(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の両面粘着フィルム及びそれを用いた情報表示画面用の保護部材を、その構成要素に基づいて、さらに詳しく説明する。
【0012】
(全体構成)
本発明の情報表示画面用の保護部材は、透明保護カバーと、基材フィルムの一方の面に、吸着層を積層し、もう一方の面にアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を積層してなり、前記吸着層に貼り合わされたセパレータからなる両面粘着フィルムとを、前記粘着剤層を介して貼り合せた状態で提供されるものである。
【0013】
(透明保護カバー)
本発明の情報表示画面用の保護部材の構成部材のうち、前記透明保護カバーは、ガラス板で波長が380〜780nmの領域の可視光の全光線透過率が85%以上のものを使用することが好ましい。全光線透過率が85%未満の場合には、画面から発せられた光が透明部材を透過しにくくなるので、視認性が低下するからである。
【0014】
(全光線透過率の測定方法)
ここでの全光線透過率は、JIS K 7105に準じ、積分球式濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)により測定した。
【0015】
前記透明保護カバーの厚みは、硬さと断裁加工性の観点から100〜1,000μmの範囲であることが好ましい。前記透明保護カバーの厚みが100μmより小さいと、前記透明保護カバーを情報表示画面に貼着する際の作業性が低下する場合がある。一方、前記透明保護カバーの厚みが1,000μmを超えると、コストアップとなり、透過率が低下して視認性が低下する場合がある。
【0016】
前記透明保護カバーは、中心線表面粗さRaが5.0μm以下であることが好ましい。中心線表面粗さRaが5.0μmより大きいと、前記粘着剤層が塑性変形しても透明保護カバー表面の凹凸を打ち消しづらくなって、前記吸着層表面を前記保護部材の吸着層とディスプレイパネルの情報表示画面とを貼着させる際に、気泡の巻き込みが生じやすくなるからである。
【0017】
前記透明保護カバーには、場合により、光反射防止層を設けることができ、透明保護カバーの片面に光反射防止剤としてITO、SiO
2、TiO
2、ZnO
2等の酸化金属の膜を形成する。このような膜の形成は、例えばITOなどをスパッタリングすることにより行っても良く、この方法によって光反射防止層を形成する場合には、透明性など信頼性が高いものが得られる。
【0018】
また、光反射防止層の形成は、コストの点で好ましい方法として、例えばITO、SiO
2、TiO
2、ZnO
2等の酸化金属の微粉末にアクリル系樹脂のバインダーを加え溶液化又はエマルジョン化し、これをグラビアコーター、スピンコーターなどで塗布するウエット法で形成しても良い。ウエット法における反射防止剤として使用する前記酸化金属の微粉末の粒径は、透視性の点から微細である程好ましく、10〜500nmとすることが好ましいが、この粒径とする場合には、分散性の悪さと二次凝集によって歩留まりが悪くなることから、粒径1.0μmより小さいものが好ましい。
【0019】
(両面粘着フィルム)
本発明の情報表示画面用の保護部材に用いる両面粘着フィルムは、基材フィルムの一方の面に、吸着層を積層し、もう一方の面にアクリル系粘着剤とエポキシ系架橋剤を必須成分とする粘着剤層を積層してなり、前記吸着層にプラスチックフィルムからなるセパレータを貼り合わせたものであり、さらに前記粘着剤層に、ポリエステル系樹脂フィルムにシリコーン離型処理を施したカバーフィルムを貼り合わせた状態で提供されるものである。
【0020】
(基材フィルム)
本発明で使用する基材フィルムは、各種のプラスチックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等よりなるフィルムがあげられるが、これらに限定されるものではない。粘着剤層や吸着層の熱架橋時の取り扱い性、コストの面からポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルムが好ましい。透明性の点では、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常5〜400μm、特に20〜250μmの範囲であるのが好ましい。
【0021】
基材フィルムは、その表面をコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火炎処理したり、必要に応じてアンカー層等を設けてもよい。アンカー層等を積層する方法としては、製膜時に積層するいわゆるインライン法、または製膜したフィルムに積層するいわゆるオフライン法のいずれでもよい。
【0022】
(粘着剤層)
本発明の粘着剤層には、両面粘着フィルムの全光線透過率が80%以上になるような高透明粘着剤が得やすい等の理由から、各種アクリルモノマー及び/またはオリゴマーを共重合して得られるアクリル系共重合体と、エポキシ系架橋剤を必須成分とするアクリル系粘着剤が好適に使用することができる。
【0023】
前記アクリル系粘着剤は、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸アルキルエステルと、これらのアクリル酸アルキルエステル又は、メタクリル酸アルキルエステルに、酢酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニル基含有化合物や、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチルなどを共重合したものにエポキシ系架橋剤を加えたものが用いられる。
【0024】
前記アクリル系粘着剤に用いられるアクリル系共重合体としては、重量平均分子量が10万〜100万の範囲内のものが好ましく用いられる。重量平均分子量が10万より小さいと、粘着力が高くなり、カバーフィルムの剥離が困難になるといった不具合が発生する。また、重量平均分子量が100万を超えると溶液粘度が高くなり、塗工時に平滑な粘着剤塗工外観が得難い問題がある。また、このアクリル系共重合体のガラス転移点(Tg)は、−20℃以下のものが好ましく使用できる。−20℃よりTgが高いと粘着剤が硬くなり、透明保護カバーに対して適度な粘着力が得られなくなる。
【0025】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル等の他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂としてビスフェノール系エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができ、特にN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好適に用いられる。なお、エポキシ系架橋剤の種類は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0026】
前記エポキシ系架橋剤の添加量としては、粘着剤100重量%中の0.10〜0.35重量%の割合が好適で、より好ましい添加量は0.15〜0.25重量%である。添加量が0.10重量%未満の場合は、硬化が不十分になり前記粘着剤層が柔らかくなりすぎて表面の平滑性を保てなくなるため、前記粘着剤層に透明保護カバーを貼り合せた保護部材の状態で前記吸着層の表面を平滑に保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みが生じてしまう。添加量が0.35重量%を超えた場合は、粘着剤層としては硬くなりすぎて、透明保護カバー表面の凹凸や、前記吸着層表面の凹凸を打ち消す様に粘着剤層が塑性変形できなくなる。その結果、前記粘着剤層に透明保護カバーを粘着した保護部材の状態で前記吸着層の表面を平滑に保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みが生じてしまう。
【0027】
(粘着剤層のゲル分率の測定方法)
本発明の両面粘着フィルムを構成する粘着剤層のゲル分率は、所定の大きさにカットした基材上に粘着剤層のみが設けられた粘着フィルムを30分間トルエンに浸漬させ、浸漬後45℃で24時間乾燥した後に浸漬後の粘着剤層の重量を測定し、あらかじめ測定しておいた浸漬前の粘着剤層の重量との重量比として求められる。
【0028】
(粘着剤層表面のマルテンス硬度の測定方法)
本発明の両面粘着フィルムを構成する粘着剤層表面のマルテンス硬度の測定は、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製 ENT―2100)を使用して下記条件にて行った。
使用圧子:球状圧子(半径200μm)
最大荷重:10μN
荷重時間:10sec
保持時間:5sec
徐荷時間:10sec
【0029】
前記粘着剤の物性としては、前記粘着剤層表面のマルテンス硬度が8〜15mN/mm
2であることが好ましい。マルテンス硬度が8mN/mm
2未満の場合、前記粘着剤層表面が柔らかすぎて容易に変形できる様になってしまい、前記粘着剤層表面の平滑性が保ちにくくなって、前記粘着剤層に透明保護カバーを貼り合せた保護部材の状態で前記吸着層の表面を平滑に保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みが生じてしまう。また、マルテンス硬度が15mN/mm
2より大きい場合は、両面粘着フィルム自体の柔軟性が低下して、透明保護カバー表面の凹凸や、前記吸着層表面の凹凸を打ち消す様に粘着剤層が塑性変形できなくなる。その結果、前記粘着剤層に透明保護カバーを貼り合せた、保護部材の状態で前記吸着層の表面を平滑に保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みが生じてしまう。
【0030】
前記粘着剤層のゲル分率は75%〜90%である事が、粘着剤層に透明保護カバーを貼り合せた、保護部材の状態で吸着層表面を平滑に保ち、情報表示画面に前記保護部材を貼り合わせる際に気泡の巻き込みを防止できる点で望ましい。ゲル分率が75%未満の場合は、前記粘着剤層表面が柔らかすぎて容易に変形できる様になってしまう。その結果、前記粘着剤層に透明保護カバーを貼り合せた、保護部材の状態で前記吸着層の表面を平滑に保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みが生じてしまう。ゲル分率が90%を越えた場合は、粘着剤層が硬くなりすぎて透明保護カバー表面の凹凸や、前記吸着層表面の凹凸を打ち消す様に粘着剤層が塑性変形できなくなる。その結果、前記粘着剤層に透明保護カバーを貼り合せた、保護部材の状態で前記吸着層の表面を平滑に保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みが生じてしまう。
【0031】
本発明における両面粘着フィルムの粘着剤層の厚みは、5〜30μmとすることが適当である。粘着剤層の厚みが5μm未満の場合、粘着力が低下し前記透明保護カバーに対して適度な粘着力が得られなくなる。また、粘着剤層の厚みが30μmを超えた場合は、粘着剤表面の平滑性を高い状態に保つことが困難になり、粘着剤層と透明保護カバーを貼着させて保護部材となした際に、反対側の吸着層表面を平滑に保つことができなくなり、情報表示画面に前記保護部材の吸着層を貼り付ける際に気泡の巻き込みが生じてしまう。
【0032】
ここでの粘着剤層の形成方法としては、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤を塗布する方法や水に分散し塗布する方法等の公知の方法を用いることができるが、架橋型アクリル系粘着剤の形成方法としては、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤を塗布する方法が一般的である。
【0033】
なお、前記粘着剤の希釈剤としては特に制限無く用いることができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の粘着剤層のコーティング法としては、コンマナイフコーター、ダイコーター、リーバースコーターなどが挙げられる。なお、気泡混入防止の点からからダイコーターが好適である。
【0035】
(カバーフィルム)
本発明の両面粘着フィルムには、粘着剤層面にポリエステル系樹脂フィルムをカバーフィルムとして貼り合わせることが好ましい。カバーフィルムの中心線表面粗さは0.20μm以下であることが好ましい。より好ましくは、カバーフィルムの中心線表面粗さが0.10μm以下であることが好ましい。中心線表面粗さが0.20μmより大きくなるとカバーフィルム表面の粗さが粘着剤層に転写し、さらに転写してできた粘着剤層表面の凹凸が、透明保護カバーと粘着剤層を貼着して保護部材となした際に、吸着層表面に影響を与えて粘着剤層の塑性変形では打ち消せない凹凸を吸着剤表面に生じさせてしまい、前記保護部材をディスプレイパネルの情報表示画面へ貼り付けた際に、気泡の混入が発生しやすくなる。
【0036】
カバーフィルムとして使用されるポリエステル系樹脂フィルムとしては、寸法安定性、透明性、硬さの点で、二軸延伸ポリエステル系フィルムの使用が好ましい。カバーフィルムとなるポリエステル系樹脂フィルムの厚みは10〜200μmの範囲、硬さと断裁加工性から25〜100μmの範囲のものが好ましい。前記の厚みが10μmより薄いとフィルム強度が不足し、カバーフィルム剥離時に破れたり、両面粘着フィルムに貼り合わせる際に、シワが入り易い等の問題が発生する。また、前記厚みが200μmより厚いと、フィルム自体が高価になる等の問題が発生する。
【0037】
また、本発明の両面粘着フィルムを前記の透明保護カバーに粘着剤層を介して貼着する場合には、カバーフィルムを剥離して使用するものであり、前記粘着剤層からカバーフィルムを剥離する際の剥離力を調整するために、前記カバーフィルムの粘着剤層を貼り付ける面に、シリコーン系剥離剤を塗布しておくことが好ましい。
【0038】
(吸着層)
本発明の吸着層に用いるシリコーン樹脂の性状としては、透明性が高く、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体の表面に対しても、吸着層の面が被着体表面に沿うことが求められる。さらに剥離の際には、小さい剥離力で容易に剥離できることが求められる。また、少なくとも厚み10μm以上で、目付け加工の方法を用いることなく塗布及び加熱処理だけで架橋吸着層を設けるためには、シリコーン組成物の硬化反応に際して、白金触媒等のもとで、150℃以下の低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプである、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと架橋剤としてSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応により熱架橋する付加反応型液状シリコーン組成物の使用が好ましい。
【0039】
1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとしては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンと、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンとから選ばれる少なくとも1種を用いると良い。
【0040】
これらのジオルガノポリシロキサンの1形態としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンで、下記一般式(化1)で表わされる化合物である。
【0042】
(式中Rは下記の有機基、nは整数を表す。)
【0044】
(式中Rは下記の有機基、n、mは整数を表す。)
【0045】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種、または異種の非置換または置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で、好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0046】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、上記一般式(化2)で表わされる化合物である。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0047】
1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量としては、20,000〜700,000の範囲のものが好ましい。前記のジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が20,000未満であると、硬化性が低下したり、被着体への粘着力が低下してしまう。また、700,000を超えてしまうと、組成物の粘度が高くなりすぎて製造時の撹拌が困難になる。
【0048】
ここで架橋反応に用いる架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。分子の形状としては、直鎖状、分岐状、環状のものを使用できる。
【0049】
前記アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン中のアルケニル基(A)に対する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基(B)のモル比(A)/(B)が1.0〜2.0の範囲となるように配合することが好ましい。モル比(A)/(B)が1.0未満では架橋密度が不足して、これに伴い凝集力、保持力が低くなってしまうことがあり、逆に2.0を超えると架橋密度が高くなり、適度な粘着力、及びタック性が得られず、気泡の混入も発生しやすくなる。
【0050】
架橋反応に用いる付加反応触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニル基含有シロキサン錯体、ロジウム錯体、ルテニウム錯体などが挙げられる。また、これらのものをイソプロパノール、トルエンなどの溶剤や、シリコーンオイルなどに溶解、分散させたものを用いてもよい。架橋反応した吸着層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0051】
添加量はシリコーン組成物の合計100重量部に対し、貴金属分として5〜2,000ppm、特に10〜500ppmとすることが好ましい。5ppm未満では硬化性が低下し、架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、2,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0052】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。但し、無溶剤型であっても、所望の膜厚を得るための粘度調節のために、必要に応じてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1、4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、またはこれらの混合溶剤などが使用される。
【0053】
添加量はシリコーン組成物の合計100重量部に対し、20〜1,000重量部、特に25〜900重量部とすることが好ましい。20重量部未満では、吸着層と基材の密着性が低下して剥離する場合があり、1,000重量部を超えると、シリコーン組成物の塗工液の粘度が低くなりすぎるので、塗工後から硬化までの間に、塗工された吸着層が一部流動し、吸着層表面の平滑性が低下してしまう。
【0054】
前述のごとく、吸着層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面の凹凸に追従して密着力を確保することが求められる。そして、例えば前記情報表示画面の保護部材として両面粘着フィルムを使用する場合、吸着層の膜厚は、被着体に対する吸着層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも10μm以上、通常は10〜50μmが好ましい。本発明の場合、気泡の混入を防止し、気泡吸収性を確保するために、吸着層の厚みとしては、20〜50μmであることがより好ましい。10μm未満であると被着体に対する保護部材の密着面方向の剪断力が確保できず、特に長期貼り付け時には、保護部材が被着体から剥がれ易い。また、吸着層の厚みが50μmを超える場合には、シリコーン組成物の使用量が多くなり、両面粘着フィルムの製造コストの上昇を招いてしまう。
【0055】
(アンカー層)
本発明においては、基材フィルムと吸着層との接着力の向上、および被着体への保護部材の貼着後、前記保護部材を再剥離する際に、前記吸着層と基材フィルム間で剥離することなく、被着体からスムーズに剥離できることを目的として、前記基材フィルムと吸着層との間にアンカー層を設けてもよい。
【0056】
アンカー層の材料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。中でもポリエステル系樹脂またはアクリル系樹脂が、帯電防止性や被膜特性の観点から好ましい。
【0057】
アンカー層塗工液、吸着層塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等公知の方法が適宜使用される。
【0058】
(セパレータ)
本発明においては、吸着層の表面の汚れや異物付着を防いだり、両面粘着フィルムのハンドリングを向上させるため、そして特に前記両面粘着フィルムを透明保護カバーに貼り合わせて情報表示画面の保護部材として用いたときに、気泡の混入を抑える目的で、プラスチックフィルムからなるセパレータを吸着層面に貼り合わせて用いる。
【0059】
本発明の両面粘着フィルムのセパレータには、プラスチックフィルムが用いられる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム等を挙げることができる。これらの中で、生産性、加工性に優れるポリエステルフィルムが好ましく使用できる。また、このようなポリエステルフィルムには二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムがあり、そのいずれも使用できるが、特に二軸延伸フィルムが汎用的であり好ましく使用できる。プラスチックフィルムの厚さとしては、25〜200μmが好ましく用いられる。25μmより薄いとフィルム強度が不足し、十分な保護性能が得られなかったり、剥離時にフィルムが破れる等の問題が発生する。また、200μmより厚いとフィルム自体が高価になる等の問題が発生する。
【0060】
前記吸着層面に貼り合わせるセパレータの中心線表面粗さRaは0.20μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、セパレータの中心線表面粗さが0.10μm以下である。前記中心線表面粗さが0.20μmより大きくなると、セパレータ表面の粗さが吸着層面に転写し、透明保護カバーと粘着剤層を貼着して保護部材となした際に粘着剤層の塑性変形では打ち消せない凹凸を吸着剤表面に生じさせてしまい、前記保護部材の吸着層面をディスプレイパネルの情報表示画面へ貼り付けた際に、気泡の混入が発生しやすくなるという問題がある。
【0061】
(表面粗さの測定方法)
本発明における中心線表面粗さの測定は、接触型表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、AY−22)を用いて行い、測定した得られた中心線平均粗さRaを用いる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各実施例中の「部」は特に断ることのない限り重量部を示したものである。
【0063】
(実施例1〜8、比較例1〜2)
プラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記アンカー層塗工液をグラビアコーターで塗工、乾燥して、厚み2μmのアンカー層を形成した。
(アンカー層塗工液)
アクリルポリオール樹脂 20部
(東レファインケミカル製、コータックス(登録商標)LH455、固形分:50%)
ポリチオフェン 27部
(信越ポリマー製、セプルジーダ(登録商標)OC−SC100、固形分:3%)
MEK 40部
トルエン 13部
【0064】
(実施例1〜8、比較例1〜2)
前記のアンカー層の上に、下記に記載の吸着層塗工液をダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、厚み28μmの吸着層を形成した。
(吸着層塗工液)
分子末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン 68.59部
(Mw:540,000)/無溶剤型
オルガノハイドロジェンシロキサン−ジオルガノシロキサンコポリマー 0.41部
(Mw:2,000)/無溶剤型
白金触媒(信越ポリマー製、PL−56) 1.00部
トルエン 30.00部
合 計 100.00部
【0065】
(実施例1〜8、比較例1〜2)
前記の吸着層が形成された各粘着フィルムの吸着層面に、厚さ50μmのポリエステルフィルムのセパレータを2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら両者を貼り合わせて、プラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に吸着層、セパレータが積層された粘着フィルムを得た。
【0066】
(実施例1)
前記粘着フィルムの、吸着層が形成された面とは反対側の面に、下記に記載の粘着剤層塗工液をダイコーターで塗工し、100℃で2分間加熱・乾燥して、10μmの厚みになる様調整して粘着剤層を形成した。
(粘着剤層塗工液)
アクリル系共重合体 100.0部
(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル共重合物、重量平均分子量Mw:約540,000、固形分 23%)
1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン 1.06部
(固形分 5%)
合計 101.06部
【0067】
(実施例2)
下記に記載の粘着剤層塗工液を、実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
(粘着剤層塗工液)
アクリル系共重合体 100.0部
(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル共重合物、重量平均分子量Mw:約540,000、固形分 23%)
1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン 1.61部
(固形分 5%)
合計 101.61部
【0068】
(実施例3)
下記に記載の粘着剤層塗工液を、実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
(粘着剤層塗工液)
アクリル系共重合体 100.0部
(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル共重合物、重量平均分子量Mw:約540,000、固形分 23%)
1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン 0.7部
(固形分 5%)
合計 100.7部
【0069】
(実施例4)
実施例1と同組成の粘着剤層塗工液を、実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ6μmの粘着剤層を形成した。
【0070】
(実施例5)
実施例1と同組成の粘着剤層塗工液を実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ25μmの粘着剤層を形成した。
【0071】
(実施例6)
実施例1と同組成の塗工液を実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ4μmの粘着剤層を形成した。
【0072】
(実施例7)
実施例1と同組成の塗工液を実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ32μmの粘着剤層を形成した。
【0073】
(実施例8)
下記に記載の粘着剤層塗工液を、実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
(粘着剤層塗工液)
アクリル系共重合体 100.0部
(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル共重合物、重量平均分子量Mw:約540,000、固形分 23%)
エポキシ系架橋剤(グリシジルアミン系 綜研化学E−AX) 0.25部
(固形分 25%)
合計 100.25部
【0074】
(比較例1)
下記に記載の粘着剤層塗工液を、実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
(粘着剤層塗工液)
アクリル系共重合体 100.0部
(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル共重合物、重量平均分子量Mw:約540,000、固形分 23%)
1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン 2.3部
(固形分 5%)
合計 102.3部
【0075】
(比較例2)
下記に記載の粘着剤層塗工液を、実施例1と同様の工程にて塗工、乾燥して厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
(粘着剤層塗工液)
アクリル系共重合体 100.0部
(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル共重合物、重量平均分子量Mw:約540,000、固形分 23%)
1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン 0.3部
(固形分 5%)
合計 100.3部
【0076】
(実施例1〜8、比較例1〜2)
前記の粘着剤層が形成された各粘着フィルムの粘着剤面に、厚さが25μmのシリコーン系剥離剤を塗工したカバーフィルム(ポリエチレンテレフタレート製)の剥離剤塗工面を向かい合わせて2本のロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み、空気を逃がしながら両者を貼り合わせた後、本発明の両面粘着フィルムを得た。
【0077】
各実施例、比較例の評価結果を表1に、各評価方法を下記に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
(評価方法)
(粘着剤層のゲル分率)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、実施例1〜8、比較例1〜2の粘着剤層塗工液を前記基材の片面に塗工し、100℃で2分間加熱・乾燥して、実施例1〜8、比較例1〜2に提示した厚みの粘着剤層を形成した。この粘着剤層のみを設けたフィルムを100mm×100mmの大きさにカットして試験片を作製し、その試験片の重量を測定した。次に前記の各試験片をトルエンに30分浸漬させた後、試験片及びトルエン溶液をろ過した残渣を45℃で24時間乾燥させて、浸漬後の試験片の乾燥後重量およびトルエン溶液をろ過した残渣の乾燥後重量を測定した。その後、乾燥後試験片から粘着剤層を除去して基材重量を測定した。ゲル分率は以下の式によって算出した。
(トルエン浸漬後の試験片及びろ過残渣の乾燥重量−基材重量)/(トルエン浸漬前の試験片重量−基材重量)(%)
【0080】
(粘着剤層表面のマルテンス硬度)
上記作成した両面粘着フィルムを10mm×10mmの大きさにカットして試験片を作製し、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製 ENT―2100)を使用して下記条件にて各サンプルの粘着剤層表面のマルテンス硬度を測定した。
使用圧子:球状圧子(半径200μm)
最大荷重:10μN
荷重時間:10sec
保持時間:5sec
徐荷時間:10sec
【0081】
(粘着剤層の写像性)
上記作成した両面粘着フィルムを100mm×100mmにカットし、写像性試験器(スガ試験機株式会社製ICM−1DP)を使用してJIS K 7374に準拠した方法にて各サンプルの写像性を測定した。
【0082】
(粘着力)
上記作成した両面粘着フィルムを25mm幅にカットし、表面を研磨したSUS304のステンレス板に前記両面粘着フィルムの粘着剤層を貼着し、2kgの荷重をかけたロールを2往復させ、30分間常温放置した後に、粘着剤層面から180度方向に引き剥がした際の引き剥がし力を測定した。
【0083】
(気泡の混入評価)
上記作成した両面粘着フィルムを120mm×55mmにカットし、
厚み300μmの透明保護カバー(ガラス板)に、前記両面粘着フィルムのセパレーターを積層した吸着層側から、2kgの荷重ロールを2往復させて粘着剤層を貼着した後、常温(25℃)で、24時間放置して、本発明の情報表示画面用の保護部材を得た。その後、前記保護部材のセパレーターを剥離して、吸着層を厚み3mmのソーダ石灰ガラス板に貼り合わせ、気泡の混入を目視確認した。
評価基準
◎:気泡の混入が全くない
○:気泡の混入が殆どなく、実用上問題ない。
×:気泡が混入し、残っている