特許第6427666号(P6427666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6427666FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属カビ及びカンジダ属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物及びその用途 {PHARMACEUTICAL COMPOSITION CONTAINING FK506 DERIVATIVE FOR TREATING FUNGAL INFECTION CAUSED BY GENUS CRYPTOCOCCUS AND GENUS CANDIDA AND USE THEREOF}
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  • 特許6427666-FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属カビ及びカンジダ属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物及びその用途  {PHARMACEUTICAL  COMPOSITION  CONTAINING  FK506  DERIVATIVE  FOR  TREATING  FUNGAL  INFECTION  CAUSED  BY  GENUS  CRYPTOCOCCUS  AND  GENUS  CANDIDA  AND  USE  THEREOF} 図000007
  • 特許6427666-FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属カビ及びカンジダ属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物及びその用途  {PHARMACEUTICAL  COMPOSITION  CONTAINING  FK506  DERIVATIVE  FOR  TREATING  FUNGAL  INFECTION  CAUSED  BY  GENUS  CRYPTOCOCCUS  AND  GENUS  CANDIDA  AND  USE  THEREOF} 図000008
  • 特許6427666-FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属カビ及びカンジダ属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物及びその用途  {PHARMACEUTICAL  COMPOSITION  CONTAINING  FK506  DERIVATIVE  FOR  TREATING  FUNGAL  INFECTION  CAUSED  BY  GENUS  CRYPTOCOCCUS  AND  GENUS  CANDIDA  AND  USE  THEREOF} 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427666
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属カビ及びカンジダ属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物及びその用途 {PHARMACEUTICAL COMPOSITION CONTAINING FK506 DERIVATIVE FOR TREATING FUNGAL INFECTION CAUSED BY GENUS CRYPTOCOCCUS AND GENUS CANDIDA AND USE THEREOF}
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20181112BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20181112BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   A61K31/436
   A61P31/10
   A61K31/407
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-519438(P2017-519438)
(86)(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公表番号】特表2017-518387(P2017-518387A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】KR2015006635
(87)【国際公開番号】WO2016003135
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年12月19日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0080473
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516381404
【氏名又は名称】イントロン・バイオテクノロジー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・スン・バン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・ジョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ジュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・バン
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 Antimicrob. Agents Chemother., 2008, Vol.52, No.2, pp.409-417
【文献】 J. Antibiot., 1997, Vol.50, No.5, pp.418-423
【文献】 J. Bacteriol., 2013, Vol.195, No.9, pp.1931-1939
【文献】 Antimicrob. Agents Chemother., 1997, Vol.41, No.1, pp.156-161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/436
A61K 31/407
A61P 31/10
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FK506誘導体を含有する、クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)による真菌感染を治療するための薬剤学的組成物であって、
記FK506誘導体は、31−O−デメチル−FK506(31-O-demethyl-FK506)、9−デオキソ−FK506(9-deoxo-FK506)、9−デオキソ−31−O−デメチル−FK506(9-deoxo-31-O-demethyl-FK506)及び9−デオキソ−プロリル−FK506(9-deoxo-prolyl-FK506)からなる群から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
FK506誘導体を含有する、カンジダ(Candida)属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物であって、
前記FK506誘導体は、31−O−デメチル−FK506(31-O-demethyl-FK506)であることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
記カンジダ属カビは、カンジダアルビカンス(Candida albicans)であることを特徴とする請求項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項4】
記FK506誘導体の含量が1μg/ml乃至100μg/mlであることを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤学的組成物。
【請求項5】
記FK506誘導体の含量が10μg/ml乃至40μg/mlであることを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤学的組成物。
【請求項6】
FK506誘導体を含有する、クリプトコッカスネオフォルマンスによる真菌感染治療剤であって、
記FK506誘導体は、31−O−デメチル−FK506(31-O-demethyl-FK506)、9−デオキソ−FK506(9-deoxo-FK506)、9−デオキソ−31−O−デメチル−FK506(9-deoxo-31-O-demethyl-FK506)及び9−デオキソ−プロリル−FK506(9-deoxo- prolyl-FK506)からなる群から選択されることを特徴とする、真菌感染治療剤。
【請求項7】
FK506誘導体を含有する、カンジダ属カビによる真菌感染治療剤であって、
前記FK506誘導体は、31−O−デメチル−FK506(31-O-demethyl-FK506)であることを特徴とする、真菌感染治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属カビ及びカンジダ属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトと動物において真菌感染性疾病は、感染した組織の位置によって大きく全身性真菌症と表在性真菌症との二つに分けることができる。そのうち全身性真菌症は、健康な人には疾病をあまり起こさないが、免疫力の弱い人に日和見感染で多く誘発される疾病であり、その種類としてはクリプトコッカス症(cryptococcosis)、カンジダ症(candidasis)、アスペルギルス症(aspergillosis)などがある。クリプトコッカス症(cryptococcosis)は、クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)の感染により発病し、エイズ(AIDS)患者のように免疫力が落ちている患者に皮膚をはじめとする人体の全ての部位に感染し、特に脳と髄膜に感染して脳髄膜炎、脳膿瘍及び脳腫瘍を起こす。カンジダ症(candidasis)は、カンジダアルビカンス(Candida albicans)による真菌症であり、最初に鵝口瘡患者から分離され、女性の場合は膣炎を起こし、乳児のおむつかぶれを誘発する。
【0003】
最近、抗がん化学療法や臓器移植後の免疫抑制剤投与による免疫低下患者や後天性免疫不全症(AIDS)患者の増加と共に全身性真菌感染症の発病率は大きく増加しており、その重要性も日々高まっている。実際に癌やエイズにかかった場合、患者が死ぬ原因は、病気そのものよりは臓器や血液の真菌感染のためである。また、真菌感染の原因菌も次第に多様化しており、今後さらに多くの種類の真菌が侵襲性感染症を誘発するものと予測されている。
【0004】
現在臨床的に使用されている抗真菌剤としては、アムホテリシンB(amphotericin B)の他には、アゾール系列(azole)の合成物質が大部分使用されている。しかし、このような抗真菌剤を使用する際、ひどい副作用が現れるという短所がある。
【0005】
市販される抗真菌剤は、毒性があり、活性範囲が狭く、殺真菌剤(fungicidal)というよりは静菌剤(fungistatic)の側面の性格が強いという短所がある。また、これらの一部は、薬物相互作用を示すため、その結果、治療が非常に複雑になる。免疫抑制患者に真菌感染が多数発生し、これら患者集団が引き続き増加している最近の傾向に伴って、広範囲の活性を有しながら優れた薬理学的特性を持つ新たな抗真菌剤に対する需要が増加している。
【0006】
一方、FK506は、1984年に日本所在の藤沢(Fujisawa)研究チームにより放線菌ストレプトミセスツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)の代謝産物として分離された。1989年に肝移植のためにFK506を用いた臨床試験が開始された。FK506は、シクロスポリンAに比べて効能が50乃至100倍強力である一方、毒性や副作用の面ではシクロスポリンAとほぼ対等である。米国所在のメルク(Merck)社はFK506の毒性を減らすためにその構造を変形させるための研究を行ってきており、その過程でFK506の作用機序及び機能について多くのことが明らかになった。
【0007】
FK506は、機能上、FKBP−結合領域、カルシニューリン−結合領域及びノースウェスト領域の三つの領域に分けられる。FK506とFKBP12の間の分子間相互作用は、大部分の場合、疎水性であり、これら二分子間には単に4つの分子間水素結合が形成される。FK506とFKBP12がより強力に結合するほど、これらのカルシニューリンに対する親和性はより増加することと知られている。このような親和性の増加は、より強力な免疫抑制活性を誘導する。FK506のノースウェスト領域は、FKBP12またはカルシニューリンと作用しない。
【0008】
FK506は、器官又は組織移植に対する拒否反応、移植片対宿主反応、アトピー性皮膚炎、アレルギー接触性皮膚炎、粘膜扁平苔癬(lichen planus mucosae)及び壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)の治療剤として用いられてきた。最近、FK506に対する他の作用性が明らかになっている。例えば、文献[Sulaiman OA, et al., Exp Neurol 2002 May, 175(1):127-37]には、FK506が末梢神経の再生を促進することが記述されている。
【0009】
韓国公開特許第10-2004-0010919号(発明の名称:FK506又はその誘導体を用いた細胞の老化を抑制する方法および培養培地)は、FK506又はその誘導体を用いて培養物で細胞の老化を抑制し、細胞の寿命を延ばし、細胞の成長を増大させる方法に関する発明を開示している。
【0010】
また、韓国公開特許第10-2005-0071491号(発明の名称:喘息の治療のためのベータ2−作用剤と配合されたタクロリムス誘導体の用途)は、急性または慢性喘息を治療または予防するために同時的、分離的または順次的に使用するための医薬の製造のためのFK506誘導体およびβ2−作用剤の新規の用途を開示している。
【0011】
しかし、これまでFK506誘導体をクリプトコッカス属カビまたはカンジダ属カビによる真菌感染を治療するにあたって適用した事例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2004-0010919号
【特許文献2】韓国公開特許第10-2005-0071491号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Sulaiman OA, et al., Exp Neurol 2002 May, 175(1):127-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
よって、本発明者達は、クリプトコッカス属カビまたはカンジダ属カビによる真菌感染に対して抗真菌活性を有するFK506誘導体の新規の用途を報告する。
【0015】
すなわち、本発明の目的は、FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の一具現例によるFK506誘導体を含有する薬剤学的組成物は、クリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染を治療する新規の用途を提供する。
【0018】
また、本発明の一具現例によるFK506誘導体を含有する真菌感染治療剤は、クリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染を治療する新規の用途を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、クリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染を治療するFK506誘導体を含有する薬剤学的組成物を提供する。上記薬剤学的組成物は、人体に無害で、抗真菌効果に優れているという長所を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一具体例による組成物のクリプトコッカスネオフォルマンスに対する阻害活性を比較したイメージである。
図2】本発明の一具体例による組成物のクリプトコッカスネオフォルマンスに対する阻害活性を比較したイメージである。
図3】本発明の一具体例による組成物の時間の経過によるカンジダアルビカンスに対する阻害活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具現例により本発明を詳しく説明する。但し、下記具現例は、本発明に対する例示として提示されるものであって、これにより本発明が制限されるわけではなく、本発明は、後述する特許請求範囲の記載及びそれから解釈される均等範疇内で多様な変形及び応用が可能である。
【0022】
本発明の一具現例では、FK506誘導体を含有するクリプトコッカス(Cryptococcus)属またはカンジダ(Candida)属カビによる真菌感染を治療するための薬剤学的組成物を提供する。
【0023】
上記クリプトコッカス属カビは、クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcu neoformans)或いはクリプトコッカスガッティ(Cryptococcus gattii)であり得、上記カンジダ属カビは、カンジダアルビカンス(Canddia albicans)であり得る。
【0024】
本発明の抗真菌用組成物は、FK506誘導体を単独で含むこともでき、その他に薬理学的に許容可能な担体を追加で含むこともできる。上記FK506誘導体は、望ましくは31-O-demethyl-FK506、9-deoxo-FK506、9-deoxo-31-O-demethyl-FK506または9-deoxo-propyl-FK506であり、より望ましくは、31-O-demethyl-FK506である。また、本発明の薬剤学的組成物において、一般的にはFK506誘導体の含量が増加するほど、真菌感染の治療効果がこれに比例して増加する。具体的には、本発明の薬剤学的組成物がこのようなFK506誘導体を1μg/ml乃至100μg/mlの濃度で含有することが望ましく、10μg/ml乃至40μg/mlの濃度で含有することがより望ましい。しかし、これに制限されず、上記薬剤学的組成物の使用方法および使用目的に応じて有効成分の含量を適切に調節することができる。
【0025】
上記許容可能な担体は、通常の抗真菌剤に含まれる物質、例えば賦形剤または希釈剤であり得、その例として食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、イソパラフィン、水、グリセロール及びエタノールがあるが、これに限定されない。
【0026】
抗真菌用組成物の剤形は、使用方法及び用途に応じて適切に調節することができ、例えば、液剤、懸濁剤、顆粒剤、硬膏剤、芳香水剤、散剤、シロップ剤、エアロゾル剤、エキス剤、軟膏剤、流エキス剤、乳剤、煎剤、浸剤、点眼剤、錠剤、注射剤、酒精剤、カプセル剤、クリーム剤または丸剤であり得る。
【0027】
上記組成物は、病原性細菌や毒素を生成するカビの生成及び生長を抑制するための用途で、洗浄剤、薬剤、食品添加剤、芳香剤及び化粧剤として使用が可能である。洗浄剤として使用する場合、噴霧剤、クリーニング剤、シャンプー、リンス及び石鹸などとして製造が可能である。食品添加剤として使用する場合、抗真菌用組成物は、食品の種類及び使用方法に応じて適切に調節することが望ましい。芳香剤の場合、揮発性物質をさらに追加することもできる。
【0028】
また、本発明の他の具現例は、FK506誘導体を含有するクリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染治療剤を提供する。
【0029】
上記FK506誘導体は上述のとおりであり、本発明の具現例による真菌感染治療剤は、人体に無害で抗真菌効果に優れていることから、クリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染の治療に効果的に利用されることができる。
【0030】
以下、実施例を通して本発明をより具体的に考察する。但し、本発明が下記実施例にのみ制限されるものではない。
【実施例】
【0031】
実施例:FK506誘導体の抗真菌活性
上記FK506誘導体の人体病原性酵母であるクリプトコッカスネオフォルマンス及びカンジダアルビカンスのような真菌に対する抗真菌活性を標準寒天拡散法で分析した(Murray et al., 1995 Manual of clinical microbiology(6th ed), Washington, DC:ASM Press,pp.1275-1294)。107CFU/mLの真菌懸濁液を含む100μL標準化された接種液は、20mLのポテトデキストロース寒天(PDA)培地があるペトリディッシュで均一に塗抹し、5分間乾燥させた。直径が6mmの滅菌したWhatman No.1フィルターペーパーディスクは、抽出のために使用された同じ溶媒に溶かしたFK506誘導体溶液を0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/ml及び40μg/mlの濃度に処理して濡らした。対照区は、何ら処理していないものとFK506で濡らしたものとを使用した。30℃及び37℃で2〜3日間プレートを培養した後、抗真菌活性はテストしたクリプトコッカスネオフォルマンス及びカンジダアルビカンスに対するクリアゾーンの直径を比較して評価した。抗真菌活性分析のための上記実験は少なくとも3回繰り返した。
【0032】
下記表1は、クリプトコッカスネオフォルマンスに対して、FK506及び化学式(I)乃至化学式(IV)誘導体をそれぞれ10μg/ml処理し、抗真菌活性を確認した結果を示している。クリアゾーンの直径の大きさはmm単位で示した。
【0033】
下記表1に示されているように、FK506誘導体が人体病原性酵母であるクリプトコッカスネオフォルマンスを非常に効果的に阻害することが分かる。
【表1】
【0034】
FK506の誘導体である31-O-demethyl-FK506、9-deoxo-FK506、9-deoxo-31-O-demethyl-FK506および9-deoxo-propyl-FK506化合物は、それぞれ下記化学式(I)、化学式(II)、化学式(III)および化学式(IV)で表される:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0035】
図1および図2に示されているように、FK506の誘導体である31-O-demethyl-FK506、9-deoxo-FK506、9-deoxo-31-O-demethyl-FK506および9-deoxo-propyl-FK506の全てがクリプトコッカスネオフォルマンス菌に対して阻害活性を有することが確認された。特に、31-O-demethyl-FK506および9-deoxo-31-O-demethyl-FK506を10μg/ml及び40μg/mlとして使用した場合にクリプトコッカスネオフォルマンス菌に対するクリアゾーンが大きく現れたことから、その濃度が増加するほど阻害活性が大きいことが分かる。特に、31-O-demethyl-FK506の場合、FK506の場合よりもさらに高い阻害活性を示すことが確認された。
【0036】
図3の場合、FK506の誘導体である31-O-demethyl-FK506のカンジダアルビカンス菌に対する血清感度の増減を示したグラフである。時間が経つほど血清感度が低く維持されるということは、真菌に対する阻害活性が大きいということを意味する。図3によると、31-O-demethyl-FK506は、FK506とカンジダアルビカンス菌に対する阻害活性がほぼ同一の水準で現れ、何ら処理していないものに比べては非常に優れた阻害活性を示した。特に、処理後6時間経過時点から、本発明のFK506誘導体がFK506よりもさらに高い阻害活性を維持することが確認できる。
【0037】
産業上の利用可能性
本発明は、クリプトコッカス属またはカンジダ属カビによる真菌感染を治療するFK506誘導体を含有する薬剤学的組成物を提供する。上記薬剤学的組成物は、人体に無害で抗真菌効果に優れているという長所を有する。
図1
図2
図3