特許第6427993号(P6427993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6427993-内燃機関の始動補助装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427993
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】内燃機関の始動補助装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/08 20060101AFI20181119BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20181119BHJP
   F02M 26/02 20160101ALI20181119BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20181119BHJP
   F02D 9/04 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   F02D21/08 301A
   F02D13/02 J
   F02M26/02
   F02D9/02 S
   F02D9/02 305B
   F02D9/04 C
   F02D9/04 D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-134839(P2014-134839)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11656(P2016-11656A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】飯島 章
【審査官】 比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−085053(JP,A)
【文献】 特開2009−156221(JP,A)
【文献】 特開2010−048194(JP,A)
【文献】 特開2008−267175(JP,A)
【文献】 特開2009−127428(JP,A)
【文献】 特開2008−190391(JP,A)
【文献】 特開2014−040804(JP,A)
【文献】 特開2001−003797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00−28/00
F02B47/08−47/10
F02M26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮着火式内燃機関の燃焼室に吸気を導入する吸気通路と、
前記燃焼室から排気を導出する排気通路と、
前記排気通路から分岐して前記吸気通路に合流する排気再循環通路と、
前記排気再循環通路に設けられて排気再循環量を調整可能な第1バルブと、
前記排気再循環通路との分岐部よりも下流側の前記排気通路に設けられて排気流量を調整可能な第2バルブと、
前記排気再循環通路との合流部よりも上流側の前記吸気通路に設けられて吸気流量を調整可能な第3バルブと、
前記内燃機関の排気バルブの開閉時期を任意に調整可能な可変動弁機構と、
外気温度を検出するセンサと、
前記内燃機関の始動時に、前記第1バルブの開度を大きくし、前記第2及び第3バルブの開度を小さくし、且つ前記可変動弁機構により前記排気バルブの開弁開始時期を進角させると共に膨張行程上死点より後であって膨張行程下死点より前の時期に設定し、前記センサの値が低くなるほど前記排気バルブの開弁開始時期の進角量を大きくする制御部と、を備える内燃機関の始動補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の始動補助装置に関し、特に、低温始動時の始動補助に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮着火式の内燃機関であるディーゼルエンジンにおいては、低圧縮比化を図ることによって、最高筒内圧の低減や排ガス中の有害物質であるNOx(窒素酸化物)の発生を抑制することが可能である。一方、低圧縮比化に伴い圧縮端温度が下がるため、特に低温始動時は燃焼室内に噴射した燃料が着火しにくくなり、始動性を悪化させる課題がある。低温環境下においては、吸入空気やエンジン自体の温度が低いこと、さらに低圧縮比化によって燃焼室内が圧縮行程で十分に昇温できないことが始動性悪化の要因と考えられる。
【0003】
このような始動性の悪化を改善する技術として、例えば特許文献1には、冷間始動時に電動過給機を駆動させて燃焼室内の温度を上昇させることで、燃料の着火性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、外気温度が氷点下(例えば、−20℃以下等)となる極寒環境下では、電動過給機による過給のみでは燃焼室を十分に昇温することができず、確実な始動を担保できない可能性がある。また、近年、グロープラグの高温化によって着火性の向上が図られているが、低温環境下においては、バッテリの内部抵抗が大きくなり、グロープラグに十分な電力を供給することができず、始動を確実に成功できない可能性もある。
【0006】
本発明の目的は、低温環境下においても始動性を効果的に向上することができる内燃機関の始動補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明のセンサ出力値推定装置は、圧縮着火式内燃機関の燃焼室に吸気を導入する吸気通路と、前記燃焼室から排気を導出する排気通路と、前記排気通路から分岐して前記吸気通路に合流する排気再循環通路と、前記排気再循環通路に設けられて排気再循環量を調整可能な第1バルブと、前記排気再循環通路との分岐部よりも下流側の前記排気通路に設けられて排気流量を調整可能な第2バルブと、前記排気再循環通路との合流部よりも上流側の前記吸気通路に設けられて吸気流量を調整可能な第3バルブと、前記内燃機関の排気バルブの開閉時期を任意に調整可能な可変動弁機構と、前記内燃機関の始動時に、前記第1バルブの開度を大きくし、前記第2及び第3バルブの開度を小さくし、且つ前記可変動弁機構により前記排気バルブの開弁開始時期を進角させる制御部とを備える。
【0008】
また、前記制御部は、前記内燃機関の始動時に、前記第1バルブの開度を全開にすることが好ましい。
【0009】
また、前記制御部は、前記内燃機関の始動時に、前記第2及び第3バルブの開度を全閉にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内燃機関の始動補助装置によれば、低温環境下においても始動性を効果的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジンの吸排気系の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る始動補助装置による排気バルブの進角を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る始動補助装置による制御内容を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る内燃機関の始動補助装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンとう)10の吸排気系の一例を示す概略構成図である。図1中において、符号CBはシリンダブロック、符号CHはシリンダヘッド、符号IJはインジェクタ、符号IVは吸気バルブ、符号EVは排気バルブをそれぞれ示している。
【0014】
吸気マニホールド10Aには、燃焼室内に吸気を導入する吸気通路11が接続されている。この吸気通路11には、吸気上流側から順に、エアクリーナ13、吸気絞り弁14、過給機のコンプレッサ15A、インタークーラ16等が設けられている。吸気絞り弁14は、本発明の第3バルブの一例として好ましい。
【0015】
排気マニホールド10Bには、燃焼室内から排気を導出する排気通路12が接続されている。この排気通路12には、排気上流側から順に、過給機のタービン15B、排気シャッタ17等が設けられている。排気シャッタ17は、本発明の第2バルブの一例として好ましい。
【0016】
排気再循環装置20は、排気ガスの一部を吸気通路11に環流するEGR通路21と、EGRガスを冷却するEGRクーラ22と、EGRガス流量を調整するEGRバルブ23とを備えている。EGRバルブ23は、本発明の第1バルブの一例として好ましい。
【0017】
本実施形態のエンジン10は、排気バルブEVの開閉時期を任意の時期に設定可能な可変バルブタイミング機構30を備えている。可変バルブタイミング機構30としては、例えば、排気バルブEVの開閉時期を油圧調整によって連続的に可変にする公知のベーン式可変バルブタイミング機構を用いることができる。なお、可変バルブタイミング機構30はベーン式に限定されず、他の公知の可変動弁機構を用いてもよい。
【0018】
冷却水温センサ31は、図示しない冷却水循環路を流れる冷却水の温度を検出する。エンジン回転センサ32は、図示しないクランク軸の回転数(エンジン回転数)を検出する。外気温センサ33は、外気温度を検出する。これら各種センサ31〜33で検出されるセンサ値は、電気的に接続された電子制御ユニット(以下、ECUという)40に送信される。
【0019】
ECU40は、エンジン10の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。また、ECU40は、低温始動時にエンジン10の始動を補助する始動補助制御を実行する。具体的には、冷却水温センサ31(又は、外気温センサ33)のセンサ値が所定の低温状態を示す場合に、スタータモータ(不図示)によるクランキングと同時に、EGRバルブ23を全開、排気シャッタ17及び吸気絞り弁14を全閉に制御する。これにより、圧縮行程で昇温された燃焼室内の未燃ガスが排気行程で排気通路12に排出され、さらにEGR通路21から吸気通路11を介して吸気行程で燃焼室内に再度導入される排気再循環が行われる。
【0020】
ただし、この排気再循環のみでは、圧縮行程で昇温された未燃ガスが膨張行程で降温されるため、インジェクタIJから燃焼室内に燃料を噴射しても着火しない可能性がある。そこで、ECU40は、図2に示すように、可変バルブタイミング機構30に排気バルブEVの開弁時期を通常時よりも圧縮上死点TDC側(例えば、膨張行程の中間位置)に進角させる指示信号を送信する。これにより、圧縮行程で昇温された未燃ガスは、膨張行程で温度が下がりきる前に排気通路12に排出されると共に、EGR通路21から吸気通路11を介して燃焼室内に再度導入されるようになる。その結果、燃焼室の昇温が効果的に促進されて、エンジン10の始動を確実に成功させることが可能になる。
【0021】
なお、排気バルブEVの進角量は固定値に限定されず、例えば、外気温センサ33又は冷却水温センサ31のセンサ値に応じて、これらセンサ値が低くなるほど進角量を大きくするように構成してもよい。
【0022】
次に、図3に基づいて、本実施形態に係る始動補助装置による制御フローを説明する。なお。本制御は、図示しないエンジンスイッチがイグニッションオン位置に操作されるとスタートする。
【0023】
ステップS10では、冷却水温センサ31(又は、外気温センサ33)のセンサ値に基づいて冷間始動時であるか否かが判定される。冷間始動時であれば(Yes)、本制御はステップS20に進む。一方、冷間始動時でない場合(No)は、通常の始動制御、すなわち、スタータオンに応じて図示しないスタータモータによりクランキングを行うと共に、インジェクタIJから燃料噴射を開始する通常制御に移行する。
【0024】
ステップS20では、エンジンスイッチがスタータオン位置に操作されたか否かが判定される。スタータオン(Yes)であれば、ステップS30に進みスタータモータによるクランキングが開始される。
【0025】
ステップS40では、EGRバルブ23が全開、排気シャッタ17及び吸気絞り弁14が全閉にされ、さらに、ステップS50では、排気バルブEVの開弁時期が通常時よりも圧縮上死点側に進角される。これらステップS30〜50は同時に行われる。燃焼室内の温度が燃料着火温度まで上昇すると、本制御はステップS60に進みインジェクタIJによる燃料噴射を開始して、その後リターンされる。
【0026】
次に、本実施形態に係る始動補助装置の作用効果を説明する。
【0027】
本実施形態の始動補助装置は、低温始動時にEGRバルブ23を全開、排気シャッタ17及び吸気絞り弁14を全閉にすると共に、排気バルブEVの開弁時期を通常時よりも進角させる。すなわち、圧縮行程で昇温された未燃ガスを膨張行程で温度が低下するよりも前に排気通路12に排出し、EGR通路21から吸気通路11を介して燃焼室内に再度導入することで、高温状態のガスを燃焼室に連続的に供給するように構成されている。したがって、本実施形態の始動補助装置によれば、低温環境下においても燃焼室の昇温が効果的に促進されることになり、エンジン10の始動を確実に行うことが可能になる。
【0028】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 ディーゼルエンジン
11 吸気通路
12 排気通路
14 吸気絞り弁(第3バルブ)
17 排気シャッタ(第2バルブ)
21 EGR通路
23 EGRバルブ(第1バルブ)
30 可変バルブタイミング機構
40 ECU
図1
図2
図3