(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建屋の壁部に溶接付けされた短管を介して開閉可能な弁スプールを設置し、該弁スプールにシール部を介して遠隔操作可能な穿孔装置本体を設置する工程と、パージラインより窒素ガスを供給して前記短管内に窒素ガスを充填する工程と、前記弁スプールを開き先端にドリルが装着された穿孔装置の延長シャフトを前記弁スプールに挿通し、窒素ガスの供給を維持し仮設バウンダリを構築する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記延長シャフトを前記壁部迄挿入する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記穿孔装置を遠隔操作して、前記壁部に貫通孔を穿設する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記延長シャフトを引抜き前記弁スプールを閉塞する工程とを有し、前記延長シャフトを挿入する工程では、前記シール部に前記延長シャフトを挿入することで、該延長シャフトにより前記弁スプール内が気密に閉塞されることを特徴とする遠隔穿孔方法。
前記弁スプール内に窒素ガスを充填する工程の前に、前記壁部に下穴を穿設する工程を更に有し、該下穴を穿設する工程では、前記弁スプールに替えてガイド部を有するダミースプールが設置され、前記延長シャフトが前記ダミースプールに挿入されることで前記ガイド部に支持され、前記ドリルを前記壁部の穿孔位置まで導く請求項1の遠隔穿孔方法。
前記延長シャフトを引抜く工程では、該延長シャフトが前記シール部に挿入された状態で前記延長シャフトから前記穿孔装置本体を取外す工程と、取外した箇所から前記延長シャフトに追加シール部を挿入して前記シール部に固着する工程と、前記弁スプールの開閉を妨げない位置迄前記延長シャフトを引抜く工程と、前記弁スプールを閉塞する工程と、前記延長シャフトを前記シール部及び前記追加シール部より引抜く工程とを有する請求項1又は請求項2の遠隔穿孔方法。
遠隔操作により建屋の壁部に貫通孔を穿設する遠隔穿孔装置であって、先端にドリルが装着される延長シャフトと、遠隔操作により進退可能であると共に該延長シャフトが着脱される穿孔装置本体と、前記壁部に短管を介して取付けられる弁スプールと、前記短管内に窒素ガスを供給するパージラインと、前記弁スプールに固着され前記延長シャフトが挿入可能なシール部とを具備し、前記パージラインより窒素ガスが供給されている状態で、前記シール部に前記延長シャフトが挿入されることで該延長シャフトにより前記弁スプールが気密に封止され、該弁スプール内のバウンダリが確保されることを特徴とする遠隔穿孔装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子炉の建屋内でペネトレーションの閉止板に貫通孔を穿設する作業が要求される場合がある。この場合、ペネトレーションの近傍に穿孔装置を設置し、作業者が現場で切削作業を確認しながら作業し、貫通孔を穿設する。
【0003】
上記した貫通孔の穿設は、通常は簡易作業となる。然し乍ら、作業現場の周辺環境が過酷な場合、例えば過酷事故の発生時に於ける原子炉建屋内等の場合は、高線量環境下での作業が必要となる。
【0004】
この場合、現場で確認しながらの穿孔作業は被爆の危険性が大きくなる為、遠隔操作にて穿孔作業を行う、或は現場に遮蔽体を設置して被爆線量の低減を図る等の対策が必要となる。又、穿孔作業により貫通孔を穿設することで、それまで確保されていたバウンダリを一旦破壊することになる為、作業中の安全が確保できる様、仮設バウンダリを構築する必要がある。
【0005】
尚、特許文献1には、ペネトレーション外部に遮蔽箱を設置し、該遮蔽箱内部に先端に調査ビークルが接続された調査ケーブルの巻取り、送出しを制御するケーブルウインチが設置され、前記調査ビークルに穿孔治具を取付け、該穿孔治具により前記ペネトレーションに開放部を形成し、該開放部から前記ペネトレーション内に前記調査ビークルが挿入される調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、仮設バウンダリを確保しつつ既設のペネトレーションの閉止板等への穿孔作業を可能とする遠隔穿孔方法及び遠隔穿孔装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建屋の壁部に溶接付けされた短管を介して開閉可能な弁スプールを設置し、該弁スプールにシール部を介して遠隔操作可能な穿孔装置本体を設置する工程と、パージラインより窒素ガスを供給して前記短管内に窒素ガスを充填する工程と、前記弁スプールを開き先端にドリルが装着された穿孔装置の延長シャフトを前記弁スプールに挿通し、窒素ガスの供給を維持し仮設バウンダリを構築する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記延長シャフトを前記壁部迄挿入する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記穿孔装置を遠隔操作して、前記壁部に貫通孔を穿設する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記延長シャフトを引抜き前記弁スプールを閉塞する工程とを有する遠隔穿孔方法に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記弁スプール内に窒素ガスを充填する工程の前に、前記壁部に下穴を穿設する工程を更に有し、該下穴を穿設する工程では、前記弁スプールに替えてガイド部を有するダミースプールが設置され、前記延長シャフトが前記ダミースプールに挿入されることで前記ガイド部に支持され、前記ドリルを前記壁部の穿孔位置まで導く遠隔穿孔方法に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記延長シャフトを挿入する工程では、前記シール部に前記延長シャフトを挿入することで、該延長シャフトにより前記弁スプール内が気密に閉塞される遠隔穿孔方法に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記延長シャフトを引抜く工程では、該延長シャフトが前記シール部に挿入された状態で前記延長シャフトから前記穿孔装置本体を取外す工程と、取外した箇所から前記延長シャフトに追加シール部を挿入して前記シール部に固着する工程と、前記弁スプールの開閉を妨げない位置迄前記延長シャフトを引抜く工程と、前記弁スプールを閉塞する工程と、前記延長シャフトを前記シール部及び前記追加シール部より引抜く工程とを有する遠隔穿孔方法に係るものである。
【0012】
更に又本発明は、遠隔操作により建屋の壁部に貫通孔を穿設する遠隔穿孔装置であって、先端にドリルが装着される延長シャフトと、遠隔操作により進退可能であると共に該延長シャフトが着脱される穿孔装置本体と、前記壁部に短管を介して取付けられる弁スプールと、前記短管内に窒素ガスを供給するパージラインと、前記弁スプールに固着され前記延長シャフトが挿入可能なシール部とを具備し、前記パージラインより窒素ガスが供給されている状態で、前記シール部に前記延長シャフトが挿入されることで前記弁スプールが気密に封止され、該弁スプール内のバウンダリが確保される遠隔穿孔装置に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建屋の壁部に溶接付けされた短管を介して開閉可能な弁スプールを設置し、該弁スプールにシール部を介して遠隔操作可能な穿孔装置本体を設置する工程と、パージラインより窒素ガスを供給して前記短管内に窒素ガスを充填する工程と、前記弁スプールを開き先端にドリルが装着された穿孔装置の延長シャフトを前記弁スプールに挿通し、窒素ガスの供給を維持し仮設バウンダリを構築する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記延長シャフトを前記壁部迄挿入する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記穿孔装置を遠隔操作して、前記壁部に貫通孔を穿設する工程と、窒素ガスの供給を維持した状態で前記延長シャフトを引抜き前記弁スプールを閉塞する工程とを有するので、バウンダリを確保しつつ前記貫通孔を穿設可能であり、過酷事故等により建屋の内部に高線量物質が存在した場合であっても、高線量物質を前記仮設バウンダリ外に放出させることなく穿孔作業を行うことができる。
【0014】
又本発明によれば、遠隔操作により建屋の壁部に貫通孔を穿設する遠隔穿孔装置であって、先端にドリルが装着される延長シャフトと、遠隔操作により進退可能であると共に該延長シャフトが着脱される穿孔装置本体と、前記壁部に短管を介して取付けられる弁スプールと、前記短管内に窒素ガスを供給するパージラインと、前記弁スプールに固着され前記延長シャフトが挿入可能なシール部とを具備し、前記パージラインより窒素ガスが供給されている状態で、前記シール部に前記延長シャフトが挿入されることで前記弁スプールが気密に封止され、該弁スプール内のバウンダリが確保されるので、バウンダリを確保しつつ前記貫通孔を穿設可能であり、過酷事故等により建屋の内部に高線量物質が存在した場合であっても、高線量物質を外部に放出させることなく穿孔作業を行うことができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0017】
先ず、
図1、
図2に於いて、本発明の実施例に係る遠隔穿孔装置について説明する。尚、
図1、
図2中に示される遠隔穿孔装置1は、穿孔装置本体2に弁スプール3を取付けた状態となっている。又、
図1、
図2中、紙面に向って左側を前方、紙面に向って右側を後方とする。
【0018】
前記穿孔装置本体2には、延長シャフト4がチャック部5を介して装着可能となっており、前記延長シャフト4には、ドリル6がチャック部7を介して装着可能となっている。前記チャック部5と前記チャック部7とは同一形状となっている。又、前記穿孔装置本体2はモータ(図示せず)を有し、該モータを介して前記延長シャフト4、前記ドリル6を回転可能となっている。
【0019】
前記穿孔装置本体2は台座9上に設けられている。該台座9の下方にはボールローラ11が設けられ、前記穿孔装置本体2は前記ボールローラ11を介して任意の方向に移動可能となっている。又、該ボールローラ11には高さ調整ボルト12が設けられ、該高さ調整ボルト12は前記台座9を螺通し、前記高さ調整ボルト12により前記穿孔装置本体2の高さ位置を調整可能となっている。
【0020】
前記台座9上には前後方向(
図1中左右方向)に延びる下レール13が設けられている。該下レール13には該下レール13に沿って前後方向に摺動自在に下スライダ14が設けられ、前記穿孔装置本体2は前記下スライダ14に取付けられている。
【0021】
又、前記台座9の前側には、支持架台であるアトラフランジ16が前記台座9に対して垂直に立設されている。該アトラフランジ16の上方には、後方に向って突出する補強枠体17が設けられ、該補強枠体17の下端には上レール18が設けられている。該上レール18には前後方向に摺動自在に上スライダ19が設けられ、該上スライダ19の下側に前記穿孔装置本体2が取付けられており、前記上レール18により前記穿孔装置本体2の荷重が支持される。前記穿孔装置本体2は、前記下レール13及び前記上レール18にガイドされ、前後に移動可能となっている。
【0022】
前記補強枠体17には、ハンドル21が設けられている。該ハンドル21と前記上スライダ19との間には、適宜な動力伝達機構、例えばラックピニオンが設けられ、前記ハンドル21を回転することで、前記穿孔装置本体2が前記上レール18及び前記下レール13に沿って前後方向に移動する様になっている。又、前記動力伝達機構には、送りモータ(図示せず)が連結され、該送りモータを駆動することで、切削速度に対応して前記穿孔装置本体2を前進させる様になっている。この時、前記穿孔装置本体2は、前記上レール18と前記下レール13により上下で拘束されることで、ぶれることなく前後に移動する。又、前記アトラフランジ16にはストッパ22が設けられ、該ストッパ22により前記穿孔装置本体2の設定量以上の前方への移動が規制される様になっている。
【0023】
前記補強枠体17の内部には制御ユニット(図示せず)が設けられ、該制御ユニットは外部制御装置と通信可能な通信部を有している。前記制御ユニットは、前記モータ及び前記送りモータを駆動する。又、前記遠隔穿孔装置1から離れて外部制御装置が設置され、該外部制御装置により前記制御ユニットを介して前記モータ及び前記送りモータを駆動制御可能となっている。
【0024】
前記アトラフランジ16の前記穿孔装置本体2の対向する位置には、開口部23が形成され、該開口部23は前記穿孔装置本体2の回転軸心と同心となっている。又、前記アトラフランジ16には、前記開口部23の前方を覆う様シール部であるシールフランジ24が気密に固着されている。又、該シールフランジ24には、図示しないガスケットを挟込んでボルト締結することで前記弁スプール3が気密に固着されている。又、該弁スプール3には固着フランジ30を介して第1短管43が気密に固着されている。該第1短管43にはパージライン31が接続され、該パージライン31を介して前記第1短管43内に窒素ガスを供給可能となっている。
【0025】
尚、
図1中、26は原子炉格納容器等の建屋の壁部を示しており、27は該壁部26に設けられた既設のペネトレーションを示し、28は該ペネトレーション27を気密に閉止する閉止板を示し、前記ペネトレーション27及び前記閉止板28は前記壁部26の一部を構成している。又、
図1中、44は前記閉止板28に溶接付けされた第2短管を示し、25は接続継手を示しており、該接続継手25はボルト締結により前記第1短管43と前記第2短管44とを気密に接続可能、即ち前記閉止板28と前記弁スプール3との間を気密に封止可能となっている。
【0026】
前記弁スプール3は、例えばボールバルブであり、ハンドル29を回転させることで、前記弁スプール3内部の空間を閉塞可能となっている(
図2参照)。
【0027】
又、前記シールフランジ24には、前記延長シャフト4が挿入可能な孔(図示せず)が形成され、該孔にはシール部材としてのオイルシール24aが設けられている。前記孔に前記延長シャフト4が挿入されることで、挿入部は前記オイルシール24aによってシールされ、前記弁スプール3及び前記第1短管43、前記第2短管44内の空間が気密に封止される様になっている。
【0028】
尚、前記弁スプール3、前記延長シャフト4、前記第1短管43、前記第2短管44、前記接続継手25、前記パージライン31等により仮設バウンダリ32が構成される。
【0029】
図3中に示される前記遠隔穿孔装置1は、前記弁スプール3の代りに前記穿孔装置本体2にダミースプール33を取付けた状態を示している。
【0030】
該ダミースプール33は、前記閉止板28に穿設される下穴の精度向上の為のガイド部材となっている。前記ダミースプール33は、中心部に孔が突設された円板状の3枚のフランジ34a〜34cと、該フランジ34a〜34cを支持する棒状の支持部36とから構成され、前記弁スプール3よりも軽量となっている。
【0031】
前記フランジ34bの孔には、前記延長シャフト4をガイドするガイド部である軸受け37が設けられている。又、前記フランジ34aは前記シールフランジ24に固着可能となっており、前記フランジ34cは前記第1短管43の前記固着フランジ30に固着可能となっている。
【0032】
前記ダミースプール33を前記シールフランジ24と前記固着フランジ30とに固着し、前記延長シャフト4を前記フランジ34a〜34cに挿入する。挿入した状態では、前記延長シャフト4が前記軸受け37により支持され、前記延長シャフト4の撓みが抑制される様になっている。
【0033】
次に、前記遠隔穿孔装置1を用い、前記閉止板28に貫通孔38を穿設する場合について説明する。穿設の手順として、先ず前記ダミースプール33を用いて下穴を穿設し、その後前記ダミースプール33を前記弁スプール3に交換して前記貫通孔38を穿設する。
【0034】
先ず始めに、前記ダミースプール33を装着する。
図4に示される様に、前記第2短管44に前記第1短管43を突合わせ、前記接続継手25により気密に接続する。前記ペネトレーション27は前記閉止板28に気密に閉塞されており、前記ペネトレーション27のバウンダリは維持されている。
【0035】
次に、
図3に示される様に前記固着フランジ30と前記ダミースプール33の前記フランジ34cとをボルトによって固着し、前記ドリル6を装着した前記延長シャフト4を前記穿孔装置本体2に装着する。その後、前記延長シャフト4を前記フランジ34a〜34cに挿入し、前記シールフランジ24と前記ダミースプール33の前記フランジ34aとをボルトによって固着する。
【0036】
この状態で、前記ハンドル21を回転させ、前記穿孔装置本体2を前進させることで、前記延長シャフト4が前記軸受け37にガイドされ、前記ドリル6を前記閉止板28の所望の穿孔位置へと導くことができる。
【0037】
前記ドリル6の位置合せをした後、前記上レール18、前記上スライダ19間を固定する。前記モータ(図示せず)を駆動し、前記外部制御装置から前記制御ユニットを介して前記送りモータを駆動し、前記穿孔装置本体2を前進させ、前記閉止板28に下穴(図示せず)を穿設する。該下穴の深さは、例えば前記閉止板28の板厚の半分となる様設定される。この時、前記穿孔装置本体2の移動量は、前記ストッパ22により規制され、設定した深さ以上に下穴が穿設されない様になっている。又この時、前記延長シャフト4が前記軸受け37により支持され、下穴を穿設する際に前記ドリル6がぶれない様になっている。
【0038】
下穴の穿設後、前記穿孔装置本体2を後退させ、前記モータを停止し、前記シールフランジ24と前記フランジ34aとを取外した後、前記フランジ34a〜34cから前記延長シャフト4を抜脱する。更に、前記固着フランジ30と前記フランジ34cとを取外し、前記ダミースプール33を取除く。この状態では、前記閉止板28には前記貫通孔38が形成されておらず、前記ペネトレーション27内のバウンダリは維持されている。
【0039】
その後、前記弁スプール3を装着する。前記固着フランジ30と前記弁スプール3とをボルトにより気密に固着し、該弁スプール3と前記シールフランジ24とをボルトにより気密に固着し、前記ハンドル29を介して前記弁スプール3を閉止する。
【0040】
続いて、前記パージライン31を介して窒素ガスを供給し、前記弁スプール3と前記閉止板28との間の空間に窒素ガスを充填し、各部材の固着面からの漏洩がないかどうかを確認する。
【0041】
更に、前記延長シャフト4の先端を前記シールフランジ24の孔に挿入し、窒素ガスの供給を維持した状態で、前記弁スプール3を開放し、前記延長シャフト4を更に挿入して前記ドリル6の先端を下穴に挿入する。この状態では、前記シールフランジ24と前記延長シャフト4との間は気密にシールされ、前記弁スプール3及び前記第1短管43、前記第2短管44内は気密に封止され、前記仮設バウンダリ32が構築されている。
【0042】
次に、前記遠隔穿孔装置1から離れた位置に設置された前記外部制御装置(図示せず)より、前記制御ユニットを介して前記送りモータ、及び前記モータの駆動を制御し、前記遠隔穿孔装置1を遠隔操作する。
【0043】
遠隔操作により、前記ドリル6を回転させ、前記穿孔装置本体2を前進させて、前記閉止板28に前記貫通孔38を穿設する。尚、前記貫通孔38が穿設されたかどうかは、前記ドリル6に掛る負荷を検出することにより、例えば前記モータに印加する電流値等の信号により制御室から確認することができる。
【0044】
前記貫通孔38の穿設が完了すると、前記延長シャフト4の先端が前記弁スプール3内に残る位置まで前記穿孔装置本体2を後退させた後、前記延長シャフト4を前記穿孔装置本体2から取外し、前記台座9を移動させて前記穿孔装置本体2を取除く。
【0045】
この時、前記延長シャフト4が封止栓として機能し、該延長シャフト4と前記シールフランジ24との間が気密に封止される。又、前記パージライン31より供給される窒素ガスにより、前記仮設バウンダリ32内の圧力が前記ペネトレーション27内の圧力よりも高くなっているので、前記仮設バウンダリ32によりバウンダリが維持されている。
【0046】
次に、
図5に示される様に、前記シールフランジ24と同等の追加シール部である追加シールフランジ39を後方から前記延長シャフト4に挿入し、図示しないガスケットを挟込んでボルト締結することで、前記シールフランジ24と前記追加シールフランジ39とを気密に固着する。該追加シールフランジ39には、前記延長シャフト4が挿入可能な孔(図示せず)が形成され、該孔にはシール部材としてのオイルシール39aが設けられている。前記孔に前記延長シャフト4が挿入されることで、挿入部が前記オイルシール39aによってシールされる。
【0047】
前記追加シールフランジ39の設置後、前記延長シャフト4の先端を前記弁スプール3の開閉を妨げない位置迄、即ち前記シールフランジ24、或は追加シールフランジ39迄引抜く。該追加シールフランジ39が設けられることで、前記ドリル6の軸長が前記シールフランジ24の厚みよりも長い場合であっても前記仮設バウンダリ32が維持される。
【0048】
続いて、前記弁スプール3を閉止し、前記パージライン31からの窒素ガスの供給を停止し、バウンダリを維持した状態で前記延長シャフト4を完全に引抜き、更に前記追加シールフランジ39、前記シールフランジ24を取外す。
【0049】
最後に、
図6に示される様に、前記弁スプール3に閉止板41を気密に固着して前記弁スプール3及び前記第1短管43、前記第2短管44内を気密に封止し、更に前記弁スプール3の自重を支持する支持部42を設置することで、前記遠隔穿孔装置1を用いた前記閉止板28への穿孔作業が完了する。
【0050】
穿孔作業の完了後は、前記閉止板41を取外し、前記弁スプール3に観測機器を気密に固着し、窒素ガスを供給した状態で前記弁スプール3を開放することで、観測機器を前記弁スプール3を通して建屋内に挿入することができ、バウンダリを維持しつつ建屋内の観測を行うことができる。
【0051】
上述の様に、本実施例では、前記第1短管43、前記第2短管44、前記接続継手25、前記弁スプール3、前記シールフランジ24及び該シールフランジ24に挿入された前記延長シャフト4により前記仮設バウンダリ32を構成し、該仮設バウンダリ32によりバウンダリを確保できるので、バウンダリを確保しつつ前記貫通孔38を穿設可能となっている。従って、過酷事故等により建屋の内部に高線量物質が存在した場合であっても、高線量物質を前記仮設バウンダリ32外に放出させることなく穿孔作業を行うことができる。
【0052】
又、前記パージライン31を介して前記仮設バウンダリ32内に窒素ガスを供給し、前記仮設バウンダリ32内を前記ペネトレーション27内よりも高圧にしているので、該ペネトレーション27内から前記貫通孔38を介して前記仮設バウンダリ32内に高線量物質が浸入するのを防止することができる。
【0053】
又、前記延長シャフト4を引抜く際に、前記追加シールフランジ39を追加することで、前記シールフランジ24及び前記追加シールフランジ39と前記延長シャフト4との間をシールした状態で、該延長シャフト4を前記弁スプール3の開閉を妨げない位置迄引抜くことができるので、前記ドリル6の軸長が前記シールフランジ24の厚みよりも長い場合であっても、バウンダリを損なうことなく維持することができる。尚、前記追加シールフランジ39については、前記ドリル6の軸長(工具長)に合わせて厚み、枚数等が設定される。
【0054】
又、下穴加工の際には、前記第1短管43と前記シールフランジ24との間にダミースプール33を設け、前記延長シャフト4が前記軸受け37により支持されるので、前記延長シャフト4の撓みが抑制され、容易に前記ドリル6の位置合せを行うことができ、又下穴加工の際の前記ドリル6のぶれが防止でき、加工精度を向上させることができる。
【0055】
更に、下穴加工後には、遠隔操作により前記穿孔装置本体2を駆動させ、前記貫通孔38を穿設するので、作業者が現場で直接該貫通孔38を穿設する必要がなく、該貫通孔38の穿設後に前記弁スプール3及び前記第1短管43、前記第2短管44内から漏洩があった場合でも、作業者の被爆を防止できる。
【0056】
尚、本実施例では、バウンダリを確保しつつ、原子炉格納容器の前記ペネトレーション27や配管に、前記貫通孔38を穿設する場合について説明しているが、有毒ガスのタンク等、穿孔作業の際にバウンダリの確保が必要なものであれば他のものにも適用可能であるのは言う迄もない。
【0057】
又、本実施例では、前記ドリル6の軸長に合わせて前記追加シールフランジ39の枚数、厚みを調整する様にしているが、該追加シールフランジ39を後方に突出する円筒部を有する形状とし、該円筒部にオイルシールを設けてもよい。該円筒部を設けることで、前記ドリル6の軸長が長い場合であっても前記追加シールフランジ39を更に追加することなくバウンダリを維持することができる。
【0058】
又、本実施例では、前記ペネトレーション27を気密に閉塞する前記閉止板28に対して前記貫通孔38を穿設する場合について説明しているが、前記閉止板28に既に穿設された既設貫通孔を拡大する場合にも、本実施例の前記遠隔穿孔装置1が適用可能である。
【0059】
具体的には、前記貫通孔38を穿設する場合と同様、先ず前記仮設バウンダリ32を設置し、該仮設バウンダリ32によりバウンダリを確保しつつ閉止プラグを既設貫通孔に押込み、既設貫通孔を閉塞する。
【0060】
既設貫通孔の閉塞後は、前記遠隔穿孔装置1により閉止プラグごと貫通孔を穿設することで、既設貫通孔を拡大することができる。既設貫通孔の拡大後については、前記貫通孔38を穿設する場合と同様である。