(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1外側電極集電部における前記インターコネクタと接触する部分の中央部の厚さは、前記第1外側電極集電部における前記第1外側電極活性部と接触する部分の中央部の厚さよりも薄い、
請求項1から4のいずれかに記載の燃料電池セル。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る燃料電池セルを用いた燃料電池スタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、燃料電池スタック100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル301と、を備えている。
【0018】
[燃料マニホールド]
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガスを各燃料電池セル301に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の貫通孔202を有している。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部とを連通する。
【0019】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。
図4及び
図5に示すように、燃料電池セル301は、複数の発電素子部10と、支持基板20と、複数のインターコネクタ31と、を備えている。
【0020】
[支持基板]
支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、支持基板20の基端側から先端側に向かって延びている。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。なお、基端側とは、ガス流路のガス供給側を意味する。具体的には、燃料マニホールド200に燃料電池セル301を取り付けた場合において、その燃料マニホールド200に近い側を意味する。また、先端側とは、ガス流路のガス供給側とは反対側を意味する。具体的には、燃料電池セル301を燃料マニホールド200に取り付けた場合において、その燃料マニホールド200から遠い側を意味する。例えば、本実施形態の
図2では、下側が基端側であり、上側が先端側となる。
【0021】
図5に示すように、支持基板20は、複数の第1凹部22を有している。各第1凹部22は、支持基板20の一対の主面23に形成されている。各第1凹部22は支持基板20の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第1凹部22は、支持基板20の幅方向(y軸方向)の両端部には形成されていない。
【0022】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0023】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20の各主面23に支持されている。なお、各発電素子部10は、支持基板20の一方の主面23のみに支持されていてもよい。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル301は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。長手方向に隣り合う発電素子部10は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。
【0024】
各発電素子部10は、燃料極4(内側電極の一例)、電解質5、及び空気極6(外側電極の一例)を有している。支持基板20上に、支持基板20側から、燃料極4,電解質5,空気極6の順で支持されている。また、各発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。
【0025】
図6に示すように、各発電素子部10のうち、ある隣り合う一対の発電素子部10をそれぞれ、第1発電素子部10a、第2発電素子部10bとする。そして、第1発電素子部10aの燃料極4、電解質5、及び空気極6を、第1燃料極4a、第1電解質5a、及び第1空気極6aとする。また、第2発電素子部10bの燃料極4、電解質5、及び空気極6を、それぞれ第2燃料極4b、第2電解質5b、及び第2空気極6bとする。なお、第1発電素子部10aと第2発電素子部10bとは、構成が同じである。
【0026】
[燃料極]
図5に示すように、燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41(内側電極集電部の一例)と、燃料極活性部42(内側電極活性部の一例)とを有する。
【0027】
[燃料極集電部]
燃料極集電部41は、第1凹部22内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部22内に充填されており、第1凹部22と同様の外形を有する。燃料極集電部41は、第2凹部411及び第3凹部412を有している。第2凹部411内には、燃料極活性部42が配置されている。また、第3凹部412には、インターコネクタ31が配置されている。
【0028】
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0029】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び第1凹部22の深さは、50〜500μm程度である。
【0030】
[燃料極活性部]
燃料極活性部42は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0031】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0032】
[電解質]
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から隣のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に連続して配置されている。電解質5は、支持基板20の各主面23を覆うように構成されている。
【0033】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0034】
[反応防止膜]
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0035】
反応防止膜7は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0036】
[空気極]
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を基準にして、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61と空気極集電部62とを有している。
【0037】
[空気極活性部]
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0038】
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0039】
[空気極集電部]
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。また、空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部10に向かって延びている。なお、燃料極集電部41と空気極集電部62とは、発電領域から互いに反対側に延びている。なお、発電領域とは、燃料極活性部42と電解質5と空気極活性部61とが重複する領域である。
【0040】
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0041】
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0042】
[インターコネクタ、及びインターコネクタ周辺の構造]
図6に示すように、インターコネクタ31は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。すなわち、インターコネクタ31は、第1発電素子部10aと第2発電素子部10bとの間に配置され、第1発電素子部10aと第2発電素子部10bとを電気的に接続している。
【0043】
詳細には、第1発電素子部10aの第1空気極集電部62aは、第1空気極活性部61aから第2発電素子部10bに向かって延びている。そして、第1空気極集電部62aは、インターコネクタ31と接触している。また、第2発電素子部10bの第2燃料極集電部41bは、第2燃料極活性部42bから第1発電素子部10aに向かって延びている。そして、第2燃料極集電部41bは、インターコネクタ31と接触している。
【0044】
インターコネクタ31は、第1発電素子部10aの第1空気極集電部62aと、第2発電素子部10bの第2燃料極集電部41bとを電気的に接続している。インターコネクタ31は、第2燃料極集電部41bの第3凹部412内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部412内に埋設されている。
【0045】
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0046】
第1空気極集電部62aにおけるインターコネクタ31と接触する部分621a(以下、「第1接触部分」と言う)の厚さt1は、第2発電素子部10bに近付くにつれて漸減している。なお、第1接触部分621aは、第1空気極集電部62aの厚さ方向視(z軸方向視)において、第1空気極集電部62aがインターコネクタ31と重複する部分を言う。また、第1接触部分621aの厚さt1は、例えば、支持基板20の幅方向(y軸方向)の中央部の任意の位置で、支持基板20の長手方向及び厚さ方向に平行な断面(xz断面)で測定する。
【0047】
第1接触部分621aの勾配は、0.005〜0.5程度とすることが好ましい。なお、第1接触部分621aにおける勾配は、第1接触部分621aの長さL1(x軸方向の長さ)に対する、第1接触部分621aの厚さt1の変化Δt1の割合(Δt1/L1)を意味する。なお、第1接触部分621aの厚さt1の変化Δt1は、第1接触部分621aの長さ方向(x軸方向)の両端部における厚さt1の差を意味する。具体的には、第1接触部分621aの第1発電素子部10a側の端部における厚さta1と第1接触部分621aの第2発電素子部側10b側の端部における厚さtb1(ta1−tb1)との差を厚さt1の変化Δt1とすることができる。
【0048】
第1空気極集電部62aは、燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)において、インターコネクタ31の全体を覆っていることが好ましい。すなわち、第1空気極集電部62aの先端は、インターコネクタ31を越えていることが好ましい。
【0049】
第2燃料極集電部41bにおけるインターコネクタ31と接触する部分411b(以下、「第2接触部分」と言う)の厚さt2は、第1発電素子部10aに近付くにつれて漸減している。なお、第2接触部分411bとは、第2燃料極集電部41bの厚さ方向視(z軸方向視)において、第2燃料極集電部41bがインターコネクタ31と重複する部分を言う。また、第2接触部分411bの厚さt2は、例えば、支持基板20の幅方向(y軸方向)の中央部の任意の位置で、支持基板20の長手方向及び厚さ方向に平行な断面(xz断面)で測定する。
【0050】
第2燃料極集電部41bは、インターコネクタ31と接触する第1主面413と、第1主面413と反対側の第2主面414とを有する。第2燃料極集電部41bの第2接触部分411bにおける第2主面414は、第1発電素子部10aに近付くにつれてインターコネクタ31に近付くように傾斜する。
【0051】
第1接触部分621aの中央部の厚さは、第1空気極集電部62aにおける第1空気極活性部61aと接触する部分622a(以下、「第3接触部分」という)の中央部の厚さよりも薄いことが好ましい。なお、第3接触部分622aは、第1空気極集電部62aの厚さ方向視(z軸方向視)において、第1空気極集電部62aが第1空気極活性部61aと重複する部分を言う。また、各中央部の厚さとは、第1空気極集電部62aの厚さ方向視(z軸方向視)における各接触部621a、622aの中央部の厚さを言う。
【0052】
第2接触部分411bの勾配は、0.005〜0.5程度とすることが好ましい。なお、第2接触部分411bにおける勾配は、第2接触部分411bの長さL2(x軸方向の長さ)に対する、第2接触部分411bの厚さt2の変化Δt2の割合(Δt2/L2)を意味する。なお、第2接触部分411bの厚さt2の変化Δt2は、第2接触部分411bの長さ方向(x軸方向)の両端部における厚さt2の差を意味する。具体的には、第2接触部分411bの第1発電素子部10a側の端部における厚さta2と第2接触部分411bの第2発電素子部側10b側の端部における厚さtb2(tb2−ta2)との差を厚さt2の変化Δt2とすることができる。
【0053】
第2燃料極集電部41bは、燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)において、インターコネクタ31の全体を覆っていることが好ましい。すなわち、第2燃料極集電部41bの先端は、インターコネクタ31を越えていることが好ましい。
【0054】
[集電部材]
以上のように構成された燃料電池セル301は、隣り合う燃料電池セル301と、集電部材302によって電気的に接続されている。
図2に示すように、集電部材302は、一対の燃料電池セル301間に配置されている。そして、集電部材302は、厚さ方向(z軸方向)において隣り合う燃料電池セル301同士を電気的に接続するよう、導電性を有している。詳細には、集電部材302は、燃料電池セル301の基端側において、隣り合う燃料電池セル301同士を接続している。集電部材302は、基端側発電素子部10cよりも基端側に配置されている。詳細には、
図7に示すように、集電部材302は、基端側発電素子部10cから延びる空気極集電部62上に配置されている。
【0055】
集電部材302は、例えば、直方体状又は円柱状などのようなブロック状である。集電部材302は、例えば、酸化物セラミックスの焼成体で構成されている。このような酸化物セラミックスとしては、例えば、ペロブスカイト酸化物、又はスピネル酸化物などが挙げられる。ペロブスカイト酸化物としては、例えば、(La,Sr)MnO
3、又は(La,Sr)(Co,Fe)O
3等が挙げられる。スピネル酸化物としては、例えば、(Mn,Co)
3O
4、又は(Mn,Fe)
3O
4等が挙げられる。この集電部材302は、例えば、可撓性を有していない。なお、集電部材302は、金属板などによって形成されていてもよい。
【0056】
集電部材302は、第1接合材101によって、各燃料電池セル301に接合されている。すなわち、第1接合材101は、各集電部材302と各燃料電池セル301とを接合している。第1接合材101は、例えば、(Mn,Co)
3O
4、(La,Sr)MnO
3又は(La,Sr)(Co,Fe)O
3等よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0057】
図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200に支持されている。詳細には、各燃料電池セル301は、第2接合材102によって、燃料マニホールド200の天板203に固定されている。より詳細には、
図8に示すように、各燃料電池セル301の基端部が、燃料マニホールド200の貫通孔202に挿入されている。燃料電池セル301は、貫通孔202に挿入された状態で、第2接合材102によって燃料マニホールド200に固定されている。
【0058】
第2接合材102は、燃料電池セル301が挿入された状態の貫通孔202内に充填される。すなわち、第2接合材102は、燃料電池セル301の外周面と、貫通孔202を画定する壁面との隙間に充填される。第2接合材102は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、又はSiO
2−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第2接合材102の材料として、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第2接合材102は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0059】
燃料マニホールド200から突出している各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。また、各燃料電池セル301は、燃料電池セル301の厚さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。この燃料電池セル301同士の間隔は、1〜5mm程度とすることができる。
【0060】
[発電方法]
以上のように構成された燃料電池スタック100は、次のようにして発電する。燃料マニホールド200を介して各燃料電池セル301のガス流路21内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板20の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝す。
【0061】
酸素を含むガスは、例えば、
図9に示すように、支持基板20の幅方向(y軸方向)に沿って流れるように、基端側発電素子部10cよりも基端側に供給される。詳細には、燃料電池スタック100は、ガス供給部材400をさらに有している。ガス供給部材400は、各燃料電池セル301の間において、空気などのガスを供給するように構成されている。なお、ガス供給部材400から供給されたガスが効率的に上方へ流れるよう、案内板401がガス供給部材400と反対側に設置されていてもよい。案内板401は、平板状であって、燃料電池セル301の長手方向に延びるとともに、燃料電池セル301の厚さ方向に延びている。
【0062】
以上のように、燃料ガス、及び酸素を含むガスを供給された各発電素子部10において、電解質5の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池スタック100を外部の負荷に接続すると、空気極6において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極4において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
発電状態においては、電流は、
図10において矢印で示すように流れる。インターコネクタ31、及び発電素子部10において、電流は厚さ方向に流れる。
【0063】
[製造方法]
次に、上述したように構成された燃料電池セルの製造方法について説明する。
図11から
図17において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が焼成前であることを示している。
【0064】
まず、
図11に示すように、支持基板の成形体20gを作製する。この支持基板の成形体20gは、例えば、支持基板20の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等を添加して得られる坏土を用いて、押し出し成形、及び切削等の手法を利用して作製され得る。
【0065】
支持基板の成形体20gが作製されると、次に、
図12に示すように、支持基板の成形体20gの各主面23に形成された各第1凹部22に、燃料極集電部の成形体41gを充填する。燃料極集電部の成形体41gは、例えば、上述した燃料極集電部41の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって作製される。
【0066】
次に、
図13に示すように、燃料極集電部の成形体41gの各第2凹部411内に、燃料極活性部の成形膜42gを形成する。この成形膜42gは、例えば、上述した燃料極活性部42の材料の粉末にバインダーなどを添加して得られるスラリーを用いて、印刷法などによって形成される。
【0067】
また、各燃料極集電部の成形体41gの各第3凹部412内に、インターコネクタの成形膜31gを形成する。各インターコネクタの成形膜31gは、例えば、上述したインターコネクタ31の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0068】
次に、
図14に示すように、燃料極活性部の成形膜42g上に、電解質の成形膜5gを形成する。詳細には、電解質の成形膜5gの先端部は、インターコネクタの成形膜31g上に配置されている。また、別の電解質の成形膜5gの基端部も、同じインターコネクタの成形膜31g上に配置されている。これによって、燃料極集電部の成形体41g、及び燃料極活性部の成形膜42gが形成された状態の支持基板の成形体20gの各主面23は、インターコネクタの成形膜31g、及び電解質の成形膜5gによって覆われている。電解質の成形膜5gは、例えば、上述した電解質5の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法、又はディッピング法等によって形成される。
【0069】
次に、
図15に示すように、電解質の成形膜5g上に、反応防止膜の成形膜7gを形成する。各反応防止膜の成形膜7gは、例えば、上述した反応防止膜7の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0070】
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体20gを、空気中にて1200〜1600℃程度で1〜10時間程度焼成する。これにより、空気極6が形成されていない状態の燃料電池セルが得られる。
【0071】
次に、
図16に示すように、各反応防止膜7上に、空気極活性部の成形膜61gを形成する。各空気極活性部の成形膜61gは、例えば、上述した空気極活性部61の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0072】
次に、
図17に示すように、空気極活性部の成形膜61g上に、空気極集電部の成形膜62gを形成する。詳細には、空気極集電部の成形膜62gは、空気極活性部の成形膜61gから隣の発電素子部に向かって延びるように形成される。各空気極集電部の成形膜62gは、例えば、上述した空気極集電部62の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0073】
そして、このように空気極の成形膜61g、62gが形成された状態の支持基板20を、空気中にて900〜1200℃程度で1〜10時間程度焼成する。これによって、燃料電池セル301が完成する。
【0074】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0075】
変形例1
上記実施形態では、支持基板20は平板状であったが、円筒状であってもよい。すなわち、燃料電池セル301は、円筒型であってもよい。
【0076】
変形例2
上記実施形態では、燃料極集電部41が第2凹部411及び第3凹部412を有しているが、燃料極集電部41の構成はこれに限定されない。例えば、燃料極集電部41は第2凹部411及び第3凹部412などの凹部を有していなくてもよい。この場合、燃料極活性部42は、燃料極集電部41上に形成されており、燃料極集電部41に埋設されていない。また、インターコネクタ31は、燃料極集電部41上に形成されており、燃料極集電部41に埋設されていない。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0078】
(試験A)
図6に示すような構成の複数の燃料電池セル301を作製した。なお、試験Aでは、第1接触部分621aの勾配、第1空気極集電部62aの材料、インターコネクタ31の材料、第1接触部分621aの長さL1を異ならせた。各サンプルにおける、第1接触部分621aの勾配、第1空気極集電部62aの材料、インターコネクタ31の材料、第1接触部分621aの長さL1は、表1の通りである。なお、その他の条件は、各サンプル間で基本的に同じとした。また、サンプルNo1〜3の燃料電池セル301は、比較例であり、第1接触部分621aは勾配していない。
【0079】
(評価方法)
以上のように作製された各サンプルNo.1〜20に対して、熱サイクル試験1を行った。具体的には、まず、常温から800℃まで昇温速度200℃/hrで昇温した後、800℃で2hr維持し、200℃/hrで50℃まで降温するサイクルを20回繰り返した。
【0080】
その後、各サンプルに対して、クラックの有無を確認した。具体的には、第1接触部分621aにおいてクラックが発生しているか否かを走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−6610LV)を用いた断面解析により倍率100〜1000倍にて観察を行い確認した。
【0081】
次に、熱サイクル試験1よりも過酷な熱サイクル試験2を行った。具体的には、まず、常温から800℃まで昇温速度300℃/hrで昇温した後、800℃で1hr維持し、300℃/hrで50℃まで降温するサイクルを20回繰り返した。
【0082】
その後、各サンプルに対して、クラックの有無を確認した。具体的には、第1接触部分621aにおいてクラックが発生しているか否かを走査型電子顕微鏡を用いた断面解析により倍率100〜1000倍にて観察を行い確認した。
【0083】
以上の結果を評価として表1に示している。表1における評価「◎」とは、熱サイクル試験1、2ともに、剥離が生じていなかったことを意味する。また、表1における評価「○」とは、熱サイクル試験1では剥離が生じていなかったが、熱サイクル試験2において剥離が生じたことを意味する。また、表1における評価「×」とは熱サイクル試験1において剥離が生じたことを意味する。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、第1接触部分621aに勾配を設けることによって、第1接触部分621aにおけるクラックの発生を抑制できることが分かった。また、第1接触部分621aの勾配を0.005〜0.5とすることにより、クラックの発生をより抑制できることが分かった。
【0086】
(試験B)
図6に示すような構成の複数の燃料電池セル301を作製した。なお、試験Bでは、第2接触部分411bの勾配、第2燃料極集電部41bの材料、インターコネクタ31の材料、第2接触部分411bの長さL2を異ならせた。各サンプルにおける、第2接触部分411bの勾配、第2燃料極集電部41bの材料、インターコネクタ31の材料、第2接触部分411bの長さL2は、表2の通りである。なお、その他の条件は、各サンプル間で基本的に同じとした。また、サンプルNo.1〜3の燃料電池セル301は、比較例であり、第2接触部分411bは勾配していない。
【0087】
(評価方法)
以上のように作製された各サンプルNo.1〜20に対して、上述した熱サイクル試験1を行った。その後、各サンプルに対して、クラックの有無を確認した。具体的には、第2接触部分411bにおいてクラックが発生しているか否かを走査型電子顕微鏡を用いた断面解析により倍率100〜1000倍にて観察を行い確認した。
【0088】
次に、上述した熱サイクル試験2を行った。その後、各サンプルに対して、クラックの有無を確認した。具体的には、第2接触部分411bにおいてクラックが発生しているか否かを走査型電子顕微鏡を用いた断面解析により倍率100〜1000倍にて観察を行い確認した。
【0089】
以上の結果を評価として表2に示している。表2における評価「◎」とは、熱サイクル試験1、2ともに、剥離が生じていなかったことを意味する。また、表2における評価「○」とは、熱サイクル試験1では剥離が生じていなかったが、熱サイクル試験2において剥離が生じたことを意味する。また、表2における評価「×」とは熱サイクル試験1において剥離が生じたことを意味する。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示すように、第2接触部分411bに勾配を設けることによって、第2接触部分411bにおけるクラックの発生を抑制できることが分かった。また、第2接触部分411bの勾配を0.005〜0.5とすることにより、クラックの発生をより抑制できることが分かった。