(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流量算出部は、前記配管内を同心半円状領域に分割し、流量演算対象の層に含まれる領域の面積と、前記流速プロファイルに基づいて定められる流速とを乗じて得られる領域毎の流量を合計することで前記被測定流体の層毎の流量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波流量計。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計は種々の方式が提案されているが、代表的な方式として、伝播時間差法が知られている。伝播時間差法を用いた流量測定は、
図19(a)に示すように、被測定流体Fが流れる配管500の上下流に、超音波信号を送受信できる超音波センサ510a、510bを設置し、交互に超音波信号を送受信して、それぞれの伝播時間を測定する。
【0003】
被測定流体Fの流れがないときは、上流側超音波センサ510aから下流側超音波センサ510bに超音波信号が伝播する時間と下流側超音波センサ510bから上流側超音波センサ510aに超音波信号が伝播する時間とは等しくなるが、流れがある場合には、下流側超音波センサ510bから上流側超音波センサ510aへ伝播する超音波信号よりも上流側超音波センサ510aから下流側超音波センサ510bへ伝播する超音波信号の方が速く伝播し、伝播時間に差が生じる。伝播時間の差は流れの速さに比例するため、この差に基づいて被測定流体Fの流速を測定することができる。得られた流速は、超音波信号の経路における流速の平均値となる。この流速に配管500の断面積と補正係数とを乗じることで流量が算出される。
【0004】
また、伝播時間差法以外の方式として、配管500内の被測定流体F中に含まれる気泡やパーティクルが被測定流体Fと同じ速度で移動すると仮定し、その移動速度を超音波信号で測定することで配管500の径に沿った流速分布(流速プロファイル)を生成して、被測定流体Fの流量を算出するパルスドップラー法、反射相関法も知られている。
【0005】
パルスドップラー法は、
図19(b)に示すように、超音波センサ510cから特定の周波数の超音波パルス信号を配管500内に斜めに入射し、被測定流体F中に含まれる気泡やパーティクル等の超音波反射体によって反射するエコー波を超音波センサ510cで受信する。
【0006】
超音波反射体によって反射するエコー波は、ドップラー効果により、超音波反射体の移動速度に応じて周波数が変化するため、この変化量を検出することで、配管500内を流れる被測定流体Fの速度を求めることができる。
【0007】
超音波反射体による反射は、配管500内の各所で起こるため、超音波信号を出射してからエコー波が検出されるまでの時間に基づいて径方向についての被測定流体Fの流速プロファイルを求めることができる。
図20は、流速プロファイルの一例を示している。この流速プロファイルを配管500の断面に沿って積分することで、被測定流体Fの流量を算出することができる。
【0008】
反射相関法も、パルスドップラー法と同様に
図19(b)に示す構成とし、超音波センサ510cから配管500内に向けて超音波パルス信号を2回出力して、流体内を流体とともに移動する超音波反射体からのエコー波を受信する。
【0009】
そして、受信した2個のエコー波について一方を参照波、他方を探索波として相関演算を行なう。その結果、相関係数の高い波形を同一の超音波反射体からのエコー波であるとみなし、その伝搬時間と時間差とに基づいて超音波反射体の位置と移動速度とを算出することで、流速プロファイルを求め、流体の流量を算出する。
【0010】
例えば、
図21に示すような、同一の超音波反射体からのエコー波とみなされた1回目の超音波パルス信号に対するエコー波T1と2回目の超音波パルス信号に対するエコー波T2とにおいて、時間差ΔTは、1回目の超音波パルス信号と2回目の超音波パルス信号との間に進んだ超音波反射体の距離、すなわち、被測定流体Fの速度に対応し、伝搬時間Tdは、超音波反射体の超音波センサ510cからの距離、すなわち、超音波反射体の配管500内の径方向の位置に対応する。超音波反射体による反射は、配管500内の各所で起こるため、配管内の径方向について、流速プロファイルを得ることができる。この流速プロファイルを配管500の断面に沿って積分することで流体の流量が算出される。
【0011】
ここで、流量算出時に行なう積分について
図22と
図23とを参照して説明する。
図22は、流速プロファイルと配管断面とを対応させて示し、
図23は、積分の手順をフローチャートで示している。
【0012】
図22では、流速プロファイルを配管下部が下に位置し、配管上部が上に位置するように表示し、高さ方向に複数の区分に分割している。この分割幅を積分幅とする。各区分は、その区分の平均流速を算出する等により流速と対応付けることができる。積分幅を細かくするほど、流量算出の精度は向上する。積分幅に対応して配管内は同心半円上の複数の領域に区分される。
【0013】
例えば、
図22(a)に示すように最も下部の区分に着目した場合、この区分の流速は、配管下半分の最外周領域に適用することができる。このため、下半分の最外周領域の面積を求め、対応する区分の流速を乗じれば、下半分の最外周領域の流量が算出される。最外周領域の面積は、配管500の半径が既知であるため、設定した積分幅を用いて容易に求めることができる。この演算を
図23(b)に示すように下半分および上半分の各区分について行ない、各区分に対応する領域の流量を合計することで、被測定流体Fの流量を算出することができる。
【0014】
そこで、積分を行なう際には、積分幅を設定し(
図23:S801)、下半分について各領域の面積を算出して対応する流量を乗じる積分を行なう(S802)。上半分についても同様に各領域の面積を算出して対応する区分の流量を乗じる積分を行なう(S803)。そして、各領域の流量を合計する(S804)。これにより、被測定流体Fの流量が算出される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態の第1実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。本例において、超音波流量計は配管500内を流れる被測定流体Fの流量を測定する。被測定流体Fは、単一種類の流体あるいは均一に混ざった混合流であってもよいし、複数種類の流体が層状に分離した多層流であってもよい。
【0023】
本図の例では流体F1と流体F2とが層になった2層流を示している。この場合、流体F1と流体F2とを総称して被測定流体Fと呼ぶものとする。なお、流体F1と流体F2との境界を界面と呼ぶものとする。本図のように2層流であれば界面は1つであり、3層流であれば界面は2つ存在することになる。
【0024】
本図に示すように、超音波流量計は、超音波センサ210と測定制御部100とを備えている。本発明の第1実施例に係る超音波流量計は、パルスドップラー法あるいは反射相関法のいずれかの方式を用いるものとする。
【0025】
超音波センサ210は、超音波信号の送受信を行なうデバイスであり、配管500の外側下部に超音波信号が配管軸方向斜めに出射されるように取り付けられる(クランプオン方式、セミクランプオン方式)。すなわち、本実施例の超音波流量計は、被測定流体Fに非接触の状態で流量測定を行なうことができる。ただし、超音波センサ210を配管500の中に差し込む取り付け方法(スプールピース方式)等を採用してもよい。
【0026】
測定制御部100は、出力制御部110、受信制御部120、流速プロファイル生成部130、反射信号強度プロファイル生成部140、界面判定部150、流量算出部160、測定結果出力部170を備えている。
【0027】
出力制御部110は、超音波信号の出力制御を行ない、受信制御部120は、超音波信号の受信制御を行なう。受信制御部120が受信対象とする超音波信号は、出力制御部110が出力した超音波信号に対する被測定流体Fに含まれる超音波反射体からのエコー波である。
【0028】
流速プロファイル生成部130は、受信制御部120で受信した超音波信号に基づいて配管500の径(上下)方向についての流速プロファイルを生成する。反射信号強度プロファイル生成部140は、受信制御部120で受信した超音波信号に基づいて配管500の径(上下)方向についての反射信号強度プロファイルを生成する。
【0029】
ここで、反射信号強度プロファイルは、超音波反射体からのエコー波の強度を測定し、エコー波の検出時間に基づいて配管500の径(上下)方向についての反射信号強度分布を表わしたものである。なお、第1実施例に係る超音波流量計は、パルスドップラー法、反射相関法のいずれかの方式としたが、流速プロファイルおよび反射信号強度プロファイルを生成することができれば他の方式を用いてもよい。
【0030】
界面判定部150は、反射信号強度プロファイルに基づいて界面の有無を判定し、界面がある場合にはさらに界面の高さSを特定する。これは、流体の特性が変化する界面において反射信号強度が強くなることを利用したものである。流量算出部160は、流速プロファイルと界面の有無、界面がある場合の界面の高さSに基づいて被測定流体Fの流量を算出する。測定結果出力部170は、算出された被測定流体Fの流量を測定結果として出力する。
【0031】
次に、第1実施例の超音波流量計における流量測定の手順について
図2のフローチャートを参照して説明する。第1実施例では、配管500を満水状態で流れる複層流(単層を含む)の層数を判定し、それぞれの層について流量を測定する。
【0032】
まず、測定に際しての各種設定を行なう(S101)。各種設定では、配管500の内径、超音波センサ210の取付角度、その他パラメータ等の設定を行なう。
【0033】
各種設定を行なうと、パルスドップラー法あるいは反射相関法のいずれかの方式で測定を実行する(S102)。いずれの方式も、プロファイルを生成できるように、繰り返し超音波信号を出力して測定を行なう。
【0034】
パルスドップラー法の場合は、特定の周波数の超音波パルス信号を配管500内に出力し、超音波反射体によって反射するエコー波を超音波センサ210で受信する。このときの周波数の変化と受信強度とを検出時間毎に測定する。反射相関法の場合は、超音波パルス信号を2回出力して、超音波反射体からのエコー波を受信する。そして、相関係数の高い波形を同一の超音波反射体からのエコー波であるとみなし、その伝搬時間と時間差とに基づいて超音波反射体の位置と移動速度とを算出するとともに、受信強度を測定する。
【0035】
測定を繰り返して得られた結果を基に、流速プロファイル生成部130が流速プロファイルを生成し(S103)、反射信号強度プロファイル生成部140が反射信号強度プロファイルを生成する(S104)。
【0036】
ついで、界面判定部150が、反射信号強度プロファイルに基づいて界面の有無を判定し、界面がある場合は界面の個数とそれぞれの位置を特定する(S105)。ここで、被測定流体Fが単一種類の単層流であれば、一般に、
図3に示すような流速プロファイルと反射信号強度プロファイルとが得られる。すなわち、反射信号強度プロファイルは、超音波センサ210の取り付け側に対向する側の配管壁面以外は極端に変化する部分を持たずになだらかな形状となる。
【0037】
これに対して、
図4(a)に示すように被測定流体Fが2種類の流体からなる多相流で、1つの界面が存在する場合には、
図4(b)に示すように、反射信号強度プロファイルが、界面に対応する位置で数倍程度に極めて大きくなる。
【0038】
同様に、
図5(a)に示すように被測定流体Fが3種類の流体からなる多相流で、2つの界面が存在する場合には、
図5(b)に示すように、反射信号強度プロファイルが、界面に対応する2つの位置で極めて大きくなる。
【0039】
このため、界面判定部150は、反射信号強度プロファイルに配管壁以外の場所に所定基準以上の極大部分があるかどうかで界面の有無を判定し、極大部分の個数と位置で界面の個数と高さを特定することができる。なお、反射信号強度プロファイルを微分して、正から負に切り替わる箇所を界面と判定してもよい。
【0040】
界面の個数と高さの判定を行なうと、流量算出部160は、演算対象の層を設定する(S106)。演算対象の層は、例えば、最下層から順番に設定することができる。
【0041】
そして、演算対象の層について流量演算を実行して(S107)、その層の流量を算出する。流量演算処理(S107)の詳細な手順については後述する。演算対象の層についての流量演算を実行すると、未処理の層がある場合には(S108:Yes)、未処理のいずれかの層を演算対象の層として設定し(S106)、演算対象の層について流量演算を実行して(S107)、演算対象の層の流量を算出する。未処理の層がない場合(S108:No)、すなわち、すべての層について流量演算を行なうと、各層についての流量を測定結果として出力する(S109)。
【0042】
次に、流量演算処理(S107)の詳細な手順について、
図6のフローチャートを参照して説明する。従来と同様に積分幅を設定すると(S201)、演算対象となっている層が最下層であれば(S202:Yes)、最下層流量演算(S203)を行ない、演算対象となっている層が最上層であれば(S202:No、S204:Yes)、最上層流量演算(S205)を行ない、演算対象となっている層が中間層であれば(S202:No、S204:No)、中間層流量演算(S205)を行なう。被測定流体Fが単層の場合は、最下層流量演算(203)を行なうものとする。中間層は、被測定流体Fが3層以上の場合に、最下層と最上層とに挟まれる層である。
【0043】
<最下層流量演算>
図7は、最下層流量演算(S203)の手順を示すフローチャートである。最下層流量演算では、最下層の上側界面位置が配管500の中心以下かどうかで場合分けを行なう(S301)。
【0044】
図8(a)に示すように、最下層の界面位置が配管500の中心以下であれば(S301:Yes)、
図8(b)のハッチング領域に示すように、積分幅毎に、上部が切り取られた半円周状の各領域の面積を算出し、対応する流速を乗じて合計すればよい。
【0045】
そこで、所定の順序で面積を算出する対象領域を設定する(S302)。
図9(a)は、最外周部分を対象領域とした場合を示している。
【0046】
そして、対象領域の半径Rと高さHhとから、対象領域の中心角の半分の角度θを算出する(S303)。ここで、半径Rは、対象領域の外周を弧とした扇形の半径であり、高さHhは、対象領域の外周の最下部から界面までの高さである。このとき、cosθ=(R−Hh)/Rが成り立つため、角度θを算出することができる。なお、最外周部分を対象領域とした場合は、半径Rは、配管500の半径に等しく、高さHは、界面高さに等しくなる。
【0047】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角2θの扇形の面積から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角2θの扇形の面積を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S304)。この面積に対応する区分の流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S305)。
【0048】
以上の対象領域の流量を算出する処理を下半分の全領域に対して繰り返す(S306)。
図9(b)、
図9(c)は、対象領域を変化させたときの半径R、高さH、中心角θを示している。
【0049】
下半分の全領域に対して流量を算出する処理を行なうと(S306:Yes)、各領域の流量を合計する(S307)。
【0050】
図10(a)に示すように、最下層の上側界面位置が配管500の中心以上であれば(S301:No)、
図10(b)のハッチング領域に示すように、下半分については従来と同様の積分処理を行ない、上半分については積分幅毎に、半円周状あるいは上部が切り取られた半円周状の各領域の面積を算出し、対応する流速を乗じて合計すればよい。
【0051】
ただし、
図10(b)中の太線枠内のように、演算対象の層の流速プロファイルが存在しない領域が発生する場合がある。この場合は、同一円周上の下半分の流速プロファイルを流用するものとする。
【0052】
そこで、最下層の界面位置が配管500の中心以上の場合は(S301:Yes)、下半分の領域については、従来と同様の手順で積分を実行する(S308)。また、上半分の積分については以下のように行なう。
【0053】
まず、上半分で対象領域を設定する(S309)。
図11(a)は、最外周部分を対象領域とした場合の例である。そして、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きいかどうかを判定する(S310)。ここで、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きい場合は、対象領域の上部分が界面により切り取られ、左右2つの部分に分割されることになる。一方、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも小さい場合は、対象領域は界面と交わらず、半円弧状のままとなる。
【0054】
図11(a)、
図11(b)は、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きい場合であり、
図11(c)は、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも小さい場合である。
【0055】
対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きい場合には(S310:Yes)、半径Rと配管500中心から界面までの高さKとから、対象領域の一方の領域の中心角θを算出する(S311)。ここで、
図11(a)、
図11(b)に示すように、sinθ=K/Rが成り立つため、角度θを算出することができる。なお、最外周部分を対象領域とした場合は、半径Rは、配管500の半径に等しく、高さKは、界面高さSから配管500の半径を引いた値に等しくなる。
【0056】
一方、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも小さい場合には(S319:No)、一律にθ=90°とすればよい(S312)。
【0057】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角θの扇形の面積の2倍から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角θの扇形の面積の2倍を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S313)。
【0058】
対象領域の面積が算出されると、対応する流速を設定する(S314)。上述のように、対象領域に対応する流速プロファイルがある場合には、その流速を流量演算に用い、対象領域に対応する流速プロファイルがない場合には、その領域の同一円周上の下半分領域に対応する流速プロファイルの流速を流量演算に用いものとする。
【0059】
そして、対象領域の面積と設定された流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S315)。
【0060】
以上の対象領域の流量を算出する処理を上半分の全領域に対して繰り返す(S316)。上半分の全領域に対して流量を算出する処理を行なうと(S316:Yes)、下半分および上半分の各領域の流量を合計する(S317)。これにより、最下層の流量が算出される(S203)。
【0061】
<最上層流量演算>
次に、最上層流量演算(S205)について説明する。
図12は、最上層流量演算(S205)の手順を示すフローチャートである。最上層流量演算では、最下流流量演算と上下を反転させた処理を行なえばよい。すなわち、最上層の下側界面位置が配管500の中心以下かどうかで場合分けを行なう(S401)。
【0062】
最上層の界面位置が配管500の中心以上であれば(S401:Yes)、積分幅毎に、下部が切り取られた半円周状の各領域の面積を算出し、対応する流速を乗じて合計すればよい。
【0063】
そこで、所定の順序で面積を算出する対象領域を設定する(S402)。そして、対象領域の半径Rと高さHhとから、対象領域の中心角の半分の角度θを算出する(S403)。ここで、半径Rは、対象領域の外周を弧とした扇形の半径であり、高さHhは、対象領域の界面から外周の最上部までの距離である。このとき、cosθ=(R−Hh)/Rが成り立つため、角度θを算出することができる。なお、最外周部分を対象領域とした場合は、半径Rは、配管500の半径に等しく、高さHは、界面から配管頂点までの距離に等しくなる。
【0064】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角2θの扇形の面積から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角2θの扇形の面積を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S404)。この面積に対応する区分の流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S405)。
【0065】
以上の対象領域の流量を算出する処理を上半分の全領域に対して繰り返す(S406)。
【0066】
上半分の全領域に対して流量を算出する処理を行なうと(S406:Yes)、各領域の流量を合計する(S407)。
【0067】
最上層の下側界面位置が配管500の中心以下の場合は(S401:No)、上半分の領域については、従来と同様の手順で積分を実行する(S408)。また、下半分の積分については以下のように行なう。
【0068】
まず、下半分で対象領域を設定する(S409)。そして、対象領域の半径Rが界面から配管500の中心までの高さKよりも大きいかどうかを判定する(S410)。ここで、対象領域の半径Rが界面から配管500中心までの高さKよりも大きい場合は、対象領域の下部分が界面により切り取られ、左右2つの部分に分割されることになる。一方、対象領域の半径Rが界面から配管500中心までの高さKよりも小さい場合は、対象領域は界面と交わらず、半円弧状のままとなる。
【0069】
対象領域の半径Rが界面から配管500中心までの高さKよりも大きい場合には(S410:Yes)、半径Rと界面から配管500中心までの高さKとから、対象領域の一方の領域の中心角θを算出する(S411)。
【0070】
一方、対象領域の半径Rが界面から配管500中心までの高さKよりも小さい場合には(S319:No)、一律にθ=90°とすればよい(S412)。
【0071】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角θの扇形の面積の2倍から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角θの扇形の面積の2倍を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S413)。
【0072】
対象領域の面積が算出されると、対応する流速を設定する(S414)。対象領域に対応する流速プロファイルがある場合には、その流速を流量演算に用い、対象領域に対応する流速プロファイルがない場合には、その領域の同一円周上の上半分領域に対応する流速プロファイルの流速を流量演算に用いものとする。
【0073】
そして、対象領域の面積と設定された流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S415)。
【0074】
以上の対象領域の流量を算出する処理を下半分の全領域に対して繰り返す(S416)。下半分の全領域に対して流量を算出する処理を行なうと(S416:Yes)、下半分および上半分の各領域の流量を合計する(S417)。これにより、最上層の流量が算出される(S205)。
【0075】
<中間層流量演算>
次に、中間層流量演算(S206)について説明する。
図13、
図14は、中間層流量演算(S206)の手順を示すフローチャートである。中間層流量演算では、演算対象の中間層が配管500の中心を跨ぐかどうか、すなわち配管中心500が中間層の上界面と下界面との間にあるかどうかで場合分けを行なう(S501)。
【0076】
図15(a)に示すように、中間層が配管500の中心を跨ぐ場合は(S501:Yes)、
図15(b)のハッチング領域に示すように、下半分と上半分それぞれについて積分幅毎に各領域の面積を算出し、対応する流速を乗じて合計すればよい。
【0077】
ただし、
図15(a)中の黒塗り領域のように、演算対象の層の流速プロファイルが存在せず、同一円周上の他方の流速プロファイルも存在しない場合がある。この場合は、
図15(b)に示すように、その層の流速プロファイル曲線を補間して流速を定めるものとする。流速プロファイル曲線の補間は、例えば、界面付近の曲線を補間使用範囲と定めて曲線近似により行なうことができる。このとき、補間使用範囲は、配管中心を跨がないことが望ましい。
【0078】
なお、演算対象の層の流速プロファイルが存在せず、同一円周上の他方の流速プロファイルが存在する場合は、他方の流速プロファイルを流用すればよい。
【0079】
そこで、まず、下半分について所定の順序で流量を算出する対象領域を設定する(S502)。下半分の対象領域の面積算出は、流速プロファイルの補間を行なう場合以外は、最上層流量演算(S205)における界面が配管500の中心以下の場合の、下半分の対象領域の面積算出と同様である。
【0080】
すなわち、下半分で対象領域を設定し(S502)、対象領域の半径Rが界面から配管500の中心までの高さKよりも大きいかどうかを判定する(S503)。
【0081】
対象領域の半径Rが界面から配管500中心までの高さKよりも大きい場合には(S503:Yes)、半径Rと界面から配管500中心までの高さKとから、対象領域の一方の領域の中心角θを算出する(S504)。一方、対象領域の半径Rが界面から配管500中心までの高さKよりも小さい場合には(S503:No)、一律にθ=90°とすればよい(S505)。
【0082】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角θの扇形の面積の2倍から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角θの扇形の面積の2倍を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S506)。
【0083】
対象領域の面積が算出されると、対応する流速を設定する(S507)。対象領域に対応する流速プロファイルがある場合には、その流速を流量演算に用い、対象領域に対応する流速プロファイルがない場合には、その領域の同一円周上の上半分領域に対応する流速プロファイルがあれば、その流速を流量演算に用い、その領域の同一円周上の上半分領域に対応する流速プロファイルがなければ、演算対象層の流速プロファイルを補間して得られた流速を流量演算に用いるものとする。
【0084】
そして、対象領域の面積と設定された流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S508)。以上の対象領域の流量を算出する処理を下半分の全領域に対して繰り返す(S509)。
【0085】
次に、上半分について所定の順序で面積を算出する対象領域を設定する(S510)。上半分の対象領域の面積算出は、流速プロファイルの補間を行なう場合以外は、最下層流量演算(S203)における界面が配管500の中心以上の場合の、上半分の対象領域の面積算出と同様である。
【0086】
すなわち、上半分で対象領域を設定し(S510)、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きいかどうかを判定する(S511)。
【0087】
対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも大きい場合には(S511:Yes)、半径Rと配管500中心から界面までの高さKとから、対象領域の一方の領域の中心角θを算出する(S512)。一方、対象領域の半径Rが配管500中心から界面までの高さKよりも小さい場合には(S511:No)、一律にθ=90°とすればよい(S513)。
【0088】
角度θが得られれば、領域の外周を弧とした半径R、中心角θの扇形の面積の2倍から、領域の内周を弧とした半径(R−積分幅d)、中心角θの扇形の面積の2倍を引くことで対象領域の面積を算出することができる(S514)。
【0089】
対象領域の面積が算出されると、対応する流速を設定する(S515)。対象領域に対応する流速プロファイルがある場合には、その流速を流量演算に用い、対象領域に対応する流速プロファイルがない場合には、その領域の同一円周上の下半分領域に対応する流速プロファイルがあれば、その流速を流量演算に用い、その領域の同一円周上の下半分領域に対応する流速プロファイルがなければ、演算対象層の流速プロファイルを補間して得られた流速を流量演算に用いるものとする。
【0090】
そして、対象領域の面積と設定された流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S516)。以上の対象領域の流量を算出する処理を上半分の全領域に対して繰り返す(S517)。
【0091】
下半分の各領域の流量と、上半分の各領域の流量とを算出すると、下半分および上半分の各領域の流量を合計する(S518)。これにより、上界面と下界面との間が配管500の中心を跨ぐ場合(S501:Yes)の中間層の流量が算出される。
【0092】
図16(a)に示すように、演算対象の中間層が配管500の中心を跨がない場合(S501:No)は、下半分あるいは上半分の領域について、積分層毎に
図16(b)に示すような領域の面積を算出すればよい。
図16(b)に示す領域の面積は、
図16(c)に示すような配管中心から遠い方の界面まで領域の面積から
図16(d)に示すような配管中心から近い方の界面まで領域の面積を引くことで求めることができる。
【0093】
そこで、
図14のフローチャートに示すように、対象領域を設定すると(S601)、配管500の中心から下界面までの面積を算出する(S602)。この領域は、
図16(c)に示す領域に対応する。
【0094】
対象領域が下半分であれば、最上層流量演算(S205)における界面が配管500の中心以下の場合の、下半分の対象領域の面積算出と同様であり、対象領域が上半分であれば、最下層流量演算(S203)における界面が配管500の中心以上の場合の、上半分の対象領域の面積算出と同様である。
【0095】
また、配管500の中心から上界面までの面積を算出する(S603)。この領域は、
図16(d)に示す領域に対応する。対象領域が下半分であれば、最上層流量演算(S205)における界面が配管500の中心以下の場合の、下半分の対象領域の面積算出と同様であり、対象領域が上半分であれば、最下層流量演算(S203)における界面が配管500の中心以上の場合の、上半分の対象領域の面積算出と同様である。
【0096】
そして、配管500の中心から下界面までの面積と配管500の中心から上界面までの面積とから対象領域面積を算出する(S604)。対象領域が下半分であれば、前者から後者を引けばよく、対象領域が上半分であれば、後者から前者を引けばよい。
【0097】
対象領域の面積が算出されると、対応する流速を設定する(S605)。対象領域に対応する流速プロファイルがある場合には、その流速を流量演算に用い、対象領域に対応する流速プロファイルがない場合には、演算対象層の流速プロファイルを補間して得られた流速を流量演算に用いるものとする。
【0098】
そして、対象領域の面積と設定された流速を乗じることで対象領域の流量が算出される(S606)。以上の対象領域の流量を算出する処理を全領域に対して繰り返す(S607)。
【0099】
各領域の流量を算出すると、各領域の流量を合計する(S608)。これにより、中間層が配管500の中心を跨がない場合(S501:No)の中間層の流量が算出される。以上、本実施形態の第1実施例について説明した。
【0100】
<第2実施例>
次に、本実施形態の第2実施例について説明する。第2実施例における超音波流量計は、第1実施例の超音波流量計に伝播時間差法による測定機能を付加したものである。そして、多相流で最上層が気体、すなわち非満水状態の多相流あるいは単層流でも層毎に流量を測定することができる。
【0101】
図17は、本発明の第2実施例に係る超音波流量計の構成を示すブロック図である。第1実施例と同じブロックについて同じ符号を付している。本例において、超音波流量計は配管500内を流れる被測定流体Fの流量を測定する。被測定流体Fは、単層流であってもよいし、多相流であってもよい。さらには配管500内をすべて満たす満水状態であってもよいし、上部に空間を有する非満水状態であってもよい。本図の例では流体F1と流体F2とが層になり、さらに、流体F2の上部に気層が存在しており、非満水の状態である。
【0102】
本図に示すように、第2実施例の超音波流量計は、超音波センサ210に加えて超音波センサ210aを備え、測定制御部100に替えて測定制御部101を備えている。超音波センサ210aは、配管500の上部で、超音波センサ210から斜めに出射された超音波信号を受信でき、超音波センサ210aが出射した超音波信号を超音波センサ210が受信できる位置に設置される。
【0103】
測定制御部101は、出力制御部110、受信制御部120、流速プロファイル生成部130、反射信号強度プロファイル生成部140、界面判定部150、流量算出部160、測定結果出力部170、測定方法制御部180、伝播時間差法測定部190を備えている。
【0104】
測定方法制御部180は、伝播時間差法を用いた流量測定と、第1実施例に示したパルスドップラー法あるいは反射相関法を用いた流量測定の実行を制御する。伝播時間差法測定部190は、伝播時間差法を用いた流量測定を行なう。
【0105】
第2実施例の超音波流量計における流量測定の手順について
図18のフローチャートを参照して説明する。まず、測定に際しての各種設定を行なう(S701)。各種設定では、配管500の内径、超音波センサ210、210aの取付角度、その他パラメータ等の設定を行なう。
【0106】
第2実施例では、最初にパルスドップラー法あるいは反射相関法のいずれかの方式で、下側の超音波センサ210および上側の超音波センサ210aで測定を行なう(S702)。なお、下側の超音波センサ210については第1実施例と同様に測定を行ない、上側の超音波センサ210aについてエコー波の受信の可否が確認できればよい。
【0107】
そして、測定結果に基づいて満水非満水の判定を行なう(S703)。具体的には、下側の超音波センサ210および上側の超音波センサ210aともエコー波を受信したときは、満水状態であると判定し、下側の超音波センサ210のみでエコー波を受信したときは、非満水状態であると判定する。なお、下側の超音波センサ210および上側の超音波センサ210aともエコー波を受信しないときは配管500内が空であると判定するようにしてもよい。
【0108】
また、測定で得られた反射信号強度プロファイルに基づいて層数の判定を行なう(S704)。層数の判定は第1実施例と同様に行なうことができる。
【0109】
この結果、配管500内が満水状態でかつ単層流の場合(S705:Yes)には、伝播時間差法を用いた測定を実行する(S706)。これは、被測定流体Fが満水状態であり、単層流であれば、伝播時間差法による測定で高い精度が得られるからである。伝播時間差法を用いた測定では、超音波センサ210、210aとで交互に超音波信号を送受信して、それぞれの伝播時間を測定し、伝播時間差法による流量演算を行ない(S707)、得られた流量を測定結果として出力する(S709)。
【0110】
一方、満水状態でない場合あるいは多相流の場合には(S705:No)、第1実施例で示した流量測定を行なう。すなわち、処理(S702)で既に取得した流速プロファイルと受信信号強度プロファイルとに基づいた流量演算を実行すし(S708)、得られた流量を測定結果として出力する(S709)。
【0111】
なお、非満水状態の場合には、気層を最上層とした多相流として扱えばよく、第1実施例における最上層流量演算(S203)を省くことができる。