特許第6427668号(P6427668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427668
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】ヘアカラー、その方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/84 20060101AFI20181112BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20181112BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   A61K8/84
   A61K8/73
   A61Q5/10
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-523802(P2017-523802)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2017-533225(P2017-533225A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】US2015058020
(87)【国際公開番号】WO2016069877
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】14190885.5
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502355808
【氏名又は名称】ノクセル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クルネ、マティヤ
(72)【発明者】
【氏名】ダーネ、ラルス
(72)【発明者】
【氏名】エグリ、ガブリエッラ
(72)【発明者】
【氏名】フンク、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルライン、マティアス・クルト
(72)【発明者】
【氏名】ヒルビッヒ、クラオス
(72)【発明者】
【氏名】クリッカーマン、モーリツ
(72)【発明者】
【氏名】シャファー、タチアナ
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−139734(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0282481(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0083284(US,A1)
【文献】 特表2013−522258(JP,A)
【文献】 特表2011−510127(JP,A)
【文献】 特表2009−543914(JP,A)
【文献】 特表2017−533224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記一連の:
)カチオン性着色ポリマーを含む第1の組成物を、毛髪の第1の部分に塗布する工程であって、前記カチオン性着色ポリマーがポリエチレンイミンである、工程と、
ii)アニオン性ポリマーを含む第2の組成物を、毛髪の第2の部分に塗布する工程であって、前記アニオン性ポリマーが硫酸デキストラン塩である、工程と、
を実行することであって、毛髪の該第1の部分及び該第2の部分が、少なくとも1つの共通範囲を有することと、
b)工程a)を少なくとも一度繰り返すことであって、繰り返される工程a)の各々の共通範囲が、
工程a)の共通範囲と、
工程a)を2回以上繰り返す場合には、繰り返される別の工程a)の各々の共通範囲と、
を含む少なくとも1つの共通範囲を有することと、
を含み、
工程a)又は前記繰り返される工程a)の少なくとも1つにおいて、前記アニオン性ポリマーが、アニオン性着色ポリマーである、毛髪を着色する方法。
【請求項2】
工程i)又は工程ii)が、
過剰な前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物を、前記毛髪からそれぞれ除去するサブ工程、又は、
前記毛髪に、熱、超音波、赤外線又はマイクロ波の形でエネルギーを与えるサブ工程、又は、
記毛髪を、洗浄又は濯ぐサブ工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の組成物が、0.1g/L〜100g/Lの範囲の総濃度のカチオン性着色ポリマーを含み
記第2の組成物が、0.1g/L〜100g/Lの範囲の総濃度のアニオン性ポリマーを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の組成物又は前記第2の組成物が、2〜14の範囲のpHを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の組成物又は前記第2の組成物が、0.05mol/L〜1.5mol/Lの範囲の濃度で、化粧品として許容可能な塩を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の前に、前記毛髪を前処理して、前記毛髪の一部又は前記毛髪全体にわたって正電荷又は負電荷の数を調整する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記毛髪を、pH変化、酸化、還元、漂白、プラズマ処理、オゾン処理、エレクトロウェッティング、ドライ又はウェットイオントリートメントの化学的手段又は物理的手段によって前記前処理する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に連続的に塗布される2つの異なる組成物の塗布を含む、毛髪を着色する方法に関する。第1の組成物は少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含み、第2の組成物は少なくとも1つのアニオン性ポリマーを含む。本発明の方法により得られるヘアカラー(hair colouration:染毛)は、特に洗浄堅牢度、安定性及び色の仕上がりのカスタマイズ(tailoring)に関して特に有益である。
【背景技術】
【0002】
毛髪の天然の色を変える種々の方法は当該技術分野において既知である。これらの方法は、毛髪色の永久的又は一時的な変化のいずれかを可能とする染毛組成物(hair colouring compositions)の使用を伴う。酸化染毛組成物とも称される、毛髪の色を永久的に変えるのに使用される染毛組成物は典型的に、酸化毛髪染料前駆体を含み、これらは、キューティクルを通って毛髪及び毛皮質中に拡散し得る。酸化毛髪染料前駆体はその後、互いに、また好適な酸化剤と反応して、最終染料分子を形成する。それらのサイズが大きくなるため、得られる分子は、その後の水及び/又は洗浄剤による洗浄中に毛髪から容易に拡散することができない。それ故、消費者が望む色永続性がもたらされる。この反応は典型的に、アルカリ化剤及び酸化剤の存在下においておよそpH10〜11で行われる。典型的には、酸化剤を含む酸化組成物(顕色剤及び/又は酸化成分とも称される)、及びアルカリ化剤(alkalizing agent:酸中和剤)を含む染料組成物(毛髪用染料(tint)又は染料成分とも称される)、及び毛髪染料前駆体(存在する場合)を、使用直前に混合する。消費者は、所望の毛髪色、色調(shade)及び色の強度を維持するために、及び新たに成長した毛髪(hair growth)の被覆を含む毛髪の継続的で均一な被覆を確実にするために、このプロセスを定期的に繰り返す。標準的な酸化染毛法に関する問題は、特に、このようなプロセスを定期的に繰り返し、通常使用される組成物が好ましくない臭気を有する場合に、反応が起こる条件、すなわち、高いpH値及び酸化剤の存在が、毛髪の構造にダメージを及ぼすおそれがあり、また、使用者の頭皮を刺激するおそれがあることである。さらに、標準的な酸化染毛組成物が反応性組成物であるため、毛髪上で反応を制御することが容易でないことから、所望の色の仕上がりを得ることは簡単ではない。
【0003】
代替的に、毛髪の色を一時的に変える方法も開発されてきた。これらの方法は通常、直接染料を含む染毛組成物の塗布を伴う。直接染料組成物は非反応性組成物である点で、通常、毛髪に対してあまり攻撃性(aggressive)を示さない。しかしながら、これらの組成物に関する問題は、得られるヘアカラーが典型的に、特に、毛髪を標準的なシャンプー組成物で洗浄する場合に、毛髪を標準的な酸化染毛組成物で着色する場合よりも弱い洗浄堅牢度を特徴とすることである。直接染料に関する更なる問題は、直接染料が低分子量分子であるために、使用者の頭皮も着色する可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、所望の色の仕上がり及び色強度を有する毛髪を容易にもたらす染毛方法に対する要求が依然として存在している。また、より良好な安定性及び良好な洗浄堅牢度を特徴とするヘアカラーを提供する染毛方法に対する要求も存在している。さらに、毛髪及び頭皮に対してあまり攻撃性を示さない染毛組成物の使用を伴う染毛方法に対する要求も存在している。最終的に、臭いの少ない組成物を用いた染毛方法に対する要求も存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
a)下記一連の:
i)少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む第1の組成物を、毛髪の第1の部分に塗布する工程と、
ii)少なくとも1つのアニオン性ポリマーを含む第2の組成物を、毛髪の第2の部分に塗布する工程と、
を実行することであって、毛髪の該第1の部分及び該第2の部分が、少なくとも1つの共通範囲を有することと、
b)工程a)を少なくとも一度繰り返すことであって、繰り返される工程a)の各々の共通範囲が、
工程a)の共通範囲と、
工程a)を2回以上繰り返す場合には、繰り返される別の工程a)の各々の共通範囲と、
を含む少なくとも1つの共通範囲を有することと、
を含み、
工程a)及び/又は前記繰り返される工程a)の少なくとも1つにおいて、前記カチオン性ポリマーが、カチオン性着色ポリマーであり、及び/又は前記アニオン性ポリマーが、アニオン性着色ポリマーである、毛髪を着色する方法に関する。
【0006】
本発明はまた、上記方法によって得られる、ヘアカラーに関する。
【0007】
最後に本発明はまた、上に記載の第1の組成物を含む第1の区画(compartment)と、上に記載の第2の組成物を含む第2の区画とを備える、毛髪を着色するキットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中で使用される場合、処理される「毛髪」という用語は、「生体(living:生きている)」、すなわち生体上にあるものであっても、「非生体(non-living:生きていない)」、すなわち、ウィッグ、ヘアピース、又は生存していないケラチン繊維の他の集合体であってもよい。哺乳動物、好ましくはヒトの毛髪が好ましい。しかしながら、羊毛、毛皮及び他のケラチン含有繊維も、本発明による組成物に好適な基材である。
【0009】
全ての比率又はパーセンテージは、特に記載のない限り重量比又は重量パーセンテージとする。
【0010】
「カチオン性ポリマー」とは、完全にプロトン化した全電荷が正である任意のポリマーを意味する。
【0011】
「カチオン性着色ポリマー」とは、少なくとも1つのクロモフォア(chromophore:発色団)及び/又は少なくとも1つのフルオロフォア(fluorophore:蛍光体)を骨格又はペンダント基のいずれかに含む、任意のカチオン性ポリマーを意味する。
【0012】
「カチオン性無着色ポリマー」とは、如何なるクロモフォア又はフルオロフォアも骨格又はペンダント基のいずれにも含まない、任意のカチオン性ポリマーを意味する。
【0013】
「アニオン性ポリマー」とは、完全に脱プロトン化した全電荷が負である任意のポリマーを意味する。
【0014】
「アニオン性着色ポリマー」とは、少なくとも1つのクロモフォア及び/又は少なくとも1つのフルオロフォアを骨格又はペンダント基のいずれかに含む、任意のアニオン性ポリマーを意味する。
【0015】
「アニオン性無着色ポリマー」とは、如何なるクロモフォア又はフルオロフォアも骨格又はペンダント基のいずれにも含まない、任意のアニオン性ポリマーを意味する。
【0016】
「完全なプロトン化」とは、ポリマーの種々のプロトン化可能な基が全て完全にプロトン化している状態を意味する。
【0017】
「完全な脱プロトン化」とは、ポリマーの種々の脱プロトン化可能な基が全て完全に脱プロトン化している状態を意味する。
【0018】
<毛髪を着色する方法>
本発明は、下記一連の:
i)少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む第1の組成物を、毛髪の第1の部分に塗布する工程と、
ii)少なくとも1つのアニオン性ポリマーを含む第2の組成物を、毛髪の第2の部分に塗布する工程と、
を実行する工程a)を含み、
第1の部分及び第2の部分が少なくとも1つの共通範囲を有する、毛髪を着色する方法に関する。
【0019】
第1の組成物後に第2の組成物を毛髪に塗布する。
【0020】
第1の組成物を塗布する毛髪の第1の部分と、第2の組成物を塗布する毛髪の第2の部分との少なくとも1つの共通範囲を有するときには、第2の組成物の少なくとも一部が、第1の組成物の少なくとも一部と同じ毛髪部分に塗布される。
【0021】
本方法は、工程a)を少なくとも一度繰り返す工程b)を更に含み、繰り返される工程a)の各々の共通範囲は、工程a)の共通範囲と、工程a)を2回以上繰り返す場合には、繰り返される別の工程a)の各々の共通範囲とを含む少なくとも1つの共通範囲を有する。これにより、一連の工程の各々において毛髪に塗布される第1の組成物及び第2の組成物の各々の少なくとも一部を、毛髪の同じ部分に塗布することが確実となる。
【0022】
工程a)及び繰り返される工程a)の第1の組成物の各々は、同じであっても異なっていてもよい。工程a)及び繰り返される工程a)の第2の組成物の各々は、同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
工程a)及び/又は繰り返される工程a)の少なくとも1つにおいて、カチオン性ポリマーはカチオン性着色ポリマーであり、及び/又はアニオン性ポリマーはアニオン性着色ポリマーである。
【0024】
工程a)及び/又は繰り返される工程a)において、カチオン性ポリマーはカチオン性着色ポリマーであってもよく、及び/又はアニオン性ポリマーはアニオン性着色ポリマーであってもよい。
【0025】
工程a)及び/又は繰り返される工程a)の各々において、第1の組成物及び第2の組成物を毛髪全体に塗布してもよい。
【0026】
工程b)では、工程a)を少なくとも少なくとも2回、代替的には少なくとも3回繰り返してもよい。代替的に工程b)では、工程a)を1回〜3回繰り返すことができる。
【0027】
本発明による方法は特に有益である。実際、本方法を実行することによって、毛髪に所望の色の仕上がり及び色強度を容易にもたらすことが可能となる。本方法は、一連の工程の各々において、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む第1の組成物を毛髪に塗布した後に、少なくとも1つのアニオン性ポリマーを含む第2の組成物を毛髪に塗布する点で、特有のものである。
【0028】
第1の組成物及び第2の組成物それぞれに含まれるカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーは、高分子量分子であるため、それらは通常、標準的な酸化染毛方法に使用される染料と比較した場合、毛髪中に拡散しないか又は少なくとも限られた範囲内でしか拡散しない。それらは通常、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの堆積を交互に行うことによって、互いの上に位置する高分子層を毛髪上に形成する。本発明による方法の一連の工程を2回以上実施することによって、3層以上の高分子層が毛髪上に得られ、したがって、得られる最終的な色の仕上がり及び色強度に対するより良好な制御をもたらすことが可能となる。毛髪に塗布する層の数を増やすことによって、色強度の大きなヘアカラーを得ることが可能となる。一連の工程を何回繰り返すかは使用者が決めることができるため、毛髪上にもたらされる色の仕上がりに関するより良好な制御をもたらすことができる。
【0029】
さらに、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む第1の組成物を塗布した後に、少なくとも1つのアニオン性ポリマーを含む第2の組成物を、毛髪に塗布することが、特に有益である。実際、第2の組成物に含まれるポリマーが負に帯電しているため、コーティングされた毛髪の外層は、天然毛髪の外層に類似する静電構造を有する。したがって、染毛プロセス後に標準的なカチオン性コンディショナーを毛髪に塗布することが可能である。
【0030】
アニオン性高分子層がカチオン性高分子層の上に位置することは、本発明による方法にとって特に重要である。実際、本方法の一連の工程を2回以上実行する場合、後続のカチオン性層をその上に塗布する実現性を得るために、アニオン性層の存在が不可欠である。理論に束縛されることを望むものではないが、実施形態によっては、アニオン性高分子層が、下に位置するカチオン性着色層のための保護層として作用し得るため、ヘアカラーの良好な洗浄堅牢度に寄与し得ると考えられる。
【0031】
さらに、本発明による方法に使用される組成物は、標準的な酸化染毛組成物とは異なり、典型的に臭気のないことから、特に有益である。
【0032】
工程a)の第1の組成物は、少なくとも1つのカチオン性着色ポリマーを含んでいてもよく、繰り返されるa)の第1の組成物は、少なくとも1つのカチオン性無着色ポリマーを含んでいてもよい。
【0033】
本方法は、工程a)後に、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む第3の組成物を、毛髪の第3の部分に塗布する工程c)を更に含んでいてもよく、毛髪の第3の部分は、工程a)の共通範囲を含む少なくとも1つの共通範囲を有するものとする。
【0034】
代替的に、本方法は、工程b)後に、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む第3の組成物を、毛髪の第3の部分に塗布する工程d)を更に含んでいてもよく、毛髪の第3の部分は、工程b)の共通範囲を含む少なくとも1つの共通範囲を有するものとする。
【0035】
工程c)及び/又は工程d)では、第3の組成物を毛髪全体に塗布してもよい。第3の組成物に含まれるカチオン性ポリマーは、カチオン性着色ポリマー又はカチオン性無着色ポリマーとしてもよい。
【0036】
カチオン性高分子層をアニオン性層の上に有することによって、使用者に、標準的な市販のコンディショナーを毛髪に塗布する場合に得られるものと類似の良好な毛髪の手触りをもたらすことが可能となる。
【0037】
本方法の一連の工程の工程i)及び/又は工程ii)は、過剰な第1の組成物及び/又は第2の組成物を、毛髪からそれぞれ除去する続くサブ工程を更に含んでいてもよい。
【0038】
本方法の一連の工程の工程i)及び/又は工程ii)は、毛髪に、熱、超音波、赤外線及び/又はマイクロ波の形でエネルギーを与える続くサブ工程を更に含んでいてもよい。このサブ工程は、第1の組成物若しくは第2の組成物を毛髪に塗布した後、又は過剰な第1の組成物若しくは第2の組成物を毛髪から除去した後のいずれでも実行することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、毛髪にエネルギーを与えることによって、毛髪上における高分子層の形成の速度が促進され得るため、毛髪上に形成された層の安定性が増大し得ると考えられる。毛髪は、5℃〜70℃、代替的には20℃〜60℃、代替的には40℃〜60℃の範囲の温度に加熱することができる。
【0039】
本方法の一連の工程の工程i)及び/又は工程ii)は、毛髪を洗浄及び/又は濯ぐ続くサブ工程を更に含むものであってもよい。毛髪は、化粧品として許容可能な(cosmetically acceptable)溶媒、化粧品として許容可能な溶媒と化粧品として許容可能な塩とを含む溶液、シャンプー組成物、及びそれらの混合物からなる群から選択される液体で洗浄及び/又は濯ぐことができる。代替的に、毛髪は、水で洗浄及び/又は濯いでもよい。
【0040】
本発明による方法を実行した後、コンディショニング剤を毛髪に塗布してもよい。以下に開示されるコンディショニング剤のいずれかを毛髪に塗布することができる。
【0041】
毛髪は、第1の一連の工程の工程i)の前に前処理することで、毛髪の一部又は毛髪全体にわたって正電荷又は負電荷の数を調整することができる。この前処理は、pH変化、酸化、還元、漂白、プラズマ処理、オゾン処理、エレクトロウェッティング、ドライ又はウェットイオントリートメント(dry or wet ion-treatment)等の化学的手段又は物理的手段を用いて行うことができる。
【0042】
毛髪の電荷に応じて、カチオン性ポリマー及び/又はアニオン性ポリマーを、程度の差はあるものの毛髪と容易に結合させることができることから、様々に帯電する毛髪の異なる部分上に異なる色の仕上がりを得ることができる。したがって、この前処理は、毛髪の異なる部分上に得られる色の仕上がりをカスタマイズするのに、例えば、毛根と毛先とで異なる色の仕上がりを得るのに役立ち得る。
【0043】
<カチオン性ポリマー>
第1の組成物に含まれるカチオン性ポリマーは、カチオン性着色ポリマー、カチオン性無着色ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0044】
工程a)及び繰り返される工程a)の第1の組成物の各々に含まれるカチオン性ポリマーの各々は、同じであっても異なっていてもよい。
【0045】
工程a)及び/又は繰り返される工程a)の少なくとも1つにおいて、カチオン性ポリマーはカチオン性着色ポリマーであってもよい。
【0046】
工程a)及び/又は繰り返される工程a)の各々において、カチオン性ポリマーはカチオン性着色ポリマーであってもよい。
【0047】
本発明によるカチオン性ポリマーは、少なくとも1つのアミノ官能基を含む少なくとも1つのモノマー単位を含んでいてもよい。アミノ官能基は、一級、二級、三級、四級アミノ官能基、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。代替的に、アミノ官能基は、一級、二級アミノ官能基、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。代替的に、アミノ官能基は二級アミノ官能基から選択され得る。
【0048】
カチオン性ポリマーは、モノマー単位当たり、少なくとも0.3、代替的には少なくとも0.6、代替的には少なくとも0.8、代替的には少なくとも1.0の正電荷の完全にプロトン化した電荷密度を有していてもよい。
【0049】
カチオン性ポリマーは、0.5kD超、代替的には0.5kD〜5000kD、代替的に2kD〜1000kD、代替的に10kD〜500kD、代替的に25kD〜70kDの重量平均分子量を有していてもよい。
【0050】
カチオン性ポリマーは、線状ポリエチレンイミン(線状PEI)、分岐状ポリエチレンイミン(分岐状PEI)、ポリアリルアミンヒドロクロリド(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMAC)、それらのコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0051】
カチオン性ポリマーは、
a)式:
【0052】
【化1】
【0053】
(式中、nは重合度を表す整数であり、nは、50〜20,000、代替的には100〜3,500の範囲である)の線状ポリエチレンイミン、
b)式:
【0054】
【化2】
【0055】
(式中、nは重合度を表す整数であり、nは、10〜4,000、代替的には50〜1,000の範囲である)の、一級、二級及び三級アミン基からなる分岐状ポリエチレンイミン、
c)式:
【0056】
【化3】
【0057】
(式中、nは重合度を表す整数であり、nは、50〜20,000、代替的には150〜800の範囲である)のポリアリルアミンヒドロクロリド(PAH)、
d)式:
【0058】
【化4】
【0059】
(式中、nは重合度を表す整数であり、nは、50〜20,000、代替的には150〜4,000の範囲である)のポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMAC)、
それらのコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0060】
カチオン性ポリマーは、化粧品として有効な分子、ケア成分、光学活性分子、医薬品として有効な分子、生物マーカー、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の化合物を含むものであってもよい。
【0061】
<アニオン性ポリマー>
第2の組成物に含まれるアニオン性ポリマーは、アニオン性着色ポリマー、アニオン性無着色ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0062】
工程a)及び繰り返される工程a)の第2の組成物の各々に含まれるアニオン性ポリマーの各々は、同じであっても異なっていてもよい。
【0063】
工程a)及び/又は繰り返される工程a)の少なくとも1つにおいて、アニオン性ポリマーはアニオン性着色ポリマーであってもよい。
【0064】
工程a)及び/又は繰り返される工程a)の各々において、アニオン性ポリマーはアニオン性着色ポリマーであってもよい。
【0065】
アニオン性ポリマーは、モノマー単位当たり、少なくとも0.3、代替的には少なくとも0.6、代替的には少なくとも0.8、代替的には少なくとも1.0の負電荷の、完全に脱プロトン化した電荷密度を有していてもよい。
【0066】
アニオン性ポリマーは、少なくとも1kD、代替的には10kD〜1000kD、代替的に70kD〜500kDの重量平均分子量を有していてもよい。
【0067】
アニオン性ポリマーは、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのモノマー単位を含んでいてもよい。代替的に、官能基は、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0068】
アニオン性ポリマーは、スルホン酸ポリスチレン(PSS)塩、λ−カラギーナン、硫酸デキストラン塩、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)塩、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース塩、それらのコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。これらの塩はナトリウム塩であってもよい。
【0069】
アニオン性ポリマーは、
a)式:
【0070】
【化5】
【0071】
(式中、nは重合度を表す整数であり、nは、50〜20,000、代替的には150〜500の範囲である)のスルホン酸ポリスチレン(PSS)ナトリウム塩、
b)式:
【0072】
【化6】
【0073】
(式中、n及びmは、重合度を表す整数であり、n+mは、50〜20,000、代替的には150〜500の範囲である)の、スルホン酸ポリスチレン(PSS)ナトリウム塩とポリ(4−スチレンスルホン酸−co−マレイン酸)とのコポリマー、
c)λ−カラギーナン、
d)硫酸デキストランナトリウム塩、
e)式:
【0074】
【化7】
【0075】
(式中、nは重合度を表す整数であり、nは、50〜20,000、代替的には150〜1,000の範囲である)のポリアクリル酸(PAA)、
f)アルギン酸ナトリウム塩、
g)式:
【0076】
【化8】
【0077】
(式中、RはH又は(CHCOONaであり、nは重合度を表す整数である)のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、
それらのコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0078】
アニオン性ポリマーは、化粧品として有効な分子、ケア成分、光学活性分子、医薬品として有効な分子、生物マーカー、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の化合物を含むものであってもよい。
【0079】
<カチオン性着色ポリマー及びアニオン性着色ポリマー>
カチオン性着色ポリマー及びアニオン性着色ポリマーは、少なくとも1つのクロモフォア及び/又は少なくとも1つのフルオロフォアを含む。上記に例示したカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーのいずれかは、少なくとも1つのクロモフォア及び/又は少なくとも1つのフルオロフォアを骨格又はペンダント基のいずれかに含み得るものである。
【0080】
クロモフォアは、ニトロベンゼン、アゾ、イミン、ヒドラジン、フェノチアジン、キサンテン、フェナントリジン、フタロシアニン(phthalocyanin)及びトリアリールメタン系染料に由来するラジカル、カルボニル基を含有する直接染料から得られるもの、並びにそれらの混合物からなる群から選択され得る。クロモフォアは、アクリドン、ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、ベンズアントロン、アンサントロン(anthranthrone)、ピラントロン、ピラゾールアントロン、ピリミジノアントロン、フラバントロン、インダントロン、フラボン、(イソ)ビオラントロン、イソインドリノン、ベンゾイミダゾロン、イソキノリノン、アントラピリドン、ピラゾロキナゾロン、ペリノン、キナクリドン、キノフタロン、インジゴイド、チオインジゴ、ナフタルイミド、アントラピリミジン、ジケトピロロピロール、及びクマリン染料、及びそれらの混合物由来のラジカルからなる群から選択され得る。
【0081】
クロモフォアは、少なくとも1つのアミン、ヒドロキシル、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、又はハロゲン基で置換することができる。これらの発色団を、酸性ニトロ直接染料、酸性アゾ染料、酸性アジン染料、酸性トリアリールメタン染料、酸性インドールアミン(indoamine)染料、及び非キノン酸性天然染料、並びにそれらの混合物由来のラジカルからなる群から選択され得る。
【0082】
クロモフォアは、本出願の直接染料セクションに例示される直接染料のいずれかの誘導体からも選択することができる。
【0083】
フルオロフォアは、ジ、テトラ、又はヘキサスルホン酸化されたトリアジン−スチルベン、クマリン、イミダゾリン、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾリン、ビフェニル−スチルベン光学光沢剤、及びそれらの混合物由来のラジカルからなる群から選択され得る。
【0084】
カチオン性着色ポリマー又はアニオン性着色ポリマーは、同一タイプのクロモフォア及び/又はフルオロフォア、又は異なるタイプのクロモフォア及び/又はフルオロフォアを含んでいてもよい。異なるタイプのクロモフォア及び/又はフルオロフォアを含むカチオン性着色ポリマー又はアニオン性着色ポリマーを有することは、広範囲の色合い(colour shades)を網羅するのに役立ち得るものであり、かかる広範囲の色合いは、第1の組成物又は第2の組成物がこのようなカチオン性着色ポリマー又はこのようなアニオン性着色ポリマーを含む本発明の方法に従って着色される毛髪上にもたらされ得る。
【0085】
カチオン性着色ポリマーは、
i.式:
【0086】
【化9】
【0087】
(式中、n及びmは重合度を表す整数であり、m/nは0〜1,000の範囲であり、但しnは0と異なり、及び/又はm+nは、50〜20,000、代替的には100〜3,500の範囲である)の着色線状又は分岐状ポリエチレンイミン(PEI)、
ii.式:
【0088】
【化10】
【0089】
(式中、n及びmは重合度を表す整数であり、m/nは0〜1,000の範囲であり、但しnは0と異なり、及び/又はm+nは、50〜20,000、代替的には150〜800の範囲である)の着色ポリアリルアミンヒドロクロリド、
iii.式:
【0090】
【化11】
【0091】
(式中、n及びmは重合度を表す整数であり、m/nは0〜1,000の範囲であり、但しnは0と異なり、及び/又はm+nは、50〜20,000、代替的には100〜3,500の範囲である)の着色ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、
からなる群から選択されていてもよく、
なお、DYEは、ポリマー骨格に、直接、又は1個〜10個の炭素原子若しくは1個〜6個の炭素原子を含有する飽和若しくは不飽和の線状若しくは分岐状炭化水素系鎖を介するいずれかで結合するクロモフォア又はフルオロフォアを表す。これらのポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであってもよい。
【0092】
カチオン性着色ポリマーは、式:
【0093】
【化12】
【0094】
(式中、n及びmは重合度を表す整数であり、m/nは0〜1,000の範囲であってもよく、但しnは0と異なり、及び/又はm+nは、50〜20,000、代替的には100〜3,500の範囲であってもよい)の線状ポリエチレンイミン(PEI)−ローダミンBから選択され得る。これらのポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであってもよい。
【0095】
アニオン性着色ポリマーは、下記式:
【0096】
【化13】
【0097】
(式中、n及びmは重合度を表す整数であり、m/nは0〜1,000の範囲であってもよく、但しnは0と異なり、及び/又はm+nは、50〜20,000、代替的には150〜500の範囲であってもよい)を有するアニオン性着色ポリマーから選択されていてもよく、
なお、DYEは、ポリマー骨格に、直接、又は1個〜10個の炭素原子若しくは1個〜6個の炭素原子を含有する飽和若しくは不飽和の線状若しくは分岐状炭化水素系鎖を介するいずれかで結合するクロモフォア又はフルオロフォアを表す。これらのポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであってもよい。
【0098】
<組成物>
<溶媒>
本発明による方法を実行するのに使用される第1の組成物及び/又は第2の組成物は、溶媒を更に含んでいてもよい。溶媒は、水、又は、水と典型的に水に十分に溶解しないと考えられる化合物を溶解する少なくとも1つの有機溶媒との混合物から選択され得る。第1の組成物及び/又は第2の組成物は水性組成物であってもよい。
【0099】
好適な有機溶媒には、C1〜C4低級アルカノール(例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール);芳香族アルコール(例えばベンジルアルコール及びフェノキシエタノール);ポリオール及びポリオールエーテル(例えばカルビトール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、モノメチルエーテル、ヘキシレングリコール、グリセロール、エトキシグリコール、ブトキシジグリコール、エトキシジグリセロール、ジプロピレングリコール(dipropyleneglocol)、ポリグリセロール);炭酸プロピレン;及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0100】
溶媒は、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、1,2−プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、エトキシジグリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0101】
典型的に組成物は、水を、主成分として、特に、組成物の総重量に対して、少なくとも50%、代替的には少なくとも60%、代替的には少なくとも70%の範囲の総量で含むことができる。典型的に、組成物は、組成物の総重量に対して約1%〜約30%の範囲の総量の有機溶媒(存在する場合)を含む。
【0102】
<濃度>
第1の組成物は、0.1g/L〜100g/L、代替的には0.5g/L〜100g/L、代替的には2g/L〜50g/L、代替的には5g/L〜10g/Lの範囲の総濃度のカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0103】
第2の組成物は、0.1g/L〜100g/L、代替的には0.5g/L〜100g/L、代替的には2g/L〜50g/L、代替的には5g/L〜10g/Lの範囲の総濃度のアニオン性ポリマーを含むことができる。
【0104】
<pH>
第1の組成物及び/又は第2の組成物は、2〜14、代替的には3〜11、代替的には5〜10、代替的には7〜9の範囲のpHを有していてもよい。
【0105】
<塩>
第1の組成物及び/又は第2の組成物は、化粧品として許容可能な塩を、0mol/L〜1.5mol/L、代替的には0.05mol/L〜1mol/L、代替的には0.2mol/L〜0.5mol/Lの範囲の濃度で含んでいてもよい。
【0106】
化粧品として許容可能な塩は、有機塩、無機塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。有機塩はクエン酸ナトリウムであってもよい。無機塩は、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。化粧品として許容可能な塩は塩化ナトリウムであってもよい。
【0107】
<塗布具>
第1の組成物及び/又は第2の組成物は、刷毛又はスポンジ等の塗布具を用いて毛髪に塗布してもよい。代替的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、第1の組成物及び/又は第2の組成物を毛髪に噴霧若しくは発泡させることによって、又は、毛髪を第1の組成物及び/又は第2の組成物中に浸漬させることによって、毛髪に塗布してもよい。代替的には、印刷技術を用いて毛髪に第1の組成物及び/又は第2の組成物を塗布してもよい。
【0108】
<ヘアカラー>
本発明はまた、本発明による方法によって得られるヘアカラーに関する。上記で既に説明したように、ヘアカラーの構造は、カチオン性着色ポリマーとアニオン性ポリマーとの交互堆積により形成される交互高分子層から作られる点で特有のものである。
【0109】
<染毛キット>
本発明はまた、上記に規定した第1の組成物を含む第1の区画と、上記に規定した第2の組成物を含む第2の区画とを備える染毛キットに関する。
【0110】
<他の成分>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の特性を更に向上させるために、特許請求の範囲によって除外されない限り、上述の成分に加えて、更なる成分を含むものであってもよい。
【0111】
好適な更なる成分には、酸化剤;アルカリ化剤;酸化染料前駆体、直接染料;キレート物質;ラジカルスカベンジャー;pH調整剤、及び緩衝剤;増粘剤及び/又はレオロジー調整剤;炭酸イオン源;ペルオキシ一炭酸イオン源;アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性すなわち双性イオン界面活性剤、及びそれらの混合物;アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性すなわち双性イオンポリマー、及びそれらの混合物;香料;酵素;分散剤;過酸化物安定剤;抗酸化剤;天然成分(例えばタンパク質、タンパク質化合物、及び植物抽出物);コンディショニング剤(例えばシリコーン及びカチオン性ポリマー);セラミド;保存剤;乳白剤及びパール剤(例えば二酸化チタン及びマイカ);並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0112】
上記で言及したものの、以下に特に記載しない好適な更なる成分は、International Cosmetics Ingredient Dictionary and Handbook, (8th ed.; The Cosmetics, Toiletry, and Fragrance Association)に挙げられるものである。特に、vol. 2, sections 3 (Chemical Classes)及び4 (Functions)が、特定の目的又は複数の目的を実現するような具体的な補助剤を特定する上で有用である。これらの成分の幾つかについて以下で議論するが、これは当然ながら包括的なものではない。
【0113】
<酸化剤>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、少なくとも1つの酸化剤供給源を更に含むものであってもよい。当該技術分野において既知の任意の酸化剤を使用することができる。好ましい酸化剤は水溶性ペルオキシゲン酸化剤である。本明細書中で使用される場合、「水溶性」とは、標準的な条件において、少なくとも0.1g、好ましくは約1g、より好ましくは10gの酸化剤が、25℃で1リットルの脱イオン水に溶解し得ることを意味する。酸化剤は、初期の可溶化及びメラニンの脱色(漂白)に役立ち、毛幹において酸化染料前駆体の酸化(酸化染色)を促進させるものである。
【0114】
第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、0.1%〜10%、代替的には1%〜7%、代替的には2%〜5%の範囲の総量の酸化剤を含むことができる。
【0115】
好適な水溶性酸化剤としては、水溶液中に過酸化水素をもたらすことができる無機ペルオキシゲン材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
代替的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、1%未満、代替的には0.5%未満、代替的には0.3%未満、代替的には0.1%未満の総量の酸化剤を含むことができる。代替的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は酸化剤を含んでいなくてもよい。少量の酸化剤を含むか、それどころか酸化剤を一切含まない第1の組成物及び/又は第2の組成物を有することによって、これらの組成物は通常、高濃度の酸化剤を通常含む標準的な染毛組成物よりも毛髪にダメージを及ぼすことが少ない。
【0117】
好適な水溶性ペルオキシゲン酸化剤には、過酸化水素;無機アルカリ金属過酸化物(例えば過ヨウ素酸ナトリウム及び過酸化ナトリウム);有機過酸化物(例えば過酸化物尿素及びメラミン過酸化物);無機過酸化水素化物塩漂白化合物(例えば過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩、過硫酸塩等のアルカリ金属塩);及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。無機過酸化水素化物塩を例えば一水和物、四水和物として組み込むことができる。アルキル/アリール過酸化物及び/又はペルオキシダーゼも使用することができる。所望であれば、2つ以上のかかる酸化剤の混合物を使用することもできる。酸化剤は、水溶液で、又は使用前に溶解させる粉末として供給してもよい。
【0118】
第1の組成物及び/又は第2の組成物は、過酸化水素、過炭酸塩(酸化剤と、炭酸イオン及び/又はアンモニウムイオンとの両者の供給源を供給するのに使用され得る)、過硫酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される水溶性酸化剤を含むものであってもよい。
【0119】
本発明の第1の組成物及び/又は第2の組成物が、使用前に顕色剤組成物と毛髪用染料組成物とを混合することによって得られる場合、酸化剤は顕色剤組成物中に存在し得る。顕色剤組成物は、任意の商品、例えば水中油型エマルションを含む任意の望ましい配合の枠組み(formulation chassis)に基づくものとすることができる。典型的な顕色剤組成物は、顕色剤組成物の総重量に対して約6%又は約9%のHを含む。商品例は、約6%及び約9%のHをそれぞれ含む、Wellaにより販売されている、INCI成分である、水、H、セテアリルアルコール、セテアレス−25、サリチル酸、リン酸、リン酸二ナトリウム、エチドロン酸を含むWelloxon(商標)エマルションである。
【0120】
<アルカリ化剤>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、少なくとも1つのアルカリ化剤を更に含んでいてもよい。当該技術分野において既知の任意のアルカリ化剤を使用することができる。
【0121】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、0.1%〜10%、代替的には0.5%〜6%、代替的には1%〜4%の範囲の総量のアルカリ化剤を含むことができる。
【0122】
代替的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、1%未満、代替的には0.5%未満、代替的には0.3%未満、代替的には0.1%未満の総量のアルカリ化剤を含むことができる。代替的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物はアルカリ化剤を含んでいなくてもよい。好適なアルカリ化剤には、アンモニア;アルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、及び2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール);グアニジン塩;アルカリ金属及び水酸化アンモニウム(例えば水酸化ナトリウム);アルカリ金属及び炭酸アンモニウム;並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。典型的なアルカリ化剤はアンモニア及び/又はモノエタノールアミンである。
【0123】
第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、1%未満、代替的には0.5%未満、代替的には0.3%未満、代替的には0.1%未満の総量のアンモニアを含むことができる。代替的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物はアンモニアを含んでいなくてもよい。これらの実施形態は、かかる組成物が臭気のない点で特に興味深い。
【0124】
好ましくは、存在する場合、アンモニウムイオン及び炭酸イオンが、3:1〜1:10、代替的には2:1〜1:5の重量比で組成物中に存在する。
【0125】
本発明の組成物が、使用前に顕色剤と毛髪用染料組成物とを混合することによって得られる場合、アルカリ化剤は概して、毛髪用染料組成物中に存在する。
【0126】
<酸化染料前駆体>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、通常、一次中間体(顕色剤としても知られる)又はカプラー(二次中間体としても知られる)のいずれかとして分類される酸化染料前駆体を更に含んでいてもよい。種々の色調を得るために、様々なカプラーを一次中間体とともに使用してもよい。酸化染料前駆体は、遊離塩基又はそれらの化粧品として許容可能な塩であってもよい。
【0127】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、最大12%、代替的には0.1%〜10%、代替的には0.3%〜8%、代替的には0.5%〜6%の範囲の総量の酸化染料前駆体を含むことができる。
【0128】
好適な一次中間体には、トルエン−2,5−ジアミン、p−フェニレンジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、ヒドロキシプロピル−ビス−(N−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン)、2−メトキシメチル−p−フェニレンジアミン、2−(1,2−ジヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2,2’−(2−(4−アミノフェニルアミノ)エチルアザンジイル)ジエタノール、2−(2,5−ジアミノ−4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオール、2−(7−アミノ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン−4(3H)−イル)エタノール、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェノール、p−(メチルアミノ)フェノール、4−アミノ−m−クレゾール、6−アミノ−m−クレゾール、5−エチル−o−アミノフェノール、2−メトキシ−p−フェニレンジアミン、2,2’−メチレンビス−4−アミノフェノール、2,4,5,6−テトラアミノピリミジン、2,5,6−トリアミノ−4−ピリミジノール、1−ヒドロキシエチル−4,5−ジアミノピラゾール硫酸塩、4,5−ジアミノ−1−メチルピラゾール、4,5−ジアミノ−1−エチルピラゾール、4,5−ジアミノ−1−イソプロピルピラゾール、4,5−ジアミノ−1−ブチルピラゾール、4,5−ジアミノ−1−ペンチルピラゾール、4,5−ジアミノ−1−ベンジルピラゾール、2,3−ジアミノ−6,7−ジヒドロピラゾロ[1,2−a]ピラゾール−1(5H)−オン ジメソスルホン酸塩(dimethosulfonate)、4,5−ジアミノ−1−ヘキシルピラゾール、4,5−ジアミノ−1−ヘプチルピラゾール、メトキシメチル−1,4−ジアミノベンゼン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(4−アミノフェニル)−1,2−ジアミノサン、2−[(3−アミノピラゾロ[1,5−a]ピリジン−2−イル)オキシ]エタノールヒドロクロリド、それらの塩、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0129】
好適なカプラーには、レゾルシノール、4−クロロレゾルシノール、2−クロロレゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4,6−ジクロロベンゼン−1,3−ジオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジオール、m−アミノフェノール、4−アミノ−2−ヒドロキシトルエン、2−メチル−5−ヒドロキシエチルアミノフェノール、3−アミノ−2,6−ジメチルフェノール、3−アミノ−2,4−ジクロロフェノール、5−アミノ−6−クロロ−o−クレゾール、5−アミノ−4−クロロ−o−クレゾール、6−ヒドロキシベンゾモルホリン、2−アミノ−5−エチルフェノール、2−アミノ−5−フェニルフェノール、2−アミノ−5−メチルフェノール、2−アミノ−6−メチルフェノール、2−アミノ−5−エトキシフェノール、5−メチル−2−(メチルアミノ)フェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、1,3−ビス−(2,4−ジアミノフェノキシ)−プロパン、2,2’−(2−メチル−1,3−フェニレン)ビス(アザンジイル)ジエタノール、ベンゼン−1,3−ジアミン、2,2’−(4,6−ジアミノ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ)ジエタノール、3−(ピロリジン−1−イル)アニリン、1−(3−(ジメチルアミノ)フェニル)ウレア、1−(3−アミノフェニル)ウレア、1−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、1,5−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、又は1−アセトキシ−2−メチルナフタレン、4−クロロ−2−メチルナフタレン−1−オール、4−メトキシ−2−メチルナフタレン−1−オール、2,6−ジヒドロキシ−3,4−ジメチルピリジン、2,6−ジメトキシ−3,5−ピリジンジアミン、3−アミノ−2−メチルアミノ−6−メトキシピリジン、2−アミノ−3−ヒドロキシピリジン、2,6−ジアミノピリジン、ピリジン−2,6−ジオール、5,6−ジヒドロキシインドール、6−ヒドロキシインドール、5,6−ジヒドロキシインドリン、3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−5(4H)−オン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルアミノ)エタノール(ヒドロキシエチル−3,4−メチレンジオキシアニリンとしても知られる)、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0130】
本発明の組成物が、毛髪用染料組成物と顕色剤組成物とを混合することによって得られる場合、一次中間体及びカプラーは通常、毛髪用染料組成物中に組み込まれる。
【0131】
<直接染料>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、適合性のある直接染料を、特に強度に対して、付加的な着色をもたらすのに十分な量で更に含んでいてもよい。典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、約0.05%〜約4%の範囲の総量の直接染料を含むことができる。
【0132】
好適な直接染料には、酸染料、例えばアシッドイエロー1、アシッドオレンジ3、アシッドブラック1、アシッドブラック52、アシッドオレンジ7、アシッドレッド33、アシッドイエロー23、アシッドブルー9、アシッドバイオレット43、HCブルー16、アシッドブルー62、アシッドブルー25、アシッドレッド4;塩基染料、例えばベーシックブラウン17、ベーシックレッド118、ベーシックオレンジ69、ベーシックレッド76、ベーシックブラウン16、ベーシックイエロー57、ベーシックバイオレット14、ベーシックブルー7、ベーシックブルー26、ベーシックレッド2、ベーシックブルー99、ベーシックイエロー29、ベーシックレッド51、ベーシックオレンジ31、ベーシックイエロー87、ベーシックブルー124、4−(3−(4−アミノ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−1−イルアミノ)プロピル)−4−メチルモルホリン−4−イウム−メチル硫酸塩、(E)−1−(2−(4−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)ジアゼニル)フェニル)(エチル)アミノ)エチル)−3−メチル−1H−イミダゾール−3−イウムクロリド、(E)−4−(2−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)ジアゼニル)−1−メチル−1H−イミダゾール−3−イウム−3−イル)ブタン−1−スルホン酸塩、(E)−4−(4−(2−メチル−2−フェニルヒドラゾノ)メチル)ピリジンイウム−1−イル)ブタン−1−スルホン酸塩、N,N−ジメチル−3−(4−(メチルアミノ)−9,10−ジオキソ−4a,9,9a,10−テトラヒドロアントラセン−1−イルアミノ)−N−プロピルプロパン−1−アミニウムブロミド;分散染料、例えばディスパースレッド17、ディスパースバイオレット1、ディスパースレッド15、ディスパースブラック9、ディスパースブルー3、ディスパースブルー23、ディスパースブルー377;ニトロ染料、例えば1−(2−(4−ニトロフェニルアミノ)エチル)ウレア、2−(4−メチル−2−ニトロフェニルアミノ)エタノール、4−ニトロベンゼン−1,2−ジアミン、2−ニトロベンゼン−1,4−ジアミン、ピクラミン酸、HCレッドNo.13、2,2’−(2−ニトロ−1,4−フェニレン)ビス(アザンジイル)ジエタノール、HCイエローNo.5、HCレッドNo.7、HCブルーNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.2、HCオレンジNo.1、HCレッドNo.1、2−(4−アミノ−2−クロロ−5−ニトロフェニルアミノ)エタノール、HCレッドNo.3、4−アミノ−3−ニトロフェノール、4−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−ニトロフェノール、2−アミノ−3−ニトロフェノール、2−(3−(メチルアミノ)−4−ニトロフェノキシ)エタノール、3−(3−アミノ−4−ニトロフェニル)プロパン−1,2−ジオール、HCイエローNo.11、HCバイオレットNo.1、HCオレンジNo.2、HCオレンジNo.3、HCイエローNo.9、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−4,6−ジニトロフェノール、HCブルーNo.12、HCイエローNo.6、HCイエローNo.12、HCブルーNo.10、HCイエローNo.7、HCイエローNo.10、HCブルーNo.9、2−クロロ−6−(エチルアミノ)−4−ニトロフェノール、6−ニトロピリジン−2,5−ジアミン、HCバイオレットNo.2、2−アミノ−6−クロロ−4−ニトロフェノール、4−(3−ヒドロキシプロピルアミノ)−3−ニトロフェノール、HCイエローNo.13、6−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、HCレッドNo.14、HCイエローNo.15、HCイエローNo.14、N2−メチル−6−ニトロピリジン−2,5−ジアミン、N1−アリル−2−ニトロベンゼン−1,4−ジアミン、HCレッドNo.8、HCグリーンNo.1、HCブルーNo.14;天然染料、例えばアナトー、アントシアニン、ビートルート、カロチン、カプサンチン、リコピン、クロロフィル、ヘンナ、インジゴ、コチニール;及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0133】
本組成物が、毛髪用染料組成物と顕色剤組成物とを混合することによって得られる場合、直接染料は通常、毛髪用染料組成物中に組み込まれる。
【0134】
<キレート物質(Chelants)>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、キレート物質(「キレート剤(chelating agent)」、「金属イオン封鎖剤(sequestering agent)」又は「金属イオン封鎖物質(sequestrant)」としても知られる)を、配合成分、特に酸化剤、より特には過酸化物との相互作用に利用され得る金属の量を低減するのに十分な量で更に含んでいてもよい。キレート物質は、当該技術分野においてよく知られており、包括的なものではないがそれらのリストは、AE Martell & RM Smith, Critical Stability Constants, Vol. 1, Plenum Press, New York & London (1974)及びAE Martell & RD Hancock, Metal Complexes in Aqueous Solution, Plenum Press, New York & London (1996)(両者は引用することにより本明細書の一部をなす)において見ることができる。
【0135】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも0.01%、代替的には0.01%〜5%、代替的には0.25%〜3%、代替的には0.5%〜1%の範囲の総量のキレート物質を含むことができる。
【0136】
好適なキレート物質としては、カルボン酸(アミノカルボン酸等)、ホスホン酸(アミノホスホン酸等)、ポリリン酸(線状ポリリン酸等)、それらの塩及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。「それらの塩」とは、キレート物質においては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩、及びそれらの混合物;代替的には、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及びそれらの混合物;代替的には、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、及びそれらの混合物について言及されるとともにこれらを含む、キレート物質と同じ官能性構造を含む全ての塩を意味するものである。
【0137】
好適なアミノカルボン酸キレート物質は、少なくとも1つのカルボン酸部位(−COOH)と、少なくとも1つの窒素原子とを含む。好適なアミノカルボン酸キレート物質には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミンジグルタル酸(EDGA)、2−ヒドロキシプロピレンジアミンジコハク酸(HPDS)、グリシンアミド−N,N’−ジコハク酸(GADS)、エチレンジアミン−N−N’−ジグルタル酸(EDDG)、2−ヒドロキシプロピレンジアミン−N−N’−ジコハク酸(HPDDS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジシステイン酸(EDC)、エチレンジアミン−N−N’−ビス(オルト−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、ジアミノアルキルジ(スルホコハク酸)(DDS)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HBED)、それらの塩、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。他の好適なアミノカルボン酸型キレート物質には、イミノ二酢酸誘導体、例えばN−2−ヒドロキシエチルN,N二酢酸又はグリセリルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸−N−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸及びアスパラギン酸N−カルボキシメチルN−2−ヒドロキシプロピル−3−スルホン酸、β−アラニン−N,N’−二酢酸、アスパラギン酸−N,N’−二酢酸、アスパラギン酸−N−一酢酸及びイミノジコハク酸キレート物質、エタノールジグリシン酸、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。更なる好適なアミノカルボン酸型キレート物質には、ジピコリン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0138】
好適なアミノホスホン酸キレート物質は、アミノホスホン酸部位(−PO)又はその誘導体−PO(RはC〜Cアルキル又はアリールラジカル及びそれらの塩である)を含む。好適なアミノホスホン酸キレート物質には、アミノトリ−(1−エチルホスホン酸)、エチレン−ジアミンテトラ−(1−エチルホスホン酸)、アミノトリ−(1−プロピルホスホン酸)、アミノトリ−(イソプロピルホスホン酸)、それらの塩、及びそれらの混合物;代替的にアミノトリ−(メチレンホスホン酸)、エチレン−ジアミン−テトラ−(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、及びジエチレン−トリアミン−ペンタ−(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0139】
好適な代替的なキレート物質には、ポリエチレンイミン、ポリリン酸キレート物質、エチドロン酸、メチルグリシン二酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、イミノジコハク酸(minodisuccinnic acid)、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、N−ラウロイル−N,N’,N’’−エチレンジアミン二酢酸、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0140】
特定の実施形態において、組成物は、ジエチレントリアミン−N,N’,N’’−ポリ酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、ジアミン−N,N’−ジポリ酸、モノアミンモノアミド−N,N’−ジポリ酸、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの混合物;代替的にエチレンジアミンジコハク酸(EDDS)からなる群から選択されるキレート物質を含む。
【0141】
本発明の組成物が、毛髪用染料組成物と顕色剤組成物とを混合することによって得られる場合、キレート物質は、毛髪用染料組成物及び/又は顕色剤組成物中に組み込まれ得る。キレート物質は通常、安定性の理由から顕色剤組成物中に存在する。
【0142】
<ラジカルスカベンジャー>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、ラジカルスカベンジャーを更に含んでいてもよい。本明細書中で使用される場合、「ラジカルスカベンジャー」という用語は、ラジカル、好ましくは炭酸ラジカルと反応して、一連の高速反応によりラジカル種を反応性の低い化学種へと変換させ得る化学種を指すものとする。一実施形態において、ラジカルスカベンジャーは、アルカリ化剤と異なるものとし、及び/又は着色/漂白プロセス中の毛髪に対するダメージを減らすのに十分な量で存在するものとする。
【0143】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、0.1%〜10%、代替的には1重量%〜7%の範囲の総量のラジカルスカベンジャーを含むことができる。
【0144】
好適なラジカルスカベンジャーには、アルカノールアミン、アミノ糖、アミノ酸、アミノ酸のエステル、及びそれらの混合物;代替的に、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、1−アミノ−2−プロパノール、1−アミノ−2−ブタノール、1−アミノ−2−ペンタノール、1−アミノ−3−ペンタノール、1−アミノ−4−ペンタノール、3−アミノ−2−メチルプロパン−1−オール、1−アミノ−2−メチルプロパン−2−オール、3−アミノプロパン−1,2−ジオール、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、グリシン、アルギニン、リシン、プロリン、グルタミン、ヒスチジン、サルコシン、セリン、グルタミン酸、トリプトファン、それらの塩、及びそれらの混合物;代替的にグリシン、サルコシン、リシン、セリン、2−メトキシエチルアミン、グルコサミン、グルタミン酸、モルホリン、ピペリジン(piperdine)、エチルアミン、3−アミノ−1−プロパノール、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書において使用される場合、「それらの塩」という用語は、ラジカルスカベンジャーにおいては特にカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、及びそれらの混合物を意味する。
【0145】
<pH調整剤及び緩衝剤>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、上述のアルカリ化剤に加えて、pH調整剤及び/又は緩衝剤を更に含んでいてもよい。
【0146】
好適なpH調整剤及び/又は緩衝剤には、アンモニア;アルカノールアミド(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3,−プロパンジオール);グアニジン塩;アルカリ金属及びアンモニウムの水酸化物及び炭酸塩;並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0147】
更なるpH調整剤及び/又は緩衝剤には、水酸化ナトリウム;炭酸アンモニウム;酸味料(acidulents)(例えばリン酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、又は酒石酸、塩酸を含む無機及び無機酸);及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0148】
<増粘剤及び/又はレオロジー調整剤>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、増粘剤を、組成物に粘度を付与するのに十分な量で更に含んでいてもよく、そのため、これらの組成物は、毛髪から過度に液垂れせずに散らかることなく、毛髪に容易に塗布することができるようになる。
【0149】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも0.1%、代替的には少なくとも0.5%、代替的には少なくとも1%の範囲の総量の増粘剤を含むことができる。
【0150】
好適な増粘剤としては、会合性ポリマー、多糖、非会合性ポリカルボン酸ポリマー、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
<炭酸イオン供給源>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、炭酸イオン、カルバミン酸イオン、炭酸水素イオンの供給源、及びそれらの混合物を、着色プロセス中の毛髪に対するダメージを減らすのに十分な量で更に含んでいてもよい。
【0152】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、0.1%〜15%、代替的には0.1%〜10%、代替的には1%〜7%の範囲の総量の炭酸イオン供給源を含むことができる。
【0153】
好適な炭酸イオン供給源には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びそれらの混合物;代替的に、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、及びそれらの混合物;代替的に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0154】
<コンディショニング剤>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、コンディショニング剤を更に含むものであってもよく、及び/又はコンディショニング剤を含む組成物と併せて使用されるものであってもよい。
【0155】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、0.05%〜20%、代替的には0.1%〜15%、代替的には0.2%〜10%、代替的には0.2%〜2%、代替的には0.5%〜2%の範囲の総量のコンディショニング剤を含むことができる。コンディショニング剤は、別個の前処理組成物及び/又は後処理組成物中に含まれるものであってもよい。
【0156】
好適なコンディショニング剤としては、シリコーン、アミノシリコーン、脂肪アルコール、高分子樹脂、ポリオールカルボン酸エステル、カチオン性ポリマー、カチオン性界面活性剤、不溶性油及び油由来の材料、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。付加的なコンディショニング剤は、鉱油、並びにグリセリン及びソルビトール等の他の油を含む。
【0157】
<界面活性剤>
本発明による第1の組成物及び/又は第2の組成物は、界面活性剤を更に含んでいてもよい。好適な界面活性剤は概して、炭素原子約8個〜約30個の親油性鎖長を有し、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0158】
典型的に、第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、1%〜60%、代替的には2%〜30%、代替的には8%〜25%、代替的には10%〜20%の範囲の総量の界面活性剤を含むことができる。
【0159】
第1の組成物及び/又は第2の組成物は、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤と、1つ以上の非イオン性界面活性剤との混合物を含むものであってもよい。第1の組成物及び/又は第2の組成物は、組成物の総重量に対して、0.1%〜20%、代替的には0.1%〜15%、代替的には5%〜15%の範囲の総量のアニオン性界面活性剤を含むことができ、また、組成物の総重量に対して、互いに独立して0.1%〜15%、代替的には0.5%〜10%、代替的には1%〜8%の範囲であってもよい総量の両性及び/又は非イオン性成分を含むことができる。
【0160】
<イオン強度>
本発明の第1の組成物及び/又は第2の組成物は、約1.35モル/kg未満、代替的には約0.10モル/kg〜約0.75モル/kg、代替的には約0.20モル/kg〜約0.60モル/kgの、本明細書中に規定されるイオン強度を更に有することができる。理論に束縛されるものではないが、イオン強度値は、得られる粘度及び組成物の根本への付着特性(root adhesion properties)にも影響を与える可能性があると考えられる。イオン強度は、染料、硫酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、抗酸化剤及びキレート物質(EDDS等)といった塩の供給源の影響を受けることがある。染料は、イオン強度に最も大きな作用を与える傾向にあるため、粘度及び根本への付着性の問題を避けるために、任意の特定の色調を付与するための添加量を、イオン強度及び染料結果の面から考慮する必要がある。
【0161】
組成物のイオン強度は、その溶液中に存在する全てのイオンの濃度の関数であり、式:
【0162】
【数1】
【0163】
(式中、m=イオンiの重量モル濃度(M=mol/Kg HO)であり、z=そのイオンの電荷数であり、溶液中の全てのイオンについて合計される)に従って求められる。例えば、塩化ナトリウム等の1:1電解質では、イオン強度は濃度に等しいが、MgSOでは、イオン強度が4倍大きくなる。概して、多価イオンはイオン強度に大きく寄与する。
【0164】
例えば、0.050M NaSOと0.020M NaClとの混合溶液のイオン強度は、I=1/2((2×(+1)×0.050)+(+1)×0.020+(−2)×0.050+(−1)×0.020)=0.17Mである。
【0165】
<フォーム>
本発明の第1の組成物及び/又は第2の組成物は、毛髪に塗布されるフォームの形態で提供されるものであってもよい。フォーム製剤は典型的に、手動操作型の発泡装置と併せて、組成物に組み込まれる発泡剤を使用することによって実現される。かかる手動操作型の発泡装置は、当該技術分野において既知のものであり、エアロゾル装置、スクイーズフォーマー及びポンプフォーマーが挙げられる。
【0166】
好適な発泡剤には、界面活性剤、例えばアニオン性、非イオン性、及び両性の界面活性剤(非イオン性界面活性剤が好ましい);多糖;ポリビニルピロリドン、及びそのコポリマー;アクリルポリマー、例えばアクリル酸コポリマー(Aculyn 33)及びアクリレート/ステアレス−20メタクリレート(Aculyn 22);C12〜C24脂肪酸、例えばステアリン酸塩、及びそれらの混合物が挙げられる。
【実施例】
【0167】
以下は、本発明の組成物の非限定的な実施例である。これらの実施例は、説明のために挙げているに過ぎず、本発明を限定するように解釈されるものではないため、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、それらの多くの変更形態も実行可能であり、このような変更形態は当業者によって認識されるものと考えられる。
【0168】
下記セクションにおいて、種々の組成物を調製するのに用いられる溶媒は、別段の定めがない限り水とする。
【0169】
本発明による方法に使用され得る種々のカチオン性又はアニオン性着色ポリマーを得る合成方法:
<カチオン性着色ポリマー>
ローダミンBイソチオシアネートで標識したポリアリルアミンヒドロクロリド(PAH−RhoB iso):
出発材料:
Sigma Aldrichから入手可能なポリアリルアミンヒドロクロリド(PAH)、Mw=56,000Da(CAS:71550−12−4)
Sigma-Aldrichから入手可能なローダミンBイソチオシアネート(RhoB_iso)(CAS:36877−69−7)
合成方法:
ポリアリルアミンヒドロクロリド(PAH)をローダミンBイソチオシアネート(RhoB_iso)で標識するために、以下の方法を使用した:
1)60mgのポリアリルアミンヒドロクロリド(PAH)を、10mLの炭酸バッファー(pH9)に溶解し、
2)溶解したポリマーを、1mLのDMSOに溶解させた1mgのローダミンBイソチオシアネート(RhoB_iso)と混合し、
3)4℃で24時間撹拌し、得られる混合物を蒸留水に対して透析する。
【0170】
ローダミンBで標識した分岐状ポリエチレンイミン(PEI−RhoB iso):
出発材料:
BASFから入手可能な分岐状ポリエチレンイミン(PEI)、LUPASOL G 500、Mw=25,000Da(CAS:9002−98−6)
Sigma-Aldrichから入手可能なローダミンBイソチオシアネート(RhoB_iso)(CAS:36877−69−7)
合成方法:
PAHをPEIに置き換えた、ポリアリルアミンヒドロクロリドをローダミンBイソチオシアネートで標識するのと同様の方法を使用した。
【0171】
Reactive Red 180(PEI−Red)で標識した分岐状ポリエチレンイミン:
出発材料:
BASFから入手可能な分岐状ポリエチレンイミン(PEI)(LUPASOL G 500)、Mw=25,000Da(CAS:9002−98−6)
S3 Chemicalsから入手可能なReactive Red 180(CAS:72828−03−6)。
合成方法:
分岐状ポリエチレンイミン(PEI)をReactive Red 180(Red)で標識するために、以下の方法を使用した:
1)12.5gの分岐状ポリエチレンイミン(PEI)40wt%溶液を、14.05gのReactive Red 180を含有する200mlのメタノール溶液に溶解し、
2)懸濁液を60℃で1時間撹拌し、
3)得られる混合物を室温で12時間更に撹拌し、
4)得られる混合物を遠心分離するととともに、上澄み液を回収し、
5)メタノールを添加して沈殿させ、混合物を遠心分離するとともに、上澄み液を回収し、
6)得られる上澄み液が無色になるまで工程5)を繰り返し、
7)工程4)〜工程6)から得られる上澄み溶液を全て混合し、
8)12.5mlの塩酸32wt%溶液を、工程7)から得られる混合物に添加し、
9)得られる懸濁液を遠心分離するとともに、沈殿物を回収し、
10)上澄み液が無色になるまで沈殿物をアセトンで洗浄し、
11)沈殿物を乾燥させるとともに、それを水に溶解し、
12)得られる溶液を、0.15M NaCl及び10−4M〜10−5M HCl溶液に対して透析し、
13)生成物を凍結乾燥させる。
【0172】
Remazol brilliant Blue R(PEI−Blue)で標識した分岐状ポリエチレンイミン(PEI):
出発材料:
BASFから入手可能な分岐状ポリエチレンイミン(PEI)、LUPASOL G 500、Mw=25,000Da(CAS:9002−98−6)
Sigma-Aldrichから入手可能なRemazol brilliant Blue R(CAS:2580−78−1)
合成方法:
Reactive Red 180をRemazol brilliant Blue Rで置き換え、また工程1)において、12.5gの分岐状ポリエチレンイミン(PEI)40wt%溶液を、7.3gのRemazol brilliant Blue Rを含有する200mlのメタノール溶液に溶解した、分岐状ポリエチレンイミンをReactive Red 180で標識するのと同様の方法を使用した。
【0173】
Reactive Blue 116(PEI−Cyan)で標識した分岐状ポリエチレンイミン:
出発材料:
BASFから入手可能な分岐状ポリエチレンイミン(PEI)、LUPASOL G 500、Mw=25,000Da(CAS:9002−98−6)
mijn-eigen.nlから入手可能なReactive Blue 116(CAS:61969−03−7)。
合成方法:
Reactive Red 180をReactive Blue 116で置き換え、また工程1)において、12.5gの分岐状ポリエチレンイミン(PEI)40wt%溶液を、11.1gのReactive Blue 116を含有する200mlのメタノール溶液に溶解した、分岐状ポリエチレンイミンをReactive Red 180で標識するのと同様の方法を使用した。
【0174】
メタクリルオキシエチルチオカルバモイルローダミンBと共重合させたポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMAC−RhoB):
出発材料:
Sigma-Aldrichから入手可能なモノマーのジアリルジメチルアンモニウムクロリド(CAS.7398−69−8)
Polysciencesから入手可能なメタクリルオキシエチルチオカルバモイルローダミンB(RhoB)
合成方法:
1.61gのモノマーのジアリルジメチルアンモニウムクロリドと、33mgのメタクリルオキシエチルチオカルバモイルローダミンBとを、10mgのペルオキソ二硫酸カリウムを開始剤として用いて、20mLの50%メタノール中、80℃、窒素雰囲気下で24時間共重合させた。重合後、着色ポリマーを蒸留水に対して透析した。
【0175】
<アニオン性着色ポリマー>
ローダミンBイソチオシアネートと共重合させたポリスチレンスルホネート(PSS−RhoB):
出発材料:
Sigma-Aldrichから入手可能なモノマーのナトリウム4−ビニルベンゼンスルホネート(CAS:2695−37−6)。
Polysciencesから入手可能なメタクリルオキシエチルチオカルバモイルローダミンB(RhoB)
合成方法:
1.61gのモノマーのジアリルジメチルアンモニウムクロリドを、2.05gのモノマーのナトリウム4−ビニルベンゼンスルホネートで置き換えた、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドを、メタクリルオキシエチルチオカルバモイルローダミンBと共重合させるのと同様の方法を使用した。
【0176】
<下記実施例において使用されるアニオン性無着色ポリマー>
Sigma-Aldrichから入手可能なポリスチレンスルホネートナトリウム塩(PSS)、Mw=70,000Da(CAS:25704−18−1)。
以下の実験データセットにおいて使用した毛髪見本は、Kerling International Haarfabrik GmbH(ドイツ、バックナング)から入手可能な天然毛髪であるブロンドの毛髪見本(参照番号826533)とする。
【0177】
<第1の実験データセット−一連の工程の数及び最外層のタイプが、ヘアカラーの色強度及び洗浄堅牢度に与える影響>
以下のデータセットでは、以下の第1の組成物及び第2の組成物を使用した。第1の組成物及び第2の組成物は塗布直前に調製した。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
<実施例1A〜実施例1E、並びに比較例2及び比較例3>
第1の組成物及び第2の組成物を、異なる順序に従って毛髪見本に塗布し、第1の組成物の塗布と、第2の組成物の塗布とを交互に行った。第1の組成物及び第2の組成物は塗布直前に調製した。
【0181】
第1の組成物は以下のプロトコルに従って毛髪に塗布した:
(i)毛髪見本を、試験管内において55℃で5mLの第1の組成物中に浸漬させ、
(ii)第1の組成物を毛髪見本とともに、ラボ用乾燥棚において55℃で15分間かき混ぜ、
(iii)毛髪見本を、30℃〜35℃の温度の微温の水道水で濯ぐ。
【0182】
第2の組成物は以下のプロトコルに従って毛髪に塗布した:
(i)毛髪見本を、試験管内において55℃で5mLの第2の組成物中に浸漬させ、
(ii)第2の組成物を毛髪見本とともに、ラボ用乾燥棚内において55℃で15分間かき混ぜ、
(iii)毛髪見本を、30℃〜35℃の温度の微温の水道水で濯ぐ。
【0183】
毛髪への第1の組成物及び第2の組成物の一連の塗布の各々の最後に、毛髪見本を、初めにティッシュペーパーで、次にヘアードライヤーで乾燥させた。
【0184】
<比較例1>
毛髪見本を以下のプロトコルに従って着色した:
(i)毛髪見本を、試験管内において55℃で5mLの第1の組成物中に浸漬させ、
(ii)第1の組成物を毛髪見本とともに、ラボ用乾燥棚内において55℃で15分間かき混ぜ、
(iii)毛髪見本を、30℃〜35℃の温度の微温の水道水で濯ぐ。
【0185】
毛髪への第1の組成物及び第2の組成物の塗布の順序:
【0186】
【表3】
【0187】
シャンプーによる洗浄:
実施例1A〜実施例1E及び比較例1〜比較例3において得られた着色した毛髪見本の各々を、以下の手法を用いて、ドイツにおいて2014年8月に入手したWella Brillance Shampooで3回洗浄した:
(i)水道水を流して毛髪見本を10秒間濡らし、
(ii)2〜3滴のシャンプーを毛髪見本に垂らし、
(iii)毛髪見本を指で30秒間擦り、
(iv)30℃〜35℃の温度の水道水を流して毛髪見本を濯ぎ、
(v)工程(ii)〜工程(iv)を更に2回繰り返し、
(vi)毛髪見本を、初めにティッシュペーパーで、次にヘアードライヤーで乾燥させる。
【0188】
<L、a、b測定値>
CIE L系における比色パラメーターを、実施例1A〜実施例1E及び比較例1〜比較例3において得られる毛髪見本の各々について洗浄前後に、Minolta CM−508i分光光度計(光源は、視野10度のD65デイライトとする)を用いて測定する。Lは色の明度を表し、aは緑色/赤色の軸を示し、bは青色/黄色の軸を示す。
【0189】
総合的な色変化は、ΔE(式中、ΔEは下記式:
ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
によって定義される)により表される。
【0190】
結果及び考察:
【0191】
【表4】
【0192】
洗浄前に実施例1A、1C、1Eについて測定したL値を比較すると、本発明による方法の一連の工程を繰り返す回数を増やすにつれて、本発明による第1の組成物及び第2の組成物で着色された毛髪の色強度が増大していることに気付くことができる。
【0193】
実施例1A及び実施例1Cについて測定したΔE値を比較すると、本発明による方法の一連の工程を繰り返す回数を増やすにつれて、ΔE値が減少することに気付くことができる。
【0194】
実施例1Aと比較例3とについて、又は実施例1Cと実施例1Bとについて得られるΔE値を比較すると、ΔE値は通常、毛髪の上に位置する最後の層がアニオン性ポリマーから作られる場合に低くなる、すなわち、毛髪上に与えたヘアカラーはより良好な洗浄堅牢度により特徴づけられる。これにより、アニオン性層が、下に位置するカチオン性着色層のための保護層として作用し得ることが実証される。
【0195】
<第2の実験データセット カチオン性着色ポリマーを含む第1の組成物と、アニオン性無着色ポリマー又はアニオン性着色ポリマーを含む第2の組成物とを使用した、本発明による方法の実施例>
【0196】
<実施例2A>
【0197】
【表5】
【0198】
【表6】
【0199】
毛髪見本を以下のプロトコルに従って着色した:
(i)第1の組成物及び第2の組成物を塗布直前に調製し、
(ii)毛髪見本を、試験管内において40℃で10mLの第1の組成物中に浸漬させ、
(iii)第1の組成物を毛髪見本とともに、ラボ用乾燥棚において40℃で20分間かき混ぜ、
(iv)毛髪見本を、5分間撹拌しながら試験管内において、それぞれ30℃〜35℃の温度の新しい10mlの微温の水道水で3回濯ぎ、
(v)毛髪見本を、試験管内において40℃で10mLの第2の組成物中に浸漬させ、
(vi)第2の組成物を毛髪見本とともに、ラボ用オーブン内において40℃で30分間かき混ぜ、
(vii)毛髪見本を、5分間撹拌しながら試験管内において、それぞれ30℃〜35℃の温度の新しい10mlの微温の水道水で3回濯ぎ、
(viii)工程(ii)〜工程(vii)を再度繰り返し、
(ix)毛髪見本を、初めにティッシュペーパーで、次にヘアードライヤーで乾燥させる。
【0200】
<実施例2B>
【0201】
【表7】
【0202】
【表8】
【0203】
実施例2Aと同様のプロトコルを用いて毛髪見本を着色した。
【0204】
色強度:
<測定>
実施例2A及び実施例2Bにおいて得られた着色した毛髪見本の色強度を、視覚的に比較した。
【0205】
<結果及び結論>
実施例2Aにおいて得られた着色した毛髪見本の色強度は、実施例2Bにおいて得られた着色した毛髪見本の色強度よりも大きかった。このため、アニオン性無着色ポリマーの代わりにアニオン性着色ポリマーを用いることによって、ヘアカラーにより良好な色強度をもたらすことが可能となる。さらに、本実施例で分かるように、所望の色の仕上がりを容易に得るために、種々のカチオン性着色ポリマーとアニオン性着色ポリマーとを組み合わせることが可能である。
【0206】
本明細書中に開示される寸法及び値は、列挙される正確な数値に厳密に限定するように理解されるものではない。むしろ、別段の定めがない限り、各かかる寸法は、列挙した値と、その値周辺の機能的に等価な範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示される寸法は、「約40mm」を意味するものと意図される。