(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ガス増幅を利用した放射線検出器として、従来、ピクセル型の放射線検出器が用いられてきた。この放射線検出器は、例えば両面プリント基板の表面にストリップ状陰極電極が形成されるとともに、裏面に陽極ストリップが形成され、ストリップ状陰極電極には、一定間隔に開口部が形成されるとともに、開口部の中心には背面の陽極ストリップと接続されている円柱状陽極電極、すなわちピクセル電極が形成されたような構成を採っている。
【0003】
なお、上記放射線検出器は、例えばHeとメタンとの混合ガス中に配置される。また、上記ピクセル電極には例えば+600Vの電圧が印加されている。
【0004】
上記放射線検出器においては、所定の放射線が検出器内に入射すると、ガスが電離して電子(一次電子)を生成し、この電子は、上記ストリップ状陰極電極と上記ピクセル電極との間に印加された大電圧、及び上記ピクセル電極の点電極としての形態(形状異方性)に起因して生成される強力な電場によって、電子雪崩増幅を引き起こす。一方、電子雪崩増幅によって生じた正イオンは、周囲のストリップ状陰極電極に向けてドリフトする。
【0005】
この結果、対象となるストリップ状陰極電極及びピクセル電極に、それぞれ正イオンと電子(電子雪崩増幅によって生成した電子:二次電子)とがチャージされる。したがって、このようにして電荷が生成されたストリップ状陰極電極及びピクセル電極の位置を検出することによって、放射線の検出器における入射位置を特定することができ、放射線の検出が可能となる(特許文献1)。
【0006】
上述した放射線検出器では、ピクセル電極に印加する電圧を大きくすると、生成される電場の強度も増大し、上述した電子雪崩増幅が顕著になるので、ストリップ状陰極電極及びピクセル電極に生成される電荷量が増大して、放射線の感度(ガス増幅率)が向上する。一方、ピクセル電極に印加する電圧を大きくすると、ピクセル電極の形状や雰囲気中の異物に起因した異常放電によって、ピクセル電極を破損してしまう場合がある。また、ピクセル電極に印加する電圧を小さくすると、上述した異常放電は減少するが、上述した電子雪崩増幅の度合いも小さくなり、放射線の検出感度が低下してしまう。
【0007】
かかる観点より、ピクセル電極に印加する電圧を大きくする代わりに、ピクセル電極を狭小化して、生成する電場の強度を向上させることが試みられている。しかしながら、ピクセル電極はプリント基板内に形成した貫通孔内にビアフィルメッキによって形成するため、ピクセル電極を狭小化するためには、貫通孔も狭小化する必要がある。一方、貫通孔を狭小化すると、貫通孔内に均一にビアフィルメッキを行うことができず、均一なピクセル電極を形成できずに、ピクセル電極において異常放電や絶縁破壊や感度ばらつき(低感度のピクセルが増える恐れ)などの問題が生じる。したがって、ピクセル電極の狭小化は、その製造方法に依存して自ずと制限されてしまう(特許文献2)。
【0008】
同様に、ピクセル電極に印加する電圧を大きくする代わりに、放射線検出器にGEM(Gas Electron Multiplier;ガス電子増幅器)を取り付けることも試みられているが、GEMの煩雑な設置に起因した増幅のばらつきが発生してしまい、安定的に放射線検出を行うことができないという問題もあった。
【0009】
この結果、現状では、上記ピクセル型の放射線検出器の感度(ガス増幅率)を十分に向上させることができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、十分高い感度(ガス増幅率)を有するピクセル型電極によるガス増幅を用いた放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明は、
絶縁部材の第1の面上に形成されるとともに、円形状の複数の開口部を有する第1の電極層と、
前記絶縁部材の前記第1の面と相対向する第2の面上に形成されるとともに、前記絶縁部材の前記第2の面から前記第1の面に向けて形成された複数の貫通孔内それぞれに形成された複数のビア導体層を有し、それぞれの上端面が前記第1の電極層の前記複数の開口部の中心部に露出した第2の電極層と、
前記第2の電極層の、前記上端面の周囲に磁場を生成するための磁場発生手段と、
を具えることを特徴とする、ガス増幅を用いた放射線検出器に関する。
【0013】
本発明によれば、ガス増幅を用いた放射線検出器(以下、「放射線検出器」という場合がある)が磁場発生手段を有し、当該磁場発生手段によって、放射線検出器を構成する第2の電極層の、ビア導体層の上端面周囲に磁場を生成するようにしている。
【0014】
したがって、電子雪崩増幅によって生成した電子(二次電子)が、上記磁場の影響を受けるとともに当該磁場に拘束されてその飛距離が増大することになる。このため、電子雪崩がさらに増幅されることになり、これによって当該電子雪崩によって生成される正イオン及び電子(二次電子)の数がさらに増大し、これらの正イオン及び二次電子は、第1の電極層及び第2の電極層の電位の極性に応じて、第1の電極層及び第2の電極層あるいは第2の電極層及び第1の電極層に向けてドリフトする。この結果、第1の電極層及び第2の電極層あるいは第2の電極層及び第1の電極層に、それぞれ正イオンと二次電子とがチャージされる。
【0015】
すなわち、電子雪崩のさらなる増幅によって生成される正イオン及び二次電子の数が増大し、第1の電極層及び第2の電極層あるいは第2の電極層及び第1の電極層にチャージされる正イオン及び二次電子の数が増大するので、放射線検出器の検出感度を増大させることができる。また、ある程度の検出感度を保持した状態で、第1の電極層及び第2の電極層間に印加する電圧(両者の電位差)を減少させることができる。
【0016】
また、放射線が放射線検出器内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子は、上記磁場の影響を受けるとともに当該磁場に拘束されて、放射線検出器の、対向する第1の電極層及び第2の電極層のビア導体層に垂直に入射するようになる。すなわち、一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0017】
本発明において、磁場発生手段は、放射線検出器を構成する絶縁部材内に配設された磁性体とすることができる。この場合、磁場発生手段を、放射線検出器の検出面側に設けないので、上記放射線検出器の大きさが増大するのを抑制することができる。また、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。さらには、上述した本発明の作用効果、すなわち放射線検出器の広範囲に亘る検出感度の増大を図ることができる。
【0018】
なお、磁性体は、前記複数のビア導体層のそれぞれを囲むようにして円形状に形成することができる。これによって、放射線検出器を構成する第2の電極層の、ビア導体層の上端面周囲により効率的に磁場を生成することができるので、電子雪崩の増幅度合を均一化することができ、その結果、放射線検出器の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。この場合、磁性体の表裏において分極していれば、表裏のいずれがS極でもN極でも構わない。
【0019】
本発明において、磁場発生手段は、放射線検出器を構成する絶縁部材内に配設された複数の配線層、及び複数の配線層間を接続する複数の層間接続体からなるらせん状のコイルとすることができる。この場合も、磁場発生手段を、放射線検出器の検出面側に設けないので、上記放射線検出器の大きさが増大するのを抑制することができる。さらに、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。
【0020】
また、コイルに流す電流の大きさや向き、あるいはコイルの巻回方向によって、生成する磁場の大きさや向きを自由に制御することができるので、上述した本発明の作用効果の自由度、具体的には、電子雪崩のさらなる増幅度合を自由に制御することができる。したがって、第1の電極層及び第2の電極層あるいは第2の電極層及び第1の電極層にチャージされる正イオン及び二次電子の数の増大の程度を自由に制御することができるので、放射線検出器の検出感度の増大を自由に制御することができる。
【0021】
さらに、放射線が放射線検出器内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0022】
なお、コイルは、前記複数の配線層が、前記複数のビア導体層のそれぞれを囲むようにして形成することができる。これによって、放射線検出器を構成する第2の電極層の、ビア導体層の上端面周囲により効率的に磁場を生成することができる。この結果、電子雪崩の増幅度合を均一化することができ、放射線検出器の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。この場合、上述のように、コイルの巻回方向は右巻き及び左巻きのいずれでもよい。また、コイルに流す電流の大きさや向きも必要に応じて任意に設定することができる。
【0023】
本発明において、磁場発生手段は、放射線検出器を構成する絶縁部材の下方であって、当該放射線検出器の第2の電極層の下方に配設された磁性体とすることができる。この場合も、磁場発生手段を、放射線検出器の検出面側に設けないので、上記放射線検出器の大きさが増大するのを抑制することができる。さらに、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。
【0024】
また、磁性体を絶縁部材中に配設する必要がないので、磁性体の配設自由度が増大する。また、磁性体の位置や種類等を変化させるのみで、生成する磁場の大きさや向きを自由に制御することができるので、上述した本発明の作用効果の自由度、具体的には、電子雪崩のさらなる増幅度合を自由に制御することができる。したがって、第1の電極層及び第2の電極層あるいは第2の電極層及び第1の電極層にチャージされる正イオン及び二次電子の数の増大の程度を自由に制御することができるので、放射線検出器の検出感度の増大を自由に制御することができる。
【0025】
さらに、放射線が放射線検出器内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0026】
本発明において、磁場発生手段は、追加の絶縁部材内に配設された複数の配線層、及び複数の配線層間を接続する複数の層間接続体からなるらせん状のコイルであって、放射線検出器を構成する絶縁部材の下方であって、当該放射線検出器を構成する第2の電極層の下方に配設することができる。
【0027】
この場合も、磁場発生手段を、放射線検出器の検出面側に設けないので、上記放射線検出器の大きさが増大するのを抑制することができる。さらに、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。
【0028】
また、コイルを別途設けた追加の絶縁部材中に配設し、放射線検出器を構成する絶縁部材中に配設していないので、コイルの配設自由度が増大する。さらに、追加の絶縁部材の位置、コイルに流す電流の大きさや向き、あるいはコイルの巻回方向によって、生成する磁場の大きさや向きを自由に制御することができるので、上述した本発明の作用効果の自由度、具体的には、電子雪崩のさらなる増幅度合を自由に制御することができる。したがって、第1の電極層及び第2の電極層あるいは第2の電極層及び第1の電極層にチャージされる正イオン及び二次電子の数の増大の程度を自由に制御することができるので、放射線検出器の検出感度の増大を自由に制御することができる。
【0029】
さらに、放射線が放射線検出器内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、十分高い感度(ガス増幅率)を有するピクセル型電極によるガス増幅を用いた放射線検出器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の特徴及びその他の利点について、発明を実施するための形態に基づいて説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の放射線検出器の概略構成を示す平面図であり、
図2は、
図1に示すピクセル型放射線検出器を拡大して示す図であり、
図3は、ピクセル型放射線検出器のピクセル電極周辺部分を拡大して示す断面図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の放射線検出器10は、ピクセル型放射線検出器20を含むとともに図示しない電流検出回路等を含む。
図2に示すように、ピクセル型放射線検出器20は、検出パネル21と、この検出パネル21の上方において相対向するようにして設けられた電極板22とを含んでいる。
【0035】
図2に示すように、検出パネル21は、絶縁部材211の主面211A上に形成された、円形状の複数の開口部212Aを有する第1の電極層212と、絶縁部材211の裏面211B上に形成された第2の電極層213とを含んでいる。第2の電極層213は、絶縁部材211を貫通し、第1の電極層212の開口部212Aの略中心部に先端が露出してなるビア導体層214を有する。なお、ビア導体層214はピクセル電極を構成する。
【0036】
また、
図3に示すように、検出パネル21を構成する絶縁部材211の内部には磁性体31が配設されている。なお、磁性体31は、ビア導体層214を囲むようにして円形状に形成することができる。磁性体31は、例えば
図4に示すように連続した磁性体として形成することもできるし、
図5に示すように、複数の磁性体片の集合体として形成することもできる。さらに、
図6に示すように、磁性体31は平板な形状の他、例えば断面が三角形状のような突状の形状とすることもできる。
【0037】
磁性体31が、
図3〜
図6に示すような構成で配設されることにより、検出パネル21を構成する第2の電極層213の、ビア導体層214の上端面214A周囲により効率的に磁場を生成することができる。この場合、磁性体31の表裏において分極していれば、表裏のいずれがS極でもN極でも構わない。
【0038】
なお、
図2に示すピクセル型放射線検出器20の検出パネル21では、簡略化して、第1の電極層212において合計8個の開口部212Aが形成され、4個づつ2列に配列されるとともに、各開口部212A内に上記ビア導体層214の上端面214Aが露出し、これによって合計8個の検出電極が形成されるようにしている。しかしながら、検出電極の数及び配列方法(第1の電極層212における開口部212A及びビア導体層214の数及び配列方法)は、必要に応じて任意に設定することができる。
【0039】
また、図では特に明示していないが、第2の電極層213も、第1の電極層212の配列方向と略垂直となるような方向において、ストリップ状にパターニングされている。但し、第2の電極層213は、第1の電極層212と平行でなければ、いずれの方向にパターニングされていてもよい。
【0040】
なお、磁性体31を
図3に示すような連続した磁性体として形成する場合であって、当該磁性体を
図2に示すような複数のビア導体層214に対して適用する場合は、
図7に示すように、板状の磁性体を用意し、ビア導体層214に相当する箇所に、開口部31Aを有するような構成の磁性体31とすることができる。
【0041】
検出パネル21を構成する絶縁部材211は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シクロオレフィン樹脂等のプリント配線基板に使用される樹脂等から構成することができ、必要に応じてフィラーやガラス繊維を含有することもできる。
【0042】
また、第1の電極層212及び第2の電極層213は、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム等の導電性部材から構成することができる。
【0043】
さらに、磁性体31は、フェライト磁石やアルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石等の、汎用の永久磁石等から構成することができる。
【0044】
本実施形態では、放射線検出器10、具体的には放射線検出器10の検出パネル21が当該検出パネル21を構成する絶縁部材211内に磁性体31を有し、当該磁性体31によって、検出パネル21を構成する第2の電極層213の、ビア導体層214の上端面214Aの周囲に磁場を生成するようにしている。
【0045】
したがって、電子雪崩増幅によって生成した電子(二次電子)が、上記磁場の影響を受けるとともに当該磁場に拘束されてその飛距離が増大することになる。このため、電子雪崩がさらに増幅されることになり、これによって当該電子雪崩によって生成される正イオン及び電子(二次電子)の数がさらに増大し、これらの正イオン及び二次電子は、第1の電極層212及び第2の電極層213の電位の極性に応じて、第1の電極層212及び第2の電極層213あるいは第2の電極層213及び第1の電極層212に向けてドリフトする。この結果、第1の電極層212及び第2の電極層213あるいは第2の電極層213及び第1の電極層212に、それぞれ正イオンと二次電子とがチャージされる。
【0046】
すなわち、電子雪崩のさらなる増幅によって生成される正イオン及び二次電子の数が増大し、第1の電極層212及び第2の電極層213あるいは第2の電極層213及び第1の電極層212にチャージされる正イオン及び二次電子の数が増大するので、放射線検出器10の検出感度を増大させることができる。また、ある程度の検出感度を保持した状態で、第1の電極層212及び第2の電極層213間に印加する電圧(両者の電位差)を減少させることができる。
【0047】
また、放射線が放射線検出器10内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子は、上記磁場の影響を受けるとともに当該磁場に拘束されて、対向する第1の電極層212及びビア導体層214に垂直に入射するようになる。すなわち、一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器10の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器10の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、ビア導体層214を囲むようにして円形状に形成しているので、電子雪崩の増幅度合をさらに均一化することができ、放射線検出器のより広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態では、磁性体31を、放射線検出器10、すなわち検出パネル21を構成する絶縁部材211内に配設するようにしている。この場合、磁場発生手段を、放射線検出器10、すなわち検出パネル21の検出面側に設けないので、検出パネル21、すなわち放射線検出器10の大きさが増大するのを抑制することができる。また、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。さらには、上述した本実施形態の作用効果、すなわち放射線検出器の広範囲に亘る検出感度の増大を図ることができる。
【0050】
本実施形態の一例として、例えば、絶縁部材211の厚さt1を20μm〜100μmとし、開口部212Aの直径D1を80μm〜300μmとし、ビア導体層214の先端214Aの端面と、第1の電極層212の開口部212Aの端面との距離D2を20μm〜130μmとし、ビア導体層214の上端面214Aの直径d2を15μm〜70μmとした場合、ビア導体層214の上端面214A近傍での磁束密度が数mT[ミリテスラ]〜数T[テスラ]となるように、磁性体31の種類、大きさ及び配設位置を調整する。
【0051】
なお、磁性体31は、例えば第2の電極層213が形成された絶縁部材の、当該第2の電極層213が形成された面と反対側の面に磁性体31を配設し、その後、第1の電極層212(あるいは第1の電極層212となる金属箔)が形成された絶縁部材を積層することにより、絶縁部材211内に配設することができる。その後のビア導体層214の形成手法等は従来と同様に、絶縁部材211に貫通孔を形成した後、ビアフィルメッキ等を行うことによって形成することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
図8は、本実施形態の放射線検出器の概略構成を示す図であって、第1の実施形態における
図3に相当する断面図である。また、
図9は、
図7に示す放射線検出器内に配設されたらせん状コイルの概略構成を示す平面図である。なお、
図1〜
図7に示す構成要素と同一あるいは類似の構成要素については同一の符号を用いている。
【0053】
図8に示すように、検出パネル21は、絶縁部材211の主面211A上に形成された、円形状の複数の開口部212Aを有する第1の電極層212と、絶縁部材211の裏面211B上に形成された第2の電極層213とを含んでいる。第2の電極層213は、絶縁部材211を貫通し、第1の電極層212の開口部212Aの略中心部に先端が露出してなるビア導体層214を有する。なお、ビア導体層214はピクセル電極を構成する。
【0054】
また、絶縁部材211内には、ビア導体層214を囲むようにして下側から順に第1の配線層411、第2の配線層412、第3の配線層413及び第4の配線層414が配設されている。第1の配線層411及び第2の配線層412間は第1の層間接続体416で電気的に接続されており、第2の配線層412及び第3の配線層413間は第2の層間接続体417で電気的に接続されており、第3の配線層413及び第4の配線層414間は第3の層間接続体418で電気的に接続されている。したがって、第1の配線層411〜第4の配線層414及び第1の層間接続体416〜第3の層間接続体418は、
図9に示すように、絶縁部材211内に配設された左巻きのらせん状のコイル41を構成することになる。
【0055】
なお、
図8及び
図9から明らかなように、第1の配線層411は、コイルに対して電流を導入するための端子として機能するので、絶縁部材411の表面に露出するようにして延在させる必要がある。
【0056】
また、本実施形態では、コイル41を構成する第1の配線層411等をL字型に形成しているが、半円形状等の曲線状であってもよい。
【0057】
本実施形態では、らせん状のコイル41が、ビア導体層214を囲むように配設されているので、検出パネル21を構成する第2の電極層213の、ビア導体層214の上端面214A周囲により効率的に磁場を生成することができる。
【0058】
本実施形態では、放射線検出器10、すなわち検出パネル21を構成する絶縁部材211内に第1の配線層411〜第4の配線層414、及び第1の層間接続体416〜第3の層間接続体418からなるらせん状のコイル41を配設している。したがって、磁場発生手段を、放射線検出器10、すなわち検出パネル21の検出面側に設けないので、検出パネル21、すなわち放射線検出器10の大きさが増大するのを抑制することができる。さらに、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。
【0059】
また、コイル41に流す電流の大きさや向きによって、生成する磁場の大きさや向きを自由に制御することができるので、上述した本発明の作用効果の自由度、具体的には、電子雪崩のさらなる増幅度合を自由に制御することができる。したがって、第1の電極層212及び第2の電極層213あるいは第2の電極層213及び第1の電極層212にチャージされる正イオン及び二次電子の数の増大の程度を自由に制御することができるので、放射線検出器10の検出感度の増大を自由に制御することができる。
【0060】
さらに、放射線が放射線検出器10内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子は、上記磁場の影響を受けるとともに当該磁場に拘束されて、対向する第1の電極層212及びビア導体層214に垂直に入射するようになる。すなわち、一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器10の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器10の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、らせん状のコイル41が、ビア導体層214を囲むように配設されているので、電子雪崩の増幅度合をさらに均一化することができ、放射線検出器のより広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、コイル41の巻回数、すなわち配線層の数が固定されているが、コイル41の巻回数を増減させることによっても当然に生成する磁場の大きさを制御すすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、コイル41の巻回方向を左巻きとしているが、巻回方向を変えることによっても生成する磁場の向きを制御することができる。
【0064】
なお、コイル41は、上述のように第1の配線層411等から構成されているので、汎用の多層配線基板の製造方法を適用することによって絶縁部材411内に配設することができる。その後のビア導体層214の形成手法等は従来と同様に、絶縁部材211に貫通孔を形成した後、ビアフィルメッキ等を行うことによって形成することができる。
【0065】
その他の特徴については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
(第3の実施形態)
図10は、本実施形態の放射線検出器の概略構成を示す図であって、第1の実施形態にける
図3及び第2の実施形態における
図8に相当する断面図である。なお、
図1〜
図9に示す構成要素と同一あるいは類似の構成要素については同一の符号を用いている。
【0067】
図10に示すように、検出パネル21は、絶縁部材211の主面211A上に形成された、円形状の複数の開口部212Aを有する第1の電極層212と、絶縁部材211の裏面211B上に形成された第2の電極層213とを含んでいる。第2の電極層213は、絶縁部材211を貫通し、第1の電極層212の開口部212Aの略中心部に先端が露出してなるビア導体層214を有する。なお、ビア導体層214はピクセル電極を構成する。
【0068】
また、本実施形態では、放射線検出器10、すなわち検出パネル21を構成する絶縁部材211の下方であって、第2の電極層213の下方において磁性体31を配設している。したがって、磁場発生手段である磁性体31を、放射線検出器10、すなわち検出パネル21の検出面側に設けないので、検出パネル21、すなわち放射線検出器10の大きさが増大するのを抑制することができる。さらに、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。
【0069】
また、磁性体31を絶縁部材211中に配設する必要がないので、磁性体31の配設自由度が増大する。また、磁性体31の位置や種類等を変化させるのみで、生成する磁場の大きさや向きを自由に制御することができるので、上述した本発明の作用効果の自由度、具体的には、電子雪崩のさらなる増幅度合を自由に制御することができる。したがって、第1の電極層212及び第2の電極層213あるいは第2の電極層213及び第1の電極層212にチャージされる正イオン及び二次電子の数の増大の程度を自由に制御することができるので、放射線検出器10の検出感度の増大を自由に制御することができる。
【0070】
さらに、放射線が放射線検出器10内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子は、上記磁場の影響を受けるとともに当該磁場に拘束されて、対向する第1の電極層212及びビア導体層214に垂直に入射するようになる。すなわち、一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器10の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器10の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0071】
その他の特徴については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
(第4の実施形態)
図11は、本実施形態の放射線検出器の概略構成を示す図であって、第1の実施形態にける
図3、第2の実施形態における
図8及び第3の実施形態における
図10に相当する断面図である。なお、
図1〜
図10に示す構成要素と同一あるいは類似の構成要素については同一の符号を用いている。
【0073】
図11に示すように、検出パネル21は、絶縁部材211の主面211A上に形成された、円形状の複数の開口部212Aを有する第1の電極層212と、絶縁部材211の裏面211B上に形成された第2の電極層213とを含んでいる。第2の電極層213は、絶縁部材211を貫通し、第1の電極層212の開口部212Aの略中心部に先端が露出してなるビア導体層214を有する。なお、ビア導体層214はピクセル電極を構成する。
【0074】
本実施形態では、放射線検出器10、すなわち検出パネル21の下方に追加の絶縁部材51を配設し、当該絶縁部材51内に、下から順に第1の配線層411、第2の配線層412、第3の配線層413及び第4の配線層414を形成し、第1の配線層411及び第2の配線層412間を第1の層間接続体416で電気的に接続し、第2の配線層412及び第3の配線層413間を第2の層間接続体417で電気的に接続し、第3の配線層413及び第4の配線層414間を第3の層間接続体418で電気的に接続して、
図9に示すような左巻きのらせん状のコイル41を形成している。
【0075】
この場合、磁場発生手段を、放射線検出器の検出面側に設けないので、上記放射線検出器の大きさが増大するのを抑制することができる。さらに、入射した放射線が磁場発生手段によって妨害されたり吸収されたりするのを防止することができる。
【0076】
また、コイル41を別途設けた追加の絶縁部材51中に配設し、放射線検出器10、すなわち検出パネル21を構成する絶縁部材411中に配設していないので、コイル41の配設自由度が増大する。さらに、追加の絶縁部材51の位置、コイル41に流す電流の大きさや向きによって、生成する磁場の大きさや向きを自由に制御することができるので、上述した作用効果の自由度、具体的には、電子雪崩のさらなる増幅度合を自由に制御することができる。したがって、第1の電極層212及び第2の電極層213あるいは第2の電極層213及び第1の電極層212にチャージされる正イオン及び二次電子の数の増大の程度を自由に制御することができるので、放射線検出器10の検出感度の増大を自由に制御することができる。
【0077】
さらに、放射線が放射線検出器10内に入射し、ガスを電離することによって生成した一次電子は、上記磁場の影響を受けるとともに当該磁場に拘束されて、対向する第1の電極層212及びビア導体層214に垂直に入射するようになる。すなわち、一次電子が対向する電極単位に入射する割合が増し、隣接する電極単位にドリフトしてしまう割合が減少するようになる。このため、放射線検出器10の広い範囲に亘って高い電子雪崩増幅を均一に生ぜしめることができ、放射線検出器10の広い範囲に亘って検出感度の増大及び均一化を図ることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、コイル41の巻回数、すなわち配線層の数が固定されているが、コイル41の巻回数を増減させることによっても当然に生成する磁場の大きさを制御することができる。
【0079】
また、本実施形態では、コイル41の巻回方向を左巻きとしているが、巻回方向を変えることによっても生成する磁場の向きを制御することができる。
【0080】
その他の特徴については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0081】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。