特許第6427597号(P6427597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特許6427597作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法
<>
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000002
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000003
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000004
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000005
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000006
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000007
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000008
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000009
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000010
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000011
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000012
  • 特許6427597-作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427597
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20181112BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20181112BHJP
   B60R 1/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   E02F9/26 A
   H04N7/18 J
   B60R1/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-567871(P2016-567871)
(86)(22)【出願日】2016年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2016058396
(87)【国際公開番号】WO2016174953
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2017年1月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2015/062910
(32)【優先日】2015年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 正臣
(72)【発明者】
【氏名】栗原 毅
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−076645(JP,A)
【文献】 特開2014−180046(JP,A)
【文献】 特開2013−142228(JP,A)
【文献】 特開2012−046124(JP,A)
【文献】 特開2012−082608(JP,A)
【文献】 特開2011−071919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
H04N 7/18
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
作業機械の周囲状況を取得する複数のカメラと、
前記複数のカメラが撮像した画像をもとに前記作業機械の周囲状況を示す俯瞰画像を生成する画像処理部と、
前記作業機械の動作を検出するための作業機械動作検出部と、
前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または前記俯瞰画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、前記作業機械の動作を検出した場合に、前記俯瞰画像上における前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物を、作業機械の動作を検出する前における俯瞰画像上における前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物よりも拡大させる制御を行うことを特徴とする作業機械の周辺監視装置。
【請求項2】
前記作業機械動作検出部は、操作レバー及び/または走行レバーの操作を検出することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の周辺監視装置。
【請求項3】
前記作業機械の周囲の障害物を検出する複数のレーダを含み、
前記表示制御部は、前記複数のレーダが取得した情報をもとに障害物を検出し、該障害物が存在する場合、前記表示部に障害物情報を表示させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の周辺監視装置。
【請求項4】
前記作業機械に異常が発生したと判断するための異常判断部を備え、
前記異常判断部が作業機械に何らかの異常が発生したと判断した場合に、前記表示制御部は、前記作業機械の動作を検出しても、前記表示部における前記俯瞰画像を拡大しないことを特徴とする請求項1に記載の作業機械の周辺監視装置。
【請求項5】
表示部と、
作業機械の周囲状況を取得する複数のカメラと、
前記複数のカメラが撮像した画像をもとに前記作業機械の周囲状況を示す俯瞰画像を生成する画像処理部と、
前記表示部に、前記俯瞰画像に加え、前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示させる表示制御部と、
前記俯瞰画像上における前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物の拡大を指示する指示部と、を備え、
前記表示制御部は、前記指示部による操作に応じて前記俯瞰画像上における前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物の拡大処理を行うことを特徴とする作業機械の周辺監視装置。
【請求項6】
前記表示部が、遠隔操作席、管制室、または携帯端末に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の作業機械の周辺監視装置。
【請求項7】
表示部と、
作業機械の周囲状況を取得する複数のカメラと、
前記複数のカメラが撮像した画像をもとに俯瞰画像を生成する画像処理部と、
前記作業機械の動作を検出するための作業機械動作検出部と、
前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または前記俯瞰画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、前記作業機械の旋回動作を検出した場合に、前記表示部における前記俯瞰画像の表示領域に表示される前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物を、作業機械の旋回動作を検出する前における俯瞰画像の表示領域に表示される前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物よりも拡大させる制御を行うことを特徴とする作業機械の周辺監視装置。
【請求項8】
作業機械の周囲に設けられた複数のカメラによって周囲の状況を取得し、
前記複数のカメラが撮像した画像をもとに前記作業機械の周囲状況を示す俯瞰画像を生成し、
前記作業機械の動作を検出し、
前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または前記俯瞰画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示部に表示させ、
前記作業機械の動作を検出した場合に、前記俯瞰画像上における前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物を、作業機械の動作を検出する前における俯瞰画像上における前記作業機械および前記作業機械の周囲に表示される対象物よりも拡大させる制御を行うことを特徴とする作業機械の周辺監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を動作させる操作が行われた場合、オペレータによる表示画面操作の煩わしさを低減することができる作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械の分野では、車体の周辺に存在する障害物をオペレータ(運転者)が視認できるように、ミラーに加え、車体後方や車体側方に複数台のカメラを設置しているものがある。そして、カメラが撮像した画像を単カメラ画像として作業機械の運転室内のモニタに映し出している。
【0003】
また、車体の周囲360度を同時に監視できるように、各カメラの画像を上方視点に変換した上で各カメラの画像を合成することにより俯瞰画像を生成してモニタに表示するものがある。そして、俯瞰画像に加えてオペレータが選択したカメラが撮像した単カメラ画像をモニタに表示するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−74929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油圧ショベルの作業機は全周に旋回されるものであるため、油圧ショベルの周囲に障害物が存在する場合、上部旋回体を旋回させた際に作業機が障害物に衝突してしまう可能性がある。そのような衝突を防ぐため、油圧ショベルの周囲360度を俯瞰的に表示する画像をオペレータに提供することは重要である。しかし、俯瞰画像は単カメラ画像を上方視点に変換した画像群を合成したものであり、その画像内に映っている対象物をより詳細に確認するには適していない。そのため、上述したように、同一のモニタ上に、俯瞰画像とともに単カメラ画像が表示されるものもある。そのようなモニタにおいて、俯瞰画像と単カメラ画像とを同時に表示する場合、モニタ画面の大きさに制約があるため、俯瞰画像のみを表示した場合よりも俯瞰画像の画面サイズが小さくなる。俯瞰画像は、複数のカメラ画像を合成して1つの画像としていることから、俯瞰画像が小さいとその画像に映りこんでいる対象物を判別することが困難になるという問題がある。
【0006】
また、油圧ショベルの周囲に障害物が存在する場合、走行や旋回等の動作を行った際に障害物と衝突する可能性が高くなる。そのため、走行レバーや旋回レバーを操作した際に、油圧ショベルの周囲状況を表示することができる俯瞰画像をより大きく表示することが好ましい。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業機械を動作させる操作が行われた場合、俯瞰画像の表示領域を大きくさせ、オペレータによる作業機械の周囲状況を容易にすることができる作業機械の周辺監視装置及び作業機械の周辺監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる作業機械の周辺監視装置は、表示部と、作業機械の周囲状況を取得する複数のカメラと、前記複数のカメラが撮像した画像をもとに前記作業機械の周囲状況を示す俯瞰画像を生成する画像処理部と、前記作業機械の動作を検出するための作業機械動作検出部と、前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または前記俯瞰画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記作業機械の動作を検出した場合に、前記俯瞰画像上における作業機械の周囲を、作業機械の動作を検出する前における俯瞰画像上における作業機械の周囲よりも拡大させる制御を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる作業機械の周辺監視装置は、上記の発明において、前記作業機械動作検出部は、操作レバー及び/または走行レバーの操作を検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる作業機械の周辺監視装置は、上記の発明において、前記作業機械の周囲の障害物を検出する複数のレーダを含み、前記表示制御部は、前記複数のレーダが取得した情報をもとに障害物を検出し、該障害物が存在する場合、前記表示部に障害物情報を表示させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる作業機械の周辺監視装置は、上記の発明において、前記作業機械に異常が発生したと判断するための異常判断部を備え、前記異常判断部が作業機械に何らかの異常が発生したと判断した場合に、前記表示制御部は、前記作業機械の動作を検出しても、前記表示部における前記俯瞰画像を拡大しないことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる作業機械の周辺監視装置は、表示部と、作業機械の周囲状況を取得する複数のカメラと、前記複数のカメラが撮像した画像をもとに前記作業機械の周囲状況を示す俯瞰画像を生成する画像処理部と、前記表示部に、前記俯瞰画像に加え、前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示させる表示制御部と、前記俯瞰画像上における作業機械の周囲の拡大を指示する指示部と、を備え、前記表示制御部は、前記指示部による操作に応じて前記俯瞰画像上における作業機械の周囲の拡大処理を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる作業機械の周辺監視装置は、上記の発明において、前記表示部が、遠隔操作席、管制室、または携帯端末に設けられたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる作業機械の周辺監視装置は、表示部と、作業機械の周囲状況を取得する複数のカメラと、前記複数のカメラが撮像した画像をもとに俯瞰画像を生成する画像処理部と、前記作業機械の動作を検出するための作業機械動作検出部と、前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または前記俯瞰画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記作業機械の旋回動作を検出した場合に、前記表示部における前記俯瞰画像の表示領域を、作業機械の旋回動作を検出する前における俯瞰画像の表示領域よりも拡大させる制御を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる作業機械の周辺監視方法は、作業機械の周囲に設けられた複数のカメラによって周囲の状況を取得し、前記複数のカメラが撮像した画像をもとに前記作業機械の周囲状況を示す俯瞰画像を生成し、前記作業機械の動作を検出し、前記複数のカメラのうち1つもしくは複数のカメラの画像である単カメラ画像、及び/または前記俯瞰画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示を表示部に表示させ、前記作業機械の動作を検出した場合に、前記俯瞰画像上における作業機械の周囲を、作業機械の動作を検出する前における俯瞰画像上における作業機械の周囲よりも拡大させる制御を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、作業機械の動作を検出した場合に、俯瞰画像上における作業機械の周囲を、作業機械の動作を検出する前における俯瞰画像上における作業機械の周囲よりも拡大させる制御を行うようにしているので、オペレータによる表示画面操作の煩わしさを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態である作業機械の周辺監視装置が搭載される油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。
図2図2は、運転室の内部配置を示す図である。
図3図3は、油圧ショベルの制御系全体の構成を示すブロック図である。
図4図4は、俯瞰画像生成部による俯瞰画像の生成処理を説明する説明図である。
図5図5は、カメラの配置を示す側面図である。
図6図6は、カメラの配置を模式的に示した平面図である。
図7図7は、レーダの配置を示す側面図である。
図8図8は、レーダの配置を模式的に示した平面図である。
図9図9は、周辺監視モニタの手動画像切替処理を説明する説明図である。
図10図10は、コントローラによる周辺監視モニタの自動画像切替処理手順を示すフローチャートである。
図11図11は、周辺監視モニタを遠隔操作席に設けた一例を示す図である。
図12図12は、周辺監視モニタを携帯端末に設けた一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
[油圧ショベルの全体構成]
まず、図1は、本発明の実施の形態である作業機械の周辺監視装置が搭載される油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。この油圧ショベル1は、作業機械の一例として示した、鉱山などで使用されるマイニングショベルなどの大型油圧ショベルである。油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回自在に設置された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部中央に屈曲起伏自在に動作する作業機4とを備える。
【0020】
作業機4は、ブーム4a、アーム4b、バケット4c、ブームシリンダ4d,アームシリンダ4e、及びバケットシリンダ4fを有する。ブーム4aの基端部は、上部旋回体3に回転可能に連結される。ブーム4aの先端部は、アーム4bの基端部に回転可能に連結される。アーム4bの先端部は、バケット4cに回転可能に連結される。ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、及びバケットシリンダ4fは、図示しない油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動する油圧シリンダである。ブームシリンダ4dは、ブーム4aを動作させる。アームシリンダ4eは、アーム4bを動作させる。バケットシリンダ4fは、リンク部材を介してバケット4cに連結され、バケット4cを動作させる。バケットシリンダ4fのシリンダロッドが伸縮動作することによってバケット4cが動作する。なお、図1では、バケット4cの開口が旋回中心に向いたバックホウとして機能するが、バケット4cの開口を旋回中心から外側に向けたフロントショベルとして機能させてもよい。
【0021】
上部旋回体3の前部左側部分には、キャブベース5を介して運転室6が設置される。上部旋回体3の後部には、パワーコンテナ7が搭載される。パワーコンテナ7内には、エンジン、油圧ポンプ、ラジエータ、オイルクーラなどが収容されている。上部旋回体3の後端部には、カウンタウェイト8が装着される。上部旋回体3の左側部には、キャブベース5の後方に位置するように昇降ラダー9が配置される。昇降ラダー9は、上部旋回体3に対する運転者や整備作業者の昇降を支援する。
【0022】
[運転席]
図2は、運転室6の内部配置を示す図である。図2に示すように、操作レバー11,12は、運転室6内のオペレータシート10の左右に配置される。操作レバー11は、オペレータがオペレータシート10に着座した時に左手側に配置される。操作レバー12は、オペレータがオペレータシート10に着座した時に右手側に配置される。操作レバー11は上部旋回体3の旋回動作とアーム4bの動作に対応しており、操作レバー11を左右に操作すると上部旋回体3が左右に旋回し、操作レバー11を上下に操作するとアーム4bが前後方向に回動する。操作レバー12はブーム4aの動作とバケット4cの動作に対応しており、操作レバー12を左右に操作するとバケット4cが掘削・排土方向に回動し、操作レバー12を上下に操作するとブーム4aが上下方向に回動する。尚、操作レバー11,12の操作とどの作業機が動作するかの組み合わせは、本実施形態のものには限られない。
【0023】
走行レバー13は、操作に応じて下部走行体2の左側の履帯の前進後進を行うことができる。また、走行レバー14は、操作に応じて下部走行体2の右履帯の前進後進を行うことができる。例えば、走行レバー13のみを操作して左履帯を前進させると、左履帯のみ前進するものの右履帯は停止したままなので、右回りに走行旋回操作することになる。また、走行レバー14のみを操作して右履帯を前進させると、右履帯のみ前進するものの左履帯は停止したままなので、左回りに走行旋回操作することになる。そして、走行レバー13、14を同時に操作すれば左右の履帯が同時に駆動し、油圧ショベル全体が前進後進することになる。
【0024】
また、運転室6の左前のフレームには、周辺監視モニタ15とモニタ16とブザー17とが配置される。周辺監視モニタ15は、タッチパネルで形成される入出力装置であり、少なくとも、複数のカメラによって取得された油圧ショベル1の周囲状況を俯瞰画像及び単カメラ画像として表示することができる。モニタ16は、液晶表示部とキー入力部とを有した入出力装置である。モニタ16は、エンジンや油圧ポンプなどの状態を含む各種情報を表示することができる。例えば、モニタ16は、エンジン水温、油温、燃料の残量等の機械ゲージ表示、油圧ショベルの各種機器にどのような異常が発生しているかといった情報や過去に発生した異常に関する情報などを示す故障情報(異常発生を警告するためのアイコン等を含む)表示、オペレータが各種設定を行うためのメニュー表示などを表示することができる。また、機械ゲージ表示、故障情報表示、メニュー表示のうち、複数の表示項目を一画面に表示するようにしてもよい。
【0025】
ブザー17は、後述する複数のレーダのいずれかによって障害物が検出された場合に、発報する。なお、障害物が検出された場合、この障害物の情報は、上述した周辺監視モニタ15の画像上にも表示される。
【0026】
[制御系の全体構成]
図3は、油圧ショベル1の制御系全体の構成を示すブロック図である。図3に示すように、周辺監視コントローラ40は、車内ネットワークの一つであるCAN41に接続される。CAN41には、通信コントローラ42、モニタコントローラ43、エンジンコントローラ44、ポンプコントローラ45、操作レバー11,12、走行レバー13,14等が接続される。また、周辺監視コントローラ40には、複数のカメラC1〜C7からなるカメラ群C、複数のレーダR1〜R8からなるレーダ群R、周辺監視モニタ15、及びブザー17が接続される。
【0027】
周辺監視コントローラ40は、周辺監視制御を行う。周辺監視コントローラ40は、画像処理部51、障害物処理部52、表示制御部53を有する。さらに画像処理部51は、俯瞰画像生成部54及び画像合成部55を有する。
【0028】
俯瞰画像生成部54は、各カメラC1〜C7から得られた画像をもとに俯瞰画像61を生成する。図4に示すように、俯瞰画像生成部54は、各カメラC1〜C7から得られた画像P1〜P7を上方視点画像に変換する。すなわち、俯瞰画像生成部54は、油圧ショベル1の上方に位置する所定の仮想視点から見た画像に変換する。具体的に、俯瞰画像生成部54は、油圧ショベル1の上方の仮想視点から地表面レベルGLに対応する所定の仮想投影面に投影する画像変換を行う。その後、俯瞰画像生成部54は、俯瞰画像を表示するフレームの各領域E1〜E7に対応する変換画像P11〜P17を切り出し、各変換画像P11〜P17をフレーム内で合成する。俯瞰画像生成部54が生成する俯瞰画像61には、油圧ショベル1の平面図に対応する画像Pが予め貼り付けられている。
【0029】
一方、障害物処理部52は、レーダR1〜R8の情報をもとに障害物を検出する。障害物処理部52は、障害物を検出した場合、ブザー17を鳴動して報知するとともに、検出した障害物の大きさや位置などの障害物に関する情報を画像合成部55に出力する。画像合成部55には、上述した俯瞰画像と各カメラC1〜C7が撮像したカメラ画像とが入力されると共に、障害物処理部52から障害物に関する情報が入力された場合、上述した俯瞰画像及びカメラ画像に障害物情報を合成した画像を生成する。障害物情報は、例えば、図4の領域E4における点A1のような構成でよく、この点A1を俯瞰画像61に合成した上で俯瞰画像を周辺監視モニタ15に表示する。そうすることにより、オペレータは障害物の位置や油圧ショベルからの距離を容易に把握することができる。
【0030】
障害物情報のその他の態様として、例えば、障害物が検出された場合、障害物が存在する俯瞰画像61の領域E1〜E7の外枠あるいは障害物が存在する単カメラ画像62の外枠がブリンク表示(枠線が点滅表示)してもよい。このブリンク表示によってオペレータは障害物が存在すること自体を容易に把握することができる。なお、ブリンク表示に替えて他の強調表示にしてもよい。例えば、枠の太さを変えたり、枠の色を変えたりするようにしてもよい。上記障害物情報は、図4に記載された点A1でもよいし、ブザー鳴動、ブリンク表示、その他障害物の存在をオペレータに強調させて知らせる構成であればどのような構成であってもよい。
【0031】
表示制御部53は、画像合成部55から出力された俯瞰画像を俯瞰画像61として、カメラC1〜C7が撮像した画像のうち選択されたカメラ画像を単カメラ画像62として周辺監視モニタ15に表示する制御を行う。また、表示制御部53には、周辺監視モニタ15への表示制御を行うため、操作レバー11,12や走行レバー13,14等からの操作信号が入力されるようになっている。
【0032】
モニタコントローラ43は、モニタ16に接続される。モニタコントローラ43は、CAN41を介して各種センサから送信された情報や、モニタ16を介して入力された情報といった各種情報の入出力制御を行う。モニタ16は、上述したように、例えば、エンジン水温、油温、燃料の残量、機器の異常などを示す警告情報などを表示することができる。
【0033】
ポンプコントローラ45は、エンジンコントローラ44、モニタコントローラ43、操作レバー11,12、走行レバー13,14等から送信された信号を受信して、図示しない油圧ポンプからの作動油の吐出量を調整するための制御指令の信号を生成する。
【0034】
操作レバー11,12の操作に応じて、コントロールバルブ80により、油圧ポンプと、ブームシリンダ4d,アームシリンダ4e,バケットシリンダ4f,旋回油圧モータ73,油圧走行モータ71,72との間を接続するメインバルブの開口が制御されることにより、ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、バケットシリンダ4f、旋回油圧モータ73を駆動する。また、走行レバー13,14の操作に応じて、コントロールバルブ80により油圧走行モータ71,72を駆動する。なお、操作レバー11,12、走行レバー13,14の操作量は、操作量検出部70によって検出され、電気信号としてポンプコントローラ45に出力される。
【0035】
[カメラの構成と配置]
つぎに、図5及び図6を参照して、各カメラC1〜C7の構成と配置とについて説明する。図5は油圧ショベルの側面図を、図6は油圧ショベル上部旋回体の簡略化した平面図を示している。図6における上部旋回体の左右の端部領域には履帯が表示されるはずであるが、便宜上、左右の履帯を表示せず上部旋回体のみ表示している。すべてのカメラC1〜C7は、上部旋回体3に取り付けられてもよい。例えば、各カメラC1〜C7は、左右方向において120度(左右60度ずつ)、高さ方向において96度の視野範囲を有する。カメラとしてCCD(Charge-Coupled Device)カメラを用いてもよい。
【0036】
図5及び図6に示すように、具体的に、カメラC1は、上部旋回体3の運転室6下部であるキャブベース5の前面に設けられて上部旋回体3の前方を撮像する。カメラC2は、上部旋回体3の右側前方下部に設けられて上部旋回体3の右前方を撮像する。カメラC3は、上部旋回体3の右側側面下部に設けられて上部旋回体3の右後方を撮像する。カメラC4は、上部旋回体3の後方に配置されるカウンタウェイト8の後方下部中央に設けられて上部旋回体3の後方を撮像する。カメラC5は、上部旋回体3の左側側面下部に設けられて上部旋回体3の左後方を撮像する。カメラC6は、キャブベース5の上部左側面に設けられて上部旋回体3の左前方を撮像する。カメラC7は、パワーコンテナ7の下部に設けられ、パワーコンテナ7及びカウンタウェイト8の下部領域を撮像する。隣り合うカメラC1〜C7の撮像範囲はオーバーラップしているため、油圧ショベルの近接位置の外周360度を撮像することができる。
【0037】
[レーダの構成と配置]
つぎに、図7及び図8を参照して、各レーダR1〜R8の構成と配置とについて説明する。すべてのレーダR1〜R8は、上部旋回体3に設けられてもよい。各レーダR1〜R8は、油圧ショベル1の周囲に存在する障害物と油圧ショベル1との相対的な位置(相対位置)と方向とを検出する。例えば、レーダR1〜R8は、図7及び図8に示すように、油圧ショベル1の外周部分に取り付けられる。また、例えば各レーダR1〜R8は、方位(水平)方向80度(±40度)、上下(垂直)方向16度(±8度)の検出角度を有し、検出距離が最大15m以上のUWB(Ultra Wide Band:超広帯域)レーダである。
【0038】
図7及び図8に示すように、具体的に、レーダR1は、上部旋回体3の前部下方左端に設けられて上部旋回体3の左前方の障害物を検出する。レーダR2は、上部旋回体3の前部下方右端に設けられて上部旋回体3の右前方の障害物を検出する。また、レーダR1,R2は、バケット4c等の作業機4を検出しないよう、その設置向きが調整されており、レーダR1,R2の検出領域はオーバーラップしていない。レーダR3は、上部旋回体3の右側方下部に設けられて上部旋回体3の右後方の障害物を検出する。レーダR4は、上部旋回体3の右側側方下部に設けられて上部旋回体3の右前方の障害物を検出する。ここで、レーダR3は、レーダR4に隣接するとともに、レーダR4の位置に対して前方に配置される。そして、レーダR3,R4は、互いに交差するようにレーダ信号を照射することによって、上部旋回体3の右側方全面の障害物を検出する。また、レーダR5は、上部旋回体3のカウンタウェイト8の下部に設けられて上部旋回体3の左後方の障害物を検出する。レーダR6は、カウンタウェイト8の下部に設けられて上部旋回体3の右後方の障害物を検出する。ここで、レーダR5は、レーダR6に隣接するとともに、レーダR6の位置に対して右側に配置される。そして、レーダR5,R6は、互いに交差するようにレーダ信号を照射することによって、上部旋回体3の後方全面の障害物を検出する。また、レーダR8は、上部旋回体3の左側方下部に設けられて上部旋回体3の左前方の障害物を検出する。レーダR7は、上部旋回体3の左側側方下部に設けられて上部旋回体3の左後方の障害物を検出する。ここで、レーダR8は、レーダR7に隣接するとともに、レーダR7の位置に対して後方に配置される。そして、レーダR8,R7は、互いに交差するようにレーダ信号を照射することによって、上部旋回体3の左側方全面の障害物を検出する。
【0039】
[周辺監視モニタの手動画像切替処理]
図9(a)に示した周辺監視モニタ15は、キーオンしたときに最初に表示される初期画面の一例である。図9(a)では、周辺監視モニタ15の表示部の上部領域に俯瞰画像61が表示され、下部領域に単カメラ画像62が表示されている。俯瞰画像61の領域は、単カメラ画像62の領域よりも小さく設定されている。また、周辺監視モニタ15の右下には、アイコンI1が表示されている。表示されている単カメラ画像62は、カメラC4によって撮像された上部旋回体3の後方画像である。アイコンI1は、周辺監視モニタ15に表示されている単カメラ画像62が、カメラC1〜C7の内どのカメラによって撮像された画像であるかを示すものである。図9(a)に示した単カメラ画像62は、後方画像であるため、上部旋回体3の後方位置に対応するアイコンI1の下側領域が塗りつぶされて表示されている。なお、図9(a)に示した俯瞰画像61及び単カメラ画像62では、上部旋回体3の後方にダンプトラックTRが存在している。図9(a)では、ダンプトラックTRが、作業機4が配置される前方から180度の位置であって、外側を向き停車していることがわかる。なお、周辺監視モニタ15は、タッチパネルで構成されている。
【0040】
俯瞰画像61の中心位置には俯瞰画像61と油圧ショベルの位置・方向関係をオペレータが判別しやすくするため、油圧ショベルの平面図が表示されている。その油圧ショベルの一部領域をE11(指示部56)とする。表示制御部53は、周辺監視モニタ15の画面が図9(a)の状態で、領域E11がオペレータによってタッチされると、図9(b)のように俯瞰画像61を拡大して表示するとともに単カメラ画像62を縮小して表示する。また、図9(b)の拡大された俯瞰画像61内の領域E11がタッチされると、図9(a)のように、俯瞰画像61を縮小して表示するとともに単カメラ画像62を拡大して表示する。すなわち、オペレータは領域E11をスイッチとして、図9(a)と図9(b)の周辺監視モニタ15の全体画像を手動切替させることができる。
【0041】
同様に、単カメラ画像62の領域をE10(指示部56)と定義すると、表示制御部53は、周辺監視モニタ15の画面が図9(a)の状態で、領域E10がオペレータによってタッチされると、図9(b)のように単カメラ画像62を縮小して表示するとともに俯瞰画像61を拡大して表示する。また、図9(b)の縮小された単カメラ画像62の領域E10がタッチされると、図9(a)のように単カメラ画像62を拡大して表示するとともに俯瞰画像61を縮小して表示する。図9(b)における俯瞰画像61は、図9(a)における俯瞰画像61と比べ、周辺監視モニタ15における表示領域が拡大している。さらに、図9(b)における俯瞰画像61は、図9(a)における俯瞰画像61と比べ、俯瞰画像61の中心部に表示される油圧ショベルの平面図及び油圧ショベルの後方に停止しているダンプトラックTRが拡大表示されている。すなわち、油圧ショベルの周囲に存在し俯瞰画像61上に表示される対象物が拡大して表示される。
【0042】
本実施例では、領域E10やE11として、俯瞰画像61や単カメラ画像62の領域を用いたが、別途設けたアイコンをタッチしたり物理的なスイッチを切り替えることにより、図9(a)と図9(b)とを手動にて切り替えられるようにしてもよい。なお、物理スイッチは、周辺監視モニタ、コンソール、操作レバー等に設けてもよい。
【0043】
なお、以下で説明する周辺監視モニタの自動画像切替処理により、俯瞰画像61及び単カメラ画像62の大きさや内容を、所定条件のもとに自動で切替処理することができる。
【0044】
[周辺監視モニタの自動画像切替処理]
図10は、周辺監視コントローラ40による周辺監視モニタ15の自動画像切替処理手順を示すフローチャートである。図10における周辺監視モニタ15の初期画面は、キーオン時の画面である図9(a)の画面である。表示制御部53には走行レバー13,14から操作信号が入力される構成になっているので、表示制御部53は、入力される信号に基づき走行レバー13,14による走行操作が行われたか否かを判断する(ステップS101)。走行操作が行われた場合(ステップS101,Yes)、さらに障害物処理部52が障害物を検出したか否かを判断する(ステップS102)。障害物が検出された場合(ステップS102,Yes)、周辺監視モニタ15の画面における単カメラ画像62を、障害物を撮像範囲に含む単カメラ画像62に切り替え(ステップS103)、ステップS101に戻る。
【0045】
一方、障害物が検出されない場合(ステップS102,No)には、俯瞰画像61を拡大する(ステップS104)。なお、この場合、俯瞰画像61の拡大に伴って、単カメラ画像62は縮小する。なお、本実施例では初期画面として俯瞰画像61が小さい状態で説明したが、初期画面として俯瞰画像61が最大になっている場合には、そのままの表示状態を維持する。
【0046】
このように、走行レバーの操作に応じて俯瞰画像61を拡大することによって、オペレータが油圧ショベルの走行時に周囲の障害物を容易に認識することができるようになる。
【0047】
その後、走行レバー13,14による走行旋回操作が右か、左か、無しかを判断する(ステップS105)。走行旋回操作とは、右履帯もしく左履帯の一方のみを前進もしくは後進させることにより、上部旋回体3を旋回させることなく油圧ショベル1全体を旋回させる操作である。この走行旋回操作が右(すなわち、左履帯のみ前進、もしくは右履帯のみ後進)である場合(ステップS105,右)、単カメラ画像62をカメラC5による左後方の画像に切り替えて(ステップS106)、ステップS101に戻る。これは、右旋回時に上部旋回体3の後部(パワーコンテナ7やカウンタウェイト8など)が左方向に旋回するため、オペレータが上部旋回体3の左後方の状況を容易に認識できるようにするためである。また、走行旋回操作が左(すなわち、右履帯のみ前進、もしくは左履帯のみ後進)である場合(ステップS105,左)、単カメラ画像62をカメラC3による右後方の画像に切り替えて(ステップS107)、ステップS101に戻る。さらに、走行旋回操作が無い(すなわち、右履帯および左履帯が共に前進もしくは後進)ある場合(ステップS105,無し)、単カメラ画像62を後方の画像のままとして、ステップS101に戻る。
【0048】
一方、走行操作が行われていない場合(ステップS101,No)、表示制御部53には、操作レバー11,12からも操作信号が入力される構成となっているため、表示制御部53は、入力される信号に基づき操作レバー11,12による上部旋回体3の旋回操作が行われたか否かを判断する(ステップS108)。旋回操作が行われた場合(ステップS108,Yes)、さらに障害物処理部52が障害物を検出したか否かを判断する(ステップS109)。障害物が検出された場合(ステップS109,Yes)には、周辺監視モニタ15の画面における単カメラ画像62を、障害物を撮像範囲に含む単カメラ画像62に切り替え(ステップS110)、ステップS101に戻る。
【0049】
障害物が検出されない場合(ステップS1093,No)には、俯瞰画像61を拡大する(ステップS111)。なお、この場合、俯瞰画像61の拡大に伴って、単カメラ画像62は縮小する。また、初期画面として俯瞰画像61が最大になっている場合は、そのままの表示状態を維持する。
【0050】
その後、旋回操作は、右旋回操作か否かを判断する(ステップS112)。右旋回操作である場合(ステップS112,Yes)には、単カメラ画像62をカメラC5による左後方の画像に切り替えて(ステップS113)、ステップS101に戻る。一方、右旋回操作でない場合(ステップS112,No)、すなわち、左旋回操作である場合、単カメラ画像62をカメラC3による右後方の画像に切り替えて(ステップS114)、ステップS101に戻る。一方、上部旋回体の旋回操作が行われない場合(ステップS108,No)には、単カメラ画像62を後方の画像のままとして、ステップS101に戻る。なお、本実施例では、右旋回操作の場合に左後方画像に切り替え、左旋回操作の場合に右後方画像に切り替えるようにしていたが、旋回操作時に切り替える単カメラ画像の位置は適宜設定してもよい。例えば、旋回時に作業機が障害物に衝突することを事前に判別できるように、右旋回操作時に右前方画像や右後方画像を、左旋回操作時に左前方画像や左後方画像を切替表示するようにしてもよい。また、図10のフローチャートでは、走行操作があるか(ステップS101)、障害物があるか(ステップS102)、走行旋回操作は右、左もしくは無しか(ステップS105)、上部旋回体の旋回操作はあるか(ステップS108)、右旋回であるか(ステップS112)といった分岐を一つのフローチャートに組み込んだもので説明したが、それぞれの分岐が単独のフローチャートにおいて行われてもよいし、これらの分岐を適宜組み合わせてもよい。
【0051】
本実施の形態による周辺監視モニタ15の自動画像切替処理では、操作レバー11,12や走行レバー13,14を用いて油圧ショベル1を動作させる操作が行われた場合、俯瞰画像61を拡大させるようにしているので、油圧ショベル1の操作開始時に、全周を監視できる俯瞰画像61が適切な大きさとなり、オペレータによる手動操作を軽減することができる。また、油圧ショベル1の操作に応じて単カメラ画像を適切なカメラの画像に切り替える制御を行っているので、オペレータによる手動操作を軽減することができる。
【0052】
なお、ロックレバー(作業機、旋回、走行のすべての油圧回路の流路を遮断するレバー)が作動されていたり旋回ロックなどが設定されている駐車時であっても、周辺監視モニタ15の表示画面は維持されるが、レーダR1〜R8によって障害物が検出されても、ブザー17による鳴動や障害物情報の周辺監視モニタ15への表示を行わないようにしてもよい。駐車時に油圧ショベルの周囲に人や車両が存在していた場合に、ブザー17による鳴動や障害物情報が周辺監視モニタに表示されているとオペレータにとって煩わしいからである。
【0053】
また、上述した実施の形態では、俯瞰画像61と単カメラ画像62とが共に表示された状態を前提として説明した。しかし、この実施形態に限らず、俯瞰画像61のみ、もしくは単カメラ画像62のみを周辺監視モニタ15に表示する実施形態でもよい。例えば、単カメラ画像62のみが表示されていた場合、ステップS104,S111による俯瞰画像拡大処理は、俯瞰画像61が表示されていない状態から俯瞰画像61を表示させる処理も含まれる。その場合、俯瞰画像61と単カメラ画像62を両方表示するようにしてもよいし、俯瞰画像61のみを表示するようにしてもよい。俯瞰画像61と単カメラ画像62を両方表示するようにした場合、俯瞰画像61が、単カメラ画像62に比して大きくてもよいし小さくてもよい。なお、俯瞰画像61は、現在の俯瞰画像61よりも拡大すればよく、必ずしも最大表示領域とする必要はない。
【0054】
また、上述の実施形態における周辺監視モニタ15に、機械ゲージ表示、メニュー表示、故障情報表示などを表示させるようにしてもよい。具体的には、俯瞰画像61または単カメラ画像62の代わりに機械ゲージ表示、メニュー表示、故障情報表示を表示させてもよいし、俯瞰画像61、単カメラ画像62に加えてそれらの情報を表示させてもよい(それぞれの情報単独を表示させてもよいし、機械ゲージ表示と故障情報表示といった複数の表示項目を同時に表示させてもよい)。その上で上記実施形態における俯瞰画像61拡大処理を適用してもよい。
【0055】
例えば、機械ゲージ表示、メニュー表示、故障情報表示のいずれかが周辺監視モニタ15に表示されている場合において、操作レバー11,12や走行レバー13,14が操作された際に俯瞰画像が表示されるようになるため、レバー操作前にどのような画面であっても確実に周囲の状況を確認することができる。また、例えば、俯瞰画像に加え、単カメラ画像、及び/または機械ゲージ表示、及び/またはメニュー表示、及び/または故障情報表示が表示されている場合において、操作レバーなどが操作された際に俯瞰画像が拡大して表示されるようになるため、より詳細に周囲の状況を確認することができる。上記2つの例は、手動切替処理の場合であっても同様の効果が奏される。
【0056】
なお自動切替処理のケースでは、ステップS104,S111による俯瞰画像拡大処理により、俯瞰画像61を単カメラ画像や機械ゲージ表示、メニュー表示、故障情報表示に比して大きくするようにしてもよいし小さくてもよい。
【0057】
なお、通信コントローラ42やモニタコントローラ43、エンジンコントローラ44、ポンプコントローラ45には、各種センサと接続されており、そのセンサ検出結果に基づいて油圧ショベルにおける各コンポーネントに異常が発生しているか判断している。そして、各コンポーネントのいずれかに異常が発生している場合には、異常の内容によっては、それ以上の油圧ショベルの運転を継続することが好ましくない。そのため、油圧ショベルに何らかの異常が発生したと判断した場合には、操作レバーなどが操作されたとしても俯瞰画像を拡大表示しないようにしてもよい。
【0058】
加えて、上述した実施形態では、走行操作、旋回操作の場合で説明したが、作業機を操作した場合に同様の拡大処理がなされてもよい。油圧ショベルの周辺に障害物が存在していた場合、オペレータが油圧ショベルの周囲の状況を確認する必要があるためである。
【0059】
よって、請求項に記載された「作業機械を動作させた場合」とは、少なくとも走行操作、旋回操作、作業機操作のいずれかを含んでいる。また、作業機械の動作を検出する手段として、各種操作レバーの操作検出に限らず、例えば操作レバーの操作に伴うアクチュエータ(各シリンダや各油圧モータ)の油圧変化を検出する等してもよい。
【0060】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0061】
前記実施形態では、図9(a)の画面を周辺監視モニタ15の初期画面として説明したが、図9(b)の画面を初期画面に設定してもよい。また、モニタ16とは別に周辺監視モニタ15を設けていたが、本発明はこれに限られず、モニタ16上に俯瞰画像61や単カメラ画像62を表示するように構成してもよい。また、周辺監視モニタ15をタッチパネルディスプレイとして構成していたが、タッチセンサを内蔵しない通常のディスプレイを用いてもよい。
【0062】
前記実施形態では、周辺監視モニタ15上に俯瞰画像61と、単カメラ画像62を同時表示させるように構成していたが、本発明はこれに限られず、俯瞰画像のみや単カメラ画像のみを周辺監視モニタ15上に表示するように構成してもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、タッチパネルディスプレイ60におけるカメラ61〜67で撮像された画像が表示される領域には、カメラ61〜67の内いずれかのカメラで撮像した画像しか表示されないよう構成していたが、同時に二つ以上の画像を表示できるように構成してもよい。また、上述した実施の形態では、上部旋回体3の外周にカメラを7台設けていたが、これよりも少ないカメラの台数で周辺監視装置を構成してもよく、さらにはこれよりも多くのカメラの台数で周辺監視装置を構成してもよい。
【0064】
さらに、上述した実施の形態では、周辺監視装置は、レーダとカメラが協働するように構成していたが、これに限らず、カメラ単独で周辺監視装置を構成してもよい。
【0065】
また、鉱山などで使用されるマイニング用油圧ショベルに基づいて説明したが、建設現場において用いられる油圧ショベルにて本発明を適用してもよい。
【0066】
なお、上記実施形態では油圧ショベルを用いて説明したが、作業機械であれば、ダンプトラック(操作レバーとしてステアリングやアクセルも含む)、ブルドーザー、ホイールローダー(操作レバーとしてステアリングやアクセルも含む)等の作業機械に本発明を適用してもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態では、作業機械の運転席6に周辺監視モニタ15やブザー17を設けた構成で説明したが、その他の場所、例えば、作業機械の遠隔操作を行うための図11に示した遠隔操作席300や、鉱山内にある、複数の作業機械を全体的に管理・統制する管制室内に設けてもよい。また、図11に示した遠隔操作用モニタ301を周辺監視モニタとして用いてもよい。さらに、図12に示すように、周辺監視モニタ15やブザー17を携帯端末302に設け、オペレータが携帯端末302に表示された俯瞰画像などを見るようにしてもよい。ここで、遠隔操作席300や管制室において周辺監視モニタ15に俯瞰画像を表示する場合や、携帯端末302を周辺監視モニタ15やブザー17として用いる場合には、作業機械と、遠隔操作席300・管制室・携帯端末302等のそれぞれに何らかの通信手段を設け、俯瞰画像等の情報の送受信を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
4d ブームシリンダ
4e アームシリンダ
4f バケットシリンダ
4 作業機
5 キャブベース
6 運転室
7 パワーコンテナ
8 カウンタウェイト
9 昇降ラダー
10 オペレータシート
11,12 操作レバー
13,14 走行レバー
15 周辺監視モニタ
16 モニタ
17 ブザー
40 周辺監視コントローラ
42 通信コントローラ
43 モニタコントローラ
44 エンジンコントローラ
45 ポンプコントローラ
51 画像処理部
52 障害物処理部
53 表示制御部
54 俯瞰画像生成部
55 画像合成部
56 指示部
61 俯瞰画像
62 単カメラ画像
63 領域
70 操作量検出部
71,72 油圧走行モータ
73 旋回油圧モータ
80 コントロールバルブ
300 遠隔操作席
301 遠隔操作用モニタ
302 携帯端末
C カメラ群
C1〜C7 カメラ
CT 旋回中心
E1〜E7,E10,E11 領域
GL 地表面レベル
I1 アイコン
P,P1〜P7 画像
P11〜P17 変換画像
R レーダ群
R1〜R8 レーダ
TR ダンプトラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12