(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(技術的背景)
まず、本技術の理解を容易にするため、本技術の技術的背景について説明する。[背景技術]の欄で挙げた特許文献1(特許第4075259号公報)には、膜厚5〜16μm、空孔率25〜60%のセパレータを用い、コバルト酸リチウム等を有するCo系正極とゲル電解質とを有する電池が記されている。
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、正極活物質層の面積密度とセパレータとの厚さとの関係を考慮していない。このため、例えば、正極活物質層の面積密度を27mg/cm
2以上に設定した場合に、同一サイズの電池で本技術のセパレータを用いた場合と比較して、電極長が短くなり活物質量が減る場合があるため、電池のエネルギー密度を低下させる。
【0014】
また、この場合に、本技術の範囲外のセパレータを用いると、正極活物質層の面積密度に伴って増加した電流密度によって引き起こされる過電圧を緩和させることができず、電解液の分解反応等によってサイクル寿命を低下させてしまう。
【0015】
特許文献2(特開2007−280749号公報)には、透気度80〜300sec/100ccのセパレータを使うことでサイクル特性の優れた電池を提供できる技術が記載されている。
【0016】
しかしながら、特許文献2に記載の技術を膜厚の厚いセパレータに適用した場合、セパレータのイオン透過性が落ちるため、充放電時における電極表面の局所的な過電圧は増大しやすくなる。特に電極の面積密度がある範囲を超えて大きくなった場合、過電圧による電解液分解によりセパレータの目詰まりが発生し、結果としてサイクル特性を悪化させてしまう。
【0017】
特許文献3(特開2012−48918号公報)には、膜厚5〜25μmであって、セパレータの単位面積あたりの細孔数が200個以上のセパレータを用いた場合にサイクル特性に優れる電池を提供できることが記載されている。
【0018】
しかしながら、特許文献3の電池には、正極活物質層の面積密度がある一定の範囲(例えば、27mg/cm
2以上)の場合に、過電圧によるセパレータの目詰まりを助長するようなセパレータの透気度および空孔率の範囲がある。このため、この範囲にあるセパレータを、正極活物質層の面積密度がある一定の範囲以上の電池に用いた場合には、サイクル特性を悪化させてしまう。
【0019】
そこで、本願発明者等は、鋭意検討したところ、正極活物質層の面積密度を27mg/cm
2以上に設定した場合に、所定の構造を備えたセパレータを用いることで、以下の効果を得られることを見出した。
【0020】
同一体積あたりの活物質量を増加できることでエネルギー密度を向上できる。電極の単位面積あたりの活物質量が向上することで、電流密度が大きくなることで増加する過電圧を緩和し、サイクル特性を改善できる。電池を高充電電圧で充電した場合に、電解液の分解がより起こりやすいため、大きくなる過電圧を抑制することにより、サイクル特性を改善できる。
【0021】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(電池)
2.第2の実施の形態(電池パックの例)
3.第3の実施の形態(電池パックの例)
4.第4の実施の形態(蓄電システム等の例)
5.他の実施の形態(変形例)
なお、以下に説明する実施の形態等は本技術の好適な具体例であり、本技術の内容がこれらの実施の形態等に限定されるものではない。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また例示した効果と異なる効果が存在することを否定するものではない。
【0022】
1.第1の実施の形態
(電池の構成)
本技術の第1の実施の形態による非水電解質電池(電池)について説明する。
図1は本技術の第1の実施の形態による非水電解質電池の分解斜視構成を表しており、
図2は
図1に示す巻回電極体30のI−I線に沿った断面を拡大して示している。
【0023】
この非水電解質電池は、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収容されたものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。この非水電解質電池は、例えば充電および放電が可能な非水電解質二次電池であり、また、例えばリチウムイオン二次電池である。
【0024】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレス等の金属材料によって構成されている。これらの金属材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
【0025】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルム等のように、金属箔からなる金属層の両面に樹脂層を設けた構成とされている。外装部材40の一般的な構成は、例えば、外側樹脂層/金属層/内側樹脂層の積層構造を有する。例えば、外装部材40は、例えば、内側樹脂層が巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着または接着剤によって互いに接着された構造を有している。外側樹脂層および内側樹脂層は、それぞれ複数層で構成されてもよい。
【0026】
金属層を構成する金属材料としては、耐透湿性のバリア膜としての機能を備えていれば良く、アルミニウム(Al)箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル(Ni)箔およびメッキを施した鉄(Fe)箔等を使用することができる。なかでも、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることが好ましい。特に、加工性の点から、例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)、(JIS A8079P−O)または(JIS A1N30−O)等を用いるのが好ましい。
【0027】
金属層の厚みは、典型的には、例えば、30μm以上150μm以下とすることが好ましい。30μm未満の場合、材料強度が低減する傾向にある。また、150μmを超えた場合、加工が著しく困難になるとともに、ラミネートフィルム52の厚さが増してしまい、非水電解質電池の体積効率が低減する傾向にある。
【0028】
内側樹脂層は、熱で溶けて互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0029】
外側樹脂層としては、外観の美しさや強靱さ、柔軟性等からポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0030】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0031】
なお、外装部材40は、上記した積層構造を有するアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムによって構成されていてもよいし、ポリプロピレン等の高分子フィルムまたは金属フィルム等によって構成されていてもよい。
【0032】
図2は、
図1に示す巻回電極体30のI−I線に沿った断面構成を表している。この巻回電極体30は、帯状のセパレータ35および電解質36を介して帯状の正極33と帯状の負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37によって保護されている。
【0033】
(正極)
正極33は、例えば、一主面および他主面を有する正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられた両面形成部を有している。なお、図示はしないが、正極集電体33Aの片面のみに正極活物質層33Bが設けられた片面形成部を有していてもよい。正極集電体33Aは、例えば、アルミニウム箔等の金属箔により構成されている。
【0034】
正極活物質層33Bは、正極活物質としてリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含有している。正極活物質層33Bは、必要に応じて、結着剤や導電剤等の他の材料を含んでいてもよい。
【0035】
正極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能な、層状構造のリチウムとコバルトとを少なくとも含むリチウムコバルト複合酸化物を用いることが好ましい。このリチウムコバルト複合酸化物を用いた場合には、放電カーブが平坦であり(プラトー領域が大きく)、平均電圧が高いのでエネルギー密度が大きく、且つ、カットオフ(cut off)電圧が高い。このような特性を有するリチウムコバルト複合酸化物は、特に、軽量且つ高容量が求められるセルラー(携帯電話機器、スマートフォン)用等に使用される本技術のラミネートフィルム型等のゲル電解質電池に適している。一方、例えば、LiNiO
2等のニッケル系の正極活物質を用いた場合には、放電カーブの末期でだれる(プラトー領域が短い)、充電状態での熱安定性が良くない(電池の安全性が比較的に良くない)、カットオフ(cut off)電圧が低い、且つ、高温保存時のガス発生が多い。このため、ニッケル系の正極活物質は、本技術の第1の実施の形態によるラミネートフィルム型等のゲル電解質電池に適していない。
【0036】
なお、正極材料としては、リチウムコバルト複合酸化物と共に、リチウムコバルト複合酸化物以外のリチウムを吸蔵および放出することが可能な他の正極活物質を用いてもよい。
【0037】
リチウムコバルト複合酸化物としては、具体的には、下記の一般式(化1)で表された組成を有するリチウムコバルト複合酸化物を用いることが好ましい。
【0038】
(化1)
Li
pCo
(1-q)M1
qO
(2-y)X
z
(式中、M1はコバルト(Co)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示し、Xは酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0.9≦p≦1.1、0≦q<0.5、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.1の範囲内の値である。)
【0039】
化1で表されるリチウムコバルト複合酸化物としては、より具体的には、例えば、Li
pCoO
2(pは上記と同義)、Li
pCo
0.98Al
0.01Mg
0.01O
2(pは上記と同義)等が挙げられる。
【0040】
(被覆粒子)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、上述したリチウムコバルト複合酸化物の粒子と、この母材となるリチウムコバルト複合酸化物の粒子の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを有する被覆粒子を用いてもよい。このような被覆粒子を用いることで、電池特性をより向上できる。
【0041】
被覆層は、母材となるリチウムコバルト複合酸化物の粒子の表面の少なくとも一部に設けられたものであり、母材となるリチウムコバルト複合酸化物の粒子とは異なる組成元素または組成比を有するものである。
【0042】
被覆層の存在は、正極材料の表面から内部に向かって構成元素の濃度変化を調べることで、確認することができる。例えば、濃度変化は、被覆層が設けられたリチウム複合酸化物粒子をスパッタリング等により削りながらその組成をオージェ電子分光分析(Auger Electron Spectroscopy ;AES)またはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry ;二次イオン質量分析)により測定することが可能である。また、被覆層が設けられたリチウム複合酸化物粒子を酸性溶液中等でゆっくり溶解させ、その溶出分の時間変化を誘導結合高周波プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)分光分析等により測定することも可能である。
【0043】
被覆層としては、例えば、酸化物や遷移金属化合物等を含むものが挙げられる。具体的には、被覆層としては、例えば、リチウム(Li)とニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)のうちの少なくとも一方とを含む酸化物、または、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種と、酸素(O)と、リン(P)とを含む化合物等を含む。被覆層は、フッ化リチウム等のハロゲン化物または酸素以外のカルコゲン化物を含むようにしてよい。
【0044】
被覆層は、リチウムコバルト複合酸化物の粒子の少なくとも一部に設けられ、リチウムコバルト複合酸化物の粒子に含まれる遷移金属を実質的に構成する主要遷移金属とは異なり、2族〜16族から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、リン(P)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1つの元素Xとを含むものであってもよい。この被覆層において元素Mと元素Xとは異なる分布を呈するものであってもよい。
【0045】
ここで、リチウムコバルト複合酸化物の粒子を構成する主要遷移金属とはリチウムコバルト複合酸化物の粒子を構成する遷移金属のうち最も比率の大きい遷移金属を意味する。例えば、平均組成がLiCo
0.98Al
0.01Mg
0.01O
2の複合酸化物粒子の場合、主要遷移金属はコバルト(Co)を示す。
【0046】
この被覆層は、元素Mおよび/または元素Xが遷移金属複合酸化物粒子表面に分布することにより形成される層で、被覆層における元素Mおよび/または元素Xの組成比が、遷移金属複合酸化物粒子における元素Mおよび/または元素Xの組成比よりも高い領域である。
【0047】
この被覆層において、被覆層に含まれる元素Mと元素Xとが被覆層において異なる分布を呈するものであってもよい。具体的には、元素Mと元素Xとは分布の均一性に差異を有し、元素Mは元素Xに比して遷移金属複合酸化物粒子表面により均一に分布することが好ましい。また、元素Xより元素Mが遷移金属複合酸化物粒子表面により多く分布していることが好ましい。なお、このような元素Mおよび元素Xの分布形態は、例えばエネルギー分散型X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X-ray)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron microscope)(以下、SEM/EDXと称する)により、被覆層を有する複合酸化物粒子を観察することにより確認することができる。また、TOF−SIMS(Time of Flight secondary Ion Mass Spectrometry:飛行時間型2次イオン質量分析法)により複合酸化物粒子の表面や断面の分析を行い、元素Mや元素Xを含むイオンを測定することでも確認することができる。
【0048】
元素Mは、リチウムコバルト複合酸化物の粒子表面にほぼ均一に分布して被覆層を形成することが好ましい。元素Mを含む被覆層がリチウムコバルト複合酸化物の粒子の表面を被覆することにより、リチウムコバルト複合酸化物の粒子に含まれる主要遷移金属元素の溶出を抑制したり、電解液との反応を抑制したりでき、電池特性の劣化を抑制することができるからである。
【0049】
このような元素Mとしては、例えば、正極活物質に用いられてきたコバルト酸リチウム(LiCoO
2)に対して従来から置換、添加、被覆等が行われてきた2族〜16族の元素を用いることができる。
【0050】
一方、元素Xは、リチウムコバルト複合酸化物の粒子表面に点在するように分布して被覆層を形成することが好ましい。元素Xを含む被覆層によるリチウムの吸蔵放出の阻害を抑制することができるからである。なお、元素Xは、例えば複合酸化物粒子表面に偏在してもいいし、表面全体に複数点で点在してもよい。また、元素Xは、元素Mを含む被覆層の上に点在して分布してもよい。
【0051】
なお、元素Xは、リン(P)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1つの元素であるが、これらの元素は複合酸化物粒子に固溶しにくく表面に点在可能で、かつリチウムと安定な化合物を形成することでガス発生を抑制可能な元素である。
【0052】
ここで、正極活物質表面のコバルト(Co)、元素Xおよび元素Mの元素比率は、走査型X線光電子分光装置(ESCA:アルバック・ファイ社製、QuanteraSXM)を用いて測定することができる。具体的には、測定する粒子試料を金属インジウム片に埋め込み、その試料片を板バネで試料台に固定して測定を行う。X線源は単色化Al−Kα線(1486.6eV)を用い、アルゴンイオン銃および電子中和銃を用いて測定試料表面を自動モードで帯電補正しながら測定することができる。
【0053】
被覆層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、被覆層の原料をメカノヒュ−ジョンのような圧縮せん断応力を加える装置により、芯粒子となるリチウムコバルト複合酸化物の粒子に被着した後、熱処理を行うことにより形成する方法、中和滴定法により被覆層の前駆体となる水酸化物をリチウムコバルト複合酸化物の粒子に被着した後、熱処理を行うことによって形成する方法等を用いることができる。
【0054】
なお、被覆層は、上述のものに限定されるものではなく、リチウムコバルト複合酸化物の粒子と異なる組成元素または組成比を有し、リチウムコバルト複合酸化物の粒子表面の少なくとも一部を被覆しているものであればよい。
【0055】
(導電剤)
導電剤としては、例えばカーボンブラックまたはグラファイト等の炭素材料等が用いられる。
【0056】
(結着剤)
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0057】
(正極活物質層の面積密度)
正極活物質層33Bの面積密度S(mg/cm
2)は、高容量化の観点から、例えば、27mg/cm
2以上に設定されている。なお、本技術の所定構造のセパレータを用いることによって、正極活物質層33Bの面積密度S(mg/cm
2)を大きくすることで大きくなる過電圧を緩和し、サイクル特性を改善できる。
【0058】
なお、正極活物質層33Bの面積密度S(mg/cm
2)は、正極33において、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられた部分(両面形成部)の、面積(1cm
2)当たりの一方の面側の正極活物質層33Bの質量と他方の面の正極活物質層33Bとの合計質量である。正極活物質層33Bの面積密度S(mg/cm
2)は、例えば、以下のように測定できる。
【0059】
(正極活物質層の面積密度S(mg/cm
2)の測定方法)
電池を完全放電させてから解体して正極板(正極33)を取り出し、溶剤(例えばDMC(ジメチルカーボネート)等)で洗浄した後、充分に乾燥させる。正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが形成されている部分(両面形成部)を所定の面積(cm
2)(打ち抜き面積と称する)で打ち抜き、質量(mg)(質量Aと称する)を測定し、両面ともに合剤層が塗布されていない部分を同様にして打ち抜き、質量(mg)(質量Bと称する)を測定する。そして、下記計算式により算出する。
計算式:面積密度S(mg/cm
2)=(質量A−質量B)÷打ち抜き面積
【0060】
(負極)
負極34は、例えば、一主面および他主面を有する負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられた両面形成部を有する構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体34Aの片面のみに負極活物質層34Bが設けられた片面形成部を有しいてもよい。負極集電体34Aは、例えば、銅箔等の金属箔により構成されている。
【0061】
負極活物質層34Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層33Bと同様の導電剤および結着剤等の他の材料を含んで構成されていてもよい。
【0062】
なお、この電池では、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極33の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極34にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0063】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維または活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。さらにまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0064】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0065】
この負極材料を構成する金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。なお、このようなリチウムと合金を形成することが可能な元素を含む負極材料を合金系負極材料と称する。リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素としては、具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0066】
負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素または半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、より好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものであり、特に好ましくは少なくともケイ素を含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0067】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0068】
スズ(Sn)の化合物またはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0069】
中でも、この負極材料としては、コバルト(Co)と、スズ(Sn)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
【0070】
このSnCoC含有材料は、必要に応じてさらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)が好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性をさらに向上させることができるからである。
【0071】
なお、このSnCoC含有材料は、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このSnCoC含有材料では、構成元素である炭素(C)の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ(Sn)等が凝集または結晶化することによるものであると考えられるが、炭素(C)が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化を抑制することができるからである。
【0072】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0073】
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0074】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物等も挙げられる。金属酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデン等が挙げられ、高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロール等が挙げられる。
【0075】
なお、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記の負極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0076】
負極活物質層34Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、焼成法、または塗布のいずれにより形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。負極活物質層34Bを気相法、液相法、溶射法若しくは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成する場合には、負極活物質層34Bと負極集電体34Aとが界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体34Aの構成元素が負極活物質層34Bに拡散し、または負極活物質層34Bの構成元素が負極集電体34Aに拡散し、またはそれらの構成元素が互いに拡散し合っていることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層34Bの膨張および収縮による破壊を抑制することができると共に、負極活物質層34Bと負極集電体34Aとの間の電子伝導性を向上させることができるからである。
【0077】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマ化学気相成長法等が挙げられる。液相法としては、電気鍍金または無電解鍍金等の公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤等と混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤等の融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0078】
(セパレータ)
セパレータ35は、少なくとも多孔性フィルム35aを含む構成とされる。このようなセパレータ35としては、例えば、第1のセパレータ35または第2のセパレータ35等が挙げられる。
図3Aに、第1のセパレータ35の構成例を示す。
図3Bに第2のセパレータ35の構成例を示す。
【0079】
(第1のセパレータ)
図3Aに示すように、第1のセパレータ35は、多孔性フィルム35aのみで構成されたものである。
【0080】
(多孔性フィルム)
多孔性フィルム35aは、下記(式)を満たす構造を有するものである。
(式)
0.04≦Ri≦−0.07L−0.09×S+4.99
Ri=τ
2L/ε’
ε’=[{(L×ε/100)−Rz×0.46/3}/L]×100
τ={(1.216×ε’Td×10
-4)/L}
0.5
[Ri:膜抵抗(μm)、L:膜厚(μm)、τ:曲路率、T:透気度(sec/100cc)、d:細孔径(nm)、Rz:表面粗さの最大高さ(表面および裏面の合計値)(μm)、ε:空孔率(%)、ε’:補正空孔率(%)、S:正極活物質層の面積密度(mg/cm
2)]
【0081】
なお、上述したように正極活物質層33Bの面積密度S(mg/cm
2)は、27mg/cm
2以上である。また、上記(式)が成立する範囲を考慮すると、正極活物質層33Bの面積密度S(mg/cm
2)は、51mg/cm
2以下であることが好ましい。
【0082】
上記式における各パラメータは、下記のようにして測定できる。なお、正極活物質層の面積密度の測定については、上述したので説明を省略する。
【0083】
(細孔径d)
細孔径d(nm)は、西華産業株式会社製の非水銀パームポロメータ(製品名:IEP−200−A)を用いて測定した平均細孔径である。
【0084】
(表面粗さの最大高さRz)
表面粗さの最大高さRz(μm)は、JIS B0601に準じて、株式会社キーエンス製のナノスケールハイブリット顕微鏡(製品名:VN−8000)を用いて測定できる。なお、表面粗さの最大高さRz(μm)は、多孔性フィルム35aの2つの主面(表面および裏面)それぞれについて測定した値の合計値である。
【0085】
(空孔率ε)
多孔性フィルム35aの空孔率ε(%)は、重量法を用いて測定することができる。この方法では、多孔性フィルム35aの10箇所を、多孔性フィルム35aの厚さ方向に向けて直径2cmの円形に打ち抜き、打ち抜いた円形フィルムの中心部の厚さhと、フィルムの質量wとをそれぞれ測定する。さらに、上記厚さhおよび質量wを用いて10枚分のフィルムの体積Vと、10枚分のフィルムの質量Wとを求め、以下の式から空孔率ε(%)を算出することができる。
空孔率ε(%)={(ρV−W)/(ρV)}×100
ここで、ρは多孔性フィルム35aの材料の密度である。
【0086】
(透気度T)
透気度T(sec/100cc)は、ガーレー透気度である。ガーレー透気度は、JIS P8117に準拠して測定できる。ガーレー透気度は、1.22kPa圧で100ccの空気が膜を透過する秒数を示す。
【0087】
(膜厚L)
膜厚Lは、プローブ式膜厚計(Sony製DIGITAL GUAGE STAND DZ−501)でΦ5mmのプローブで1Nの荷重で多孔性フィルム35aを2枚重ねた膜厚を5箇所測定し、測定値の平均/2を算出することにより得た平均膜厚である。
【0088】
(補正空孔率ε’)
膜厚L、空孔率ε、細孔径d、表面粗さの最大高さRzの測定値から式(A)により、補正空孔率ε’を算出することができる。
補正空孔率ε’(%)=[{(L×ε/100)−Rz×0.46/3}/L]×100・・・式(A)
[L:膜厚(μm)、ε:空孔率(%)、Rz:表面粗さの最大高さ(表面および裏面の合計値)(μm)]
【0089】
(曲路率τ)
透気度T、補正空孔率ε’、細孔径d、膜厚Lの測定値から式(B)により、曲路率τを算出することができる。
曲路率τ={(1.216×ε’Td×10
-4)/L}
0.5・・・式(B)
[L:膜厚(μm)、ε’:補正空孔率(%)、T:透気度(sec/100cc)]
【0090】
(膜抵抗Ri)
補正空孔率ε’、膜厚Lおよび曲路率τの測定値から式(C)により、膜抵抗Ri(μm)を算出することができる。
Ri=τ
2L/ε’・・・式(C)
[L:膜厚(μm)、ε’:補正空孔率(%)、τ:曲路率]
【0091】
多孔性フィルム35aを構成する樹脂材料は、例えばポリプロピレン若しくはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂等を用いることできる。これらの中でも、上記(式)を満たす構造を形成し易いものであり、ショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池の安全性向上が可能なポリオレフィン樹脂を用いること(ポリオレフィンフィルム)が好ましい。また、多孔性フィルム35aは、樹脂材料からなる樹脂層を2層以上積層した構造であってもよい。多孔性フィルム35aは、2種以上の樹脂材料を溶融混練して形成した樹脂フィルムであってもよい。多孔性フィルム35aは、酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0092】
(多孔性フィルムの作製方法)
多孔性フィルム35aは、例えば、以下のように作製できる。例えば、ポリオレフィン樹脂等のポリマーと溶剤(可塑剤)とを高温で混合して調製した均一溶液を、Tダイ法、インフレーション法等でフィルム化したのち、延伸した後、溶剤を別の揮発溶剤で抽出除去することにより、多孔性フィルム35aが形成される。溶剤としては高温でポリマーを溶解する不揮発性の有機溶剤を単独または混合して用いる。ポリマーと溶剤との組み合わせにより相分離の形態が異なり、多孔構造も変化する。延伸の方法は、ロール延伸とテンター延伸による逐次二軸延伸、同時二軸テンターによる同時二軸延伸等が適用可能である。製造工程において、例えば、可塑剤の量、延伸倍率および延伸温度の少なくとも何れかを調整することにより、上記(式)を満たす所望の構造の多孔性フィルム35aを得ることができる。なお、多孔性フィルム35aの製造方法は、上記例に限定されるものではない。
【0093】
(セパレータの厚さ)
第1のセパレータ35の厚さLtotal(=多孔性フィルムの厚さL)は、必要な強度を保つことができる厚さ以上であれば任意に設定可能である。第1のセパレータ35の厚さLtotalは、例えば、正極33および負極34間の絶縁を図り、短絡等を防止するとともに、第1のセパレータ35を介した電池反応を好適に行うためのイオン透過性を有し、かつ電池内において電池反応に寄与する活物質層の体積効率をできるだけ高くできる厚さに設定されることが好ましい。具体的には、第1のセパレータ35の厚さLtotalは、例えば3μm以上17μm以下が好ましい。
【0094】
第1のセパレータ35の厚さLtotalが、−0.0873S
2+6.9788S−122.66[S:正極活物質層の面積密度(mg/cm
2)]μmを超えると、第1のセパレータ35の厚さLtotalの増加により電極長が短くなり、電池全体の活物質量が減少することによる容量減少の影響がより大きくなる傾向にある。このため、第1のセパレータの厚さLtotalは、体積エネルギー密度をより高める(例えば300Wh/L以上にする)ことができる観点からは、−0.0873S
2+6.9788S−122.66[S:正極活物質層の面積密度(mg/cm
2)]μm以下であることがより好ましい。
【0095】
(空孔率)
多孔性フィルム35aの空孔率εは、良好なイオン導電性を確保する観点から、例えば、20%以上であることが好ましく、物理的な強度を維持しショート発生を抑制する観点から57%以下であることが好ましく、25%以上46%以下であることがより好ましい。
【0096】
(透気度)
多孔性フィルム35aの透気度Tは、物理的な強度を維持しショート発生を抑制する観点から、50sec/100cc以上であることが好ましく、良好なイオン導電性を確保する観点から、1000sec/100cc以下であることが好ましく、50sec/100cc以上500sec/100cc以下であることがより好ましい。
【0097】
(第2のセパレータ)
図3Bに示すように、第2のセパレータ35は、多孔性フィルム35aおよび該多孔性フィルム35aの少なくとも一方の表面に設けられた表面層35bで構成されたものである。なお、
図3Bに示すものは、表面層35bが多孔性フィルム35aの一方の表面に設けられた例である。図示は省略するが、表面層35bが多孔性フィルム35aの両方の表面に設けられていてもよい。
【0098】
(多孔性フィルム35a)
多孔性フィルム35aは、上述したものと同様の構成である。
【0099】
(表面層)
表面層35bは、樹脂材料を含む。
【0100】
(樹脂材料)
樹脂材料は、例えば、フィブリル化し、フィブリルが相互連続的に繋がった三次元的なネットワーク構造を有していてもよい。
【0101】
表面層35bに含まれる樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド(特にアラミド)、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステル等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0102】
なお、表面層35bは、無機粒子、有機粒子等の粒子をさらに含有していてもよい。この場合、樹脂材料は粒子を多孔性フィルム35aの表面に結着するためや粒子同士を結着するために、表面層35bに含有されている。粒子は、三次元的なネットワーク構造を有する樹脂材料に担持されていてもよく、この場合、粒子同士が互いに連結することなく分散状態を保つことができる。また、フィブリル化していない樹脂材料が、多孔性フィルム35aの表面や粒子同士を結着してもよい。この場合、より高い結着性を得ることができる。
【0103】
(無機粒子)
無機粒子としては、電気絶縁性の無機粒子である金属酸化物、金属酸化物水和物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等を挙げることができる。金属酸化物または金属酸化物水和物としては、酸化アルミニウム(アルミナ、Al
2O
3)、ベーマイト(Al
2O
3H
2OまたはAlOOH)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO
2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO
2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO
2)または酸化イットリウム(イットリア、Y
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si
3N
4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)または窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)または炭化ホウ素(B
4C)等を好適に用いることができる。金属硫化物としては、硫酸バリウム(BaSO
4)等を好適に用いることができる。金属水酸化物としては水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)等を用いることができる。また、ゼオライト(M
2/nO・Al
2O
3・xSiO
2・yH
2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)等の多孔質アルミノケイ酸塩、タルク(Mg
3Si
4O
10(OH)
2)等の層状ケイ酸塩等のケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO
3)またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)等の鉱物を用いてもよい。また、Li
2O
4、Li
3PO
4、LiF等のリチウム化合物を用いてもよい。黒鉛、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド等の炭素材料を用いてもよい。中でも、アルミナ、ベーマイト、タルク、チタニア(特にルチル型構造を有するもの)、シリカまたはマグネシアを用いることが好ましく、アルミナまたはベーマイトを用いることがより好ましい。
【0104】
これら無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状、針状、鱗片状、板状およびランダム形状等のいずれも用いることができる。
【0105】
(有機粒子)
有機粒子を構成する材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステル等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の高い耐熱性を有する樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。有機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状、針状、鱗片状、板状およびランダム形状等のいずれも用いることができる。
【0106】
表面層35bは、例えば、樹脂材料をN−メチル−2−ピロリドン等の分散溶媒に添加し、樹脂材料を溶解させて、樹脂溶液を得て、この樹脂溶液を多孔性フィルム35aの少なくとも一方の面に、塗布し、乾燥すること等により得ることができる。なお、表面層34bが樹脂材料と共に粒子を含有する場合、表面層35bは、例えば、樹脂材料と粒子とを混合し、N−メチル−2−ピロリドン等の分散溶媒に添加し、樹脂材料を溶解させて、樹脂溶液を得て、この樹脂溶液を多孔性フィルム35aの少なくとも一方の面に、塗布し、乾燥すること等により得ることができる。
【0107】
(セパレータの厚さ)
第2のセパレータ35の厚さLtotal(多孔性フィルム35aの厚さLおよび表面層35bの厚さの合計値)は、必要な強度を保つことができる厚さ以上であれば任意に設定可能である。第2のセパレータ35の厚さLtotalは、例えば、正極33および負極34間の絶縁を図り、短絡等を防止するとともに、第2のセパレータ35を介した電池反応を好適に行うためのイオン透過性を有し、かつ電池内において電池反応に寄与する活物質層の体積効率をできるだけ高くできる厚さに設定されることが好ましい。具体的には、第2のセパレータ35の厚さLtotalは、例えば3μm以上17μm以下が好ましい。
【0108】
第2のセパレータ35の厚さLtotalが、−0.0873S
2+6.9788S−122.66[S:正極活物質層の面積密度(mg/cm
2)]μmを超えると、第2のセパレータ35の厚さLtotalの増加により電極長が短くなり、電池全体の活物質量が減少することによる容量減少の影響がより大きくなる傾向にある。このため、第2のセパレータ35の厚さLtotalは、体積エネルギー密度をより高める(例えば300Wh/L以上にする)ことができる観点からは、−0.0873S
2+6.9788S−122.66[S:正極活物質層の面積密度(mg/cm
2)]μm以下であることがより好ましい。
【0109】
(電解質)
電解質36は、非水電解液(電解液)と、それを保持する高分子化合物(マトリックス高分子化合物)とを含んでいる。電解質36は、例えば、いわゆるゲル状の電解質である。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。なお、電解質36はさらに無機粒子、有機粒子等の粒子を含んでいてもよい。無機粒子および有機粒子の詳細は、上記と同様である。
【0110】
(非水電解液)
非水電解液は、電解質塩と、この電解質塩を溶解する非水溶媒とを含む。
【0111】
電解質塩は、例えば、リチウム塩等の軽金属化合物の1種または2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C
6H
5)
4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH
3SO
3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl
4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li
2SiF
6)、塩化リチウム(LiCl)または臭化リチウム(LiBr)等が挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。
【0112】
非水溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンまたはε−カプロラクトン等のラクトン系溶媒、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸ジエチル等の炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランまたは2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類等の非水溶媒が挙げられる。非水溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
また、非水溶媒として、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルを混合して用いることが好ましく、環状炭酸エステルまたは鎖状炭酸エステルの水素の一部または全部がフッ素化された化合物を含むことがより好ましい。このフッ素化された化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:FEC)またはジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:DFEC)を用いることが好ましい。負極活物質としてケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)等の化合物を含む負極34を用いた場合であっても、充放電サイクル特性を向上させることができるためである。なかでも、非水溶媒としてジフルオロエチレンカーボネートを用いることが好ましい。サイクル特性改善効果に優れるためである。
【0114】
(高分子化合物)
高分子化合物としては、溶媒に相溶可能な性質を有するもの等を用いることができる。このような高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、またはポリカーボネート等が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンまたはポリエチレンオキサイドが好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0115】
(電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下の3種類の製造方法(第1〜第3の製造方法)によって製造される。
【0116】
(第1の製造方法)
第1の製造方法では、最初に、例えば、正極材料と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体33Aの両面に塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層33Bを形成し、正極33を作製する。なお、圧縮成型工程において、必要に応じて加熱しながら、ロールプレス機等により圧縮成型し、厚みおよび密度を調整することで正極活物質層33Bの面積密度を調整できる。この場合には圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
【0117】
負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体34Aの両面に塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層34Bを形成し、負極34を作製する
【0118】
続いて、電解液と、高分子化合物と、溶剤とを含む前駆溶液を調製して正極33および負極34の少なくとも一方の両面に塗布したのち、溶剤を揮発させてゲル状の電解質36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。なお、電極の両面にゲル状の電解質36を形成することに変えて、セパレータの両面の少なくとも一方の面にゲル状の電解質36を形成してもよい。
【0119】
続いて、電解質36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープ37を接着させて巻回電極体30を作製する。最後に、例えば、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、その外装部材40の外縁部同士を熱融着等で接着させて巻回電極体30を封入する。この際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、
図1および
図2に示す非水電解質電池が完成する。なお、巻回電極体30の代わりに短冊型電極板等の積層による電極体としてもよい。
【0120】
(第2の製造方法)
第2の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。
【0121】
続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着等で接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。
【0122】
このセパレータ35に塗布する高分子化合物としては、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体、すなわち単独重合体、共重合体または多元共重合体等が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体等が好適である。なお、高分子化合物は、上記したフッ化ビニリデンを成分とする重合体と共に、他の1種または2種以上の高分子化合物を含んでいてもよい。
【0123】
セパレータ35上の高分子化合物は、例えば、以下のようにして、多孔性高分子化合物を形成していてもよい。すなわち、まず、高分子化合物を、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させた溶液を調製し、この溶液をセパレータ35上に塗布する。次に、上記溶液が塗布されたセパレータ35を水、エチルアルコール、プロピルアルコール等の上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上記高分子化合物に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬する。このとき、溶媒交換が起こり、スピノーダル分解を伴う相分離が生じ、高分子化合物は多孔構造を形成する。その後、乾燥することにより、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を得ることができる。
【0124】
続いて、電解液を調製して、袋状の外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着等で密封する。最後に、外装部材40に加重をかけながら加熱し、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸し、その高分子化合物がゲル化して、ゲル状の電解質36が形成され、
図1および
図2に示す非水電解質電池が完成する。なお、巻回電極体30の代わりに短冊型電極板等の積層による電極体としてもよい。
【0125】
(第3の製造方法)
第3の製造方法では、最初に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。
【0126】
続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を熱融着等で接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着等で密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質36を形成する。これにより、
図1および
図2に示す非水電解質電池が完成する。なお、巻回電極体30の代わりに短冊型電極板等の積層による電極体としてもよい。
【0127】
本技術の第1の実施の形態による非水電解質電池では、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)が例えば、例えば4.20V、4.25Vまたは4.35V以上4.65V、4.80Vまたは6.00V以下となるように設計されていてもよい。電池電圧を高くすることによりエネルギー密度をより大きくすることができる。電池電圧を高くした場合でも、本技術の実施の形態では、所定構造のセパレータを用いているので、サイクル特性の劣化を抑制できる。例えば、完全充電時における開回路電圧が4.25V以上とされる場合は、4.20Vの電池と比較して、同じ正極活物質であっても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整される。これにより、より高いエネルギー密度を得ることができる。
【0128】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様のゲル電解質層を備えたラミネートフィルム型の電池(非水電解質電池)の電池パックの例について説明する。
【0129】
この電池パックは、簡易型の電池パック(ソフトパックとも称する)である。簡易型の電池パックは、スマートフォン(smartphone)等の電子機器に内蔵されるものであり、電池セルや保護回路等が絶縁テープ等で固定され、電池セルの一部が露出され、電子機機本体に接続されるコネクタ等の出力が設けられたものである。
【0130】
簡易型の電池パックの構成の一例について説明する。
図4は簡易型の電池パックの構成例を示す分解斜視図である。
図5Aは、簡易型の電池パックの外観を示す概略斜視図であり、
図5Bは、簡易型の電池パックの外観を示す概略斜視図である。
【0131】
図4および
図5A〜
図5Bに示すように、簡易型の電池パックは、電池セル101と、電池セル101から導出されたリード102aおよび102bと、絶縁テープ103a〜103cと、絶縁プレート104と、保護回路(PCM(Protection Circuit Module))が形成された回路基板105と、コネクタ106とを備える。電池セル101は、例えば、第1の実施の形態による非水電解質電池と同様である。
【0132】
電池セル101の前端のテラス部101aに、絶縁プレート104および回路基板105が配置され、電池セル101から導出されたリード102aおよびリード102bが、回路基板105に接続される。
【0133】
回路基板105には、出力のためのコネクタ106が接続されている。電池セル101、絶縁プレート104および回路基板105等の部材は、絶縁テープ103a〜103cを所定箇所に貼ることによって固定されている。
【0134】
3.第3の実施の形態
(電池パックの例)
図6は、本技術の第1の実施の形態による電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0135】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0136】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この二次電池301aは本技術の二次電池である。なお、
図6では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0137】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例では+側にスイッチ部304を設けているが、−側に設けても良い。
【0138】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチ302aのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0139】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0140】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0141】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0142】
ここで、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0143】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0144】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0145】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各二次電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。(また、二次電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0146】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0147】
4.第4の実施の形態
上述した本技術の第1の実施の形態による電池、並びにこれを用いた第2の実施の形態および第3の実施の形態による電池パックは、例えば電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に搭載または電力を供給するために使用することができる。
【0148】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0149】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。
【0150】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0151】
以下では、上述した適用例のうち、上述した本技術の電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0152】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0153】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0154】
(4−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、
図7を参照して説明する。例えば住宅401用の蓄電システム400においては、火力発電402a、原子力発電402b、水力発電402c等の集中型電力系統402から電力網409、情報網412、スマートメータ407、パワーハブ408等を介し、電力が蓄電装置403に供給される。これと共に、家庭内の発電装置404等の独立電源から電力が蓄電装置403に供給される。蓄電装置403に供給された電力が蓄電される。蓄電装置403を使用して、住宅401で使用する電力が給電される。住宅401に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0155】
住宅401には、発電装置404、電力消費装置405、蓄電装置403、各装置を制御する制御装置410、スマートメータ407、各種情報を取得するセンサ411が設けられている。各装置は、電力網409および情報網412によって接続されている。発電装置404として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置405および/または蓄電装置403に供給される。電力消費装置405は、冷蔵庫405a、空調装置405b、テレビジョン受信機405c、風呂405d等である。さらに、電力消費装置405には、電動車両406が含まれる。電動車両406は、電気自動車406a、ハイブリッドカー406b、電気バイク406cである。
【0156】
蓄電装置403に対して、本技術の電池が適用される。本技術の電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ407は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網409は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0157】
各種のセンサ411は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ411により取得された情報は、制御装置410に送信される。センサ411からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置405を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置410は、住宅401に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
パワーハブ408によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置410と接続される情報網412の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth
(登録商標)、ZigBee
(登録商標)、Wi−Fi
(登録商標)等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth
(登録商標)方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBee
(登録商標)は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0158】
制御装置410は、外部のサーバ413と接続されている。このサーバ413は、住宅401、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ413が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0159】
各部を制御する制御装置410は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置403に格納されている。制御装置410は、蓄電装置403、家庭内の発電装置404、電力消費装置405、各種のセンサ411、サーバ413と情報網412により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0160】
以上のように、電力が火力発電402a、原子力発電402b、水力発電402c等の集中型電力系統402のみならず、家庭内の発電装置404(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置403に蓄えることができる。したがって、家庭内の発電装置404の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置403に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置403に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置403によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0161】
なお、この例では、制御装置410が蓄電装置403内に格納される例を説明したが、スマートメータ407内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム400は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0162】
(4−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、
図8を参照して説明する。
図8に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、またはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0163】
このハイブリッド車両500には、エンジン501、発電機502、電力駆動力変換装置503、駆動輪504a、駆動輪504b、車輪505a、車輪505b、バッテリー508、車両制御装置509、各種センサ510、充電口511が搭載されている。バッテリー508に対して、上述した本技術の電池が適用される。
【0164】
ハイブリッド車両500は、電力駆動力変換装置503を動力源として走行する。電力駆動力変換装置503の一例は、モータである。バッテリー508の電力によって電力駆動力変換装置503が作動し、この電力駆動力変換装置503の回転力が駆動輪504a、504bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)または逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置503が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ510は、車両制御装置509を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ510には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0165】
エンジン501の回転力は発電機502に伝えられ、その回転力によって発電機502により生成された電力をバッテリー508に蓄積することが可能である。
【0166】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両500が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置503に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置503により生成された回生電力がバッテリー508に蓄積される。
【0167】
バッテリー508は、ハイブリッド車両500の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口511を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0168】
図示しないが、二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0169】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0170】
以下、実施例により、本技術を詳細に説明する。なお、本技術の構成は下記の実施例に限定されるものではない。
【0171】
<実施例1−1>
[正極の作製]
以下のようにして正極を作製した。正極活物質(LiCo
0.98Al
0.01Mg
0.01O
2)を91質量部と、導電剤として黒鉛を6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3質量部とを混合して、正極合剤とした。さらに、この正極合剤を、溶媒となるN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状にした。次に、得られた正極合剤ペーストを、正極集電体となる厚さ12μmの帯状アルミニウム箔の両面に均一に塗布した後、乾燥処理を行った。乾燥後に、ローラープレス機により圧縮成型することにより、正極活物質層を形成した。なお、正極活物質層の面積密度の調整は、圧縮成型工程において、必要に応じて加熱しながら、厚みおよび密度を調整することで行った。実施例1では、正極活物質層の面積密度が、31.1mg/cm
2になるように調整した。さらに、正極集電体の正極活物質層非形成部分に、アルミニウム製のリードを溶接して正極端子とし、正極を得た。
【0172】
[負極の作製]
以下のようにして負極を作製した。負極活物質として黒鉛を90質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを10質量部とを混合して負極合剤とした。さらに、この負極合剤を、溶媒となるN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状にした。次に、得られた負極合剤ペーストを、負極集電体となる厚さ8μmの帯状銅箔の両面に均一に塗布した後、乾燥処理を行った。乾燥後に、ローラープレス機により圧縮成型することにより、負極活物質層を形成した。さらに、負極集電体の負極活物質層非形成部分に、ニッケル製のリードを溶接して負極端子とし、負極を得た。
【0173】
[セパレータの作製]
セパレータとして、以下のポリエチレンフィルムを作製した。重量平均分子量(Mw)が2.5×10
6の超高分子量ポリエチレン2質量部と、重量平均分子量(Mw)が2.4×10
5のポリエチレン13質量部とを混合した原料樹脂と、所望の構造に応じた量で、流動パラフィンとを混合し、ポリエチレン組成物の溶液を調製した。
【0174】
次に、このポリエチレン組成物の溶液100質量部に、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.125質量部と、テトラキス〔(メチレン)−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルフェニル)−プロピオネート)〕メタン0.25質量部とを酸化防止剤として加えた。この混合液を攪拌機付のオートクレーブに充填し、200℃で90分間攪拌して均一な溶液を得た。
【0175】
この溶液を直径45mmの押出機により、Tダイから押出し、冷却ロールで引取りながらゲル状シートを成形した。
【0176】
得られたシートを二軸延伸機にセットして、所望の構造に応じた延伸温度および延伸倍率で、同時二軸延伸を行った。
【0177】
得られた延伸膜を塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去した後、乾燥して、所望の構造(膜厚7μm、表面粗さの最大高さ2μm、補正前空孔率30%、補正空孔率25.6%、透気度250sec/100cc、細孔径24nm、曲路率1.6、膜抵抗0.72μm)を有するポリエチレンフィルム(セパレータ)を得た。
【0178】
[ゲル電解質層の形成]
以下のようにして正極および負極上にゲル電解質層を形成した。
まず、ジメチルカーボネート(DMC)80gと、エチレンカーボネート(EC)を40gと、プロピレンカーボネート(PC)40gと、LiPF
69.2gと、ビニレンカーボネート(VC)0.8gとを混合することにより溶液(電解液)を調製した。
【0179】
次に、この溶液にポリフッ化ビニリデン(PVdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体(共重合重量比PVdF:HFP=97:3)10gを加え、ホモジナイザーにて均一に分散させた後、さらに、無色透明となるまで75℃で加熱撹拌して電解質溶液を得た。
【0180】
次に、得られた電解質溶液を、ドクターブレード法により正極および負極の両面にそれぞれ均一に塗布した。その後、電解質溶液が塗布された正極および負極を、庫内温度が40℃に保たれた乾燥器中に1分間置くことで、電解質溶液をゲル化し、正極および負極のそれぞれの両面に、厚さ約8μmのゲル電解質層を形成した。
【0181】
[電池の組立て]
以下のようにして電池を組み立てた。上述のようにして作製された、両面にゲル電解質層が形成された帯状の正極と、両面にゲル電解質層が形成された帯状の負極とをセパレータを介して積層して積層体とし、さらにこの積層体をその長手方向に巻回することにより電極巻回体(巻回電極体)を得た。
【0182】
次に、この電極巻回体を、最外層から順に25μm厚のナイロンと40μm厚のアルミニウムと30μm厚のポリプロピレンとが積層されてなる防湿性の外装フィルム(ラミネートフィルム)で挟み、外装フィルムの外周縁部を減圧下で熱融着することによって封口し、電極巻回体を外装フィルム中に密閉した。なお、このとき、正極端子と負極端子とを外装フィルムの封口部に挟み込むとともに、外装フィルムと正極端子および負極端子との接触部分にポリオレフィンフィルムを配した。
【0183】
最後に、外装フィルムに封止された状態で、電極素子に対して加熱処理を施した。このようにしてラミネートフィルム型のゲル電解質電池(電池サイズ厚さ4.4mm、幅65mm、高さ71mm、電池体積2.03×10
-5L)を完成した。
【0184】
<実施例1−2〜実施例1−6、比較例1−1>
下掲の表1に示す膜厚、表面粗さの最大高さ、補正前空孔率、補正空孔率、透気度、細孔径、曲路率、膜抵抗を備えるセパレータを作製したこと以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネートフィルム型のゲル電解質電池を完成した。
【0185】
<実施例2−1〜実施例2−11、比較例2−1〜比較例2−3>
正極活物質層の面積密度を34.3mg/cm
2に調整した。下掲の表1に示す膜厚、表面粗さの最大高さ、補正前空孔率、補正空孔率、透気度、細孔径、曲路率、膜抵抗を備えるセパレータを作製した。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネートフィルム型のゲル電解質電池を完成した。
【0186】
<実施例3−1〜実施例3−3、実施例3−5〜実施例3−10、比較例3−1〜比較例3−3>
正極活物質層の面積密度を36.3mg/cm
2に調整した。下掲の表1に示す膜厚、表面粗さの最大高さ、補正前空孔率、補正空孔率、透気度、細孔径、曲路率、膜抵抗を備えるセパレータを作製した。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネートフィルム型のゲル電解質電池を完成した。
【0187】
<実施例3−4>
正極活物質層の面積密度を36.3mg/cm
2に調整した。下掲の表1に示す膜厚、表面粗さの最大高さ、補正前空孔率、補正空孔率、透気度、細孔径、曲路率、膜抵抗を備えるセパレータを作製した。
【0188】
次に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて溶液を調製した。この溶液を、セパレータの両面に塗布後、水に浸漬させた後、乾燥させた。これにより、セパレータの両面に多孔構造を有する多孔性高分子化合物を形成した。
【0189】
第1の実施の形態と同様にして作製した正極および負極を、両面に多孔性高分子化合物が形成されたセパレータを介して密着させた後、長手方向に巻回して、最外周に保護テープを貼付することにより、巻回電極体を作製した。
【0190】
巻回電極体を、外装部材の間に挟み、3辺を熱融着した。なお、外装部材には、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとを積層した構造を有する防湿性アルミラミネートフィルムを用いた。
【0191】
そののち、これに電解液を注入し、減圧下で残りの1辺を熱融着し、密封した。なお、電解液は、エチルメチルカーボネート(EMC)17gと、エチレンカーボネート(EC)を34gと、ジエチルカーボネート(DEC)34gと、LiPF
614gと、ビニレンカーボネート(VC)0.8gとを混合することにより調製したものを用いた。そして、鉄板に挟んで加熱することで、多孔性高分子化合物を膨潤させゲル状の電解質とした。これにより、実施例1−1と同サイズのラミネートフィルム型のゲル電解質電池を完成した。
【0192】
<実施例4−1〜実施例4−4、実施例4−7、比較例4−1>
正極活物質層の面積密度を38.5mg/cm
2に調整した。下掲の表1に示す膜厚、表面粗さの最大高さ、補正前空孔率、補正空孔率、透気度、細孔径、曲路率、膜抵抗を備えるセパレータを作製した。以上のこと以外は、実施例1−1と同様にして、ラミネートフィルム型のゲル電解質電池を完成した。
【0193】
<実施例4−5〜実施例4−6、比較例4−2>
正極活物質層の面積密度を38.5mg/cm
2に調整した。下掲の表1に示す表面粗さの最大高さ、補正前空孔率、補正空孔率、透気度、細孔径、曲路率、膜抵抗を備えるセパレータを作製した。以上のこと以外は、実施例3−4と同様にして、ラミネートフィルム型のゲル電解質電池を完成した。
【0194】
<実施例5−1、比較例5−1>
正極活物質層の面積密度を42.0mg/cm
2に調整した。下掲の表1に示す膜厚、表面粗さの最大高さ、補正前空孔率、補正空孔率、透気度、細孔径、曲路率、膜抵抗を備えるセパレータを作製した。以上のこと以外は、実施例3−4と同様にして、ラミネートフィルム型のゲル電解質電池を完成した。
【0195】
上述の実施例1−1〜実施例5−1、比較例1−1〜比較例5−1において、セパレータの細孔径d(nm)、表面粗さの最大高さRz(μm)、膜厚L(μm)、空孔率ε(%)、透気度T(sec/100cc)、補正空孔率ε’(%)、曲路率τ、正極活物質層の面積密度S(mg/cm
2)および膜抵抗Ri(μm)は、以下のように測定したものである。
【0196】
(細孔径d)
細孔径d(nm)は、西華産業株式会社製の非水銀パームポロメータ(製品名:IEP−200−A)を用いて測定した平均細孔径である。
【0197】
(表面粗さの最大高さRz)
表面粗さの最大高さRz(μm)は、JIS B0601に準じて、株式会社キーエンス製のナノスケールハイブリット顕微鏡(製品名:VN−8000)を用いて測定した。多孔性フィルム(ポリエチレンフィルム(セパレータ))の2つの主面それぞれについて測定した値の合計値である。
【0198】
(空孔率ε)
セパレータの空孔率ε(%)は、重量法を用いて測定することができる。この方法では、セパレータの10箇所を、セパレータの厚さ方向に向けて直径2cmの円形に打ち抜き、打ち抜いた円形フィルムの中心部の厚さhと、フィルムの質量wとをそれぞれ測定する。さらに、上記厚さhおよび質量wを用いて10枚分のフィルムの体積Vと、10枚分のフィルムの質量Wとを求め、以下の式から空孔率ε(%)を算出することができる。
空孔率ε[%]={(ρV−W)/(ρV)}×100
ここで、ρはセパレータの材料の密度である。
【0199】
(透気度T)
セパレータの透気度T(sec/100cc)は、ガーレー透気度である。ガーレー透気度は、JIS P8117に準拠して測定できる。ガーレー透気度は、1.22kPa圧で100ccの空気が膜を透過する秒数を示す。
【0200】
(膜厚L)
プローブ式膜厚計(Sony製DIGITAL GUAGE STAND DZ−501)でΦ5mmのプローブで1Nの荷重で多孔性フィルム(ポリエチレンフィルム(セパレータ))を2枚重ねた膜厚を5箇所測定し、測定値の平均/2を算出することにより得た平均膜厚である。
【0201】
(補正空孔率ε’)
膜厚、空孔率、細孔径、表面粗さの最大高さの測定値から式(A)により、補正空孔率ε’(%)を算出した。
補正空孔率ε’(%)=[{(L×ε/100)−Rz×0.46/3}/L]×100(%)・・・式(A)
[L:膜厚(μm)、ε:空孔率(%)、Rz:表面粗さの最大高さ(表面および裏面の合計値)(μm)]
【0202】
(曲路率τ)
透気度、補正空孔率、細孔径、膜厚の測定値から式(B)により、曲路率τを算出した。
曲路率τ={(1.216×ε’Td×10
-4)/L}
0.5・・・式(B)
[L:膜厚(μm)、ε’:補正空孔率(%)、T:透気度(sec/100cc)]
【0203】
(正極活物質層の面積密度S)
電池を完全放電させてから解体して正極板を取り出し、溶剤(DMC:ジメチルカーボネート)で洗浄した後、充分に乾燥させた。正極集電体の両面に正極活物質層が形成されている部分(両面形成部)を所定の面積(打ち抜き面積)で打ち抜き、質量(mg)(質量Aと称する)を測定し、両面ともに合剤層が塗布されていない部分を同様にして打ち抜き、質量(mg)(質量Bと称する)を測定した。そして、下記計算式により算出した。
計算式:面積密度(mg/cm
2)=(質量A−質量B)÷打ち抜き面積
【0204】
(膜抵抗Ri)
補正空孔率ε’(%)、膜厚L(μm)および曲路率τの測定値から式(C)により、膜抵抗Ri(μm)を算出した。
Ri=τ
2L/ε’・・・式(C)
[L:膜厚(μm)、ε’:補正空孔率(%)、τ:曲路率]
【0205】
(電池評価:サイクル試験)
作製した電池について、以下のサイクル試験を行い容量維持率(サイクル維持率)を求めた。23℃にて所定の充電電圧(下掲の表1に示す電圧)で0.5Cの電流でCC−CV充電(定電流定電圧充電)を5時間行い、3時間休止した後、0.5Cの放電電流で3.0Vの電圧まで放電した。この操作を2回繰り返した。2回目の放電を1サイクル目として、このときの放電容量をこの電池の初期放電容量とした。同様の条件にて充放電を繰り返し行い、[500サイクル後の容量/初期放電容量]×100(%)をサイクル維持率とした。なお、1Cは、理論容量を1時間で放電(または充電)しきる電流値である。0.5
Cは、理論容量を2時間で放電(または充電)しきる電流値である。
【0206】
(電池評価:体積エネルギー密度の測定)
サイクル試験で求めた初期放電容量(mAh)に平均放電電圧(V)を乗じて電池体積で割ることにより、エネルギー密度(Wh/L)を求めた。
【0207】
実施例1−1〜実施例5−1、および比較例1−1〜比較例5−1の測定結果を表1に示す。
【0208】
【表1】
【0209】
また、実施例および比較例が、下記(式)を満たすものであるか否かの理解を容易にするため、
図9〜
図13に、面積密度(S)が所定値(31.1mg/cm
2、34.3mg/cm
2、36.3mg/cm
2、38.5mg/cm
2、42mg/cm
2)の場合のL−Riの座標平面(L−Ri平面)を示す。
【0210】
(式)
0.04≦Ri≦−0.07L−0.09×S+4.99
Ri=τ
2L/ε’
ε’=[{(L×ε/100)−Rz×0.46/3}/L]×100
τ={(1.216×ε’Td×10
-4)/L}
0.5
[Ri:膜抵抗(μm)、L:膜厚(μm)、τ:曲路率、T:透気度(sec/100cc)、d:細孔径(nm)、Rz:表面の最大高さ、表裏の合計(μm)、ε:空孔率(%)、ε’:補正空孔率(%)、S:正極活物質層の面積密度(mg/cm
2)]
【0211】
図9〜
図13のL−Ri座標平面に、各実施例および各比較例の測定値をプロットした。プロットした点が、領域S1〜領域S5の範囲内である場合、多孔性フィルムからなるセパレータ(ポリエチレンフィルム)が上記(式)の関係を満たす構造を有するものであり、領域S1〜領域S5の範囲外である場合、セパレータ(ポリエチレンフィルム)が上記(式)の関係を満たす構造を有するものではない。
【0212】
なお、
図9〜
図13のそれぞれに示した、領域S1〜S5、Ri
min、Ri
maxは、それぞれ、上記(式)に従い導きだしたものである。以下に領域S1〜S5、Ri
min、Ri
maxの関係式を記述する。
【0213】
(領域S1)
領域S1:Ri
min≦Ri≦Ri
max
Ri
min=0.40
Ri
max=−0.07L−0.09×S+4.99(S=31.1)
【0214】
(領域S2)
領域S2:Ri
min≦Ri≦Ri
max
Ri
min=0.40
Ri
max=−0.07L−0.09×S+4.99(S=34.3)
【0215】
(領域S3)
領域S3:Ri
min≦Ri≦Ri
max
Ri
min=0.40
Rimax=−0.07L−0.09×S+4.99(S=36.3)
【0216】
(領域S4)
領域S4:Ri
min≦Ri≦Ri
max
Ri
min=0.40
Ri
max=−0.07L−0.09×S+4.99(S=38.5)
【0217】
(領域S5)
領域S5:Ri
min≦Ri≦Ri
max
Ri
min=0.40
Ri
max=−0.07L−0.09×S+4.99(S=42.0)
【0218】
表1および
図9〜
図13に示すように、上記(式)の関係を満たす実施例1−1〜5−1では、サイクル特性が優れていた。一方、上記(式)の関係を満たさない比較例1−1〜比較例5−1では、サイクル特性が優れていなかった。なお、一般的なユーザに要求されるサイクル試験における容量維持率が70%程度であるので、特性評価では、この値(70%)を基準値として、基準値以上をサイクル特性が優れていると判定した。
【0219】
また、次のようにして、電池のエネルギー密度の観点からセパレータの膜厚の好ましい範囲を検討した。すなわち、正極活物質層の面積密度S
x=31.3(mg/cm
2)、34.3(mg/cm
2)、36.3(mg/cm
2)、38.5(mg/cm
2)または42.0(mg/cm
2)ごとに、膜厚L、電池の体積エネルギー密度W(Wh/L)の値を、横軸x:L(膜厚)、縦軸y:log
10(W)の座標平面にプロットした。
【0220】
そして、プロットに基づき、面積密度S
xごとに、近似直線(一次関数:y=ax+b)を求めた後、この近似直線と、電池の体積エネルギー密度W=300(Wh/L)のy値:log
10(300)との交点(x、y)=(L
max、log
10(300))を算出した。なお、算出されたL
maxの値は、面積密度S
xにおいて、体積エネルギー密度300Wh/L以上を満たすセパレータの最大膜厚を示す。
【0221】
次に、横軸x:S(面積密度)、縦軸y:L(膜厚)の座標平面に、(x、y)=(S
x、L
max)をプロットした。そして、プロットに基づき、近似曲線(2次関数:y=px
2+qx+r)を求めた。求められた近似曲線(y=−0.0874x
2+6.9788x−122.66)の面積密度x=Sにおけるy値が、体積エネルギー密度300Wh/Lを満たす最大膜厚を示す。したがって、セパレータの膜厚Lが、−0.0873S
2+6.9788S−122.66μm以下である場合、電池の体積エネルギー密度が300Wh/L以上となる。以上からセパレータの膜厚Lが、−0.0873S
2+6.9788S−122.66μm以下である場合、電池の体積エネルギー密度が300Wh/L以上となることがわかった。
【0222】
4.他の実施の形態
本技術は、上述した本技術の実施の形態に限定されるものでは無く、本技術の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0223】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、形状、材料、原料、製造プロセス等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料、原料、製造プロセス等を用いてもよい。
【0224】
また、上述の実施の形態および実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0225】
上述の実施の形態による電池は、二次電池に限定されず、一次電池であってもよい。
【0226】
上述の実施の形態および実施例では、外装にラミネートフィルムを用いたラミネートフィルム型の電池構造を有する電池、電極を巻回した巻回構造を有する電池について、説明したが、これらに限定されるものではない。例えば、円筒型の電池、電極を積み重ねた構造を有するスタック型、角型、コイン型、扁平型またはボタン型の電池等の他の電池構造を有する電池についても同様に、本技術を適用することができる。スタック型には、例えば、枚葉のセパレータを介して正極および負極を積層した電池構造、つづら折りにより折り畳まれた一枚の帯状のセパレータを介して正極および負極を積層した電池構造、負極を挟んだ状態でつづら折りにより折り畳まれた一対のセパレータを介して正極および負極を積層した電池構造等が挙げられる。また、例えば、第2のセパレータ35を構成する表面層35aは、粒子を省略した構成であってもよい。
【0227】
また、電解質36として、固体電解質等を用いてもよい。電解質36は、イオン性液体(常温溶融塩)を含んでいてもよい。電解質36は、液状の電解液であってもよい。
【0228】
本技術は、以下の構成をとることもできる。
[1]
正極集電体および正極活物質を含み且つ上記正極集電体の両面に設けられた正極活物質層を有する正極と、
負極と、
少なくとも多孔性フィルムを含むセパレータと、
電解質と
を備え、
上記正極活物質は、層状構造を有し、且つ、リチウムとコバルトとを少なくとも含むリチウムコバルト複合酸化物を含む正極材料を有し、
上記正極活物質層の面積密度S(mg/cm
2)は、27mg/cm
2以上であり、
上記多孔性フィルムは、下記(式)を満たす電池。
(式)
0.04≦Ri≦−0.07L−0.09×S+4.99
Ri=τ
2L/ε’
ε’=[{(L×ε/100)−Rz×0.46/3}/L]×100
τ={(1.216×ε’Td×10
-4)/L}
0.5
[Ri:膜抵抗(μm)、L:膜厚(μm)、τ:曲路率、T:透気度(sec/100cc)、d:細孔径(nm)、Rz:表面粗さの最大高さ(表面および裏面の合計値)(μm)、ε:空孔率(%)、ε’:補正空孔率(%)、S:正極活物質層の面積密度(mg/cm
2)]
[2]
上記電解質は、電解液および高分子化合物を含み、且つ、上記電解液が上記高分子化合物により保持されたゲル状の電解質である[1]に記載の電池。
[3]
上記電解質は、粒子をさらに含む[1]
又は[2]に記載の電池。
[4]
上記粒子は、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)、ベーマイト(Al2O3H2OまたはAlOOH)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO2)、酸化イットリウム(イットリア、Y2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化チタン(TiN)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)、硫酸バリウム(BaSO4)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、ゼオライト(M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化リチウム(Li2O4)、燐酸化リチウム(Li3PO4)、フッ化リチウム(LiF)、黒鉛、カーボンナノチューブおよびダイヤモンドの中から選ばれた少なくとも1つを含有する[3]に記載の電池。
[
5]
上記正極活物質層の面積密度S(mg/cm
2)は、51mg/cm
2以下である[1]〜[
4]の何れか
一に記載の電池。
[
6]
上記セパレータの厚さは、3μm以上17μm以下である[1]〜[
5]の何れか
一に記載の電池。
[
7]
上記正極材料は、上記リチウムコバルト複合酸化物の粒子の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層をさらに含む被覆粒子である[1]〜[
6]の何れか
一に記載の電池。
[
8]
上記リチウムコバルト複合酸化物は、一般式(化1)で表されるリチウムコバルト複合酸化物の少なくとも1種である[1]〜[
7]の何れか
一に記載の電池。
(化1)
Li
pCo
(1-q)M1
qO
(2-y)X
z
(式中、M1はコバルト(Co)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示し、Xは酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0.9≦p≦1.1、0≦q<0.5、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.1の範囲内の値である。)
[
9]
上記セパレータは、上記多孔性フィルムの少なくとも一方の主面に設けられた、粒子および樹脂を含む表面層をさらに含む[1]〜[
8]の何れか
一に記載の電池。
[
10]
上記多孔性フィルムは、ポリオレフィン樹脂フィルムである[1]〜[
9]の何れか
一に記載の電池。
[11]
上記セパレータの厚さは、−0.0873S
2+6.9788S−122.66μm以下である[1]〜[
10]の何れか
一に記載の電池。
[
12]
上記正極、上記負極、上記セパレータおよび上記電解質が、フィルム状の外装部材に収容された[1]〜[
11]の何れか
一に記載の電池。
[
13]
一対の上記正極および上記負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上である[1]〜[
12]の何れか
一に記載の電池。
[
14]
[1]〜[
13]の何れか
一に記載の電池と、
上記電池を制御する制御部と、
上記電池を内包する外装と
を有する電池パック。
[
15]
[1]〜[
13]の何れか
一に記載の電池を有し、上記電池から電力の供給を受ける電子機器。
[
16]
[1]〜[
13]の何れか
一に記載の電池と、
上記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
[
17]
[1]〜[
13]の何れか
一に記載の電池を有し、上記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[
18]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記電池の充放電制御を行う[
17]に記載の蓄電装置。
[
19]
[1]〜[
13]の何れか
一に記載の電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記電池に電力が供給される電力システム。