(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーダセンサ(10)が自車両の前方に向けてレーダ波を照射するとともにその照射したレーダ波が物標によって反射された反射波を受信した結果に基づき自車両の前方を走行する先行車両のレーダ認識を行うレーダ認識部(30)と、
画像センサ(20)が自車両の前方を撮像した撮像画像に基づき自車両の前方を走行する先行車両の画像認識を行う画像認識部(30)と、
前記レーダ認識部(30)による先行車両のレーダ認識と前記画像認識部(30)による先行車両の画像認識とに基づき、先行車両をレーダ認識および画像認識の双方で認識した回数が先行車両を少なくとも画像認識で認識した回数に占める割合を算出し、その算出した割合の値に応じて前記レーダセンサ(10)に生じた垂直面内での軸ずれを検出する軸ずれ検出部(30)と、
を備えることを特徴とする軸ずれ検出装置(30)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[1.運転支援システム1の構成の説明]
本実施形態の運転支援システム1は、レーダセンサ10と、画像センサ20と、物標認識装置30と、運転支援実行装置40と、から構成され、物標認識装置30が、レーダセンサ10、画像センサ20および運転支援実行装置40のそれぞれと通信可能に接続されている。なお、レーダセンサ10は、自車両の前方に設定された探査領域に向けてレーダ波を照射し、その反射波を受信する。また、画像センサ20は、自車両の前方に設定された探査領域を撮像する。また、物標認識装置30は、レーダセンサ10および画像センサ20での検出結果に従って、探査領域内に存在する各種物標を認識する。また、運転支援実行装置40は、物標認識装置30での処理結果(物標情報)に従い、各種車載機器を制御して所定の運転支援を実行する。以下に、運転支援システム1の各構成について具体的に説明する。
【0014】
[1.1.レーダセンサ10の構成の説明]
レーダセンサ10は、自車両の前方に設定され、後述する物標検出装置(特に通常検出処理)30とともに、ミリ波を利用して所定の探査領域内に存在する物標を検知する周知のFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダを構成する。
【0015】
具体的には、レーダセンサ10は、車両の前端部に配置され、時間に対して周波数を直線的に上昇(上り変調)および下降(下り変調)させた送信波を探査領域に向けて送信し、前方の物標で反射された電波を受信し、送信波と受信波とをミキシングして、レーダセンサ10と物標との距離R及び相対速度Vに対応したビート周波数をもつビート信号を抽出する。
【0016】
但し、レーダセンサ10は、送信アンテナ及び受信アンテナのうち少なくとも一方がアレイアンテナによって構成され、送信アンテナと受信アンテナの組み合わせをチャンネルと呼ぶものとして、チャンネル毎にビート信号を抽出している。レーダセンサ10は、ビート信号を、ADコンバータによってAD変換して出力する。出力されたビート信号は、物標認識装置30に入力される。
【0017】
[1.2.画像センサ20の構成の説明]
画像センサ20は、自車両の前側における中央付近に配置されたCCDカメラからなり、このCCDカメラは、レーダセンサ10の検知範囲より広い角度範囲を検知範囲とする(
図2参照)。画像センサ20は、CCDカメラで撮像した撮像データに対して、テンプレートマッチング等の周知の画像処理を行うことにより、撮像範囲内に存在する所定の物標(車両、歩行者等)を検出する。
【0018】
そして、画像センサ20は、この処理により検出された物標(以下、画像物標という)の情報を画像物標情報として物標認識装置30へ送信する。なお、画像物標情報には、検出した画像物標の種類、大きさ、位置(距離、方位)についての情報が少なくとも含まれている。
【0019】
[1.3.物標認識装置30の構成の説明]
物標認識装置30は、CPU、ROM、RAMからなるマイクロコンピュータを中心に構成され、更に高速フーリエ変換(FFT)等の信号処理を実行するためのデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を備える。物標認識装置30は、画像センサ20から取得した画像物標情報およびレーダセンサ10から取得したビート信号に従って、運転支援実行装置40に提供するための物標情報を生成する物標認識処理や、レーダセンサ10に生じた垂直面内での軸ずれを検出する垂直軸ずれ検出処理等を実行する。なお、物標認識処理については公知技術に従うのでここではその詳細な説明は省略する。また、垂直軸ずれ検出処理について後述する。
【0020】
なお、物標認識装置30は、軸ずれ検出装置に該当するとともに、レーダ認識部、画像認識部および軸ずれ検出部に該当する。
[1.4.運転支援実行装置40の構成の説明]
運転支援実行装置40は、制御対象となる車載機器として、各種画像を表示するモニタや、警報音や案内音声を出力するスピーカを少なくとも備える。また、運転支援実行装置40は、制御対象となる車載機器として、さらに、自車両に搭載された内燃機関、パワートレイン機構、ブレーキ機構等を制御する各種制御装置を含んでいてもよい。
【0021】
[2.垂直軸ずれ検出処理の説明]
次に、運転支援システム1の物標認識装置30が実行する垂直軸ずれ検出処理について
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
本処理は、エンジンが始動すると開始される。また、本処理は、開始後にエンジンが停止すると終了する。
まず、最初のステップS10では、距離別車両検知状態カウント処理を実行する。なお、距離別車両検知状態カウント処理の詳細については後述する。その後、S20に移行する。
【0023】
S20では、FSN割合演算処理を実行する。なお、FSN割合演算処理の詳細については後述する。その後、S30に移行する。
S30では、非正常認識割合演算処理を実行する。なお、非正常認識割合演算処理の詳細については後述する。その後、S40に移行する。
【0024】
S40では、垂直軸ずれ量演算処理を実行する。なお、垂直軸ずれ量演算処理の詳細については後述する。その後、S10に戻る。
[2.1.距離別車両検知状態カウント処理の説明]
次に、垂直軸ずれ検出処理のサブルーチンである距離別車両検知状態カウント処理について
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0025】
本処理は、垂直軸ずれ検出処理の実行中にS10の距離別車両検知状態カウント処理に移行した際に実行される。
まず、最初のステップS1110では、画像物標とミリ波物標とがFSNであるか否かを判断する。なお、画像物標とは、画像センサ20によって画像認識された先行車両を指し、ミリ波物標とは、レーダセンサ10によってレーダ認識された先行車両を指す。また、FSNとは、認識された先行車両が、レーダセンサ10によるレーダ認識と画像センサ20による画像認識の双方で認識されたことを言う。ここでは、認識された先行車両が、レーダセンサ10によるレーダ認識と画像センサ20による画像認識の双方で認識されたか否かを判断する。肯定判断である場合には(S1110:YES)、S1120に移行する。一方、否定判断である場合には(S1110:NO)、S1130に移行する。
【0026】
S1120では、物標距離判定を行う。具体的には、自車両とレーダ認識および画像認識された先行車両との間の距離を判定する。なお、この物標距離判定には、レーダ認識の結果または画像認識の結果の何れを用いてもよい。その後、S1140に移行する。
【0027】
S1130では、物標距離判定を行う。具体的には、自車両と画像認識された先行車両との間の距離を判定する。なお、この物標距離判定には、画像認識の結果を用いる。その後、S1170に移行する。
【0028】
S1140では、ミリ波非正常認識であるか否かを判断する。具体的には、レーダセンサ10によるレーダ認識が正常な認識ではなかったか否かを判断する。肯定判断である場合には(S1140:YES)、S1160に移行する。一方、否定判断である場合には(S1140:NO)、S1150に移行する。
【0029】
S1150では、距離別ミリ波通常FSN回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図4(b)に例示する距離判定表を参照して、S1120で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する距離別ミリ波通常FSN回数カウンタをインクリメントする。なお、距離別ミリ波通常FSN回数カウンタとは、先行車両が正常にレーダ認識された回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。また、距離判定表には、
図4(b)に例示するように、0mから100mまでは10m刻みで距離領域が設定され、100m以上は一つの距離領域が設定されており、各距離領域に距離インデックス「1」〜「11」がそれぞれ付されている。なお、距離判定表の設定内容については、10m以外の刻みや距離領域数であってもよい。その後、本処理を終了する。
【0030】
S1160では、距離別ミリ波非正常認識回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図4(b)に例示する距離判定表を参照して、S1120で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する距離別ミリ波非正常認識回数カウンタをインクリメントする。なお、距離別ミリ波非正常認識回数カウンタとは、先行車両が非正常にレーダ認識された回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0031】
S1170では、画像単独検知回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図4(b)に例示する距離判定表を参照して、S1130で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する画像単独検知回数カウンタをインクリメントする。なお、画像単独検知回数カウンタとは、先行車両がレーザ認識はされずに画像認識のみされた回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0032】
[2.2.FSN割合演算処理の説明]
次に、垂直軸ずれ検出処理のサブルーチンであるFSN割合演算処理について
図5を参照して説明する。
【0033】
本処理は、垂直軸ずれ検出処理の実行中にS20のFSN割合演算処理に移行した際に実行される。
まず、距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値に距離別ミリ波通常FSN回数係数を乗算するとともに、距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値に距離別ミリ波非正常認識回数係数を乗算し、画像単独検知回数カウンタの値に画像単独検知回数係数を乗算する(
図5(a)参照)。なお、距離別ミリ波通常FSN回数係数、距離別ミリ波非正常認識回数係数および画像単独検知回数係数については、距離別ミリ波通常FSN回数カウンタ、距離別ミリ波非正常認識回数カウンタおよび画像単独検知回数カウンタに対して重み付けを行うために、実験等により予め設定される。一例を挙げると、
図6(a)に例示する自車両から先行車までの距離とFSN割合との関係を示すグラフからも明らかなように、自車両から先行車までの距離が小さい領域では、レーダセンサ10に軸ずれが生じていない場合のFSN割合の値とレーダセンサ10に軸ずれが生じている場合のFSN割合の値との差異が小さく、一方、自車両から先行車までの距離が大きい領域では、レーダセンサ10に軸ずれが生じていない場合のFSN割合の値とレーダセンサ10に軸ずれが生じている場合のFSN割合の値との差異が大きくなる傾向があるので、例えば、前者の距離領域の重み付けを相対的に小さくするともに後者の距離領域の重み付けを相対的に大きくなるような係数を設定するといった具合である。
図6に例示するケースでは、先行車両との距離がαm未満のカウンタに対して数値「0」の係数θを掛け合わせることで、差が出にくい距離領域の情報を削除して、全体の精度を向上させている(
図6(b)参照)。
【0034】
続いて、FSN割合を算出する。具体的には、重み付け後の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値を、重み付け後の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値と重み付け後の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値と重み付け後の画像単独検知回数カウンタの値とを加算した値で除算し、百分率(%)で表す(
図5(b)参照)。
【0035】
その後、本処理を終了する。
[2.3.非正常認識割合演算処理の説明]
次に、垂直軸ずれ検出処理のサブルーチンである非正常認識割合演算処理について
図5を参照して説明する。
【0036】
本処理は、垂直軸ずれ検出処理の実行中にS30の非正常認識割合演算処理に移行した際に実行される。
まず、距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値に距離別ミリ波通常FSN回数係数を乗算するとともに、距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値に距離別ミリ波非正常認識回数係数を乗算する(
図5(a)参照)。
【0037】
続いて、非正常認識FSN割合を算出する。具体的には、重み付け後の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値を、重み付け後の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値と重み付け後の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値とを加算した値で除算し、百分率(%)で表す(
図5(c)参照)。
【0038】
その後、本処理を終了する。
[2.4.垂直軸ずれ量演算処理の説明]
次に、垂直軸ずれ検出処理のサブルーチンである垂直軸ずれ量演算処理について
図7を参照して説明する。
【0039】
本処理は、垂直軸ずれ検出処理の実行中にS40の垂直軸ずれ量演算処理に移行した際に実行される。
ここでは、S20で算出したFSN割合およびS30で算出した非正常認識割合に応じて、レーダセンサ10に生じた垂直面での軸ずれ量(垂直軸ずれ量)を推定する(垂直軸ずれ推定量)。具体的には、
図7(a)に例示するマップを参照して、算出したFSN割合および非正常認識割合が該当するマップ上の領域を特定し、その特定した領域に割り当てられた値の垂直軸ずれ量が発生していると判定する(
図7(b)参照)。なお、上記マップ上の各領域および各領域に割り当てられた垂直軸ずれ量の値については、実験等により予め設定される。例えば、FSN割合については、FSN割合の値が大きいと垂直軸ずれ量が小さく、FSN割合の値が小さいと垂直軸ずれ量が大きい傾向があり、非正常認識割合については、非正常認識割合の値が大きいと垂直軸ずれ量がプラスであり、非正常認識割合の値が小さいと垂直軸ずれ量がマイナスである傾向があるので、これに従って上記マップ上の各領域および各領域に割り当てられた垂直軸ずれ量の値を設定するといった具合である。また、
図7(b)の例では、FSN割合がX%であり、非正常認識割合がY%である場合には、垂直軸ずれ量として「−αdeg」と推定するといった具合である。
【0040】
その後、本処理を終了する。
[3.実施形態の効果]
このように本実施形態の運転支援システム1によれば、物標認識装置30が自車両の前方を走行する先行車両のレーダ認識を行うとともに、自車両の前方を撮像した撮像画像に基づき自車両の前方を走行する先行車両の画像認識を行い、先行車両のレーダ認識および画像認識に基づき、先行車両をレーダ認識および画像認識の双方で認識した回数が先行車両を少なくとも画像認識で認識した回数に占める割合を算出し、その算出した割合の値に応じてレーダセンサ10に生じた垂直面内での軸ずれを検出する(
図10(a)および(b)参照)。
【0041】
したがって、車両に搭載されるレーダセンサ10の垂直面内での軸ずれを車両走行時に精度良く検出することができる。
[4.他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0042】
(1)上記実施形態では、レーダセンサ10は、ミリ波を利用して所定の探査領域内に存在する物標を検知するよう構成されているが、これには限られず、レーザ光や超音波など他のレーダ波を利用して所定の探査領域内に存在する物標を検知するよう構成してもよい。
【0043】
(2)上記実施形態では、物標認識装置30が、先行車両のレーダ認識および画像認識に基づき、レーダセンサ10に生じた垂直面内での軸ずれを検出するが、この際に、先行車両の車高を考慮するようにしてもよい。
【0044】
これは、車高の高い車両については、軸ずれの影響が生じにくいため、軸ずれ判定の対象から除外するためである。
具体的には、上述の垂直軸ずれ検出処理の実行中にS10の距離別車両検知状態カウント処理に移行した際に、
図8に例示する別実施形態の距離別車両検知状態カウント処理を実行するとともに、S20のFSN割合演算処理に移行した際に、
図9に例示する別実施形態のFSN割合演算処理を実行し、S30の非正常認識割合演算処理に移行した際に、
図9に例示する別実施形態の非正常認識割合演算処理を実行する。なお、S40の垂直軸ずれ量演算処理に移行した際に実行する垂直軸ずれ量演算処理については上記実施形態の垂直軸ずれ量演算処理と同様である。
【0045】
以下に、別実施形態の距離別車両検知状態カウント処理、別実施形態のFSN割合演算処理および別実施形態の非正常認識割合演算処理について順に説明する。また、別実施形態の垂直軸ずれ検出処理の効果についても説明する。
【0046】
(2−1)別実施形態の距離別車両検知状態カウント処理(
図8参照)
まず、垂直軸ずれ検出処理の実行中にS10の距離別車両検知状態カウント処理に移行した際に実行する別実施形態の距離別車両検知状態カウント処理について説明する。
【0047】
まず、最初のステップS1205では、画像物標とミリ波物標とがFSNであるか否かを判断する。ここでは、認識された先行車両が、レーダセンサ10によるレーダ認識と画像センサ20による画像認識の双方で認識されたか否かを判断する。肯定判断である場合には(S1205:YES)、S1210に移行する。一方、否定判断である場合には(S1205:NO)、S1215に移行する。
【0048】
S1210では、物標距離判定を行う。具体的には、自車両とレーダ認識および画像認識された先行車両との間の距離を判定する。なお、この物標距離判定には、レーダ認識の結果または画像認識の結果の何れを用いてもよい。その後、S1220に移行する。
【0049】
S1215では、物標距離判定を行う。具体的には、自車両と画像認識された先行車両との間の距離を判定する。なお、この物標距離判定には、画像認識の結果を用いる。その後、S1235に移行する。
【0050】
S1220では、ミリ波非正常認識であるか否かを判断する。具体的には、レーダセンサ10によるレーダ認識が正常な認識ではなかったか否かを判断する。肯定判断である場合には(S1220:YES)、S1230に移行する。一方、否定判断である場合には(S1220:NO)、S1225に移行する。
【0051】
S1225では、先行車両の車高は高いか否かを判断する。具体的には、画像認識の結果を用いて、先行車両の車高が所定値よりも大きいか否かを判断する。なお、所定値とは、軸ずれ検出の精度を高めるためにトラックなどの車高の高い先行車両を除外する目的で設定される値であり、実験等により予め設定される(
図10(c)および(d)参照)。肯定判断である場合には(S1225:YES)、S1245に移行する。一方、否定判断である場合には(S1225:NO)、S1240に移行する。
【0052】
S1230では、先行車両の車高は高いか否かを判断する。具体的には、画像認識の結果を用いて、先行車両の車高が所定値よりも大きいか否かを判断する。肯定判断である場合には(S1230:YES)、S1255に移行する。一方、否定判断である場合には(S1230:NO)、S1250に移行する。
【0053】
S1235では、先行車両の車高は高いか否かを判断する。具体的には、画像認識の結果を用いて、先行車両の車高が所定値よりも大きいか否かを判断する。肯定判断である場合には(S1235:YES)、S1265に移行する。一方、否定判断である場合には(S1235:NO)、S1260に移行する。
【0054】
S1240では、低車高車両用距離別ミリ波通常FSN回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図8(b)に例示する距離判定表を参照して、S1210で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する低車高車両用距離別ミリ波通常FSN回数カウンタをインクリメントする。なお、この距離判定表は、
図4(b)に例示する距離判定表と同様であるが、異なる設定内容としてもよい。なお、低車高車両用距離別ミリ波通常FSN回数カウンタとは、車高が所定値未満である先行車両が正常にレーダ認識された回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0055】
S1245では、高車高車両用距離別ミリ波通常FSN回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図8(b)に例示する距離判定表を参照して、S1210で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する高車高車両用距離別ミリ波通常FSN回数カウンタをインクリメントする。なお、高車高車両用距離別ミリ波通常FSN回数カウンタとは、車高が所定値より大きい先行車両が正常にレーダ認識された回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0056】
S1250では、低車高車両用距離別ミリ波非正常認識回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図8(b)に例示する距離判定表を参照して、S1210で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する低車高車両用距離別ミリ波非正常認識回数カウンタをインクリメントする。なお、低車高車両用距離別ミリ波非正常認識回数カウンタとは、車高が所定値未満である先行車両が非正常にレーダ認識された回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0057】
S1255では、高車高車両用距離別ミリ波非正常認識回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図8(b)に例示する距離判定表を参照して、S1210で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する高車高車両用距離別ミリ波非正常認識回数カウンタをインクリメントする。なお、高車高車両用距離別ミリ波非正常認識回数カウンタとは、車高が所定値よりも大きい先行車両が非正常にレーダ認識された回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0058】
S1260では、低車高車両用距離別画像単独検知回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図8(b)に例示する距離判定表を参照して、S1215で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する低車高車両用距離別画像単独検知回数カウンタをインクリメントする。なお、低車高車両用距離別画像単独検知回数カウンタとは、車高が所定値未満である先行車両がレーザ認識はされずに画像認識のみされた回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0059】
S1265では、高車高車両用距離別画像単独検知回数カウンタをインクリメントする。具体的には、
図8(b)に例示する距離判定表を参照して、S1215で判定した自車両と先行車両との間の距離が該当する高車高車両用距離別画像単独検知回数カウンタをインクリメントする。なお、高車高車両用距離別画像単独検知回数カウンタとは、車高が所定値よりも大きい先行車両がレーザ認識はされずに画像認識のみされた回数を示すカウンタであり、距離領域ごとに設定されている。その後、本処理を終了する。
【0060】
なお、S1225、S1230およびS1235で用いられる所定値については、昼夜判定によって可変としてもよい。
図11を参照して説明する。
すなわち、まず、周囲の照度によって昼夜を判定する。照度センサを用いて周囲の照度を検知し、検知した照度値が所定の閾値以上である場合に昼間であると判定し、検知した照度値が所定の閾値未満である場合に夜間であると判定する。
【0061】
ここで、先行車両の車高を直接検知するセンサを使用する場合においては、昼判定の場合には、先行車両の車高を判定するための判定閾値(所定値)を通常の値に設定し、一方、夜判定の場合には、前記判定閾値(所定値)を昼判定の場合に比べて小さく設定する。これは、昼間の場合には、地面から車両の天井までの高さを正確に検出しやすいが、夜間の場合には、周囲の照度が低いために、タイヤ付近が道路の色と同化しやすく、先行車両の車高を小さめに検出しがちとなるためである。
【0062】
また、先行車両の車幅を検出するセンサを用いて先行車両の車幅を検出し、検出した先行車両の車幅から先行車両の車高を推定する場合においては、昼判定の場合には、前記判定閾値(所定値)を通常の値に設定し、一方、夜判定の場合には、前記判定閾値(所定値)を昼判定の場合に比べて大きく設定する。これは、昼間の場合には、先行車両の車幅を正確に検出しやすいが、夜間の場合には、車両の両端にあるブレーキランプの光やハザードランプの光によって車両の外側にエッジが存在するように見え、車幅を実際よりも大きめに検出しがちとなるためである。
【0063】
このように所定値を昼夜判定によって可変とすることにより、車高判定の精度を向上させることができる。
(2−2)別実施形態のFSN割合演算処理(
図9参照)
次に、垂直軸ずれ検出処理の実行中にS20のFSN割合演算処理に移行した際に実行する別実施形態のFSN割合演算処理について説明する。
【0064】
まず、二種類の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値それぞれに所定の係数を乗算して加算するとともに、二種類の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値それぞれに所定の係数を乗算して加算し、二種類の画像単独検知回数カウンタの値それぞれに所定の係数を乗算して加算する(
図9(a)参照)。なお、各係数については、上記各種カウンタに対して重み付けを行うために、実験等により予め設定される。
【0065】
続いて、FSN割合を算出する。具体的には、重み付け後の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値を、重み付け後の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値と重み付け後の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値と重み付け後の画像単独検知回数カウンタの値とを加算した値で除算し、百分率(%)で表す(
図9(b)参照)。
【0066】
その後、本処理を終了する。
(2−3)別実施形態の非正常認識割合演算処理(
図9参照)
次に、垂直軸ずれ検出処理の実行中にS30の非正常認識割合演算処理に移行した際に実行する別実施形態の非正常認識割合演算処理について説明する。
【0067】
まず、二種類の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値それぞれに所定の係数を乗算して加算するとともに、二種類の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値それぞれに所定の係数を乗算して加算する(
図9(a)参照)。
【0068】
続いて、非正常認識FSN割合を算出する。具体的には、重み付け後の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値を、重み付け後の距離別ミリ波通常FSN回数カウンタの値と重み付け後の距離別ミリ波非正常認識回数カウンタの値とを加算した値で除算し、百分率(%)で表す(
図9(c)参照)。
【0069】
その後、本処理を終了する。
(2−4)別実施形態の垂直軸ずれ検出処理の効果
このような別実施形態の垂直軸ずれ検出処理によれば、上記実施形態の垂直軸ずれ検出処理と同様に、車両に搭載されるレーダセンサ10の垂直面内での軸ずれを車両走行時に精度良く検出することができるとともに、レーダセンサ10の垂直面内での軸ずれを検出する精度を更に向上させることができる。
【0070】
(3)上記実施形態では、
図6に例示するように、FSN割合の差が小さい近距離領域においては、係数を掛け合わせることによって、その領域の情報を利用しないようにしているが、これには限られず、全体のサンプル数に対する近距離データや遠距離データの割合に応じて軸ずれ判定を確定させるようにしてもよい。一例を挙げると、全体のサンプル数に対する近距離データの割合が所定値未満である場合には軸ずれ判定を確定し、一方、全体のサンプル数に対する近距離データの割合が所定値以上である場合には軸ずれ判定を確定しないようにするとよい。また、全体のサンプル数に対する遠距離データの割合が所定値以上である場合には軸ずれ判定を確定し、一方、全体のサンプル数に対する遠距離データの割合が所定値未満である場合には軸ずれ判定を確定しないようにしてもよい。また、上述の近距離データに関する要件と、上述の遠距離データに関する要件を組み合わせてもよい。一例を挙げると、全体のサンプル数に対する近距離データの割合および遠距離データの割合が所定条件を満たす場合には軸ずれ判定を確定し、満たさない場合には軸ずれ判定を確定しないようにするといった具合である。
【0071】
このように、近距離データを完全に利用しなくなるのではなく、近距離データの割合が所定値未満である場合には、軸ずれ判定を確定することで、軸ずれ判定に要する時間が長くなり過ぎないようにすることができる。
【0072】
(4)自車両が走行する地点での走行路の傾斜角度と先行車両が走行する地点での走行路の傾斜角度との差分に応じて軸ずれ検出処理の可否を判断するようにしてもよい。具体的には、
図12に例示するように、自車両が走行する地点での走行路の傾斜角度と先行車両が走行する地点での走行路の傾斜角度との差分θを算出し、その算出した差分に応じて先行車両を軸ずれ検出処理の対象とするか否かを判断する。例えば、上記差分が予め設定した閾値未満である場合には先行車両を軸ずれ検出処理の対象とする肯定判断を行い、上記差分が閾値よりも大きい場合には先行車両を軸ずれ検出処理の対象としない否定判断を行うといった具合である。肯定判断の場合には軸ずれ検出処理を実行し、否定判断の場合には前記軸ずれ検出処理を実行しない。
【0073】
自車両が走行する地点での走行路の傾斜角度については、自車両が搭載する傾斜センサの出力から算出する。先行車両が走行する地点での走行路の傾斜角度については、
図13に例示するように、画像認識により、画像センサ20のFOE(消失点、Focus Of Expansion)、先行車両の車両幅、自車両と先行車両との間の距離などから推定する。また、上記差分θの算出については、超音波やミリ波等のレーダ波を用いる垂直スキャンによる検出結果を利用してもよいし、カーナビゲーションなどに搭載されているロケータから取得される情報を利用してよい。
【0074】
また、
図12(a)に例示するように、先行車両が走行する走行路が上向きの傾斜面(登り坂)である場合には、下向きの軸ずれが生じていないことに関しての信頼度を高めることも考えられる。一例を挙げると、先行車両が走行する走行路の上向きの傾斜角度が大きくなるに従って
図5(a)に示す「距離別ミリ波通常FSN回数係数」の値を数値「1.0」から大きくするといった具合である。また、
図12(b)に例示するように、先行車両が走行する走行路が下向きの傾斜面(下り坂)である場合には、上向きの軸ずれが生じていないことに関しての信頼度を高めることも考えられる。一例を挙げると、先行車両が走行する走行路の下向きの傾斜角度が大きくなるに従って
図5(a)に示す「距離別ミリ波通常FSN回数係数」の値を数値「1.0」から大きくするといった具合である。
【0075】
このようにすれば、精度が悪い状況下での軸ずれ判定を排除することができる。また、車両に搭載されるレーダセンサ10の垂直面内での軸ずれを車両走行時に精度良く検出することができる。
【0076】
(5)自車両が走行する地点での走行路の傾斜角度から先行車両が走行する地点での走行路の傾斜角度へ変化する傾斜変化点を考慮して軸ずれ検出処理の可否を判断するようにしてもよい。具体的には、
図12に例示するように、自車両が走行する地点での走行路の傾斜角度から先行車両が走行する地点での走行路の傾斜角度へ変化する傾斜変化点を算出し、その算出した変化点を自車両が通過するまでは軸ずれ検出処理を実行せず、通過後には軸ずれ検出処理を実行する。
【0077】
図14に例示するように、画像センサ20の表示画像に設定された所定枠内の先行車両を判定対象とする。自車両から対象である先行車両までの距離によって、上記枠を変化させる。自車両から先行車両までの距離が小さく、先行車両が近距離にある場合には、
図14(a)に例示するように、表示画像中の所定枠の位置を下方に設定する。また、自車両から先行車両までの距離が大きく、先行車両が遠距離にある場合には、
図14(b)に例示するように、表示画像中の所定枠の位置を上方に設定するといった具合である。
【0078】
このようにすれば、精度が悪い状況下での軸ずれ判定を排除することができる。また、車両に搭載されるレーダセンサ10の垂直面内での軸ずれを車両走行時に精度良く検出することができる。