成されたアクティブマトリクス基板100を用いて液晶パネル1を作製することができる。液晶パネル1は、アクティブマトリクス基板100と、これに対向する対向基板50との間に液晶層40を設けることによって作製される。液晶層40は、シール材42によって囲まれている。また、本実施形態の液晶パネル1では、シール材42の中にはスペーサ44が配置されていてよい。
【0088】
図6に示す液晶パネル1では、スペーサ44によって層間絶縁層26に亀裂が入り、水分が平坦化層24に侵入した場合であっても、カバレッジが良好な保護層22によって酸化物半導体TFT5へのへの水分侵入を防ぐことができる。したがって、酸化物半導体TFT5のデプレッション化を防ぐことができる。
【0089】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2によるアクティブマトリクス基板(半導体装置)を説明する。本実施形態のアクティブマトリクス基板200は、層間絶縁層26および共通電極32を有していない点で実施形態1のアクティブマトリクス基板100と異なっている。その他の構成については、実施形態1と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0090】
図7に示すように、本実施形態では、層間絶縁層26および共通電極32を設けずに、平坦化層24上に画素電極30を設けている。この構成において、シール材42から平坦化層24に水分侵入が発生するが、保護層22のカバレッジが良好であるので、酸化物半導体TFT5のデプレッション化を防止することができる。
【0091】
なお、上記のように共通電極32を設けないアクティブマトリクス基板は、VA(Vertical Alignment)モードで動作する液晶表示装置に用いられるものであってよい。この場合、画素電極30は、走査線2と信号線4とで囲まれた矩形領域の全体に広がる形状を有していてもよい。また、補助容量を得るために、走査線2と同層においてゲート絶縁層20を介してドレイン電極16と対向するように補助容量電極が設けられていてもよい。
【0092】
また、
図7に示す形態は、IPS(In−Plane−Switching)モードで動作する液晶表示装置に用いられるものであってもよい。この場合、画素電極30および共通電極32の双方が平坦化層24上に設けられていてよい。画素電極30と共通電極32は、典型的には櫛形の平面形状を有し、互いの櫛歯が噛み合うように配置される。
【0093】
なお、
図7に示したように、シール材42によって平坦化層24の側面を覆う構成を採用することによって、額縁領域を狭くすることができる。また、本構成では、シール材42の下にゲートモノリシック回路等に含まれる駆動回路用TFTを設ける場合にも、平坦化層24がTFTを覆っているので、シール内に配置されたスペーサ44がTFTを直接的に破壊することが防止される。本実施形態では、保護層22のカバレッジを向上させて平坦化層24を介して外部から侵入する水分が酸化物半導体層18に到達するのを防止しているので、上記のように平坦化層24の端面をシール材42で覆う構成を採用することができる。
【0094】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3によるアクティブマトリクス基板(半導体装置)300を説明する。本実施形態のアクティブマトリクス基板300は、実施形態1と同様の構成を有しているが、ゲート絶縁層20に逆テーパ部を設けないだけでなく、SD層および酸化物半導体層18の周縁部を順テーパ状に形成し、これによって保護層22のカバレッジをより向上させている。
【0095】
本実施形態では、
図8(a)および(b)において丸印で囲んだ、ソース電極14およびドレイン電極16のエッジおよび酸化物半導体層18のエッジが順テーパ形状を為している。このように金属層または絶縁層を積み重ねて構成される酸化物半導体TFT5において、逆テーパ部分をなくすことによって、保護層22のカバレッジを高めることができる。なお、
図8(c)に示すように、順テーパとは、側面において、基板垂直面と斜面とが交わるような形態(90°テーパ)を含む。ただし、90°テーパよりも内側に切れ込んだ斜面を有する逆テーパの形態を含まないものとする。
【0096】
また、アクティブマトリクス基板における配線や電極をより低抵抗化するために、ソース配線やゲート配線として、Alよりも電気抵抗率が低いCu(銅)やCu合金(例えば、Cu−Ca系合金や、Cu−Mg−Al系合金)を用いることが知られている。ただし、Cuが半導体層に拡散することによって、素子特性を不安定にする恐れがある。特に、バックチャネルエッチ型のTFTにおいて、CuまたはCu合金をSD層に用いる場合、ソース−ドレイン分離工程やN
2Oプラズマ処理時に酸化物半導体層にCuが拡散しやすい。
【0097】
これに対して、本実施形態のように下層電極のエッジが上層電極のエッジよりも突出するように(すなわち順テーパ状に)設けられていれば、上層電極から酸化物半導体層18へのCuの拡散を抑制することができる。
【0098】
本実施形態のアクティブマトリクス基板300において、下層電極(下層ソース電極14bおよび下層ドレイン電極16b)のエッジは、基板垂直方向から見たときに、上層電極(上層ソース電極14aおよび上層ドレイン電極16a)のエッジの外側に突出するように位置している。言い換えると、上層電極は、下層電極の周縁部を覆わないように下層電極上に積層されている。下層電極のエッジは、面内方向で、例えば0.1μm以上1.0μm以下の距離だけ上層電極のエッジから突出していてよい。また、上記のエッジ間距離Δxは、0.2μm以上0.4μm以下であってもよい。
【0099】
このような構成は、SD電極形成工程において、Cuを主成分とする上層電極をウエットエッチングによってパターニングし、その後、Tiなどを主成分とする下層電極をドライエッチングによってパターニングすることによって容易に実現できる。
【0100】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は種々の他の態様を含んでいてよい。例えば、上記には画素電極に接続される画素用TFTとして用いられる酸化物半導体TFTを説明したが、本発明は、アクティブマトリクス基板にモノリシックに設けられるドライバに含まれるTFTに適用されてもよい。