(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性合成樹脂フラットヤーン3と太糸4が4〜15本/インチの織密度で製織され、太糸4は、0.2〜2.5本/インチの織密度で経糸に用いて製織されている請求項1乃至3のいずれかに記載の防水施工用シート状物。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の屋上や屋上駐車場の床面などに施される防水施工法としては、(1)建築構造物の躯体面をプライマー処理してから補強クロスを配し、ウレタン系などの防水材層を形成した後、その上を仕上げ塗膜で被覆する密着工法や、(2)下地層の全面に不織布などの通気シートを接着し、その上に防水材層を被覆形成する通気緩衝工法、などが知られている。
しかし前者の密着工法は、防水材層を下地表面の全域に接合一体化させたものであるため、下地に生じるクラックや目地の動きに対する追従性が不充分である。しかも、下地層内に含まれる水分が温度の上昇により水蒸気となって下地層と防水材層の界面部へ拡散してきたとき、水蒸気の逃げ場が無いため、該水蒸気圧により防水材層が下地から部分的に剥離して膨れ上がる現象(一般に「フクレ現象」と呼ばれる)が発生するという欠点がある。
【0003】
これに対し後者の通気緩衝工法によれば、通気性緩衝材が脱気性能を発揮し、下地層から出てくる水蒸気を接合界面の通気性緩衝材層から脱気塔に導かれて外部へ放出させるため、上記の様なフクレ現象は防止される。しかし、密着工法に比べると施工が煩雑で時間を要するなど、施工上の問題が指摘される。
【0004】
こうした問題を改善するため特許文献1には、建築構造体の躯体全面にシーラーを塗布し、該シーラー塗布面に粘着シート片を介在させて粘着シートを隔離的に粘着させた後、防水用塗料を塗布する工法が開示されている。
【0005】
この工法によれば、粘着シート部分が脱気性能を発揮してフクレ現象を抑制すると共に、下地に生じるクラックや目地の動きに対する追従性も高められる。ところが建築作業現場では、該粘着シートの貼着作業に膨大な手数と時間を要するため、施工性が著しく低下する。こうした問題に注目し、フクレ現象を防止し得ると共に施工性にも優れた防水施工技術が開発されて、特許文献2に開示されている。
【0006】
しかし、施工時に、低粘度のプライマーが長繊維不織布層内へ侵入し易く繊維間空隙がプライマーで充満されて通気性不足となり、下地層から拡散してくる水蒸気が外部へ放散され難くなることがある、といった問題を含んでおり、なお改善の余地が残されている。
【0007】
更に他の技術として、特許文献3に関連の開発技術が提示されている。この技術は、通気性を有するシート状物の少なくとも片面に、樹脂を実質的に連通した状態で付与することによって凹凸が形成された塗布型防水工事用シート状物を開示するものである。該シート状物の凹凸を有する面を下地に接した状態で敷設し、その上からプライマーを塗布してシート状物と下地を接着した後、この上に更に塗膜防水材を塗布し、上記凹凸を外部へ連通する空隙として残すことにより、下地層から拡散してくる水蒸気を外部へ放散可能にしている。
【0008】
このシート状物では、特許文献3の
図1に示されている如く、通気性シート状物Iの部分で下地層とその上に形成される防水材層が接合一体化し、格子状もしくはハニカム状の線状に現れる連通した樹脂IIの部分では、下地層と防水材層が接合しない様にすることで該樹脂IIの部分に隙間を形成して通気性を持たせ、下地層から放出される水蒸気などがこの隙間を通して外部へ放散される様にしたもので、それなりのフクレ防止効果を得ることができる。
【0009】
ところがこのシート状物では、裏面側に凹凸状を形成しつつ連通した樹脂IIを塗装形成する作業が煩雑で手数を要し、該塗装作業を含めた施工作業性に問題がある他、このシート状物を下地層表面に施設してからプライマーを塗布したとき、通常のプライマーは低粘度であるため、連通した樹脂II部分の裏面側までプライマーが侵入して隙間に充満し、結果的にガス抜き孔としての機能を失うことがあり、意図した様なフクレ防止効果が得られないこともある。従ってこのシート状物、およびこれを用いた防水施工法にも改善の余地が残されている。
【0010】
本発明者の一人は更に他の技術として、特許文献4に開示のシート状物を提示している。この技術は、非透湿性金属薄膜または非透湿性金属蒸着フィルムの片面に不織布をラミネート法などによって接合し、防水材層との接合界面にアンカー効果を持たせることにより接着性を高める方法を開示している。このシート状物は、上記非透湿性金属薄膜または非透湿性金属蒸着フィルムのコストや軽量性などを考慮して一般に薄いものが使用されているため、現場で取り扱う際に風で敷設面から捲れ上ったり折り重なる等、取扱い性にやや難があるがこのシートと織物を粘着剤を介して貼り合わせ、シート状物全体としての剛性を高めている。
【0011】
しかし、シート状物の粘着性をさらに向上させる要望は強く、次に改良した技術としてメッシュ状補強材にフラットヤーンを用いた織物を形成し、非透湿性金属薄膜または非透湿性金属蒸着フィルムを重ね合わせ、片面を易接着加工したシート状物を開発した。このものは、下地層と接合する際、下地層表面のランダムな凹凸に沿ってきめ細かく接合され、その接合力は抜群の効果をもたらしたが、施工の際、シート状物は反物状に巻き取られた状態で作業を行なうので、反物からシートを引出す際に反物が粘着性によって密着、所謂、ブロッキングを起こし、開反がスムースに行なわれず、シートの変形や金属膜の剥離が発生するといった難題があった。このような状況下、防水施工用シート状物が十分な粘着性を保有すると同時に、開反時にブロッキングを起こさず、金属膜の剥離がなく、シート反物の開反が容易であるシート状物が強く望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記の様な従来技術の問題点の解消を期してなされたものであり、その目的は、建築構造物の防水施工部に適用するシート状物において、薄くて柔らかくて、取り扱い性が良好で、かつ、施工時にシートの粘着力が強力で、仮止め接着効果が十分であり、且つ、施工時のシート反物が開反時にブロッキング、金属膜の剥離を起こさず、開反作業が容易である防水施工用シート状物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題に対して、鋭意研究を重ねた結果本発明に到達した。上記課題を解決することのできた手段、すなわち本発明の構成は、防水施工用のシート状物であって、多数の孔5が形成された非透湿性金属薄膜2または非透湿性金属蒸着フィルムの片面側に、易接着加工が施されたメッシュ状補強織物6が接合されており、該メッシュ状補強織物6が凹部と凸部からなり、凹部は熱可塑性合成樹脂フラットヤーン3、凸部は太糸4を用いて製織されていることを特徴とする防水施工用シート状物である。
【0015】
メッシュ状補強織物6は、平織またはバスケット織であることが望ましい。
【0016】
メッシュ状補強織物6の凸部の厚みは、凹部の厚みの1.2〜10倍であることが望ましい。
【0017】
メッシュ状補強織物は、熱可塑性合成樹脂フラットヤーン3と太糸4が4〜15本/インチの織密度で製織され、太糸4は、0.2〜2.5本/インチの織密度で経糸及び/または緯糸に用いて製織されていることが望ましい。
【0018】
熱可塑性合成樹脂がポリオレフィンであることが望ましい。
【0019】
防水施工用シート状物の開反時荷重は、0.5N/cm以下、特に0.3N/cm以下であることが望ましい。
【0020】
従来、メッシュ状補強織物6は経糸も緯糸も同じ太さのもので織込まれていたが、本発明においては、織物の凸部形成部分が、凹部形成部分を構成するフラットヤーンより直径が太い糸を織り込むことによって形成されているので、反物状にしたシート状物は、金属膜のはがれや反物の開反時のブロッキングが起こらず、開反時引き出しが容易でありながら、施工時貼り付けをした後の粘着性が大きいという、従来に見ない優れた効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、薄くて柔らかくて、取り扱い性が良好で、かつ、施工時にシートの粘着力が強力で、仮止め接着力効果が十分であり、且つ、シート反物を開反する際にブロッキング並びに金属膜の剥離を起こさず、作業が容易である防水施工用シート状物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る防水施工用シート状物の構成を詳細に説明する。本発明に係る防水施工用シート状物1は、上記の様に、多数の孔5(開口部)が形成された非透湿性金属薄膜2とメッシュ状補強織物6が、粘着層を介して積層されたシート状物である。シート状物はロールに巻かれた状態であってシートの敷設時にロールから巻き出して、非透湿性金属薄膜層面を防水施工すべき下地表面に展延する。その際、開口部のメッシュ状補強織物には粘着剤が付与されているので、この粘着効果によって下地面に接着される。その上からウレタン系樹脂などからなる防水材を塗工することによって防水施工が行われる。この防水施工状態で本発明の孔開きシート状物は、孔の部分では、コンクリート等からなる下地層とその上に塗工される防水材層が柱状に接合一体化する。これに対し非孔開き部分では、下地層と防水材層は非透湿性金属薄膜の存在によって直接接合が阻止されているため、それらは接合一体化することなく、この部分は言わば浮かし貼り状態で接触しただけの状態となる。
【0024】
そして本発明のシート状物には、前述した如く多数の孔5が形成されているので、孔が形成された部分では下地層と防水材層が接合一体化し、孔のない部分では、下地層表面と非透湿性金属薄膜2または非透湿性金属蒸着フィルムが非接合状態で残された部分が浮かし貼り状態となり、該浮かし貼り状態の部分が両界面の周縁部方向へ連通することで、下地層内から拡散してくる水蒸気などのガス成分が接合面から水平に移動して脱気筒から大気中へ放出される。従って、該接合界面に水蒸気などのガス成分が溜まって、防水材層がフクレ現象を起こすといった恐れはなくなる。
【0025】
上記孔5のサイズや個数は特に制限されないが、個々の孔が大きく且つ開口面積率が広くなり過ぎると、一体接合部の面積比率の増大によって下地層と防水材層の接合強度は高まる反面、ガス抜き用の浮かし貼り領域面積が狭くなってフクレ防止効果が低下し、逆に孔が小さく且つ開口面積率が狭くなり過ぎると、ガス抜き効果は高まる反面、一体接合部の面積比率が減少し、下地層と防水材層との接合強度が不足気味となる。従って、下地層−防水材層の間で十分な接合強度を確保しつつ、且つ境界界面に拡散してくる水蒸気などのガス成分を脱気塔から外部へ効率よく拡散させてフクレ現象を確実に防止するには、シート状物に形成する前記孔の開口面積率を5%以上、好ましくは10%以上で70%以下、より好ましくは20%以上で60%以下にすることが望ましい。
【0026】
また各孔5のサイズが小さ過ぎると、満足のいく一体接合力が得られ難く、逆に大き過ぎるとガス抜き用の面積が狭くなってフクレ防止効果が不十分になる恐れがあるので、各孔のサイズは真円換算の直径で3mm以上、100mm程度以下、特に好ましくは5mm以上、20mm程度以下にすることが望ましい。
【0027】
孔5の形状は特に制限されず、真円状、楕円状、卵形状、方形状、五角形や六角形などの多角形状、或いは任意の異形状とすることができ、場合によっては異なる形状の孔を任意の組み合せで複数形成しても構わない。しかし、シート状物としての取扱い時や施工時にかかる張力などによる引裂き破損等を受け難いものとするには、ノッチ効果の少ない円形状や楕円形状とするのが好ましい。
【0028】
ところで本発明の防水施工用シート状物1は、防水材層と接触する部分が織物状態であるため防水材層の塗膜が織物内に良く食い込むため接合強度が高くなる。
【0029】
本発明で使用する上記非透湿性金属薄膜2にも格別の制限はなく、例えばアルミニウムや銅、ステンレスなどの金属薄膜が使用できる。また、非透湿性金属蒸着フィルムにも格別の制限はなく、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなど、各種の単独もしくは共重合樹脂あるいはブレンド樹脂などのフィルムに、アルミニウム、銅などを蒸着した金属蒸着フィルムなどが使用できる。防水材層構成成分の下地層方向への侵入を阻止して浮かし貼り状態を保障し得るものであれば、任意の金属薄膜または金属蒸着フィルムを使用できる。該金属薄膜または金属蒸着フィルムの厚さも特に制限されないが、取扱い性やコストなども総合的に考慮して好ましいのは3〜200μm程度、より好ましくは8〜38μm程度のものである。
【0030】
なお本発明の防水施工用シート状物1には、防水材層10との接合力や水蒸気などの脱気性能を一段と向上させるため、当該シート状物を構成する非透湿性金属蒸着フィルムを使用する場合、その構成材中に珪砂などの骨材を含有させることも有効である。該フィルム素材中に骨材を配合すると、該骨材によってフィルムに微細な凹凸が与えられ、下地層と該フィルム層との間の空隙が広くなって脱気性能が高められるばかりでなく、該凹凸は防水材層との密着性向上にも寄与するからである。本発明に係る上記防水施工用シート状物1には、上記フィルム素材面に粘着剤を介してメッシュ状補強織物6が積層されている。即ちこのメッシュ状補強織物6は、シート状物全体としての強度、特に引張り強度や引裂き強度を高め、防水施工時における引張り張力や引掛り等による破損を防止すると共に、該シート状物の上面側に塗工される防水材層10との接合一体性も一段と高める作用を発揮する。特に本発明においては、かかるメッシュ状補強織物6の構造が今までの繊維からなるシート構造に対して、メッシュ状補強織物6が凹部形成部分と凸部形成部分から構成されている点に特徴がある。凹部は熱可塑性合成樹脂からなるフラットヤーン3を製織して構成される。
【0031】
本発明に言う凹部とは、フラットヤーンのみで製織されている部分で織物の厚みが薄い部分を言う。他方、本発明に言う織物の凸部とは、前記凹部を形成するフラットヤーンより、見かけの厚みが大きい太糸で構成された部分をいう。
【0032】
フラットヤーンを構成する熱可塑性合成樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル樹脂、或いはそれらの共重合樹脂やブレンド物を含む各種の化成品が挙げられる。
【0033】
フラットヤーン3はポリオレフィンからなるものが望ましい。
【0034】
本発明に言うフラットヤーンとは、前述の熱可塑性合成樹脂をシリンダー内で加熱溶融させ、Tダイ法やインフレーション法によってダイスから押し出したフィルムを、冷却後細幅にスリットした扁平な糸条である。必要であれば延伸加工や熱固定を実施すれば良い。
【0035】
フラットヤーンは3、太糸4と組み合わせて、公知の織機によって平織りや綾織の組織で織成する。織物組織は限定するものではないが、特に平織りやバスケット織にしたメッシュ状補強織物が好ましい。
【0036】
太糸4は、経糸および/または緯糸に用いることができる。
【0037】
メッシュ状補強織物6の凸部はフラットヤーン3の厚みより太い糸を製織して構成される。メッシュ状補強織物6の凸部は、凹部を構成するフラットヤーン3の厚みの1.2倍以上、好ましくは1.3倍以上になるような太糸4を織り込むことによって形成される。
【0038】
本発明に言う太糸とは、凹部を形成するフラットヤーンより、見かけの厚みが大きい糸であれば、特に限定するものではなく、例えば、合成繊維マルチフィラメント、合成繊維モノフィラメント、合成繊維短繊維を用いた紡績糸、天然繊維からなる紡績糸、複合紡績糸、加工糸等いずれであっても良い。織物の凹部形成部分より、厚みが大きく形成されるものであればいずれであってもよく、もちろん、厚みの大きいフラットヤーンであっても良い。
【0039】
太糸4の直径は、100〜1000μmの範囲であることが望ましい。太糸4の厚みが、フラットヤーン3の厚みの1.2〜10倍であることが望ましい。
【0040】
フラットヤーン3は、4〜15本/インチの織密度で製織されており、太糸4は、0.2〜2.5本/インチの織密度で経及び/または緯糸に製織されていることが望ましい。
【0041】
従来、シート状物は反物のように巻き取られており、施工作業時に反物からシートを引き出して作業を行なうに際し、金属膜が剥がれたり、反物が粘着剤の粘着性によって密着、所謂、ブロッキングを起こし、引き出しにくいという問題があったが、前記のメッシュ状補強織物6を凹部形成部分と凸部形成部分から構成することで、シート同士の接触面積が減少できるためブロッキングや剥がれの発生がなく、施工作業時に反物からシートの引出し作業がきわめて容易になる。
【0042】
防水施工用シート状物の開反時荷重が0.5N/cm以下、特に0.3N/cm以下であることが望ましい。
【0043】
(開反時荷重の測定)
図3に示すように、自由に回転することができるフリーローラー13に、100cm幅で直径15cmに巻き込んだ反物の巻芯を通し、巻き出した反物の中央にデジタルフォースゲージ12を付けて、引張速度1cm/secとして、30cmの開反時における最大荷重(N)を求める。
【0044】
本発明のメッシュ状補強織物6のメッシュ密度は、20〜200個、特に40〜120個/平方インチの範囲であることが好ましい。
【0045】
メッシュ状補強織物6に粘着処理を施しておけば、非透湿性金属薄膜2または非透湿性金属蒸着フィルムに設けた孔5から下地面側に露出した該メッシュ状補強織物6の粘着性によって該シート状物全体が下地表面に粘着して固定され、仮接着効果が働き、シートの風によるめくれ等が軽減されて施工作業性は一段と向上する。また、本発明に係る防水施工用シート状物の断面方向に形成される多数の孔5は、コンクリート下地層8と防水材層10を直接的に接合一体化するための連通部を構成するもので、該孔5の開口面積率が大きいほどコンクリート下地層8と防水材層10との接合力は高まる。他方、該シート状物の上記孔5以外の部分では、非透湿性金属薄膜2または非透湿性金属蒸着フィルムによってコンクリート下地層8と防水材層10とが非接触状態に保たれ、言わば非接触の浮かし貼り状態となる。従ってこの部分は、施工後の状態でも通気性の空隙として残り、下地層から出てくる水蒸気などのガスを接合界面から脱気筒を介して外部へ放出させるための通気部を構成する。
【0046】
なお、該メッシュ状補強織物6に粘着処理を施しておき、該メッシュ状補強織物6の粘着力を利用してシート状物を下地層表面に粘着させて、所謂、仮止め効果を強固にすることが重要である。
【0047】
フラットヤーン3の厚みは、10〜100μmが好ましく、より好ましくは、10〜50μmとするのが良い。
【0048】
フラットヤーン3の幅は、0.5〜3.0mmが好ましく、より好ましくは、0.7〜2.0mmとするのが良い。
【0049】
フラットヤーン3の織密度、打ち込み本数は、経糸、緯糸ともに4〜15本/インチが好ましく、より好ましくは6〜10本/インチとするのが良い。
【0050】
太糸4の厚みは、見かけ状の直径で100〜1000μmが好ましく、より好ましくは、100〜500μmとするのが良い。
【0051】
太糸4の打ち込み本数は、経糸及び/または緯糸いずれも0.1〜5.0本/インチが好ましく、より好ましくは0.2〜2.5本/インチとするのが良い。
【0052】
本発明の防水施工用シート状物1は上記の様に構成されるが、実際の現場で防水施工に適用する際には、現実的な要求特性として、JASS−8(1986年版)に準じた通気抵抗試験において、10mmAq圧力時の通気量が170cm
3/分以上であることが求められる。ちなみに、一般的なコンクリート構造物の防水施工においてフクレ現象を防止する上では、標準的な該通気量として「170cm
3/分以上」が求められているからである。従って、本発明の特徴を一層効果的に発揮させる上で好ましい通気量は、170cm
3/分以上であり、より好ましくは300cm
3/分以上、特に600cm
3/分以上が良い。
図1は、本発明に係る好ましい防水施工用シート状物1を例示する要部断面斜視図であり、非透湿性金属薄膜2に複数の孔5が形成され、更にその上に接着剤処理されたメッシュ状補強織物6が積層された構造のものを示している。メッシュ状補強織物6は凸部を形成する合成繊維太糸4と凹部を形成する熱可塑性合成樹脂フラットヤーン3をバスケット織にして形成されたものを示す。
【0053】
また本発明では、前述した如くメッシュ状補強織物6を積層した強化構造になっているので、シート状物自体の強度や剛性が向上して取扱い性などがいっそう向上するほか、防水材層との接合強度も高められるので好ましい。また、該メッシュ状補強織物6に粘着処理が施こされているので、これを下地層2の表面に敷設したときに該シート状物1をその粘着力で仮止めすることができ、施工作業性を高める上で好ましい。
【0054】
本発明の防水施工法を実施するに当っては、例えば
図2(部分断面斜視図)に示す如く、コンクリートやモルタル等からなるコンクリート下地層8の表面に接合力向上のためのプライマー9を塗布し乾燥した後、上記防水施工用シート状物1を敷き延べる。次いで、その上から所定量の防水材を塗装することにより防水材層10を形成し、更にその上に仕上げ塗膜11を形成するか、或いはそれに準ずる方法で施工していけばよい。
【0055】
そして防水材層10が硬化した状態において、防水施工用シート状物1の孔5部分では、コンクリート下地層8と防水材層10が強固に接合一体化する。そして孔5のない部分(非孔開き部)では、メッシュ状補強織物6の介在とも相俟って、防水材層10と強固に接合一体化する一方、非透湿性金属薄膜2の下面側は、硬化したプライマー9とは非接着状態の浮かし貼り状態に保たれ、孔の無い場所は連通しているため、コンクリート下地層8から該浮かし貼り部に水蒸気などのガス成分が拡散してきたときは、それらのガス成分は非接着状態の該隙間から接合界面の周縁方向へ拡散され、脱気塔から大気へ放出されることになり、該境界部にガス成分等が溜まって防水材層10がフクレ現象を起こすといった問題は回避される。
【0056】
本発明の上記工法が適用される下地としては、鉄筋コンクリートやモルタルなど、種類の如何を問わず、また、本発明の前記シート状物を介して表層側に形成される防水材層10の構成素材にも格別の制限はなく、最も一般的なウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などを主体とする樹脂やこれらにセメントや無機顔料などを配合した所謂無機モルタル等が全て使用できる。また、本発明工法が適用される場所も広範に渡り、ビルの屋上や壁面、屋根、ベランダ、バルコニー、床、開放廊下、更には屋上駐車場など、雨水や散水などに曝される様々な部位に適用できる。
【0057】
更に本発明では、非透湿性金属薄膜2または非透湿金属蒸着フィルムを使用することにより、上記工法で形成された防水材層10や仕上げ塗膜11の膜厚を電磁式あるいは渦電流式の膜厚計によって計測できる。すなわち、上記防水材層10及び仕上げ塗膜11越しに上記非透湿性金属薄膜2または金属蒸着フィルムが磁力や電界等の強さに相応した電磁気特性を発現するので、この現象を利用して電磁式あるいは渦電流式の膜厚計で膜厚を任意の位置で直接計測することが可能となる。
【0058】
この際、金属としてステンレス等の磁性金属を使用している場合は、上記膜厚計として電磁誘導を利用した電磁式膜厚計を採用すればよい。またアルミニウムや銅等の非磁性金属を使用している場合は、上記電磁式のものが採用できないので、高周波電界によって誘起される渦電流式膜厚計を採用すればよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
【0060】
(実施例1)
厚さ7μmのアルミニウム箔からなる非透湿性金属薄膜とポリエステル長繊維不織布をポリエチレンラミネート法によって複合(積層)したシートに、積層断面方向に孔部の開口面積率がシート表面積の36%となる様にたて10mm×よこ10mmの四隅を丸くした正方形の孔をパンチングして開孔した。開孔したシートのポリエステル長繊維不織布側に、幅1.1mm、厚さ30μmの合成樹脂フラットヤーンをインチあたりタテ8本、ヨコ7本の密度で、合成繊維太糸(440デシテックスのポリエチレン製モノフィラメント)をインチあたりタテ0.8本、ヨコ0.6本の密度でバスケット織にしたメッシュ状補強材シートに粘着材を塗布して重ね合わせ、防水施工用シート状物を得た。該シート状物の総目付け量は53g/m
2であった。
【0061】
得られたシート状物を幅100cm、直径15cmの反物に巻き取り、開反時に掛かる力をデジタルフォースゲージで測定した。測定結果を表1に示す。他方、コンクリート下地表面に、プライマーを0.3kg/m
2塗布してから乾燥し、その上に、上記で得た防水施工用シート状物を開反し、金属薄膜側が上記プライマー皮膜に接する様に敷設した。シート状物は、アルミのはがれやブロッキングの発生はなかった。
【0062】
敷設した防水施工用シート状物は、コンクリート下地表面に安定して密着し、シートのめくれや剥がれ現象はなかった。次いで、ウレタン防水材として三井化学(株)製の商品名「サンシラールスーパー立上り」1.0kg/m
2と「サンシラールスーパー」1.3kg/m
2を2層に塗布し、更にその上に、ウレタン仕上げ層として三井化学(株)製の商品名「サンシラールカラートップ」0.2kg/m
2を上塗りすることにより防水施工を行った。上記防水処理のための施工作業性は非常に良好であった。従来品の特許文献4の工法と比較して施工時間を1〜2割程度短縮することができた。しかも、得られる防水施工面における防水材層は下地層と強固に接合一体化していると共に、水蒸気などのガス成分が接合界面に溜まってフクレ現象を起こすこともなかった。
【0063】
(比較例1)
合成繊維太糸を用いないで、幅1.1mm、厚さ30μmの熱可塑性合成樹脂フラットヤーンをインチあたりタテ9本、ヨコ8本の密度で、バスケット織にしたメッシュ状補強材を用いた以外は、実施例1と同様にして防水施工用シート状物を得た。得られたシート状物を幅100cm、直径15cmの反物に巻き取り、開反時に掛かる力をデジタルフォースゲージで測定した。測定結果を表1に示すように引き出し荷重が大きくブロッキングが発生した。
【0064】
【表1】
【0065】
(評価の考察)
防水施工において、施工面で、防水施工用シート状物は反物のブロッキングの発生や金属膜の剥がれ現象が起こらず、搬送から現場施工を含めた取扱い性が良好で且つ安価に提供できる防水施工用シート状物を提供できる。殊に、施工時にシートの粘着力が強力であるにもかかわらず、シート状反物から引出しやすく、工事中のシートのめくれ現象が生じ難く、効率よく高品質の防水施工の実施が可能になった。また、シート状反物からの引出しの最大荷重が、従来品(比較例1:0.75N/cm)に比べて本発明品(実施例1)は、シート状反物からの引出しの平均最大荷重が0.14N/cmと極めて小さい値が得られた。