(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427787
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】デヒドロリナリルアセテートの製造方法(II)
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20181119BHJP
C07C 69/145 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/145
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-512371(P2016-512371)
(86)(22)【出願日】2014年5月7日
(65)【公表番号】特表2016-519139(P2016-519139A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2014059376
(87)【国際公開番号】WO2014180921
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】13166963.2
(32)【優先日】2013年5月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】アキノ, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】チュミ, ヨハネス
【審査官】
松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/086135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/08
C07C 69/145
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物を、
式(II)
【化2】
の化合物と、式(III)
【化3】
の化合物とを反応させることにより製造する方法であって、
触媒の非存在下
、100〜160℃の温度で、常圧で行うこと、
及び、反応時間は2〜20時間とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
式(III)の化合物と式(II)の化合物との比が、1:1〜8:1である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒を使用せずに行う請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プロセス後、残留するアセテート無水物および酢酸を反応溶液から除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規の改良された、IUPAC名が酢酸1−エチニル−1,5−ジメチル−ヘキス−4−エニルエステルであるデヒドロリナリルアセテート(DLA)の製造方法であって、IUPAC名が3,7−ジメチルオクト−6−エン−1−イン−3−オールであるデヒドロリナロール(DLL)から出発し、アセチル化によってデヒドロリナリルアセテート(DLA)を製造する方法に関する。
【0002】
デヒドロリナリルアセテート(式(I)の化合物)
【化1】
は、香味および香料への応用分野で重要かつ有用な化合物として使用されている。
【0003】
DLAはまた、リナリルアセテート(式(IV)の化合物)
【化2】
の製造にも使用することができ、これもまた、香味および香料への応用分野で重要かつ有用な化合物として使用されている。
【0004】
今日、DLAは通常、p−トルエンスルホン酸を「有機溶媒可溶性」酸触媒として使用し、DLLのアセチル化により製造されている。
【0005】
この反応過程で、かなりの量の副生物、例えば、D,L−イソ−3,7−ジメチル−7−オクテン−1−イン−3−イルアセテート(イソ−DLA;式(V)の化合物)、
【化3】
2,2,6−トリメチル−6−エチニルテトラヒドロピラン(ETTP;式(VI)の化合物)、
【化4】
および3−イソプロペニル−1−メチル−2−メチレン−シクロペンチルアセテート(式(VI)の化合物)
【化5】
などが生成する。
【0006】
本発明の目的は、上記の先行技術の方法における欠点がない(特に副生物の生成量を減少させる)、DLAの改良された製造方法を見出すことであった。
【0007】
驚いたことに、触媒の非存在下では、DLLのアセチル化により、望ましくない副生物の量を著しく低減されるとともに、高い選択性と収率でDLAが得られることがわかった。
【0008】
したがって、本発明は、式(I)
【化6】
の化合物であるDLAを、
式(II)
【化7】
の化合物であるDLLと、式(III)
【化8】
の化合物である無水酢酸とを反応させることにより製造する方法であって、
触媒の非存在下に行うことを特徴とする方法に関する。
【0009】
本発明の方法は、通常、高温で行われる。
【0010】
本発明の方法は、50℃超、好ましくは80℃超、より好ましくは100℃超の温度で行うことが好ましい。
【0011】
本発明の方法は、100℃〜160℃の温度で行うことが好ましい。
【0012】
本発明の方法は、通常、常圧で行われる。
【0013】
DLLと無水酢酸(Ac
2O)は等モル量で反応混合物に加えることができる。化合物のいずれか一方をやや過剰に使用することも可能である。通常、DLLに対して無水酢酸が過剰に使用される。無水酢酸(式(III)の化合物)は、1:1〜8:1の比率(式(II)の化合物に対して)で添加することが好ましい。無水酢酸(式(III)の化合物)は、1.1:1〜5:1の比率(式(II)の化合物に対して)で添加することがより好ましい。
【0014】
本発明の方法は、通常、溶媒を使用せずに行われる。しかしながら、不活性溶媒(または不活性溶媒の混合物)を使用することも可能であろう。
【0015】
本発明の方法は、いかなる溶媒も使用せずに行うことが好ましい。
【0016】
出発物質(式(II)の化合物および式(III)の化合物)は、本方法を開始する前に混合することができ、あるいは本方法の進行中に出発物質の一方を他方に加えることができる。通常、式(II)の化合物を反応容器に入れ、その後、一定時間内に式(III)の化合物を添加する。
【0017】
全ての出発物質を添加し、混合した後、反応混合物をある時間反応させる。通常、本発明の方法の反応時間は2〜20時間、好ましくは2〜18時間、より好ましくは2〜15時間である。
【0018】
反応が終了したなら、残留アセテート無水物および酢酸(反応過程の生成物)を反応溶液から除去する。これは、通常、蒸留(常圧または減圧)により行う。
【0019】
本発明の方法により得られるDLAは、そのまま使用(香味および香料への用途)することができ、あるいは他の有用な化合物、特にリナニルアセテート(DLAの水素化により得られる)の製造に使用することができる。
【0020】
以下の実施例は本発明を説明するためのものである。特に断らない限り、示した部は全て重量に関するものであり、温度は℃で示す。
【0021】
[実施例]
[実施例1]
温度計および還流凝縮器を具備した350mlの四つ首丸底フラスコに、164.3gのDLL(1.06mol)と150ml(1.6mol)のAc
2Oを撹拌しながら加えた。
【0022】
黄色味を帯びた反応溶液を110℃(内部温度)に加熱した。14時間後。その後、Ac
2OおよびAcOH混合物を10mbar、90〜100℃で蒸留した。
収率70%でDLAが得られた。
【0023】
同一の反応を、250mlの量のAc
2O(反応時間5時間)および500mlの量のAc
2O(反応時間5時間)で繰り返した。
【0024】
収率90%(250ml Ac
2O)および94.2%(500ml Ac
2O)でDLAが得られた。