特許第6428058号(P6428058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6428058剛性強化環およびそれを用いたタイヤ加硫方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6428058
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】剛性強化環およびそれを用いたタイヤ加硫方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20181119BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20181119BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20181119BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-175261(P2014-175261)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49664(P2016-49664A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−111885(JP,A)
【文献】 特開2012−232517(JP,A)
【文献】 特開2014−113733(JP,A)
【文献】 欧州特許第01358997(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤを金型内にセットし、前記グリーンタイヤの内側に加熱媒体を圧入し、タイヤ径方向外側へ押し付けてブラダレス加硫するとき、前記グリーンタイヤのトレッド部からビード部に相当する領域の内側表面の全域に当接するように配置する環であり、該環の前記トレッド部およびビード部において周方向に所定量の引張り変形をさせるのに要する応力が、周方向に所定量の圧縮変形をさせるのに要する応力よりも大きいことを特徴とする剛性強化環。
【請求項2】
前記環のトレッド部およびビード部において、撚り構造を有する補強線材を少なくともタイヤ周方向に巻回した補強体を、未加硫ゴムで被覆し、これを加硫した環からなることを特徴とする請求項1に記載の剛性強化環。
【請求項3】
前記環のビード部において、前記撚り構造を有する補強線材と同一または異なる補強線材を、タイヤ径方向に延在するように、かつタイヤ周方向に間隔をあけて複数配置させたことを特徴とする請求項2に記載の剛性強化環。
【請求項4】
グリーンタイヤを金型内にセットし、前記グリーンタイヤの内側に加熱媒体を圧入し、タイヤ径方向外側へ押し付けるブラダレス加硫方法であって、前記グリーンタイヤのトレッド部からビード部に相当する領域の内側表面の全域に、請求項1〜3のいずれかに記載の剛性強化環を配置させた状態で前記加熱媒体を圧入することを特徴とするタイヤ加硫方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の剛性強化環の外周に、前記グリーンタイヤの構成部材を一体的にアッセンブリしたグリーンタイヤ組み立て体を製作し、該グリーンタイヤ組み立て体を前記金型内にセットすることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ加硫方法。
【請求項6】
前記グリーンタイヤ組み立て体を、複数に分割可能な金型の内側にセットすることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ加硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのブラダレス加硫に使用する環状部材およびそれを用いたタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを加硫成形する方法として、金型の内部にグリーンタイヤをセットした後、そのグリーンタイヤの内側に加熱媒体を圧入させる加硫成形方法、いわゆるブラダレス加硫が知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、ブラダレス加硫では、グリーンタイヤの厚さが厚い領域では金型への押圧が十分に得られないため適用可能なタイヤ形状が限定されること、また加硫したタイヤの内面形状や寸法精度が不足するという課題があった。このためブラダレス加硫の優れた生産性を確保しながら、加硫したタイヤの内面形状や寸法精度を低下させないように空気入りタイヤをブラダレス加硫する加硫方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−260135号公報
【特許文献1】特開2009−208394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、空気入りタイヤの内面形状を良好にし寸法精度を高くしながら、生産性を良好にするブラダレス加硫によるタイヤ加硫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の剛性強化環は、グリーンタイヤを金型内にセットし、前記グリーンタイヤの内側に加熱媒体を圧入し、タイヤ径方向外側へ押し付けてブラダレス加硫するとき、前記グリーンタイヤのトレッド部からビード部に相当する領域の内側表面の全域に当接するように配置する環であり、該環の前記トレッド部およびビード部において周方向に所定量の引張り変形をさせるのに要する応力が、周方向に所定量の圧縮変形をさせるのに要する応力よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
また本発明のタイヤ加硫方法は、グリーンタイヤを金型内にセットし、前記グリーンタイヤの内側に加熱媒体を圧入し、タイヤ径方向外側へ押し付けるブラダレス加硫方法であって、前記グリーンタイヤのトレッド部からビード部に相当する領域の内側表面の全域に、上述した剛性強化環を配置させた状態で前記加熱媒体を圧入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の剛性強化環およびこれを用いたタイヤ加硫方法によれば、グリーンタイヤトレッド部からビード部に相当する領域の内側表面の全域に当接するように、その周方向の引張り応力を周方向の圧縮応力よりも大きくした剛性強化環を配置してブラダレス加硫するので、この剛性強化環がタイヤの内面形状を良好にし、かつ寸法精度を高くする。また剛性強化環をグリーンタイヤの内周面に配置するだけでよいので、ブラダレス加硫の良好な生産性を維持することができる。
【0009】
剛性強化環は、そのトレッド部およびビード部において撚り構造を有する補強線材を少なくともタイヤ周方向に巻回した補強体を未加硫ゴムで被覆し、これを加硫した環であるとよい。これにより剛性強化環の周方向の引張り応力を大きく、周方向の圧縮応力を小さくすると共に、剛性強化環を加硫成形した空気入りタイヤから容易に取り外すことができ、繰り返しブラダレス加硫に使用することができる。
【0010】
また剛性強化環は、そのビード部において、前記撚り構造を有する補強線材と同一または異なる補強線材を、タイヤ径方向に延在するように、かつタイヤ周方向に間隔をあけて複数配置することができる。これによりビード部に対する賦形を安定化し、タイヤの内面形状および寸法安定性を、一層優れたものにすることができる。
【0011】
本発明のタイヤ加硫方法において、剛性強化環の外周に、グリーンタイヤの構成部材を一体的にアッセンブリしたグリーンタイヤ組み立て体を製作し、このグリーンタイヤ組み立て体を金型内にセットし、最内側の剛性強化環の内側に加熱媒体を圧入することができる。またグリーンタイヤ組み立て体は、複数に分割可能な金型の内側にセットするとよい。
【0012】
本発明のタイヤ加硫方法は、上述した剛性強化環を用いてグリーンタイヤをブラダレス加硫することにより寸法精度が高く、高品質の空気入りタイヤを安定的に低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の剛性強化環を使用したタイヤのブラダレス加硫の実施形態の一例を子午線方向断面で模式的に示す説明図である。
図2】(a)(b)は、本発明の剛性強化環の実施形態の一例を模式的に示す説明図であり、(a)は剛性強化環の斜視図、(b)は(a)の剛性強化環の表面の一部を取り除いて示す斜視図である。
図3】本発明の剛性強化環の実施形態の他の一例をに示す、図2(b)に相当する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の剛性強化環を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、ブラダレス加硫時の金型1、剛性強化環2およびグリーンタイヤTを模式的に示す説明図である。図1では、加熱媒体Mが圧入することにより、グリーンタイヤTが金型1の内面に押し付けられた様子を示している。またグリーンタイヤTは、トレッド部T1、サイド部T2およびビード部T3からなる。
【0016】
本発明では、グリーンタイヤTが、加硫後のタイヤ形状に近い形状に成形され、そのグリーンタイヤTのトレッド部T1からビード部T2に相当する領域の内側表面の全域に当接するように剛性強化環2が配置される。剛性強化環2は、トレッド部およびビード部において、その周方向に所定量の引張り変形をさせるのに要する応力が、周方向に所定量の圧縮変形をさせるのに要する応力よりも大きい。すなわち剛性強化環2は、タイヤ周方向に伸長し難く、かつ圧縮しやすい性質を有する。また剛性強化環2は、高温、高圧下において気密性を有し、ブラダレス加硫時に圧入された加熱媒体により、グリーンタイヤをタイヤ径方向外側の金型内面へ押し付けて加硫する。
【0017】
ブラダレス加硫時に剛性強化環2を配置することにより、タイヤ内側の形状を良好にすることができる。またトレッド部からビード部に相当する領域におけるタイヤの寸法精度を高くすることができる。
【0018】
剛性強化環2は、その周方向の引張り応力が大きいことに加え、周方向の圧縮応力が小さいという特徴を有する。タイヤの加硫成形の初期段階では、タイヤ内面に近いカーカスやベルト層等のゴムの加硫が進行し、次の中期段階以降にタイヤ内部を含むタイヤ断面全体の加硫が進行する。未加硫ゴムの加硫が進行すると熱膨張によりゴムの体積が増大する。このため中期段階以降にタイヤ断面全体の加硫が進行すると、熱膨張のために初期段階で加硫が進行したタイヤ内面に近い加硫ゴムは、タイヤ内腔の周長が収縮するように、径方向内側に変形する。したがって、加硫成形の初期段階でその周長を拡大した剛性強化環2は、中期段階以降では周長を縮小させる必要がある。本発明の剛性強化環2は、周方向の圧縮応力が小さいため、中期段階以降の加硫ゴムの挙動に追従することができ、バックリング等の故障が起きるのを防ぐことができる。
【0019】
本発明の剛性強化環2の形状は、グリーンタイヤのトレッド部からビード部に相当する領域の内側表面の全域に当接する環であれば、特に制限されるものではない。好ましくは、トレッド部T1の内側に当接する領域では円筒形の環であり、サイド部T2からビード部T3の内側に当接する領域では両側を開口した中空円錐台形の環であるとよい。
【0020】
図2(a)(b)は、本発明の剛性強化環2の実施形態の一例を模式的に示す説明図である。図2に示す通り、剛性強化環2は円筒形の両側の直径を小さくした環、すなわち円筒形の環と、その両側に接続された中空円錐台形の環を組み合わせた形状である。剛性強化環2の寸法は特に限定されるものではないが、その外径が加硫したタイヤの内径と略同等であるとよい。これにより、タイヤのトレッド部からビード部に相当する領域の径方向内側の形状を調整することができる。
【0021】
なお図2(a)は、トレッド部に相当する領域の外径がタイヤ幅方向に一定である円筒形の剛性強化環2を例示するが、剛性強化環2のトレッド部の外径は図示の例に限定されるものではない。例えばトレッド部の内周縁を直線状にした空気入りタイヤを製造するときは、図2(a)に例示する剛性強化環2をそのまま使用することができる。一方、トレッド部の内周縁を円弧状に設計した空気入りタイヤを製造するときは、剛性強化環2の外径を、設計した円弧に沿うようにタイヤ幅方向に変化させることができる。サイド部からビード部に至る領域についても同様にすることができる。すなわち設計されたタイヤの断面形状に応じて剛性強化環2の形状を決めるとよい。これによりタイヤの設計自由度をより高くすることができる。
【0022】
剛性強化環2は、周方向の引張り応力が圧縮応力より大きい特徴を有するものであれば、その構成が特に制限されるものではない。剛性強化環2としては、例えば図2(b)に示すように、トレッド部T1およびビード部T3において、撚り構造を有する補強線材3を少なくともタイヤ周方向に巻回した補強体を、未加硫ゴム4で被覆し、これを加硫した環が好ましい。剛性強化環2を、トレッド部T1およびビード部T3に補強線材3を埋設した構成にすることにより、周方向の引張り応力を大きく、周方向の圧縮応力を小さくすることができる。また剛性強化環2は、加硫ゴムからなる環であるので未加硫ゴムやその加硫ゴムと接着しないため、金型1から取り出した加硫済みのタイヤの内側から容易に剥離させて取り出すことができる。
【0023】
また補強体は、トレッド部T1およびビード部T3に相当する領域で、補強線材3に適当な張力をかけながらタイヤ周方向に螺旋状に巻回することにより形成される。補強線材3の打ち込み密度は、周方向の引張り応力に応じて決めることができ、トレッド部T1およびビード部T3で打ち込み密度が同じでも異なってもよい。
【0024】
剛性強化環2は、図3に例示するように、ビード部T3に相当する領域に、タイヤ径方向に延在する複数の補強線材5をタイヤ周方向に間隔をあけて配置するとよい。すなわち、補強線材5を引揃えゴム引きした未加硫ゴムシートを補強線材5がタイヤ径方向に延在するように積層してもよいし、簾織り構造にした補強線材5をビード部T3に埋設してもよい。このように周方向に巻回させた補強線材3と共に、径方向に延在させた補強線材5を配置することにより、剛性強化環2のビード部T5の剛性を大きくし、ブラダレス加硫するとき、グリーンタイヤのビード部の押圧をより効果的にすると共に、これに伴い必要になる剛性強化環2の耐久性を高くすることができる。補強線材5の打ち込み密度は、ビード部に必要な耐久性に応じて適宜、決めることができる。なお周方向に巻回させる補強線材3および径方向に延在させる補強線材5の種類および構造は同一でもよいし異ならせてもよい。
【0025】
剛性強化環2を構成する補強線材3および補強線材5としては、有機繊維コード、スチールコードが挙げられる。有機繊維コードとしては、例えばポリエステル繊維コード、ポリアミド繊維コード、レーヨン繊維コード、アラミド繊維コード、ポリエチレンナフタレート繊維コード、ポリオレフィンケトン繊維コード、アクリル繊維コード等が例示される。これら繊維コードの撚り構造は、剛性強化環2にしたとき所定の引張り応力および圧縮応力、或いは所要の耐久性が得られるように適宜、決めることができる。補強線材3の撚り構造および周方向に螺旋状に巻回する時の張力により、剛性強化環2の周方向の引張り応力を調節することができる。
【0026】
剛性強化環2は、上述した補強線材3,5からなる補強体を、未加硫ゴム4のシートで挟み込むなどして被覆し、加硫することにより得られる。未加硫ゴム4での被覆方法は、予め補強線材3を未加硫ゴムで被覆したゴムストラップを準備し、これをタイヤ周方向に螺旋状に巻回してもよい。
【0027】
また剛性強化環2を構成するゴム成分は、特に限定されるものではなく、タイヤ用ゴム組成物を通常、構成するゴム成分であればよい。ゴム成分としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等を例示することができる。
【0028】
剛性強化環2の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜5mmであるとよい。剛性強化環2の厚さが1mm未満であると、加硫成形時におけるタイヤ内周面の形状を調節する作用が十分に得られない虞がある。また剛性強化環2の厚さが10mmを超えると、加硫成形の中期段階以降に周長を縮小させる作用が十分に得られない虞がある。
【0029】
以下、剛性強化環2を使用した空気入りタイヤの加硫方法について説明する。本発明のタイヤ加硫方法は、金型1内にセットしたグリーンタイヤTのトレッド部T1からビード部T3に相当する領域の内側表面の全域に、上述した剛性強化環2を配置させた状態で加熱媒体を圧入することにより、ブラダレス加硫をする。剛性強化環2を使用したブラダレス加硫により、加硫したタイヤの内面形状を良好にし、かつ寸法精度を高くすることができる。また剛性強化環2をグリーンタイヤの内周面に配置するだけでよいので、ブラダレス加硫の良好な生産性を維持することができる。
【0030】
本発明の加硫方法において、剛性強化環2の外周に、グリーンタイヤTの構成部材を一体的にアッセンブリしたグリーンタイヤ組み立て体を製作し、得られたグリーンタイヤ組み立て体を金型1内にセットしてブラダレス加硫するとよい。これによりグリーンタイヤTのトレッド部T1からビード部T3に相当する領域の内周面に剛性強化環2を確実に配置することができる。
【0031】
得られたグリーンタイヤ組み立て体をセットする金型としては、複数に分割可能な金型を好ましく使用することができる。複数に分割可能な金型1を使用することにより、加硫成形したタイヤの直径とほぼ同じ径を有するグリーンタイヤ組み立て体を、金型1内にセットするのが容易になる。このようなセクショナル金型の分割数は、タイヤ形状およびタイヤサイズに応じて決めることができる。
【0032】
本発明のタイヤ加硫方法により得られた空気入りタイヤは、設計された値に近いタイヤ形状および寸法精度を有するため、意図したタイヤ性能をより確実に達成することができる。例えば図2(a)に例示した剛性強化環を用いて加硫成形された空気入りタイヤは、トレッド部をフラットにし略均一の厚さにすると共に、内面形状を良好にすることができる。これにより空気入りタイヤの転がり抵抗をより小さくすることができる。
【0033】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
同一仕様のグリーンタイヤ(タイヤサイズ205/55R16)を製造するとき、実施例1では剛性強化環を使用してブラダレス加硫し、比較例1では剛性強化環を使用しなかった。なお剛性強化環としては、ポリエステル繊維コード(総繊度2200dtex、撚り構造が46×46(2本撚り)であるコード)をタイヤ周方向に螺旋状にエンド数50本/50mmで巻回し天然ゴムで被覆し加硫した円筒形の環(直径570mm、厚さ2.3mm)を用いた。
【0035】
実施例1および比較例1においてブラダレス加硫により得られた空気入りタイヤの内面形状を目視観察した。実施例1で得られた空気入りタイヤは、タイヤ内面の形状が良好であり、トレッド部の溝やサイプの形態も良好であった。一方、比較例1で得られた空気入りタイヤは、タイヤ内面の形状が型で押し当られた良好な外観を示さず不揃いであり、トレッド部の溝やサイプの形態に欠陥が認められ、ビード部の形状が不揃いで凹凸のある状態であった。
【符号の説明】
【0036】
1 金型
2 剛性強化環
3 補強線材
4 未加硫ゴム
5 補強線材
T グリーンタイヤ
T1 トレッド部
T2 サイド部
T3 ビード部
図1
図2
図3