(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ストライカに係合することによりドアを閉鎖位置に保持可能なラッチ機構と、前記ストライカに対する前記ラッチ機構の係合を解除するドア開扉操作手段とを備えた自動車用ドアラッチ装置において、
前記ラッチ機構は、
第1軸に枢支され、ストライカに係合するラッチと、
第2軸により枢支され、前記ラッチに形成したフルラッチ係合部またはハーフラッチ係合部に係合する係合位置へ回動して前記ラッチを保持可能であると共に、リリース方向へ回動して保持状態の前記ラッチの回動を可能にするポールと、
第3軸により前記ラッチ及び前記ポールに対して軸方向へ重ならないように枢支され、前記ラッチが前記保持状態にあるとき、前記ポールが前記ドア開扉操作手段の操作に基づいて前記リリース方向へ回動した際、前記ポールを前記フルラッチ係合部または前記ハーフラッチ係合部に係合不能なリリース位置に保持可能なメモリーレバーと、
前記第2軸により枢支され、前記ラッチに接触することにより、前記ポールが前記ハーフラッチ係合部に係合するもののその底部に接触しない非接触位置で停止させるスイッチレバーとを備えることを特徴とする自動車用ドアラッチ装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のバックドアに用いられるドアラッチ装置においては、車体側に設けたストライカに係脱可能なラッチと、ラッチに形成したフルラッチ係合部またはハーフラッチ係合部に係合することで、ラッチを保持し、バックドアを半ドアまたは全閉位置に保持可能な係合部材(ポールまたはラチェット)と、電動アクチュエータにより構成されるドア開扉操作手段と、ドア開扉操作手段の操作に基づいて作動し、係合部材をフルラッチ係合部またはハーフラッチ係合部から外れるリリース方向に回動させるオープンレバー等を備えている。
【0003】
このようなドアラッチ装置においては、ドア開扉操作手段によりバックドアを開ける際、例えば、自動車が前下がり姿勢での駐車であったり、ウェザーストリップの反発力が低下していたり、バックドアの周縁部が凍結するなどして、バックドアの持ち上がり量が不十分であると、バックドアが開く以前に、係合部材がラッチのフルラッチ係合部やハーフラッチ係合部と係合し、バックドアが開かない、または半ドア状態となってしまい、一度の開扉操作でバックドアを開放できなくなることがある。
このようになると、操作スイッチや操作レバーを再度操作して、ラッチと係合部材との係合を解除しなければならなくなり、その操作が煩わしいという問題がある。
【0004】
例えば特許文献1及び2には、上記の問題の解決を図ったドアラッチ装置が開示されている。
特許文献1に記載のドアラッチ装置は、オープンレバー部材がドアを開扉する方向に操作されたとき、オープンレバー部材によりポール部材を、ラッチ部材との係合を解除する方向に回動させ、また、オープンレバー部材がドアの解放操作端まで操作されたとき、オープンレバー部材に保持レバー部材が係合することにより、オープンレバー部材を介して、ポール部材を、ラッチ部材のハーフラッチ係合部及びフルラッチ係合部と係合しない位置に保持するようにしたものである。
【0005】
また、特許文献2に記載のドアラッチ装置は、ラッチに、ラッチ軸を中心とする円弧突条のハーフラッチ防止板を一体的に設け、ポール(引用文献2においてはラチェット)には、その開扉操作でフルラッチ係合部より離脱するとき、ポールと共に動く突起付ハーフ防止レバーを設け、この突起付ハーフ防止レバーと円弧突条の関係を、開扉操作したとき、突起付ハーフ防止レバーの突起が円弧突条を乗り越えて戻らないようにし、ハーフラッチ係合段にポールが係合しないようにしたものである。
【0006】
上述構成により、引用文献1、2記載のドアラッチ装置においては、上述の環境下にあっても、ドアを開扉操作したときに、ラッチがフルラッチ位置またはハーフラッチ位置で保持されるのを防止することを可能としている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る自動車用ドアラッチ装置(以下、単にドアラッチ装置という)、すなわちドアの開扉時に、ラッチがハーフラッチ位置で保持されることを防止しうるようにしたドアラッチ装置を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、
図1及び
図2における左方を自動車の「前方」、同じく右方を「後方」とし、
図3における上方を自動車の「右方」、同じく下方を「左方」とする。また、
図4〜
図12における紙面の下方を自動車の「前方」、同じく上方を「後方」とし、
図4から
図9においては、左方を自動車の「右方」、同じく右方を「左方」とし、
図10から
図12においては、右方を自動車の「右方」、同じく左方を「左方」とする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のドアラッチ装置1は、例えば自動車の車体Bの後部に上下方向に開閉可能に枢支されているバックドア(以下、ドアと称する)Dに装着されるもので、ドアDにおける後方へ傾斜する下部パネルD1に取付けられ、車体Bに固着されているストライカSに係脱可能なラッチ機構2と、このラッチ機構2の上側に取り付けられ、ドアDの開扉操作に伴って作動し、ストライカSに対するラッチ機構2の係合を解除する上下方向を向く電動アクチュエータ(ドア開扉操作手段)3とを備えている。
【0018】
(ラッチ機構2)
図2または
図3に示すように、ラッチ機構2は、ストライカSに係合することによりドアDを閉鎖位置に保持可能であって、ストライカSに係脱可能なラッチ7を含む駆動部を保護するハウジングとして、上面が開口する金属製の浅箱状をなすベース部材4と、ベース部材4の上面を覆う水平面51及び電動アクチュエータ3の前面を覆う起立面52とから構成される側面視略L字型の合成樹脂製のカバー部材5とを備える。ベース部材4は、前後方向の略中央の左右に1対の外向きに拡がったフランジ部41、41を設け、フランジ部41、41によってボルト(図示略)をもってドアDの下部パネルD1に固定される(
図1参照)。ベース部材4の底板42及びカバー部材5の水平面51における左右方向の中央部には、それぞれ、ドアDの閉扉時に、ストライカSが前方から進入しうる前向きのストライカ進入溝43、53が形成されている。
【0019】
また、ラッチ機構2は、ベース部材4とカバー部材5とを組み合わせた際の内面同士により形成された空間部内に、駆動部として、後述する上下方向のラッチ軸(第1軸)11と共に回動しうるように収容され、ストライカSに係脱可能なラッチ7と、ラッチ7をストライカSを解放する方向(後述するストライカ解放方向)へ付勢するスプリング14と、ラッチ7に係脱可能としてラッチ7における所定の位置を保持・解除可能なポール8と、ポール8をラッチ7に係合する方向(後述するラッチ係合方向)へ付勢するスプリング15と、ラッチ7に当接することによりポール8の回動状態を検知するためのスイッチレバー9と、スイッチレバー9をラッチ7の外周面に当接する方向に付勢するスプリング16と、ポール8に係脱可能として、ポール8における所定の位置を保持・解除可能なメモリーレバー10と、メモリーレバー10をポール8に係合する方向(後述するポール係合方向)へ付勢するスプリング17と、ラッチ7との接触及び非接触に応じてON/OFFが切替わる第1スイッチSW1と、スイッチレバー9との接触及び非接触に応じてON/OFFが切替わる第2スイッチSW2とを備える。
【0020】
主に
図3等に示すように、ラッチ7は、ラッチ軸(第1軸)11が挿入される軸孔71と、互いに対向する前側アーム72と後側アーム73とを設け、後側アーム73の先端部には後述するポール8の爪部83が係合可能なフルラッチ係合部74が形成され、フルラッチ係合部74の
図3における反時計方向側に隣接するようにハーフラッチ係合部75が形成されている。また、ハーフラッチ係合部75の
図3における反時計方向側のラッチ7の外周面には、後述するポール8の爪部83が摺接可能な背部76と、ラッチ7の径方向へ突出し、ラッチ7がフルラッチ位置からオープン位置へ向けて回動する際、メモリーレバー10に接触することにより、メモリーレバー10をポール8から外れる方向へ回動させうる突部(解除部)77が形成されている。
【0021】
また、ラッチ7は、フルラッチ係合部74及びハーフラッチ係合部75を露出させて、樹脂モールドされているモールド部78を有する。
図10〜
図12(以下、
図10等と称する)に示すように、モールド部78は、その側面にラッチ軸11を中心とした略円弧状にラッチ7の厚み方向へ突出し、ラッチ7の回動位置に応じて、第1スイッチSW1の入力部I1に接触することにより第1スイッチSW1のON/OFFを切替え可能な第1突条部781と、第1突条部781が設けられた同一面上に、同じくラッチ軸11を中心とした略円弧状にラッチ7の厚み方向へ突出し、後述するスイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7の回動位置に応じて当接(摺動)しうる第2突条部(突条部)782とを設ける。
【0022】
図3等に示すように、ラッチ7の前側アーム72と後側アーム73との間には、ストライカ進入溝43、51に進入したストライカSが係合可能な平面視U字状の係合溝79が形成されている。
【0023】
ラッチ7は、ラッチ軸11によりベース部材4とカバー部材5との間に相対的に回動可能に枢支される。これによりラッチ7は、ストライカSを解放する(ストライカSに係合しない)オープン位置(オープン状態)と、ストライカSに完全に係合するフルラッチ位置(フルラッチ状態)と、オープン位置とフルラッチ位置との間(中途)にあって、フルラッチ位置から辛うじてストライカSに係合可能とするとともに、ラッチ7のオープン位置方向への回動を阻止するハーフラッチ位置(ハーフラッチ状態)との間を、
図4〜
図9(以下、
図4等と称する)における時計方向及び反時計方向に回動しうるようになっている。ラッチ7は、ラッチ軸11に巻装されたスプリング14により
図4等における時計方向、すなわちストライカSを解放する方向(以下、ストライカ解放方向と称する)へ付勢されている。
【0024】
このような構成により、ドアDを閉扉した際、ストライカSが、ラッチ7の係合溝79に進入することによって、ラッチ7をスプリング14の付勢力に抗して、
図4等における反時計方向(以下、ストライカ係合方向と称する)に回動させ、係合溝79と係合するようになっている。
【0025】
主に
図3等に示すように、ポール8は長寸状をなし、ラッチ軸11と同一方向を向くポール軸(第2軸)12が挿入される軸孔81と、先端部に尖形をなし、後述するメモリーレバー10のポール係合部104に係合可能な尖形部82と、尖形部82より中央側の側面から、ラッチ7の外周面に向けて突出し、ラッチ7のフルラッチ係合部74及びハーフラッチ係合部75に係合可能な爪部83と、爪部83とは反対側の側面に後述するスイッチレバー9側に折曲し、後述するオープンレバー22に係合可能な折曲片84と、基端部に後述するスプリング15の一端が係合可能なスプリング係合部85とを設ける。
【0026】
ポール8は、ポール軸12によりベース部材4とカバー部材5との間に相対的に回動可能に枢支される。これによりポール8は、
図4に示すように、その爪部83がフルラッチ係合部74またはハーフラッチ係合部75と係合可能なラッチ係合位置(係合位置:ラッチ係合状態、保持状態)と、
図5に示すように、フルラッチ係合部74またはハーフラッチ係合部75との係合を解除するラッチ解除位置(リリース位置:ラッチ解除状態)とに、回動しうるようになっている。
【0027】
ここでポール軸12は、
図2に示すように、軸線方向の略中央の一部が外周方向へ拡径する拡径フランジ部121が形成されており、その拡径フランジ部121を境として、一方にポール8が取り付けられ、他方にスイッチレバー9が取り付けられる。すなわち、ポール8及びスイッチレバー9は同軸上に重なり合うように配置されている。
【0028】
ポール軸12の拡径フランジ部121を境としたポール8側に巻装されたスプリング15により
図4等における反時計方向、すなわちラッチ解除位置からラッチ係合位置へ回動する方向(以下、ラッチ係合方向と称する)へ付勢されている。
【0029】
このような構成により、ドアDを閉扉した際にストライカSが、係合溝79と係合した場合、ポール8は、スプリング15の付勢力によって、ラッチ係合方向へ回動して、ポール8の爪部83がフルラッチ係合部74と係合することにより、ラッチ7を
図4に示すフルラッチ位置に保持する。
【0030】
主に
図4等、または
図10等に示すように、スイッチレバー9は、略扇型をなし、上述のポール軸(第2軸)12が挿入される軸孔91と、ラッチ7側の一側面(先端)に上述のモールド部78の第2突条部(突条部)782の狐面に当接してラッチ7が回動することにより相対的に摺動可能な摺動突部92と、摺動突部92とは反対側の他側面に、ポール8側へ折曲し、当該ポール8におけるラッチ係合方向とは反対側の側面に係合可能な折曲片93と、摺動突部92と折曲片93との間に設けられ、カム形状をなし、第2スイッチSW2の入力部I2と接触することにより第2スイッチSW2をONとするとともに、第2スイッチSW2の入力部I2と非接触となったことにより第2スイッチSW2をOFFとするように切替え可能なスイッチ接触部94と、折曲片93の空振り動作によりポール8の所定の回動量を許容しつつ、折曲片93との当接によって所定以上の回動量を制限するための平面視凹形の切欠部95とを設ける。
【0031】
スイッチレバー9は、軸孔91に上述のポール軸12を挿入することにより、ポール軸12に相対回転可能として取り付けられている。これによりスイッチレバー9は、ラッチ7がハーフラッチ位置よりもオープン位置側にある場合において、スイッチ接触部94が第2スイッチSW2の入力部I2に接触することにより第2スイッチSW2をON状態とする
図10に示すスイッチON位置(スイッチON状態)と、ラッチ7がハーフラッチ状態において(ラッチ7がオープン位置からハーフルラッチ位置に回動した際)、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7の第2突条部782に当接(接触)することにより、スイッチ接触部94が第2スイッチSW2の入力部I2に接触しつつ、
図10等に示す反時計方向(後述するスイッチON方向)、すなわち、ポール8のラッチ係合方向とは反対側のラッチ解除方向(リリース方向)へ若干回動した
図11に示す緩衝位置と、ラッチ7がフルラッチ状態において、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7の第2突条部782に当接せずに、
図10等に示す時計方向(後述するスイッチOFF方向)へ回動して、スイッチ接触部94が入力部I2に接触しないことにより第2スイッチSW2をOFF状態とする
図12に示すスイッチOFF位置(スイッチOFF状態)との間を回動しうるようになっている。
【0032】
なお、ラッチ7がオープン位置からハーフルラッチ位置に回動した際、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7の第2突条部782に当接(接触)したとき、スイッチレバー9がスイッチON方向へ若干回動することなく、スイッチON位置を維持するように、ラッチ7の第2突条部782の配置を変更してもよい。
【0033】
スイッチレバー9は、ポール軸12の拡径フランジ部121を境としたスイッチレバー9側に巻装されたスプリング16により
図10等の時計方向、すなわちスイッチON位置からスイッチOFF位置へ回動する方向(以下、スイッチOFF方向と称する)へ付勢されている。
【0034】
すなわち、ドアDが開扉操作、すなわちドアDに設けられた操作スイッチ(いずれも図示略)の開扉操作がされると、ポール8は、スプリング15の付勢力に抗してラッチ係合方向とは反対側のラッチ解除方向(リリース方向)へ回動して、ラッチ7のフルラッチ位置からオープン位置への回動を可能にし、スイッチレバー9は、折曲片93がポール8に係合することによって、ポール8の回動に従動して、スプリング16の付勢力に抗して、
図10における反時計方向(以下スイッチON方向という)へポール8に従動して回動することにより、スイッチON位置に回動してスイッチ接触部94が第2スイッチSW2の入力部I2に接触するようになっている。
【0035】
また、
図10に示すように、ドアDの開扉時においては、スイッチレバー9は、ポール8の爪部83がラッチ7の背部76を摺動することによって、上述のスイッチレバー9の折曲片93とポール8との係合関係によりスイッチON位置が維持されるが、
図11に示すように、ラッチ7がストライカ係合方向へ回動して、ポール8の爪部83が、ハーフラッチ係合部75において、スプリング15の付勢力によってラッチ係合方向へ回動することにより、スイッチレバー9は、折曲片93とポール8との係合が解除されるため、スプリング16の付勢力により、スイッチOFF方向に回動しようとするが、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7の第2突条部782に当接することによって、スイッチON方向へ若干回動して緩衝位置となって、スイッチレバー9は回動が制限され、スイッチON状態を維持するようになっている。
【0036】
さらに、ラッチ7がストライカ係合方向へ回動すると、スイッチレバー9は、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7の第2突条部782を超えて離脱することによって、回動の制限が解除されるため、スイッチOFF位置に回動し、スイッチ接触部94が第2スイッチSW2の入力部I2に接触しないようになっている。
【0037】
この構成により、車体B側に設けられ、第2スイッチSW2と電気的に接続されている制御部(図示省略)は、第2スイッチSW2によるON信号により、ラッチ7の状態がフルラッチ状態以外の状態を確実に判断することができ、ON信号を受信しないこと(検知しないこと)に基づいて、ラッチ7の状態がフルラッチ状態と確実に判断することができる。これにより、例えば、制御部は、フルラッチ状態以外(ラッチ7がフルラッチ位置からストライカ解放方向へ回動した場合(回動量はわずかでもよい))において、ON信号に基づいて、車内灯(図示省略)を点灯させることができる。
【0038】
また、
図11に示すように、スイッチレバー9は、ポール8の爪部83がハーフラッチ係合部75と係合する際、当該係合より先に、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7におけるモールド部78の第2突条部782に当接(摺動)することによって、スイッチOFF方向への回動が規制され、スイッチレバー9の切欠部95にポール8の折曲片
84が当接することによって、ポール8のラッチ係合方向への回動量を規制することにより、ポール8を、ポール8の爪部83が、ハーフラッチ係合部75に係合するものの、その底部75aに衝突(接触)することがない非接触位置に停止させる。これにより、爪部83によるハーフラッチ係合部75への係合音を発生させないようにし、さらに、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7におけるモールド部78の第2突条部782に当接する際の音は吸音されるため、不快音を極力抑えることができるようになっている。
【0039】
メモリーレバー10は、長尺状をなし、カバー部材5の水平面51に形成され、ラッチ軸11と同一方向を向くメモリーレバー軸(第3軸)13が挿入される軸孔101と、ラッチ7の外周面に対向しラッチ7の突部77が摺動可能な摺動面102と、摺動面102と連続して形成されラッチ7の外周面方向(ラッチ方向)へ突出する突出部103と、ポール8の尖形部82が係合可能なポール係合部104と、スプリング17の一端が係合するスプリング係合部105とを設ける。摺動面102と突出部103とが連接する部分は、緩やかに湾曲(傾斜)するように形成されている。
【0040】
メモリーレバー10は、メモリーレバー軸13により、ラッチ7及びポール8に対して軸方向へ重ならないように、ポール係合部104がポール8に係合可能なポール係合位置(ポール係合状態)とポール係合部104がポール8に係合不能なポール解除位置(ポール解除状態)との間を回動可能に枢支される。
メモリーレバー10は、メモリーレバー軸13に巻装されたスプリング17により、
図4等における時計方向、すなわちポール解除位置からポール係合位置へ回動する方向(以下、ポール係合方向と称する)へ付勢されている。
【0041】
ここで、上述のポール8を付勢するスプリング15は、付勢力が非常に強く調整(設定)されている。これにより、ラッチ7がオープン位置からストライカ係合方向へ勢いよく(高速で)回動することにより、ラッチ7の後側アーム73の先端部によって、ポール8(爪部83)が跳ね上げられてラッチ解除方向へ回動した場合であっても、スプリング15の付勢力により、ポール8は、メモリーレバー10が係合可能となる位置まで回動することがないため、ポール8は、メモリーレバー10に係合することなく、爪部83がフルラッチ係合部74に係合するようにラッチ係合位置に回動するようになっている。すなわち、このような状況下においても、ドアDを確実に閉扉することができる。
【0042】
また、ラッチ機構2は、スイッチレバー9を除く、ラッチ7、ポール8及びメモリーレバー10は、同一方向を向く各軸11、12、13によって、互いが如何なる作動状態であっても重なり合うことがないようにベース部材4に回動可能に支持(配置)されている。これにより、ラッチ機構2の薄型化(小型化)を図ることができる。
【0043】
(電動アクチュエータ3)
図2または
図3に示すように、電動アクチュエータ(ドア開扉操作手段)3は、前面及び下面が開口する合成樹脂製のケース部材6と、ケース部材6の前面を覆う上述のカバー部材5(ラッチ機構2と共有して用いられる)と設け、ケース部材6とカバー部材5とを組み合わせた際の内面同士により形成された空間部内に、駆動源をなすモータMと、モータMの回転を減速する減速ギヤであって、モータMの回転軸に相対回転不能に固定されるウォーム18と、ウォーム18に噛合し、カバー部材5及びケース部材6に支持されるホイール軸20により回動可能に支持されるウォームホイール19と、ウォームホイール19のモータMの駆動力による回動方向と逆の方向へ付勢して、モータMの駆動後に回動したウォームホイール19を初期位置に戻すためのスプリング21と、カバー部材5及びケース部材6に支持されるオープンレバー軸23に回動可能に支持され、一端部がウォームホイール19と係合し、他端部が上述のポール8の折曲片84と係合することにより、モータMの駆動力によりドアDを開扉するリリース方向に回動して、ポール8をラッチ係合位置からラッチ解除位置へ回動させることが可能なオープンレバー22と、オープンレバー22をオープンレバー22の一端部がウォームホイール19に常に係合するように付勢するスプリング24と、上述の第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2からのON/OFF信号を車体B側に設けられた制御部(図示省略)へ送信するとともに、電力をモータMに供給するためのカプラ25とを備える。
【0044】
ドアDの開扉操作により、電動アクチュエータ3が作動し、オープンレバー22が、その一端部をポール8の折曲片84に係合させ、リリース方向に回動することにより、ポール8が
図4等における時計方向、すなわち、ラッチ解除方向へ回動させられる。これにより、ポール8の爪部83がラッチ7のフルラッチ係合部74より離脱し、ドアDを開扉することができる。
【0045】
(ドアラッチ装置1の作用時の各部材の一連の動作について)
次に、
図4から
図12を参照して、本実施形態に係るドアラッチ装置1の作用、特にドアDの開閉時における各部材の一連の動きについて説明する。
【0046】
図4は、ドアDの閉扉状態、すなわち、ラッチ機構2において、ポール8がラッチ係合位置でポール8の爪部83がラッチ7のフルラッチ係合部74とラッチ係合状態にあって、ラッチ7がフルラッチ位置でストライカSと完全な係合状態となっている。この状態では、メモリーレバー10が、スプリング17によってポール係合方向へ付勢されて、ポール8の尖形部82と当接しているが、何ら保持する状態ではないため、ポール8は、ドアDの開扉操作等に基づいて、ラッチ解除位置へ回動可能となっている。
【0047】
図4のドアDの閉扉状態において、ドアDの開扉操作が行われると、
図5に示すように、ポール8が、スプリング15に抗してラッチ解除方向(リリース方向)へ回動し、ポール8の爪部83のラッチ7のフルラッチ係合部74との係合が解除されたラッチ解除状態となる。ラッチ解除状態では、ラッチ7のストライカ解放方向への回動を可能とする。
【0048】
図6に示すように、ラッチ7がフルラッチ位置において、ドアDの開扉操作が行われて、ポール8がラッチ解除位置へ回動すると、メモリーレバー10は、スプリング17の付勢力によりポール係合方向へ回動し、メモリーレバー10のポール係合部104がポール8の尖形部82に係合するポール係合状態となる。これにより、ポール8は、スプリング15の付勢力に抗してラッチ解除位置(リリース位置)に保持される。
【0049】
そして、
図7に示すように、
図6の状態からラッチ7がストライカ解放方向へ回動すると、ラッチ7の突部77がメモリーレバー10の摺動面102を摺動する。ラッチ7の突部77が摺動面102を摺動する際、メモリーレバー10のスプリング17の付勢力に抗して徐々にメモリーレバー10をポール解除方向へ押し上げる。
【0050】
図8に示すように、
図7の状態からさらに、ラッチ7がストライカ解放方向へ回動して、ポール8の爪部83がハーフラッチ係合部75を超えた位置となったタイミング、すなわち、ハーフラッチ位置とオープン位置との間の範囲にあるとき、ラッチ7の突部77がメモリーレバー10の突出部103に接触してポール解除方向へ完全に押し上げることにより、メモリーレバー10は、ポール8から外れる方向へ回動してポール保持状態を解除して、ポール解除状態とする。
【0051】
図9に示すように、
図8の状態からさらに、ラッチ7がストライカ解放方向へ回動すると、ポール8がラッチ解除位置でポール8の爪部83がラッチ7の背部76に相対的に摺動し、ラッチ7がオープン位置となってストライカSを解放するオープン状態となる。
【0052】
上述の一連の動作により、ドアDの開扉時において、ポール8の爪部83がラッチ7のフルラッチ係合部74またはハーフラッチ係合部75に係合することなく、一回の操作で確実にドアDを開扉することができる。
また、ポール8が、ハーフラッチ係合部75を超えたタイミングで、スプリング15によってラッチ係合方向へ付勢されることにより、ポール8の爪部83がラッチ7の背部76に当接するようになっているため、その状態でドアDを閉扉した場合、ポール8の爪部83によりハーフラッチ係合部75またはフルラッチ係合部74に確実に係合するようになっている。
【0053】
次に、
図10に示すように、ラッチ7がストライカSを開放するオープン状態では、スイッチレバー9は、スプリング16の付勢力によりスイッチOFF方向へ回動しようとするが、スイッチレバー9の折曲片93がポール8に当接することにより、回動が制限されるため、スイッチON位置を維持して、スイッチレバー9のスイッチ接触部94が第2スイッチSW2に接触するようになっている。
【0054】
また、
図11に示すように、
図10からラッチ7がストライカ係合方向へ回動して、ポール8がハーフラッチ係合部75に係合するハーフラッチ状態では、スイッチレバー9は、スプリング16の付勢力によりスイッチOFF方向へ回動しようとするが、スイッチレバー9の摺動突部92がラッチ7の第2突条部782に当接することにより、スイッチON方向へ若干回動して、緩衝位置となって回動が制限されるため、スイッチON状態を維持して、スイッチレバー9のスイッチ接触部94が第2スイッチSW2に接触を維持するようになっている。
【0055】
また、当該スイッチレバー9の切欠部95にポール8の折曲片
84が当接することによって、ポール8の回動量が規制されるため、ポール8の爪部83が、ハーフラッチ係合部75に係合するもののその底部75aに衝突(接触)することを防止することができ、ポール8がラッチ7のハーフラッチ係合部75に係合する際に生じる不快音を低減させることができる。
【0056】
一方、
図12に示すように、
図11からラッチ7がストライカ係合方向へ回動して、ポール8がフルラッチ位置に係合するフルラッチ状態では、上述のようなスイッチレバー9の回動を規制する構成部材(第2突条部782)は回動範囲に存在しないため、スイッチレバー9は、スプリング16の付勢力によりスイッチOFF方向へ回動し、スイッチOFF位置となって、スイッチレバー9のスイッチ接触部94が第2スイッチSW2に接触しないようになっている。
【0057】
これにより、車体B側の制御部は、第2スイッチSW2のON信号またはOFF信号によって、ラッチ係合位置のポール8が、フルラッチ係合部74に係合しているのかハーフラッチ係合部75に係合しているかを、判断することができる。
【0058】
なお、
図10及び
図11に示すように、ラッチ7のオープン位置(オープン状態)及びハーフラッチ位置(ハーフラッチ状態)において、ラッチ7の第1突条部781が、第1スイッチSW1に接触して、第1スイッチSW1がスイッチON状態となっている。
また、
図12に示すように、ラッチ7のフルラッチ位置(フルラッチ状態)において、ラッチ7の第1突条部781が、第1スイッチSW1に接触しないようになって、第1スイッチSW1がスイッチOFF状態となっている。
これにより、車体B側の制御部は、第1スイッチSW1のON信号またはOFF信号によって、ラッチ7のオープン位置(オープン状態)及びハーフラッチ位置(ハーフラッチ状態)またはフルラッチ位置(フルラッチ状態)検知することができる。
【0059】
また、車内灯の点灯・消灯(ON/OFF)契機となるスイッチとして、ラッチ7の回動位置を検知する第1スイッチSW1を採用するか、またはスイッチレバー9の回動位置を検知する第2スイッチSW2を採用するかは、適宜選択可能である。
【0060】
本発明は、上記バックドアの外に、自動車のサイドドアやスライドドア等にも適用することが可能で
ある。
【0061】
また、本実施形態では、モールド部78に、第1突条部781及び第2突条部782を設けているが、これに限定されずラッチ7に直接形成するようにしてもよい。