(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記網状部は、横方向の外力が作用することによって、複数の前記網目の各々の前記傾斜線が連なって、前記左側部と前記右側部との間に傾斜して延びる複数の耐力線が形成されること
を特徴とする請求項1記載の耐力壁の面材。
前記網目は、横方向に延びる一対の平行線と、一対の前記平行線の各々の両端部から互いに接近しながら延びる複数の前記傾斜線とを有することで、略亀甲形状に形成されること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の耐力壁の面材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された高減衰耐力壁は、溝形鋼が横方向に引き伸ばされた状態でエネルギー吸収用壁面部材が矩形枠に固定されるため、縦方向に延びて横方向に傾斜した複数の傾斜線で取り囲まれた状態で各々の小孔が形成されて、各々の小孔が高さ寸法を幅寸法より大きくして縦長に形成されるものとなる。
【0007】
このとき、特許文献1に開示された高減衰耐力壁は、各々の小孔が縦長に形成されることで、エネルギー吸収用壁面部材が横方向に作用する外力によって変形したときに、各々の小孔の傾斜線が縦方向に連なって、エネルギー吸収用壁面部材の縦方向に延びて横方向に傾斜した複数の耐力線が形成されるものとなる。
【0008】
このため、特許文献1に開示された高減衰耐力壁は、エネルギー吸収用壁面部材の縦方向に耐力線が延びることから、横方向に作用する外力に対して抵抗できる成分が小さく、単位重量あたりの耐力はあまり期待できない。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、面材の重量が過大となることを防止しながら、横方向に作用する外力に対する面材の耐力を向上させることのできる耐力壁の面材及び耐力壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る耐力壁の面材は、一対の縦枠と一対の横枠とを組み合わせた枠体に設けられる耐力壁の面材であって、複数の網目を略面状に並べて形成された網状部と、一対の縦枠に取り付けられる左側部及び右側部と、一対の横枠に取り付けられる上側部及び下側部とを備え、前記網状部は、横方向に延びて縦方向に傾斜させた傾斜線を各々の前記網目が有するとともに、各々の前記網目が縦方向の寸法を横方向の寸法より小さくして形成され、前記上側部
及び前記下側
部の何れか一箇所以上に、平坦面が形成された平坦部が設けられ、前記平坦部は、複数の前記網目が形成された平板状の鋼板のうち、
切り込みが形成されず、複数の前記網目が形成されない部位であ
り、一対の前記横枠に取り付けられるものであることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る耐力壁の面材は、第1発明において、前記網状部は、横方向の外力が作用することによって、複数の前記網目の各々の前記傾斜線が連なって、前記左側部と前記右側部との間に傾斜して延びる複数の耐力線が形成されることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る耐力壁の面材は、第1発明又は第2発明において、前記網状部は、前記左側部又は前記右側部に対する垂線と、前記網目の前記傾斜線とで形成される傾斜角度が、5°以上、30°以下であることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る耐力壁の面材は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記網目は、横方向に延びる一対の平行線と、一対の前記平行線の各々の両端部から互いに接近しながら延びる複数の前記傾斜線とを有することで、略亀甲形状に形成されることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る耐力壁は、構造物の壁体として横方向に作用する外力に抵抗する耐力壁であって、一対の縦枠と一対の横枠とを組み合わせた枠体と、前記枠体に設けられる面材とを備え、前記面材は、複数の網目を略面状に並べて形成された網状部と、前記縦枠に取り付けられる左側部及び右側部と、前記横枠に取り付けられる上側部及び下側部とを有し、前記網状部は、横方向に延びて縦方向に傾斜させた傾斜線を各々の前記網目が有するとともに、各々の前記網目が縦方向の寸法を横方向の寸法より小さくして形成され、前記上側部
及び前記下側
部の何れか一箇所以上に、平坦面が形成された平坦部が設けられ、前記平坦部は、複数の前記網目が形成された平板状の鋼板のうち、
切り込みが形成されず、複数の前記網目が形成されない部位であ
り、一対の前記横枠に取り付けられるものであることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る耐力壁は、第5発明において、前記枠体は、一対の前記縦枠に架設される横桟が設けられるとともに、前記面材は、前記
上側部と前記下側部との間の中間部に前記平坦部が設けられて、前記横桟に前記平坦部が取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明〜第6発明によれば、網状部の各々の網目が、縦方向の高さ寸法Y1を、横方向の幅寸法X1より小さくして、略横長に形成されることで、面材全体の重量を効率的に低減させて、面材全体の重量が過大となることを防止するとともに、横方向に作用する外力に対する面材全体の総耐力Qを向上させることが可能となる。
【0018】
第1発明〜第6発明によれば、網状部の各々の網目が、縦方向の高さ寸法Y1を、横方向の幅寸法X1より小さくして、略横長に形成されることで、横方向に延びた複数の耐力線により、横方向の外力に対して十分に抵抗して、この面材が設けられる中小規模構造物における地震や強風等に対する壁体耐力を向上させることが可能となる。
【0019】
特に、第3発明によれば、左側部又は右側部に対する垂線と、各々の網目の傾斜線とで形成される傾斜角度θが、5°以上、30°以下とされるときに、単位重量あたりの横方向成分の耐力比γの漸減率が小さいものとなるため、複数の耐力線により発揮される面材全体の総耐力Qの低減を極力抑制しながら、面材全体の重量を効率的に低減させることが可能となる。
【0020】
特に、第4発明によれば、各々の網目が略亀甲形状に形成されることで、平行線が傾斜線と略直線状に連なるまで、網目を面内方向に変形させることができるものとなり、面材全体の横方向の面内変形の許容範囲を大きくすることが可能となる。
【0021】
特に、第
1発明
〜第6発明によれば、上側部や下側部に平坦部が設けられることで、上側部や下側部に薄鋼板等が溶接等により取り付けられることなく、上側部や下側部を上横枠や下横枠に固定することができるため、面材の製作コストを低減させることが可能となり、また、面材の中間部に平坦部が設けられることで、この平坦部に奥行方向に突出した突出部を形成させて、地震や強風等に起因して作用する横方向の外力に対する耐力壁全体の剛性を向上させることが可能となる。
【0022】
特に、第
5発明によれば、枠体に設けられる面材において、網状部の各々の網目が、縦方向の高さ寸法Y1を、横方向の幅寸法X1より小さくして形成されることで、関東大震災程度の中大規模地震が発生した場合であっても、例えば、従来の面材より1.5倍程度の高い総耐力Qを発揮させて
、構造物の耐震性能を向上させることが可能となる。
【0023】
特に、第
6発明によれば、一対の縦枠に架設される横桟が設けられることで、地震や強風等に起因して作用する横方向の外力に対する耐力壁全体の剛性を向上させることができるため、左縦枠と右縦枠とが横方向で互いに引き寄せ合うようにねじれながら変形することを防止して、耐力壁全体の高い壁体耐力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明を適用した耐力壁を示す正面斜視図である。
【
図2】本発明を適用した耐力壁の枠体を示す正面図である。
【
図3】本発明を適用した耐力壁の面材を示す正面図である。
【
図4】本発明を適用した耐力壁の面材の変形例を示す正面図である。
【
図5】本発明を適用した耐力壁の面材における網状部の網目を示す拡大側面図である。
【
図6】(a)は、本発明を適用した耐力壁の面材における左側部を示す拡大側面図であり、(b)は、その右側部を示す拡大側面図である。
【
図7】(a)は、本発明を適用した耐力壁の面材における上側部を示す拡大平面図であり、(b)は、その下側部を示す拡大底面図である。
【
図8】本発明を適用した耐力壁の面材の第1実施形態における網状部の網目を示す拡大正面図である。
【
図9】(a)は、本発明を適用した耐力壁の面材の第1実施形態における開口部を示す拡大正面図であり、(b)は、開口部を取り囲む鋼材の表面積を示す拡大正面図である。
【
図10】(a)は、本発明を適用した耐力壁の面材の第1実施形態における耐力線が形成される前の状態を示す正面図であり、(b)は、その耐力線が形成された後の状態を示す正面図である。
【
図11】本発明を適用した耐力壁の面材の第1実施形態における網状部で耐力線が形成される過程を示す拡大正面図である。
【
図12】本発明を適用した耐力壁の面材の第1実施形態における網状部で耐力線が形成される変形角度を示す拡大正面図である。
【
図13】本発明を適用した耐力壁の面材における耐力比と傾斜角度との関係を示すグラフである。
【
図14】本発明を適用した耐力壁の面材の第2実施形態における網状部の網目を示す拡大正面図である。
【
図15】(a)は、本発明を適用した耐力壁の面材の第2実施形態における開口部を示す拡大正面図であり、(b)は、開口部を取り囲む鋼材の表面積を示す拡大正面図である。
【
図16】本発明を適用した耐力壁の面材の第2実施形態における網状部で耐力線が形成される過程を示す拡大正面図である。
【
図17】(a)は、本発明を適用した耐力壁の面材の第2実施形態における耐力線が形成される前の状態を示す正面図であり、(b)は、その耐力線が形成された後の状態を示す正面図である。
【
図18】(a)は、本発明を適用した耐力壁の面材における横方向に延びる耐力線を示す正面図であり、(b)は、従来の面材における縦方向に延びる耐力線を示す正面図である。
【
図19】本発明を適用した耐力壁に横桟が設けられた状態を示す背面斜視図である。
【
図20】本発明を適用した耐力壁の面材における中間部の平坦部に突出部が形成された状態を示す背面斜視図である。
【
図21】本発明を適用した耐力壁の割線剛性と回転角との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した耐力壁の面材1、及び、本発明を適用した耐力壁7を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、
図1に示すように、本発明を適用した耐力壁7の枠体4に設けられるものである。本発明を適用した耐力壁7は、例えば、2階建て程度の木造住宅等の小規模構造物や、若干規模を大きくした中規模構造物等の壁体として用いられる。
【0027】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、エキスパンドメタル等の網状の建材が用いられるものである。エキスパンドメタルは、例えば、略平板状の鋼板に複数の切り込みを鋸状の刃により入れて引き延ばし、網目の1/2だけ刃をずらして切り込みを入れて引き延ばすことにより、略千鳥状に配置された複数の網目3を有する網状面材として製作される。
【0028】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、一対の縦枠5と一対の横枠6とを組み合わせた枠体4に取り付けられる。枠体4は、中小規模構造物の桁材、柱材、土台等の構造部材に固定されるものであり、
図2に示すように、一対の縦枠5と一対の横枠6とを互いに略垂直に連結させることによって、正面視で略矩形状に組み合わされるものである。
【0029】
一対の縦枠5は、断面略C形状の形鋼等が左縦枠51及び右縦枠56に用いられて、左縦枠51及び右縦枠56が、横方向Xに所定の間隔を空けて、互いに略平行に設けられる。一対の横枠6は、断面略C形状の形鋼等が上横枠61及び下横枠66に用いられて、上横枠61及び下横枠66が、縦方向Yに所定の間隔を空けて、互いに略平行に設けられる。
【0030】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、
図3に示すように、正面視で縦方向Y及び横方向Xに略面状に延びる網状部2を備えて、正面視で略矩形状に形成される。本発明を適用した耐力壁の面材1は、正面視で縦方向Yに延びて左右両側端に設けられる左側部11及び右側部12と、正面視で横方向Xに延びて上下両側端に設けられる上側部13及び下側部14とを備える。
【0031】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、上側部13及び下側部14に、略平坦面が形成されて横方向Xに延びる平坦部16が設けられる。本発明を適用した耐力壁の面材1は、エキスパンドメタルを製作するときに、略平板状の鋼板に切り込みが形成されない部位を残して、この切り込みが形成されない部位を、上側部13及び下側部14に配置すること等により、略平坦面が形成された平坦部16が設けられる。
【0032】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、これに限らず、
図4(a)に示すように、上側部13と下側部14との間の中間部15に、平坦部16が設けられてもよい。本発明を適用した耐力壁の面材1は、上側部13、下側部14及び中間部15の何れか一箇所以上に、略平坦面が形成された平坦部16が設けられてもよく、
図4(b)に示すように、上側部13、下側部14及び中間部15の何れにも、平坦部16が設けられなくてもよい。
【0033】
網状部2は、複数の網目3が略千鳥状に配置されることで、複数の網目3を略面状に並べて形成される。網状部2は、
図5(a)に示すように、各々の網目3の一部を奥行方向Zに突出させて、複数の段部39を形成した状態で、複数の網目3が略面状に並べられて形成される。また、網状部2は、これに限らず、
図5(b)に示すように、各々の網目3の一部を奥行方向Zに突出させない状態で、複数の網目3が略面状に並べられて形成されてもよい。
【0034】
左側部11及び右側部12は、
図6に示すように、薄鋼板17等が溶接等によって背面側に取り付けられて、この薄鋼板17等が左縦枠51及び右縦枠56の正面側にボルト、ビス等で固定されることで、一対の縦枠5に取り付けられるものとなる。左側部11及び右側部12は、縦方向Yで薄鋼板17に沿った全部の網目3で薄鋼板17に溶接接合されてもよく、また、薄鋼板17に沿った一部の網目3のみで薄鋼板17に溶接接合されてもよい。
【0035】
上側部13及び下側部14は、
図7に示すように、平坦部16が設けられる場合に、平坦部16が上横枠61及び下横枠66の正面側にボルト、ビス等で固定されることで、一対の横枠6に取り付けられるものとなる。上側部13及び下側部14は、平坦部16が設けられない場合に、薄鋼板17等が溶接等によって背面側に取り付けられて、この薄鋼板17等が上横枠61及び下横枠66の正面側にボルト、ビス等で固定されることで、一対の横枠6に取り付けられてもよい。このとき、上側部13及び下側部14は、横方向Xで薄鋼板17に沿った全部の網目3で薄鋼板17に溶接接合されてもよく、薄鋼板17に沿った一部の網目3のみで薄鋼板17に溶接接合されてもよい。
【0036】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、上側部13や下側部14に平坦部16が設けられることで、上側部13や下側部14に薄鋼板17等が溶接等により取り付けられることなく、上側部13や下側部14を上横枠61や下横枠66に固定することができるものとなる。これにより、本発明を適用した耐力壁の面材1は、上側部13や下側部14に薄鋼板17を溶接等で取り付けることを必要としないため、面材1の製作コストを低減させることが可能となる。
【0037】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、第1実施形態において、
図8に示すように、網状部2の各々の網目3が、横方向Xに延びる一対の平行線31と、横方向Xに延びて縦方向Yに傾斜させた傾斜線32とを有する。本発明を適用した耐力壁の面材1は、網状部2の各々の網目3が、縦方向Yの高さ寸法Y1を、横方向Xの幅寸法X1より小さくして形成される。
【0038】
このとき、各々の網目3は、縦方向Yに所定の間隔を空けて一対の平行線31が設けられるとともに、一対の平行線31の各々の横方向Xの両端部から延びる各々の傾斜線32を縦方向Yに傾斜させることで、縦方向Yに並べて設けられた一対の傾斜線32が横方向Xに延びるにつれて互いに接近するように設けられて、略亀甲形状に形成されるものとなる。
【0039】
略亀甲形状の網目3は、
図9(a)に示すように、一対の平行線31と4本の傾斜線32とで取り囲まれた略亀甲形状の開口部30が形成されて、各々の網目3の開口部30で正面視の開口面積A2が、下記(1)式により規定される関係を満足するものとなる。
【0040】
【数1】
ここで、B:平行線31の横方向Xの幅、S:傾斜線32の横方向Xの幅、M:開口部30の縦方向Yにおける略半分の高さとする。
【0041】
略亀甲形状の網目3は、略平板状の鋼板に切り込みを形成して引き伸ばすことで形成されるため、平行線31の線材幅が傾斜線32の線材幅の略2倍となり、
図9(b)に示すように、各々の網目3の開口部30の周囲において、網目3の開口部30を取り囲む鋼材の表面積A1が、下記(2)式により規定される関係を満足するものとなる。
【0042】
【数2】
ここで、W:各々の網目3の開口部30に割り振られる傾斜線32の線材幅、2W:各々の網目3の開口部30に割り振られる平行線31の線材幅とする。
【0043】
このとき、略亀甲形状の網目3は、各々の網目3の開口部30において、鋼材の表面積A1の開口面積A2に対する割合が低下することで、面材1全体の鋼材の使用量が低下して、面材1全体の鋼材重量が、所定の重量低減率αで低減するものとなる。
【0044】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、複数の網目3の開口部30における鋼材の表面積A1と開口面積A2とを併せることで、略平板状の鋼板に網目3を形成させない場合と同等の全体面積を確保するものである。このため、本発明を適用した耐力壁の面材1は、複数の網目3が形成されない略平板状の鋼板に対して、複数の網目3が形成された面材1全体の重量低減率αが、下記(3)式により規定される関係を満足するものとなる。
【0046】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、
図10(a)に示すように、地震や強風等に起因して横方向Xの外力Pが作用するものである。このとき、網状部2は、
図11(a)に示すように、各々の網目3が略亀甲形状となった状態から、
図11(b)に示すように、横方向Xの外力Pが作用することで各々の網目3が漸次変形して、
図11(c)に示すように、各々の網目3の傾斜線32が平行線31と交互に連なって、横方向Xの外力Pに抵抗する耐力線20が形成されるものとなる。
【0047】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、
図8に示すように、網状部2の各々の網目3が、縦方向Yの高さ寸法Y1を、横方向Xの幅寸法X1より小さくして形成されるため、
図10(b)に示すように、横方向Xの外力Pに抵抗する複数の耐力線20が、左側部11と右側部12との間で横方向Xに延びるとともに縦方向Yに傾斜して、左側部11と右側部12との間に架設させて形成される。
【0048】
耐力線20は、
図11、
図12に示すように、左側部11と右側部12との間で縦方向Yに傾斜して、略水平方向から所定の変形角度φにより形成されるものとなる。このとき、複数の耐力線20は、上側部13と下側部14との間で縦方向Yに並べて形成される数量Nが、下記(4)式により規定される関係を満足するものとなる。
【0049】
【数4】
ここで、H:網状部2の高さ、L:網状部2の幅とする。
【0050】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、各々の網目3の傾斜線32が連なって、各々の耐力線20に耐力Tを発揮させるものであり、各々の耐力線20の耐力Tの横方向X成分の総和が、複数の耐力線20によって横方向Xの外力Pに抵抗する総耐力Qとなる。このため、
図12に示すように、複数の耐力線20による総耐力Qは、下記(5)式〜(7)式により算出されるものとなる。
【0054】
なお、略平板状の鋼板に網目3を形成させないときであっても、各々の平行線31が所定の線材幅2Wを有し、各々の傾斜線32が所定の線材幅Wを有することで、変形角度φが0°とならない。
【0055】
ここで、本発明を適用した耐力壁の面材1は、横方向Xの外力Pが作用していないときに、各々の網目3が略亀甲形状となることで、各々の網目3の傾斜線32と、左側部11又は右側部12に対する垂線Vとが、所定の傾斜角度θにより形成されて、開口部30の縦方向Yにおける略半分の高さMは、下記(8)式により規定されるものとなる。
【0057】
このとき、略平板状の鋼板を引き伸ばす前における傾斜角度θが0°のときの耐力Q0は、上記(8)式によりM=0となることで、下記(9)式〜(11)式により算出されるものとなる。
【0061】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、略平板状の鋼板を引き伸ばす前における傾斜角度θが0°のときの耐力Q0に対して、略平板状の鋼板を引き伸ばした後における面材1全体の耐力低減率βが、複数の耐力線20による総耐力Qとの関係で、下記(12)式により規定される関係を満足するものとなる。
【0063】
このとき、本発明を適用した耐力壁の面材1は、単位重量あたりの横方向X成分の耐力比γが、面材1全体の重量低減率αと面材1全体の耐力低減率βとの比率として算出されることで、下記(13)式により規定される関係を満足するものとなる。
【0065】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、各々の網目3における傾斜線32の傾斜角度θが増大することで、網目3の開口部30における開口面積A2が増大して、上記(3)式に示されるように、面材1全体の重量が低減するものとなる。
【0066】
また、本発明を適用した耐力壁の面材1は、上記(8)式に示されるように、各々の網目3における傾斜線32の傾斜角度θが増大することで、開口部30の縦方向Yにおける略半分の高さMが増大して、上記(6)式、(7)式に示されるように、tanφが増大するとともにcosφが減少することで、上記(5)式に示されるように、複数の耐力線20による面材1全体の総耐力Qが低減するものとなる。
【0067】
このとき、本発明を適用した耐力壁の面材1は、単位重量あたりの横方向X成分の耐力比γが、各々の網目3における傾斜線32の傾斜角度θが増大するにつれて漸減するものとなる。網状部2は、特に、左側部11又は右側部12に対する垂線Vと、各々の網目3の傾斜線32とで形成される傾斜角度θが、5°以上、30°以下とされるときに、
図13に示すように(S=20mm、B=5mm、W=2.5mmのプロット)、単位重量あたりの横方向X成分の耐力比γの漸減率が小さいものとなる。このため、本発明を適用した耐力壁の面材1は、各々の網目3で傾斜線32の傾斜角度θを5°以上、30°以下とすることにより、複数の耐力線20による面材1全体の総耐力Qの低減を極力抑制しながら、面材1全体の重量を効率的に低減させることが可能となる。
【0068】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、第2実施形態において、
図14に示すように、網状部2の各々の網目3が、横方向Xに延びて縦方向Yに傾斜させた傾斜線32を有して、略菱形状に形成されるものとなる。本発明を適用した耐力壁の面材1は、網状部2の各々の網目3が、縦方向Yの高さ寸法Y1を、横方向Xの幅寸法X1より小さくして形成される。
【0069】
略菱形状の網目3は、
図15に示すように、4本の傾斜線32により取り囲まれて略菱形状の開口部30が形成される。略菱形状の網目3は、各々の網目3の開口部30で正面視の開口面積A2が、下記(14)式により規定される関係を満足するとともに、各々の網目3の開口部30の周囲において、網目3の開口部30を取り囲む鋼材の表面積A1が、下記(15)式により規定される関係を満足するものとなる。
【0072】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、
図16(a)に示すように、各々の網目3が略菱形状となった状態から、横方向Xの外力Pが作用して各々の網目3が漸次変形することによって、
図16(b)に示すように、各々の網目3の傾斜線32が連なって、横方向Xの外力Pに抵抗する耐力線20が形成されるものとなる。
【0073】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、
図14〜
図17に示すように、複数の網目3の傾斜線32が連なることで、各々の耐力線20の耐力Tの横方向X成分の総和が、横方向Xの外力Pに抵抗する総耐力Qとなる。複数の耐力線20の総耐力Qは、上記(5)式、下記(16)式及び下記(17)式により算出されるものとなる。
【0076】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、第2実施形態においても、傾斜線32の傾斜角度θが増大するにつれて、単位重量あたりの横方向X成分の耐力比γが漸減する。網状部2は、特に、左側部11又は右側部12に対する垂線Vと、各々の網目3の傾斜線32とで形成される傾斜角度θが、5°以上、30°以下とされるときに、
図13に示すように(S=20mm、B=0mm、W=2.5mmのプロット)、単位重量あたりの横方向X成分の耐力比γの漸減率が小さいものとなる。このため、本発明を適用した耐力壁の面材1は、各々の網目3で傾斜線32の傾斜角度θを5°以上、30°以下とすることにより、複数の耐力線20による面材1全体の総耐力Qの低減を極力抑制しながら、面材1全体の重量を効率的に低減させることが可能となる。なお、各々の網目3は、平行線31の横方向Xの幅Bが大きくなると耐力比γが大きくなることから、略菱形状(S=20mm、B=0mm、W=2.5mm)とするよりも、略亀甲形状(S=20mm、B=5mm、W=2.5mm)とする方が望ましいものとなる。
【0077】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、
図8、
図14に示すように、網状部2の各々の網目3が、縦方向Yの高さ寸法Y1を、横方向Xの幅寸法X1より小さくして形成されるため、
図18(a)に示すように、横方向Xの外力Pに抵抗する耐力線20が、左側部11と右側部12との間で、横方向Xに延びて形成される。
【0078】
これに対して、従来の面材9は、
図18(b)に示すように、縦方向Yの高さ寸法Y1を、横方向Xの幅寸法X1より大きくして、各々の網目93が縦長に形成されることから、上側部91と下側部92との間で、耐力線90が縦方向Yに延びて形成されるものとなる。
【0079】
このため、従来の面材9において、縦方向Yに延びる耐力線90では、地震や強風等に起因して作用する横方向Xの外力Pに対して十分に抵抗することができないおそれがある。本発明を適用した耐力壁の面材1は、複数の耐力線20が横方向Xに延びるため、横方向Xに延びた各々の耐力線20における横方向X成分の総耐力Qを大きくして、左縦枠51及び右縦枠56から作用する横方向Xの外力Pに対して、複数の耐力線20で十分に抵抗することができる。
【0080】
これにより、本発明を適用した耐力壁の面材1は、
図8、
図14に示すように、網状部2の各々の網目3が、縦方向Yの高さ寸法Y1を、横方向Xの幅寸法X1より小さくして、略横長に形成されることで、横方向Xに延びた複数の耐力線20により、横方向Xの外力Pに対して十分に抵抗して、この面材1が設けられる中小規模構造物における地震や強風等に対する壁体耐力を向上させることが可能となる。
【0081】
また、本発明を適用した耐力壁の面材1は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、各々の網目3で傾斜線32の傾斜角度θを、5°以上、30°以下とすることで、面材1全体の重量を効率的に低減させて、面材1全体の重量が過大となることを防止するとともに、横方向Xに作用する外力Pに対する面材1全体の総耐力Qを向上させることが可能となる。
【0082】
本発明を適用した耐力壁の面材1は、特に、第1実施形態において、
図11に示すように、各々の網目3が略亀甲形状に形成されることで、平行線31が傾斜線32と略直線状に連なるまで、網目3を面内方向に変形させることができるものとなり、面材1全体の横方向Xの面内変形の許容範囲を大きくすることが可能となる。
【0083】
本発明を適用した耐力壁7は、
図1に示すように、中小規模構造物の壁体として用いられて地震や強風等に起因して横方向Xに作用する外力Pに抵抗するものである。本発明を適用した耐力壁7は、本発明を適用した耐力壁の面材1が、枠体4に取り付けられて、一対の縦枠5と一対の横枠6とを組み合わせた枠体4と、枠体4に設けられる面材1とを備えるものとなる。
【0084】
本発明を適用した耐力壁7は、
図19に示すように、一対の縦枠5に架設される横桟41が設けられてもよい。このとき、横桟41は、断面略C形状の形鋼等が用いられて、左縦枠51及び右縦枠56に横方向Xの両端部が溶接等により固定されるとともに、面材1の中間部15に設けられた平坦部16の背面側に、ボルト、ビス等で固定されて取り付けられるものとなる。
【0085】
本発明を適用した耐力壁7は、これに限らず、横桟41を一対の縦枠5に架設させないで、横桟41が設けられないものとしてもよい。このとき、本発明を適用した耐力壁7は、
図20に示すように、面材1の中間部15に設けられた平坦部16を奥行方向Zに屈曲させて、略コ字状等に形成された突出部18が形成されてもよい。
【0086】
本発明を適用した耐力壁7は、
図19に示すように、一対の縦枠5に架設される横桟41が設けられて、又は、
図20に示すように、面材1の中間部15に設けられた平坦部16に突出部18が形成されることで、地震や強風等に起因して作用する横方向Xの外力Pに対する耐力壁7全体の剛性を向上させて、左縦枠51と右縦枠56とが横方向Xで互いに引き寄せ合うようにねじれて変形することを防止することができる。
【0087】
これにより、本発明を適用した耐力壁7は、耐力壁7全体の剛性を向上させて、左縦枠51と右縦枠56とが横方向Xで互いに引き寄せ合うようにねじれて変形することを防止することができるため、横方向Xの外力Pによって枠体4が面内方向で過大に変形することを防止して、耐力壁7全体の高い壁体耐力を維持することが可能となる。
【0088】
本発明を適用した耐力壁7は、例えば、関東大震災程度の中大規模地震のときに想定される面材1全体の横方向Xの面内変形を許容する回転角Rの範囲を1/300(≒0.0033)rad以下とする。
【0089】
このとき、従来の面材9は、
図18に示すように、各々の網目93を縦長に形成して、複数の耐力線90が縦方向Yに延びて形成されるため、
図21に示すように、回転角Rを0.0033radとしたときの割線剛性が、3.26kN/mとなる。これに対して、本発明を適用した耐力壁7は、各々の網目3を横長に形成して、複数の耐力線20が横方向Xに延びて形成されるため、回転角Rを0.0033radとしたときの割線剛性が、4.71kN/mとなる。
【0090】
これにより、本発明を適用した耐力壁7は、
図1に示すように、枠体4に設けられる本発明を適用した耐力壁の面材1において、
図8、
図14に示すように、網状部2の各々の網目3が、縦方向Yの高さ寸法Y1を、横方向Xの幅寸法X1より小さくして形成されることで、関東大震災程度の中大規模地震が発生した場合であっても、従来の面材9より1.5倍程度の高い総耐力Qを発揮させて、中小規模構造物の耐震性能を向上させることが可能となる。
【0091】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。