(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の邪魔板における前記第2の邪魔板から離間する端部は、前記隔壁によって仕切られた室内の端まで延出することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
前記第1の邪魔板は、前記小開口として、前記筒体の径方向外側に向かうほど開口幅が拡がるV字状の切り欠きを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る鉛蓄電池の斜視図である。
鉛蓄電池1は、直方体形状の電池本体2と、電池本体2外に突出する複数の端子3とを備え、例えば四輪車等の車両に搭載される。電池本体2は、内部が複数のセル室に区画され、各セル室に複数の極板が配置される箱形の電槽2Aと、電槽2Aの上方開口を覆う蓋2Bとを備えている。電槽2A及び蓋2Bは、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材で形成されている。
蓋2Bには、複数の液口栓10が設けられる。これら液口栓10は、各セルに電解液を注液する注液口を塞ぐ。複数の端子3は、正極端子と負極端子とで構成される。
【0019】
図2は液口栓10の一部を切り欠いた斜視断面図である。また、
図3は液口栓10を異なる方向から見た図を示し、符号Aは内部構造を示す図、符号Bは下方から見た図、符号Cは断面図を示している。各図において、符号Zは、液口栓10の中心を通る軸線CPに沿った方向を示し、電池設置時の上方向に相当する。以下の説明において、上下等の各方向は電池設置時の方向に相当する。
【0020】
図2及び
図3に示すように、液口栓10は、液口栓本体を構成する中空の円筒形状を有する筒体11と、筒体11内に設けられる防爆フィルター12及び防沫体13とを備えている。
上記軸線CPは、筒体11及び防沫体13の中心を通る軸線でもある。
筒体11及び防沫体13はポリプロピレン(PP)等の樹脂材を用いた一体成形により形成される。筒体11の上部には、充放電で生じたガスを鉛蓄電池1外に排出し、鉛蓄電池1の内圧上昇を防ぐためのガス排気用の排気孔14が設けられる。排気孔14の下方に連なる内部空間には、防爆フィルター12とその下方に防沫体13が順に装着される。
【0021】
なお、防爆フィルター12は省略されて、排気孔14の下方に連なる内部空間には防沫体13のみが装着される場合もある。防爆フィルター12を装着する場合は、筒体11内に段差や突起を設けて防爆フィルター12と排気孔14とを離間の距離を規制しても良いし、防爆フィルター12が排気孔14に当接しても良い。
【0022】
筒体11には、筒体11よりも大径のフランジ部15が設けられると共に、このフランジ部15よりも下方の外周面にねじ部16が形成される。このねじ部16を電池本体2の蓋2Bの注液口に螺合することによって、筒体11が蓋2Bに固定される。フランジ部15の下面には、蓋2Bとの間の隙間を閉塞するためのパッキン17が設けられる。
【0023】
防爆フィルター12は、排気孔14と防沫体13との間に嵌め込まれ、外部の静電気や火花が鉛蓄電池1内に侵入することを防止し、耐引火性を高める。この防爆フィルター12には公知のものを適用可能である。
防沫体13は、電解液の液面の上方に位置し、充放電で生じたガスの排気を許容する一方、鉛蓄電池1を搭載する車両の走行中の振動による電解液の溢液の防止を行う。
【0024】
防沫体13は、
図3の符号Cに示すように、筒体11内を排気孔14に連通する複数(本実施形態では2つ)の室SL、SRに仕切る隔壁21を備え、この隔壁21の下端には、筒体11の内部空間の下方開口を所定の小開口に規制する第1の邪魔板22が一体に設けられている。
隔壁21は、筒体11の軸線CPを基準にして軸線CPに直交する方向に延在し、筒体11の円形断面を半円に等分割する壁に形成される。この隔壁21は、第1の邪魔板22から防爆フィルター12に近接する高さまで立設する。
【0025】
第1の邪魔板22は、
図3の符号Bに示すように、筒体11の下方開口を覆う真円形状の平板に、外周縁から軸線CPに向かって延びる一対の開口部22Kを設けた形状に形成されている。これによって、液口栓10の下方の開口は、一対の開口部22Kだけに絞られる。
一方の開口部22Kは、壁で仕切られた室SLに連通する小開口として機能し、他方の開口部22Kは、壁で仕切られた室SRに連通する小開口として機能する。
【0026】
ここで、開口部22Kの開口面積が大きい場合は、小開口にオーバーラップするよう第2の邪魔板23を長くする必要がある。第2の邪魔板23及び第3の邪魔板24の傾斜は、隔壁21の高さによって規制されるため、開口22Kにオーバーラップするよう配置される第2の邪魔板23を長くすると、規制された高さ内で最大限に斜めに傾斜させても、その傾斜は緩くなる。傾斜が緩くなるほど液沫の進路を右上に曲げる効果は小さくなる。また、傾斜が緩くなることにより液沫の還流性は低下する。開口面積が大きくなる分、液沫の上昇量は増える一方、還流性は悪くなって、第2の邪魔板23より上方に液沫がたまり上昇しやすくなるおそれがある。
開口部22Kの開口面積が小さい場合は、液沫が直接上昇する量は抑えられるが、開口部22Kに液膜を形成しガス排気時に液膜がはじける液沫の上昇を起こすおそれがある。開口面積が小さくなる分、還流性が悪くなって開口部22Kに液膜をより形成しやすくなるおそれがある。開口面積がさらに小さい場合は、液沫の上昇は完全に抑えられるかもしれないが、ガスが全く排気できなくなるおそれが生じる。
即ち、開口部22Kの開口面積は、液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない範囲で自由に設定してよい。
【0027】
一対の開口部22Kは、軸線CPに対して軸対称の位置及び形状に形成されており、より具体的には、防沫体13の下面視で180度の間隔で設けられ、かつ、筒体11の径方向外側に向かうほど開口幅が拡がるV字状の切り欠きに形成される。開口幅が変化するV字状の切り欠きに形成されるので、表面張力の作用で開口部22Kを覆う液膜が形成されることを抑制でき、液膜によって開口面積が狭まる事態や、充放電にともなうガス発生の影響で液膜がはじけて新たな液沫となる事態を抑制できる。
なお、開口部22Kは、液膜の形成が抑えられれば、円孔、矩形孔、スロット孔などの孔形状でも、半円状、角形状、スロット状、波形状などの切欠きでも良いが、液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない開口面積が確保でき、生産性も良いV字状の切欠きが好ましい。
【0028】
図4の符号Aは防沫体13を斜め上方から見た斜視図を示し、符号Bは斜め下方から見た斜視図を示している。
図5の符号Aは防沫体13の上面図、符号Bは防沫体13の側面図、符号Cは防沫体13の下面図を示している。また、
図6の符号A、Bは防沫体13を異なる方向から見た側面図を示している。
これら図に示すように、防沫体13の隔壁21には、各開口部22Kよりもガス下流側に位置する第2の邪魔板23と、第2の邪魔板23よりもガス下流側に位置する第3の邪魔板24とが一体に設けられている。
【0029】
第2の邪魔板23は、隔壁21の両側面より外周方向へ延伸し、筒体11の内周面に当接する形状であって、かつ、筒体11の軸線方向Zに対して斜めに傾斜する羽根形状に形成されている。第2の邪魔板23は、隔壁21で仕切られる室SL、SRに一枚ずつ設けられ、隔壁21を境にして、軸線CPを基準にした軸対称の位置及び形状に形成されている。これら第2の邪魔板23は、
図5の符号B等に示すように、軸線方向Zで開口部22Kにオーバーラップする。
【0030】
図5及び
図6に示すように、第3の邪魔板24は、第2の邪魔板23よりもガス下流側で、隔壁21の両側面より外周方向へ延伸し、筒体11の内周面に当接する形状であって、かつ、筒体11の軸線方向Zに対して斜めに傾斜する羽根形状に形成されている。
第3の邪魔板24は、隔壁21で仕切られる室SL、SRに軸線CPの周方向に間隔を空けて二枚ずつ設けられ、隔壁21を境にして、軸線CPを基準にした軸対称の位置及び形状に形成されている。
【0031】
これら第3の邪魔板24は、同じ室SL、SR内の第2の邪魔板23と同方向に傾斜し、かつ、
図5の符号B等に示すように、第2の邪魔板23の周囲に空く開口K1、K2に軸線方向Zでオーバーラップする。つまり、第2の邪魔板23の左右にできる開口K1、K2に軸線方向Zでオーバーラップするように、第3の邪魔板24がそれぞれ設けられている。
【0032】
ここで、
図5の符号Bに示すように、右側の第3の邪魔板24は、第2の邪魔板23に近接する端部24Aが軸線方向Zで第2の邪魔板23にオーバーラップし、第2の邪魔板23から離間する端部24Bが隔壁21によって仕切られた室SL内の端まで延出する。
また、左側の第3の邪魔板24は、軸線方向Zで第2の邪魔板23に近接する端部24Cが室SL内の反対側の端まで延出し、軸線方向Zで第2の邪魔板23から離間する端部24Dが、軸線方向Zで別の第3の邪魔板24とオーバーラップする。
端部24B及び端部24Cについて、防沫体13の高さが低い場合、室SL内の端に隙間を生じさせると、第2の邪魔板23及び第3の邪魔板24の傾斜によって移動した液沫が、室SL内の端に形成した隙間から上方へ移動し防爆フィルター12を濡らしガス排気性を低下させるおそれがある。ただし、防沫体13の高さが十分確保できる場合はこの限りでない。
なお、第1〜第3の邪魔板24は、軸線方向Zに少なくとも2mm以上の隙間を空けて配置することが好ましい。なお、2mm未満でも、後述するような耐溢液性とガス排気性を確保できる場合は2mm未満でもよい。
【0033】
外部からの振動による電解液の液沫の流れ、及び鉛蓄電池1内で発生したガスの流れについて説明する。
図7は、室SL内の液沫の基本的な流れを、符号Wを付した一点鎖線で示し、ガスの基本的な流れを、符号Gを付した破線で示している。なお、室SR内の液沫及びガスの流れは、軸線CPに対して軸対称の流れとなる。また、振動の方向等によっては上記符号W、Gで示す以外の流れの場合もあり、この点についても説明する。
【0034】
図7に示すように、液口栓10の電解液側の面である下面は、第1の邪魔板22によって覆われるので、液口栓10内に液沫が大量に流入する事態が回避される。流入する液沫及びガスの量は、第1の邪魔板22の開口部22Kの面積に依存する。本構成では、開口部22Kの開口面積を液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない範囲としているので、耐溢液性とガス排気性を両立することができる。
【0035】
第1の邪魔板22の開口部22Kから液沫及びガスが流入した場合、開口部22Kに軸線方向Zでオーバーラップする第2の邪魔板23によって、液沫及びガスの勢いが抑えられる。第2の邪魔板23の傾斜によって、液沫は、
図7中、右上方へと案内され、その側には第3の邪魔板24が位置するので、第3の邪魔板24によっても、
図7中、右上方へと案内される。同
図7に示すように、第3の邪魔板24の第2の邪魔板23から離間する端部24Bが室SL内の端まで延出するので、液沫の上方への移動が堰き止められる。
【0036】
仮に、外部振動の影響で液沫の勢いが強く、液沫が第3の邪魔板24と第2の邪魔板23との間を通って
図7中、左側へ移動しても、第3の邪魔板24の傾斜に沿って左斜め下方に案内されるので、液沫は上方へ移動し難い。この場合に、液沫の上方への勢いがより強いために液沫が上方へ移動したとしても、その上方には、別の第3の邪魔板24が位置するので、液沫の上方への移動が抑えられる。
即ち、上昇した液沫は重力に従って、第3の邪魔板24及び第2の邪魔板23の傾斜に沿って第1の邪魔板22へと流れ落ち、第1の邪魔板22の開口部22Kから鉛蓄電池1内へと還流する。なお、第1の邪魔板22は隔壁21によって仕切られた室SL、SR内の端から開口部22Kへ向けて傾斜を設けることが好ましい。
このようにして、第2及び第3の邪魔板24の傾斜によって液沫の進路が決定づけられ、液沫の排気孔14への移動が規制されると共に、上昇した液沫を容易に還流させることができる。
【0037】
図7に示すように、第1及び第2の邪魔板22,23の間、及び第2及び第3の邪魔板23、24の間には、上記液沫の進路とならない隙間が形成されるので、この隙間を、鉛蓄電池1内で発生したガスが通ることができる。
具体的には、ガスは、第2の邪魔板23と開口部22Kとの間に空いた隙間を通って、液沫と同様に第2の邪魔板23及び第3の邪魔板24に沿って右上方へと流れるだけでなく、液沫の進路と反対側である左側へも流れ、その上方に位置する第3の邪魔板24と、第2の邪魔板23との間を通って排気孔14へ流入させることができる。
このように、液沫の進路とは別にガスが流入可能な進路を確保できるので、ガスを排気孔14にスムーズに移動させることができる。
【0038】
なお、鉛蓄電池1に作用する振動の方向及び強さによっては、液沫が第2の邪魔板23と第1の邪魔板22との間に空いた隙間を通って、上記ガスの流れと同様に左側へと移動するおそれもある。この場合、第3の邪魔板24がその上方に位置し、かつ、排気孔14までの経路が相対的に長く形成されているので、液沫が排気孔14へ移動する事態を抑制でき、上昇した液沫を還流させることができる。
このようにして、液沫が様々な方向へ移動しても、第2及び第3の邪魔板23、24によって、液沫が排気孔14へ移動する事態を抑制できる。
なお、隔壁21で仕切られた室SLと室SRとは、第1〜第3の邪魔板22〜24の傾斜方向が逆方向であるので、水平方向の振動によって生じた液沫や電解液の波打ちに対する耐溢液性を確保し易くなる。
【0039】
以上説明したように、防沫体13は、筒体11内を排気孔14に連通する複数の室SL、SRに仕切る隔壁21と、各室SL,SRのガス上流側の開口を所定の開口部22Kに規制する第1の邪魔板22と、各室SL,SR内に設けられ、筒体11の軸線方向Zに対して斜めに傾斜すると共にその傾斜方向が同方向の第2及び第3の邪魔板23,24とを備える。第2の邪魔板23は、開口部22Kよりもガス下流側に位置し、且つ軸線方向Zで開口部22Kにオーバーラップし、第3の邪魔板24は、第2の邪魔板23の周囲に空く開口K1,K2に軸線方向Zでオーバーラップする。
【0040】
これらの構成によれば、第1の邪魔板22で液沫の勢いを低減した後、第2及び第3の邪魔板23,24の同方向の傾斜に沿わせて液沫を案内でき、この液沫の進路に加えて反対側に空いた空間にもガスを流すことができ、ガスを排気孔14へ導くことができる。この構成は、邪魔板を互いに逆方向の傾斜を持たせるために全長を長くする必要がある従来の構成に比して、全長が短い液口栓でも液沫の進路とは別にガスが流入可能な進路を確保でき、また、複雑な迷路状の経路構造を設ける必要もない。従って、全長が短い液口栓に適用でき、かつ、ガスによって液沫が排気孔14に押し上げられる事態を抑制し、耐溢液性とガス排気性とを両立可能になる。
【0041】
しかも、第3の邪魔板24は、第2の邪魔板23に近接する端部24A(
図5の符号B参照)が軸線方向Zで第2の邪魔板23にオーバーラップするので、第2の邪魔板23に案内された液沫を第3の邪魔板24でより確実に案内することができる。
また、隔壁21を挟んで、第2及び第3の邪魔板23、24の傾斜方向は逆方向であるので、水平方向の振動によって生じた液沫や電解液の波打ちに対し、耐溢液性を確保し易くなる。
【0042】
また、開口部22Kと、第2及び第3の邪魔板23、24とは、隔壁21を境界として筒体11の中心を通る軸線CPに対して軸対称であるので、隔壁21を挟んで各邪魔板23、24の傾斜方向を逆にした構成を簡易に設計でき、かつ、一体成形も容易になる。
また、第3の邪魔板24における第2の邪魔板23から離間する端部24B(
図5の符号B参照)は、隔壁21によって仕切られた室SL内の端まで延出するので、第3の邪魔板24に案内された液沫を室SL内で堰き止め易くなる。
【0043】
また、第1の邪魔板22に設けられた開口部22Kは、筒体11の径方向外側に向かうほど開口幅が拡がるV字状の切り欠きに形成されるので、表面張力の作用で液膜が形成されることを抑制できる。これにより、充放電にともなうガス発生の影響で液膜がはじけて新たな液沫となる事態を抑制できる。
なお、開口部22Kは、液膜の形成が抑えられれば、円孔、矩形孔、スロット孔などの孔形状でも、半円状、角形状、スロット状、波形状などの切欠きでも良いが、液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない開口面積が確保でき、生産性も良いV字状の切欠きが好ましい。
【0044】
また、各開口部22Kの合計開口面積を、液沫の上昇を抑制し、かつ還流を妨げず、さらにガスの排気性を妨げない範囲に設定するため、耐溢液性とガス排気性を両立することができる。
また、排気孔14と防沫体13との間に防爆フィルター12を有しているので、外部の静電気や火花が鉛蓄電池1内に侵入することを防止できる。
【0045】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13の斜視図である。また、
図9はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第2実施形態は、液口栓10内の液沫又はガスの進路を制御する他の邪魔板として機能する第1及び第2補助邪魔板25、26を有する点を除いて第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様の構成は同一の符号を付して示し、重複説明は省略する。
【0046】
図8及び
図9に示すように、第1補助邪魔板25は、第2の邪魔板23の傾斜上端側、且つ、右側の第3の邪魔板24よりも上流側に配置され、これら邪魔板23、24と傾斜方向が同方向である。これによって、
図9に示すように、流れWに沿う液沫の一部の上昇を妨げる。
また、第2補助邪魔板26は、第2の邪魔板23の傾斜下端側、且つ左側の第3の邪魔板24よりも上流側に配置され、これら邪魔板23、24と傾斜方向が同方向である。仮に、液沫が、流れGと同様の進路を通って第2の邪魔板23と第1の邪魔板22との間を左に移動しても、第2補助邪魔板26によって、液沫の上昇を妨げることができる。また、ガスは、
図9の流れGに示すように、第2補助邪魔板26の下方、または、上方のいずれかの進路を通って排気孔14に流入することができるので、ガスの流れは妨げられない。
【0047】
このように、第1及び第2補助邪魔板26、26を設けることによって、溢液性をより確保し易くなる。なお、上記第1及び第2補助邪魔板25、26に限定されず、第3の邪魔板24の下流側に、液沫の上昇を防ぎ、かつガスの排出経路を確保する第3補助邪魔板を配置してもよい。これら第1〜第3補助邪魔板25、26の位置、及び数等については適宜に変更してもよい。
【0048】
(第3実施形態)
図10は第3実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13の斜視図である。また、
図11はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第3実施形態は、第3の邪魔板24が三枚である点が第1実施形態と異なる。
図10及び
図11に示すように、第3の邪魔板24は、第1実施形態の第3の邪魔板24に比して小型に形成され、防沫体13の周方向(軸線CPの周方向と一致)に等角度間隔で配置される。
【0049】
これら第3の邪魔板24は、第2の邪魔板23の左右それぞれに形成される開口にそれぞれ軸線方向Zでオーバーラップし、液沫の上昇を規制する。本構成では、これら第3の邪魔板24は、防沫体13の周方向(軸線CPの周方向と一致)に間隔を空けて配置されるので、
図11に符号Gで示すように、これら第3の邪魔板24の間にガスを流して排気孔14に導くことできる。つまり、ガスが通過可能な隙間を複数確保でき、ガスをスムーズに排気孔14に流し易くなる。
【0050】
(第4実施形態)
図12は第4実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13の斜視図である。また、
図13はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第4実施形態は、第2の邪魔板23が二枚である点が第1実施形態と異なる。
図12及び
図13に示すように、右側に位置する一方の第2の邪魔板23の上流側端部23A(
図13)が軸線方向Zで開口部22Kの一部にオーバーラップし、左側に位置する他方の第2の邪魔板23の下流側端部23Bが、開口部22Kの残りの部分に軸線方向Zでオーバーラップする。このため、
図13に符号Wで示すように、これら第2の邪魔板23の間にも液沫が流入する隙間を確保できる。これによって、液沫が通過する箇所を拡げ、かつ、各複数の第2の邪魔板23によって液沫を第3の邪魔板24に案内できる。従って、液沫が相対的に大量に流入しても液沫の上昇を抑え、還流し易くなる。
【0051】
この場合、
図11に符号Gで示すように、右側の第2の邪魔板23の右側、二枚の第2の邪魔板23の間に加えて、左側の第2の邪魔板23よりもさらに左にガスの進路が確保され、ガスを排気孔14に導くことができる。また、仮に、このガスの進路に沿って液沫が流れたとしても、その液沫の上昇への移動は、左側の第3の邪魔板24によって抑えることができる。
【0052】
(第5実施形態)
図14は第5実施形態に係る鉛蓄電池1の液口栓10内の防沫体13を示す図であり、符号Aは防沫体13を斜め下方から見た斜視図、符号Bは液口栓10を下方から見た図を示している。また、
図15はこの液口栓10の室SL内の液沫の流れW及びガスの流れGを示す図である。
第5実施形態は、第1の邪魔板22の開口部22Kに比して周方向に長い開口部22Kを有する点を除いて、第4実施形態と同じである。
図14に示すように、第1の邪魔板22は、開口部22Kとして、外周縁から軸線CPに向かって凹む一対の凹み部を有し、これら一対の凹み部のトータル開口面積が、第1〜第4実施形態の開口部22Kのトータル開口面積と同等の値に形成されている。
【0053】
これら凹み部についても、上述した開口部22Kと同様に、開口幅が徐々に拡がるV字状の切り欠きに形成されるので、表面張力の作用で開口部22Kを覆う液膜が形成されることを抑制できる。
第1の邪魔板22は、周方向に相対的に長い開口部22Kを有しているので、
図15に示すように、左右の第2の邪魔板23の周方向に長い領域を有効利用して、液沫の勢いを抑えると共に第3の邪魔板24に向けて案内できる。また、同
図15に示すように、開口部22Kが、液沫の流れWから離れた位置まで拡がるので、ガスを液沫の流れWから離れた箇所から流入させ、
図15に示す進路に沿って流し易くなる。このようにして、ガスを液沫の進路とは別にガスが流入可能な進路へと誘導でき、耐溢液性とガス排気性とをより両立し易くなる。
【0054】
表1に、従来例1、2及び第1〜第5実施形態の防沫体13について、簡易水槽を用いてガス発生状態を模した振動実験を行い、溢液までの耐久時間を比較した結果を示す。前記振動試験条件は、防沫体から液面までの離間距離を30[mm]、振動周波数を33.3[Hz]、加速度7.0±0.1G、ガス排出量0.05[L/min]とした。液口栓10の筒体11内には防爆フィルター12と防沫体13を装着した。前記振動試験条件により液口栓10を螺合した簡易水槽を振動させ、防爆フィルター12が濡れるほど液が上昇し、排気孔14の上部に液が噴き上がるまでの時間を判定条件とした。耐溢液性は、従来例1を1としたときの比率で表記した。
【0056】
図16は従来例を示す図であり、符号Aは従来例1の防沫体31の斜視図を示し、符号Bは従来例2の防沫体一体構造の液口栓41の断面斜視図を示している。
従来例1の防沫体31は、互いに反対方向に傾斜する複数の邪魔板32,33,34を配置した防末構造である。従来例2の液口栓41は、ガス抜き及び還流用のスリット41Sを有した直径の異なる同心円の防沫筒42,43,44を設け、スリット41Sの位置を互いに180度ずつずらして配置し、円錐状の下フタ45と一体にした防末構造である。
【0057】
本実施形態1〜5は、従来例1を基準とした場合と比べ、1.75倍以上の耐溢液性を有していることを確認した。
従来例1の防沫体31は、各邪魔板32,33,34により形成された空間が、液沫の進路とガスの進路とで同一に作用し、従来例2の液口栓41は、各防沫筒42,43,44により形成された空間が、液沫の進路とガスの進路とで同一に作用するため、上昇した液沫がガスによりさらに押し上げられガス下流側へと到達して、ガス排気とともに溢液することがわかった。
一方、第1〜第5実施形態の防沫体13は、液沫の進路とは別にガスが流入可能な経路を有するため、ガスが液沫を押し上げる作用を抑えることができ、耐溢液性とガス排気性を両立している。
【0058】
なお、上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。例えば、防沫体13の構成要素である邪魔板22〜26、及び開口部22Kの形状、及び数を適宜に変更してもよい。また、防沫体13に、筒体11内を2つの室SL、SRに仕切る隔壁21を設ける場合を説明したが、筒体11内を3つ以上の室に仕切る隔壁21を設け、各室内を上記室SL、SR内と同様に構成してもよい。また、筒体11の形状は
図2に示す形状に限定されず、鉛蓄電池1についても、
図1に示す構成に限定されず、公知の鉛蓄電池を広く適用可能である。
【解決手段】液口栓10は、排気孔14を有する筒体11内に防沫体13を備え、防沫体13は、隔壁21で仕切られた室SL、SRのガス上流側の開口を所定の開口部22Kに規制する第1の邪魔板22と、各室SL、SR内に設けられ、筒体11の軸線方向Zに対して斜めに傾斜すると共にその傾斜方向が同方向の第2及び第3の邪魔板23、24とを備える。第2の邪魔板23は、開口部22Kよりもガス下流側に位置し、且つ軸線方向Zで開口部22Kにオーバーラップし、第3の邪魔板24は、第2の邪魔板23の周囲に空く開口に軸線方向Zでオーバーラップする。