(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体吐出装置は、前記第1重なり部の前記圧力室に対するずれがないとした場合に、前記第1方向において、前記第1重なり部の両端が、前記圧力室の外側に位置するものであって、
前記パターン形成工程において、
前記間隔検出工程で検出された前記第1重なり部同士の間隔から、前記第1方向において、いずれかの前記第1重なり部の片側の端が、対応する圧力室の内側に位置していると判断される場合には、前記間隔検出工程で検出された前記複数の第1導電パターンの間隔に基づいて、前記第2重なり部の前記第3方向における前記一方側の端の位置を調整して前記第2導電パターンを形成し、
前記間隔検出工程で検出された前記第1重なり部同士の間隔から、前記第1方向において、全ての前記第1重なり部の両端が、対応する圧力室の外側に位置していると判断される場合には、全ての前記第2重なり部の前記第3方向における前記一方側の端の位置が同じとなるように、前記第2導電パターンを形成することを特徴とする請求項1又は2に記
載の液体吐出装置の製造方法。
前記間隔検出工程において、前記複数の第1重なり部のうち、前記第1方向における両端に位置する2つの第1重なり部の間の距離に基づいて、前記第1重なり部同士の間隔を推定し、
前記パターン形成工程において、前記距離に基づいて、前記第2重なり部の前記第3方向における前記一方側の端の位置を調整して前記第2導電パターンを形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の液体吐出装置の製造方法。
前記圧力室は、前記第3方向に長尺であり、前記第3方向の長さが500μm以上且つ1000μm以下であり、前記第1方向の長さが250μm以上且つ500μm以下であり、
前記第1重なり部は、前記第3方向における前記一方側に前記圧力室よりも外側まで延び、
前記第3方向において、前記複数の圧力室のうち、配列の中央部に位置する前記圧力室の前記一方側の端と、当該圧力室に対応する前記第2重なり部との間の長さが50μmよりも大きく、
前記第3方向において、前記複数の圧力室のうち、配列の両端部に位置する前記圧力室の前記一方側の端と、当該圧力室に対応する前記第2重なり部との間の長さが50μm以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
(プリンタの全体構成)
図1に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(本発明の「液体吐出装置」)、用紙搬送ローラ4などを備えている。キャリッジ2は、走査方向(本発明の「第3方向」)に延びた2本のガイドレール5に支持され、ガイドレール5に沿って走査方向に往復移動する。なお、以下では、
図1に示すように走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載され、その下面に形成された複数のノズル15からインクを吐出する。用紙搬送ローラ4は、走査方向と直交する搬送方向(本発明の「第1方向」)におけるキャリッジ2の両側に配置され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。そして、プリンタ1では、用紙搬送ローラ4により記録用紙Pを搬送方向に搬送させつつ、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインクを吐出させることによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0014】
(インクジェットヘッド)
次に、インクジェットヘッド3について説明する。
図2〜
図5に示すように、インクジェットヘッド3は、複数のノズル15や複数の圧力室10などのインク流路が形成された流路形成部材21と、圧力室10内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータ22とを備えている。なお、図面を見やすくするために、
図2では、後述の導電パターン44、45等の図示を省略している。また、
図3〜
図6では、後述の圧力室10とノズル15以外のインク流路の図示を省略している。
【0015】
流路形成部材21は、
図7に示すように、4枚のプレート31〜34の積層体である。4枚のプレート31〜34のうち3枚のプレート31〜33は、ステンレスなどの金属材料からなる。プレート34は、ポリイミドなどの合成樹脂材料あるいは、プレート31〜33と同様の金属材料からなる。
【0016】
プレート31には、複数の圧力室10が形成されている。複数の圧力室10は、走査方向を長手方向とする略楕円の平面形状をそれぞれ有し、搬送方向に配列されて圧力室列9を形成している。プレート31には、
図2に示すように、4つの圧力室列9が走査方向に配列されている。
【0017】
プレート32には、略円形の複数の貫通孔12、13及び略楕円形のインク供給口8が形成されている。各貫通孔12は、圧力室10の走査方向における左端部と重なる位置に配置されている。各貫通孔13は、圧力室10の走査方向における右端部と重なる位置に配置されている。インク供給口8は、後述のマニホールド流路11の搬送方向下流端と重なる位置に配置されている。インク供給口8は、マニホールド流路11に連通する。貫通孔12は、圧力室10とマニホールド流路11とを連通し、貫通孔13は、圧力室10と後述の貫通孔14とを連通する。
【0018】
プレート33には、4つのマニホールド流路11と、複数の略円形の貫通孔14とが形成されている。マニホールド流路11は、圧力室列9に対応して設けられたものであり、対応する圧力室列9を形成する全ての圧力室10にまたがって搬送方向に延びている。貫通孔14は、貫通孔13及びプレート34のノズル15と重なる位置に配置され、両者を連通する。インク供給口8から供給されたインクは、マニホールド流路11に流入する。インクは、貫通孔12により圧力室10毎に分配され、2つの貫通孔13、14を介してノズル15に至る。
【0019】
圧電アクチュエータ22は、
図3に示すように、3層の圧電層41〜43と、導電パターン44〜46とを有する。圧電層41〜43は、チタン酸鉛ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなる。圧電層41は、流路形成部材21の上面に配置され、複数の圧力室10にまたがって連続的に延びている。圧電層42は、圧電層41の上面に配置されている。圧電層43は、圧電層42の上面に配置されている。
【0020】
導電パターン44は、圧電層41と圧電層42との間に配置され、複数の重なり部44aと、4つの接続部44bと、1つの接続部44cとを有している。複数の重なり部44aは、各圧力室列9に沿って、それぞれ、搬送方向に隙間38をあけて配列されている。搬送方向において、2つの重なり部44aが、1つの圧力室10の両端部と重なっている。隙間38は、圧力室10の中央部と重なる。また、搬送方向において、隙間38の中心は、配列の端に近くなるほど、圧力室10の中心に対するずれが大きくなっている。例えば、
図4でG11<G12<G13<G14となっている。
【0021】
4つの接続部44bは、圧力室列9毎に設けられ、搬送方向に延びて、圧力室10の外で重なり部44aの左端部同士を接続している。接続部44cは、走査方向に延びて、4つの接続部44bの搬送方向における上流側の端部同士を接続させている。また、接続部44cの走査方向の左端部は、搬送方向の下流側に折れ曲がっている。この折れ曲がった部分44dは、圧電層42、43の、導電性材料が充填されたスルーホール39aを介して、圧電層43の上面に配置された表面電極49aと接続されている。表面電極49aは、図示しない電源に接続されている。導電パターン44は、この電源によって、常にグランド電位(GND)に保持されている。
【0022】
導電パターン45は、圧電層42と圧電層43との間に配置され、複数の重なり部45aと、4つの接続部45bと、1つの接続部45cとを有する。複数の重なり部45aは、各圧力室列9に沿って搬送方向に隙間をあけて配列されている。搬送方向において、重なり部45aは、圧力室10の中央部と重なっている。このとき、重なり部45aの両端は、圧力室10の内側に位置している。また、搬送方向において、重なり部45aの中心は、配列の端に近くなるほど、圧力室10の中心に対するずれが大きくなっている。例えば、
図5でG11<G12<G13<G14となっている。
【0023】
ここで、1つのインクジェットヘッド3では、圧力室10の中心に対する重なり部45aの中心のずれ量は、同じ圧力室10の中心に対する隙間38の中心のずれ量とほぼ等しい。しかし、インクジェットヘッド3の間では、圧電層41〜43の焼成時の収縮量が異なり、これらのずれ量がばらつくことになる。
【0024】
また、重なり部45aは、
図5に示すように、搬送方向の左側に圧力室10よりも外側まで延びている。4つの接続部45bは、圧力室列9毎に対応しており、搬送方向に延びて、圧力室10の端部で重なり部45aの右端部同士を接続している。接続部44cは、走査方向に延びて、4つの接続部45bの搬送方向における下流側の端部同士を接続している。また、接続部45cの走査方向の左端部は、搬送方向の上流側に折れ曲がっている。この折れ曲がった部分45dは、圧電層43の導電性材料が充填されたスルーホール39bを介して、圧電層43の上面に配置された表面電極49bと接続されている。表面電極49bは、図示しない電源に接続されている。導電パターン45は、この電源によって、常に例えば20V程度の所定の電位(Vdd)に保持されている。
【0025】
導電パターン46は、圧電層43の上面に配置されている。導電パターン46は、複数の個別電極47(本発明の「第2重なり部」)と、上述の表面電極49a、49bとを含む。各個別電極47は、圧力室10に対して個別に設けられ、圧力室10と重なっている。また、個別電極47は、搬送方向の両側に、圧力室10の外側まで延びている。走査方向については、個別電極47の右端47aが圧力室10の内側にあり、左端部が圧力室10の外で接続端子47bとなっている。このうち、個別電極47の右端47aは、圧力室列9の端に近いものほど、圧力室10の右端10aとの間の長さが短くなっている。例えば、
図6でF11>F12>F13>F14となっている。一方、個別電極47の左端部は、圧力室10との位置関係がいずれも同じである。そのため、個別電極47は、圧力室列9の端に近いものほど、走査方向に圧力室10と重なる長さが長くなっている。例えば、
図6で、L11<L12<L13<L14となっている。
【0026】
なお、接続端子47bは、図示しないドライバICに接続されている。複数の個別電極47は、このドライバICにより、駆動信号が選択的に付与される。駆動信号は、グランド電位と駆動電位とが組み合わさったパルス信号で、駆動電位は、重なり部45aの電位(Vdd)と等しい。
【0027】
図8に、インクジェットヘッド3の断面形態を示す。個別電極47は、圧力室10の中央部で、圧電層43を挟んで重なり部45aと対向し、活性部R11を構成している。圧力室10の搬送方向両端部では、個別電極47は、圧電層42、43を挟んで重なり部44aと対向し、活性部R12を構成している。活性部R11では、圧電層43が厚み方向上側に分極され、活性部R12では、圧電層42、43が厚み方向下側に分極されている。本実施の形態では、活性部R11、R12は、個別電極47が共通である。1つの圧力室10に対して、1つの活性部R11及び2つの活性部R12が配置され、搬送方向について、活性部R11が活性部R12に挟まれている。
【0028】
なお、本実施の形態では、導電パターン44、45が、本発明の第1導電パターンに相当し、導電パターン46が本発明の第2導電パターンに相当する。また、導電パターン44を第1導電パターンとしてみたときには、圧電層42、43が本発明の第1圧電層に相当し、圧電層41が本発明の第2圧電層に相当する。導電パターン45を第1導電パターンとしてみたときには、圧電層43が本発明の第1圧電層に相当し、圧電層42が本発明の第2圧電層に相当する。
【0029】
(圧電アクチュエータの駆動方法)
次に、圧電アクチュエータ22を駆動してノズル15からインクを吐出させる方法について説明する。待機状態では、重なり部44aはグランド電位に、重なり部45aは所定電位(Vdd)とされ、全ての個別電極47はグランド電位とされる。この状態では、個別電極47と重なり部45a間に電位差(=Vdd)があり、活性部R11には、分極と同じ方向に電界が掛かっている。活性部R11は、分極方向と直交する面方向に収縮し、活性部R11と圧電層41、42との間で、歪み差が生まれる。これにより、全ての圧電層41〜43の圧力室10と重なる部分(単位アクチュエータ)が、全体として圧力室10側に凸となるように変形している。
【0030】
インクの吐出に際しては、駆動信号が、対象の個別電極47に付与される。個別電極47の電位が駆動電位に切り替わると、活性層R11の電界が無くなり、その収縮状態を解く。一方、個別電極47と重なり部44a間には電位差(=Vdd)が生じ、活性部R12に分極と同じ方向の電界が掛かる。このとき、活性部R12は、分極方向と直交する面方向に収縮する。圧電層41との歪み差により、活性部R12は圧電層41側に凸に変形するが、圧力室10の端に固定されているので、単位アクチュエータは、全体として圧力室10と反対側に凸となるように変形して、圧力室10の容積が増大する。これにより、圧力室10内のインクの圧力が低下し、マニホールド流路11から圧力室10にインクが流れ込む。
【0031】
そして、次に、個別電極47の電位が駆動電位に戻ると、活性部R12の収縮状態が解かれ、活性部R11が収縮状態に戻る。このとき、単位アクチュエータは、全体として圧力室10側に凸となるように変形して、圧力室10の容積が減少する。圧力室10内のインクの圧力が上昇し、ノズル15からインクが吐出される。
【0032】
ここで、本実施の形態では、上述したように、搬送方向において、圧力室列9に対応する複数の隙間38のうち、配列の端に近い隙間38の中心ほど、圧力室10の中心に対するずれが大きくなっている。複数の重なり部45aについても同様に、配列の端に近い重なり部45aの中心ほど、圧力室10の中心に対しするずれが大きくなっている。
【0033】
そのため、本実施の形態と異なり、全ての個別電極47の形状及びサイズが同じ場合、駆動時の単位アクチュエータの変形量は、圧力室列9の配列の端に近いものほど小さくなる。その結果、圧電アクチュエータ内で、インクの吐出特性に分布が生じ、圧電アクチュエータ間でばらつきが生じることになる。
【0034】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、圧力室列9に対応する複数の個別電極47は、配列の端に近い圧力室10に対して設けられた個別電極47ほど、走査方向における、重なり部44a、45aと重なる部分の長さが長くなっている。そのため、インクの吐出特性の分布ばらつきを低減することができる。
【0035】
(インクジェットヘッドの製造方法)
次に、インクジェットヘッド3の製造方法について説明する。まず、
図9、
図10(a)に示すように、プレート31〜34を互いに接合して流路形成部材21を作製する(S101、本発明の「流路形成部材作製工程」)。この場合、プレート31〜34には、圧力室10、マニホールド流路11、貫通孔12〜14及びノズル15に相当する溝や孔が形成されている。なお、S101の工程は、次に説明するS102〜S105の工程の後、S106の工程の前に行ってもよいし、S102〜S105の工程と並行して行ってもよい。
【0036】
次に、
図10(b)に示すように、上面に導電パターン44を形成した圧電層41と、上面に導電パターン45を形成した圧電層42と、個別電極47の形成されていない圧電層43と積層させて構造体50を作製する(S102、本発明の「構造体作製工程」)。ここで、導電パターン44、45は、例えば、印刷によって形成する。続いて、S102で作製した構造体50を、高温(800〜1000℃程度)で焼成する(S103、本発明の「焼成工程」)。
【0037】
次に、焼成後の重なり部45同士の間隔を検出する。具体的には、配列の両端に位置する2つの重なり部45aについて搬送方向の距離Dを検出する(S104、本発明の「間隔検出工程」)。ここで、搬送方向における隙間38同士の間隔と、重なり部45a同士の間隔とはほぼ同じとなる。したがって、距離Dを検出することは、搬送方向における隙間38同士の間隔や、重なり部45a同士の間隔を検出することと実質的に同じことである。これにより、隙間38同士の間隔や重なり部45a同士の間隔を個別に検出するよりも容易に、これらの間隔に対応した長さを取得することができる。
【0038】
ここで、導電パターン44、45は、構造体50の内部に位置しているが、圧電層41〜43の厚みが薄い(例えば、15μm程度)ため、例えば、焼成後の構造体50を光にかざすなどすれば、導電パターン44、45の位置を把握して、距離Dを検出することができる。なお、S104では、圧力室列9に対応する複数の重なり部44aのうち、配列の両端に位置する2つの重なり部44aの間の搬送方向の距離を検出してもよい。
【0039】
次に、
図10(c)に示すように、圧電層43の上面に、印刷などにより導電パターン46を形成する(S105、本発明の「パターン形成工程」)。配列の中央部において個別電極47と重なり部45の中心同士が重なるように導電パターン46が形成される。これにより、圧電アクチュエータ22が完成する。S105では、S104で検出した距離Dと、設計上の距離との差が大きいほど、配列の中央部における、個別電極47の右端47aと圧力室10の右端10aとの間の長さFを大きくする。本実施の形態では、配列の中央部から両端に向かって、長さFが順次小さくなるが、この小さくなり具合(長さFの変化率)も大きくする。また、配列の中央部では、個別電極47と重なり部45aの中心同士が重なるよう、導電パターン46を形成する。このとき、個別電極47の並びは、搬送方向について、圧力室10の並びと同じ位置関係を持っている。
【0040】
次に、流路形成部材21と圧電アクチュエータ22(構造体50)とを接着剤などによって接合する(S106、本発明の「接合工程」)。S106では、搬送方向において、配列の中央部の圧力室10と個別電極47の中心同士のずれが最小となるように(例えば、
図4、
図5のG1が最小となるように)、位置合わせを行ったうえで、流路形成部材21と圧電アクチュエータ22とを接合する。
【0041】
なお、圧力室列9を形成する圧力室10の数が奇数個の場合には、圧力室列9を形成する複数の圧力室10のうち、配列の最も中央に位置する1つの圧力室10が、上述の「圧力室列9における、配列の中央部に位置する圧力室10」に当たる。一方、圧力室列9を形成する圧力室10の数が偶数個の場合には、圧力室列9を形成する複数の圧力室10のうち、配列の最も中央に位置する2つの圧力室10が、上述の「圧力室列9における、配列の中央部に位置する圧力室10」に当たる。そして、上記S101〜S106の工程によって、インクジェットヘッド3が完成する。
【0042】
ここで、S102で構造体50を焼成したときには、圧電層41〜43が収縮する。このときの収縮量は、構造体50毎に異なる。S106で流路形成部材21と焼成後の構造体50とを接合した場合、両者の組み合わせ毎に、圧力室10と電極44a、45a、47との位置関係が異なることになる。
【0043】
本実施の形態の場合、S106の接合工程において、圧力室列9を形成する複数の圧力室10のうち、配列の中央に位置する圧力室10と、これに対応する隙間38及び重なり部45aとを位置合わせしている。そのため、搬送方向において、配列の端に近い圧力室10に対応する複数の隙間38の中心及び複数の重なり部45aの中心ほど、圧力室10の中心に対するずれが大きくなる。
【0044】
そこで、本実施の形態では、構造体50の焼成後に、距離Dを測定し、その測定結果に基づいて、圧電層34の上面に導電パターン46を形成している。したがって、搬送方向における、隙間38及び重なり部45aの中心の、圧力室10の中心に対するずれに応じて、各個別電極47の右端47aの位置を調整して、導電パターン46を形成することができる。これにより、上述したような、複数のノズル15からのインクの吐出特性のばらつきを確実に低減することができる。
【0045】
次に、上述したような、走査方向における、各個別電極47の右端47aと圧力室10の右端10aとの間の好適な長さについて説明する。
図11(a)、(b)、
図12(a)(b)は、インクジェットヘッド3における、右端47aと右端10aとの間の長さFと、圧電アクチュエータ22の変形の程度を示す値Aとの関係を示している。ここで、値Aとは、実際の圧力室10の容積の変化量を、圧力室10の容積の変化量が最大となるときの容積の変化量で規格化した値であり、値Aが1のときに圧電アクチュエータ22の変形が最大であることを示す。
【0046】
図11(a)は、圧電層41〜43の厚みを異ならせた圧電アクチュエータ22での、長さFと値Aとの関係を示している。より詳細に説明すると、
図11(a)では、圧電層41〜43の厚みを15μmとした場合(例1)の長さFと値Aとの関係を実線で示している。また、圧電層41〜43の厚みを10μmとした場合(例2)の長さFと値Aとの関係を破線で示している。また、圧電層41〜43の厚みを5μmとした場合(例3)の長さFと値Aとの関係を点線で示している。また、圧電層41〜43の厚みを30μmとした場合(例4)の長さFと値Aとの関係を一点鎖線で示している。また、圧電層42、43の厚みを30μmとし且つ圧電層41の厚みを5μmとした場合(例5)の、長さFと値Aとの関係をし二点鎖線で示している。なお、例1〜5では、搬送方向における圧力室10の長さ(以下、「圧力室10の幅」とすることがある)を340μmとし、走査方向における圧力室10の長さ(以下、「圧力室10の長さ」とすることがある)を660μmとし、搬送方向における重なり部45aの長さ(以下、「重なり部45aの幅」とすることがある)を230μmとしている。
【0047】
図11(b)は、圧電層41〜43の厚みを変化させるとともに、インクジェットヘッド3のコンプライアンス比(圧力室10内のインクの剛性に対する圧電アクチュエータ22の駆動部の剛性の比)を合わせるために圧力室10の幅を変化させた圧電アクチュエータ22における、長さFと値Aとの関係を示している。より詳細に説明すると、
図11(b)では、上述の例1、2における長さFと値Aとの関係を、それぞれ、実線及び破線で示している。また、例2と同様に圧電層41〜43の厚みを10μmとするとともに、例1とコンプライアンス比を合わせるために、圧力室10の幅を267μmとした場合(例6)の長さFと値Aとの関係を点線で示している。
【0048】
図12(a)は、重なり部45aの幅を異ならせた圧電アクチュエータ22での、長さFと値Aとの関係を示している。より詳細に説明すると、上述の例1における長さFと値Aとの関係を実線で示している。また、重なり部45aの幅を200μmとした場合(例7)の長さFと値Aとの関係を破線で示している。また、重なり部45aの幅を300μmとした場合(例8)の長さFと値Aとの関係を点線で示している。なお、例7、8でも、例1と同様、圧電層41〜43の厚みを15μm、圧力室10の幅を340μmとし、走査方向における圧力室10の長さを660μmとしている。
【0049】
図12(b)は、走査方向における圧力室10の長さを異ならせた圧電アクチュエータ22での、長さFと値Aとの関係を示している。より詳細に説明すると、上述の例1における長さFと値Aとの関係を実線で示している。また、圧力室10の長さを860μmとした場合(例9)の長さFと値Aとの関係を破線で示している。なお、例9でも例1と同様、圧電層41〜43の厚みを15μmとし、圧力室10の幅を340μmとしている。
【0050】
図11(a)、(b)、
図12(a)(b)に示す例1〜9の結果から、圧電層41〜43の厚み、重なり部45aの幅、圧力室10のサイズ等によらず、長さFが50μm以下の範囲では、値Aはほとんど変動せず且つほぼ最大となり、長さFが50μmを超えると値Aが大きく低下することがわかる。
【0051】
したがって、圧電層41〜43の変形量を極力大きくする観点から、複数の個別電極47のうち、配列の最も端に位置する個別電極47については、走査方向において、個別電極47の右端47aと、圧力室10の右端10aとの間の長さF(例えば、
図6のF14)を50μm以下とすることが好ましい。また、右端47aの位置を調整することによる、単位アクチュエータの変形量の分布の低減効果を十分に得る観点から、配列の最も中央に位置する個別電極47については、走査方向において、長さF(例えば、
図6のF11)を50μmよりも大きくすることが好ましい。
【0052】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0053】
上述の実施の形態では、S106の工程において、S101の工程で作製した流路形成部材21と、S102〜S105の工程で作製した構造体50(圧電アクチュエータ22)とを接合することについて説明した。ここでは、流路形成部材21、圧電アクチュエータ22(構造体50)を複数作製し、複数の流路形成部材21のいずれかと、複数の圧電アクチュエータ22のいずれかとを、適宜の組み合わせで接合する場合について説明する。
【0054】
例えば、変形例1では、
図13に示すように、まず、流路形成部材21を複数作製する(S201)。続いて、作製した複数の流路形成部材21を、圧力室列9を形成する複数の圧力室1同士の間隔に基づいて、複数のランクに分類する(S202、本発明の「流路形成部材分類工程」)。
【0055】
次に、構造体50を複数作製する(S203)。続いて、作製した複数の構造体50を焼成する(S204)。複数の焼成済みの構造体50について、それぞれ距離Dを検出する(S205)。そして、S205で検出した距離Dと、設計上の距離との差等に基づいて、複数の焼成済みの構造体50を複数のランクに分類する(S206、本発明の「構造体分類工程」)。続いて、各構造体50の圧電層43の上面に、それぞれ、上述の実施の形態と同様、距離Dに基づいて右端47aの位置を調整して、複数の個別電極47を形成する(S207)。
【0056】
次に、S202、S206でのランク分け結果に基づいて、接合する流路形成部材21と構造体50との組み合わせを決定する(S208、本発明の「組み合わせ決定工程」)。例えば、上記2つの圧力室の間の距離の設計値との差と、距離Dの設計値との差とが近い流路形成部材21と構造体50とを組み合わせる。そして、S208で決定された組み合わせで、流路形成部材21と構造体50とを接合する(S209)。
【0057】
インクジェットヘッド3の作製に際して、ヘッド内で吐出特性の分布が小さく、ヘッド間でも特性が揃ったものとするためには、ヘッド構成部材を分類するランク数を、ヘッド内及びヘッド間で特性差を許容範囲内にできる数とする必要がある。全ての個別電極47の形態(形状及びサイズ)が同じ場合、単位アクチュエータ間の収縮量の分布が比較的大きくなり、分布も圧電アクチュエータ間でばらつくことを考えると、大きなランク数を必要とする。そのため、S202での流路形成部材21の分類、S206での焼成済み構造体50の分類、及び、S208での流路形成部材21と構造体50との組み合わせが煩雑なものになる。
【0058】
これに対して、変形例1では、個別電極47の形態や位置関係を調整して、単位アクチュエータ間の収縮量の分布を抑制している。調整は、S205で検出した距離Dに基づいて行われる。そのため、搬送方向について圧力室10の中心と隙間38及び重なり部45aの中心との間にずれがあっても、圧電アクチュエータは変形特性の比較的揃ったものとなる。延いては、流路形成部材21及び構造体50のうち少なくともいずれか一方のランク数を少なくすることができる。
【0059】
また、上述の実施の形態では、圧力室列9に対応する複数の個別電極47のうち、配列の最も端に位置する個別電極47は、走査方向における右端47aと圧力室10の右端10aとの間の長さを50μm以下とし、最も中央に位置する個別電極47を、走査方向については、右端47aと圧力室10の右端10aとの間の長さを50μmよりも大きくしたが、これには限らない。例えば、全ての個別電極47について、走査方向における右端47aと右端10aとの間の長さを、50μm以下、あるいは、50μmよりも大きくしてもよい。
【0060】
また、上述の実施の形態では、S104において距離Dを検出し、S105において距離Dに基づいて、各個別電極47の右端47aの位置を調整して、複数の個別電極47を形成したが、これには限らない。S104において、複数の重なり部44a同士の間隔、複数の隙間38同士の間隔、及び、複数の重なり部45a同士の間隔のうちのいずれかを検出してもよい。そして、S105においては、検出した上記間隔に基づく右端47aの位置の調整をして、複数の個別電極47を形成してもよい。
【0061】
また、上述の実施の形態では、流路形成部材21と圧電アクチュエータ22(構造体50)とを接合する際に、搬送方向において、配列の最も中央に位置する圧力室10の中心と、この圧力室10に対応する重なり部45aの中心とを位置合わせしたが、これには限らない。配列の一方の端に位置する圧力室10など、別の圧力室10の中心とこれに対応する重なり部45aの中心とを位置合わせしてもよい。
【0062】
また、圧電アクチュエータは、上述の実施の形態の構造のものには限られない。例えば、変形例2では、
図14〜
図17に示すように、圧電アクチュエータ122が、上述の導電パターン44〜46の代わりに、導電パターン144〜146を備えたものとなっている。
【0063】
導電パターン144は、圧力室列9毎に形成された複数の重なり部144aと、図示しない接続部を有している。いずれも、2つの圧電層41、42の間に配置されている。導電パターン144は、圧力室列9を形成する全ての圧力室にまたがって連続的に延びた短冊形状の部分を有している。重なり部144aは、導電パターン144の上記短冊状の部分の、各圧力室10と重なる部分によって形成されている。
図14において、重なり部144aの走査方向左側端部は、圧力室10の左側端部より右側に位置し、後述の重なり部146aの左端146a1よりも左側に位置している。各重なり部144aは、図示しない接続部で、電気的に接続されている。導電パターン144は、導電パターン44の場合と同様に、圧電層42、43のスルーホールを介して圧電層43上面の表面電極と電気的に接続されている。表面電極は、図示しない電源に接続され、常にグランド電位に保持されている。
【0064】
導電パターン145(本発明の「第1導電パターン」)は、圧電層42と圧電層43との間に配置されている。導電パターン145は、複数の個別電極145a(本発明の「第1重なり部」)を有している。各個別電極145aは、
図16に示すように、走査方向の左側部分を除いて、圧力室10の中心と重なっている。個別電極145aは、大部分が圧力室10の内側に位置し、走査方向左側の先端部(接続端子145a1)が圧力室10の外に位置している。個別電極145a同士は、隙間138を介して搬送方向に隣接する。個別電極145aの中心は、配列の端に近いほど、圧力室10の中心に対するずれが大きくなっている(例えば、
図16でG21<G22<G23<G24となっている)。各接続端子145a1は、圧電層43のスルーホール149を介して、圧電層43上面の表面電極147と電気的に接続されている。表面電極147は、図示しないドライバICに接続され、駆動信号が選択的に付与される。駆動信号は、グランド電位と駆動電位(Vdd)とが組み合わさったパルス信号である。
【0065】
導電パターン146(本発明の「第2導電パターン」は、
図17に示すように、圧電層43の上面に配置されている。導電パターン146は、複数の重なり部146a(本発明の「第2重なり部」)と接続部146bとを有している。複数の重なり部146aは、複数の圧力室10に対して個別に設けられている。また、搬送方向において、各重なり部146aは、両方の端部圧力室10の外側に有し、隙間139を介して別の重なり部146と隣接している。
【0066】
また、各重なり部146aは、走査方向において、左端146a1が圧力室10の左端10bを挟んで表面電極147と対向している。全ての左端146a1は、左端10bより右側にあり、配列の端に近い重なり部146aほど、左端146a1と左端10bとの間の長さが短い(例えば、
図17でF21>F22>F23>F24となっている)。一方、各重なり部146aは、走査方向の右側に個別電極145aよりも右側まで延びている。これらのことから、配列の端に近い重なり部146aほど、個別電極145aと重なる部分の長さが長くなっている(例えば、
図17で、L21<L22<L23<L24となっている)。
【0067】
接続部146bは圧力室列9毎に設けられ、圧力室列9に対応する複数の重なり部146aの右側の端部同士を接続する。また、導電パターン146は、図示しない接続部を有しており、接続部146b同士が接続されている。接続部は、電源に接続され、常にグランド電位に保持されている。
【0068】
図15に、変形例2の断面形態を示す。個別電極145aは、圧力室10の中央部で、圧電層42を挟んで重なり部144aと上下方向下側に対向し、活性部R21を構成している。さらに、個別電極145aは、圧電層43を挟んで重なり部146aと上下方向上側に対向し、活性部R22を構成している。活性部R21では、圧電層42が下側に分極され、活性部R22では、圧電層43が上側に分極されている。本変形例では、活性部R21、R22が、共通の個別電極145aを挟んで、上下方向に積層している。
【0069】
次に、圧電アクチュエータ122の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ122では、予め、全ての個別電極145aがグランド電位に保持されている。インクの吐出に際しては、駆動信号が、対象の個別電極145aに付与される。個別電極145aの電位が駆動電位に切り替わると、個別電極145aと上下の重なり部144a、146aとの間に電位差(=Vdd)が生じ、活性部R21、R22に分極方向の電界が発生する。このとき、活性部R21、R22は、分極方向と直交する面方向に収縮する。圧電層41との歪み差により、活性部R21、R22は圧電層41側(圧力室10側)に凸に変形する。このとき、圧力室10の容積が減少し、対応するノズル15からインクが吐出される。
【0070】
変形例2では、配列の外側に近い個別電極145aほど、搬送方向において、個別電極145aの中心の、圧力室10の中心に対するずれが大きくなっている。これに対して、配列の外側に近い重なり部146aほど、個別電極145aと重なる部分の面積が大きくなっている。これにより、上述の実施の形態と同様、複数のノズル15からのインクの吐出特性の分布ばらつきを低減することができる。
【0071】
また、変形例2では、導電パターン146が、圧力室列9に対応する複数の重なり部146aの間に隙間139を有するものであったが、これには限られない。変形例3では、
図18に示すように、変形例1の圧電アクチュエータ122において、導電パターン146を導電パターン166に置き換えている。導電パターン166は、2つの圧力室列9に対して個別に設けられ、各圧力室列9を形成する複数の圧力室10にまたがって搬送方向に連続的に延びた2つの電極166aを有している。なお、変形例3では、電極166aの各圧力室10と重なる部分が、それぞれ、本発明の第2重なり部に相当する。そして、隣接する第2重なり部の間に隙間がなく、複数の第2重なり部が、連続的につながっている。
【0072】
また、電極166aの圧力室列9を形成する複数の圧力室10のうち、配列の端に近い圧力室10に対応する部分ほど、走査方向における、電極166aの左端166a1と、圧力室10の左端10aとの間の長さが短くなっている。この場合でも、上述の実施の形態と同様、複数のノズル15からのインクの吐出特性のばらつきを低減することができる。
【0073】
また、変形例4では、
図19(a)に示すように、圧電アクチュエータ201が、上述の実施の形態の圧電アクチュエータ22から、圧電層42及び導電パターン44を除いた構造となっている。変形例5では、
図19(b)に示すように、圧電アクチュエータ202が、上述の実施の形態の圧電アクチュエータ22から、圧電層42及び導電パターン45を除いた構造となっている。
【0074】
変形例4では、搬送方向において、配列の端に近い重なり部45aほど、重なり部45aの中心の圧力室10の中心に対しするずれが大きくなっている。しかし、配列の端に近い個別電極47ほど、重なり部44aと重なる部分の面積が大きくなっている。また、変形例5では、搬送方向において、配列の端に近い隙間38ほど、隙間38の中心の圧力室10の中心に対するずれが大きくなっている。しかし、配列の端に近い個別電極47ほど、重なり部45aと重なる部分の面積が大きくなっている。これらのことから、変形例4、5でも上述したのと同様、複数のノズル15からのインクの吐出特性のばらつきを低減させることができる。
【0075】
ここで、変形例4、5では、圧電アクチュエータを、上述の実施の形態の圧電アクチュエータ22から圧電層42と、導電パターン44又は導電パターン45とを除いたものとしたが、例えば、圧電アクチュエータを、変形例2、3の圧電アクチュエータ122から、圧電層142及び導電パターン144を除いたものとしてもよい。
【0076】
また、以上の例では、圧電層41が活性部を有していないため、圧電層41を、例えば合成樹脂材料等、圧電材料以外の絶縁性材料からなる絶縁層に置き換えてもよい。この場合には、インクジェットヘッドを製造するために、例えば、圧電アクチュエータのうち、上面に配置される導電パターン(導電パターン46、146a、166a)と絶縁層とを除いた構造体を焼成する。続いて、焼成後の構造体の上面に導電パターンを形成する。続いて、構造体の下面に絶縁層を接合することによって、圧電アクチュエータを完成させ、完成した圧電アクチュエータを流路形成部材21の上面に接合する。
【0077】
ここで、変形例4、5で圧電層41を絶縁層に置き換えた構成では、焼成後の構造体の下面が露出している。そのため、これらの場合には、構造体の焼成後に、構造体の下面に導電パターン44あるいは導電パターン45を形成することも考えられる。そして、このようにすれば、焼成時の圧電層42、43の収縮のばらつきによる、構造体の下面に配置される電極の位置ずれは生じない。しかしながら、この場合には、構造体の焼成後に、構造体の下面及び上面の両方に導電パターンを形成することになるため、構造体を裏返す工程等が必要となる。構造体は厚みの薄いものであるため、この工程は煩雑なものとなる。
【0078】
したがって、変形例4、5で圧電層41を絶縁層に置き換えた構造の圧電アクチュエータにおいても、圧電アクチュエータから、上面に配置される導電パターンと絶縁層とを除いた構造体を焼成し、焼成後の構造体の上面に導電パターンを形成するといった手順で、インクジェットヘッドの製造を行う意義はある。
【0079】
また、上述の実施の形態では、搬送方向において、隙間38の中心が圧力室10の中心に対して、圧力室列9に対応する複数の隙間38の配列の端側にずれていたが、これには限られない。搬送方向において、隙間38の中心が圧力室10の中心に対して、圧力室列9に対応する複数の隙間38の配列の中央側にずれていてもよい。また、上述の実施の形態では、搬送方向において、重なり部45aの中心が圧力室10の中心に対して、圧力室列9に対応する複数の重なり部45aの配列の端側にずれていたが、これには限られない。搬送方向において、重なり部45aの中心が圧力室10の中心に対して、圧力室列9に対応する複数の重なり部45aの配列の中央側にずれていてもよい。
【0080】
また、上述の実施の形態では、重なり部45aの搬送方向における両端が、圧力室10の内側に位置していたが、これには限られない。重なり部45aの搬送方向における片側の端(上流側の端、及び、下流側の端のいずれか)のみが圧力室10の内側に位置していてもよい。例えば、重なり部45aは、搬送方向の長さが圧力室10とほぼ同じであり、圧力室10に対するずれがないとした場合に、搬送方向の両端が、対応する圧力室10の端と重なるものものであってもよい。この場合には、焼成時の圧電層41〜43の収縮によって、少なくとも1つの重なり部45aの片側の端は、圧力室10の内側に位置することになる。
【0081】
さらには、重なり部45aは、搬送方向において圧力室10よりも長く、圧力室10に対するずれがないとした場合に、搬送方向の両端が、対応する圧力室10の外側に位置するものであってもよい。この場合でも、焼成時の圧電層41〜43の収縮量によっては、搬送方向において、少なくとも1つの重なり部45aの片側の端が、圧力室10の内側に位置する場合がある。
【0082】
したがって、この場合には、例えば、S104で検出された距離Dから、搬送方向において、少なくとも1つの重なり部45aの片側の端が、圧力室10の内側に位置すると判断される場合には、S105において、上述の実施の形態と同様、走査方向における、右端47aの位置を調整して、導電パターン46を形成する。
【0083】
一方で、S104で検出された距離Dから、搬送方向において、全ての重なり部45aの両端が、圧力室10の外側に位置すると判断される場合には、S105において、走査方向において、全ての個別電極47の右端47aの位置が同じとなるように、導電パターン46を形成する。
【0084】
また、以上では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド及びその製造に本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体を吐出する別の液体吐出装置及びその製造に本発明を適用することも可能である。