(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窓支持部材は、前記内部リング部が、前記窓部材よりも光放射方向前方において窓部材の半径方向の内方または外方に向かって折り曲げられた形状の前縁部分を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような問題を解決するために、例えば窓支持部材の内部リング部の光放射方向先端を窓部材よりも光放射方向前方に突出させたものとして放電ランプを構成することが考えられる。このような放電ランプによれば、窓部材を下に向けて卓上に載置させた場合にも、窓支持部材の内部リング部の光放射方向先端が卓上に接することから、当該窓部材にキズが付くことを防止することができる。
【0008】
しかしながら、このような構造を有するショートアーク型放電ランプにおいては、特に、窓部材として、例えば面取り加工などによって表面と外周面との間に斜面が形成されたものを用いた場合に、窓部材と窓支持部材との接着部分(接合部分)に必要とされる十分な耐圧性が得られなくなる、あるいは窓部材にクラックが生じる、という問題があることが明らかとなった。
これらの問題が生じる理由について、具体的に説明する。
窓組立体の製造過程においては、窓部材がサファイアよりなるものであり、窓支持部材がコバールなどの金属よりなるものであることから、窓部材の外周面をメタライズ加工した後、当該窓部材の外周面と窓支持部材の内部リング部の内周面との間にロウ材を導入し、当該ロウ材よりなる接着層を形成することにより、両者を接着している。
而して、窓部材が斜面を有するものである場合には、外周面の面積が小さくなり、よって窓部材における窓支持部材との接着に利用される領域の面積が小さくなる。そのため、窓部材と窓支持部材との接着部分(接合部分)の耐圧性が小さくなる。
また、窓支持部材が窓部材よりも光放射方向前方に突出する構造を有する場合には、
図6に示されるように、窓組立体の製造時に、導入されたロウ材が窓支持部材75に沿って窓部材70の外表面(光出射面)側に流れ込んでしまう場合がある。ロウ材が外表面側に流れ込んだ状態の接着層73を有する放電ランプを点灯した場合には、窓支持部材75における窓部材70に近接した部位が放電空間の内圧を受けるため、窓部材70に対して、ロウ材よりなる接着層73を介して引張応力がかかる。そのため、窓部材70の斜面にクラックCが生じると推察される。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、窓部材にキズやクラックが生じることが抑止され、当該窓部材と窓支持部材との接着部分に高い耐圧性が得られるショートアーク型放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のショートアーク型放電ランプは、前面に凹所を有し、当該凹所の内表面に反射面が形成された胴体と、
当該胴体の反射面に囲まれて形成される放電空間において互いに対向して配置された陰極および陽極と、
前記胴体の光放射方向前方に陰極給電用の金属リングを介して配置された、前記胴体における凹所の開口を塞ぐための窓部材と、
前記窓部材の外周面がロウ材によって固定される筒状の内部リング部、当該内部リング部よりも大径の筒状の外部リング部、および、当該内部リング部と外部リング部とを繋ぎ、前記金属リングに密接される連結部を有する断面U字状のリング形状の窓支持部材とを備えるショートアーク型放電ランプにおいて、
前記窓部材は、外表面と外周面とが斜面を介して連続したものであり、外表面のレベル位置が、前記窓支持部材の光放射方向先端のレベル位置よりも光放射方向後方のレベル位置になるように配設されており、
前記窓部材と前記内部リング部との間には、その全周にわたって、前記ロウ材よりなる接着層が、当該窓部材の外周面の全面
及び前記斜面における当該外周面に連続する外周面側領域の一部
のみを覆うように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のショートアーク型放電ランプにおいては、前記窓支持部材は、前記内部リング部が、前記窓部材よりも光放射方向前方において窓部材の半径方向の内方または外方に向かって折り曲げられた形状の前縁部分を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のショートアーク型放電ランプにおいては、窓部材が、外表面のレベル位置が窓支持部材の光放射方向先端のレベル位置よりも光放射方向後方のレベル位置になるように配設されている。そのため、窓部材が光放射方向前方に突出していないので、ショートアーク型放電ランプを、当該窓部材を下に向けて卓上などに載置させたときにも、当該窓部材にキズが付きにくい。
また、本発明のショートアーク型放電ランプにおいては、窓部材が、外表面と外周面とが斜面を介して連続したものとされており、また窓部材と窓支持部材との間において、接着層が、当該窓部材の外周面の全面と斜面の一部
のみを覆うように形成されている。そのため、窓部材と窓支持部材との接着部分(接合部分)が高い耐圧性を有するものとなり、また放電ランプを点灯したときに、窓部材に対して、接着層を介して引張応力が負荷されることが抑制されるので、当該窓部材にクラックが生じることが抑止される。
従って、本発明のショートアーク型放電ランプによれば、窓部材にキズやクラックが生じることが抑止され、当該窓部材と窓支持部材との接着部分に高い耐圧性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のショートアーク型放電ランプの実施の形態について説明する。
図1は、本発明のショートアーク型放電ランプの構成の一例を示す説明用断面図であり、
図2は、
図1のショートアーク型放電ランプの窓組立体を部分的に拡大して示す説明用断面図である。また、
図3は、
図2の窓組立体の接着層を、窓部材および窓支持部材と共に部分的に拡大して示す説明用断面図である。
この放電ランプ(ショートアーク型放電ランプ)10は、外観形状が円柱状であって、前面(
図1における上面)に凹所を有し、当該凹所の内表面に反射面20aが形成された胴体20を備えている。この胴体20の光放射方向前方(
図1における上方)には、リング形状の窓支持部材35に支持された窓部材30が、胴体20における凹所の円状の開口よりなる前面開口20bを塞ぐように設けられている。この窓部材30は、周縁部31が接着剤によって窓支持部材35に接着されて支持固定されており、当該窓部材30と窓支持部材35との間には、当該接着剤よりなる接着層40が形成されている。このようにして、窓部材30と窓支持部材35とによって窓組立体36が構成されており、この窓組立体36と胴体20との間においては、反射面20aに囲まれて形成される放電空間Sが気密状態とされている。この放電空間Sには、ロッド状の陰極12およびロッド状の陽極13よりなる一対の電極が、反射面20aの光軸に沿って互いに離間して対向するように近接配置されている。この陰極12と陽極13との間には、反射面20aの焦点が位置している。陰極12は、放電空間Sに配設された導電性支持部材27によって支持されており、この導電性支持部材27、胴体20の円環状の前端面上に配設された金属リング25および窓支持部材35を介して外部給電部材(図示省略)に電気的に接続される。陽極13は、胴体20の後面開口20cから導出されて外部給電部材に電気的に接続される。また、放電空間Sには、例えばキセノンガスなどの不活性ガスが封入されている。
また、胴体20の光放射方向後方(
図1における下方)には、金属ブロック15が配設されており、この金属ブロック15により、胴体20および陽極13が支持固定されている。
【0015】
窓部材30は、胴体20の前面開口20bを塞ぐためのものであり、例えば円盤状を有し、サファイアなどの光透過性材料よりなる。
この窓部材30は、
図1に示されているように、窓支持部材35と共に前面開口20bを塞ぐことができるよう、前面開口20bよりも小径であって、反射面20aの前端縁21aによって構成される開口(以下、「反射面開口」ともいう。)に適合した形状を有するものであることが好ましい。
また、窓部材30の厚みは、2.5〜5.0mmであることが好ましい。
この図の例において、窓部材30は、前面開口20bの開口径よりも小径であって反射面開口の開口径と略同等の外径を有するものであり、前面開口20bの光放射方向前方において、反射面開口と対向するように配置されている。
【0016】
また、窓部材30は、
図2および
図3に示されているように、表面と外周面31aとが斜面31b,31cを介して連続したものである。
具体的に説明すると、窓部材30には、外表面(光出射面)(
図1における上面)と外周面31aとの間に、その全周にわたって、窓部材30の半径方向外方に傾斜する斜面31bが形成されている。また、窓部材30における内表面(
図1における下面)と外周面31aとの間には、その全周にわたって、窓部材30の半径方向外方に傾斜する斜面31cが形成されている。そして、窓部材30においては、外周面31aと2つの斜面31b,31cとにより、当該窓部材30の周縁部31が構成されている。
この図の例において、窓部材30には、面取り加工がなされることによって斜面31b,31cが形成されている。
【0017】
斜面31b,31cにおいては、窓部材30の厚み方向の寸法Tが、窓部材30の厚み3mmに対して0.2〜0.5mmであることが好ましい。すなわち、斜面31b,31cは、窓部材30の厚みに対する、当該窓部材30の厚み方向の寸法Tの比が、0.07〜0.17であることが好ましい。
【0018】
窓支持部材35は、例えばコバールなどの金属よりなり、窓部材30の外径に適合した内径の筒状の内部リング部35a、当該内部リング部35aよりも大径の筒状の外部リング部35b、および、これらを繋ぐ連結部35cを有し、断面U字状のリング形状のものである。
この図の例において、窓支持部材35は、円環状の形状を有しており、外部リング部35bは、胴体20の外径と略同等の外径を有している。すなわち、窓組立体36が胴体20の外径と略同等の外径を有するものとされている。
【0019】
窓支持部材35においては、
図1および
図2に示されているように、内部リング部35aに、窓部材30よりも光放射方向前方において当該窓部材30の半径方向内方または半径方向外方に向かって折り曲げられた形状の前縁部分35dが形成されていることが好ましい。また、前縁部分35dは、窓部材30に接触しない状態とされることが好ましい。
内部リング部35aに前縁部分35dが形成されていることによれば、窓部材30を後述する所望の状態で配設することができると共に、窓支持部材35に大きな強度が得られて、当該窓支持部材35が変形しにくいものとなる。また、前縁部分35dが窓部材30に接触しない状態とされることによれば、窓支持部材35からの応力が窓部材30に直接的に加えられることが抑止される。
この図の例において、前縁部分35dは、窓部材30の半径方向内方に向かって折り曲げられた形状を有するものである。また、前縁部分35dは、窓部材30から出射された光の進行を阻害することのないように、当該前縁部分35dにおける内径が反射面開口の開口径と略同等とされている。
【0020】
このような構成の窓支持部材35は、内部リング部35aを形成するための素材(金属素材)に対して曲げ加工を行うことによって前縁部分35dを形成する工程を経ることにより、製造することができる。
【0021】
そして、窓支持部材35においては、内部リング部35aの内周面に包囲された空間内に窓部材30が嵌め込まれ、当該内周面と窓部材30との間に接着剤が導入されて接着層40が形成されることにより、当該窓部材30が支持固定されている。
このようにして窓支持部材35に支持固定された窓部材30は、外表面のレベル位置が、窓支持部材35の光放射方向先端のレベル位置よりも光放射方向後方のレベル位置になるように配設されている。すなわち、窓組立体36においては、窓支持部材35の光放射方向先端が、窓部材30の外表面よりも光放射方向前方に位置している。
窓部材30の外表面のレベル位置が窓支持部材35の光放射方向先端のレベル位置よりも光放射方向後方のレベル位置であることにより、窓部材30が前方に突出していないため、放電ランプ10を、窓部材30を下に向けて卓上などに載置させたときにも、当該窓部材30にキズが付きにくい。
この図の例において、窓支持部材35の光放射方向先端は、前縁部分35dによって構成されている。
【0022】
また、窓支持部材35は、胴体20の外径および外部リング35bの外径に適合する内径を有する筒状の金属筒体28により、連結部35cの光放射方向後方側の表面が金属リング25の光放射方向前方側の表面に密接した状態、すなわち電気的に接続された状態で胴体20に固定されている。具体的には、外部リング35bの外周面の全面と金属筒体28の内周面における光放射方向前方側部分とが溶接され、胴体20の外周面における光放射方向前方側部分と金属筒体28の内周面における光放射方向後方側部分とが接着剤によって接着されることにより、窓支持部材35が胴体20に固定されている。ここに、接着剤としては、銀ロウなどのロウ材が用いられる。このようにして、窓部材30を支持した状態の窓支持部材35、すなわち窓組立体36が胴体20に固定されることにより、放電空間Sの気密状態が保たれている。
金属筒体28は、例えばコバールなどからなるものである。
【0023】
接着層40は、窓部材30の周縁部31と内部リング部35aの内周面との間の全周にわたって、窓部材30の厚み方向に伸びるように形成されており、環形状を有するものである。
この図の例において、接着層40は、円環状の形状を有している。
【0024】
この接着層40は、窓部材30の外周面31aの全面
及び斜面31b,31cにおける当該外周面31aに連続する外周面側領域の一部
のみを覆うように形成されている。
すなわち、接着層40は、外周面31aの全面と斜面31b,31cとを連続的に覆い、斜面31b,31cの各々において、当該斜面31b,31cの面積に対する、接着層40に覆われている領域の面積の割合Xが、下記の関係式(1)を満たすように形成されたものであり、好ましくは下記の関係式(2)を満たすように形成されたものである。
【0025】
関係式(1):0%<X<100%
関係式(2):30%≦X≦60%
【0026】
具体的に説明すると、接着層40は、窓部材30の周縁部31における、斜面31bの一部、外周面31aの全面、および斜面31cの一部にわたる、当該窓部材30の厚み方向に伸びる領域
のみを連続して覆うように形成されている。
すなわち、
図3に示されているように、接着層40の光放射方向前方側の端部における内方側(窓部材30側)の周縁41aが、斜面31b上に位置しており、当該周縁41aのレベル位置が、窓部材30の外表面の外周縁32aのレベル位置よりも光放射方向後方に位置している。また、接着層40の光放射方向後方側の端部における内方側(窓部材30側)の周縁が、斜面31c上に位置しており、当該周縁のレベル位置が、窓部材30の内表面の外周縁のレベル位置よりも光放射方向前方に位置している。
【0027】
接着層40が外周面31aの全面と共に斜面31b,31cの一部
のみを覆うように形成されたものであることにより、窓部材30と窓支持部材35との接着部分(接合部分)に高い耐圧性が得られ、また窓部材30におけるクラックの発生が抑制される。
一方、接着層が斜面31b,31cに形成されておらず、外周面31aのみに形成されている場合、すなわち割合Xが0%である場合には、窓部材30と窓支持部材35との接着部分(接合部分)に十分な耐圧性が得られず、放電ランプが破損するおそれがある。また、接着層が外周面31aの全面および斜面31b,31cの全面に形成されている場合、すなわち割合Xが100%である場合には、窓部材30に対して、接着層を介して引張応力が負荷されやすくなるため、窓部材30にクラックが生じ、その結果、放電ランプが破損するおそれがある。
【0028】
また、
図3に示されているように、接着層40において、光放射方向前方側の端部における外方側(窓支持部材35側)の周縁41bは、窓支持部材35における斜面31bに対向する領域内に位置しており、当該周縁41bのレベル位置が、窓部材30の外表面の外周縁32aのレベル位置よりも光放射方向後方に位置していることが好ましい。また、接着層40の光放射方向後方側の端部における外方側(窓支持部材35側)の周縁は、窓支持部材35における斜面31cに対向する領域内に位置しており、当該周縁のレベル位置が、窓部材30の内表面の外周縁のレベル位置よりも光放射方向前方に位置していることが好ましい。
接着層40の窓支持部材35側の周縁が上記のように位置していることによれば、窓部材30に対して、接着層40を介して引張応力が負荷されることをより抑制することができるため、窓部材30におけるクラックの発生をより一層抑制できる。
【0029】
接着層40を構成する接着剤としては、窓部材30と窓支持部材35との接着方法(接合方法)に応じて、銀ロウ、活性金属ロウなどのロウ材が適宜に用いられる。
そして、接着層40を構成する接着剤として銀ロウが用いられている場合には、
図3に示されているように、窓部材30と窓支持部材35との接着性(接合性)の観点から、窓部材30の周縁部31にメタライズ加工が施されることにより、窓部材30と接着層40との間に金属層45が設けられる。すなわち、窓部材30と接着層40との間には金属層45が介在している。具体的には、窓部材30の周縁部31においては、その全周にわたって、接着層40によって覆われている領域全域であって、斜面31bの一部、外周面31aの全面、および斜面31cの一部にわたる、窓部材30の厚み方向に連続して伸びる領域
のみが、金属に被覆されている。
この図の例において、金属層45は、窓部材30の周縁部31に形成されたメタライズ層と、当該メタライズ層に積層されたニッケルメッキ層によって構成されている。
【0030】
窓部材30と窓支持部材35との接着方法、すなわち窓組立体36の製造方法としては、Mo−Mnメタライズ法および融解チタンメタライズ法等のメタライズ法を用いる手法、並びに活性金属法を用いる手法などが挙げられる。これらのうちでは、作業の自動化が容易である点、製造ばらつきの発生が少ない点、およびロウ付け作業を種々の環境下で行うことができる点などから、Mo−Mnメタライズ法を用いる手法が好ましい。
【0031】
具体的に、Mo−Mnメタライズ法を用いて窓組立体36を製造する手法においては、例えば、先ず、窓部材30の周縁部31における窓支持部材35と接着すべき領域に、モリブデンとモリブデン酸化物およびマンガンとマンガン酸化物の混合粉末を塗布し、その塗膜を湿潤水素雰囲気において温度1500℃の条件で焼成することにより、メタライズ層を形成する。次いで、得られたメタライズ層上にニッケルメッキ層を形成した後、窓部材30におけるメタライズ層とニッケルメッキ層とよりなる金属層45が形成された領域と窓支持部材35とをロウ付けする。以って、窓組立体36が製造される。
また、融解チタンメタライズ法を用いて窓組立体36を製造する手法においては、例えば、先ず、窓部材30の周縁部31における窓支持部材35と接着すべき領域に、チタン含有ペーストを塗布し、その塗膜を真空雰囲気において温度1000℃以上の条件で焼成することにより、メタライズ層を形成する。次いで、得られたメタライズ層上にニッケルメッキ層を形成した後、窓部材30におけるメタライズ層とニッケルメッキ層とよりなる金属層45が形成された領域と窓支持部材35とをロウ付けする。以って、窓組立体36が製造される。
また、活性金属法を用いて窓組立体36を製造する手法においては、例えば、窓部材30の周縁部31における窓支持部材35と接着すべき領域と窓支持部材35とを、活性金属ロウ(具体的には、例えばチタンやジルコニウムなどの金属が含有されたロウ)を用いてロウ付けする。以って、窓組立体36が製造される。
【0032】
金属リング25は、放電空間Sにおいて、胴体20の光放射方向前方、具体的には胴体20の前端面と窓支持部材35との間に配設され、例えばコバールなどからなり、陰極用給電部材として機能するものである。
この金属リング25は、内周面において導電性支持部材27に電気的に接続されており、また光放射方向前方側の表面において窓支持部材35を介して金属筒体28に電気的に接続されている。このようにして、金属リング25は、導電性支持部材27を介して陰極12に電気的に接続されていると共に、窓支持部材35および金属筒体28を介して外部給電部材に電気的に接続されている。
また、金属リング25の外径は、
図1に示されているように、当該金属リング25の外周面と金属筒体28の内周面との間に、その全周にわたって間隙が形成されるよう、金属筒体28の内径よりも僅かに小径であることが好ましい。
また、金属リング25の内径は、
図1に示されているように、当該金属リング25によって光の進行が阻害されることのないよう、反射面開口の開口径および窓部材30の外径と略同等であることが好ましい。
この図の例において、金属リング25は、胴体20の前端面上に、セラミックスペーサリング26を介して配置されている。すなわち、胴体20の前端面には、セラミックスペーサリング26と金属リング25とがこの順に重ねられた状態で配置されている。セラミックスペーサリング26は、金属リング25の内径よりも僅かに大径であって、前面開口20bの開口径よりも僅かに小径の内径を有するものであり、その外周面が金属筒体28の内周面と密着した状態とされている。
【0033】
胴体20は、多結晶アルミナ(Al
2 O
3 )等のセラミックなどの絶縁部材よりなり、凹状に湾曲した反射面20aを内部に有する反射部21と、反射部21の光放射方向後方側に連続して反射面20aの光軸方向外方に伸びる後方円筒部22とを有する基材により構成されている。
この図の例において、胴体20を構成する基材は、多結晶アルミナよりなり、反射部21の光放射方向前方側に連続して反射面20aの光軸方向外方に伸びる前方円筒部23を有するものである。この前方円筒部23と金属リング25とセラミックスペーサリング26とにより、放電空間Sにおいて、反射面開口の光放射方向前方に、導電性支持部材27を収容するための領域が形成されている。また、前方円筒部23における光放射方向前方の内端縁により、胴体20の前面開口20bが構成されている。
【0034】
反射面20aは、凹状に湾曲した形状を有するものであり、具体的には、例えば回転放物面状、回転楕円面状、非球面状を有するものとすることができる。
また、反射面20aは、銀やアルミニウムなどによる金属蒸着膜や、誘電体多層膜によって形成されている。
【0035】
また、胴体20の外周面においては、金属筒体28および後述の金属筒体29と接着剤によって接着される領域に、メタライズ加工が施されている。
【0036】
金属ブロック15は、胴体20に接する大径部15bが当該胴体20の外径と同等の外径を有するものであり、電気伝導性および熱伝導性の観点から、コバールよりなることが好ましい。
この金属ブロック15には、後面方開口20cを介して後方円筒部22の内部に連通し、光放射方向に貫通する貫通孔15aが形成されている。この貫通孔15aは、陽極13を支持固定することができるよう、陽極13の外径に適合する内径を有するものである。
この図の例において、金属ブロック15は、胴体20の外径と同等の外径の大径部15bと、この大径部15bよりも小径の外径の小径部15cとを有するものである。
【0037】
金属ブロック15には、胴体20の外径および金属ブロック15の大径部15bの外径に適合する内径を有する筒状の金属筒体29により、胴体20が固定されている。具体的には、大径部15bの外周面の全面と金属筒体29の内周面における光放射方向後方側部分とが溶接され、胴体20の外周面における光放射方向後方側部分と金属筒体29の内周面における光放射方向前方側部分とが接着剤によって接着されることにより、胴体20が金属ブロック15に固定されている。ここに、接着剤としては、銀ロウなどのロウ材が用いられる。このようにして、胴体20の後面開口20cが、僅かな間隙を介して、陽極13を支持した状態の金属ブロック15によって密閉されている。
金属筒体29は、例えばコバールなどからなるものである。
【0038】
陰極12は、易電子放出物質を含むタングステン等の高融点金属よりなり、先端に向かって小径となるテーパー状の先端部を有する棒状のものである。
この陰極12は、基端部において、導電性支持部材27によって支持されている。
この図の例において、陰極12は、金属リング25の周上に略等間隔で設けられた3本の導電性支持部材27によって支持されている。
【0039】
導電性支持部材27は、例えば耐熱性と溶接性とを考慮したモリブデンなどからなり、放電空間Sにおいて、金属リング25の半径方向内方に伸びるよう配置されている。
この導電性支持部材27において、先端部は陰極12の基端部にロウ付け等によって溶接されており、基端部はロウ付け等によって金属リング25に固定されている。このようにして、陰極12が、導電性支持部材27によって支持固定され、この導電性支持部材27、金属リング25および金属筒体28により、放電空間Sの気密性を保った状態で外部給電部材に電気的に接続されている。
【0040】
陽極13は、タングステン等の高融点金属よりなる略柱状のものである。
この陽極13は、その基端部が、後方円筒部22内を挿通し、金属ブロック15の貫通孔15aに嵌挿されることによって支持固定されおり、また金属ブロック15によって放電空間Sの気密性を保った状態で外部給電部材に電気的に接続されている。
【0041】
この放電ランプ10は、放電空間Sに20MPaの静圧力でキセノン等の不活性ガスが充填されており、定格電流20A、消費電力が300Wのものである。
【0042】
また、放電ランプ10の寸法の一例は以下の通りである。
胴体20においては、全長が20mm、外径が32mmである。
陰極12においては、全長が14mm、ロッド径が1.5mm、先端のテーパー角が50°であり、また陽極13においては、全長が23mm、直径が4mmである。また、陽極13と陰極12との電極間距離は1.4mmである。
窓部材30においては、外径が25.4mm、厚みが3mm、斜面31b,31cの各々における厚み方向の寸法Tが0.3mm、斜面31b,31cの各々における接着層40に覆われている領域の面積の割合Xが50%である。また、窓部材30の、窓支持部材35の光放射方向先端からの距離は0.7mmである。
窓支持部材35においては、高さhが5.65mmであり、外部リング部の外径が31.5mm、内部リング部の外径が26.7mm、厚みwが0.6mm、前縁部分35dの曲げ加工半径Rが0.5〜1.2mm、前縁部分35dの幅zが0.2mmである。また、窓部材30の外表面(光出射面)と窓支持部材35の前縁部分35dの内面との距離dは0.05mmである。
【0043】
以上のような放電ランプ10においては、窓部材30が、外表面のレベル位置が窓支持部材35の光放射方向先端のレベル位置よりも光放射方向後方のレベル位置になるように配設されている。そのため、窓部材30が光放射方向前方に突出していないので、放電ランプ10を、窓部材35を下に向けて卓上などに載置させたときにも、当該窓部材35にキズが付きにくい。
また、放電ランプ10においては、窓部材30が、表面(外表面および内表面)と外周面31aとが斜面31b,31cを介して連続したものとされており、また接着層40が、金属層45を介して窓部材30における外周面31aの全面と斜面31b,31cの各々の一部
のみを覆うように形成されている。そのため、窓部材30と窓支持部材35との接着部分(接合部分)が高い耐圧性を有するものとなり、また放電ランプ10を点灯したときに、窓部材30に対して、接着層40を介して引張応力が負荷されることが抑制されるので、当該窓部材30にクラックが生じることが抑止される。
従って、放電ランプ10によれば、窓部材30にキズやクラックが生じることが抑止され、窓部材30と窓支持部材35との接着部分に高い耐圧性が得られる。そして、放電ランプ10は、窓部材30と窓支持部材35との接着部分が高い耐圧性を有することから、放電空間Sの内圧を高くすることができる。
【0044】
また、放電ランプ10においては、窓支持部材35の内部リング部35aが、窓部材30よりも前方において窓部材30の半径方向の内方に向かって折り曲げられた形状の前縁部分35dを有している。そのため、窓支持部材35に大きな強度が得られることから、当該窓支持部材35が変形しにくいものとなる。その結果、放電ランプ10を点灯したときに窓部材30に負荷される引張応力を低減することができることから、窓部材30にクラックが生じることを、より一層抑止することができる。また、放電空間Sの内圧をより高くすることができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、窓支持部材の前縁部分は、
図1および
図2に示したように窓部材30の半径方向の内方に向かって折り曲げられたものに限定されず、
図4に示すように、窓部材30の半径方向の外方に向かって折り曲げられた形状のものであってもよい。
また、窓組立体においては、窓部材が、外表面のレベル位置が窓支持部材の光放射方向先端のレベル位置よりも後方のレベル位置になるように配設されていれば、窓支持部材が折り曲げられた形状の前縁部分を有するものでなくてもよく、また窓支持部材の光放射方向先端が内部リング部によって構成されていなくてもよい。
また、接着層は、
図1〜
図3に示したように外表面と外周面との間の斜面および内表面と外周面との間の斜面の両方の斜面の一部
のみを覆うように形成されたものに限定されず、少なくとも外表面と外周面との間の斜面の一部
のみを覆うように形成されたものであればよい。
また、窓部材は、
図1〜
図3に示したように外表面と外周面との間および内表面と外周面との間の両方に斜面が形成されたものに限定されず、少なくとも外表面と外周面との間に斜面が形成されたものであればよい。
【0046】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0047】
〔実験例1〕
図1〜
図3に示す構成に従って、Mo−Mnメタライズ法を用い、サファイア製の円盤状の窓部材(30)がコバール製の窓支持部材(35)によって支持されてなる窓組立体(36)(以下、「窓組立体A」ともいう。)を、10個作製した。
作製した10個の窓組立体Aは、いずれも、45°面取り加工がなされることによって斜面(31b,31c)が形成された窓部材(30)と窓支持部材(35)との間に、メタライズ層およびニッケルメッキ層よりなる金属層(45)と、銀ロウよりなる接着層(40)とが形成されたものである。これらの窓組立体Aは、下記の仕様を有するものである。
【0048】
〔窓部材(30)〕
・外径:25.4mm
・厚み:3mm
・斜面(31b,31c)の窓部材(30)の厚み方向の寸法(T):0.3mm
・斜面(31b,31c)の面積に対する、接着層(40)に覆われている領域の面積の割合(X):50%
・窓支持部材(35)の光放射方向先端からの距離(d):0.7mm
〔窓支持部材(35)〕
・高さ(h):5.65mm
・厚み(w):0.6mm
・外部リング部(35b)の外径:31.5mm
・内部リング部(35a)の外径:26.7mm
・前縁部分(35d)の曲げ加工半径R:0.5〜1.2mm
・前縁部分(35d)の幅(z):0.2mm
【0049】
また、接着層(40)および金属層(45)を、周縁部(31)における外周面(31a)のみを覆うように形成したこと、すなわち斜面(31b,31c)を覆わないように形成したこと以外は、窓組立体Aと同様の構成を有する窓組立体(以下、「窓組立体B」ともいう。)を複数作製した。
【0050】
作製した10個の窓組立体Aおよび複数の窓組立体Bの各々に対して、圧縮試験機により、窓部材(30)に、その厚み方向に荷重を加え、破損が生じたときの荷重(以下、「最大応力」ともいう。)を測定する耐圧試験を実施した。
その結果、窓組立体Aの最大荷重は、30〜40MPaであり、また窓組立体Bにおける最大応力は、10〜16MPaであった。
従って、窓組立体において、接着層を、窓部材(30)外周面(31a)の全面と共に外表面と外周面(31a)との間の斜面(31b)の一部
のみを覆うように形成することにより、窓部材(30)と窓支持部材(35)との接着部分(接合部分)に高い耐圧性が得られることが確認された。