(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、ローバッテリを検出すると、防犯用センサ装置の物体検知動作に起因する電池消費を抑制することで、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる防犯用センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一構成にかかる防犯用センサ装置は、電池保持部に保持された電池によって駆動される防犯用センサ装置であって、物体を検知すると物体検知信号を生成する物体検知手段と、警報信号を出力する警報信号出力手段と、前記物体検知手段が生成した物体検知信号が入力され、この物体検知信号に応じて前記警報信号出力手段を制御して警報信号を出力させる制御手段と、前記電池の電圧の低下を検出するローバッテリ検出手段と、前記ローバッテリ検出手段が前記電池の電圧の低下を検出すると、当該防犯用センサ装置の物体検知動作を、通常モードから前記電池の消費を抑制する抑制モードに切り替える動作モード切替手段とを備える。
【0008】
ここで、「防犯用センサ装置の物体検知動作」とは、防犯機能に関連した動作を意味し、発報の動作も含まれる。また、「防犯用センサ装置の物体検知動作」には、物体の検知に直接関連する動作のみならず、物体の検知を補助する動作も含まれる。例えば、物体の検知に不可欠な動作ではないが、物体の検知の精度を向上させるような動作が挙げられる。これに対して、防犯機能に関連しない動作は、防犯用センサ装置の物体検知動作に含まれない。例えば、ローバッテリ検出に関する動作のように防犯用センサ装置の電池寿命に関連する動作は、物体検知動作に含まれない。
【0009】
この構成によれば、電池の電圧の低下を検出すると、当該防犯用センサ装置の物体検知動作を、電池の消費を抑制する抑制モードに切り替えるので、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる。特に、防犯用センサ装置において主な電池消費は物体検知動作に起因するため、物体検知動作を、電池の消費を抑制する抑制モードに切り替えることで、効果的に防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる。
【0010】
なお、一般的に、防犯用センサ装置は、誤報および失報が発生しないように、マージンを有して動作する。したがって、防犯用センサ装置の物体検知動作を、電池の消費を抑制する抑制モードに切り替えたとしても、誤報または失報が必ずしも発生するわけではない。これより、抑制モードへの切替えによって、物体検知性能が大きく損なわれないにもかかわらず、電池の消費を抑制できる。
【0011】
好ましい実施形態によれば、さらに、マイクロコンピュータを備え、前記制御手段は当該マイクロコンピュータにおいて実現され、前記制御手段に入力される物体検知信号について、前記マイクロコンピュータにおいてサンプリングする周期を長くすることで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替える。この構成によれば、サンプリング周期を長くすることで、容易かつ効果的に電池の消費を抑制できる。なお、サンプリング周期を長くすると防犯用センサ装置の動作は遅くなるが、ローバッテリ検出後は、動作速度よりも電池消費の抑制を優先することで、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる。
【0012】
さらに好ましい実施形態によれば、さらに、当該防犯用センサ装置の動作条件の設定を受け付ける設定入力手段を備え、前記制御手段は、前記物体検知動作が通常モードの場合には、前記設定入力手段が受け付ける設定を監視し、前記設定入力手段が受け付ける設定の監視を前記制御手段が停止することで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替える。この構成によれば、設定入力手段が受け付ける設定の監視を停止することで、容易に電池の消費を抑制できる。なお、このように設定の監視を停止すると、動作条件をユーザが設定できなくなるため、防犯用センサ装置の利便性は低下する。しかし、ローバッテリ検出後は、利便性よりも電池消費の抑制を優先することで、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる。
【0013】
なお、設定入力手段が受け付ける設定の監視は、設定入力手段が防犯用センサ装置の動作条件の設定を受け付けるものであることより、物体の検知を補助する動作である。したがって、設定入力手段が受け付ける設定の監視は、上記「防犯用センサ装置の物体検知動作」に含まれる。
【0014】
さらに好ましい実施形態によれば、前記物体検知手段が、第1の物体検知部および第2の物体検知部を含み、前記通常モードでは、これら第1および第2の物体検知部の両方を動作させ、前記第1および第2の物体検知部のいずれか一方を停止させることで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替え、この抑制モードでは、前記物体検知手段は、前記第1および第2の物体検知部のうちの他方の物体検知部が物体を検知した場合に、物体を検知したと判定する。ここで、前記通常モードでは、第1および第2の物体検知部の両方またはいずれか一方が物体を検知した場合に、物体を検知したと判定してもよい。この構成によれば、第1および第2の物体検知部のいずれか一方を停止させることで、容易かつ効果的に電池の消費を抑制できる。
【0015】
好ましくは、前記物体検知手段が、検知エリアに向けて物体検知用の検知波を間欠的に送信する検知波送信器、および前記検知波を受信する検知波受信器を有し、物体による前記検知波の遮断または反射によって物体を検知して、前記物体検知信号を生成する能動型物体検知手段である。
【0016】
さらに好ましい実施形態によれば、前記検知波の振幅を小さくすることと、前記間欠的な検知波の間隔を長くすることと、前記検知波の出力期間を短くすることとの少なくともいずれか1つを実行するように、前記制御手段が前記検知波送信器を制御することで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替える。この構成によれば、検知波のパワーを低減することで、容易かつ効果的に電池の消費を抑制できる。
【0017】
さらに好ましい実施形態によれば、さらに、検知波受信器からの検知波受信信号を増幅する増幅器と、この増幅器の利得を調整する自動ゲイン調整回路とを備え、当該自動ゲイン調整回路の利得の調整範囲を小さくすることで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替える。ここで、「利得の調整範囲を小さくする」とは、自動ゲイン調整回路が低消費電流状態になるようにすることをいい、利得の調整範囲をゼロにすること、つまり利得の調整を停止することも含む。この構成によれば、利得の調整範囲を小さくすることで、容易かつ効果的に電池の消費を抑制できる。このように、装置の補助的な機能である自動ゲイン調整機能を低減することで、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる。
【0018】
さらに好ましい実施形態によれば、前記物体検知手段が、検知エリア内の物体が発する赤外線を受信する赤外線受信器を有し、この受信した赤外線に基づいて物体を検知して、前記物体検知信号を生成する受動型物体検知手段である。
【0019】
さらに好ましい実施形態によれば、さらに、前記赤外線受信器が物体からの反射波を検出するアンチマスキング検出部を備え、当該アンチマスキング検出部による検出を制限することで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替える。ここで、「アンチマスキング検出部による検出を制限する」には、アンチマスキング検出のための投光のパワーを低減することのみならず、そのパワーをゼロにして検出を停止することも含まれる。この構成によれば、アンチマスキング検出部による検出を制限することで、容易かつ効果的に電池の消費を抑制できる。このように、装置の補助的な機能であるアンチマスキング検出機能を制限することで、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる。
【0020】
なお、アンチマスキング検出部による検出は、防犯用センサ装置の失報を防止するためのものであることより、物体の検知を補助する動作である。したがって、アンチマスキング検出部による検出は、上記「防犯用センサ装置の物体検知動作」に含まれる。
【0021】
さらに好ましい実施形態によれば、前記警報信号出力手段が出力する警報信号が、無線送信器を介して所定の間隔のパルス信号で無線送信され、前記所定の間隔を長くすることと、前記パルス信号を一定回数だけ無線送信してから停止することとの少なくとも一方を実行するように、前記制御手段が前記警報信号出力手段を制御することで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替える。この構成によれば、警報信号のパルスの間隔を長くし、かつ/または、パルス信号を一定回数だけ無線送信してから停止するため、容易かつ効果的に電池の消費を抑制できる。
【0022】
なお、警報信号が、無線送信器を介して所定の間隔のパルス信号で無線送信されることは、発報の動作であるため、上記「防犯用センサ装置の物体検知動作」に含まれる。
【0023】
さらに、有効化と無効化のいずれか一方の設定を受け付けるバッテリセービング機能入力手段を備え、このバッテリセービング機能入力手段が有効化に設定されている場合のみ、前記動作モード切替手段が、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替えてもよい。
【0024】
さらに好ましい実施形態によれば、前記警報信号出力手段が、前記警報信号を可視表示として出力する表示出力手段を含み、前記表示出力手段による前記警報信号の可視表示を停止させることで、前記動作モード切替手段は、当該防犯用センサ装置の前記物体検知動作を前記通常モードから前記抑制モードに切り替える。この構成によれば、表示出力手段による警報信号の可視表示を停止させることで、容易かつ効果的に電池の消費を抑制できる。なお、警報信号は無線送信器を介して無線送信されるため、表示出力手段による可視表示がなくとも、無線送信器から発報は行われる。このように、補助的な可視表示を省略することで、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができる。
【0025】
なお、警報信号の可視表示は、物体の検知に直接関連する動作ではないが、発報の動作であるため、上記「防犯用センサ装置の物体検知動作」に含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の防犯用センサ装置によれば、防犯用センサ装置が電池寿命により停止するまでの時間を延ばすことができるため、ローバッテリ検出後に電池交換が速やかになされない場合でも、防犯用センサ装置が停止する事態を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態に係る防犯用センサ装置Dを示す。この防犯用センサ装置Dは、人体などを検知して警報信号を出力する防犯センサ装置である。この防犯用センサ装置Dは、電池で駆動される投光ユニット1と、この投光ユニット1と相対向して配置され電池で駆動される受光ユニット2とを備えたAIR型の物体検知装置からなる。
【0029】
防犯用センサ装置Dの投光ユニット1および受光ユニット2は、それぞれ、センサカバー7とバックボック
ス8とからなるケース9を有する。投光ユニット1は一対の投光器1a,1bが上下に配置されて構成され、受光ユニット2は一対の受
光器2a,2bが上下に配置されて構成される。投光器(検知波送信器)1a,1bはそれぞれ上下方向に配置された上下一対の2つの投光素子3および投光レンズ4をそれぞれ備え、これらはセンサカバー7内に保持されている。受光器(検知波受信器)2a,2bもそれぞれ上下方向に配置された上下一対の受光素子5および受光レンズ6をそれぞれ備え、これらはセンサカバー7内に保持されている。これら投光素子3からそれぞれ投光された赤外線IRのような検知波は、受光素子5でそれぞれ受光される。
【0030】
この防犯用センサ装置Dは、投光ユニット1と受光ユニット2を結ぶほぼ直線的な区域である警戒区域における物体を検知する。具体的には、防犯用センサ装置Dは、投光ユニット1からの赤外線IRが物体により遮光されたとき、相対向する受光ユニット2で受信された信号の信号レベル(受光量)の変化により物体を検出して、警報信号を出力する。投光ユニット1および受光ユニット2は、それぞれポールや壁などの被装着部K,Kに装着される。
【0031】
センサカバー7が取り外された投光ユニット1または受光ユニット2は、
図2に示すように、バックボックス8の内部に、無線送信器62を収納する無線送信器収納部82と、駆動電源である電池64を保持する電池保持部84とが構成されている。無線送信器62は、ユーザが市販されている汎用の無線送信器の中から任意に選択したものであってもよい。電池64は、ローバッテリつまり電圧低下の状態になり得るものであればいかなる電池であってもよい。例えば、一次電池や二次電池などの化学電池であってもよい。代わりに、太陽電池のような物理電池であってもよい。電池64は、1つしか図示していないが、複数設けられてもよい。その場合、ローバッテリになり得る電池が少なくとも1つ存在し、ローバッテリになり得る電池それぞれに対して後述するローバッテリが検出される。
【0032】
バックボックス8には、その前方からセンサ本体10がセンサシャーシ11を介して取り付けられる。なお、センサ本体10は、後述するマイクロコンピュータを含む回路基板などを内部に含む。センサ本体10は、また、上下方向に配置された一対の投光器1a,1b(受光器2a,2b)の間に、入出力手段14を備える。この入出力手段14は、横方向に配置された、表示出力部15、設定入力部16および出力端子部17を備える。
【0033】
表示出力部15は例えばLEDからなり、発光によって警報信号を出力する。表示出力部15は、警報信号の他にも、当該防犯用センサ装置D(
図1)の状態に応じた信号を出力してもよい。
【0034】
設定入力部16は、1つまたは複数の切替スイッチからなり、ユーザによって操作される。設定入力部16は、例えば、物体検知の感度の切替えや検知エリアの切替えなどの設定のためのものであり、主に防犯用センサ装置D(
図1)の設置直後に設定される。
【0035】
設定入力部16に加えて、抑制モードの有効化と無効化のいずれか一方に設定される、図示しないバッテリセービング機能切替スイッチ(バッテリセービング機能入力手段)を有してもよい。後述するように、切替スイッチが有効化と無効化のいずれに設定されているか否かに応じて、ローバッテリ検出後の防犯用センサ装置D(
図1)の物体検知動作が異なる。
【0036】
設定入力部16は、さらに、LEDからなる表示出力部15のオンとオフの設定を切り替えるためのスイッチを有してもよい。このスイッチがオンに設定されていれば、LED15を当該防犯用センサ装置D(
図1)の状態に応じて発光する。一方、オフに設定されていれば、LED15は発光しない。
【0037】
出力端子部17は、センサ本体10内の回路基板に対する端子である。本実施形態では、無線送信器収納部82に収納される無線送信器62が図示しない配線によって出力端子部17に接続される。
【0038】
図3に示すように、投光ユニット1および受光ユニット2を備えた防犯用センサ装置Dが出力する警報信号は、遠隔のコントロールユニット90によって監視される。投光ユニット1は、そのセンサ本体10(
図2)が、表示出力部15、設定入力部16、出力端子部17、制御手段20A、投光素子3、投光素子制御回路21、ローバッテリ判定回路(ローバッテリ検出手段)25および動作モード切替手段27を備える。制御手段20Aおよび動作モード切替手段27は、1つのマイクロコンピュータ30Aにおいて実現されている。無線送信器62および電池64は、上述のようにセンサ本体10(
図2)の後方に配置され、マイクロコンピュータ30Aに接続されている。電池64は、センサ本体10(
図2)における全ての要素に給電する。すなわち、当該マイクロコンピュータ30A、投光素子3、およびその他の回路などに給電する。無線送信器62は、この電池64によって給電されてもよく、代わりに無線送信器62用の別個の電池によって給電されてもよい。
【0039】
制御手段20Aには、表示出力部15、設定入力部16および出力端子部17が接続されている。表示出力部15は、制御手段20Aの制御によって発光する。設定入力部16はユーザによって操作され、この操作の事象を制御手段20Aが監視し、操作の事象を検出すると制御手段20Aは対応する処理を実行する。ただし、制御手段20Aによる、設定入力部16の操作の事象の監視は、センサカバー7(
図1)が開放されている間のみ行われてもよい。センサカバー7(
図1)の開放は、図示しないタンパスイッチを用いて検出される。出力端子部17は、制御手段20Aを無線送信器62に接続する。
【0040】
投光素子制御回路21は、投光素子3が出力する検知波IRを制御する回路である。ただし、投光素子制御回路21は、制御手段20Aからの指示に応じて、その制御を変更する。なお、投光ユニット1は、上述のように、2つの投光器1a,1b(
図2)からなり、それぞれ一対の投光素子3を備えるが、
図3では、簡略化のために1つの投光素子3を示す。
【0041】
ローバッテリ判定回路25は、電池64を監視してローバッテリを検出する。ローバッテリ判定回路25は、例えば、電池64の両端の電圧を監視して所定のしきい値以下になった場合にローバッテリであると判定する。ローバッテリ判定回路25がローバッテリであると判定すると、ローバッテリ検出信号が動作モード切替手段27に入力される。動作モード切替手段27は、ローバッテリ判定回路25からローバッテリ検出信号を受信すると、投光ユニット1の動作モードを通常モードから、電池64の消費を抑制する抑制モードに切り替える。これら通常モードおよび抑制モードについては後述する。
【0042】
防犯用センサ装置Dの受光ユニット2は、そのセンサ本体10(
図2)が、表示出力部15、設定入力部16、出力端子部17、制御手段20B
、ローバッテリ判定回路25、動作モード切替手段27、受光素子5、増幅回路32、AGC(自動ゲイン調整)回路33および物体検知判定手段34を備える。制御手段20B、動作モード切替手段27および物体検知判定手段34は、1つのマイクロコンピュータ30Bにおいて実現される。
【0043】
受光ユニット2における、表示出力部15、設定入力部16、出力端子部17、ローバッテリ判定回路25、動作モード切替手段27、無線送信器62および電池64は、投光ユニット1におけるものとそれぞれ同一である。
【0044】
受光素子5は、投光ユニット1の投光素子3が送信した検知波IRを受光して電気信号に変換して増幅回路32に入力する。なお、投光ユニット1における投光素子3および投光素子制御回路21と、受光ユニット2における受光素子5および増幅回路32とによって、AIRセンサS1が構成される。
物体検知機能を果たす物体検知手段31は、本実施形態では、このAIRセンサS1および前記物体検知判定手段34を含む。増幅回路32では、受光素子5から入力された電気信号を増幅するが、この増幅の際には、AGC回路33によって自動的に利得の調整が行われ、増幅回路32からの出力が常に一定の信号レベル以下になるように制御される。このように増幅されたセンサ信号は、物体検知判定手段34および制御手段20Bに入力される。なお、増幅回路32が出力するアナログ信号は、図示しないA/Dコンバータによってディジタル信号に変換される。このA/D変換は、所定のサンプリング周期で実行される。
【0045】
物体検知判定手段34は、増幅回路32から入力されるセンサ信号が設定された検知レベル以下であるか否かを判定する。そして、検知レベル以下の場合には、物体を検知したものと判定して、制御手段20Bに物体検知信号を入力する。制御手段20Bでは、物体検知信号を受信すると、表示出力部15および無線送信器62をそれぞれ制御して警報信号を出力させる。表示出力部15では、このように制御手段20Bによって制御されて、所定の点滅または点灯による発光によって発報する。
【0046】
無線送信器62に対しては、出力端子部17を介して、制御手段20Bが所定の間隔を有する間欠的なパルスからなる信号を出力する。このように信号を間欠的なパルスとすることで、無線送信器62が例えば市販されている汎用のもので入力される信号の立ち上がりを監視して警報信号を生成する場合、この無線送信器62から送信される警報信号は、
図4(a)に示すように、所定の間隔T1を有する間欠的なパルスとなる。無線送信器62は、この間欠的なパルスからなる警報信号をコントロールユニット90の無線受信器91に送信する。これら警報信号の出力は、物体検知判定手段34が物体検知信号を制御手段20Bに入力し続けている間、制御手段20Bが表示出力部15および無線送信器62をそれぞれ制御して警報信号を出力させ続ける。
【0047】
上述した構成に基づいて投光ユニット1および受光ユニット2が動作し、防犯用センサ装置として機能する。ここで、以下に説明するローバッテリが検出されるまでは、これらユニット1,2は通常モードで動作する。この通常モードにおける防犯用センサ装置の物体検知動作は、誤報および失報が発生しないようにマージンを有する。
【0048】
次に、本実施形態に係る防犯用センサ装置Dにおけるローバッテリ検出後の抑制モードでの物体検知動作について説明する。まず、投光ユニット1および受光ユニット2における共通の動作について、投光ユニット1を例として説明する。
【0049】
投光ユニット1では、ローバッテリ判定回路25がローバッテリを検出してローバッテリ検出信号が動作モード切替手段27に入力されると、動作モード切替手段27が動作モードを通常モードから、電池64の消費を抑制する抑制モードに切り替える。
【0050】
抑制モードでは、制御手段20Aが、設定入力部16のユーザによる操作の事象の監視を停止する。すなわち、抑制モードでは、ユーザによって設定入力部16が操作されたとしても、それに応じた処理を制御手段20Aは実行しない。例えば、ユーザが物体検知の感度や検知エリアを切り替えるために設定入力部16を操作しても、これら感度やエリアの切り替えは行われない。このため、防犯用センサ装置としての利便性は低下する。しかし、操作の事象の監視を停止することで電池64の消費は抑制される。なお、上述のように、設定入力部16の操作の事象の監視がセンサカバー(
図1)の開放中のみ行われる場合、設定入力部16のユーザによる操作の事象の監視が行われるのは、通常モードにおいてセンサカバー(
図1)が開放されている間に限定される。
【0051】
さらに、抑制モードでは、死活監視のための信号送信の間隔が長くなってもよい。通常モードでは、防犯用センサ装置Dの各ユニット1,2が動作していることを示すために、投光ユニット1および受光ユニット2のそれぞれから、無線送信器62を介してコントロールユニット90に対して所定の間隔で死活監視信号を送信する。これに対して、抑制モードでは、この死活監視信号の間隔を長くする。これにより、無線送信器62からの信号送信による電池消費を抑えることができる。
【0052】
以上の抑制モード動作は、投光ユニット1および受光ユニット2に共通する。一方、投光ユニット1独自の動作としては、以下のものがある。
通常モードでは、投光素子制御回路21が投光素子3を制御して、例えば
図5(a)に示す間欠的なパルスからなる検知波IRを投光素子3に出力させる。これに対して、抑制モードでは、制御手段20Aが投光素子制御回路21に指示し、これに応じて、投光素子制御回路21が投光素子3を制御して、検知波IRの全体としてのパワーを抑制させる。具体的には、
図5(b)に示すようにパルス間隔t1をより長いパルス間隔t2にするか、
図5(c)に示すように各パルスの振幅a1をより小さい振幅a2にするか、または
図5(d)に示すように各パルスの出力時間w1をより短い出力時間w2にする。これら
図5(b)〜(d)のパルス操作を任意に組み合わせて全体としての検知波IRのパワーを抑えてもよい。このように検知波IRのパワーを抑えることで電池64の消費が抑制される。なお、
図5(a)に示す通常モードでの検知波IRは、失報がないようにマージンを有している。したがって、
図5(b)〜(d)に示す抑制モードでの検知波IRに切り替えたとしても、失報が必ずしも発生するわけではない。
【0053】
図3の受光ユニット2の独自の動作としては、以下のものがある。
抑制モードでは、AGC回路33の利得の調整範囲を小さくする。すなわち、増幅回路32が受光素子5からの電気信号を増幅する際に、AGC回路33が低消費電流状態になるように、自動的な利得の調整の範囲を小さくする。ここで、利得の調整の範囲を小さくすることには、範囲をゼロにすること、つまりAGC回路33を機能させないことも含まれる。このように装置Dの補助的な機能ではあるが電池64の消費が大きいAGC機能を制限することで、電池64の消費を抑制できる。
【0054】
抑制モードでは、マイクロコンピュータ30Bの図示しないA/Dコンバータによるサンプリング周期を、通常モードにおける周期よりも長くする。すなわち、通常モードでは、上述のように、増幅回路32が出力するアナログ信号を所定のサンプリング周期でA/D変換するが、抑制モードではこの周期を長くする。このように、マイクロコンピュータ30Bにおける入力信号のサンプリング周期を長くすることで、電池64の消費が抑制される。
【0055】
抑制モードでは、制御手段20Bは、物体検知信号を物体検知判定手段34から受信しても、表示出力部15に対する制御は行わない。すなわち、通常モードでは、制御手段20Bは物体検知判定手段34から物体検知信号を受信すると発光するように表示出力部15を制御するが、このような制御を実行しない。これにより、電池64の消費が抑制される。なお、本防犯用センサ装置Dでは、無線送信器62を介してコントロールユニット90に対して警報信号を出力するため、表示出力部15の発光による警報信号の出力が省略されても問題はない。
【0056】
抑制モードでは、また、制御手段20Bは、物体検知信号を物体検知判定手段34から受信すると、出力端子部17への出力を変更する。すなわち、通常モードでは、物体検知判定手段34から物体検知信号を受信すると、
図4(a)に示す間隔T1を有する警報信号をコントロールユニット90の無線受信器91に送信するように、制御手段20Bは無線送信器62に対して信号を出力するが、抑制モードでは、
図4(b)に示すより長い間隔T2を有する警報信号をコントロールユニット90の無線受信器91に送信するように、制御手段20Bは無線送信器62に対して信号を出力する。これにより、無線送信器62による電池64の消費が抑制される。ただし、このような抑制モードの処理を実行するのは、バッテリセービング機能が有効化に設定されている場合に限られる。バッテリセービング機能が無効化に設定されている場合には、無線送信器62からの信号の間隔はT1のままである。すなわち、無線送信器62が出力する間欠的な信号は、バッテリセービング機能が無効化されている場合、抑制モードに切り替えられても
図4(a)に示す間隔T1であり、変更されない。一方、バッテリセービング機能が有効化されていれば、無線送信器62からの送信による電池消費を抑えることができる。
【0057】
抑制モードにおいては、制御手段20Bが出力端子部17を介して無線送信器62に出力する間欠的なパルスからなる信号は、一定回数だけ繰り返してから信号出力が停止されてもよい。
【0058】
なお、本実施形態に係る防犯用センサ装置DはAIR型の物体検知装置からなるものとしたが、代わりにMW(マイクロ波)センサからなるものであってもよい。すなわち、赤外線の代わりにマイクロ波が用いられるが、その他の構成および動作については同様である。
【0059】
次に、本発明の第2の実施形態に係る防犯用センサ装置について説明する。第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、この防犯用センサ装置DAも、人体などを検知して発報つまり警報信号を出力する防犯センサ装置であるが、本実施形態にかかる防犯用センサ装置DAは、単一のセンサユニット2Aから構成される。なお、
図6ではセンサユニット2Aの分解斜視図を示しているが、防犯用センサ装置DAの動作時には一体に構成される。
【0061】
センサユニット2Aは、バックプレート51、バックボックス8A、センサ本体10Aおよびセンサカバー7Aを含む。バックプレート51の背面51aは被装着部K(
図1)に取り付けられる。バックボックス8Aは、後方に開口を有し、無線送信器62(
図2)を収納する無線送信器収納部82Aと、駆動電源である電池64(
図2)を保持する電池保持部84Aとを有する。無線送信器収納部82Aが無線送信器62(
図2)を収納し、電池保持部84Aが
電池64(
図2)を
保持した状態で、バックボックス8Aはバックプレート51に前方から取り付けられる。
【0062】
バックボックス8Aには、その前方からセンサ本体10Aが取り付けられる。センサ本体10Aは、第1の実施形態と同様に、マイクロコンピュータを含む回路基板などを内部に含む。センサ本体10Aには、また、上下方向に2つのPIRセンサ(受光素子)S2,S2と、これら2つのPIRセンサS2,S2の間にMWセンサS3とが装着される。
【0063】
センサ本体10Aには、また、後述するアンチマスキング機能を実現するための投光素子3Aおよび受光素子5Aが装着される。センサ本体10Aは、さらに、表示出力部15、設定入力部16および出力端子部17を備える。
【0064】
センサ本体10Aの前面は、マイクロ波を透過するセンサカバー7Aで覆われるとともに、PIRセンサS2,S2の前面に受光レンズ(図示せず)が形成されている。
【0065】
図7に示すように、センサユニット2Aは、そのセンサ本体10A(
図6)が、表示出力部15、設定入力部16、出力端子部17、制御手段20C、ローバッテリ判定回路25、動作モード切替手段27、物体検知判定手段34A、PIRセンサS2およびMWセンサS3を備える。センサユニット2Aには、また、アンチマスキング検出部41が設けられている。制御手段20C、動作モード切替手段27、物体検知判定手段34Aおよびアンチマスキング検出部41は、1つのマイクロコンピュータ30Cで実現される。なお、上述のように、センサユニット2Aは2つのPIRセンサS2
を備えるが、
図7においては簡略化のために1つのPIRセンサS2を示す。
【0066】
PIRセンサS2は、受光素子(図示せず)および増幅回路(図示せず)を備え、検知エリア内の物体からの電磁波である遠赤外線を受けてPIRセンサ信号を物体検知判定手段34Aに入力する。MWセンサS3は、可視光線よりも長波長の電磁波であるマイクロ波を検知エリアに向けて発信し、物体からの反射波を受信する。MWセンサS3は、具体的には、例えばドップラ効果の利用により移動体物体の形状や速度などを検知してMWセンサ信号を物体検知判定手段34Aに入力する。
【0067】
物体検知判定手段34Aは、MWセンサ信号とPIRセンサ信号がそれぞれ個別に設定された各検知レベルと比較して、それぞれの物体を検知したか否かを判定する。両方のセンサS2,S3で物体を検知したと判定した場合に、物体検知判定手段34Aは制御手段20Cに物体検知信号を入力する。
物体検知機能を果たす物体検知手段に31は、本実施形態では、これらセンサS2,S3および前記物体検知判定手段34Aを含む。このように、検知信号の一方のみではなく両方の判定結果を用いるため、誤報の可能性が極めて低い。代わりに、いずれか一方のセンサS2(S3)で物体を検知したと判定しただけで、物体検知判定手段34Aは制御手段20Cに物体検知信号を入力してもよい。このように、検知手法の異なるセンサS2,S3の検知信号を用いることで、失報の可能性が低減される。
【0068】
アンチマスキング検出部41は、センサカバー7A(
図6)の外側でレンズ表面付近にテープや紙などの遮蔽物を貼り付けるなどしてレンズ表面が妨害的に遮蔽されたことなどにより、レンズの前面付近にある遮蔽物を検出したとき、アンチマスキングを検出する。このアンチマスキング機能を実現するために、センサユニット2Aは、投光素子3Aおよび受光素子5Aを備え、赤外線IRの投光およびその受光が定期的に行われる。
【0069】
本実施形態に係る防犯用センサ装置DAにおいて、ローバッテリ検出後の抑制モードでの物体検知動作について、第1の実施形態と相違する点について説明する。
ローバッテリ判定回路25が電池64のローバッテリを検出してローバッテリ検出信号が動作モード切替手段27に入力されると、動作モード切替手段27が動作モードを通常モードから、電池64の消費を抑制する抑制モードに切り替える。
【0070】
抑制モードでは、制御手段20Cが、MWセンサS3におけるマイクロ波の発信を停止させる。これに伴い、物体検知判定手段34
Aは、物体検知の判定条件を切り替えて、PIRセンサ信号のみを、設定された検知レベルと比較する。検知レベル以上の赤外線を受光すると物体を検知したものと判定して、制御手段20Cに物体検知信号を入力する。
【0071】
このように電池64の消費が大きいMWセンサS3を停止させることで、電池64の消費が抑制される。なお、PIRセンサS2とMWセンサS3を組み合わせて物体を検知すると、上述のように誤報または失報の可能性は極めて低いが、PIRセンサS2単独であっても許容できない程の誤報または失報が発生するわけではない。
【0072】
抑制モードでは、また、アンチマスキング検出部41に接続された投光素子3Aからの投光を制限する。具体的には、検知波IRのパワーを抑えることに関して
図5(a)〜(d)を参照して説明した手法を用いて、投光素子3Aからのパワーを抑えることで、投光を制限してもよい。代わりに、アンチマスキング機能は補助的な機能であるため省略可能であることより、投光素子3Aからの投光自体を停止してもよい。このように装置D
Aの補助的な機能ではあるが電池64の消費が大きいアンチマスキング機能を制限することで、電池64の消費を抑制できる。特に、アンチマスキング検出部41のパワーを抑えた場合には、上記遮蔽物を検出し難くはなるが、全く検知しないわけではない。なお、アンチマスキング機能における検知波として赤外線を挙げたが、これに限定されるわけではない。例えば、マイクロ波、レーザまたは超音波の検知波であってもよい。
【0073】
本実施形態に係る防犯用センサ装置DAは、第1の実施形態と同様に、バッテリセービング機能入力手段を備える。バッテリセービング機能が無効化に設定されている場合、通常モードであるか抑制モードであるかに関わらず、PIRセンサS2が物体を検知すると必ず直ちに無線送信器62から警報信号を出力する。しかし、バッテリセービング機能が有効化に設定されている場合、PIRセンサS2が物体を検知して直ちに警報信号を出力した後所定の期間は、物体を検知しても警報信号を出力しない。この所定の期間は、例えば、通常モードでは5秒であり、抑制モードでは120秒である。このようにバッテリセービング機能が無効化されている場合には物体を検知するごとに警報信号を出力するのに対して、有効化されている場合には前記所定の期間は物体を検知しても警報信号を出力しないため、電池の消費を抑制できる。また、バッテリセービング機能が有効化されている場合には、通常モードに比べて抑制モードにおける前記所定の期間(物体を検知しても警報信号を出力しない期間)を長くすることで、抑制モードにおいて電池の消費を抑制できる。
【0074】
なお、本実施形態では、ローバッテリ検出後にPIRセンサS2とMWセンサS3のうちMWセンサS3を停止させるものとしたが、PIRセンサS2が停止されてもよい。ただし、MWセンサS3の電力消費はPIRセンサS2よりも大きいため、MWセンサS3を停止させる方が、より効果的に電池64の消費を抑制できる。
【0075】
本実施形態における防犯用センサ装置は、PIRセンサS2とMWセンサS3の組合せによって構成されるものとしたが、他の任意の2つのセンサからなるものであってもよい。例えば、AIRセンサとMWセンサの組合せであってもよい。この場合、AIRセンサとMWセンサはいずれも検知波を送信するため、電池消費が大きい。したがって、抑制モードではいずれのセンサが停止されても、電池64の消費は抑制される。
【0076】
センサの組合せとしては、これらの他に、上下方向に配置された2つのPIRセンサが組合せられたものであってもよい。この防犯用センサ装置では、ノイズ信号を検知した場合に、一方のPIRセンサを休止させるものがある(特開2012−018034号公報)。抑制モードでは、ノイズ信号を検知した場合と同一の動作によって一方のPIRセンサを休止させれば、電池64の消費を抑制できる。
【0077】
本実施形態に係るセンサユニット2Aにおいて、上述したアンチマスキング機能は補助的な機能であるため、省略されてもよい。
【0078】
本実施形態における防犯用センサ装置は、PIRセンサS2とMWセンサS3の組合せによって構成されるものとしたが、MWセンサS3が省略されたPIRセンサS2のみからなるものであってもよい。
【0079】
上記各実施形態において、通常モードから抑制モードに切り替えられることで変更される上述の各動作は、全てが変更される必要はなく、任意の1つまたは複数の動作のみが変更されてもよい。ただし、全ての動作が変更されれば、電池の消費を効果的に抑制できる。複数の動作のうちのいずれの動作を変更するかについては、ユーザによって図示しないスイッチから指定されてもよい。例えば、ユーザは、設定入力手段のユーザによる操作の事象の監視を停止しないことや、死活監視のための信号送信の間隔を変更しないことなどを選択できる。
【0080】
上記各実施形態において、防犯用センサ装置が含むセンサとしては、AIRセンサ、PIRセンサおよびMWセンサを挙げたが、これらに限定されるものではない。例えば、レーザセンサや超音波センサが含まれてもよい。また、防犯用センサ装置は、上記第1の実施形態のように単一種類のセンサのみからなるものであっても、上記第2の実施形態のように複数種類のセンサを組み合わせたものであってもよい。