特許第6428635号(P6428635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6428635
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   A61M39/28 110
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-544860(P2015-544860)
(86)(22)【出願日】2014年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2014074517
(87)【国際公開番号】WO2015064233
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-223827(P2013-223827)
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】日高 正人
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−022744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0215975(US,A1)
【文献】 米国特許第05083741(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00− 9/00
A61M 31/00
A61M 39/00−39/28
F16L 55/14
F16K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基部、第1変形部、第2基部、及び第2変形部の順に延びており、当該第1基部と当該第2変形部との間が開口した環形状のクランプであって、
上記第1基部は、第1凸部、及び係合爪又は係合凹部を有しており
上記第2基部は、上記第1凸部と対向する第2凸部を有しており
上記第1変形部は、湾曲しつつ延びて、上記第1基部及び上記第2基部を繋いでおり、上記第1凸部が上記第2凸部に近接する向きへ弾性変形し、
上記第2変形部は、湾曲しつつ延びて、上記係合凹部又は上記係合爪を有して上記第1変形部と反対側において上記第2基部と連続しており、上記係合爪及び上記係合凹部の係合が解除される向きへ弾性変形
上記係合凹部は、上記第1基部又は上記第2変形部における上記環形状の内面に位置するものであって、
上記係合爪と当接して、曲率半径が小さくなる向きへ弾性変形した上記第1変形部の弾性復元力により、上記第1凸部が上記第2凸部から離れる向きへ移動することを規制する第1当接面と、
上記第1当接面と対向して配置されており、上記係合爪と当接して、上記第1変形部が曲率半径が小さくなる向きへ弾性変形されて、上記第1凸部が上記第2凸部へ近づく向きへ移動することを規制する第2当接面と、を有しており、
上記係合爪は、上記第1当接面に当接した状態で、上記第2当接面との当接によるクリック感をユーザに感じさせるように上記第2当接面から離間しており、
上記係合爪が上記第1当接面に当接した状態で、上記第1凸部と上記第2凸部とが可撓性の医療用チューブを挟み込むクランプ。
【請求項2】
上記係合凹部は、上記第1当接面、上記第2当接面、及び上記第1当接面と上記第2当接面とを繋ぐ底面によって構成されている請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
上記係合凹部が位置する上記第1基部又は上記第2変形部は、上記係合凹部より上記開口に近い位置において上記環形状の内向きへ突出する凸部を有しており、
上記第1当接面は、上記底面から上記凸部の突出端に渡って拡がっており、
上記第1当接面が上記底面から突出する長さは、上記第2当接面が上記底面から突出する長さより長い請求項2に記載のクランプ。
【請求項4】
上記係合爪は、上記第1当接面に当接した状態から、上記第1変形部が曲率半径が小さくなる向きへ弾性変形されることにより、上記底面に案内されつつ上記第1当接面から離間して、上記第2当接面に当接する請求項2又は3に記載のクランプ。
【請求項5】
上記係合爪は、上記係合凹部が位置する上記第1基部又は上記第2変形部と対向する面が、係合爪の突出向きと交叉する斜面であり、
上記係合凹部が位置する上記第1基部又は上記第2変形部の先端面は、当該クランプが外部から力を付与されていない状態において、上記斜面と平行であり、
上記第1変形部が曲率半径が小さくなる向きへ弾性変形されることにより、上記斜面が上記先端面と当接しつつ移動し、上記第2変形部が曲率半径が大きくなる向きへ弾性変形して、上記係合爪と上記係合凹部とが係合可能に対向する請求項1から4のいずれかに記載のクランプ。
【請求項6】
上記第1変形部及び上記第2変形部は、上記医療用チューブが挿通される貫通孔をそれぞれ有する請求項1から5のいずれかに記載のクランプ。
【請求項7】
上記係合凹部は、上記第2変形部に1個が設けられており、
上記係合爪は、上記第1基部に設けられている請求項1から6のいずれかに記載のクランプ。
【請求項8】
上記第1凸部及び上記第2凸部のいずれか一方の突出先端は、山形状に尖っており、
他方の突出先端は、ドーム形状に丸まっている請求項1から7のいずれかに記載のクランプ。
【請求項9】
上記第1基部における上記第1凸部と反対側の面に、凹凸が連続する滑り止め部が設けられている請求項1から8のいずれかに記載のクランプ。
【請求項10】
上記第1基部、上記第1変形部、上記第2基部、及び上記第2変形部は、一体に成形された樹脂成型品である請求項1から9のいずれかに記載のクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の医療用チューブを挟むことで、チューブ内における液体の流通を規制可能なクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体が流通可能なチューブを挟むことによって、当該チューブ内における液体の流通を規制するクランプが知られている。例えば、特許文献1には、一端部と他端部とが係合することによって、可撓性チューブを挟むクランプ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているクランプ装置は、他端部に、内側に向かって突出形成された階段状から成る複数の係合部が設けられている。そして、一端部と他端部とを近接させた状態にて可撓性チューブを挿通させ、一端部と他端部とに連なる中間部を弾性変形させることにより、一端部を、複数の係合部のうちチューブの外径に応じた係合部に係合させる。これにより、チューブは、一端部と他端部とに向き合って形成された凸部によって挟まれる。その結果、チューブ内における液体の流通が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−51084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示されたクランプ装置では、ユーザは、中間部に大きな力を加えることによって、中間部を大きく撓ませることができる。例えば、中間部を撓ませてチューブをクランプさせた状態において、ユーザが中間部に大きな力を加えると、中間部は更に撓み、一端部は、現状において係合されている係合部から離間して、より小径のチューブをクランプするための係合部と係合される。この際、一端部は、係合部に設けられた傾斜面に案内されることによって、階段状の各係合部を乗り越えることができる。
【0006】
そして、上述のように、クランプ装置に大きな力が加えられて、クランプ装置が想定以上に撓むと、クランプ装置が変形してしまいやすくなる。特に、上述のような大きな力の付加が繰り返されると、クランプ装置の変形の可能性が増してしまう。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、過剰な力が加えられても、想定以上の弾性変形を生じさせないことにより、変形の可能性を低くできるクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るクランプは、第1凸部、及び係合爪又は係合凹部を有する第1基部と、上記第1凸部と対向する第2凸部を有する第2基部と、上記第1基部及び上記第2基部を繋いでおり、上記第1凸部が上記第2凸部に近接する向きへ弾性変形する第1変形部と、上記係合凹部又は上記係合爪を有して上記第1変形部と反対側において上記第2基部と連続しており、上記係合爪及び上記係合凹部の係合が解除される向きへ弾性変形する第2変形部と、を備えている。上記係合凹部は、上記係合爪と当接して、上記第1凸部が上記第2凸部から離れる向きへ移動することを規制する第1当接面と、上記第1当接面と対向して配置されており、上記係合爪と当接して、上記第1凸部が上記第2凸部へ近づく向きへ移動することを規制する第2当接面と、を有している。上記係合爪は、上記第1当接面に当接した状態で上記第2当接面から離間している。上記係合爪が上記第1当接面に当接した状態で、上記第1凸部と上記第2凸部とが可撓性の医療用チューブを挟み込む。
【0009】
上記構成によれば、係合爪が係合凹部から離間した状態で、第1変形部が弾性変形すると、第1凸部が第2凸部へ近づく向きへ移動するとともに、係合爪が係合凹部と係合する。このとき、係合爪は、第1変形部が元の状態に戻ろうとする復元力によって、第1当接面と当接する。
【0010】
この状態で、第1凸部が第2凸部へ近づく向きへ移動するように第1変形部が弾性変形すると、係合爪は、第1当接面から離間するように移動する。しかし、係合爪は、第2当接面と当接することによって、それ以上の移動を規制される。仮に、係合爪が第2当接面によって移動を規制されないとすると、第1変形部が更に弾性変形してしまう。また、弾性変形した第1変形部に押されることによって、第2変形部も弾性変形するおそれがある。つまり、係合爪が第2当接面と当接することによって、第1変形部及び第2変形部の過剰な弾性変形を回避することができる。
【0011】
第1変形部及び第2変形部の過剰な弾性変形を回避することができるため、係合爪が、当該過剰な弾性変形に起因して、第1凸部が第2凸部へ近づく向きと直交する向きに横ずれしてしまうことを回避できる。
【0012】
また、ユーザが第1変形部を弾性変形させることにより、係合爪が第1当接面から離間して第2当接面と当接すると、クランプは、ユーザに、係合爪が第2当接面と当接したことによるクリック感を感じさせる。これにより、クランプは、ユーザに対して、これ以上第1変形部を弾性変形させるべきではないということを、換言するとこれ以上クランプに力を加えるべきではないということを、認識させることができる。
【0013】
(2) 上記係合凹部は、上記第1当接面、上記第2当接面、及び上記第1当接面と上記第2当接面とを繋ぐ底面によって構成されている。
【0014】
上記構成によれば、係合凹部には底面が設けられているため、係合凹部は、第1当接面から離間して下方向へ移動する係合爪を、正確に案内することができる。
【0015】
(3) 上記第1変形部及び上記第2変形部は、上記医療用チューブが挿通される貫通孔をそれぞれ有する。
【0016】
上記構成によれば、医療用チューブを貫通孔に挿通させるだけで、クランプを、医療用チューブを挟み込み可能な状態とすることができる。
【0017】
また、第1変形部及び第2変形部に貫通孔が設けられると、第1変形部及び第2変形部は、弾性変形によって変形や破損を生じやすくなってしまうが、上記(1)の構成によって、第1変形部及び第2変形部の過剰な弾性変形が回避されるため、上記のような変形や破損の可能性を低くすることができる。
【0018】
(4) 上記係合凹部は、上記第2変形部に1個が設けられている。上記係合爪は、上記第1基部に設けられている。
【0019】
上記構成によれば、係合凹部は1個のみ設けられているため、係合爪が当該1個のみ設けられた係合凹部以外の係合凹部に係合されることはない。
【0020】
(5) 上記第1凸部及び上記第2凸部のいずれか一方の突出先端は、山形状に尖っている。他方の突出先端は、ドーム形状に丸まっている。
【0021】
上記構成によれば、第1凸部及び第2凸部のいずれか一方の突出先端が山形状に尖っているため、第1凸部及び第2凸部が医療用チューブを挟んだ状態において、当該一方の突出先端が医療用チューブに対して滑ってしまう可能性を低くすることができる。
【0022】
また、第1凸部及び第2凸部の他方の突出先端はドーム形状に丸まっているため、第1凸部及び第2凸部に挟まれた医療用チューブにキンクが発生する可能性を低くすることができる。
【0023】
(6) 上記第1基部における上記第1凸部と反対側の面に、凹凸が連続する滑り止め部が設けられている。
【0024】
上記構成によれば、クランプによる医療用チューブの挟み込み操作及び当該挟み込みの解除操作を容易に実行することができる。
【0025】
(7) 上記第1基部、上記第1変形部、上記第2基部、及び上記第2変形部は、一体に成形された樹脂成型品であり、上記第1基部と上記第2変形部との間が開口した環形状である。
【0026】
上記構成によれば、クランプの製造を容易に且つ低コストで行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、過剰な力が加えられても、クランプに想定以上の弾性変形を生じさせないことにより、クランプの変形の可能性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施形態におけるクランプ10の斜視図である。
図2図2は、医療用チューブ50が挿通され且つ係合爪18が係合凹部35から離間した状態のクランプ10の斜視図である。
図3図3は、医療用チューブ50が挿通され且つ係合爪18が上側面36に当接した状態のクランプ10の斜視図である。
図4図4は、医療用チューブ50が挿通され且つ係合爪18が下側面37に当接した状態のクランプ10の斜視図である。
図5図5は、医療用チューブ50が挿通され且つ係合爪18が係合凹部35から離間した状態のクランプ10の正面図である。
図6図6は、医療用チューブ50が挿通され且つ係合爪18の下面22が先端部32の傾斜面40と当接した状態のクランプ10の正面図である。
図7図7は、医療用チューブ50が挿通され且つ係合爪18が上側面36に当接した状態のクランプ10の正面図である。
図8図8は、医療用チューブ50が挿通され且つ係合爪18が下側面37に当接した状態のクランプ10の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面が参照されつつ本発明の実施形態が説明される。なお、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨が変更されない範囲において、本実施形態が適宜変更されてもよいことは言うまでもない。なお、以下の説明において、各図に示される上下方向7、前後方向8、及び左右方向9を基準として各構成要素の位置関係を説明する。但し、これは各構成要素の絶対的な位置関係を表すものではない。すなわち、各図に示される上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は、互いに直交する第1方向、第2方向、及び第3方向と読み替えることができる。
【0030】
[クランプ10の構成]
本実施形態におけるクランプ10は、血液などの流体が流通される可撓性の医療用チューブ50を挟み、医療用チューブ50における挟まれた部分の流体の流通を規制するものである。
【0031】
図1は、本実施形態におけるクランプ10の外観斜視図である。図5は、医療用チューブ50が挿通された状態のクランプ10の正面図である。図1及び図5に示されるように、クランプ10は、第1基部11、第1変形部12、第2基部13、及び第2変形部14が一体に成形された樹脂成型品である。クランプ10に用いられる樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
【0032】
クランプ10は、概ね平板形状の部材が長手方向に湾曲しつつ延びることによって概ね環状に形成された部材である。つまり、クランプ10は、図5における時計回りに、第1基部11、第1変形部12、第2基部13、及び第2変形部14の順に概ね環状に延びている。第1基部11と第2変形部14との間には、隙間15が形成されている。つまり、第1基部11と第2変形部14との間が開口している。
【0033】
第1基部11は、概ね平板形状の本体部16と、本体部16から内側(下側)に突出した第1凸部17と、本体部16の後端から後側に突出した係合爪18とを備えている。
【0034】
第1凸部17は、本体部16の後側部分から前方斜め下側に延びた後側傾斜面19と、後側傾斜面19と連続しており後側傾斜面19から本体部16の前側部分まで前方斜め上側に延びた前側傾斜面20とを備えている。これにより、第1凸部17における後側傾斜面19と前側傾斜面20との境界部分、つまり第1凸部17の突出先端21は、山形状に尖っている。
【0035】
係合爪18は、後述する係合凹部35と係合可能である。係合爪18の下面22は、係合爪18の突出先端である後端から前方斜め下側に延びている。
【0036】
本体部16の上面23、つまり第1基部11における第1凸部17と反対側の面に、滑り止め部24が設けられている。滑り止め部24は、左右方向9に延びた溝が前後方向8に間隔を空けて複数設けられることによって形成されている。つまり、滑り止め部24は、前後方向8に連続した凹凸で構成されている。なお、滑り止め部24は、上述したような構成に限らず、例えば本体部16の上面23に貼り付けられた本体部16よりも摩擦係数の大きな材質の部材(例えばゴム)であってもよい。
【0037】
第2基部13は、第1基部11の下方に第1基部11と対向して設けられており、概ね平板形状の本体部25と、本体部25から内側(上側)に突出した第2凸部26とを備えている。
【0038】
第2凸部26は、第1凸部17の下方において第1凸部17と対向して設けられている。第2凸部26は、本体部25の後側部分から前方斜め上側に延びた後側傾斜面27と、後側傾斜面27と連続しており後側傾斜面27から上側を湾曲外側として湾曲しつつ前側に延びた湾曲面28と、湾曲面28と連続しており湾曲面28から本体部25の前側部分まで前方斜め下側に延びた前側傾斜面29とを備えている。つまり、湾曲面28で構成された第2凸部26の突出先端は、ドーム形状に丸まっている。
【0039】
第1変形部12は、第1基部11の前端から第2基部13の前端まで、前側が湾曲外側となるように湾曲しつつ延びている。つまり、第1変形部12は、第1基部11及び第2基部13を繋いでいる。第1変形部12には、貫通孔30が設けられている。これにより、第1変形部12は、第1基部11の右端部及び左端部と第2基部13の右端部及び左端部とをそれぞれ繋いでいる。貫通孔30には、医療用チューブ50が挿通される。
【0040】
第1変形部12は、概ね平板形状の部材が湾曲したものであり且つ樹脂成型品であるため、弾性変形可能である。詳細には、第1変形部12は、曲率半径が大きく或いは小さくなるように弾性変形する。
【0041】
曲率半径が大きくなるように第1変形部12が弾性変形した場合、第1基部11は上方へ移動する。換言すると、第1基部11が上方へ移動すると、第1変形部12は、曲率半径が大きくなるように弾性変形する。曲率半径が大きくなるように第1変形部12が弾性変形したとき、第1凸部17は第2凸部26から離れる向きへ移動する。
【0042】
曲率半径が小さくなるように第1変形部12が弾性変形した場合、第1基部11は下方へ移動する。換言すると、第1基部11が下方へ移動すると、第1変形部12は、曲率半径が小さくなるように弾性変形する。曲率半径が小さくなるように第1変形部12が弾性変形したとき、第1凸部17は第2凸部26に近接する向きへ移動する。つまり、第1変形部12は、第1凸部17が第2凸部26に近接する向きへ弾性変形する。
【0043】
第2変形部14は、基端部31、先端部32、及び湾曲部33で構成されている。基端部31は、第2基部13の後端から後側へ延びている。つまり、第2変形部14は、第1変形部12と反対側において第2基部13と連続している。先端部32は、概ね上下方向7に延びている。湾曲部33は、基端部31及び先端部32を繋いでおり、後側が湾曲外側となるように湾曲しつつ延びている。湾曲部33には、貫通孔34が設けられている。これにより、湾曲部33は、基端部31の右端部及び左端部と先端部32の右端部及び左端部とをそれぞれ繋いでいる。貫通孔34には、医療用チューブ50が挿通される。
【0044】
先端部32の前面には、1個の係合凹部35が形成されている。つまり、第2変形部14は、係合凹部35を有している。係合凹部35は、先端部32の右端から左端に亘って左右方向9に延びた溝である。係合凹部35は、上側面36(本発明の第1当接面の一例)と、上側面36の下側において上側面36と対向して配置された下側面37(本発明の第2当接面の一例)と、上側面36及び下側面37を繋いでおり概ね上下方向7に延びた底面38とによって構成されている。
【0045】
なお、係合凹部35の左右方向9の長さは、係合爪18の左右方向9の長さに対応している。本実施形態では、図1に示されるように、係合爪18は、クランプ10の左端から右端に亘って設けられているため、係合凹部35は、先端部32の左端から右端に亘って形成されている。しかし、係合爪18の左右方向9の長さは、図1に示される長さに限らず、例えばクランプ10の左右方向9における中央部にのみ設けられ左右端部には設けられていなくてもよい。この場合、係合凹部35は、係合爪18が設けられた左右方向9の中央部にのみ形成されていればよい。つまり、係合凹部35は。先端部32の右端に達していなくてもよく、また、先端部32の左端に達していなくてもよい。
【0046】
また、係合爪18は、左右方向9に複数個設けられていてもよい。そして、この場合、係合凹部35は、各係合爪18に対応して、左右方向9に複数個設けられていてもよい。
【0047】
また、係合凹部35は、貫通孔でもよい。この場合、係合凹部35は、底面38を有していない。
【0048】
係合凹部35の上側には、凸部39が設けられている。凸部39は、上側面36と先端部32の上面とを備えている。先端部32の上面には、傾斜面40が設けられている。傾斜面40は、後側が前側よりも上方となるように傾斜した面である。傾斜面40は、クランプ10が外部から力を付加されていない状態(図1に示される状態)のときに、係合爪18の下面22と概ね平行である。
【0049】
第2変形部14は、概ね平板形状の部材が湾曲したものであり且つ樹脂成型品であるため、第1変形部12と同様に弾性変形可能である。詳細には、第2変形部14は、曲率半径が大きく或いは小さくなるように弾性変形する。
【0050】
曲率半径が大きくなるように第2変形部14が弾性変形した場合、先端部32は後方へ移動する。換言すると、先端部32が後方へ移動すると、第2変形部14は、曲率半径が大きくなるように弾性変形する。曲率半径が大きくなるように第2変形部14が弾性変形したとき、係合凹部35は係合爪18との係合を解除する向きへ移動する。つまり、第2変形部14は、係合爪18及び係合凹部35の係合が解除される向きへ弾性変形する。
【0051】
曲率半径が小さくなるように第2変形部14が弾性変形した場合、先端部32は前方へ移動する。換言すると、先端部32が前方へ移動すると、第2変形部14は、曲率半径が小さくなるように弾性変形する。曲率半径が小さくなるように第2変形部14が弾性変形したとき、係合凹部35は係合爪18と係合される向きへ移動する。
【0052】
[クランプ10が医療用チューブ50を挟む動作]
以下、ユーザの操作によってクランプ10が医療用チューブ50を挟む動作について説明する。最初に、ユーザが、医療用チューブ50を、図1に示される状態のクランプ10の貫通孔30,34に、前後方向8に沿うように挿入する。これにより、医療用チューブ50は、貫通孔30,34の間において第1凸部17及び第2凸部26の間を通過する。
【0053】
医療用チューブ50の外径が第1凸部17及び第2凸部26の隙間よりも長い場合、医療用チューブ50は、第1凸部17及び第2凸部26の間に挿入することができない。そのため、ユーザは、第1基部11を把持して上方へ引っ張る。これにより、曲率半径が大きくなるように第1変形部12が弾性変形して、第1凸部17は上方へ移動する。その結果、第1凸部17及び第2凸部26の隙間が長くなり、医療用チューブ50を当該隙間に挿入可能な状態となる。
【0054】
医療用チューブ50が当該隙間に挿入された後、ユーザが第1基部11から手を離すと、第1変形部12が弾性変形させる前の状態に戻ろうとするため、第1凸部17は下方へ移動する。これにより、図2及び図5に示されるように、第1凸部17は医療用チューブ50に当接する。
【0055】
次に、図2及び図5に示される状態において、ユーザは、第1基部11を把持して下方へ押す。これにより、曲率半径が小さくなるように第1変形部12が弾性変形して、係合爪18が第2変形部14の先端部32に接近する。そして、図6に示されるように、係合爪18の下面22が傾斜面40に当接する。
【0056】
この状態において、ユーザが第1基部11に対して更に下方への力を付加すると、曲率半径が更に小さくなるように第1変形部12が弾性変形して、係合爪18の下面22が傾斜面40に沿って移動する。これにより、第1基部11が、第1変形部12の弾性変形によって、下方に且つ前方へ移動する。また、このとき、第2変形部14の弾性変形によって、先端部32が後方へ移動する。以上のような第1基部11及び第2変形部14の移動によって、係合爪18が凸部39を乗り越える。すると、第1基部11は、第1変形部12が元の状態に戻ろうとする力によって、後方へ移動する。これにより、図3及び図7に示されるように、係合爪18は、係合凹部35へ挿入される。つまり、係合爪18は、係合凹部35と係合する。
【0057】
図2及び図5に示される状態において、ユーザが第1基部11を把持して下方へ押すと、第1変形部12は曲率半径が小さくなるように弾性変形して、第1凸部17は下方へ、つまり第2凸部26に近接する向きへ移動する。これにより、第1凸部17は、医療用チューブ50を押しつけ、医療用チューブ50は、図3及び図7に示されるように、第1凸部17及び第2凸部26に挟まれた状態となる。そして、係合爪18が係合凹部35と係合することにより、医療用チューブ50が第1凸部17及び第2凸部26に挟まれた状態に維持される。後述するように、図3及び図7に示される状態において、係合爪18の上面41が係合凹部35の上側面36に当接している。つまり、係合爪18が上側面36に当接した状態で、第1凸部17と第2凸部26とが医療用チューブ50を挟み込んでいる。
【0058】
係合爪18が係合凹部35と係合された図3及び図7に示される状態において、第1変形部12が元の状態に戻ろうとする上向きの力が、係合爪18に作用している。これにより、係合爪18の上面41が係合凹部35の上側面36に当接している。上側面36は、係合爪18と当接することによって、係合爪18が更に上方へ移動すること、つまり係合爪18及び係合凹部35の係合が解除される向きへ移動することを規制している。
【0059】
係合爪18が係合凹部35と係合された図3及び図7に示される状態において、係合爪18の下面22は、係合凹部35の下側面37よりも上方に位置する。つまり、係合爪18の下面22は、下側面37から離間している。即ち、係合爪18は、係合凹部35に挿入された状態で、下側面37からの離間距離だけ上下方向7に移動可能である。
【0060】
図3及び図7に示される状態において、ユーザが第1基部11を把持して下方へ押すと、第1変形部12は曲率半径が小さくなるように弾性変形して、係合爪18は上側面36から離間して底面38に案内されつつ下方へ移動する。係合爪18の下方への移動、つまり第1凸部17の第2凸部26へ近づく向きへの移動は、図4及び図8に示されるように、下面22が下側面37に当接するまで可能である。つまり、下側面37は、係合爪18と当接して、第1凸部17が第2凸部26へ近づく向きへ移動することを規制する。
【0061】
図3及び図7に示される状態において、ユーザが第2変形部14の先端部32を把持して後方へ引っ張ると、曲率半径が大きくなるように第2変形部14が弾性変形して、係合凹部35が後方へ移動する。これにより、係合凹部35が係合爪18から離間されて係合が解除され、第1基部11は、第1変形部12が元の状態に戻ろうとする力によって上方へ移動する。その結果、クランプ10は、図2及び図5に示される状態となる。図2及び図5に示される状態において、ユーザが第1基部11を把持して上方へ引っ張ると、上述したように、第1凸部17は上方へ移動する。これにより、第1凸部17及び第2凸部26による医療用チューブ50の挟み込みが解除される。
【0062】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、係合爪18が係合凹部35から離間した状態で、曲率半径が小さくなるように第1変形部12が弾性変形すると、第1凸部17が第2凸部26へ近づく向きへ移動するとともに、係合爪18が係合凹部35と係合する。このとき、係合爪18は、第1変形部12が元の状態に戻ろうとする復元力によって、上側面36と当接する。
【0063】
この状態で、第1凸部17が第2凸部26へ近づく向きへ移動するように第1変形部12が弾性変形すると、係合爪18は、上側面36から離間するように移動する。しかし、係合爪18は、下側面37と当接することによって、それ以上の移動を規制される。仮に、係合爪18が下側面37によって移動を規制されないとすると、第1変形部12が更に弾性変形してしまう。また、弾性変形した第1変形部12に押されることによって、第2変形部14も弾性変形するおそれがある。つまり、係合爪18が下側面37と当接することによって、第1変形部12及び第2変形部14の過剰な弾性変形を回避することができる。
【0064】
また、第1変形部12及び第2変形部14の過剰な弾性変形を回避することができるため、係合爪18が、当該過剰な弾性変形に起因して、左右方向9に横ずれしてしまうことを回避できる。
【0065】
また、ユーザが第1変形部12を弾性変形させることにより、係合爪18が上側面36から離間して下側面37と当接すると、クランプ10は、ユーザに、係合爪18が下側面37と当接したことによるクリック感を感じさせる。これにより、クランプ10は、ユーザに対して、これ以上第1変形部12を弾性変形させるべきではないということを、換言するとこれ以上クランプ10に力を加えるべきではないということを、認識させることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、係合凹部35は、上側面36、下側面37、及び上側面36と下側面37とを繋ぐ底面38によって構成されているため、上側面36から離間して下方へ移動する係合爪18を、正確に案内することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、医療用チューブ50を貫通孔30,34に挿通させるだけで、クランプ10を、医療用チューブ50を挟み込み可能な状態とすることができる。
【0068】
また、第1変形部12及び第2変形部14に貫通孔30,34が設けられると、第1変形部12及び第2変形部14は、弾性変形によって変形や破損を生じやすくなってしまうが、本実施形態では上述したように、第1変形部12及び第2変形部14の過剰な弾性変形が回避されるため、上記のような変形や破損の可能性を低くすることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、係合凹部35は1個のみ設けられているため、係合爪18が当該1個のみ設けられた係合凹部35以外の係合凹部35に係合されることはない。
【0070】
また、本実施形態によれば、第1凸部17の突出先端が山形状に尖っているため、第1凸部17及び第2凸部26が医療用チューブ50を挟んだ状態において、第1凸部17の突出先端が医療用チューブ50に対して滑ってしまう可能性を低くすることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、第2凸部26の突出先端はドーム形状に丸まっているため、第1凸部17及び第2凸部26に挟まれた医療用チューブ50にキンクが発生する可能性を低くすることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、第1基部11に滑り止め部24が設けられているため、クランプ10による医療用チューブ50の挟み込み操作及び当該挟み込みの解除操作を容易に実行することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、第1基部11、第1変形部12、第2基部13、及び第2変形部14は、一体に成形された樹脂成型品であり、第1基部11と第2変形部14との間が開口した環形状であるため、クランプ10の製造を容易に且つ低コストで行うことができる。
【0074】
[変形例]
上述の実施形態では、第1基部11に係合爪18が設けられ、第2変形部14に係合凹部35が設けられていたが、上述の実施形態とは逆に、第1基部11に係合凹部35が設けられ、第2変形部14に係合爪18が設けられていてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、第1凸部17の突出先端が山形状に尖っており、第2凸部26の突出先端がドーム状に丸まっていたが、上述の実施形態とは逆に、第1凸部17の突出先端がドーム状に丸まっており、第2凸部26の突出先端が山形状に尖っていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10・・・クランプ
11・・・第1基部
12・・・第1変形部
13・・・第2基部
14・・・第2変形部
17・・・第1凸部
18・・・係合爪
26・・・第2凸部
35・・・係合凹部
36・・・上側面
37・・・下側面
50・・・医療用チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8